JP3321284B2 - 特殊加工糸の製造方法 - Google Patents

特殊加工糸の製造方法

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JP3321284B2 JP04788394A JP4788394A JP3321284B2 JP 3321284 B2 JP3321284 B2 JP 3321284B2 JP 04788394 A JP04788394 A JP 04788394A JP 4788394 A JP4788394 A JP 4788394A JP 3321284 B2 JP3321284 B2 JP 3321284B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,マルチフィラメント糸
の長手方向において,自発伸長する部分と収縮する部分
が交互に存在する特殊加工糸製造方法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】マルチフィラメント糸の長手方向全体に
自発伸長性を示す繊維とその製造方法については数多く
提案されている。これらの自発伸長糸と熱収縮性繊維と
の混繊糸を製編織して得られる布帛は,染色加工時の熱
処理により自発伸長糸が布帛の表面に浮き上がり,嵩高
で優れた風合を呈するものとなる。
【0003】しかしながら,近年の消費者ニーズの多様
化により,布帛に自然な斑感が要求されることも多々あ
り,この点からみると,長手方向全体が自発伸長性を示
すマルチフィラメント糸では,布帛は均一に嵩高となる
ので,要求に応えることはできない。
【0004】一方,マルチフィラメント糸の長手方向に
斑を付与する方法として,例えば,特公平4-53969号公
報等には,高配向ポリエステル未延伸糸を1.1倍以上に
延伸しつつ,水又は水性液体を間歇的に付与して熱処理
し,次いで弛緩熱処理を施し,引き続き仮撚加工する方
法が開示されている。しかしながら,この方法では,後
述するように弛緩熱処理工程で高い弛緩率を設定するこ
とができず,このため,たとえ緩熱処理に引き続いて行
う仮撚工程を省略したとしても,本発明の目的とする自
発伸長する部分と収縮する部分が交互に存在する加工糸
を得ることはできなかった。
【0005】また,特公平2-52013号公報,特開昭62−
177242号公報等には,高配向未延伸糸に水又は水性液体
を間歇的に付与し,弛緩熱処理した後,延伸仮撚加工し
て捲縮差や染着差を有する加工糸を製造する方法が開示
されている。しかしながら,これらの方法では,高配向
未延伸糸に直接水又は水性液体を付与し,弛緩熱処理す
るので,たとえ延伸仮撚加工を省略したとしても,後述
するように本発明の目的とする加工糸を得ることはでき
なかった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は,このような
現状に鑑みてなされたもので,他の熱収縮性繊維と混繊
して布帛にすれば,従来の自発伸長糸からなる布帛の優
れた風合を生かしつつ,自然な嵩高斑を付与することが
可能な特殊加工糸製造方法を提供することを技術的な
課題とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは,上記の課
題を解決するために鋭意検討した結果,本発明に到達し
た。すなわち,本発明は次の構成を有するものである。
【0008】(1) マルチフィラメントよりなる高配向未
延伸糸を十分に配向又は結晶化させることなく延伸した
後,引き続き連続して水又は水性液体を間歇的に付与し
ながら弛緩熱処理を施すに際し,弛緩熱処理温度におけ
る水又は水性液体を間歇付与されたマルチフィラメント
糸の最大収縮率の50%以上の弛緩率で弛緩熱処理するこ
とを特徴とする特殊加工糸の製造方法。
【0009】以下,本発明について詳細に説明する。
【0010】まず,本発明で得られる特殊加工糸を構成
するマルチフィラメント糸の素材は,自発伸長性を付与
し得るポリマーであれば特に限定されるものではない
が,通常はポリエチレンテレフタレート(PET)に代
表されるポリエステルや第三成分を含む共重合ポリエス
テル,ポリ−ε−カプロラクタム(ナイロン6),ポリ
ヘキサメチレンアジパミド(ナイロン66)に代表される
ポリアミド及び共重合ポリアミド等のポリマーが好適に
用いられる。また,各単フィラメントの成分が,例え
ば,サイドバイサイド型断面や芯鞘型断面を有する複数
のポリマーで構成されたものでもよく,さらに,フィラ
メント数やフィラメントの断面形状等も,特に限定され
るものではない。
【0011】本発明で得られる特殊加工糸は,マルチフ
ィラメント糸の長手方向に,熱処理により自発伸長する
部分と収縮する部分が交互に存在しているものであり,
これにより,製編織すれば,従来の自発伸長糸からなる
布帛の優れた風合を生かしつつ,従来にない自然な嵩高
斑を有する布帛に仕上げることが可能となる。
【0012】熱処理により自発伸長する部分と収縮する
部分が存在するとは,熱水中または100℃以上の高温雰
囲気中にマルチフィラメント糸をフリーの状態で5〜30
分間静置した場合に,伸長する部分と収縮する部分が存
在することを意味する。
【0013】自発伸長する部分と収縮する部分は交互に
存在する必要があるが,糸条における各自発伸長性部分
と各収縮性部分はランダムな長さであることが好まし
い。両者の長さは,目的に応じた長さであればよいが,
通常はそれぞれ数ミリメートル〜数メートルの範囲内で
あることが好ましく,自発伸長性部分の平均の長さと収
縮性部分の平均の長さの比は,およそ40:60〜95:5の
範囲が好ましい。
【0014】次に,特殊加工糸の製造方法を図面を用い
て説明する。
【0015】図1は本発明の一実施態様を示す概略工程
図である。図1において,供給糸である高配向未延伸糸
1はフィードローラ2によって延伸域に引き出され,フ
ィードローラ2と第1デリベリローラ4との間で,第1
ヒータ3により加熱されながら十分に配向又は結晶化す
ることなく延伸される。次いで,液体噴射ノズル5によ
り間歇的に,好ましくはランダムな周期で水又は水性液
体が付与され,第1デリベリローラ4と第2デリベリロ
ーラ7との間で第2ヒータ6により弛緩熱処理されて目
的とする特殊加工糸となった後,捲取装置8でパッケー
ジ9に捲取られる。
【0016】本発明では,供給糸として,前記したポリ
エステルやポリアミド等のポリマーで構成された高配向
未延伸糸を用いる必要がある。高配向未延伸糸は,常法
の高速紡糸によって得ることができるが,その複屈折率
は,例えば,PETでは15×10-3〜80×10-3,ナイロン
6では35×10-3〜55×10-3程度のものが好ましい。
【0017】また,高配向未延伸糸を十分に配向又は結
晶化させることなく延伸するとは,延伸後における糸条
の熱水収縮率が供給糸である高配向未延伸糸の熱水収縮
率に比べて著しく低下しない条件で延伸することを意味
する。およその目安としては,高配向未延伸糸の熱水収
縮率が延伸前のそれの40%未満に低下しないような条件
で延伸することが好ましいが,ポリマーの種類,加工速
度,延伸温度,ヒータの仕様等の条件により異なるの
で,必ずしも限定されるものではない。
【0018】具体的な延伸条件としては,例えば,前記
したポリエステルやポリアミドの高配向未延伸糸を,接
触式ヒータを用いて加工速度 100〜200m/分で熱延伸す
る場合,延伸倍率をおよそ1.3倍以下,特に1.1倍以下
とし,延伸温度を糸条のガラス転移温度(Tg)〜Tg+30℃
とするのが好ましいが,加工速度を速くする場合や非接
触式ヒータを用いる場合には,延伸温度をさらに高くす
ることも可能である。また,延伸温度をTg未満,特に室
温とする場合には延伸倍率をさらに高くすることも可能
である。
【0019】本発明では,上記のような条件で延伸した
マルチフィラメント糸に水又は水性液体を間歇的に付与
しながら,弛緩熱処理温度における水又は水性液体を間
歇的に付与されたマルチフィラメント糸の最大収縮率の
50%以上,好ましくは70%以上の弛緩率で弛緩熱処理す
ることが必要である。
【0020】マルチフィラメント糸の長手方向におい
て,水又は水性液体が付与されたフィラメント部分(水
付部分)は第2ヒータ6による熱を受け難いため,弛緩
熱処理時の収縮率が低くなり,自発伸長糸を製造するの
に不可欠な高弛緩率下での収縮処理を受けないので,熱
収縮性を有する部分となる。一方,水又は水性液体が付
与されなかったフィラメント部分(非水付部分)は第2
ヒータ6からの熱により収縮し,第1デリベリローラ4
と第2デリベリローラ7との間の弛緩率によっては自発
伸長性を示す部分となる。
【0021】非水付部分が自発伸長性を示すためには,
弛緩熱処理温度におけるマルチフィラメントの最大収縮
率の50%以上,好ましくは70%以上の弛緩率を採用する
必要がある。ここでいう最大収縮率とは,水付部分と非
水付部分を有するマルチフィラメント糸を,弛緩熱処理
温度において加工可能な範囲で最大限に熱収縮させたと
きの弛緩率である。弛緩率が最大収縮率の50%未満の場
合であっても,自発伸長性を示すこともあるが,通常は
熱収縮性を示すものとなり,本発明の目的を達成するこ
とができない。
【0022】弛緩熱処理温度は,マルチフィラメント糸
の構成ポリマーや加工速度等によっても影響されるが,
ガラス転移点以上の温度か,又は供給糸を熱延伸した場
合には延伸温度よりも高い温度を採用するのが好まし
く,場合によっては500 〜 600℃又はそれ以上の温度で
さえも採用することができる。
【0023】マルチフィラメントに水又は水性液体を間
歇的に付与する方法として,図1では液体噴射ノズル
(コンピュータで噴射時間を制御する)による方法を示
したが,この方法に特に限定されるものではなく,例え
ば,特開昭57−199826号公報等に記載された電磁ソレノ
イドを利用した方法等を使用してもよい。また,水を間
歇的に付与する際の周期はランダムにするのが好まし
く,マルチフィラメント糸の水付部分又は非水付部分の
長さは目的に応じて自由に設定することができるが,通
常はそれぞれ数ミリメートルから数メートルの範囲内に
設定すればよい。
【0024】本発明に適用できる水性液体は,マルチフ
ィラメント糸に対してヒータからの熱を遮断する効果を
低下させるものでなければ特に限定されるものではな
く,界面活性剤,染料,染色助剤等を水に添加したもの
を使用することができる。
【0025】
【作用】本発明の製造方法は,マルチフィラメントの長
手方向に,熱処理により自発伸張する部分と熱収縮する
部分が交互に存在する加工糸を得ることを目的としてい
る。このため,マルチフィラメントに対する間歇的な水
付処理を延伸工程ではなく,弛緩熱処理工程で行うこと
が必要である。
【0026】ここで,前記特公平4-53969号公報に記載
されたように,高配向未延伸糸の延伸時に間歇的な水付
処理を施すと,水付部分はヒータからの熱が及ばないた
め,非水付部分が選択的に延伸される。このため,延伸
倍率をたとえ1.1倍に設定していても,非水付部分の実
質的延伸倍率は1.1倍を大きく超え,配向・結晶化が十
分に進んでしまい,その結果,後の弛緩熱処理工程では
熱収縮し難くなる。また,水付部分は延伸熱処理後も水
分が残っているため,弛緩熱処理時においてもヒータか
らの熱を受け難くて収縮量が小さくなる。したがって,
この方法では自発伸張性を付与し得るほどの大きな弛緩
率での熱処理を行うことができない。
【0027】また,特公平2-52013号公報や特開昭62−
177242号公報に記載されたように,高配向未延伸糸を予
め延伸することなく水又は水性液体を間歇的に付与し,
弛緩熱処理を行うと,本発明者らの試験によれば,自発
伸張する部分と熱収縮する部分が交互に存在する本発明
の特殊加工糸は得られない。この理由は不明であるが,
高配向未延伸糸を予め延伸しないと,弛緩熱処理を施し
ても自発伸張性を示すに適した内部構造に変化し難いの
ではないかと考えられる。
【0028】本発明の方法においては,まず,高配向未
延伸糸を配向又は結晶化を十分に促進させることなく延
伸するので,マルチフィラメント糸全体が収縮性を示す
とともに,自発伸張性を示すに適した内部構造に変化し
やすい状態をつくりだすことができる。この状態で水又
は水性液体を間歇的に付与し,最大収縮率の50%以上の
弛緩率で弛緩熱処理すると,収縮するのは非水付部分の
みなので,非水付部分の実質的収縮率は設定した弛緩率
よりも大幅に高くなり,自発伸張性が付与されることに
なる。一方,水付部分は弛緩熱処理時の収縮率が低いた
め,熱収縮性を示す部分となる。このため,本発明の方
法によってはじめて自発伸張する部分と熱収縮する部分
が交互に存在する特殊加工糸を得ることが可能となる。
【0029】本発明において,マルチフィラメント糸の
長手方向における,自発伸長する部分の自発伸長率と収
縮する部分の熱収縮率,最大収縮率及び弛緩熱処理時の
弛緩率は,次の方法で測定するものである。 (1) 自発伸長率と熱収縮率 特殊加工糸に2/1000(g/d) の荷重下,予め1cm間隔で印
を付けてから糸条をフリーの状態で5分間沸水処理し,
次いで,処理後における印の間隔を2/1000(g/d)の荷重下
で測定する。印の間隔が1cmより長くなったもの50個の
平均値より自発伸長率を,1cmより短くなったもの50個
の平均値より熱収縮率を百分率(%)で算出する。
【0030】(2) 最大収縮率 図1において,高配向未延伸糸に水又は水性液体を間歇
的に付与し,弛緩熱処理する際に,第1デリベリローラ
4を一定速度とし,第2デリベリローラ7を第1デリベ
リローラ4と同速度から徐々に速度を落として弛緩率を
徐々に上げ,走行糸条がローラやガイド等に巻き付くこ
となく操業できる最大の弛緩率を求める。この操作を3
回繰り返し,最大の弛緩率の平均値を最大収縮率とす
る。
【0031】(3) 弛緩熱処理時の弛緩率 図1において,第1デリベリローラ4の速度をP,第2
デリベリローラ7の速度をQとすると,(P−Q)× 1
00/P で定義する。
【0032】
【実施例】次に,本発明を実施例により具体的に説明す
る。
【0033】実施例1,2及び比較例1〜3 図1に示した工程に従い,常法によって得られた複屈折
率が56×10-3で熱水収縮率が46%のPET高配向未延伸
糸110d/36fを用い,表1に示した条件で加工した。な
お,第1ヒータは接触式,第2ヒータは非接触式のもの
を用いた。得られた加工糸の熱処理により自発伸長する
部分の自発伸張率と,収縮する部分の熱収縮率を併せて
表1に示す。
【0034】
【表1】
【0035】実施例1,2で得られた加工糸は,熱処理
により自発伸長する部分と収縮する部分を交互に有する
ものであった。実施例1,2で得られた本発明の特殊加
工糸を,75d/36fのPET延伸糸と混繊交絡した混繊糸を
経糸及び緯糸に用いて平組織に製織した後,常法で染色
仕上加工を施して経糸密度 115本/2.54cm,緯糸密度78本
/2.54cm の織物を得,評価したところ,全体的には嵩高
性に富みながら自然な嵩高斑が見られ,ナチュラル感,
ウォーム感,手触り感等に優れていた。
【0036】一方,弛緩熱処理時の弛緩率が小さい比較
例1,水を間歇的に付与しながら熱延伸した後,弛緩熱
処理した比較例2及び延伸することなく弛緩熱処理を施
した比較例3で得られた加工糸には,いずれも熱処理に
より自発伸長する部分が形成されなかった。
【0037】
【発明の効果】本発明で得られる特殊加工糸は,マルチ
フィラメント糸の長手方向において,熱処理によって自
発伸長する部分と収縮する部分が交互に存在するので,
この加工糸を他の熱収縮性繊維と混繊して製編織すれ
ば,従来の自発伸長糸からなる布帛の優れた風合を生か
しつつ自然な嵩高斑を有する布帛を得ることができる。
またこのような特殊加工糸を工業的に極めて容易に,
かつ,安価に製造することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の特殊加工糸の製造方法の一実施態様を
示す概略工程図である。
【符号の説明】
1 高配向未延伸糸 3 第1ヒータ 5 液体噴射ノズル 6 第2ヒータ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02J 1/22

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マルチフィラメントよりなる高配向未延
    伸糸を十分に配向又は結晶化させることなく延伸した
    後,引き続き連続して水又は水性液体を間歇的に付与し
    ながら弛緩熱処理を施すに際し,弛緩熱処理温度におけ
    る水又は水性液体を間歇付与されたマルチフィラメント
    糸の最大収縮率の50%以上の弛緩率で弛緩熱処理するこ
    とを特徴とする特殊加工糸の製造方法。
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