JP3326083B2 - 高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法

Info

Publication number
JP3326083B2
JP3326083B2 JP31309896A JP31309896A JP3326083B2 JP 3326083 B2 JP3326083 B2 JP 3326083B2 JP 31309896 A JP31309896 A JP 31309896A JP 31309896 A JP31309896 A JP 31309896A JP 3326083 B2 JP3326083 B2 JP 3326083B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
iron loss
annealing
temperature
rolling
loss characteristics
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP31309896A
Other languages
English (en)
Other versions
JPH10140244A (ja
Inventor
哲雄 峠
道郎 小松原
厚人 本田
健一 定廣
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
JFE Steel Corp
Original Assignee
JFE Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by JFE Steel Corp filed Critical JFE Steel Corp
Priority to JP31309896A priority Critical patent/JP3326083B2/ja
Priority to CNB971252890A priority patent/CN1153227C/zh
Priority to US08/954,504 priority patent/US6039818A/en
Priority to KR1019970053853A priority patent/KR100440994B1/ko
Priority to EP97118278A priority patent/EP0837149B1/en
Priority to DE69705688T priority patent/DE69705688T2/de
Publication of JPH10140244A publication Critical patent/JPH10140244A/ja
Priority to US09/493,864 priority patent/US6331215B1/en
Application granted granted Critical
Publication of JP3326083B2 publication Critical patent/JP3326083B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • HELECTRICITY
    • H01ELECTRIC ELEMENTS
    • H01FMAGNETS; INDUCTANCES; TRANSFORMERS; SELECTION OF MATERIALS FOR THEIR MAGNETIC PROPERTIES
    • H01F1/00Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties
    • H01F1/01Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials
    • H01F1/03Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity
    • H01F1/12Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity of soft-magnetic materials
    • H01F1/14Magnets or magnetic bodies characterised by the magnetic materials therefor; Selection of materials for their magnetic properties of inorganic materials characterised by their coercivity of soft-magnetic materials metals or alloys
    • H01F1/147Alloys characterised by their composition
    • H01F1/14766Fe-Si based alloys
    • H01F1/14775Fe-Si based alloys in the form of sheets

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は方向性電磁鋼板に係
り、中でも特に小型発電機の鉄芯やEIコアなどに使用
される高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れ
た特性を要求される方向性電磁鋼板の製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】方向性電磁鋼板は主として変圧器その他
の電気機器の鉄芯材料として使用される。この場合にお
いて、方向性電磁鋼板に要求される特性としては、一般
に50Hzの周波数で1.7Tに磁化させた場合の損失で
あるW17/50(W/kg)で表わされる鉄損が低い
ことが重要である。そのため、W17/50を低減する
ための研究が多くなされ、ヒステリシス損を抑えるため
に、製品板の結晶方位を磁化容易軸〈001〉が圧延方
向に揃った{110}〈001〉方位に極力集積させる
技術が開示されてきた。
【0003】方向性電磁鋼板の一般的な製造方法として
は、厚さ100〜300mmのスラブを高温に加熱後熱
延し、次いでこの熱延板を1回または中間焼鈍をはさむ
2回以上の冷間圧延によって最終板厚とし、脱炭焼鈍
後、焼鈍分離剤を塗布してから二次再結晶および純化を
目的として最終仕上焼鈍を行うという複雑な工程がとら
れており、最終仕上焼鈍時の二次再結晶によって{11
0}〈001〉方位の結晶粒を成長させている。
【0004】このような二次再結晶を効果的に促進させ
るためには、まず一次再結晶の成長を抑制するインヒビ
ターと呼ばれる分散相を、均一かつ適正なサイズに分散
させることが重要である。かかるインヒビターとして代
表的なものは、MnS、MnSe、AlN、及びVNの
ような硫化物、Se化合物や窒化物等で、鋼中への溶解
度が極めて小さいものが用いられている。
【0005】また、上述の硫化物、Se化合物、窒化物
を主としたインヒビターの適正制御の方法として、従来
の工程では熱延前のスラブ加熱時にインヒビターを一旦
完全固溶させた後、熱延時に析出させる方法がとられて
きた。この場合インヒビターを十分固溶させるためのス
ラブ加熱温度は1400℃程度であり、普通鋼のスラブ
加熱温度に比べて約200℃も高く、かかる高温スラブ
加熱には以下のような欠点がある。 1)高温加熱を行うためにエネルギー原単位が高い。 2)溶融スケールが発生しやすく、またスラブ垂れが生
じやすい。 3)スラブ表層の過脱炭が生じる。
【0006】上記2)3)の問題点を解決するために、
方向性電磁鋼板専用の誘導加熱炉が考案されたが、エネ
ルギーコスト増大という問題点が残された。特に、近年
のエネルギー危機に伴い、省エネルギー化が焦眉の急と
なり、そのためスラブ加熱温度の低温化を実現するため
にこれまで多くの研究者が多大な努力をしてきている。
【0007】例えば、特公昭54−24685号公報で
はAs、Bi、Sb等の粒界偏析元素を鋼中に含有し、
インヒビターとして利用することによってスラブ加熱温
度を1050〜1350℃の範囲にする方法が開示され
た。また、特開昭57−158332号公報ではMn含
有量を下げ、Mn/Sの比率を2.5以下にすることに
よりスラブ加熱温度を低温化し、さらにCuの添加によ
り二次再結晶を安定化する技術が開示された。特開昭5
7−89433号公報ではMnに加えてS、Se、S
b、Bi、Pb、B等の元素を加え、これにスラブの柱
状晶率と二次冷延圧下率を組み合わせることにより11
00〜1250℃とスラブ加熱温度の低温化を実現して
いる。しかしながら、これらは鋼中への溶解度が極めて
小さいAlNをインヒビターとして利用しない方針の技
術であるため、インヒビターの抑止力が弱く、磁気特性
が今一歩悪かったり、研究室規模の技術に留まるという
問題点があった。
【0008】特開昭59−190324号公報では一次
再結晶焼鈍時にパルス焼鈍を施すという新規な技術が開
示されたが、これも研究室規模の製造手段に留まってい
る。特開昭59−56522号公報では、Mnを0.0
8〜0.45%、Sを0.007%以下にすることによ
りスラブ加熱を低温化する技術が開示され、さらに特開
昭59−190325号公報ではこれにCrを添加する
ことにより二次再結晶の安定化を図る技術が開示され
た。これらは、S量を下げてスラブ加熱時のMnSの固
溶を図るのが特徴である。しかし、これらの技術による
ときは重量の大きなコイルでは幅方向や長手方向に磁気
特性のばらつきが生じるという問題点があった。
【0009】特開昭57−207114号公報では組成
の極低炭素化(C:0.002〜0.010%)とスラ
ブ加熱温度の低温化を組み合わさせる技術が開示され
た。この技術はスラブ加熱温度が低い場合には凝固から
熱延までの間にオーステナイト相を経由しない方が後の
二次再結晶に有利であるという思想に基づくものである
が、C量が極端に低いことは、冷延時の破断防止にも有
利であるが、二次再結晶を安定化させるために、脱炭焼
鈍時に窒化することが必要である。
【0010】この技術を受けて、途中窒化を前提とした
技術開発が多く行われた。すなわち、特開昭62−70
521号公報では仕上げ焼鈍条件を特定し、仕上げ焼鈍
時に途中窒化することで低温スラブ加熱を可能にする技
術が開示され、さらに、特開昭62−40315号公報
ではスラブ加熱時に固溶しえない量のAl、Nを含有
し、途中窒化によってインヒビターを適正状態に制御す
る方法が開示された。しかし、脱炭焼鈍時に途中窒化を
施す方法は、新たな設備を要し、コストが増大するとい
う問題点があり、また、仕上げ焼鈍中の窒化は制御が困
難であるという問題点がある。
【0011】一方、近年、材料の鉄損特性と実機の鉄損
特性が必ずしも一致しないということが問題視されるよ
うになった。確かに、大型変圧器の鉄芯や巻鉄芯の鉄損
はW17/50の値が低い材料が実機の特性も優れてい
る結果を得ている。しかし、小型発電機の鉄芯や小型変
圧器であるEIコアなどでは鋼板内部を流れる磁束が複
雑なために材料のW17/50の値と実機の特性が一致
しない問題点が生じた。近年エネルギー危機の進行とと
もに変圧器中で無駄に失うエネルギーの低減が要求さ
れ、実機の鉄損を低減する努力がなされているなか、材
料のW17/50では正当な材料評価がなされておら
ず、材料の選定にしばしば困難をきたしているのが現状
である。
【0012】一般に材料の鉄損を低減するには、渦電流
損を低下させるため有効なSiを含有させ電気抵抗を高
める方法、鋼板板厚を低減する方法、結晶粒径を低減す
る方法、さらに結晶方位の{110}〈001〉への集
積度を高めて磁束密度を向上させる方法が知られてい
る。このうち磁束密度を向上させる方法はこれまでよく
研究されており、例えば特公昭51−2290号公報に
は鋼中インヒビター成分としてAlを添加し1300℃
以上の高温でスラブ加熱し、熱間圧延仕上げ圧延を高温
短時間で行い、980℃以上の熱延終了温度で熱間圧延
を行う技術が、また、特公昭46−23820号公報に
は鋼中にAlを添加し、熱間圧延後1000〜1200
℃の高温の熱延板焼鈍とそれに伴う急冷処理によって微
細なAlNを析出させ、80〜95%の高圧下を施す技
術が開示され、これによってB10にして1.95Tの
極めて高い磁束密度と、低い鉄損の材料を得ている。
【0013】しかしながら、W17/50の低減の際に
従来通常追及されてきたかかる結晶方位を揃え磁束密度
を向上させる方法では、これらEIコアや小型発電機の
鉄芯の鉄損特性を向上させるのには有効であるといえな
かった。その理由は、EIコアなどは、鋼板内部を流れ
る磁束が複雑なためである。
【0014】磁束密度を向上させる方法に代わる鉄損低
減手段としてSi含有量を増加させる手法、鋼板板厚を
低減する手法、結晶粒径を低減する手法を検討したが、
このうちSi含有量を増加させる手法についてはSiを
過度に含有させると鋼板の圧延性や加工性を劣化させる
ので好ましくなく、また鋼板板厚を低減する方法も極端
な製造コスト増大をもたらすので限界があった。
【0015】これとは別に、実機の小型発電機の鉄芯の
鉄損やEIコアの鉄損について材料評価のよりよい指標
を検討したところ、表1に示されるように高磁場での鉄
損特性に比較して低磁場での鉄損特性が良好なこと、即
ち、W10/50(磁束密度1.0Tにおける鉄損:W
/kg)のW17/50に対する比と実機の特性とがよ
い相関を有することがわかった。この理由は実機の場合
鋼板内を流れる磁束の分布が不均一であるため低磁場に
おける鉄損がより重要で、高磁場鉄損の方は、むしろ逆
に高い方が実機全体における磁束の流れがより均一化す
る方向に改善され、結果的に実機の鉄損を低減すること
になるためと思われる。
【0016】
【表1】
【0017】かかる良好な実機特性を得た材料aやbに
ついて調査したところ、結晶組織が細粒となっているこ
とがわかった。従来より鉄損低減に結晶粒径が小さい方
が有利であるという知識はあっても、すべてが材料のW
17/50低減に関する研究であって、EIコアなどの
鉄損を低減するといった実機特性向上の観点、即ちW1
7/50を増加しW10/50やW10/50のW17
/50に対する比を低減するといった観点から、結晶粒
径を如何なるサイズと分布に制御すべきかといった研究
は皆無であり、適正な結晶粒の分布は明確とはなってい
なかった。
【0018】ちなみに従来から広く知られている方向性
電磁鋼板の結晶粒径の制御の技術は、例えば、特公昭5
9−20745号公報に平均結晶粒径として1〜6mm
とする薄方向性電磁鋼板が提案されており、また、特公
昭62−56923号公報には2mm以下の結晶粒の個
数比率を15〜70%とし鉄損を低減する手法が開示さ
れている。さらに、特公平6−80172号公報には
1.0mm以上、2.5mm以下の微細粒を混粒状に存
在させることにより鉄損を低減する技術が開示されてい
る。しかし、これらはいずれも磁束密度1.7Tの高磁
場鉄損の値W17/50を目的としたものであり、低磁
場領域での鉄損について検討されたものではない。
【0019】以上を要約すると、従来の技術では、 1)結晶方位の{110}〈001〉への集極度を高
め、磁束密度を向上させるためには、1400℃程度の
高温スラブ加熱を行うか、途中窒化が必要である。 2)しかし、結晶方位の{110}〈001〉への集積
度を極端に高める方法は、EIコアや小型発電機の実機
の鉄芯の鉄損特性の向上には有効でない。という問題点
があったのである。
【0020】
【発明が解決しようとする課題】従って本発明が解決し
ようとする課題は、EIコア等に適した高磁場鉄損特性
に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板の製
造方法を提供することにある。また、スラブ加熱を普通
鋼並の温度で行い、特に積極的な途中窒化を施さずに、
EIコアや小形発電機などに適した方向性電磁鋼板を製
造する方法を提供することにある。いいかえれば、低磁
場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板をエネルギー消費が
少なく、かつ工程を複雑化せずに、生産する技術を提供
しようとするものである。
【0021】
【課題を解決するための手段】本発明の研究者らは鋭意
研究の未、W17/50を増加し、かつW10/50を
低減する、即ちW10/50のW17/50に対するの
値を低減するためには、スラブ加熱温度を低下し、イン
ヒビターとしてのAl含有量を制御し、熱延板焼鈍度と
脱炭焼鈍温度を組み合わせて制御すればよいこと新規に
見い出し本発明を完成させた。具体的には、まず、重量
%でSi:2.0〜4.5%、C:0.02〜0.07
%、N:0.0030〜0.0100%、インヒビター
成分としてAl:0.010〜0.02%、Sb:0.
0010〜0.080%、を含有する鋼スラブを加熱
後、熱間圧延をし、次いで熱延板焼鈍を施した後、冷間
圧延により最終板厚とした後、脱炭焼鈍、さらに焼鈍分
離材を塗布した後に仕上焼鈍を施す方向性電磁鋼板の製
造方法において、鋼スラブの加熱温度を1250℃以下
とすること、熱延板焼鈍温度x℃と脱炭焼鈍温度y℃を 800≦x≦1000、かつ (−x/2)+1200≦y≦(−x/2)+1300 とすることおよび冷間圧延をタンデム圧延機により圧下
率80%以上、95%以下で行うこととすることを特徴
とする高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れ
た方向性電磁鋼板の製造方法を提案する。
【0022】さらにインヒビター成分として、Mo、B
i、Te、Nb、Sn、Crを含有せしめ、また、鋼ス
ラブのAl及びNの含有量を 1.67≦Al(wt%)/N(wt%)≦2.18 とするものである。さらに、冷間圧延をタンデム圧延機
で圧下率80%以上、95%以下、かつ温度90℃以
上、好ましくは120℃以上、180℃以下で行うこと
によりより本発明の目的に添った方向性電磁鋼板の製造
を可能にするものである。
【0023】
【発明の実施の態様】以下、上記発明を完成するに至っ
た諸実験について述べ、併せて本発明の実施の態様を詳
細に説明する。 (実験1)予備実験 表2に示される鋼塊記号VIとXIのスラブを各2本ず
つ用意し、1本は1200℃で、他の1本は1400℃
で加熱後、熱間圧延し、2.0mmの熱延コイルとし
た。その後これらのコイルは全て2分割し、一方は90
0℃で60秒間の、他方は1050℃で60秒間の熱延
板焼鈍を施した。さらに、これらのコイルは酸洗後80
℃の温度でタンデム圧延機によって0.34mmの厚み
にした。その後、脱脂処理を行い830℃で2分間の脱
炭焼鈍を施し、焼鈍分離剤をコイル表面に塗布し、昇温
時600℃までN2単独の雰囲気、その後1050℃ま
では25%N2と75%H2の混合雰囲気、以後H2単独
雰囲気で1200℃まで昇温後5時間保持する最終仕上
げ焼鈍を施し、その後未反応分離剤を除去した。
【0024】
【表2】
【0025】
【表3】
【0026】これらの鋼板をマクロエッチし二次粒の形
状を観察した。これらのコイルはさらに40%のコロイ
ダリシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とす
る絶縁コーティングを塗布し800℃で焼き付け製品と
した。各製品より圧延方向に沿ってエプスタインサイズ
の試験片を切り出し800℃で3時間の歪取焼鈍を施し
た後、1.0Tおよび1.7Tの磁束密度における鉄損
の値、W10/50、W17/50および磁束密度B8
を測定した。これらの値を表3にまとめて示す。さら
に、各製品からEIコア用の鉄芯を打抜き、歪取焼鈍を
施し、積み加工、銅線の巻加工などによってEIコアを
作製した。これらのコアの鉄損特性についても、表3に
併記する。
【0027】表3より、W10/50のW17/50に
対する比が小さく、EIコアの鉄損が良好であったの
は、試料のみであった。試料の板を仕上げ焼鈍後、
マクロエッチすると二次再結晶の不良部がなく、かつ、
粒径が7mmを超える粗大粒もほとんどなかった。Al
量が0.025wt%の鋼記号XIではスラブ加熱12
00℃では、二次再結晶不良となった(試料、参
照)。これは、熱延前にAlNがほとんど固溶しなかっ
たためと考えられる。一方、スラブ加熱温度1400℃
の試料、では十分二次再結晶し、B8、W17/5
0ともに良好な値を示したが、EIコアの鉄損は大きく
なった。仕上げ焼鈍後のマクロ組織をみると、試料、
では二次粒が20mm以上となり非常に粗大化してい
た。
【0028】試料では、一部に二次再結晶不良が生
じ、二次再結晶した粒は、粒径が10mm程度になって
いた。試料、では、二次再結晶不良部はなく、二次
粒の粒径は10〜15mm程度であった。試料のみ
が、EIコアの鉄損が良好となった理由については、A
l量を減らし、スラブ加熱温度を下げた方が、インヒビ
ター抑制力が適正化されたためと考えられる。換言すれ
ば、スラブ加熱温度を高くし、インヒビターとしてAl
量を増加させる方法は、従来からB8を高め、W17/
50を低める方法としてとられてきた方法であるが、E
Iコアの鉄損を低めるという観点では、二次粒が大きす
ぎるために好ましくない。つまり、インヒビターの抑制
力が強すぎると、(110)[001]方位に極めて近
い少数の粒のみが二次再結晶するために、二次粒径が粗
大化しすぎるのである。
【0029】なお、本予備実験の結果から熱延板焼鈍温
度については、高温にする程、一次再結晶後の粒径が大
きくなることがわかった。この一次粒径は、二次再結晶
時の粒成長の駆動力に影響を及ぼすが、実験から低温ス
ラブ加熱かつ低Alの場合には、適正な二次再結晶を生
じさせるための熱延板焼鈍温度は比較的低温であること
がわかった。一次粒径を変化させる因子として、熱延板
焼鈍温度の他に、脱炭焼鈍温度が考えられる。そこで、
次に脱炭焼鈍温度の影響と熱延板焼鈍温度の影響を次の
実験2により検討した。
【0030】(実験2)熱延板焼鈍温度と脱炭焼鈍温度
の影響 表2に示される鋼塊記号VIのスラブを1200℃で加
熱後、熱間圧延して、2.4mmの熱延コイルとした。
これらの熱延コイルに60秒間の熱延板焼鈍を施し、酸
洗した後、100〜160℃の温度でタンデム圧延機に
よって0.34mmの厚みに温間圧延した。その後、脱
脂処理を行ない120秒間の脱炭焼鈍を施し、焼鈍分離
剤を塗布し昇温時500℃までN2単独雰囲気、その後
850℃までは25%N2と75%H2の混合雰囲気、以
後H2単独雰囲気で1180℃まで昇温後保持する最終
仕上げ焼鈍を施し、その後未反応分離剤を除去した。こ
れらのコイルはさらに40%のコロイダルシリカを含有
するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コーティン
グを塗布し800℃で焼き付け製品とした。さらに、各
製品からEIコア用の鉄芯を打抜き、歪取焼鈍を施し、
積み加工、銅線の巻加工などを行ってEIコアを作製し
た。
【0031】熱延板焼鈍温度を750℃〜1050℃、
脱炭焼鈍温度を690℃〜900℃で変化させ、EIコ
アの鉄損W17/50との関係を調査した結果を図1に
示す。図1より、EIコアの鉄損値が良好である範囲
は、 800≦x≦1000、かつ、 (−x/2)+1200≦y≦(−x/2)+1300 x:熱延板焼鈍温度(℃)、 y:脱炭焼鈍温度(℃) であった。
【0032】熱延板焼鈍温度、脱炭焼鈍温度ともに、高
温である程、一次再結晶後の粒径が大きくなる。EIコ
アの鉄損値を低減させるためには、二次再結晶粒を細粒
化することが必要と考えられるが、二次粒細粒化のため
には一次粒の適正制御が必要である。その一次粒適正制
御のためには、熱延板焼鈍温度x、脱炭焼鈍温度yは上
述の不等式の範囲内であればよいということが、実験2
からわかった。なお、上述の不等式を満たす範囲は、通
常の方向性電磁鋼板の製造方法と比べると、低温域であ
ることが特徴である。
【0033】(実験3)冷間圧延の圧延方法の検討 表2に示される鋼記号VIのスラブを4本、1150℃
で加熱後熱間圧延し、2.4mmの熱延コイルとした。
これらの熱延コイルは900℃で30秒間の熱延板焼鈍
を行い、酸洗後、冷間圧延により0.34mmの厚みに
圧延した。このとき、第1のコイルは120〜180℃
の温度でタンデム圧延機による温間圧延を施し、第2の
コイルは同じくタンデム圧延機によったが圧延クーラン
トを多量に鋼板表面に噴射し50〜80℃の鋼板温度の
圧延を施し、第3のコイルはリバース式の圧延機によっ
て圧延パス間において150〜220℃の温度での時効
処理を施し、第4のコイルは同じくリバース式の圧延機
によってクーラントを多量に流し、50〜80℃の温度
の圧延を施した。その後、各コイルは脱脂処理を行い8
00℃で2分間の脱炭焼鈍を施し、焼鈍分離剤をコイル
表面に塗布し、昇温時700℃までN2単独の雰囲気、
その後850℃までは25%N2と75%H2の混合雰囲
気、以後H2単独雰囲気で1180℃まで昇温後5時間
保持する最終仕上げ焼鈍を施し、その後未反応分離剤を
除去した。これらのコイルはさらに60%のコロイダル
シリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶
縁コーティングを塗布し800℃で焼き付け製品とし
た。
【0034】各製品より圧延方向に沿ってエプスタイン
サイズの試験片を切り出し800℃で3時間の歪取焼鈍
を施した後、1.0Tおよび1.7Tの磁束密度におけ
る鉄損の値W10/50、W17/50および磁束密度
B8を測定した。これらの値を表4にまとめて示す。さ
らに、各製品からEIコア用の鉄芯を打ち抜き、歪取焼
鈍を施し、積み加工、銅線の巻加工などを行ってEIコ
アを作製した。これらの鉄損特性についても表4に併記
する。
【0035】
【表4】
【0036】表4に示されるように、タンデム圧延機を
用いて圧延を行った第1および第2のコイルにおいての
み高磁場での鉄損に対する比較として良好な低磁場鉄損
を有する製品が得られ、特に120〜180℃で温間圧
延を行った第1のコイルの実機特性が優れていた。
【0037】一般に温間圧延や時効処理は結晶の圧延変
形集合組織を変える働きがあり、圧延再結晶後の一次再
結晶組織中に二次再結晶の核となる(110)[00
1]方位の結晶粒の生成密度を高めることが知られてい
る。このためには特公昭54−13846号公報に開示
されているように、従来はゼンジマーミルでのリバース
式の圧延機による圧延パス間での時効処理によりCの拡
散を図るのが適切とされていた。
【0038】しかしながら、本実験の結果に示されるよ
うに圧延パス間での時効処理は有効でなく、タンデム圧
延機による圧延が有効であった。両者の差異について考
察すると、前者では圧延時の歪速度が相対的に小さい、
また圧延パスの間に十分時間があり、その間に加工歪に
起因して発生した熱により必然的にCの転位への拡散現
象による静的時効が起きるのに対し、後者は圧延時の歪
速度が相対的に大きく、また圧延パス間の時間が極めて
短いため静的時効は起らず、圧延パス中、転位が付加さ
れつつ同時にCの転位への拡散による動的歪時効が起る
点にある。
【0039】本実験の結果はタンデム圧延方式がリバー
ス圧延方式に優ること、およびタンデム温間圧延は低温
度のタンデム圧延に優ること、さらに、リバース圧延方
式ではパス間時効が有害なことを示している。したがっ
て、歪速度が大きいことおよび動的時効は有効に作用す
るが、静的時効は有害な作用を及ぼすことを示してい
る。このことより、本発明においてはタンデム圧延機で
の圧延を採用し、かつ圧延温度を90℃以上、好ましく
は120℃以上、180℃以下とすることが望ましい。
【0040】(実験4)成分の再検討 実験1から、スラブのAl含有量を比較的少なくし、ス
ラブ加熱温度を低くすることが、EIコアの鉄損値の低
減に有効であることがわかった。Alは、AlNとして
インヒビターの働きをするので、Nの含有量について再
検討した。
【0041】表2に示される鋼記号IV〜VIIIのス
ラブを1150℃に加熱後、熱間圧延し、2.4mm厚
の熱延コイルとした。その後900℃で60秒間の熱延
板焼鈍を施し、酸洗後、150℃の温度でタンデム圧延
機によって0.34mmの厚みに圧延した。その後脱脂
処理を行い、800℃で2分間の脱炭焼鈍を施し、焼鈍
分離剤を塗布後、昇温時700℃までN2単独の雰囲
気、その後850℃までは25%N2と75%H2の混合
雰囲気、以後H2単独雰囲気で1180℃まで昇温後5
時間保持する最終仕上げ焼鈍を施し、その後未反応分離
剤を除去した。これらのコイルはさらに60%のコロイ
ダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とす
る絶縁コーティングを塗布し800℃で焼き付け製品と
した。
【0042】各製品より圧延方向に沿ってエプスタイン
サイズの試験片を切り出し800℃で3時間の歪取焼鈍
を施した後、1.0Tおよび1.7Tの磁束密度におけ
る鉄損の値W10/50、W17/50および磁束密度
B8を測定した。これらの値を表5にまとめて示す。さ
らに、各製品からEIコア用の鉄芯を打抜き、歪取焼鈍
を施し、積み加工、銅線の巻加工などによってEIコア
を作製した。これらのコアの鉄損特性についても表5に
併記する。
【0043】
【表5】
【0044】表5より、Al/N、の値が27/14
(=1.93)に近い程、つまり、原子数比で1:1に
近い程、良好な結果が得られた。AlNとインヒビター
として使用する通常の方向性電磁鋼板では、原子数では
Alの方がNよりも多い。このように、Al/Nが1:
1に近い程良好な結果が得られた理由については次のよ
うに考えられる。通常の方向性電磁鋼板では、(11
0)[001]方位への高い集積が要求されるため、仕
上げ焼鈍の際に、二次再結晶の開始温度を高め、(11
0)[001]に非常に近い方位の粒のみを二次再結晶
させている。つまり、AlNが完全に固溶し、抑止力が
なくなる温度を高めるために、Al量を過剰にしてい
る。しかし、本発明では、(110)[001]への集
積は多少弱くても、二次粒を細粒化させ、実機での鉄損
を低くすることが必要である。従ってAlを過剰に含有
する必要はない。但し、インヒビターが弱すぎることも
好ましくなく、比較的少いAl量で、かつ、AlNのイ
ンヒビター効果を有効に活用するには、AlとNを原子
数で等量ずつ含有させるのが好ましい。
【0045】以上の実験結果から本発明の基本的構成は
明らかであるが、以下具体的に実施態様について説明す
る。まず、成分について述べる。
【0046】C:0.02〜0.07% Cの含有量は0.07%以下とする。即ち、0.07%
を超えるとγ変態量が過剰となり、熱間圧延中のAlの
分布が不均一となり熱延板焼鈍の昇温過程で析出するA
lNの分布も不均一となり低磁場における良好な磁気特
性が得られない。一方、0.02%未満では組織改善効
果が得られず二次再結晶が不完全となり同じく磁気特性
が劣化する。従って、Cは0.02〜0.07%の範囲
に限定される。
【0047】Si:2.0〜4.5% Siは電気抵抗を増加させ鉄損を低減するために必須の
元素であり、このためには2.0%以上含有させること
が必要であるが、4.5%を超えると加工性が劣化し、
電磁鋼板の製造や、製品の加工が極めて困難になるので
2.0〜4.5%の範囲とする。
【0048】Mn:0.03〜2.5% MnもSiと同じく電気抵抗を高め、また、製造時の熱
間加工性を向上させるので必要な元素である。この目的
のためには0.03%以上の含有が必要であるが2.5
%を超えて含有した場合γ変態を誘起して磁気特性が劣
化するので、0.03〜2.5%の範囲とする。
【0049】インヒビター成分、Al:0.010〜
0.020% 鋼中にはこれらの元素の他に二次再結晶を誘起するため
のインヒビター成分の含有が必要である。まずAlを
0.010〜0.020%含有させることが必要であ
る。ここでAlの含有量が0.010%未満の場合、熱
延板焼鈍の昇温過程において析出するAlNの量が不足
し、逆に0.020%を超える場合1200℃前後での
スラブの低温加熱においてのAlNの固溶が困難となる
し、また、AlNの固溶温度が上昇するため熱間圧延に
おいてAlNが析出し熱延板焼鈍の昇温過程におけるA
lNの微細析出が不能となり、低磁場での良好な鉄損特
性が得られない。この不備を解消するため1400℃前
後の高温度でのスラブ加熱を行うと、製品の結晶粒径が
粗大化し、高磁場での鉄損が低減し、低磁場での鉄損が
増大する結果となり実機の鉄損が劣化する。したがっ
て、Alは0.010〜0.020%の範囲とする。
【0050】インヒビター成分、Sb:0.0010〜
0.080% インヒビターとしてSbも含有させる。Sbは熱間圧延
において微細な析出物を形成し、次工程の熱延板焼鈍の
昇温過程におけるAlNの析出核を増加させる作用を有
する。かかる作用を得るために0.0010%以上が必
要であるが、0.08%を超えると製品のベンド特性な
ど機械特性が劣化するので、その含有量は0.0010
〜0.080%の範囲とする。
【0051】N:0.0030〜0.0100% さらにNはAlNを形成し、インヒビターとして機能す
るので0.0030%以上の含有させることが必要であ
る。しかしながら、0.0100%を超えて含有すると
鋼中でガス化し、フクレなどの欠陥をもたらすので0.
0030〜0.0100%の範囲にしなければならな
い。なお、Al/Nの比については極力1に近いのが望
ましいことはすでに述べたところである。
【0052】その他添加元素:Mo、Bi,Te、N
b、Sn、Crなど その他の添加元素については高磁場鉄損特性に比較して
低磁場鉄損特性の良好な方向性電磁鋼板を得るためには
必ずしも必要とされるものではないが、例えば、Moの
添加などは鋼板の表面性状を改善する効果があるのでB
iやTeなどを適宜含有させることは可能である。ま
た、Sbと同様の働きをするものとして、Nb、Sn、
Cr等を含有させることも可能である。
【0053】(スラブ加熱)以上の成分に調整された鋼
は通常スラブ加熱に供されたのち、熱間圧延により熱延
コイルとされるが、このスラブ加熱温度を1250℃以
下とすることが本発明において重要であることはすでに
述べたとおりである。即ち、高温でのスラブ加熱を行っ
た場合、製品の結晶粒が粗大化し、低磁場での鉄損が劣
化する。したがって良好な結晶粒分布と磁気特性を得る
ためにはスラブ加熱温度を1250℃以下としなければ
ならない。なお、近年、スラブ加熱を行わず連続鋳造
後、直接熱間圧延を行う方法が開発されているが、この
方法はスラブ加熱温度を低くとれるので、本発明におい
ても好適に実施しうる。
【0054】(熱間圧延、冷間圧延)次に、熱延コイル
に熱延板焼鈍を施し、酸洗後、冷間圧延し、続いて一次
再結晶焼鈍を兼ねた脱炭焼鈍を施す。冷間圧延において
は、タンデム圧延機による1回の圧延で最終板厚とす
る。この場合、1回の冷間圧延によって最終板厚とされ
るが、タンデム圧延機による圧延とすることが必須の条
件となる。ここでタンデム圧延機とは、ロール対の間を
通板し圧延する圧延機を通板方向に連続的に並設し、鋼
板の流れに対し連続して圧延することを可能としたもの
をいう。かかるタンデム圧延機での圧延によって圧延パ
ス間における有害な静的歪時効を抑制することが可能で
あるとともに歪速度を増大させ良好な圧延集合組織を得
ることが可能となることは実験3の考察から明らかであ
る。これにより一次再結晶集合組織が二次再結晶の粒成
長を促進する方向へと改善され、微細結晶粒の核生成と
成長が促進される。この点において、必然的に静的時効
を伴い、二次再結晶粒の成長性に劣る一次再結晶組織が
もたらされ、二次再結晶不良が生ずるゼンジマー圧延機
などのリバース方式の場合と異なる。
【0055】(温間圧延、圧下率)上記タンデム圧延の
際、圧延中の鋼板温度を高めることによって動的歪時効
を惹起し、さらに好ましい効果を得ることも可能であ
る。このための圧延温度としては鋼板の温度で90℃以
上、300℃以下、好ましくは120℃以上、180℃
以下が適切である。本発明においては、さらに、冷間圧
延の圧下率を80%以上、95%以下とする。温間圧延
の場合も同様である。圧下率が80%未満の場合は製品
の粒径が粗大化し、高磁場鉄損の低減の割に低磁場鉄損
が増大する。逆に圧下率が95%を超える場合は、二次
再結晶不良が生じる。
【0056】(熱延板焼鈍、脱炭焼鈍)熱延板焼鈍と脱
炭焼鈍においては、実験2で示した通り、熱延板焼鈍温
度x(℃)と脱炭焼鈍温度y(℃)を 800≦x≦1000、かつ (−x/2)+1200≦y≦(−x/2)+1300 に限定する。
【0057】(最終仕上げ焼鈍、コーティング)脱炭焼
鈍後、焼鈍分離剤を塗布し、最終仕上げ焼鈍を施す。な
お、脱炭焼鈍時、及び、最終仕上げ焼鈍時の窒化は極力
抑制することが必要である。最終仕上げ焼鈍後は、必要
に応じて絶縁コーティングを塗布焼き付け、さらに平坦
化焼鈍を施し、製品とする。
【0058】
【実施例】
【実施例1】表2に示される鋼塊記号I〜XIまでの成
分組成の溶鋼を電磁撹拌を印加しつつ連続鋳造でスラブ
となし、1200℃に加熱後、熱間圧延し、2.4mm
の厚みの熱延コイルとした。次に熱延コイルに880℃
で60秒間の熱延板焼鈍を施した。さらに、これらのコ
イルは酸洗後150℃の温度でタンデム圧延機によって
0.34mmの厚みに圧延した。その後、脱脂処理を行
い820℃で2分間の脱炭焼鈍を施し、焼鈍分離剤をコ
イル表面に塗布し、昇温時500℃までN2単独の雰囲
気、その後1050℃までは25%N2と75%H2の混
合雰囲気、以後H2単独雰囲気で1200℃まで昇温後
5時間保持する最終仕上げ焼鈍を施し、その後未反応分
離剤を除去した。これらのコイルはさらに40%のコロ
イダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分と
する絶縁コーティングを塗布し800℃で焼き付け製品
とした。
【0059】各製品より圧延方向に沿ってエプスタイン
サイズの試験片を切り出し800℃で3時間の歪取焼鈍
を施した後、1.0Tおよび1.7Tの磁束密度におけ
る鉄損の値W10/50、W17/50および磁束密度
B8を測定した。これらの値を表6にまとめて示す。さ
らに、各製品からEIコア用の鉄芯を打抜き、歪取焼鈍
を施し、積み加工、銅線の巻加工などによってEIコア
を作製した。これらのコアの鉄損特性についても表6に
併記する。表6に示されるように本発明の成分範囲内の
鋼スラブを用いた方向性電磁鋼板は高磁場での鉄損特性
に比較して低磁場での鉄損特性に優れ、実機の鉄損値が
極めて良好である。
【0060】
【表6】
【0061】
【実施例2】表2に示される鋼塊記号IXの成分組成の
スラブを1150、1200、1250、1300、1
350℃の各温度に加熱後熱間圧延し、2.4mmの厚
みの熱延コイルとした。次に熱延コイルに880℃で6
0秒間の熱延焼鈍を施した。さらに、これらのコイルは
酸洗後150℃温度でタンデム圧延機によって0.26
mmの厚みに圧延した。その後、脱脂処理を行い800
℃で2分間の脱炭焼鈍を施し、焼鈍分離剤をコイル表面
に塗布し、昇温時500℃までN2単独の雰囲気、その
後1050℃までは25%N2と75%H2の混合雰囲
気、以後H2単独雰囲気で1200℃まで昇温後5時間
保持する最終仕上げ焼鈍を施し、その後未反応分離剤を
除去した。これらのコイルはさらに40%のコロイダル
シリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶
縁コーティングを塗布し800℃で焼き付け製品とし
た。
【0062】各製品より圧延方向に沿ってエプスタイン
サイズの試験片を切り出し800℃で3時間の歪取焼鈍
を施した後、1.0Tおよび1.7Tの磁束密度におけ
る鉄損の値W10/50、W17/50および磁束密度
B8を測定した。これらの値を表7にまとめて示す。さ
らに、各製品からEIコア用の鉄芯を打抜き、歪取焼鈍
を施し積み加工、銅線の巻加工などによってEIコアを
作製した。これらのコアの鉄損特性についても表7に併
記する。表7に示されるようにスラブ加熱温度を125
0℃以下とした場合、高磁場での鉄損特性に比較して低
磁場での鉄損特性に優れ、実機の鉄損値が極めて良好で
ある。
【0063】
【表7】
【0064】
【実施例3】表2に示される鋼塊記号VIIの成分組成
のスラブを1180℃で加熱後熱間圧延し、2.4mm
の厚みの熱延コイルとした。次に熱延コイルに60秒間
の熱延板焼鈍を施し、酸洗後80℃の温度でタンデム圧
延機によって0.34mmの厚みに圧延した。その後、
脱脂処理を行い2分間の脱炭焼鈍を施し、焼鈍分離剤を
コイル表面に塗布し、昇温時500℃までN2単独の雰
囲気、その後1050℃までは25%N2と75%H2
混合雰囲気、以後H2単独雰囲気で1200℃まで昇温
後5時間保持する最終仕上げ焼鈍を施し、その後未反応
分離剤を除去した。ここで、熱延板焼鈍温度x℃と脱炭
焼鈍温度y℃は (x、y)=(750、800)、(800、75
0)、(800、850)、(800、950)、(9
00、750)、(900、800)、(900、85
0)、(1000、750)、(1000、800)、
(1000、850)、(1050、800)の11条
件に変化させた。これらのコイルはさらに40%のコロ
イダルシリカを含有するリン酸マグネシウムを主成分と
する絶縁コーティングを塗布し800℃で焼き付け製品
とした。
【0065】各製品より圧延方向に沿ってエプスタイン
サイズの試験片を切り出し800℃で3時間の歪取焼鈍
を施した後、1.0Tおよび1.7Tの磁束密度におけ
る鉄損の値W10/50、W17/50および磁束密度
B8を測定した。これらの値を表8にまとめて示す。さ
らに、各製品からEIコア用の鉄芯を打抜き、歪取焼鈍
を施し、積み加工、銅線の巻加工などによってEIコア
を作製した。これらのコアの鉄損特性についても表8に
併記する。表8に示されるようにxとyとの関係を 800≦x≦1000、かつ (−x/2)+1200≦y≦(−x/2)+1300 の範囲内とした場合、高磁場での鉄損特性に比較して低
磁場での鉄損特性に優れ、実機の鉄損値が極めて良好で
ある。
【0066】
【表8】
【0067】
【実施例4】表2に示される鋼塊記号Vの組成を有する
溶鋼を電磁撹拌を印加しつつ連続鋳造機でスラブに鋳込
んだ。このスラブを7本、1230℃で加熱後、熱間圧
延し、(a)2.0mm、(b)2.2mm、(c)
2.5mm、(d)2.7mm、(e)3.2mm、
(f)3.6mm、(g)13mm厚みの熱延コイルと
した。ついで900℃で30秒間の熱延板焼鈍を行い、
酸洗後、冷間圧延により0.49mmの厚みに圧延し
た。したがって(a)のコイルの圧下率は76%、
(b)のコイルの圧下率は78%、(c)のコイルの圧
下率は80%、(d)のコイルの圧下率は82%、
(e)のコイルの圧下率は85%、(f)のコイルの圧
下率は86%、(g)のコイルの圧下率は96%であ
る。これらの圧延の際、圧延はコイル温度を120〜1
80℃の温度とし、またタンデム圧延機によって圧延を
行った。その後、各コイルは脱脂処理を行い840℃で
2分間の脱炭焼鈍を施し、焼鈍分離剤をコイル表面に塗
布し、昇温時700℃までN2単独の雰囲気、その後8
50℃までは25%N2と75%H2の混合雰囲気、以後
2単独雰囲気で1200℃まで昇温後5時間保持する
最終仕上げ焼鈍を施し、その後未反応分離剤を除去し
た。これらのコイルはさらに60%のコロイダルシリカ
を含有するリン酸マグネシウムを主成分とする絶縁コー
ティングを塗布し800℃で焼き付け製品とした。
【0068】各製品より圧延方向に沿ってエプスタンサ
イズの試験片を切り出し800℃で3時間の歪取焼鈍を
施した後、1.0Tおよび1.7Tの磁束密度における
鉄損の値、W10/50、W17/50および磁束密度
B8を測定した。これらの値を表9にまとめて示す。さ
らに、各製品からEIコア用の鉄芯を打抜き、歪取焼鈍
を施し、積み加工、銅線の巻加工などによってEIコア
を作製した。これらのコアの鉄損特性についても表9に
併記する。表9に示されるように冷間圧延の圧下率を8
0%以上、95%以下とした本発明構成要件を満足する
方向性電磁鋼板は高磁場での鉄損特性に比較して低磁場
での鉄損特性に優れ、実機の鉄損値が極めて良好であ
る。
【0069】
【表9】
【0070】
【発明の効果】以上詳細したように本発明の製造方法に
従えば、高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優
れた方向性電磁鋼板が確実に得られ、これを用いたEI
コアなど実機の特性が優れた製品が得られるとともに、
電磁鋼板スラブ加熱温度を大きく低下させることができ
るので、省エネルギーに寄与するところも大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】EIコアの鉄損値に及ぼす熱延板焼鈍温度と脱
炭焼鈍温度の関係図
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 定廣 健一 岡山県倉敷市水島川崎通1丁目(番地な し) 川崎製鉄株式会社 水島製鉄所内 (56)参考文献 特開 昭63−53214(JP,A) 特公 平6−80172(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 8/12 C22C 38/00 303 C22C 38/60 H01F 1/16

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 重量%で Si:2.0〜4.5% C:0.02〜0.07% Mn:0.03〜2.5%N:0.0030〜0.0100% を含有し、インヒビター成分として Al:0.010〜0.020% Sb:0.0010〜0.080% を含有する鋼スラブを加熱後、熱間圧延をし、次いで熱
    延板焼鈍を施した後、冷間圧延により最終板厚とし、さ
    らに、脱炭焼鈍および焼純分離材を塗布して仕上焼鈍を
    施す方向性電磁鋼板の製造方法において、 鋼スラブの加熱温度を1250℃以下とすること 熱延板焼鈍温度x℃と脱炭焼鈍温度y℃を 800≧x≧1000、かつ (−x/2)+1200≦y≦(−x/2)+1300 で行うこと、および冷間圧延をタンデム圧延機により圧
    下率80%以上、95%以下で行うこと、を特徴とする
    高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向
    性電磁鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 インヒビター成分としてさらにMo、B
    i、Te、Nb、Sn、Crを含有することを特徴とす
    る請求項1記載の高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損
    特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 鋼スラブのAl及びNの含有量を 1.67≦Al(wt%)/N(wt%)≦2.18 とすることを特徴とする請求項1または2記載の高磁場
    鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁
    鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 冷間圧延をタンデム圧延機で、圧下率8
    0%以上、95%以下、かつ温度90℃以上で行うこと
    を特徴とする請求項1、2または3記載の高磁場鉄損特
    性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板の
    製造方法。
  5. 【請求項5】 冷間圧延を温度120℃以上、180℃
    以下で行うことを特徴とする請求項4記載の高磁場鉄損
    特性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板
    の製造方法。
JP31309896A 1996-10-21 1996-11-08 高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法 Expired - Fee Related JP3326083B2 (ja)

Priority Applications (7)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31309896A JP3326083B2 (ja) 1996-11-08 1996-11-08 高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法
US08/954,504 US6039818A (en) 1996-10-21 1997-10-20 Grain-oriented electromagnetic steel sheet and process for producing the same
KR1019970053853A KR100440994B1 (ko) 1996-10-21 1997-10-20 방향성전자강판및그제조방법
CNB971252890A CN1153227C (zh) 1996-10-21 1997-10-20 晶粒取向电磁钢板及其生产方法
EP97118278A EP0837149B1 (en) 1996-10-21 1997-10-21 Grain-oriented electromagnetic steel sheet and process for producing the same
DE69705688T DE69705688T2 (de) 1996-10-21 1997-10-21 Kornorientiertes elektromagnetisches Stahlblech und dessen Herstellungsverfahren
US09/493,864 US6331215B1 (en) 1996-10-21 2000-01-28 Process for producing grain-oriented electromagnetic steel sheet

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP31309896A JP3326083B2 (ja) 1996-11-08 1996-11-08 高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JPH10140244A JPH10140244A (ja) 1998-05-26
JP3326083B2 true JP3326083B2 (ja) 2002-09-17

Family

ID=18037143

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP31309896A Expired - Fee Related JP3326083B2 (ja) 1996-10-21 1996-11-08 高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3326083B2 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN106319174B (zh) * 2016-09-23 2018-10-16 武汉钢铁有限公司 提高低温铸坯加热高磁感取向硅钢底层质量的退火隔离剂

Also Published As

Publication number Publication date
JPH10140244A (ja) 1998-05-26

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3392664B2 (ja) 極めて低い鉄損をもつ一方向性電磁鋼板の製造方法
US5330586A (en) Method of producing grain oriented silicon steel sheet having very excellent magnetic properties
JP3357603B2 (ja) 極めて鉄損の低い高磁束密度方向性電磁鋼板の製造方法
JP3326083B2 (ja) 高磁場鉄損特性に比較して低磁場鉄損特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法
JPH032323A (ja) 磁束密度の高い無方向性電磁鋼板の製造方法
JPH10110218A (ja) 磁気特性に優れる方向性電磁鋼板の製造方法
JP2521585B2 (ja) 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JP3310004B2 (ja) 一方向性電磁鋼板の製造方法
JPH08269553A (ja) 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JPH06240358A (ja) 磁束密度が高く、鉄損の低い無方向性電磁鋼板の製造方法
JP2784661B2 (ja) 高磁束密度薄手一方向性電磁鋼板の製造方法
JP3849310B2 (ja) 耳割れのない方向性電磁鋼板の製造方法
JP3474741B2 (ja) 磁気特性に優れた方向性電磁鋼板の製造方法
JP2521586B2 (ja) 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
KR19980017729A (ko) 자성이 우수한 무방향성 전기강판 및 그 제조방법
JPH07110974B2 (ja) 方向性珪素鉄合金薄帯の製造法
JPH04154914A (ja) 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JPS5855209B2 (ja) 時効劣化が少くかつ表面性状の良好な無方向性珪素鋼板の製造方法
KR970007162B1 (ko) 철손 특성이 우수한 저온 스라브 가열방식의 방향성 전기강판의 제조방법
JP3392699B2 (ja) 極低鉄損特性を有する方向性電磁鋼板の製造方法
JP4320794B2 (ja) 圧延方向の磁気特性に優れた電磁鋼板の製造方法
JP3527276B2 (ja) 超高磁束密度一方向性電磁鋼板の製造方法
JPH0257125B2 (ja)
JPH02274814A (ja) 磁気特性の優れた一方向性電磁鋼板の製造方法
JPH04362138A (ja) 磁気特性の優れた厚い板厚の一方向性電磁鋼板の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
LAPS Cancellation because of no payment of annual fees