JP3338311B2 - 生分解性発泡材の製造方法 - Google Patents

生分解性発泡材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、従来のように微生
物によって容易に分解されない合成樹脂からなる発泡材
を代替でき、微生物によって容易に分解されるという特
性を有する樹脂(以下、「生分解性樹脂」という。)か
らなる発泡材の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、ポリスチレン、ポリエチレン
等の合成樹脂からなる発泡材は、軽量であることや衝撃
を緩衝する特性を有するため、例えば、ガラス等の壊れ
やすい材質からなる製品の保護ケース、運搬物の梱包
材、飲食用容器等に使用されている。また、空気を内部
に多量に含むことから、この特徴を活かして断熱材や防
音材等の用途にも使用されている。
【0003】しかしながら、使用後に廃棄される発泡材
の量が膨大であるため、種々の問題が生じている。即
ち、これらの発泡材を焼却すると、発熱量が大きいため
に焼却炉を痛めたり、発生した大量の有毒ガスをそのま
ま大気に放出すれば、大気汚染を惹起することとなる。
また、焼却処理を行わず、そのまま放置すれば、これら
の発泡材は、微生物によって分解され難いため大量のゴ
ミの山となり、生活環境を悪化させる。
【0004】このようなことから、最近において、微生
物によって容易に分解される生分解性樹脂からなる発泡
材が注目され、その実用化研究が行われるようになって
きた。例えば、特開平7−33898号公報には、水等
の発泡剤(膨張剤)を加えた生分解性を有する樹脂を射
出成形機によって溶融混練し、成形型に注入する際に、
該発泡剤(膨張剤)を一気に膨張させ、これによって発
泡材を製造する方法が提案されている。
【0005】しかしながら、このような成形型を使用す
る方法では、発泡材の外形形状が成形型によって規制さ
れてしまうため、一方では、均一で微細な発泡セルを有
する発泡材を製造することはできるものの、他方では、
気泡の成長が抑制されるため、高発泡倍率を有する発泡
材を製造することは、困難であった。
【0006】このような欠点を克服するため、生分解性
発泡材を大気系に対して実質的に密閉状態にある成形金
型中で製造するのではなく、大気開放系で実施すること
が試みられている。しかしながら、このような方法で
は、成形型へ注入した生分解性樹脂を所定の形状に賦型
するために、成形型から吐出された生分解性樹脂を水冷
あるいは空冷して取り出すという冷却工程を必須とす
る。
【0007】もし、この冷却工程において、加熱された
生分解性樹脂の冷却が不十分となると、該生分解性樹脂
が固化するまでに気泡セルの拡大成長が引き続き生じる
こととなる。このようにして、十分に制御されない気泡
セルが拡大成長を続けると、その結果として、拡大した
気泡セルが破れたり、あるいは、隣接する気泡セル同士
が互いに結合・合体して、発泡材の表層を突き破るとい
う現象を惹起する。
【0008】そして、一旦、このような現象が生じてし
まうと、発泡材から発泡剤が抜けた跡が残り、発泡材表
面を粗悪なものにしてしまう。このような理由から、従
来法に於いては、どうしても高発泡倍率であって、か
つ、表面が平滑である発泡材を得ることができない、と
いう問題がある。
【0009】しかも、成形型から吐出された生分解性樹
脂の冷却を十分に制御できなければ、成形品の外形寸法
にも、ばらつきが生じるため、成型品の品質保証ができ
ないという問題も有している。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上述のよう
な問題に鑑み、従来の発泡材よりも高倍率の発泡を可能
としつつ、その表面は、平滑である品質の優れた発泡材
を製造する方法を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】ここに、本発明によれ
ば、生分解性樹脂と発泡剤及び/又は発泡助剤とを溶融
混練し、その後、溶融混練された生分解性樹脂を定量供
給しながら、成形型へ注入し、該成形型によって生分解
性樹脂を所定形状に賦型しつつ、該成形型から低圧状態
で吐出させることにより、該生分解性樹脂を発泡させて
発泡材を製造する方法において、溶融混練された該生分
解性樹脂が定量供給される供給口から成形型の注入口に
達するまでの途中の流路へ、成形型内の生分解性樹脂温
度以下であって、かつ成形型での吐出圧力よりも低圧下
で蒸発する液体を注入し、該生分解性樹脂と流路壁との
間に液膜を形成させることを特徴とする生分解性発泡材
の製造方法が提供される。
【0012】ここで、本発明における前記の生分解性樹
脂としては、例えば、ポリヒドロキシ酪酸及びその誘導
体、アセテート、セルロース、セルロースとキトサンの
混合体、プルラン等を使用することができる。
【0013】また、該混練機の樹脂吐出口から成形型注
入口までの間に注入する液体としては、例えば、水、ペ
ンタン、ヘキサン、塩化メチル、塩化エチル等を使用す
ることもできる。即ち、ここで何よりも重要なことは、
該液体に要求される性質として、成形型から解放され
て、低圧状態になったときに、急激に蒸発(気化)して
生分解性樹脂から気化熱を急速に奪うことにあり、これ
に合致するものであれば、前記のものに限定されること
はない。しかしながら、発泡材中に残留しても、人体へ
の悪影響や環境汚染の心配がなく、しかも、安価でかつ
大量に得ることができることを勘案すると、水を使用す
ることが特に好ましい。
【0014】また、発泡剤と溶融混練された該生分解性
樹脂が定量供給される供給口から成形型への注入口に達
するまでの途中の流路へ、該流路の内壁面を囲繞するよ
うに、発泡剤の含有が極めて少量乃至は実質的に含まな
い低発泡倍率の新たな生分解性樹脂を圧入することによ
っても本発明の目的を達成できる。何故ならば、上記の
低発泡倍率の生分解樹脂が高高発泡倍率の生分解性樹脂
の周囲を囲繞するため、成形型からこれらの樹脂が吐出
されたときに、低発泡倍率の生分解性樹脂が高発泡倍率
の生分解性樹脂の周りに薄皮として形成されるからであ
る。これによって、得られる発泡材は、表面が平滑で外
観が優れたものが得られるのである。
【0015】なお、生分解樹脂中に含有させる発泡剤
(膨張剤)及び/又は発泡助剤としては、水、ペンタ
ン、ヘキサン、塩化メチル、塩化エチル等の温度あるい
は圧力の変化によって体積膨張する物理的な膨張剤、或
いは、重炭酸ナトリウム、アゾジカルボンアミド等の化
学的な作用によって発泡する発泡剤及び/又は発泡助剤
を使用することができる。
【0016】更には、分散性向上剤として、タルク粉末
等を使用することで、該タルク粉末等の周りに前記の発
泡剤を付着させ、生分解性樹脂中への発泡剤の分散性を
向上させることも好ましい。
【0017】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て図面を参照しながら詳細に説明する。先ず、図1は、
生分解性発泡材を製造するための装置を簡略化して例示
したものであって、その一部に断面を施した側面図であ
る。該図において、1は混練機であって、該混練機
(1)は、少なくとも、バレル(2)、生分解性樹脂供
給用ホッパー(3)、スクリュー(4)、該スクリュー
(4)の回転駆動装置(5)とから構成されている。な
お、混練機(1)としては、例えば、一軸又は二軸の押
出機等の生分解性樹脂と発泡剤(発泡助剤)とを均一に
混合することができるものであれば、好適に使用するこ
とができる。
【0018】更に、該図において、6は成形型、7は定
量供給ポンプ(生分解性樹脂の定量フィード用)、8は
液体注入部材、9は定量供給ポンプ、10は液体供給配
管、11は液体供給源をそれぞれ示す。ここで、生分解
性樹脂の定量フィード用に使用する定量供給ポンプ
(7)としては、その定量性能を考慮するとギヤポンプ
を使用することが好ましいが、混練機(1)の定量供給
性能が厳しく要求されない場合には、他の定量ポンプを
用いることができるし、極端な場合においては省略する
こともできる。しかしながら、混練機(1)から生分解
性樹脂を吐出するに当たって、吐出圧力の変動が生じる
のが一般的であり、このような事態が生じると、定量供
給性能が低下するため、定量供給性能の良いギヤポンプ
(7)を介して、成形型(6)へ生分解性樹脂を供給す
ることが好ましい。
【0019】次に、図2は、液体注入部材(8)を示し
た図であって、前述のように図1におけるA−A断面図
である。該図において、8aは、液体注入ノズルを、ま
た、8bは、混練機(1)の樹脂吐出口から成形型注入
口に達するまでの途中の流路における流路壁をそれぞれ
示している。ここで、該液体注入ノズル(8a)は、液
体供給源(11)から定量供給ポンプ(9)を介して、
液体供給配管(10)より送液された液体を生分解性樹
脂と前記の流路壁(8b)との間へ供給する役割を果た
している。
【0020】なお、該液体注入ノズル(8a)は、流路
内を流れる生分解性樹脂と流路壁(8b)との間に液膜
を形成させるという重要な役割を持っている。このた
め、均一な液膜を形成させるために、複数個のノズル
(8a)を生分解性樹脂の流れ方向に沿って多段に設け
たり、流路断面を囲繞する周面上に等ピッチ間隔で設け
ても良いことは、いうまでもない。また、その形状は、
円形孔、楕円孔、スリット孔等の任意の形状を適宜選択
使用することができる。
【0021】最後に、図3は、生分解性樹脂を成形型内
での圧力から解放し、低圧状態で吐出させた状態を説明
するための、図1におけるB部の拡大断面図である。該
図において、図1は、生分解性発泡材を製造するための
装置を簡略に例示したものであって、一部に断面を施し
た概略正面図である。
【0022】なお、該図において、Lは、前記の流路壁
(8b)と生分解性樹脂(R)との間に形成された液膜
を示す。また、R1は、成形型(6)から吐出された生
分解性樹脂の表層部を、R2は内装部をそれぞれ示し、
そして、Cは生分解性樹脂内で発生した気泡セルを示
す。
【0023】ここで、流路壁(8b)と生分解性樹脂
(R)との間に形成された液膜(L)は、成形型(6)
から吐出圧力が解放され低圧状態になった時点で急激に
蒸発し、気化熱として生分解性樹脂(R)から熱を奪
う。これによって、生分解性樹脂の表層部(R1)は、
急冷され、表層部(R1)で気泡セル(C)が成長拡大
するのを妨げる。したがって、気泡セルの成長によって
表層部(R1)の表面が破れ、発泡剤が流出するのが抑
制され、これによって、表面が円滑であって、しかも高
発泡倍率の発泡材を得ることができる。
【0024】更に、本発明では、流路の内壁面(8b)
と生分解性樹脂(R)との間に形成する液膜(L)とし
て、新たに発泡剤の含有が極めて少量、乃至は実質的に
含まない低発泡倍率の生分解性樹脂を圧入することによ
っても、表面外観(表面平滑性)に優れ、しかも高発泡
倍率の発泡材を製造することができる。何故ならば、こ
のような樹脂層が高発泡倍率の生分解樹脂の表面を覆
い、これによって未発泡或いは低発泡倍率の層が、高発
泡倍率の生分解樹脂を囲繞するように形成されるからで
ある。
【0025】ただし、本発明でいう「発泡倍率」とは、
発泡前の発泡材の原料チップの比重を発泡後の発泡材の
比重で除した値をいうものとする。
【0026】[実施例1]以下、本発明を実施例により
詳細に説明するが、本発明は、この実施例に限定される
ことがないのはいうまでもない。
【0027】本実施例では、混練機(1)として、図1
に示した装置、即ち、スクリュー径がφ30mmでL/
Dが30の一軸押出機を使用し、ホッパー(3)から、
ジアセテートチップを混練機(1)のバレル(2)内へ
投入した。このとき、該ジアセテートチップと共に、ポ
リエチレングリコール、タルク、及び水を、ジアセテー
ト100重量%に対して、それぞれポリエチレングリコ
ール30重量%、タルク6重量%、水10重量%に調製
して、同時に投入した。
【0028】投入したアセテートチップは、先端にダル
メージが付設されたスクリュー(4)を使用して、バレ
ル(2)を加熱するヒーター(図示せず)から供給され
る熱と、生分解性樹脂とスクリュー(4)及びバレル
(2)との間に発生した剪断熱とによって、樹脂温度が
ほぼ165℃になる迄加熱しながら均一に混練して、混
練機(1)から定量供給ポンプ(7)へ供給した。な
お、該定量供給ポンプ(7)としては、本実施例では、
ギヤポンプを使用し、前記の一軸押出機から供給された
生分解性樹脂を245g/minで成形型(6)へ液体
注入部材(8)の注入ノズル(8a)から供給した。
【0029】なお、該液体注入部材(8)は、図1に示
したように、ギヤポンプ(7)の生分解性樹脂の定量供
給口と成形型(6)の注入口との間に設けられている。
【0030】ここで、本実施例では、該液体部材(8)
として、図2に示すように6個の注入ノズル(8a)を
穿設したものを使用した。また、成形型(6)から吐出
されたとき急速に気化する液体として水を使用して、液
体供給源(11)から定量ポンプ(9)及び配管(1
0)を介して、注入ノズル(8a)から温度165℃、
圧力65Kg/cm2で、注入量10g/minで加圧注入
した。
【0031】このようにして、生分解性樹脂と流路(8
b)との間に形成させた水膜は、165℃に加熱された
成形型(6)の吐出孔(孔径φ2.5mm、ランド長1
0mm)から60Kg/cm2の吐出圧力で吐出させ、棒状
の発泡材を得た。このとき得られた発泡材の比重をミラ
ージュ社製の電子比重計(型式:ED-120T)を使用して
測定し、原料であるジアセテート樹脂チップの比重で除
し、発泡倍率を算出した。その結果、本実施例で得られ
た発泡材は、表面が平滑であり、発泡倍率も、35と極
めて高発泡倍率であった。
【0032】これに対して、水を注入せず、生分解性樹
脂を囲繞する水膜を形成させなかった以外は、上記の実
施例と同様の装置と方法を使用した従来の方法において
は、気泡セルが破れて生じた粗い表面を有する発泡材が
得られ、しかも、その発泡倍率も16と低いものであっ
て、明らかに本発明の実施例と比較して劣っていた。
【0033】[実施例2]実施例1で使用した装置を使
用して、実施例1の水に代えて、生分解性樹脂であるジ
アセテートを高発泡倍率を有する発泡材となる生分解性
樹脂を囲繞するように新たに注入した。なお、このとき
の注入温度と注入圧力は、それぞれ165℃と65Kg
/cm2であり、注入量は、5g/分であった。そし
て、上記のように調製した生分解性発泡樹脂を165℃
に加熱された成形型(6)の吐出孔(孔径φ2.5m
m)から58Kg/cm2の吐出圧力で吐出させ、棒状
の発泡材を得た。得られた発泡材は、表面が新たに注入
された生分解樹脂に由来する未発泡層或いは低発泡倍率
層で覆われ、このため、その表面は平滑であって、発泡
材自体の気泡発泡倍率は、33と極めて高発泡倍率であ
った。
【0034】
【発明の効果】本発明によれば、成形型から吐出された
生分解性樹脂の表面に形成された液膜が急速に気化する
ため、生分解性樹脂から気化熱を奪い、その表面を急冷
し、発泡材の表層部での気泡セルの成長を極めて効果的
に抑制することができる。このため、表層部で成長・合
体した気泡セルの破裂によって、気化した発泡剤が発泡
材の表面から抜けることがなくなるため、発泡剤の表面
は、滑らかな状態を呈し、しかも、高発泡倍率であっ
て、均一な発泡セルを有する生分解性発泡材を得ること
ができるという極めて顕著な効果を得ることができる。
【0035】また、新たに低発泡倍率の生分解樹脂を高
発泡倍率の生分解性樹脂を囲繞するように注入する場合
においては、低発泡倍率の生分解性樹脂によって高発泡
倍率の生分解性樹脂の表面が覆われるため、低発泡倍率
の生分解樹脂に生じる気泡セルが破れる前に気泡セルの
膨張が止まるため、表面が滑らかでありながら、発泡材
全体としては、高発泡倍率となる、という極めて顕著な
効果を奏するのである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の方法を実施するための装置を例示した
一部に断面を有する概略側面図である。
【図2】液体注入部材の構造を例示した図1におけるA
−A断面図である。
【図3】生分解性樹脂の成形型からの吐出状態を説明す
るための、図1におけるB部の拡大断面図である。
【符号の説明】
1 混練機 2 バレル 3 ホッパー 4 スクリュー 6 成形型 7 定量供給ポンプ 8 液体注入部材 9 定量供給ポンプ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−194922(JP,A) 特開 平6−287338(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 47/00 - 47/96

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 生分解性樹脂と発泡剤及び/又は発泡助
    剤とを溶融混練し、その後、溶融混練された生分解性樹
    脂を定量供給しながら成形型へ注入し、該成形型によっ
    て生分解性樹脂を所定形状に賦型しつつ、該成形型から
    低圧状態で吐出させることにより、該生分解性樹脂を発
    泡させて発泡材を製造する方法において、 溶融混練された該生分解性樹脂が定量供給される供給口
    から成形型への注入口に達するまでの途中の流路へ、成
    形型内の生分解性樹脂温度以下であって、かつ成形型で
    の吐出圧力よりも低圧下で蒸発する液体を注入し、該生
    分解性樹脂と流路壁との間に液膜を形成させることを特
    徴とする生分解性発泡材の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記の注入液体が水である請求項1記載
    の生分解性発泡材の製造方法。
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