JP3338917B2 - 浄水器用濾過体 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、安全でおいしい水を得
るための浄水器用濾過体に関する。

【０００２】

【従来の技術】従来より、水道水その他の原水中に含ま
れる残留塩素を除く目的で活性炭を濾過体とする浄水器
が知られているが、濾過体として活性炭のみを用いた浄
水器では、濾過部で繁殖した雑菌が浄水中に流出すると
いう問題があった。この雑菌流出の問題は、多孔質中空
糸膜等の膜状濾過体を用いることにより解決でき、膜状
濾過体を単独で用いた、或いは活性炭と併用した浄水器
も知られている。

【０００３】また、活性炭、膜状濾過体に加えて、イオ
ン交換樹脂を組み合わせた浄水器も実開平３−７９８９
号公報で提案され、イオン交換樹脂を浄水器の濾過体と
して用いるときには、配水管等から原水中に溶出した鉛
等の重金属化合物を除去し、より安全性の高い浄水を得
ることができる。

【０００４】しかしながら、通常のイオン交換樹脂を浄
水器の濾過体として用い、溶存する重金属化合物を十分
に除去しようとすると、低流速でしか通水することがで
きず、高吐水量の浄水器を得ることができないという不
都合があった。すなわち、通常のイオン交換樹脂では、
例えばＳＶ１００（ｈ^-1）前後の流速で、溶出した重金
属化合物を十分に除去した浄水を得ようとすると、大量
のイオン交換樹脂が必要になり、浄水器が大型化すると
いう不都合があった。

【０００５】

【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、高い
流速、すなわち高流量で通水しても原水中に溶存する人
体に有害な重金属化合物を十分に除去し、安全でおいし
い水を得、かつ浄水器の小型化が可能な浄水器用濾過体
を提供することにある。

【０００６】

【課題を解決するための手段】本発明は、スチレンとジ
ビニルベンゼンとの共重合体を母体樹脂とし、ジビニル
ベンゼン含有量が２〜８ｗｔ％、平均粒径が１００〜３
５０μｍ、総交換容量が０．８ｍｇ当量／ｍｌ・湿潤樹
脂以上であるイオン型がカルシウム塩型の強酸性陽イオ
ン交換樹脂からなることを特徴とする浄水器用濾過体に
ある。

【０００７】本発明における強酸性陽イオン交換樹脂
は、スチレンとジビニルベンゼンとの共重合体を母体樹
脂とするものであり、ジビニルベンゼンは、母体樹脂の
幹ポリマーであるポリスチレンの架橋剤であり、ジビニ
ルベンゼンの含有量が多い程母体の樹脂の架橋密度が高
くなる。

【０００８】本発明においては、ジビニルベンゼン含有
量が２〜８ｗｔ％であることが樹脂強度、イオン交換反
応のうえから必要である。ジビニルベンゼン含有量が２
ｗｔ％未満では、架橋密度が低いため、強酸性陽イオン
交換樹脂の樹脂強度が低く、圧力が負荷されたときに、
潰れや壊れを生じ易く、また、ジビニルベンゼン含有量
が８ｗｔ％を超えると、樹脂強度が高くなるが、架橋密
度が高くなり過ぎてイオン交換反応が比較的遅くなり、
有効に機能するイオン交換基が樹脂粒子の見かけ上の表
面のみに限定されてしまい、実質的な交換容量を著しく
減ずる。

【０００９】また、本発明における強酸性陽イオン交換
樹脂は、その平均粒径が、１００〜３５０μｍであるこ
とが浄水器の濾過体として用いるうえで必要である。平
均粒径が１００μｍ未満では、イオン交換樹脂としての
表面積が増大するものの、取扱いが困難となるばかりで
なく、通水時の圧力損失が大きくなり高水圧を必要と
し、また、平均粒径が３５０μｍを超えると、表面積が
減少し、交換容量が不十分となる。

【００１０】更に、本発明における強酸性陽イオン交換
樹脂は、その総交換容量が、０．８ｍｇ当量／ｍｌ・湿
潤樹脂以上であることが必要である。総交換容量が０．
８ｍｇ当量／ｍｌ・湿潤樹脂未満であると、通水時の交
換容量が不足し、溶存重金属化合物の満足すべき除去性
能を得ることができない。

【００１１】本発明における強酸性陽イオン交換樹脂
は、水道水等の原水の配水管として用いられている鉛管
等から原水中に溶出する、或いは原水中に元より存在す
る重金属イオンの殆どが中性塩として存在することか
ら、中性塩を吸着する強酸性陽イオン交換基を有するこ
とにより、重金属イオンの中性塩を有効に除去するもの
である。

【００１２】強酸性陽イオン交換樹脂は、そのイオン型
が一般にナトリウム塩型として市販されているが、ナト
リウム塩型は、イオン交換により反対にナトリウムイオ
ンが放出され、ナトリウムイオンを含む浄水を飲用に供
すると、飲用者の血圧の上昇を招く等の問題発生の危険
性があり好ましくない。また、イオン型が酸型では、浄
水のｐＨが４以下となり水質基準から外れ、飲用水用と
して好ましくなく、また水のおいしさに影響する原水中
のミネラル分を減少させる。

【００１３】本発明において、用いられる強酸性陽イオ
ン交換樹脂は、そのイオン型がカルシウム塩型であるこ
とが好ましく、原水中のミネラル分を殆ど減少させるこ
となくおいしい水を得ることができ、また、イオン交換
により放出されたカルシウムイオンが人体に補充される
ことから健康面でも好ましい浄水を得ることができる。

【００１４】

【実施例】以下、本発明を実施例により具体的に説明す
る。

【００１５】（実施例）ジビニルベンゼン含有量６ｗｔ
％、平均粒径が２５０μｍ、総交換容量が１．７ｍｇ当
量／ｍｌ・湿潤樹脂（４．４ｍｇ当量／ｇ・乾燥樹脂）
のスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体を母体樹脂
とする強酸性陽イオン交換樹脂（ロームアンドハース社
製アンバーライトＣＧ−６０００）を、内径２５ｍｍ、
長さ３５ｍｍの円筒形容器（内容積１７．２ｍｌ）に充
填し、３モル／Ｌの塩化カルシウム水溶液を総交換容量
の３倍当量通液してイオン型をカルシウム塩型とした。

【００１６】次いで、比抵抗１ＭΩ・ｃｍのイオン交換
水で十分に洗浄し、その後同様のイオン交換水に塩化鉛
を１５０ｐｐｂの鉛濃度に溶解した水溶液（ｐＨ６．
５）を、円筒形容器に充填のカルシウム塩型とした強酸
性陽イオン交換樹脂を濾過体としてＳＶ１０００
（ｈ^-1）の流速で通水した。前記水溶液を５０Ｌ通水し
た時点での総濾過水の鉛濃度を測定したが、鉛濃度は検
出限界以下で、鉛は検出できなかった。

【００１７】（比較例）ジビニルベンゼン含有量８ｗｔ
％、平均粒径が５５０μｍ、総交換容量が２．１ｍｇ当
量／ｍｌ・湿潤樹脂（４．４ｍｇ当量／ｇ・乾燥樹脂）
のスチレンとジビニルベンゼンとの共重合体を母体樹脂
とする強酸性陽イオン交換樹脂（バイエル社製レバチッ
トＳ１００）を用いた以外は、実施例と同様にして、イ
オン型をカルシウム塩型とし、イオン交換水で洗浄し、
１５０ｐｐｂの鉛濃度の水溶液を通水して、５０Ｌ通水
した時点での総濾過水の鉛濃度を測定したところ、鉛濃
度は５０ｐｐｂであった。

【００１８】

【発明の効果】本発明の浄水器用濾過体は、特定の強酸
性陽イオン交換樹脂を用いたことにより、高い流速で通
水しても原水中に溶存する人体に有害な重金属化合物を
十分に除去し得るものであり、安全でおいしい水を得る
ことが可能で、また、その高い除去性能から浄水器の小
型化を可能とするものである。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 小泓 正直 愛知県名古屋市東区砂田橋四丁目１番60 号 三菱レイヨン株式会社商品開発研究 所内 (72)発明者 種池 昌彦 東京都中央区京橋二丁目３番19号 三菱 レイヨン株式会社内 (56)参考文献 特開 昭62−250987（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C02F 1/42 B01J 39/00 - 49/02

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 スチレンとジビニルベンゼンとの共重合
   体を母体樹脂とし、ジビニルベンゼン含有量が２〜８ｗ
   ｔ％、平均粒径が１００〜３５０μｍ、総交換容量が
   ０．８ｍｇ当量／ｍｌ・湿潤樹脂以上であるイオン型が
   カルシウム塩型の強酸性陽イオン交換樹脂からなること
   を特徴とする浄水器用濾過体。