JP3334981B2 - 樹脂組成物 - Google Patents

樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【産業上の利用分野】本発明は、YAGレーザーマーキ
ング性に優れた半導体封止樹脂組成物に関する物であ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、プラスチック封止された半導体デ
バイスは、熱硬化性もしくはUV硬化タイプの特殊なイ
ンクでマークされていたが、マーキングやその硬化に時
間がかかり、更にインクの取扱いも容易でないため、最
近はレーザーマークを採用する電子部品メーカーが増加
している。YAG、またはCO2のレーザー光の短時間
照射によるエポキシ樹脂成形品表面への印字は、インク
によるマーキングよりも作業性に優れ、しかも短時間で
終わる方法であるために、電子部品メーカーにとっては
メリットが多い方法である。しかし、従来の封止樹脂組
成物を用いて封止した半導体デバイスの封止成形品表面
にレーザーマーキングした場合、マーキングした部分と
マーキングしていない部分とのコントラストが不鮮明で
あり、しかも印字が黄色であるために、印字の読みとり
が困難である。CO2レーザーマークに関しては、既に
効果的な着色剤が開発され、鮮明な印字が得られる半導
体封止用樹脂組成物が上市されているが、YAGレーザ
ーマークに関しては、YAGレーザーマーク性に効果的
なカーボンブラックが種々研究されている。例えば、特
開平2−127449号公報によると、「カーボン含有
量が99.5重量%以上、水素含有量が0.3重量%以
下であるカーボンブラック」が同目的に効果的であると
されている。しかし、カーボンブラックが揮散した後の
マーキングコントラストが未だ充分でなく、鮮明な印字
は得られておらず、優れたレーザーマーク性を有する半
導体封止用樹脂組成物が要求されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】本発明者は、レーザー
マーキング性のメカニズムの検討を行い、更に封止樹脂
組成物の個々の原料にまで遡り、鋭意検討を行った結
果、平均粒径が50nm以上であるカーボンブラック
と、酸化防止剤を併用することによって、YAGレーザ
ーマークのコントラスト向上に絶大な効果があることを
見いだし本発明に至ったものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、(A)
エポキシ樹脂、(B)硬化剤、(C)無機充填材、
(D)硬化促進剤(E)平均粒径が50nm以上、1
50nm以下であるカーボンブラック及び(F)酸化防
止剤を必須成分とし、全組成物100重量%中に、カー
ボンブラックを0.2〜1.0重量%、酸化防止剤を
0.01〜1.0重量%含む半導体封止用エポキシ樹脂
組成物であり、この硬化物は優れたレーザーマーキング
性を示し、鮮明なマーキングを得ることできる。
【0005】以下に各組成物について説明する。本発明
に用いるエポキシ樹脂は、分子中に2個以上のエポキシ
基を有するものならば特に限定するものではないが、例
えばオルソクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、フエ
ノールノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノール型エ
ポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、トリフェノー
ルメタン型エポキシ樹脂、トリアジン核含有エポキシ樹
脂、ビフェニル型二官能エポキシ化合物及びこれらの変
性樹脂があげられる。樹脂組成物の耐湿性向上のために
は、不純物としてのClイオン、Naイオン等の不純物
イオンが極力少ないことが望ましく、又、硬化性の点か
らエポキシ当量としては150〜300g/eqが望ま
しい。硬化剤は、分子中にフェノール性水酸基を有する
ものならば、特に限定するものではないが、例えばフェ
ノールノボラック樹脂、パラキシリレン変性フェノール
樹脂、トリフェノールメタン樹脂及びそれらの変性樹脂
が挙げられ。硬化性の点から、水酸基当量は80〜25
0g/eqが望ましい。無機充填材として、溶融シリカ
粉末、球状シリカ粉末、結晶シリカ粉末、アルミナ等を
使用することができるが、特に溶融シリカ粉末と球状シ
リカ粉末の混合物が望ましい。また、良好なレーザーマ
ーク性を得るため、樹脂組成物中の無機充填材の配合量
を増やすことが望ましいが、この配合量については流動
性低下による成形性不良が懸念されるために要求特性に
合わせ適宜選択、調整して用いられる。硬化促進剤は、
エポキシ基と水酸基の反応を促進するものであれば良
く、一般に封止樹脂に使用されているのものを利用する
ことができる。例えば、1,8−ジアザビシクロウンデ
セン、トリフェニルホスフィン、ベンジルジメチルアミ
ン、2−メチルイミダゾール等があり、単独でも混合し
て用いてもよい。
【0006】本発明に用いるカーボンブラック及び酸化
防止剤は、樹脂成形品のレーザーマーク性向上の鍵であ
り、重要な技術上のポイントである。先ず、YAGレー
ザーマークのメカニズムを簡単に説明する。YAG(イ
ットリウム、アルミニウム、ガリウム)レーザーの波長
は、1.06μmであり、1.06μmの波長の光の吸
収帯を有する有機化合物は、YAGレーザーの照射を受
けるとレーザーエネルギーが熱に変換し、発熱→燃焼→
蒸発のプロセスを経て表面が焼け飛んだ状態となる。カ
ーボンブラックは1.06μmの吸収帯を有するが、エ
ポキシ樹脂/硬化剤/シリカフィラー/その他には吸収
帯はなく、YAGレーザーの照射によりカーボンブラッ
クのみが燃焼/蒸発し、後にはカーボンブラックの抜け
た樹脂組成物が露出し、露出した面の色が白っぽいため
に、白い印字が得られる。即ち、YAGレーザーのエネ
ルギーを吸収し、速やかに燃焼/蒸発するカーボンブラ
ックの開発が必要である
【0007】本発明における技術上の第一のポイント
は、特殊なカーボンブラックが挙げられる。本発明に用
いられるカーボンブラックは、その平均粒径が50nm
以上である必要がある。粒径が50nm未満だと、マー
キングした部分とマーキングしない部分とのコントラス
トが不充分で、不鮮明なマーキングしか得られない。特
に印字そのものが黒っぽく、カーボンブラックがYAG
レーザーの照射によっても充分に燃焼/蒸発していない
ことが確認された。そこで平均粒径50nm以上のカー
ボンブラックを用いることによって、印字そのものの黒
っぽさはなくなり、マーキングコントラストを大幅に向
上することができた。カーボンブラックの粒径が大きく
なることにより、カーボンブラックが燃焼/蒸発され易
くなったと推測される。
【0008】又、平均粒径が150nmより大きくなる
と、YAGレーザーマーク性は問題ないが、できた成形
品自体の着色度が低く、多少カーボンブラックの含有量
を増量しても灰色っぽい黒の成形品となり、実用上問題
があるので、望ましくは平均粒径150nm以下のカー
ボンブラックを用いることが好ましい。更に、本発明に
用いるカーボンブラックは、全組成物100重量%中
に、0.2〜1.0重量%含むことを必要とする。従来
の小粒径のカーボンブラックの場合、0.15〜0.3
重量%程度で充分黒い成形品が得られたが、本発明に用
いるカーボンブラックでは、やや多めに配合する必要が
ある。カーボンブラックの粒径が大きくなることによ
り、着色力は低下し、成形品の色が本来黒であるところ
が、灰色っぽいとなるからである。0.2重量%以上
配合しないと、レーザーマークのコントラスト自体が低
下する。そして1重量%を越えると、レーザー光の照射
によってもカーボンブラックが充分除去されず、印字が
黒くなり、本発明の効果が低下する。用いるカーボンブ
ラックは、上記の特性を有するものなら特に限定される
ものではないが、樹脂組成物中に均一に分散されるため
には紛体であることが望ましい。又、これら粒子は造粒
されたものであっても容易にほぐれる形状のものであれ
ば特に問題はない。
【0009】更に本発明の第二の技術上のポイントとし
て、酸化防止剤を併用することである。白い印字を得る
ためには、カーボンブラックを除去した時の樹脂組成物
成形品の表面が白色である必要があるが、従来の成形品
は、ポストキュア後にはこの部分が黄色に酸化着色す
る。そのために印字のコントラストを向上させるには、
カーボンブラックのみの改良で対応できるが、反面印字
そのものが黄色になり、白い美しい印字は得られない。
そこで、カーボンブラックを除去した後の樹脂組成物成
形品の色を白くすることが必要である。成形品の色を白
くするためには、チタンホワイト等の白色着色剤を添加
することが考えられる。しかし、チタンホワイト等の白
色着色剤について検討したところ、着色のカーボンブラ
ックを含有しない封止樹脂を用いた成形品の色は成形直
後こそ白いが、ポストキュア後にはチタンホワイトの添
加時と同様に黄色に着色し、また、カーボンブラックを
配合した時の樹脂組成物のYAGレーザーマーク性も良
くなかった。
【0010】これらの問題に対して、鋭意検討の結果、
酸化防止剤を少量配合することにより、カーボンレス時
の成形品の色が白くなり、しかもカーボンブラックを含
有したときの成形品においてもYAGレーザーマーク部
が白くなりコントラストが向上することを見いだした。
半導体封止用樹脂組成物の原料中で、最も酸化劣化し易
い原料はフェノール樹脂である。封止樹脂組成物の硬化
反応後も成形品の表面に僅かに残存している未反応のフ
ェノール樹脂が酸化劣化することにより、成形品表面が
着色すると考えられる。そこで、成形品表面の酸化劣化
を防止するために酸化防止剤を添加すると、成形品表面
の酸化着色が抑えられ、上記のような良好な効果が確認
された。この技術及び前述の大粒径のカーボンブラック
を組み合わせることによって、従来にない優れたYAG
レーザーマーキング性を有する半導体封止用エポキシ樹
脂組成物を見いだした。本発明に用いられる酸化防止剤
は、エポキシ樹脂/フェノール樹脂の酸化劣化を防止す
る化合物であれば、特に限定するものではないが樹脂組
成物に均一分散させるために粉状であることと、更にイ
オン性不純物が少ない構造が望ましい。
【0011】代表的なものとして、2,6−ジ−t−ブ
チル−p−クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニゾール
(BHA)等のフェノール系酸化防止剤、2,2’−メ
チレン−ビス−(−4−メチル−6−t−ブチルフェノ
ール)等のビスフェノール系酸化防止剤、トリフェニル
ホスファイト、10−デシロキシ−9,10,−ジヒド
ロ−9−オキサ−10−ホスファフェナンスレン等のリ
ン系酸化防止剤、ジステアリルチオジプロピオネート等
の硫黄系酸化防止剤等が挙げられる。更に本発明品に用
いられる酸化防止剤は、全組成物100重量%中に、
0.01〜1.0重量%含むことを特徴とする。0.0
1重量%未満では酸化防止の効果が不充分で、レーザー
マークの白色化が充分ではなく、印字が黄色となる。ま
た、1.0重量部より多ければ、耐湿信頼性が低下す
る。
【0012】本発明は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充
填材、硬化促進剤及びカーボンブラックと酸化防止剤を
必須成分とするが、これ以外に必要に応じてシランカッ
プリング剤、三酸化アンチモン、ヘキサブロモベンゼン
等の難燃剤、天然ワックス、合成ワックス等の離型剤及
びシリコーンオイル、ゴム等の低応力添加剤等の種々の
添加剤を適宜配合しても差し支えない。また、本発明の
封止用樹脂組成物を成形材料として製造するには、エポ
キシ樹脂、硬化剤、無機充填材、硬化促進剤、カーボン
ブラック、酸化防止剤、その他の添加剤をミキサー等に
よって充分に均一に混合した後、更に熱ロールまたはニ
ーダー等で溶融混練し、冷却後粉砕して封止材料とする
ことができる。
【0013】実施例 以下本発明を実施例にて具体的に説明する。 実施例1 下記組成物 オルソクレゾールノボラックエポキシ樹脂(軟化点65℃、エポキシ当量20 0) 18重量部 フェノールノボラック樹脂硬化剤(軟化点100℃、水酸基当量100) 9重量部 溶融シリカ粉末 70重量部 トリフェニルホスフィン 0.3重量部 カルナバワックス 0.3重量部 シリコーンオイル 2.4重量部 カーボンブラックA(旭カーボン(株)製#55HS、平均粒径60nm) 0.35重量部 2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾ―ル 0.05重量部 を、ミキサーにて常温混合し、70〜100℃で二軸ロ
ールにて混練し、冷却後粉砕し成形材料とした。得られ
た成形材料をタブレット化し、低圧トランスファー成形
機にて175℃、70kg/mm2、120秒の条件で
成形し、更にポストモールドキュアとして175℃で、
8時間の処理を行い、成形品を得た。得られた成形品に
ついて、以下の条件でYAGレーザーマーク試験、半田
耐湿性試験を行った。
【0014】YAGレーザーマーク条件: レーザーマ
ーカー:NEC製、パルスタイプ 波長 :1.06μm レーザーパワー :2.0kV パルス幅 :120μsec YAGレーザーマーク評価法: 目視により印字のコン
トラストと白さを確認。 半田耐湿性試験 テスト用素子(16pSOP)を85℃/85%RHで
72時間処理後、260℃の半田槽に10秒浸漬後、プ
レッシャークッカー試験(125℃,100%RH)を
行い、回路のオープン不良が発生する時間を示した。評
価結果を表1に示す。 実施例2〜4 表1の処方に従って配合し、実施例1と同様にして成形
材料を得、同様に評価した。評価結果を表1に示す。 比較例1〜6 表2の処方に従って配合し、実施例1と同様にして成形
材料を得、同様に評価した。評価結果を表2に示す。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【発明の効果】本発明に従うと、従来技術では得れらな
かったYAGレーザーマークした印字が白く、更にコン
トラストも明瞭である良好なYAGレーザーマーク性を
有する樹脂組成物が得られる。本樹脂組成物を電気、電
子部品の封止用に用いた場合、YAGレーザーマークに
よる良好な印字が高速で得られるので、工程短縮、経費
の節減に大きな効果がある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−127449(JP,A) 特開 平3−10884(JP,A) 特開 昭63−186724(JP,A) 特開 平4−159358(JP,A) 特開 平6−145474(JP,A) 特開 平4−261461(JP,A) 特開 平1−315424(JP,A) 特開 平5−271481(JP,A) 特開 平6−263967(JP,A) 特開 平6−56970(JP,A) 特開 平6−88011(JP,A) 特開 昭62−192460(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 63/00 - 63/10 C08K 3/04 C08K 5/13 C08K 5/53 - 5/5317 H01L 23/29

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (A)エポキシ樹脂、(B)硬化剤、
    (C)無機充填材、(D)硬化促進剤(E)平均粒径
    が50nm以上、150nm以下であるカーボンブラッ
    及び(F)酸化防止剤を必須成分とし、全組成物10
    0重量%中に、カーボンブラックを0.2〜1.0重量
    %、酸化防止剤を0.01〜1.0重量%含む半導体封
    止用エポキシ樹脂組成物。
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