JP3320168B2 - サーマルヘッド - Google Patents

サーマルヘッド

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JP3320168B2
JP3320168B2 JP27876093A JP27876093A JP3320168B2 JP 3320168 B2 JP3320168 B2 JP 3320168B2 JP 27876093 A JP27876093 A JP 27876093A JP 27876093 A JP27876093 A JP 27876093A JP 3320168 B2 JP3320168 B2 JP 3320168B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、発熱抵抗体へ
の投入エネルギー密度が高い高精細型サーマルヘッドに
関する。
【0002】
【従来の技術】サーマルヘッドは、音が小さく、保守が
容易で、また、ランニングコストが低いなどの特徴があ
り、ファクシミリやワープロ用プリンタなど、各種の記
録装置に使用されている。また、高精細のサーマルヘッ
ド、例えば400dpi (dots per inch )程度以上のも
のは、孔判印刷用としても用いられる。
【0003】ところで、高精細のサーマルヘッドにおい
ては、解像度をより向上させるために、発熱抵抗体の形
状を微細化すること、そして、投入エネルギー密度を増
加することが求められている。このような要求から、投
入エネルギー密度を増加できる構造のサーマルヘッドが
必要とされている。
【0004】サーマルヘッドの発熱抵抗体を微細化し、
また、これに伴い投入エネルギー密度を増加させると、
発熱抵抗体の中央部における発熱温度のピークが上昇す
る。発熱温度が上昇することによって、発熱抵抗体の抵
抗値が動作時間の経過とともに上昇し、やがて規定の抵
抗値を越えてしまうことがある。特に、発熱抵抗体の温
度が600℃を越えるような場合は、サーマルヘッドを
構成するグレーズ層と発熱抵抗体との反応が顕著にな
り、発熱抵抗体の抵抗値が劣化する。
【0005】発熱抵抗体の発熱温度の上昇の原因は、グ
レーズ層から発熱抵抗体へ不純物が拡散することにある
として、グレーズ層と発熱抵抗体との間に、 SiNxOy(0.2 <x<1.1 、0.2 <y<1.8 )……(1) の組成を有する下地層を設け、発熱抵抗体への不純物の
拡散を抑える方法が考えられている(特開昭61−29
7159号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記した従来の方法で
は、下地層の材料を選ぶ場合、グレーズ層から発熱抵抗
体への不純物の拡散を抑える能力、あるいは、グレーズ
層や発熱抵抗体との付着力などの特性が考慮される。
【0007】しかし、本発明者らが、下地層や発熱抵抗
体、保護層に対していろいろな材料を用いたサーマルヘ
ッドを試作し、その特性を調べた結果、サーマルヘッド
の耐パワー性は、必ずしも下地層の特性だけでは決まら
ず、発熱抵抗体や保護層に使用される材料との組み合わ
せで相違することが分かった。
【0008】また、特開昭61−297159号公報で
示された組成範囲の下地層を用いた場合、サーマルヘッ
ドを高解像度で動作させ、投入パワー密度が大きくなる
と、グレーズ層と下地層間で剥離が生じ易くなる。
【0009】これは、グレーズ層と下地層の熱膨脹率に
差があり、動作時に両者の界面に応力が生じる。そし
て、このような熱ストレスが繰り返され剥離に至るもの
と考えられる。このような剥離は、動作時の投入パワー
密度が大きく、また発熱抵抗体の到達温度が高い高精細
サーマルヘッドの場合に顕著になる。
【0010】また、上記した組成範囲の下地層を用いた
場合、Ta−SiO2 やNb−SiO2 を抵抗膜として
用い、ドライエッチングにより抵抗膜をパターニング
し、抵抗層を構成する際にも不具合が生じる。
【0011】例えば、抵抗膜と下地膜とのエッチングの
選択比が小さいために、基板の全範囲に渡ってリード間
の抵抗膜をエッチングするような条件では、下地膜の不
要な部分までエッチングされる。下地膜の不要な部分が
エッチングされると、抵抗膜とリード間に段差を生じ、
その後の工程で保護膜を付けるときにステップカバレー
ジが悪化する。また、下地膜の表面がエッチングされる
ことにより、表面に微細な凹凸が生じ、ドライエッチン
グの際にフッ化物が下地膜の表面に残る。この結果、保
護膜を形成した場合に、下地膜と保護膜間にフッ化物が
存在することになり、両者の付着力が低下する。
【0012】上記したグレーズ層と下地層の剥離、ある
いは、下地膜と保護膜の付着力の低下を解決するため
に、出願人は、下地膜の窒素(N)の含有率を7原子%
以下とするサーマルヘッドを提案している。この場合、
(1)式でy>1.8、すなわち酸素(O)の含有率が
60原子%以上の組成となる。このような組成にするこ
とで以下の2点が改善される。
【0013】(1) グレーズ層との熱膨脹率の差が小さく
なり、耐熱衝撃性が改善される。
【0014】Si、O、N膜の機械的特性や熱膨張率
は、その組成によりSiO2 とSi3 4 のそれぞれの
特性の中間の値を取る。これは、Si−O、またはSi
−Nの結合割合で決まるアモルファス構造が、機械的特
性や熱膨張率などの特性を支配するためと考えられる。
Oの含有率が大きくなればSi−Oの結合割合が増え、
SiO2 的な特性に近づく。一方、Nの含有率が大きく
なればSi−Nの結合割合が増え、Si3 4 的な特性
に近づく。
【0015】例えば、ヌープ硬度を例に取ると、図4に
示すようにN含有率が12原子%以上では殆ど一定の値
を示し、N含有率が12原子%以下になるとN含有率の
低下によってヌープ硬度が低下する。なお、図4で、縦
軸がヌープ硬度(kg・f/mm2 )、そして、横軸が
N含有率(原子%)である。
【0016】Nが12原子%の場合は、Si原子の4本
の結合手の内、概ね1本がNと結合し、残りの3本がO
と結合する場合に相当する。Nの割合がこれ以上になる
と、確率的に大部分のSiが必ず1個以上のNと結合す
る。このような組成範囲では、SiO2 膜と比較して構
造的な自由度が制限され、Si3 4 膜に近い機械的特
性を示すと考えられる。Nが12原子%以下になると、
SiO2 のような構造、即ち頂点のO原子を共有して珪
酸4面体が繋がる構造が支配的になる。このため、結合
構造に対する依存性が大きい膜硬度や膜応力などの特性
は、N含有率が減少するとともにSiO2 膜の特性に近
づく。
【0017】なお、耐熱衝撃に関係する熱膨脹率につい
ては、薄膜での測定は困難である。しかし、SiO
2 (石英)とSi3 4 の熱膨脹率の対比から、N含有
率が減少すると熱膨脹率が増大すると考えられる。ま
た、膜中のN含有率とヌープ硬度の関係からも、N含有
率の減少で熱膨脹率が増大すると考えられる。この場
合、N含有率が12原子%前後から減少するにつれて、
熱膨脹率が大きく増大することが予想される。
【0018】ところで、従来技術(特開昭61−297
159号公報)で示された組成の下地膜と出願人が提案
した組成の下地膜とを比較すると、前者で示した下地膜
の熱膨張率はSi3 4 膜のそれに近く、後者の下地膜
はSiO2 に近いと考えられる。したがって、後者の下
地膜の方が、SiO2 を主成分とするガラスグレーズの
熱膨張率に近く、ヒートサイクルを繰り返すサーマルヘ
ッドの下地層に適している。特に、高精細サーマルヘッ
ドの場合には、発熱抵抗体への投入エネルギー密度が大
きく、下地膜やグレーズ層の到達温度が大きくなるた
め、その効果が大きく、グレーズと下地膜間の剥がれを
抑えることができる。
【0019】なお、下地膜の電気的、あるいは光学的な
特性は、成膜する装置や条件で変化する膜欠陥や不純物
に影響される。しかし、機械的特性や熱膨張率は、成膜
する装置や条件による影響は小さい。したがって、機械
的特性や熱膨張率は、膜組成によってほぼ決定され、成
膜する装置や条件による影響は小さいと考えられる。 (2) 下地膜の耐ドライエッチング性が改善される。
【0020】例えば、Ta−SiO2 やNb−SiO2
の抵抗膜をパターニングする際、エッチングガスとして
CF4 とO2 が用いられ、CDE法で行われる。このと
き、下地膜のエッチンゲレイトはできる限り小さいこと
(エッチングされ難い)が望まれる。エッチンゲレイト
が大きいと、下地膜が不要部分までエッチングされ、不
要な段差が生じたり、また、表面に凹凸が生じ、保護膜
の段差被覆性や付着力が悪化する。
【0021】Si、O、N膜のCDE法に対するエッチ
ングレイトは、膜組成の点から見た場合、O濃度が大き
い(即ちN濃度小さい)ほど小さい。これは、Si−N
結合の方がSi−O結合よりFラジカルに侵され易いこ
とによる。また、Si3 4とSiO2 のCDEレイト
を比較すると、前者の方が1桁大きいことからも予想さ
れる結果である。
【0022】ところで、出願人が提案した下地層は、従
来技術(特開昭61−297159号公報)で示された
下地層に較べ、O濃度が大きくN濃度は小さい。したが
って、CDEレイトが小さく、また、保護膜の段差被覆
性や付着力に優れたサーマルヘッドを実現できる。
【0023】しかし、Si、O、Nの下地膜を用い、O
の含有率が60原子%以上であるサーマルヘッドに対
し、耐パルス寿命試験を行ったところ、初期の段階から
抵抗値が上昇する傾向が見られ、耐パルス寿命特性が悪
化する。
【0024】本発明は、上記した欠点を解決し、耐パワ
ー特性、または、耐パルス寿命特性を改善したサーマル
ヘッドを提供することを目的としている。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明は、発熱抵抗体
と、この発熱抵抗体の下層にグレーズ層との間に設けら
れた無機の下地層と、前記発熱抵抗体の上層に設けられ
た無機の保護層とを具備するサーマルヘッドにおいて、
前記下地層中の酸素含有率(原子%)および前記保護層
中の酸素含有率(原子%)が、前記発熱抵抗体中の酸素
含有率(原子%)と同等、もしくはそれより低く設定さ
れている。
【0026】また、表面がグレーズ処理された支持基板
と、この支持基板上に形成された酸素を含む下地層と、
この下地層上に形成された酸素を含む発熱抵抗体と、こ
の発熱抵抗体に接続された電極層と、前記発熱抵抗体の
少なくとも発熱部を被覆し、酸素を含む保護層とを具備
するサーマルヘッドにおいて、前記発熱抵抗体の酸素の
含有率をX原子%とした場合に、前記下地層の酸素の含
有率がX原子%以下で前記保護層の酸素の含有率がX原
子%以上、あるいは、前記下地層の酸素の含有率がX原
子%以上で前記保護層の酸素の含有率がX原子%以下に
設定されている。
【0027】また、前記下地層または前記保護層の少な
くとも一方が、酸素の他に珪素を含んでいる。
【0028】また、前記下地層または前記保護層の少な
くとも一方が、酸素の他に珪素および窒素を含んでい
る。
【0029】また、前記下地層の酸素の含有率が60原
子%以上になっている。
【0030】
【作用】本発明者らは、サーマルヘッドの動作時に、発
熱抵抗体の抵抗値が上昇する主な原因が、下地層や発熱
抵抗体、保護層を構成する各構成元素の相互間の固相拡
散や拡散後の反応にあると考えた。このような考えか
ら、サーマルヘッドを図5に示すようにモデル化し、そ
して、無機絶縁膜や抵抗膜に対しいろいろな材料を組み
合わせて加熱処理を行い、抵抗膜のシート抵抗変化や組
成変化を調べた。なお、強制加熱の条件としては、80
0℃、30分の真空中加熱を用いた。
【0031】図5でモデル化されたサーマルヘッドで
は、Al2 3 からなる支持基板21、支持基板21上
に形成されたグレーズ層22、そして、無機絶縁膜2
3、抵抗膜24が順に形成されている。
【0032】なお、無機絶縁膜23には、Si−O系、
Si−O−N系、Al−O−N系、Ta−O系などの材
料が、また、抵抗膜24には、Ta−SiO2 、Nb−
SiO2 などの材料が使用された。
【0033】そして、実験結果によれば、無機絶縁膜2
3中の酸素含有率が、抵抗膜24中の酸素含有率と実質
的に同等かそれ以下の場合に、加熱処理後の抵抗膜のシ
ート抵抗が上昇していないことが分かった。これに対
し、無機絶縁膜23中の酸素含有率が抵抗膜24中の酸
素含有率より大きくなると、加熱処理後の抵抗膜のシー
ト抵抗は、処理前に比較して上昇していた。この場合、
無機絶縁膜23中の酸素含有率と抵抗膜24中の酸素含
有率の差が大きくなるほど、上昇の程度が大きいことが
分かった。
【0034】例えば、Si、O、N等からなる無機絶縁
膜23上に、Si、O、Taを主成分とするサーメット
抵抗膜24を配した構成の実験結果を図6に示す。図6
では、縦軸が加熱処理前後のシート抵抗の変化(倍)、
横軸が無機絶縁膜23中の酸素濃度(原子%)である。
なお、図6において、○印(a、b)や△印(c、d、
e)、□印(f)は、それぞれ無機絶縁膜23の成膜装
置が相違している。また、◇印はグレーズ層で、成分が
無機絶縁膜23とは相違している。
【0035】ここでは、無機絶縁膜23中の酸素濃度
は、それぞれの膜をXPS(X線光電子分光法)により
分析し、相対感度法で求めた。
【0036】また、加熱処理の前後における抵抗膜中の
組成の変化についても、同じくXPSで解析した。その
結果によれば、加熱処理した後にシート抵抗が増加した
ものほど、抵抗膜中の酸素含有率が増加し、また、S
i、Ta(Nb)等の被酸化成分の含有率が相対的に低
下していた。
【0037】上記の実験結果は、サーマルヘッドの下地
層と抵抗膜間、そして、上下が逆になっているものの抵
抗膜と保護層間、それぞれの構成元素の拡散や拡散後の
反応を単純化した評価に相当する。
【0038】なお、シート抵抗の増加は、(a) 下地層と
抵抗膜間の構成元素の濃度差に応じた固相拡散、(b) 酸
素濃度が増大したことによる抵抗膜中のSi、Ta(N
b)など被酸化成分の酸化、によって定性的に説明され
る。
【0039】したがって、サーマルヘッドが動作するこ
とによって生じる抵抗膜の抵抗値の上昇を抑えるために
は、抵抗膜を挟んで位置する下地層や保護層の酸素濃度
を、抵抗膜中の酸素濃度と実質的に同等かそれ以下の値
とすることにより、また、抵抗膜中への拡散による酸素
の侵入を抑えることが必要となる。
【0040】なお、上記した実験では、各元素の含有率
を評価量として用いている。拡散現象を扱う場合、評価
量として濃度を用いるのが一般的である。しかし、膜中
の各元素の濃度の測定が困難であるため、評価量として
含有率を用いている。
【0041】また、各元素の含有率と濃度との関係は、
膜の材料組成や密度によって異なる。しかし、上記実験
のように、抵抗膜に接する下地層や保護層が無機膜の場
合は、各膜中の各元素の含有率は、濃度の代替指標と考
えることができる。したがって、実際の解析では濃度の
代わりに含有率を用いている。
【0042】上記したように、本発明のサーマルヘッド
によれば、下地層中の酸素濃度および保護層中の酸素濃
度を、発熱抵抗体中の酸素濃度と実質的に同等、もしく
はそれより低く設定している。したがって、固相拡散に
よる発熱抵抗体中の酸素濃度の増大を抑えることができ
る。このため、動作時の抵抗値の上昇を抑えることがで
き、耐パワー性の優れたサーマルヘッドを実現できる。
【0043】次に、変形例について、以下に説明する。
この変形例においては、膜中酸素濃度が抵抗膜に比べて
下地膜中で大きく、保護膜中で大きいか、もしくは逆
に、下地膜中で小さく保護膜中で大きい場合である。
【0044】例えば、酸素含有率が55原子%のTaS
iOで発熱抵抗体を、そして、酸素含有率が62原子%
のSiONで下地層を、また、酸素含有率が48原子%
のSiONで保護膜を、それぞれ形成した。この場合、
サーマルヘッドの駆動中に発熱抵抗体に対し下地層から
酸素が拡散侵入し、抵抗値を上昇させるように作用す
る。しかし、発熱抵抗体から保護膜へ拡散侵入する酸素
もあり、これが抵抗値を下降させるように作用する。こ
の結果、両作用が相殺され、抵抗値を安定にする。
【0045】なお、下地膜と発熱抵抗体との酸素含有率
差と、発熱抵抗体と保護膜との酸素含有率差はほぼ同じ
か、各々の酸素含有率差の差が、せいぜい5原子%以
の範囲であることが望ましい。両者の酸素含有率差の差
が3原子%よりも大きくなると、発熱抵抗体の酸化還元
のバランスが崩れ、サーマルヘッドの駆動中の抵抗値変
化が大きくなり寿命が短くなる。例えば、酸化作用が勝
る場合は抵抗値が初期から上昇する。一方、還元作用が
勝る場合は、抵抗値は初期から低下する。抵抗値が低下
すると、発熱抵抗体に過剰パワーが印加され破壊の原因
になる。本発明によれば、発熱抵抗体の酸素の含有率を
X原子%とした場合に、下地層の酸素の含有率がX原子
%以下で保護層の酸素の含有率がX原子%以上、あるい
は、下地層の酸素の含有率がX原子%以上で保護層の酸
素の含有率がX原子%以下に設定されている。したがっ
て、発熱抵抗体の酸化還元のバランスがよく、耐パルス
寿命特性を改善できる。
【0046】
【実施例】本発明の実施例について、図1を参照して説
明する。
【0047】1は支持体で、例えばAl2 3 が用いら
れる。そして、支持体1の上部に、ガラスグレーズ層2
が形成され、支持基板が構成される。なお、ガラスグレ
ーズ層2はSiO2 を主成分とし、約60μの厚さに形
成される。
【0048】なお、支持体1としてはAl2 3 に限ら
ず、他の金属あるいは非金属を用いることができる。ま
た、ガラスグレーズ層2にもいろいろな添加材料を含ん
だものから選択できる。
【0049】また、支持基板の上に、約1μの膜厚で下
地膜3が形成される。下地膜3の形成にはスパッタリン
グ法が用いられ、Si−O系、Si−O−N系、Si−
Al−O−N系、Si−O−N−Zr系、Ta−O−N
系など種々の材料が用いられる。
【0050】それぞれの系の下地膜は、ターゲットの組
成やスパッタガスの酸素添加量を変え、膜中の酸素濃度
を複数の水準に変化させた。その代表的な例として、S
i−O−N系下地膜を成膜した際の成膜条件を表1に示
す。
【0051】表1.スパッタリング条件 ターゲット投入パワー密度 ;4.3W/cm2 スパッタリングガス及び流量 ;Ar 24 sccm O2 ;(a) 2.4sccm (b) 3.6sccm (c) 4.8sccm (d) 7.2sccm (e) 9.6sccm (f) 12.0sccm スパッタリングガス圧力 ;3.0×10-1Pa 基板加熱温度 ;220℃ 表1の膜組成に付き、それぞれXPS相対感度法で膜組
成を分析した結果を表2に示す。膜組成の値は、下地層
表面から50nmステップで500nmまでのデプスプ
ロファイルをとり、各々の測定点の組成を平均してい
る。
【0052】 表2 下地膜組成 <条件> <O2 流量> <各元素の含有率(原子%)> Si O N C (a) 2.4sccm 37 35 27 1 (b) 3.6sccm 36 42 21 1 (c) 4.8sccm 35 49 15 1 (d) 7.2sccm 34 55 10 1 (e) 9.6sccm 33 59 7 1 (f) 12.0sccm 33 64 2 1 また、下地膜3の上に、スパッタリング法で抵抗膜を形
成した。抵抗膜には、Nb−SiO2 系、または、Ta
−SiO2 系の材料を用い、それぞれの抵抗膜の膜組成
に関しては、下地膜3の場合と同様に、XPSで分析し
た。
【0053】抵抗膜の組成は、ターゲットの組成やスパ
ッタリングの条件で異なるが、代表例を表3に示す。
【0054】 表3 抵抗膜組成 <抵抗膜種> <各元素の含有率(原子%)> Ta Nb Si O C Ta−SiO2 28 − 17 54 1 Nb−SiO2 − 27 18 54 1 抵抗膜を成膜した後、Alリード電極膜やAl共通電極
膜を、それぞれスパッタリング、そして真空蒸着で成膜
した。
【0055】Alリード電極膜やAl共通電極膜を成膜
後、PEP工程を通して発熱抵抗体4、個別電極5、及
び共通電極6を形成した。
【0056】なお、Al電極膜のエッチングには燐酸、
酢酸、硝酸からなる混酸を用いた。また、Ta−SiO
2 やNb−SiO2 抵抗膜のエッチングにはCDE法を
用いた。また、CDEの際の導入ガスとしてCF4 とO
2 を用いている。
【0057】発熱抵抗体や電極の材料には、他の材料を
用いることができ、また、成膜方法やパターニング方法
もいろいろなプロセス技術を用いることができる。
【0058】次に、Al電極の大部分と前記発熱抵抗
体、少なくとも発熱部を被覆するように、保護膜7を形
成した。
【0059】保護膜7は、下地膜3と同様に、Si−O
系、Si−O−N系、Si−Al−O−N系、Si−O
−N−Zr系、Ta−O−N系などの種々の材料を用
い、スパッタリング法によって、3μの膜厚に形成し
た。また、下地膜3と同様に、各々の系の保護膜7に対
し、ターゲットの組成やスパッタガスの酸素添加量を変
え、膜中の酸素濃度を複数に変化させた。
【0060】上記した構成のサーマルヘッドを、実装工
程で製品に組み立て、耐パワー性能の試験を行った。そ
の結果、下地層や保護層中の酸素含有率が、抵抗膜中の
酸素含有率と実質的に同レベルか、それ以下の場合に、
優れた耐パワー特性を示すことが確認された。
【0061】本発明の他の実施例について説明する。A
2 3 からなる支持基体上に、SiO2 を主成分とす
る厚さ約60μのガラスグレーズ層を形成した。なお、
支持基体には、Al2 3 に限らず、種々の金属や非金
属の基板を用いることができる。また、ガラスグレーズ
層も種々の添加材料を含んだものから選択することがで
きる。
【0062】そして、グレーズ層上に、スパッタリング
法を用い、Si、O、Nを主成分とする下地層を形成し
た。下地層の形成条件は、ターゲット投入パワー密度が
4.3W/cm2 、スパッタリングガス及び流量はAr2
4.0sccm・O2 11.0sccm、スパッタリングガス圧
力は3.0×10-1Pa、基板加熱温度は220℃で、
そして厚さは1μmとした。なお、ターゲットは、Si
3 4 とSiO2 の粉末を1:1のmol 比で混合し、ホ
ットプレスで固めた後、焼結したものを使用した。
【0063】上記の条件で形成した下地層の組成を、X
線光電子分光法にて組成分析を行った。その結果、O:
62原子%、Si:33原子%、N:4原子%、C:1
原子%であった。これら組成値は、下地層表面から10
nm間隔でArエッチングによるデプスプロファイルをと
り、各々の組成を平均して求めた。
【0064】この下地膜上に、TaSiOからなる発熱
抵抗体をスパッタリング法により形成した。このとき用
いられたターゲットは、TaとSiO2 の粉末を47:
53のmol 比で混合し、ホットプレスで固めた後、焼結
したものである。
【0065】下地層と同様に発熱抵抗体の組成を分析し
たところ、O:55原子%、Si:16原子%、Ta:
26原子%、C:1原子%であった。
【0066】更に、Alの電極を設け、PEPプロセス
によりパターニングを行った。次に、下地層と同様の方
法で、SiONスパッタ膜の保護層を3μmの厚さに形
成した。なお、酸素の流量は11.0、7.5、4.
5、3.6sccmの4水準とした。それぞれの酸素含有率
は、62、57、48、43原子%となった。図2に
は、下地層A、抵抗体B、保護層Cそれぞれの酸素含有
率の関係を模式的に示している。
【0067】その後、これらの試料を実装工程に移し、
抵抗体形状が35×60μmで、解像度が400dpi
のサーマルヘッドを完成した。
【0068】これらのサーマルヘッドを、パワー0.2
8W/dot 、パルス幅0.5ms、パルス周期3.0msの
駆動条件で連続的にパルスを印加し、耐パルス寿命試験
を行った。その結果を図3に示す。図3の縦軸は抵抗変
化率(%)、横軸はパルスの印加数である。
【0069】本発明により作成されたサーマルヘッドの
うち、a(酸素含有率48原子%)、b(酸素含有率5
5原子%)、c(酸素含有率43原子%)は、いずれも
108 回パルス印加に至るまで、抵抗値の変化率は±8
%以内と安定していた。特に、下地層と発熱抵抗体の間
の酸素含有率の差、そして、発熱抵抗体と保護層の間の
酸素含有率の差が、いずれも7原子%と同一に作成され
た(a)では、抵抗値変化率は±2%以下と極めて安定
していた。また、発熱抵抗体と保護層の間に酸素含有率
に差が認められない(b)においては、抵抗値は初期か
ら上昇を示している。これは、下地層の酸素が発熱抵抗
体中に徐々に拡散侵入し、発熱抵抗体の酸化を促進する
ためと考えられる。下地層と発熱抵抗体の間の酸素含有
率の差より、発熱抵抗体と保護層の間の酸素含有率の差
の方が大きい(c)においては、抵抗値は初期から下降
を示した。これは、下地層の酸素が発熱抵抗体中に移行
する分より、発熱抵抗体中の酸素が保護層側へ移行する
分が多く、総合的には発熱抵抗体が還元作用を受けるた
めと考えられる。
【0070】(d)は本発明の組成範囲外の値で作成さ
れたもので、発熱抵抗体より下地層の方が酸素含有率が
多く、また、保護層の酸素含有率も発熱抵抗体よりも多
くしてある。この場合、抵抗値は初期から大きく上昇
し、1×106 回パルスの時点で抵抗値変化率が+10
%に達した。これは、下地層や保護層の両者から発熱抵
抗体中に酸素が拡散侵入し、発熱抵抗体中の酸化が急激
に進んだものと推測される。
【0071】特に、下地層をSiONで形成する場合、
駆動時の発熱抵抗体温度が特に高くなる高解像度サーマ
ルヘッドでは、下地層の酸素含有率が60原子%以下で
あると、グレーズ層と下地層間の剥離が起き易くなり、
一方、60原子%以上であると駆動時の抵抗値変化が正
方向に大きくなるという問題があった。しかし、この問
題は本発明によって解決された。
【0072】
【発明の効果】本発明によれば、抵抗値の上昇を抑制す
ることができ、また、安定した寿命特性を持つサーマル
ヘッドを実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例であるサーマルヘッドの要部を
示す部分分解斜視図である。
【図2】本発明を説明する図で、サーマルヘッドの下地
層、抵抗体、保護層間の酸素含有率の関係を示す模式図
である。
【図3】本発明を説明する図で、耐パルス寿命試験結果
を示す図である。
【図4】サーマルヘッドのヌーブ硬度を説明する図であ
る。
【図5】サーマルヘッドのサンプルを示す断面模式図で
ある。
【図6】サーマルヘッドについて、下地層中の酸素含有
率と加熱処理前後の抵抗膜のシート抵抗の変化との関係
を示す図である。
【符号の説明】
1…支持体 2…ガラスグレーズ層 3…下地層 4…発熱抵抗体 5…個別電極 6…共通電極 7…保護層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平2−249660(JP,A) 特開 平1−222976(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/335

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 発熱抵抗体と、この発熱抵抗体の下層に
    グレーズ層との間に設けられた下地層と、前記発熱抵抗
    体の上層に設けられた保護層とを具備するサーマルヘッ
    ドにおいて、前記下地層中の酸素含有率(原子%)およ
    び前記保護層中の酸素含有率(原子%)が、前記発熱抵
    抗体中の酸素含有率(原子%)と同等、もしくはそれよ
    り低いことを特徴とするサーマルヘッド。
  2. 【請求項2】 表面がグレーズ処理された支持基板と、
    この支持基板上に形成された酸素を含む下地層と、この
    下地層上に形成された酸素を含む発熱抵抗体と、この発
    熱抵抗体に接続された電極層と、前記発熱抵抗体の少な
    くとも発熱部を被覆し、酸素を含む保護層とを具備する
    サーマルヘッドにおいて、前記発熱抵抗体の酸素の含有
    率をX原子%とした場合に、前記下地層の酸素の含有率
    がX原子%以下で前記保護層の酸素の含有率がX原子%
    以上、あるいは、前記下地層の酸素の含有率がX原子%
    以上で前記保護層の酸素の含有率がX原子%以下である
    ことを特徴とするサーマルヘッド。
  3. 【請求項3】 前記下地層または前記保護層の少なくと
    も一方が、酸素の他に珪素を含んでいることを特徴とす
    る請求項2記載のサーマルヘッド。
  4. 【請求項4】 前記下地層または前記保護層の少なくと
    も一方が、酸素の他に珪素および窒素を含んでいること
    を特徴とする請求項2記載のサーマルヘッド。
  5. 【請求項5】 前記下地層の酸素の含有率が60原子%
    以上であることを特徴とする請求項4記載のサーマルヘ
    ッド。
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