JP3356810B2 - 電解コンデンサ駆動用高分子固体電解質 - Google Patents

電解コンデンサ駆動用高分子固体電解質

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  • Compositions Of Macromolecular Compounds (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は電解コンデンサ駆動用高
分子固体電解質に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、産業分野の発展によりエレクトロ
ニクス素子の高性能化、高信頼化が求められている。特
に、電解液を使用するコンデンサや電池などの電気化学
素子は、漏液、デバイスへの実装、加工性などの点で多
くの問題があり、従来より電解液の固体化が検討されて
いる。この中で、高分子固体電解質は無機系の電解質に
比べ、イオン伝導率がはるかに小さいにも拘らず、軽量
で柔軟性、成形性などの機械的性能の面において優れて
いるので注目を集めている。
【0003】この高分子固体電解質としては、たとえ
ば、ポリエチレンオキシド(PEO)とリチウム塩の複
合体(イオン伝導率:100℃で〜10-4S/cm)[P
olymer,14,586(1973)]、トリオー
ル型ポリエチレンオキシドのジイソシアネート架橋物ポ
リマー−金属塩複合体(イオン伝導率:30℃で10-5
S/cm)[特開昭62−48716号公報]、ポリメタク
リル酸オリゴオキシエチレン・メタクリル酸アルカリ金
属塩共重合体の対イオン固定固体電解質(イオン伝導
率:室温で10-7S/cm)[Polymer Repr
ints Japan,35,583(1986)]な
どが報告されている。また、実際に電解コンデンサに適
用した例としては、シロキサン−アルキレンオキサイド
・コポリマーとポリエチレンオキサイドの混合物とアル
カリ金属塩などの複合体(イオン伝導率:室温で10-5
〜10-6S/cm)[特表平1−503425号公報]が報
告されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これらの高分
子固体電解質は、室温におけるイオン伝導率が小さく、
電解コンデンサへ適用した場合、損失が大きく十分な特
性が得られなかった。
【0005】本発明は、このような問題点を解決するも
ので、室温におけるイオン伝導度が大きく、かつコンデ
ンサを構成したときアルミニウム箔と反応せず、成形性
ならびに長寿命化の点で優れた電解コンデンサ駆動用高
分子固体電解質を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明の電解コンデンサ駆動用高分子固体電解質
は、ブチロラクトン類、鎖状エーテル類、複素環式エー
テル類から選ばれる1種以上を含む溶剤と、電解質塩
と、ヒドロキシプロピル(アルキル)セルロースと、有
機ポリイソシアネートからなる電解質組成物の硬化物に
より構成したものである。
【0007】
【作用】上記構成によれば、ブチロラクトン類、鎖状エ
ーテル類、複素環式エーテル類から選ばれる1種以上を
含む溶剤と、電解質塩と、ヒドロキシプロピル(アルキ
ル)セルロースと、有機ポリイソシアネートからなる電
解質組成物の硬化物により電解コンデンサ駆動用高分子
固体電解質を構成しているもので、この電解質組成物の
硬化物におけるヒドロキシプロピル(アルキル)セルロ
ースは加熱もしくは常温で架橋し、それと同時に電解質
塩を溶かし込んだ溶剤が架橋物のマトリクス中に取り込
まれるため、室温におけるイオン伝導度が大きなものを
得ることができ、また電解質組成物の硬化物はコンデン
サを構成したときアルミニウム箔と反応することもな
く、成形性ならびに長寿命化の点で優れたものを得るこ
とができる。
【0008】
【実施例】以下、本発明の実施例について説明する。本
発明の実施例の基本は、ブチロラクトン類、鎖状エーテ
ル類、複素環式エーテル類から選ばれる1種以上を含む
溶剤と、電解質塩と、ヒドロキシプロピル(アルキル)
セルロースと、有機ポリイソシアネートからなる電解質
組成物の硬化物により電解コンデンサ駆動用高分子固体
電解質を構成することであり、溶剤のブチロラクトン類
としては、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、
δ−バレロラクトン、3−メチル−1,3−オキサゾリ
ジン−2−オン、3−エチル−1,3−オキサゾリジン
−2−オンなどが挙げられ、また鎖状エーテル類として
は、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、
1,2−エトキシメトキシエタン、メチルジグライム、
メチルトリグライム、メチルテトラグライム、エチルグ
ライム、エチルジグライム、ブチルジグライムなど、グ
リコールエーテル(エチルセルソルブ、エチルカルビト
ール、ブチルセルソルブ、ブチルカルビトールなど)な
どが挙げられ、そして複素環式エーテル類としては、テ
トラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、
1,3−ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジ
オキサンなどが挙げられる。また、必要により加えられ
るその他の溶剤としては、水、アルコール類(メタノー
ル、エタノール、ブタノール、エチレングリコール、プ
ロピレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−
ブタンジオール、グリセリンなど)、ポリオキシアルキ
レンポリオール(エチレンオキシド、ポリプロピレンオ
キシド、ポリオキシエチレン、オキシプロピレングリコ
ールならびに、これら2種以上の併用)、アミド溶剤
(N−メチルホルムアミド、N,N−ジメチルホルムア
ミド、N−メチルアセトアミド、N−メチルピロリジノ
ンなど)、カーボネート溶剤(プロピレンカーボネー
ト、エチレンカーボネートなど)、イミダゾリジノン溶
剤(1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノンなど)な
どが挙げられる。
【0009】以上溶剤として例示したもののうち、好ま
しいものはブチロラクトン類のうちでは、γ−ブチロラ
クトンおよび3−メチル−1,3−オキサゾリジノン−
2−オン、鎖状エーテル類のうちでは、メチルトリグラ
イム、メチルテトラグライムおよびグリコールエーテ
ル、ならびに複素環式エーテル類のうちでは、1,3−
ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキサン
から選ばれる1種以上である。必要により加えられるそ
の他の溶剤を併用する場合は、溶剤の全量に対し20重
量%以下とするのがよい。これら以外の溶剤では高分子
固体電解質の伝導度が低下し、良好なコンデンサ性能が
得られない。
【0010】また電解質としては金属塩、アミン塩、ア
ンモニウム塩および第4級アンモニウム塩が挙げられ
る。これらは2種以上併用しても良い。金属塩としては
I族、またはII族の金属の塩が挙げられ、中でも陽イオ
ン半径の小さいLi,NaおよびKの塩が好ましい。
【0011】これらの金属塩を構成する陰イオンとして
はチオシアン酸イオン、過塩素酸イオン、トリフルオロ
メタンスルホン酸イオン、フルオロホウ酸イオンなどが
挙げられ、これらのうちで、好ましいものはチオシアン
酸イオンを除いたものである。
【0012】アミン塩を構成するアミンとしては、1級
アミン(メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミ
ン、ブチルアミン、エチレンジアミンなど)、2級アミ
ン(ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミ
ン、メチルエチルアミン、ジフェニルアミンなど)、3
級アミン(トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ
プロピルアミン、トリフェニルアミンなど)および第四
級アンモニウムが挙げられる。
【0013】第四級アンモニウムとしては、テトラアル
キルアンモニウム(テトラメチルアンモニウム、テトラ
エチルアンモニウム、テトラプロピルアンモニウム、メ
チルトリエチルアンモニウム、ジメチルジエチルアンモ
ニウム、N,N−ジメチルピロリジウムなど)、アリー
ルトリアルキルアンモニウム(フェニルトリメチルアン
モニウム、フェニルトリエチルアンモニウム、フェニル
メチルジエチルアンモニウムなど)、シクロヘキシルト
リアルキルアンモニウム(シクロヘキシルトリメチルア
ンモニウム、シクロヘキシルトリエチルアンモニウムな
ど)、N,N−ジアルキルピペリジニウム(N,N−ジ
メチルピペリジニウム、N,N−ジエチルピペリジニウ
ムなど)などが挙げられる。
【0014】アミン塩および第四級アンモニウム塩を構
成する酸としては、ホウ酸、過塩素酸、トリフルオロメ
タンスルホン酸、チオシアン酸、テトラフルオロホウ
酸、リン酸、スルホン酸(アリールスルホン酸など)お
よびカルボン酸(マレイン酸、フタル酸、アジピン酸、
アゼライン酸、安息香酸、ブチルオクタン二酸、蟻酸な
ど)などが挙げられる。これら電解質塩として例示した
もののうち好ましいものは、カルボン酸のアンモニウム
塩もしくはカルボン酸の第四級アンモニウム塩である。
【0015】本発明においてヒドロキシプロピル(アル
キル)セルロースとしては、ヒドロキシプロピルセルロ
ース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキ
シプロピルエチルセルロース、ヒドロキシプロピルプロ
ピルセルロース、ヒドロキシプロピルブチルセルロース
などが挙げられ、これらのうち、ヒドロキシプロピルセ
ルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースが好ま
しく、ヒドロキシプロピルメチルセルロースがより好ま
しい。
【0016】本発明の組成物の構成成分として、有機ポ
リイソシアネートを添加することにより溶剤の揮発防止
能や形状保持性が向上する。有機ポリイソシアネートと
しては、従来ポリウレタンの製造に使用されていたもの
が使用できる。具体的には「ポリウレタン樹脂ハンドブ
ック」(日刊工業新聞社発行)90〜98頁に記載の化
合物および、これらと高分子活性水素化合物を必要によ
りウレタン化触媒の存在下で反応させることにより得ら
れる末端NCO基を有するウレタンポリマー(以下プレ
ポリマーと略す)が挙げられ、これらは混合して使用し
ても良い。これらのうちでは、イソホロンジイソシアネ
ートおよびこれらのプレポリマーが好ましい。有機ポリ
イソシアネートを添加する際には、必要によりウレタン
化触媒を併用しても良い。
【0017】また、高分子活性水素化合物としては、前
記「ポリウレタン樹脂ハンドブック」(日刊工業新聞社
発行)99〜119頁記載のポリエーテルポリオール、
ポリエステルポリオール、ポリシロキサンポリオール、
ポリブタジエンポリオールおよびこれらからの末端アミ
ン化合物などが挙げられる。これらのうちで好ましいも
のは、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオー
ルおよびこれらからの末端アミン化合物である。これら
以外の高分子活性水素化合物では、良好な形状保持性を
有する高分子固体電解質を構成するためのウレタンポリ
マーが得られない。
【0018】電解質組成物が有機ポリイソシアネートを
含むときは、前記「ポリウレタン樹脂ハンドブック」
(日刊工業新聞社発行)119〜122頁記載のウレタ
ン化触媒を必要に応じて使用してもよい。
【0019】高分子固体電解質における電解質組成物の
構成成分の割合(重量基準)については、電解質塩は溶
剤100部に対し通常0.1〜50部であり、好ましく
は1.0〜40部である。この範囲外ではイオン伝導度
が低い。ヒドロキシプロピル(アルキル)セルロースは
溶剤に対し1〜30部であり、好ましくは1〜20部、
より好ましくは1〜15部である。有機ポリイソシアネ
ートは溶剤100部に対し通常、1〜20部であり、好
ましくは1〜15部である。この範囲外では、良好な形
状保持性が得られない。
【0020】また、高分子固体電解質における電解質組
成物には、組成物の全重量に対し20部以下の範囲で樹
脂を添加してもよい。樹脂としては「10889の化学
商品」(化学工業日報社刊)703〜782頁記載のも
のが使用できる。これらのうちでは、ポリウレタン、ポ
リアミド、ポリビニルアルコール、ポリエチレンオキサ
イドおよびポリビニルピロリドンが好ましい。
【0021】高分子固体電解質における電解質組成物の
製法を例示すると、溶剤と電解質塩とヒドロキシプロピ
ル(アルキル)セルロースおよび有機ポリイソシアネー
トとにより、1つの電解質組成物が得られ、そしてこの
電解質組成物を加熱によって硬化させることにより高分
子固体電解質が得られる。
【0022】また、高分子固体電解質は副資材複合化
することができる。この複合化は高分子固体電解質にお
ける電解質組成物を副資材に含浸させて、次いで硬化さ
せればよい。副資材としてはフィルム、紙、布、不織布
等が挙げられる。
【0023】次に電解コンデンサ駆動用高分子固体電解
質を構成する電解質組成物の固化前の組成を示す。(部
は重量部を表す 実施例) (a)γ−ブチロラクトン(100部) (b)ホウフッ化リチウム(25部) (c)ヒドロキシプロピルセルロース(5部) (d)4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート
(3部)実施例1に おける高分子固体電解質構成用電解質組成物
を70℃に加熱して高分子固体電解質を得た。これらは
すべて室温および100℃で優れた形状保持性を示す。
【0024】比較例1としてはヘキサフルオログルター
ル酸カリウムに、3×10-5g/モル濃度のポリエチレ
ンオキサイドを50%、ポリエチレングリコール350
ダルトン・シロキサンを40%、スチレンを10%溶か
し、カリウム塩をエチレンオキサイド繰り返し単位1モ
ル当たり0.04モルの濃度としたポリマー電解質液を
作り、このポリマー電解質液を105℃で8時間放置す
ることにより硬化させた。
【0025】比較例2としてはフタル酸モノテトラエチ
ルアンモニウムをγ−ブチロラクトンに溶かして塩濃度
を25wt%とした電解液を作った。以上のようにして
得られた本発明の実施例1および比較例1の固体電解質
のイオン伝導度を、白金を電極としたインピーダンス測
定をすることにより求めた。また純度99.99%のア
ルミニウム箔を陽極とし、かつ白金を陰極として定電流
条件で火花発生電圧を求めた。
【0026】上記電解コンデンサ駆動用高分子固体電解
質のイオン伝導度と火花発生電圧の測定結果を表1
に示した。
【0027】
【表1】
【0028】(表1)から明らかなように、本発明の実
施例1は比較例1に比べ室温におけるイオン伝導度を大
きなものとすることができる。次に、本発明の実施例
固体電解質および比較例2の電解液を上部を開放した
サンプル瓶に入れ、125℃で1時間加熱し重量減を測
定した。
【0029】上記電解コンデンサ駆動用高分子固体電解
質と電解液の揮発減量結果を、電解液の重量減を1とし
た場合の各高分子固体電解質の重量減で表し、表2
に示した。
【0030】
【表2】
【0031】(表2)から明らかなように、本発明の実
施例の構成による電解コンデンサ駆動用高分子固体電解
質は溶媒の揮発防止能が高いことがわかる。
【0032】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、ブチロラ
クトン類、鎖状エーテル類、複素環式エーテル類から選
ばれる1種以上を含む溶剤と、電解質塩と、ヒドロキシ
プロピル(アルキル)セルロースと、有機ポリイソシア
ネートからなる電解質組成物の硬化物により電解コンデ
ンサ駆動用高分子固体電解質を構成しているもので、こ
の電解質組成部の硬化物におけるヒドロキシプロピル
(アルキル)セルロースは加熱もしくは常温で架橋し、
それと同時に電解質塩を溶かし込んだ溶剤が架橋物のマ
トリクス中に取り込まれるため、室温におけるイオン伝
導度も大きなものを得ることができ、また電解質組成物
の硬化物はコンデンサを構成したときアルミニウム箔と
反応することもなく、成形性ならびに長寿命化の点で優
れたものを得ることができる。
フロントページの続き (72)発明者 佐村 徹也 京都府京都市東山区一橋野本町11番地の 1 三洋化成工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−145517(JP,A) 特開 平3−155108(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01G 9/035 H01G 9/025

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ブチロラクトン類、鎖状エーテル類、複
    素環式エーテル類から選ばれる1種以上を含む溶剤と、
    電解質塩と、ヒドロキシプロピル(アルキル)セルロー
    スと、有機ポリイソシアネートとからなる電解質組成物
    の硬化物により構成した電解コンデンサ駆動用高分子固
    体電解質。
  2. 【請求項2】 溶剤がγ−ブチロラクトン、3−メチル
    −1,3−オキサゾリジン−2−オンから選ばれる1種
    以上である請求項1記載の電解コンデンサ駆動用高分子
    固体電解質。
  3. 【請求項3】 電解質塩の添加量が、重量基準で溶剤1
    00部に対し1.0〜40部である請求項1または請求
    項2のいずれかに記載の電解コンデンサ駆動用高分子固
    体電解質。
  4. 【請求項4】 ヒドロキシプロピル(アルキル)セルロ
    ースの添加量が、重量基準で溶剤100部に対し1〜2
    0部である請求項1〜請求項3のいずれかに記載の電解
    コンデンサ駆動用高分子固体電解質。
  5. 【請求項5】 電解質塩が、カルボン酸のアンモニウム
    塩およびカルボン酸の第四級アンモニウム塩から選ばれ
    る1種以上である請求項1〜請求項4のいずれかに記載
    の電解コンデンサ駆動用高分子固体電解質。
  6. 【請求項6】 有機ポリイソシアネートが、イソホロン
    ジイソシアネートおよび/またはそれと高分子活性水素
    化物からの末端NCO基を有するウレタンプレポリマー
    である請求項1〜請求項5のいずれかに記載の電解コン
    デンサ駆動用高分子固体電解質。
  7. 【請求項7】 有機ポリイソシアネートの添加量が、溶
    剤100部に対し1〜15部である請求項1〜請求項6
    のいずれかに記載の電解コンデンサ駆動用高分子固体電
    解質。
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