JP3312452B2 - 光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン製造法 - Google Patents

光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は医薬原料や不斉合成触媒
として重要な光学活性トランス−1,2−ジアミノシク
ロヘキサン(以下1,2−ジアミノシクロヘキサンをD
ACHと略記する)の工業的に有利な製造法に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】従来、光学活性なトランスDACHの製
造法として、トランスDACHを光学活性酒石酸で光学
分割した後、光学活性トランスDACH・光学活性酒石
酸塩(以下、ジアステレオマー塩と略称する。)を水酸
化カリウム水溶液で解塩してからエーテルで抽出する方
法(Acta.Chemica.Scandinavi
ca,26(1972)3605)や、アミン混合物中
にあるトランスDACHを光学活性酒石酸で光学分割し
た後、ジアステレオマー塩を水酸化ナトリウム水溶液で
解塩してからベンゼンで連続抽出する方法(米国特許第
4085138号)などが提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、DAC
Hは水に対する溶解度が高く、通常の操作で水から分離
することが難しい為に、前者は解塩して遊離してきた光
学活性トランスDACHを工業的に使用することが難し
いエーテルで抽出していること、また後者は遊離してき
た光学活性DACHをベンゼンで連続抽出するなど工夫
しているが、ベンゼンは毒性の高いこと等、いずれも工
業的に有利な製造法とはいい難い。
【0004】従って、本発明の目的は、光学分割で得ら
れたジアステレオマー塩から工業的製造に適した光学活
性DACHの製造法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、光学分割
で得られたジアステレオマー塩から光学純度の高い光学
活性DACHを高収率で得る方法を鋭意検討した結果、
上記目的を達成できることを見いだし、本発明を完成す
るに至った。
【0006】すなわち、本発明は光学分割で得られた
(R,R)−1,2−ジアミノシクロヘキサン・L−酒
石酸塩、または(S,S)−1,2−ジアミノシクロヘ
キサン・D−酒石酸塩から(R,R)−1,2−ジアミ
ノシクロヘキサンまたは(S,S)−1,2−ジアミノ
シクロヘキサンを得るに当たり、アルコール溶液中で無
機アルカリと接触させて遊離状態になった(R,R)−
1,2−ジアミノシクロヘキサンまたは(S,S)−
1,2−ジアミノシクロヘキサンを光学活性DACHの
光学活性酒石酸塩の結晶に対して5〜40wt%の水を
共存させたアルコール中に移行せしめることを特徴とす
る光学活性1,2−ジアミノシクロヘキサンの製造法で
ある。
【0007】以下、本発明を詳細に説明する。
【0008】本発明の原料である(R,R)−1,2−
ジアミノシクロヘキサン・L−酒石酸塩、または(S,
S)−1,2−ジアミノシクロヘキサン・D−酒石酸塩
は、ラセミDACHを光学活性酒石酸で光学分割するこ
とによって得られる。
【0009】本発明は、ジアステレオマー塩を無機アル
カリと接触させて塩交換を行い、遊離した光学活性DA
CHを光学活性DACHの光学活性酒石酸塩の結晶に対
して5〜40wt%の水を共存させたアルコールに移行
させ、酒石酸を無機アルカリの塩として分離することか
らなる。ここで使用される無機アルカリとしてはアルカ
リ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、アルカリ
金属炭酸塩、アルカリ土類金属炭酸塩、或いはアンモニ
ア等が使用されるが、特に好ましくは水酸化ナトリウ
ム、水酸化カリウムである。無機アルカリの使用量はジ
アステレオマー塩に含まれる酒石酸を理論的に中和する
量でよいが、操作性を加味すると反応方法によっても多
少異なるので、後述する。
【0010】本発明では塩交換して遊離してきた光学活
性DACHを光学活性DACHの光学活性酒石酸塩の結
晶に対して5〜40wt%の水を共存させたアルコール
層に移行させると同時に、アルコールに難溶性である酒
石酸のアルカリ塩を固液分離で系外に除去することから
なる。アルコールとしては、メタノール、エタノール、
プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブ
タノール等のアルコール類、またはそれらの任意の混合
物が使用できるが、DACHを蒸留精製する場合には、
DACHの沸点に近いアルコール類を使用すると分離効
率が落ち、DACHの化学純度が低下する原因になる。
ジアステレオマー塩と無機アルカリの接触方法は、アル
コールに無機アルカリを溶解、或いは分散させ、ジアス
テレオマー塩と接触させればよい。しかしながら、ジア
ステレオマー塩はアルコールに対する溶解度が低いの
で、アルコール溶媒だけで塩交換させた場合には長時間
を要する。ここに水を存在させればジアステレオマー塩
の一部が溶解して、塩交換速度を速くすることが出来
る。存在させる水量はジアステレオマー塩重量に対して
5〜40重量%であり、好ましくは20重量%以下であ
る。水量がこれ以上多いと塩交換速度は高く、遊離した
DACHがアルコールに溶解する点では問題ないが、析
出する酒石酸アルカリ塩が溶液中の水分で粘調性を増
し、操作性が悪くなったり、アルコール層の含水量が増
加してDACHの蒸留精製効率が低下するので好ましく
ない。この方法で塩交換する場合には、使用するアルカ
リ量は酒石酸を中和するに必要な理論量以上であればよ
いが、経済性や操作性を考慮すると、通常は1.01〜
1.1当量、好ましくは1.02〜1.06当量であ
る。 塩交換速度を更に増加する場合には、始めに濃ア
ルカリ水溶液とジアステレオマー塩を接触させ、分離し
てきた酒石酸アルカリ塩水溶液を分液で除去した後に、
アルコールを加えればよい。遊離したDACHはアルコ
ールに溶解し、一方難溶性で析出してきた酒石酸アルカ
リ塩を固液分離で除去する方法も採用できる。ここで使
用する濃アルカリ水溶液とは水酸化ナトリウムや水酸化
カリウム水溶液を意味し、濃度は18〜45重量%、好
ましくは20〜30重量%である。アルカリ水溶液の濃
度が低すぎるとDACHが水層に溶解して、回収率が低
下する。またこれ以上濃いとアルカリ水溶液の粘度が高
くなり操作性が悪くなったり、また生成した酒石酸アル
カリ塩が析出して分離が困難となる。ここで使用するア
ルカリ量は、ジアステレオマー塩に含まれる酒石酸を中
和するに必要な理論量以上であればよいが、通常は1.
1〜1.8当量、好ましくは1.2〜1.6当量であ
る。アルカリ量が少なすぎると界面が分かりにくくな
り、また多すぎると経済性が悪化するだけでなく、回収
した酒石酸のリサイクルの効率も低下させるので好まし
くない。
【0011】かくしてアルコール層に移行させた光学活
性DACHは通常の方法、例えば濃縮・蒸留で精製する
ことが出来る。
【0012】
【実施例】以下実施例により本発明を説明するが、本発
明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【0013】なお、実施例中、トランスDACHの光学
純度は以下に示す方法で測定した。
【0014】約0.025%DACHのアセトニトリル
溶液0.1ml(ジアステレオマ−塩を直接分析する場
合には、予めジアステレオマー塩約0.06%水溶液
0.1mlに、約0.4%テトラメチルヘキサメチレン
ジアミンのアセトニトリル溶液0.1mlを添加する)
に0.4%GITCのアセトニトリル溶液0.2mlを
添加し、室温で10分間反応させた後、0.2%エタノ
ールアミンのアセトニトリル溶液 0.1mlを加えて
3分間放置し、0.05%リン酸水溶液 2.0mlで
希釈して試料溶液とする。5時間以内に10μlをHP
LCに注入し、面積比で光学純度を測定する。 GITC:2,3,4,6−テトラ−O−アセチル−β
−D−グルコピラノシルイソチオシアナ−ト <HPLC条件> カラム :CAPCELL PAK SG120 4.6m
m*150mm 溶離液 :0.05% リン酸/アセトニトリル=55/45
1.0ml /min 検出 :254nm 保持時間:(S,S)−DACHのGITC誘導体化物
8.6分 シス−DACHのGITC誘導体化物 10.4
分 (R,R)−DACHのGITC誘導体化物 11.9
【0015】比較例1 温度計、滴下ロ−ト、撹拌機を備えた500mlの4つ
口フラスコにシスDACHとトランスDACHの比が
1:2である混合物102.4g(0.90モル)、水
118.0gを仕込み、撹拌しながらL−酒石酸44.
8g(0.30モル)を添加すると自然発熱して溶解し
た。次いで、撹拌しながら80℃に保ち、酢酸71.8
g(1.20モル)を滴下ロ−トより0.5時間で滴下
した。滴下の途中で結晶が析出してくるが、滴下終了後
のpHは6.5であった。さらに95℃で2時間加熱撹
拌した後、6時間かけて15℃まで冷却した。15℃で
2時間撹拌した後、遠心濾過、リンス、乾燥して65.
7g(0.25モル)の(R,R)−DACH・L−酒
石酸の塩を得た。(R,R)−DACHに対して収率8
3%、光学純度は97.2%ee、トランス/シス比は
40であった。得られた結晶に水479.2gを添加し
て100℃で4時間加熱撹拌した。徐々に冷却して5℃
で遠心濾過、リンスして52.7g(含液率3%)のw
et結晶を得た。収率78%、光学純度は99.6%e
eで、シス体は検出されなかった。得られたwet結晶
52.7gに25%水酸化ナトリウム水溶液80.6g
を加えて70〜80℃に保ちながら解塩し、分液してき
た上層40.0gを分離した。この上層に室温中で撹拌
しながらイソプロパノ−ル145.6gを添加し、更に
30分間撹拌した。次いで、析出したL−酒石酸ジナト
リウムの2水和物を濾過した。一方、濾液を濃縮し、蒸
留することにより沸点82℃/28mmHgの留分とし
て(R,R)−DACH20.0gを得た。光学純度は
99.6%ee、化学純度は99.6%であった。
【0016】実施例 温度計、撹拌機を備えた200mlの4つ口フラスコに
エタノ−ル78.0g、水3.1gと水酸化カリウム1
6.0g(0.29モル)gを仕込み、室温中で撹拌し
て水酸化カリウムを溶解させた。次いで光学純度99.
5%eeの(R,R)−DACH・L−酒石酸塩34.
4g(0.13モル)を4回に分けて添加し、20〜3
0℃で3時間撹拌して解塩した。析出したL−酒石酸ジ
カリウム33.3g(0.13モル)を濾過した。L−
酒石酸ジカリウムの回収率は99%であった。濾液には
(R,R)−DACH14.6gが含まれていた。
【0017】実施例 温度計、撹拌機を備えた200mlの4つ口フラスコに
メタノ−ル77.4g、水4.2gと粉末水酸化ナトリ
ウム10.7g(0.27モル)を仕込み、20〜30
℃にて撹拌し、水酸化ナトリウムを溶解させた。次いで
光学純度99.5%eeの(S,S)−DACH・D−
酒石酸塩34.4g(0.13モル)を添加し、20℃
で2.5時間撹拌して解塩した。析出したD−酒石酸ジ
ナトリウムの2水和物29.3g(回収率は98%)を
濾過した。濾液には(S,S)−DACH14.3gが
含まれていた。
【0018】実施例 温度計、撹拌機を備えた200mlの4つ口フラスコに
イソプロパノ−ル77.3gと水酸化ナトリウム10.
9g(0.27モル)を水12.4gに溶かした溶液を
仕込んだ。次いで光学純度99.5%eeの(R,R)
−DACH・L−酒石酸塩34.4g(0.13モル)
を3分割添加して、室温で3時間撹拌して解塩した。析
出したL−酒石酸ジナトリウム2水塩29.8gを濾過
した。回収率は99.6%であった。濾液には(R,
R)−DACH14.8gが含まれており、解塩率は9
9.8%であった。
【0019】
【発明の効果】本発明によれば光学分割で得られたジア
ステレオマー塩から光学純度の高い光学活性DACHを
高収率で得ることができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C07C 211/36 C07C 209/88 C07B 57/00 360

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (R,R)−1,2−ジアミノシクロヘ
    キサン・L−酒石酸塩、または(S,S)−1,2−ジ
    アミノシクロヘキサン・D−酒石酸塩から(R,R)−
    1,2−ジアミノシクロヘキサンまたは(S,S)−
    1,2−ジアミノシクロヘキサンを得るに当たり、アル
    コール溶液中で無機アルカリと接触させて遊離状態にな
    った(R,R)−1,2−ジアミノシクロヘキサンまた
    は(S,S)−1,2−ジアミノシクロヘキサンを光学
    活性1,2−ジアミノシクロヘキサンの光学活性酒石酸
    塩の結晶に対して5〜40wt%の水を共存させたアル
    コール中に移行せしめることを特徴とする光学活性トラ
    ンス−1,2−ジアミノシクロヘキサン製造法。
  2. 【請求項2】 ルコールがメタノール、エタノール、
    プロパノール類、ブタノール類から選ばれる一種以上の
    アルコールであることを特徴とする請求項1記載の光学
    活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘキサン製造
    法。
  3. 【請求項3】 機アルカリが水酸化ナトリウムおよび
    /または水酸化カリウムであることを特徴とする請求項
    1記載の光学活性トランス−1,2−ジアミノシクロヘ
    キサン製造法。
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