JP2830364B2 - 光学活性1―ベンジル―3―ヒドロキシピロリジンの製造方法 - Google Patents

光学活性1―ベンジル―3―ヒドロキシピロリジンの製造方法

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【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は光学活性1−ベンジル−3−ヒドロキシピロ
リジンの製造方法に関する。
光学活性1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンは
医薬品中間体として有用である。
<従来の技術> 従来、光学活性1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリ
ジンを製造する方法としては、光学活性マンデル酸を分
割剤として用い、アセトン中で(RS)−1−ベンジル−
3−ヒドロキシピロリジンを光学分割する方法が知られ
ている(特開昭61−267577号公報)。
<発明が解決しようとする課題> しかしながら、従来知られている方法は、高純度の光
学活性1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンを製造
する方法としては優れているが、分割剤のマンデル酸は
回収・リサイクルの際、一部ラセミ化するため、工業的
に連続使用する場合に問題がある。
<課題を解決するための手段> そこで、本発明者らは、光学活性1−ベンジル−3−
ヒドロキシピロリジンを工業的に実用化可能な方法で製
造することを目的として鋭意検討した。
その結果、この目的は、一般式(I) (式中、Rはベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニ
ル基、ベンゾイル基またはトルオイル基を示す。また、
nは0または1を意味する。)で示される光学活性カル
ボン酸を分割剤として用いて光学分割することにより達
成されることが判った。
すなわち、本発明は(RS)−1−ベンジル−3−ヒド
ロキシピロリジンを、一般式(I) (式中、R、nは前記と同様のものを示す。)で示され
る光学活性カルボン酸を分割剤として用いて光学分割す
ることを特徴とする光学活性1−ベンジル−3−ヒドロ
キシピロリジンの製造方法である。
以下、本発明の構成を詳しく説明する。
本発明で用いる分割剤は前記式(I)で示される光学
活性カルボン酸(以下、単に「光学活性カルボン酸」と
称する)であり、そのD体およびL体のいずれも用いる
ことができる。
本発明において、原料として用いられる(RS)−1−
ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンは(R)−1−ベ
ンジル−3−ヒドロキシピロリジンと(S)−1−ベン
ジル−3−ヒドロキシピロリジンとを等量含むラセミ型
混合物だけでなく、いずれか一方の光学異性体を等量以
上に含む混合物をも包含する。
(RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンの
光学分割は次の手順と条件で行う。
まず、溶媒中で(RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキ
シピロリジンに対して0.1〜2.1モル、好ましくは0.3〜
1.1モルの光学活性カルボン酸を接触させてジアステレ
オマー塩をつくる。この時、塩酸、硫酸、リン酸などの
鉱酸あるいは酢酸などの有機酸を0.1〜1.0モル、好まし
くは0.3〜0.7モル共存させてもよい。
ここで使用する溶媒としては1−ベンジル−3−ヒド
ロキシピロリジンと光学活性カルボン酸を溶解するとと
もに溶液中でこれらの化合物を化学的に変質せしめるこ
となく、かつ、ジアステレオマー塩を析出せしめるもの
であればよい。たとえば、水、メタノール、エタノー
ル、プロパノールなどのアルコール類、アセトン、メチ
ルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどのケトン
類、酢酸メチル、酢酸エチルなどのエステル類などが使
用できる。また、これらの溶媒は単独でも、また混合溶
媒として使用することもできる。
(RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンに
光学活性カルボン酸を接触させる方法としては、前記溶
媒中に(RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジ
ンを一挙に加えてもよいし、順次加えてもよい。さらに
あらかじめ(RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロ
リジンと分割剤とからつくった塩を形成したのち、該溶
媒中に溶解させてもよい。また、鉱酸や酢酸を共存させ
る場合も同様に、一挙に加えてもよいし、順次加えても
よい。
次に、かくして得られたジアステレオマー塩を含む溶
液を冷却および/あるいは濃縮する。すると、難溶性の
ジアステレオマー塩が溶液から晶析してくる。
難溶性のジアステレオマー塩を溶液から析出させる際
の温度は使用する溶媒の凝固点から沸点の範囲であれば
よく、目的に応じて適宜決められるが、通常は0℃から
100℃の範囲で十分である。
難溶性のジアステレオマー塩の結晶は、過、遠心分
離などの通常の固液分離法によって容易に分離すること
ができる。
一方、難溶性のジアステレオマー塩を分離した残りの
母液を冷却および/あるいは濃縮し易溶性のジアステレ
オマー塩を析出せしめたのち、これを分離することもで
きる。
また、鉱酸や酢酸を共存させた場合には、母液を冷却
および/あるいは濃縮すれば鉱酸塩や酢酸塩が析出して
くるので、これも分離することができる。
かくして得られる各ジアステレオマー塩を適当な方法
で分解することによって、(R)−1−ベンジル−3−
ヒドロキシピロリジンまたは(S)−1−ベンジル−3
−ヒドロキシピロリジンと分割剤を分離・採取すること
ができる。
ジアステレオマー塩の分解方法は任意であり、たとえ
ば水性溶媒中、酸またはアルカリで処理する方法などが
適用できる。たとえばジアステレオマー塩を水中に溶解
または分散させた中に硫酸や塩酸などの鉱酸を添加する
と水に難溶性の光学活性カルボン酸が析出し、(R)−
1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンまたは(S)
−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンの鉱酸塩が
水中に溶解する。通常の手段で分割剤を固液分離したの
ち、母液を濃縮・晶析すれば(R)−1−ベンジル−3
−ヒドロキシピロリジンまたは(S)−1−ベンジル−
3−ヒドロキシピロリジン鉱酸塩が得られる。さらに、
得られた鉱酸塩を水酸化ナトリウムなどのアルカリ水溶
液に加え、トルエン、クロロホルムなどの有機溶媒で抽
出したのち、濃縮・蒸留すれば(R)−1−ベンジル−
3−ヒドロキシピロリジンまたは(S)−1−ベンジル
−3−ヒドロキシピロリジンが得られる。
本発明で分割剤として用いる光学活性カルボン酸は難
溶性であり、ジアステレオマー塩溶液から、極めて高収
率で回収することができる。この分割剤は光学純度が保
持されているので再使用して光学分割を行うことができ
る。
<実施例> 以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
なお、実施例中1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリ
ジンの光学純度(%ee)は3,5−ジニトロフェニルイソ
シアネートで誘導体化したのち以下の条件で高速液体ク
ロマトグラフィー(HPLC)により分析を行った。
カラム :CHIRALCEL OD(ダイセル) 移動層 :n−ヘキサン・イソプロパノール・イソプロピ
ルアミン混液(90:10:0.1) 流 量:1.0ml/min 検出器 :UV 254nm 保持時間:R体−19.8min S体−23.2min 実施例1 (RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン1
7.7g(0.1モル)、p−トルエンスルホニル−D−フェ
ニルグリシン30.6g(0.1モル)およびメチルイソブチル
ケトン200mlをフラスコに仕込み、約70℃で30分間加温
して溶解した。これを室温まで徐冷し、室温で60分間撹
拌したのち析出した結晶を別した。別結晶を乾燥
後、メチルイソブチルケトンで再結晶し(R)−1−ベ
ンジル−3−ヒドロキシピロリジンのp−トルエンスル
ホニル−D−フェニルグリシン塩の白色結晶14.5gを得
た。
この結晶を1N水酸化ナトリウム水溶液60mlに懸濁し、
(R)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンをメ
チルイソブチルケトン200mlで抽出した。このメチルイ
ソブチルケトン溶液を水洗したのち濃縮、蒸留して、淡
黄色油状の(R)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロ
リジン5.2gを得た。用いた(R)−1−ベンジル−3−
ヒドロキシピロリジン量に対して収率は58.8%、HPLCに
よる分析の結果、光学純度は98%eeであった。
一方、抽出母液には濃硫酸を加え強酸性にして約1時
間撹拌し、析出した白色結晶を過、水洗して乾燥し、
8.9gのp−トルエンスルホニル−D−フェニルグリシン
を回収した(回収率97%)。
この回収したp−トルエンスルホニル−D−フェニル
グリシン8.9gと、(RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキ
シピロリジン5.2g、メチルイソブチルケトン60mlをフラ
スコに仕込み、約70℃で30分間加温して溶解した。これ
を室温まで徐冷し、室温で1時間撹拌したのち析出した
結晶を別した。この結晶を乾燥後、メチルイソブチル
ケトンで再結晶し、(R)−1−ベンジル−3−ヒドロ
キシピロリジンのp−トルエンスルホニル−D−フェニ
ルグリシン塩の白色結晶4.0gを得た。HPLCによる分析の
結果、この塩の(R)−1−ベンジル−3−ヒドロキシ
ピロリジンの光学純度は99%eeであった。
実施例2 (RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン1
7.7g(0.1モル)、p−トルエンスルホニル−L−フェ
ニルアラニン31.9g(0.1モル)およびエタノール200ml
をフラスコに仕込み、約80℃で30分間加温して溶解し
た。これを室温まで徐冷し室温で60分間撹拌したのち析
出した結晶を別した。別結晶を乾燥後、エタノール
で再結晶し(S)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロ
リジンのp−トルエンスルホニル−L−フェニルアラニ
ン塩の白色結晶17.3gを得た。
この結晶を水100ml、濃硫酸10mlの混液に懸濁し室温
で強く撹拌すると結晶形が変化し、p−トルエンスルホ
ニル−L−フェニルアラニンの白色結晶が析出た。撹拌
を約1時間続けたのち過し、結晶を水洗して乾燥し、
10.9gのp−トルエンスルホニル−L−フェニルアラニ
ンを得た(回収率98%)。次いで母液に水酸化ナトリウ
ムを加えて強塩基性にし、遊離する油をクロロホルムで
抽出し水洗したのち濃縮、蒸留して淡黄色油状の(S)
−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン6.1gを得
た。用いた(S)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロ
リジン量に対して収率は68.9%、光学純度は98%eeであ
った。
実施例3 (RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン1.
8g(10ミリモル)、ベンゾイル−D−フェニルグリシン
2.6g(10ミリモル)およびエタノール15mlを三角フラス
コに仕込み、約40℃に加温して溶解した。これを室温ま
で徐冷し、そのまま30分間撹拌したのち析出結晶を別
し、(S)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン
のベンゾイル−D−フェニルグリシン塩1.8gを得た。HP
LCによる分析結果、光学純度は55%eeであった。
実施例4 (RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン1.
8g(10ミリモル)、p−トルオイル−D−フェニルグリ
シン2.7g(10ミリモル)およびアセトン20mlを用い実施
例3と同様の操作をしたところ、(S)−1−ベンジル
−3−ヒドロキシピロリジンのp−トルオイル−D−フ
ェニルグリシン塩2.8gを得た。HPLCによる分析結果1−
ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンの光学純度は52%
eeであった。
実施例5 (RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン1.
8g(10ミリモル)、ベンゼンスルホニル−L−フェニル
アラニン3.1g(10ミリモル)および酢酸エチル20mlを用
い、実施例3と同様の操作をしたところ、(S)−1−
ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンのベンゼンスルホ
ニル−L−フェニルアラニン塩1.9gを得た。HPLCによる
分析結果、(S)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロ
リジンの光学純度は51%eeであった。
実施例6 (RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン3.
6g(20ミリモル)、p−トルエンスルホニル−L−フェ
ニルアラニン1.6g(5ミリモル)、H2SO40.25g(2.5ミ
リモル)およびエタノール30mlを用い、実施例3と同様
の操作をしたところ、(S)−1−ベンジル−3−ヒド
ロキシピロリジンのp−トルエンスルホニル−L−フェ
ニルアラニン塩1.6gを得た(収率64%)。HPLCによる分
析結果、(S)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリ
ジンの光学純度は60%eeであった。
実施例7 (RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン1.
8g(10ミリモル)、p−トルエンスルホニル−L−フェ
ニルアラニン6.4g(20ミリモル)およびエタノール30ml
を用い、実施例3と同様の操作をしたところ、(S)−
1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジンのp−トルエ
ンスルホニル−L−フェニルアラニン塩2.1gを得た(収
率42%)。HPLCによる分析結果、(S)−1−ベンジル
−3−ヒドロキシピロリジンの光学純度は67%eeであっ
た。
<発明の効果> 本発明によれば、分割剤をジアステレオマー溶液から
極めて高収率でラセミ化することなく回収することがで
きるため、分割剤の再使用が可能となり、したがって、
工業的に実用化可能な光学活性1−ベンジル−3−ヒド
ロキシピロリジンの製造法が提供できる。しかも本発明
方法は収率および光学純度においても従来方法と何ら孫
色がなく優れている。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C07D 207/00 - 207/50 C07B 57/00 CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】(RS)−1−ベンジル−3−ヒドロキシピ
    ロリジンを、一般式(I) (式中、Rはベンゼンスルホニル基、トルエンスルホニ
    ル基、ベンゾイル基またはトルオイル基を示す。また、
    nは0または1を意味する。)で示される光学活性カル
    ボン酸を分割剤として用いて光学分割することを特徴と
    する光学活性1−ベンジル−3−ヒドロキシピロリジン
    の製造方法。
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