JP3328787B2 - 動脈止血用具 - Google Patents

動脈止血用具

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、動脈止血用具に関す
る。
【0002】
【従来の技術】近年、動脈穿刺カテ−テル、動脈造影、
動脈内注射などの動脈穿刺を伴う治療や検査が広く行わ
れている。動脈穿刺カテ−テルは、例えば、手術時に動
脈圧をモニタ−したり、動脈血を採取して血液の状態か
ら肺の状態を知るために広く行われているし、血液透析
等の場合にも実施されている。また、動脈造影は診断の
場合だけでなく、動脈塞栓術や経皮カテ−テル的血管形
成術などにも広く用いられている。
【0003】従来、こうした動脈穿刺を伴う治療や検査
を行ったときは、多くの場合その治療等の後に注射針、
カテ−テル、チュ−ブ等を取外してから、ほぼ10分間
以上手圧を加えた後に、ガ−ゼを置き、その上から大き
な枕状のパッドを当てて縛りつけ、圧迫して止血した後
に、このガ−ゼを丸めて絆創膏で固定することが行われ
ており、止血されたことを確認した後に患者を病棟等に
戻すようにしている。そして、このような治療は、いわ
ゆる教育病院では穿刺と共に止血行為の多くを医師が行
っており、一般病院では止血を看護婦が行うことが多い
が、術後の看護婦には多くの仕事が残されており、こう
した止血作業の効率化が望まれている。
【0004】また、静脈穿刺した場合の、穿刺部に対す
る止血材については種々の提案が為されているけれど
も、動脈止血については、血圧が約100〜150mmHg
と高いこともあって、今のところこれを簡易かつ効果的
に行えるようなものがないのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで、出願人は先に
動脈止血のための用具を提供したが、本発明は、これと
同様に、上記したような動脈穿刺して治療や検査を行っ
た後に、動脈穿刺部における注射針等を抜いた後の止血
を、容易かつ確実にできるようにするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、適宜厚さの圧
迫体で動脈に対する穿刺部を覆うように定置し、この圧
迫体の上に上記圧迫体より大きな押圧板を位置させ、こ
れらを貼付材によって患部に固定し、上記押圧板により
押圧作用を強めた圧迫体により上記動脈の穿刺部を圧迫
して止血し、確実な止血を行おうとするものである。
【0007】
【実施例】以下実施例について述べれば、貼付材は下記
する圧迫体を穿刺部に押圧するように患部に固定するも
ので、図示するものは基材1の一面に粘着剤2の層を形
成して貼付材20としている。この基材は、強い復元作
用を有する伸縮性の材料が好ましく、50%伸長力(5
0%伸長させる場合の応力)が約100〜500gf/cm
程度で、50%伸長したときの回復率が約90%以上の
ものが効果的に使用することができる。こうしたものと
して、例えばポリウレタン弾性繊維の細い連続フイラメ
ントをランダムに積層し、その交点を接合した布状物な
どがある。
【0008】上記粘着剤には、アクリル系、天然ゴム
系、シリコン系など適宜のものが使用できるが、アクリ
ル系を用いると皮膚に対する刺激作用が少く好ましいこ
とが多い。この粘着剤は上記基材の片面の全部又は一部
に設けて、後記するように患部に貼付けて固定すること
ができるようにしている。この粘着剤2の上には、プラ
スチック板、金属板、合板その他の薄くて丈夫な板状体
で形成した押圧板21が定置されており、この押圧板は
上記圧迫体よりも大きく、その長さは同方向の圧迫体よ
りも長く形成され、約3〜10cm程度にするが、通常4
〜7cm程度にすることが多い。
【0009】更に上記押圧板の上には圧迫体3が定置さ
れており、この圧迫体は動脈に対する穿刺部を確実に押
圧できるような硬さを有するものが好ましく、例えば、
圧縮したときに容易に変形しないような、僅かの弾性と
共に適度の圧縮硬さを持っているパッド等が好適に使用
できる。この圧迫体は、上記注射針等を抜いたときの動
脈管穿刺孔16と皮膚表面穿刺孔17の双方を押圧でき
るような大きさに形成し、その厚味も約3〜20mm程度
にするとよく、この場合、厚みの薄いものは足背動脈等
に対する止血に、厚みの厚いものは大腿動脈等に使用す
るとよい。また、厚味が増えると押圧作用は強くなる
が、圧迫体が横にひしゃげたり、倒れたりすることが稀
にあり、好ましくないこともあり、多くの場合約5〜1
3mm程度の厚さにして好ましいことが多い。
【0010】図に示すものでは、上記圧迫体のパッドが
多層構造に形成されており、粘着剤2側より、クッショ
ン層4、下層5、上層6、表層7が順次形成されてい
る。上記クッション層4は全体厚さの約5〜7割程度を
占め、殆んどが半独立気泡のポリエチレンその他のプラ
スチック発泡体で形成されており、やゝ硬目の弾性を有
し、いわゆるへたり現象が表われることなく充分な復元
作用を持っている。次の下層5は厚さの約2〜3割程度
を占め、主に動脈に対する圧迫作用を有すると共に、血
液も吸収できる層であって、通例、圧縮綿が使用され、
例えばセルロ−ス不織布圧縮綿等が使用される。
【0011】上記上層6は、厚さの約1割内外を占め、
上記下層5よりは柔らかくて、腰も弱く穿刺部に対する
当りを柔らかくするもので、注射針等を抜いたときに皮
膚表面の穿刺孔から出る血液を素早く吸収することがで
き、通例不織布を使用するのが好ましく、図のものでは
レ−ヨン不織布を使用している。表層7は薄く形成さ
れ、上記上層の毛羽立ちを防止し、凝固血液の剥離をよ
くしたもので、孔明きポリエチレンフイルム、ナイロン
ネット、薄いセルロ−ス不織布などを使用するとよい。
上記下層5と上層6は、双方の性質を併有するものを使
用して、これを一層とし、全体を三層構造にしたり、ま
た、下層5、上層6及び表層7を一層とし、全体を二層
構造にすることもできる。
【0012】このような圧迫体は、隅丸長方形、隅丸正
方形、円形など穿刺部を押圧できるような適宜の平面形
状に形成するが、通例長辺を約20〜40mm程度、短辺
を約10〜20mm程度とする小判形に形成すると、殆ん
どの場合に動脈管穿刺孔と皮膚表面穿刺孔の双方を押圧
することができて好ましい。
【0013】この押圧板21及び圧迫体3は、貼付材の
粘着剤2によって穿刺部に貼付けることができるよう
に、通例、貼付材の中央部分に定置する。この基材は、
正方形、円形、楕円形などに形成することもあるが、長
片状に形成すると好ましいことが多い。こうした長片状
の貼付材に、圧迫体を定置する場合には、圧迫体の長辺
が上記基材の短辺側(幅方向)を向くように定置すると
よい。この圧迫体の長辺側で、穿刺部の動脈管及び皮膚
表面の両穿刺孔を押えるようにすれば、容易に圧迫を行
うことができるから、こうした後に基材の粘着剤層を皮
膚表面に貼付けると、確実な止血を手軽に行うことがで
きる。
【0014】図示のものでは、押圧板21を貼付材の幅
と同じ幅に形成し、上記小判形の圧迫体の長辺を長片状
の基材の長手方向に対して直角をなすように定置してお
り、圧迫するときの好ましい態様であるが、この圧迫体
が斜めに向くようにして定置することもできるし、押圧
板の片側にずらすようにして定置することもできる。上
記圧迫体は、上記基材の両側縁8,8から、適当なスペ
−ス9、通例約3〜10mm程度で、好ましくは約6mm程
度の間隔が存するようにして位置させている。また、こ
のスペ−ス9は上記の如く狭いので、後記するようにこ
れを使用する際に、圧迫体で押圧しながら注射針を抜く
ときにも貼付材が注射針などが触れて邪魔になるような
こともない。
【0015】上記貼付材の粘着剤の表面は剥離紙で覆う
とよく、更に袋に包装しておくと衛生的で使用し易い。
図示のものは、貼付材の両側の粘着剤の上を折返片11
を設けた剥離紙12で覆い、更に圧迫体3が入る収納部
13を設けたプラスチック製のキャップ14を被せてお
り、これにより圧迫体は変形されることなく、衛生的に
保持される。また、これを更に2枚の包装紙をコ−シ−
ル剤等により剥離可能に弱接着した包装袋に封入するこ
ともできるし、場合によっては、上記キャップを省略し
て包装袋に封入することもよい(図示略)。
【0016】動脈止血をする場合、図を参照しながら述
べると、キャップ14を外し、剥離紙12の折返片11
の間に指を挿入れるようにして貼付材を持つ(図4)。
これを、例えば、図5に示すように手首23の橈骨動脈
で約22〜23ゲ−ジ位の針を使用して採血したり、約
20ゲ−ジ位のカテ−テルを使用した後で、この針を抜
く前に、穿刺部の針の刺さっている方向、すなわち動脈
管15の走っている方向に、その長辺を合せるようにし
て圧迫体を当て、押圧板を押しつつ針を抜き、さらに圧
迫体を押圧しながら、一方の剥離紙を剥ぎ、貼付材を引
張りながら粘着剤で、血管の走っている方向と交叉する
方向に向けて皮膚に貼付け、次に他方の剥離紙の折返片
を摘んで剥離紙を剥し、同じく基材を引張りながら皮膚
に貼付けて固定する。
【0017】こうすると、上記圧迫体は皮下の動脈管穿
刺孔16の上に位置すると共に、皮膚表面穿刺孔17の
上も覆うようになる。そして、この伸ばされた基材が収
縮しようとする作用が、押圧板によって上記圧迫体に集
中して下方へ強く押し付けるから、動脈管15の穿刺孔
16の部分は集中的に圧迫されて閉じられ、確実に止血
することができる。また、この圧迫体として上記のパッ
ドを使用した場合、このパッドは上記クッション層を含
む多層構造によって、皮膚に対する当りは柔らかいけれ
ども、強く下方へ押付けることができ、さらに、この押
圧作用によって皮膚表面穿刺孔17からは抜針後に血液
が出てくるが、パッドの表層7により直ちにかつ容易に
吸収され、更に量の多い場合には上層6に浸透して吸収
保持され、外部に血液が漏れることがない。
【0018】また、上記押圧板によって皮膚表面に貼付
材が貼り付かない部分が広く生じるので、上記した場
合、穿刺した橈骨動脈以外の尺骨動脈や静脈の血行を妨
げることが少く、チアノ−ゼ等を起すこともなく、穿刺
部を的確に押圧して止血を行うことができるし、皮膚に
対する粘着剤による刺激も少くなって好適である(図
6)。又、貼付材の貼り付けによって押圧板が撓んだよ
うな場合には、その復元作用によっても圧迫体による押
圧作用が更に強くなることもある。こうして、貼付けた
ままで一定時間が経過すると止血が完了するので、これ
を皮膚表面より取り除けばよく、出血によって服等を汚
したりすることもない。
【0019】 図7 に示すものは、押圧板21の幅を貼付
材20の幅よりも狭く形成したもので、皮膚に貼付けた
際に貼付材の両側の間隔部22,22が折れ曲って押圧
板の両側方を覆い、斜内側下方に向って押圧作用を及ぼ
すようになるから、その押圧作用が分散することなく押
圧板から圧迫体に集中し、厚い圧迫体が横にずれ動いた
り、倒れたりすることを一層防止することができる。
【0020】
【止血試用例】次に止血試用例を挙げ、それらの圧迫
力、圧迫感、しびれ、手掌の変色等について測定したの
でこれを示す。
【試用例1】次の止血用具を使用して行った。 基材: ポリウレタン弾性繊維100%の細い連続フイ
ラメントをランダムに積層し、各フイラメントの交点を
接合してあるもので、特性は次のとおりである。 これを緯方向が長辺となるようにして、45×90mmの
隅丸長方形の基材にする。
【0021】 粘着剤: アクリル系粘着剤を38±2g/m2塗布し
て使用。 押圧板: 厚さ1.1 mmのポリ塩化ビニル板を45×50
mmの大きさにし、貼付材中央部の粘着剤の上にその幅を
合わせて貼付ける。 圧迫体: 表層は、厚さ0.05mmのセルロ−ス不織布。 上層は、厚さ2mmのレ−ヨン不織布。 下層は、厚さ2mmのセルロ−ス不織布圧縮綿。 クッション層は、厚さ5mmのポリエチレン独立気泡発泡
体シ−ト。 形状 長辺27mm×短辺15mm×厚さ9mmの小判形。 圧迫体の長辺が貼付材の幅方向を向くようにして、押圧
板の中央部に固定する。
【貼付部位、時間、方法】左手首の橈骨動脈に、圧迫体
を当て貼付材を140mmに伸長して1分間貼付する。
【0022】
【対照例】押圧板が存在しない。他は上記試用例1と同
じである。
【貼付部位、時間、方法】左手首の橈骨動脈に、圧迫体
を当て貼付材を140mmに伸長して1分間貼付する。
【0023】
【測定・観察項目】圧迫体部の圧迫力の測定: 非侵襲
的に橈骨動脈の手根部に圧トランスデュ−サ−に接続し
た脳圧測定用カテ−テルのポウチを固定し、圧迫体部が
ポウチ上に位置するように貼付し、圧迫体部の圧迫力を
測定した。 副作用として表われる圧迫感、しびれ、手掌の変色:
貼付1分後に圧迫感及びしびれは被験者に問診し、手掌
の変色については肉眼観察した。 被験者:6名
【評価方法】圧迫体部の圧迫力は、記録用紙から読み取
って数値化(mmHg) し、その平均値を求めた。圧迫感、
しびれ及び手掌の変色は、「無、弱、中、強」の4段階
で評価し、各々0,1,2,3に重み付けし、平均値を
求めた。
【0024】
【結果】
【表1】
【0025】
【考察】試用例1は対照例に比べて大きな圧迫力が得ら
れており、それに伴い圧迫感はやゝ強く感じられるが、
手掌の変色は対照例よりも少なくて良化しており、人体
に対する影響が少なく、動脈止血に効果的で、有用であ
ることが判る。
【0026】
【発明の効果】本発明は上記の如く、動脈管に対する穿
刺孔に対しても確実に止血することができ、上記した橈
骨動脈のほか、尺骨動脈、足背動脈などの骨に近い部分
に位置する動脈に使用すれば効果的な止血を行うことが
できるし、さらに大腿動脈に対しても使用可能である。
また、使用に際しての操作も容易であり、構造も簡素で
あるので経済的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例を示す斜視図である。
【図2】図1の断面図である。
【図3】包装した状態を示す断面図である。
【図4】使用状態を示す説明図である。
【図5】使用状態を示す説明図である。
【図6】使用状態を示す説明図である。
【図7】 他例の平面図である。
【符号の説明】
1 基材 2 粘着剤 3 圧迫体 12 剥離紙 14 キャップ 16 動脈管穿刺孔 17 皮膚表層穿刺孔 20 貼付材 21 押圧板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 楠見 勝己 東京都千代田区九段南二丁目2番4号 ニチバン株式会社内 審査官 土田 嘉一 (56)参考文献 特開 平5−115487(JP,A) 実開 平1−68027(JP,U) 実開 平5−7217(JP,U) 実公 昭64−897(JP,Y2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61B 17/12 330

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 動脈に対して穿刺した穿刺部の上に位置
    させる厚さ5〜20mmで僅かの弾性と適度の圧縮硬さを
    有する圧迫体を備え、該圧迫体を上記穿刺部に向けて押
    圧できるように患部に貼付して固定可能な粘着剤を有す
    る伸縮性の貼付材の上に配置し、上記圧迫体と貼付材の
    間に伸長状態から収縮しようとする貼付材による押圧作
    用を圧迫体に集中して押し付けるように上記圧迫体より
    も大きな押圧板を介在定置した動脈止血用具。
  2. 【請求項2】 上記圧迫体は、長辺を20〜40mm、短
    辺を10〜20mm、厚さを5〜13mmの小判形に形成
    し、該圧迫体の長辺を長片状に形成した貼付材の幅方向
    を向くように定置した請求項1記載の動脈止血用具。
  3. 【請求項3】 上記押圧板は、長片状の貼付材の長手方
    向に沿って圧迫体の短辺よりも長い4〜7cmの長さを有
    する請求項2記載の動脈止血用貼付材。
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