JP3336842B2 - 耐震鋼管の製造方法 - Google Patents

耐震鋼管の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ガスパイプライ
ン、水道配管、鋼管柱、橋脚などに使用される地震時の
耐局部座屈性に優れた耐震鋼管の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】UOE鋼管、スパイラル鋼管、継目無鋼
管、電縫鋼管、プレスベンド鋼管などの炭素鋼鋼管ある
いは低合金鋼鋼管は、大量にかつ安定して製造できるた
め、その優れた経済性や溶接施工性とあいまって、ガス
パイプラインや水道配管など流体の輸送用配管あるいは
建築・土木用の柱として広く用いられている。
【0003】しかしながら、大地震が発生した場合、こ
れら鋼管の長手方向には引張および圧縮の大きな力が繰
り返し加わり、外径/管厚比がある程度大きな鋼管で
は、局部座屈を起こし、場合によっては円周方向の亀裂
の発生や破断に至ることがある。
【0004】これまで建築用の鋼管としては、例えば特
開平3−173719号、特開平5−65535号、特
開平5−117746号、特開平5−117747号、
特開平5−156357号、特開平6−49540号、
特開平6−49541号、特開平6−128641号、
特開平6−264143号、特開平6−264144号
の各公報に開示されているように、耐震性能として降伏
応力と引張強さの比である降伏比を小さくしたものが提
案されているが、これらはいずれも柱の曲げ応力に対す
る塑性変形吸収能に関するもので、圧縮の軸力に対する
局部座屈と局部座屈発生後の引張による脆性亀裂の発生
を防ぐための検討はこれまで行われていない。
【0005】また、ガスなどの流体輸送用ラインパイプ
では、延性破壊や脆性破壊など円周方向に力が作用する
内圧に対する抵抗力は検討されてきたが、軸方向の外力
に対しては敷設時の曲げ変形以外はほとんど考慮されて
いない。しかも、このような性能を有する鋼管が製造可
能な方法も未だ存在しない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明はかかる事情に
鑑みてなされたものであって、大地震の際に軸方向に作
用する引張・圧縮応力に対して、大径薄肉でも局部座屈
を起こしにくく、脆性的な破断が発生し難く、ガスパイ
プライン、水道配管、ビルの柱、高速道路の橋脚などに
好適な耐震鋼管の製造方法を提供することを目的とす
る。
【0007】
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明は、重量%で、
C:0.05〜0.25%、Mn:0.5〜2.0%を
含み、かつCu:0.05〜0.50%、Ni:0.0
5〜0.50%、Cr:0.05〜0.50%、Mo:
0.05〜0.50%、Nb:0.005〜0.10
%、V:0.005〜0.10%、Ti:0.005〜
0.10%の1種または2種以上を含有し、残部Fe及
び不可避的不純物からなる鋼を熱間圧延し、その鋼板を
冷間成形して鋼管にした後、その鋼の成分で定まるAc
1 からAc3温度域でオーステナイトのモル分率が20
〜80%となる温度域に加熱し、その温度から2℃/s
ec以上の冷却速度で冷却することを特徴とする耐震鋼
管の製造方法を提供する。
【0009】本発明者らは、鋼管の軸方向に作用する圧
縮力に対する耐座屈性を評価するために、材質と形状が
種々異なる鋼管について、図1に示す試験機と試験体を
用いて実管圧縮試験ならびに各種材質調査試験を行い、
鋼管の材質的な特性と局部座屈発生挙動との相関を調査
した。その結果、局部座屈の発生有無は、鋼管の軸方向
の引張特性と以下のような相関があることを見出した。
すなわち、試験片長手方向を鋼管の軸方向に一致させて
採取した引張試験片を用いて引張試験を行い、得られた
公称応力/公称歪の勾配が正となる鋼管は、勾配が0ま
たは負となる鋼管に比較して局部座屈を起こす限界の外
径/管厚比が著しく大きく、局部座屈を起こしにくい。
【0010】次に、圧縮応力によって塑性変形した後、
引張応力を受けた際の脆性的な亀裂の発生や、破断の有
無と鋼管の性質の相関を調査した。その結果、圧縮応力
により塑性変形した鋼管においても、試験片長手方向を
鋼管の軸方向に一致させて採取した試験片の引張試験に
おいて、一様伸びが5%以上であれば脆性的な亀裂や破
断は発生しないことを見出した。さらに、引張試験にお
ける降伏強さの引張強さに対する割合、降伏比の小さい
ものほど、破断に対する抵抗の大きいことも見出した。
【0011】このような結果に基づいて、上述のような
特徴を有する公称応力−公称歪曲線と鋼管の製造方法と
の関係について調査した結果、鋼管成形後に特定の熱処
理を行うことにより、上述したような公称応力−公称歪
特性が得られることを見出した。すなわち、鋼管をAc
1 からAc3 温度域でオーステナイトのモル分率が20
〜80%となる温度域に加熱し冷却することにより、フ
ェライトとベイナイトあるいはフェライトとマルテンサ
イトの二相組織とすることにより、鋼管長手方向に採取
した引張試験において、上述したように公称応力−公称
歪曲線の勾配が正でかつ一様伸びが5%以上となり、さ
らに80%以下の降伏比が得られることを見出した。ま
た、このような熱処理を施す場合には、圧延条件の影響
は小さい。上記構成を有する本発明は、このような知見
に基づいて完成されたものである。
【0012】
【発明の実施の形態】以下、本発明について詳細に説明
する。本発明に係る耐震鋼管の製造方法は、重量%で、
C:0.05〜0.25%、Mn:0.5〜2.0%を
含有する鋼を熱間圧延を施し、その鋼板を冷間成形し鋼
管にした後、その鋼の成分で定まるAc1 からAc3
度域でオーステナイトのモル分率が20〜80%となる
温度域に加熱し、その温度から2℃/sec以上の冷却
速度で冷却するものである。また、選択成分としてC
u:0.05〜0.50%、Ni:0.05〜0.50
%、Cr:0.05〜0.50%、Mo:0.05〜
0.5%、Nb:0.005〜0.10%、V:0.0
05〜0.10%、Ti:0.005〜0.10%の1
種または2種以上を添加してもよい。
【0013】まず、これら成分元素の限定理由を説明す
る。 C:0.05〜0.25% この範囲外の炭素量の鋼は、溶接した場合の溶接割れの
可能性が増大し、鋼管成形後、溶接できなくなる。した
がって、C量を0.05〜0.25%の範囲とする。
【0014】Mn:0.5〜2.0% Mnは構造用鋼として充分な強度と靭性を得るために有
効な元素であるが、0.5%未満ではその効果が小さ
く、また2.0%を超えると母材と溶接部の靭性の劣化
および溶接性の劣化を招く。したがって、Mn量を0.
5〜2.0%の範囲とする。
【0015】Cu:0.05〜0.50% Ni:0.05〜0.50% Cr:0.05〜0.50% Mo:0.05〜0.50% Cu,Ni,Cr,Moは強度の上昇に有効な元素であ
るが、それぞれ0.05%未満ではその効果が有効に発
揮されず、0.50%を超えると鋼板の母材溶接部の靭
性や溶接性を劣化させる。したがって、これらの量をそ
れぞれ0.05〜0.50%の範囲とする。
【0016】Nb:0.005〜0.10% Nbは、鋼板の靭性と強度の向上に有効な元素である
が、その量が0.005%未満ではその効果を有効に発
揮することができず、0.10%を超えると溶接部の靭
性を劣化させる。したがって、Nb量を0.005〜
0.10%の範囲とする。
【0017】V:0.005〜0.10% Vは、鋼板の強度の上昇に有効な元素であるが、その量
が0.005%未満ではその効果を有効に発揮させるこ
とができず、0.10%を超えると溶接部の靭性を劣化
させる。したがって、V量を0.005〜0.10%の
範囲とする。
【0018】Ti:0.005〜0.10% Tiは、鋼板の靭性の向上と鋳造時のスラブ損傷防止に
有効な元素であるが、その量が0.005%未満ではそ
の効果を有効に発揮させることができず、0.10%を
超えると溶接部の靭性を劣化させる。したがって、Ti
量を0.005〜0.10%の範囲とする。
【0019】次に、製造条件について説明する。まず、
上述の組成を有する鋼を熱間圧延し、次いでその鋼板を
冷間成形して鋼管にするが、本発明ではこれらの条件は
特に限定されず通常の条件で行えばよい。また、鋼管の
形成方法も冷間であるかぎり特に限定されるものではな
い。
【0020】鋼管に成形した後、その鋼の成分で定まる
Ac1 からAc3 温度域でオーステナイトのモル分率が
20〜80%となる温度域に加熱する。加熱温度がオー
ステナイトのモル分率で20%未満となる領域では母材
中に島状マルテンサイトが生成し充分な靭性が得られな
い。また、オーステナイトのモル分率で80%を超える
と、フェライトとベイナイトまたはフェライトとマルテ
ンサイトの二相組織が得られず、80%以下の降伏比を
得ることができない。
【0021】なお、オーステナイト分率は、実際に加熱
試験を行って求めてもよいし、熱力学的データを使った
計算でもよい。加熱後、その温度から2℃/sec以上
の冷却速度で冷却する。これ以下の冷却速度では80%
以下の降伏比が得られず、また公称応力/公称歪の勾配
が正とならない場合がある。冷却速度の上限は特に規定
する必要はない。
【0022】以上のようにして製造された鋼管を用いる
ことにより、鋼管の軸方向に作用する応力による局部座
屈の発生およびそれに起因する脆性的な亀裂や破断の発
生を防止することができる。
【0023】
【実施例】以下、本発明の具体的な実施例について説明
する。表1に示した化学組成を有する鋼を溶解し、熱間
で圧延した後、種々の方法で鋼管とした。それらを表2
に示した条件で熱処理した。その場合の応力−歪曲線の
形状、機械的性およびその評価を併せて表2に示す。
【0024】
【表1】
【0025】
【表2】
【0026】鋼管B−1は、熱処理時の冷却速度が本発
明の範囲を満たさず、その結果、応力−歪曲線の一部で
その勾配が0となった。C−2、I−1はオーステナイ
ト分率が大きく充分な一様伸びが得られてない。G−1
は充分なオーステナイト分率が得られず、低い靭性値を
示した。また、本発明の組成を満足しない鋼管B1、C
1、D1、E1、F1は、本発明の範囲の熱処理を行っ
ても低い靭性値となった。これに対して、本発明の組成
範囲を満たし、かつ本発明の熱処理を行った鋼管は、応
力−歪曲線が所望の形状を示し、かつ充分な機械的性能
を示した。
【0027】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
大地震の際に軸方向に作用する引張・圧縮応力に対し
て、大径薄肉でも局部座屈を起こしにくく、脆性的な破
断が発生し難い耐震鋼管を製造することができ、大地震
が発生した際に、ガスパイプラインや水道配管の破損と
内部流体の流出、あるいは高速道路の橋脚柱の破断など
の災害を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実管圧縮試験に用いた試験機および試験体を説
明するための図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平6−220533(JP,A) 特開 平7−278732(JP,A) 特開 平5−86419(JP,A) 特開 平9−176734(JP,A) 特公 平6−53912(JP,B2) 鈴木ら,溶融亜鉛めっき鋼管の圧縮変 形性状に関する研究,日本建築学会構造 系論文報告集,日本,第420号,P.51 −61 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/10,9/08 C22C 38/00 - 38/60 B21C 23/08 B21C 37/06 - 37/30

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で、C:0.05〜0.25%、
    Mn:0.5〜2.0%を含み、かつCu:0.05〜
    0.50%、Ni:0.05〜0.50%、Cr:0.
    05〜0.50%、Mo:0.05〜0.50%、N
    b:0.005〜0.10%、V:0.005〜0.1
    0%、Ti:0.005〜0.10%の1種または2種
    以上を含有し、残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼
    を熱間圧延し、その鋼板を冷間成形して鋼管にした後、
    その鋼の成分で定まるAc1 からAc3 温度域でオース
    テナイトのモル分率が20〜80%となる温度域に加熱
    し、その温度から2℃/sec以上の冷却速度で冷却す
    ることを特徴とする耐震鋼管の製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005280345A (ja) * 2004-03-01 2005-10-13 Jfe Steel Kk 耐震性及び防食性に優れた樹脂被覆鋼管及びその製造方法

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* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
鈴木ら,溶融亜鉛めっき鋼管の圧縮変形性状に関する研究,日本建築学会構造系論文報告集,日本,第420号,P.51−61

Cited By (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005280345A (ja) * 2004-03-01 2005-10-13 Jfe Steel Kk 耐震性及び防食性に優れた樹脂被覆鋼管及びその製造方法
JP4581742B2 (ja) * 2004-03-01 2010-11-17 Jfeスチール株式会社 耐震性及び防食性に優れた樹脂被覆鋼管及びその製造方法

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