JP3332405B2 - 永久磁石材料およびそれを用いた樹脂結合磁石 - Google Patents

永久磁石材料およびそれを用いた樹脂結合磁石

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、永久磁石材料およびそ
れを用いた樹脂結合磁石に係り、特に希土類−鉄系の永
久磁石材料およびそれを用いた樹脂結合磁石に関する。
【0002】
【従来の技術】永久磁石材料としては、残留磁化および
保磁力が大きく、かつ磁気的安定性が高いことが必要で
ある。このような条件を満足する材料としては、従来か
ら RCo5 型(RはSe、Ce等の希土類元素を示す。)や R2
(Co,Cu,Fe,M)17型(MはTi、Zr、Hf等)等の希土類−コバ
ルト系永久磁石材料が知られており、電子機器や回転機
器等に用いられている。しかし、これら希土類−コバル
ト系永久磁石材料は、必須元素であるコバルトが高価で
あることに加えて、永久磁石としての特性を示す最大エ
ネルギ―積(BH)max も30MGOe程度においてほぼ限界に達
している。
【0003】一方、近年、新しい合金系の永久磁石材料
として、希土類元素と鉄とを必須成分とし、さらにB 、
S 、C 等やTi、Zr、V 等を添加した希土類−鉄系の金属
間化合物、例えばSm-Fe-Ti系合金等が報告されており、
上記希土類−コバルト系に比べて安価であり、また飽和
磁化や保磁力の優れた永久磁石材料として注目されてい
る。この希土類−鉄系の永久磁石では、液体急冷法等に
よって作製した非晶質体に適当な焼鈍を施して、高い保
磁力を得ることが行われている。例えば、SmFe5 のFeの
一部をTiで置換した上記Sm-Fe-Ti系合金において、上記
液体急冷法を利用することにより、この系の保磁力が3.
2kOeに達するというような報告がなされている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上述したように、Sm-F
e-Ti系に代表される希土類−鉄系永久磁石材料は、希土
類−コバルト系に比べて安価で、また高い保磁力が得ら
れる等の特性を有している。しかしながら、最近の電気
・電子機器の小型化、高性能化の要求に伴い、これら電
気・電子機器の重要な一構成材料である永久磁石材料に
おいても益々高性能化が求められている。このようなこ
とから、上記希土類−鉄系永久磁石材料においても、さ
らに保磁力を高めることが強く望まれている。
【0005】本発明は、このような課題に対処するため
になされたもので、希土類−鉄系永久磁石材料の保磁力
をよりいっそう高め、さらに高性能化された永久磁石材
およびそれを用いた樹脂結合磁石を提供することを目
的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段と作用】すなわち、本発明
の永久磁石材料は、 一般式:RaTbMcCudXe ……(1) (式中、RはSmを、TはFeまたはFe-Coを、MはTi、Zr、H
f、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWから選ばれた少なくとも1
種の元素を、XはB、C、N、H、PおよびSiから選ばれた少
なくとも1種の元素を、a、b、c、dおよびeはa+b+c+d+e=
100、5≦a≦20、1≦c≦20、0.1≦d≦10、0≦e≦8をそれ
ぞれ満足する数(原子%)を示す) で実質的に表される合金組成を有し、かつ平均結晶粒径
が20nm〜1μmの範囲の結晶粒を具備すると共に、等方性
の磁気特性を有することを特徴とするものである
【0007】ここで、上記(1)式におけるRとTは、基本
相であるRT5相を形成するものであり、上記RはSmであ
る。本発明の合金系において、Rの量が5原子%未満では
充分な保磁力が得られず、また20原子%を超えると飽和
磁化が低下し、最大エネルギー積の低下を招くため、R
の添加量は5〜20原子%の範囲とする。
【0008】また、 Tは基本的にはFeであるが、一部を
Coで置換することも可能である。このようにFeの一部を
Coで置換することによって、キュリ―温度の上昇が図れ
永久磁石の特性改善につながる。ただし、 50%以上置換
すると保磁力の低下を招く恐れがあるため、FeのCoによ
る置換量は 50%未満とすることが好ましい。なお、 Tの
添加量は全合金組成分中の他の構成成分を除いた残部と
する。
【0009】Mは保磁力の改善に寄与するものであり、
特にTiは保磁力の改善に加えて、基本相の安定化にも寄
与することから有効な元素である。すなわち、上記RT5
は安定相ではないが、安定化元素としてTiを添加するこ
とによって、安定な(RT5 +Ti)相が形成されて磁気特
性の安定化が図れる。また、他の元素(Zr、Hf、V 、N
b、Ta、Cr、MoおよびW )の内で保磁力の改善効果の点
からは、特にNb、Mo、Hfが好ましい。この Mは上記元素
群から任意に選択することが可能であるが、Tiの単独、
あるいはTiと他の元素との組合せが好ましい。
【0010】この Mの添加量は、 1〜20原子% の範囲で
ある。 Mの添加量が 1原子% 未満では合金自身としての
充分な保磁力が得られず、20重量%を超えると飽和磁化
の低下や基本相以外の相の増大による磁気特性の劣化を
招く恐れがある。ただし、Ti単独で考えた場合には、 1
〜15原子% の範囲が好ましい。Tiの添加量が 1原子%未
満では充分に上記安定化効果が得られず、また15原子%
を超えると基本相以外の相が多くなりすぎ、磁気特性の
劣化を招く恐れが高い。また、Tiと他の元素を組合せて
用いる際には、上記範囲内において他の元素の添加量を
8原子% 以下とすることが好ましい。
【0011】Cuは、結晶粒を微細化させることによって
磁性粉を単磁区化し、保磁力を高めるのに有効な元素で
ある。Cuによる結晶粒の微細化は、CuとFeとの固溶度が
低く、分離する傾向があることから、Feを主とする微細
な結晶粒が多数形成され、この周囲にCuが存在すること
によって、上記Feを主とする微細な結晶粒の粗大化が防
止されることによるものと考えられる。このCuの添加量
は 0.1〜10原子% の範囲であり、これが 0.5原子% 未満
では上記効果が顕著ではなく、10原子% を超えると飽和
磁化の低下を招く。より好ましい添加量としては、 0.5
〜 5原子% の範囲である。
【0012】Xは基本相であるRT5 相(あるいはRT5 +Ti
相)をさらに安定化させるものであり、その添加量が
8原子% が超えると飽和磁化が低下するため、 8原子%
以下とする。
【0013】本発明の永久磁石材料は、例えば以下のよ
うに作製される。すなわち、まず上記 (1)式を満足する
合金組成物の非晶質体もしくは充分に結晶化していない
状態のものを作製する。これら非晶質体等は、冷却ロ―
ル等を用いた液体急冷法やメカニカルアロイング法等に
よって形成される。また、充分に結晶化していない状態
のものは、例えば液体急冷法を適用して非晶質体を作製
する際に、冷却ロ―ルの周速、溶融物を射出するノズル
と冷却ロ―ルとの間隔、溶融物の射出圧を制御すること
によって、部分的に結晶化させること等によって得られ
る。なお、この際には結晶粒の粗大化を招かないように
条件を選択する。
【0014】次に、上記非晶質体もしくは充分に結晶化
していない状態の合金に、用いた合金の結晶化温度に対
して-100℃〜+400℃の範囲の温度、例えば400℃〜1000
℃程度の温度で熱処理を施し、意図する微細結晶粒を析
出させ、永久磁石材料を得る。
【0015】ここで、析出させる結晶粒としては、合金
中に結晶粒径 5μm 以下の微細結晶粒、好ましくは10nm
〜 3μm の範囲である。なお、上記微細結晶粒が 70%未
満では、単磁区化による保磁力の改善が充分に達成され
ない。なお、上記微細結晶粒以外は基本的には上記範囲
外の結晶粒であるが、多少の非晶質相が残存していて
も、特に磁気特性に影響を与えるものではない。また、
合金全体の平均結晶粒径としては20nm〜 1μm の範囲が
好ましい。これは平均粒子径が余り小さすぎると、逆に
保磁力の低下を招くためである。
【0016】このようにして得た本発明の永久磁石材料
は、微粉砕化した後に一般的な方法、すなわち樹脂と混
することによって、等方性の樹脂結合磁石とされる。
本発明の樹脂結合磁石はこのような構成を有することを
特徴としている。
【0017】
【実施例】次に、本発明の実施例について説明する。
【0018】実施例1 一般式:Sm12Fe78Ti4 Nb4 Cu2 で表される合金組成物を母合金として高周波溶解によっ
て溶解し、次いでこの溶融合金をアルゴン雰囲気中にお
いて単ロ―ル法により急冷し、非晶質状態の薄片を作製
した。なお、冷却ロ―ルの周速は45m/sec とした。次
に、上記非晶質状態の薄片に対し、真空中において 700
℃で10分間熱処理を施して微細結晶粒を析出させ、この
後平均粒子径 200μm 以下に粉砕して永久磁石粉末を得
た。
【0019】このようにして得た永久磁石粉末の結晶状
態をTEM観察によって調べたところ、 5μm 以下の結
晶粒が面積比で約 95%存在し、その平均結晶粒径は 0.8
μmであった。次に、上記永久磁石粉末を樹脂と混合し
て樹脂磁石材料とし、射出成形等によって成形後、着磁
器によって着磁して等方性の樹脂結合磁石を作製し、後
述する特性評価に供した。
【0020】比較例1 一般式:Sm10Fe82Ti8 で表される合金組成物を用いて、実施例1と同一条件で
永久磁石粉末を得た。なお、この永久磁石粉末の結晶状
態をTEM観察によって調べたところ、 5μm以下の結
晶粒は面積比で約 40%であり、その平均結晶粒径は 6μ
m であった。次に、この永久磁石粉末を用いて実施例1
と同一条件で樹脂結合磁石を作製し、特性評価に供し
た。
【0021】実施例2〜6 表1に組成が示された各合金組成物について、それぞれ
実施例1と同一条件で永久磁石粉末を作製し、次いで同
様にして樹脂結合磁石をそれぞれ作製した。
【0022】
【表1】 これら実施例1〜6および比較例1で作製した樹脂結合
磁石の磁石特性を、それぞれ直流化測定装置を用いて求
めた。その結果を表2に示す。
【0023】
【表2】 表2の結果から明らかなように、本発明の実施例の永久
磁石粉末を用いた樹脂結合磁石は、いずれも比較例によ
るものに比べて保磁力に優れていることが分る。また、
キュリ―温度も比較例によるものに比べて高い値を示し
た。
【0024】なお、上記実施例では等方性の樹脂結合磁
石について説明した
【0025】
【0026】
【0027】
【0028】
【0029】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の永久磁石
材料は、結晶粒を微細化することが可能であることから
単磁区化が図れ、これによって保磁力に優れたものとな
る。よって、保磁力や最大エネルギ―積の高い高性能の
永久磁石材料を提供することが可能となる。
【0030】

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 一般式:RaTbMcCudXe (式中、RはSmを、TはFeまたはFe-Coを、MはTi、Zr、H
    f、V、Nb、Ta、Cr、MoおよびWから選ばれた少なくとも1
    種の元素を、XはB、C、N、H、PおよびSiから選ばれた少
    なくとも1種の元素を、a、b、c、dおよびeはa+b+c+d+e=
    100、5≦a≦20、1≦c≦20、0.1≦d≦10、0≦e≦8をそれ
    ぞれ満足する数(原子%)を示す) で実質的に表される合金組成を有し、かつ平均結晶粒径
    が20nm〜1μmの範囲の結晶粒を具備すると共に、等方性
    の磁気特性を有することを特徴とする永久磁石材料。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の永久磁石材料において、 合金中に結晶粒径5μm以下の微細結晶粒が、面積比で70
    %以上存在することを特徴とする永久磁石材料。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の永久磁石材料において、 前記微細結晶粒の周囲にCuが存在することを特徴とする
    永久磁石材料。
  4. 【請求項4】 請求項1ないし請求項3のいずれか1項
    記載の永久磁石材料と樹脂とを混合し、この混合物を所
    望形状に成形してなることを特徴とする等方性の樹脂結
    合磁石。
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