JP3308786B2 - 成形品の製造方法 - Google Patents

成形品の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、難加工性の急冷凝
固合金材より容易に成形品を得るものである。
【0002】
【従来の技術】一般に、優れた特性を有する急冷凝固合
金材は、組織が微細化しているため、粉末状、薄帯ある
いは細線状で作製される。このような急冷凝固合金材
は、押出し、鍛造などの塑性加工を施すことにより、所
定の形状を有する成形品に成形される。
【0003】しかしながら、急冷凝固合金材に塑性加工
を施す場合、材料の変形抵抗が大きく加工が容易に行え
ない。さらに加工に当っては、高温に長時間保持すると
結晶粒が粗大化して特性が失われるなど、熱的な影響も
考慮しなければならない問題もある。
【0004】又、現状の急冷凝固合金材からなる成形品
は、粉末状、薄帯状、細線状の原料からの鍛造品あるい
は原料に塑性加工を施した押出品さらには押出材への鍛
造加工品などが存在するが、複雑な形状を有する成形品
は存在していないのが実情である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】そこで本発明は、急冷
凝固合金粉末がもつ優れた特性を維持しつつ、比較的複
雑な形態を有する成形品を製造する方法を提供するもの
である。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は、急冷凝固合金
材を易加工性金属材料と共に、該易加工性金属材料が急
冷凝固合金材の表面を被覆するように押出して押出材を
作製し、該押出材を成形型に設けた成形部に連接するコ
ンテナ内に配し、加熱した押出材を前記成形部内に押出
し、その押出成形時の押出端部あるいは塑性加工時の
コンテナの成形部側において、押出材の易加工性金属材
料よりなる被覆層を取除いて塑性加工することを特徴と
する成形品の製造方法である。
【0007】上記塑性加工は、鍛造、押出鍛造、プレス
等によって行うが、いずれにしろ、単純な形態のプリフ
ォームである押出材を作製し、その押出材から複雑な形
態の成形品に加工する。その代表的な例は、成形型に設
けた成形部に連接するコンテナ内に押出材を配し、加熱
した押出材を前記成形部内に押出し成形する方法であ
る。
【0008】押出材を作製する際に、難加工性の急冷凝
固合金材を易加工性の金属材料で被覆するように押出加
工をするために、押出加工が容易で、易加工性の金属材
料が表面に均一に被覆されると共に、後工程の易加工性
金属材料の除去が容易になる。又、急冷凝固合金材に対
する熱的影響を少なくすることができる。
【0009】このように加工することによって、難加工
性の急冷凝固合金粉末でも容易に加工することができる
ようになり、又、初期の加工圧力を抑えることができる
ため、加工発熱が少なく、急冷凝固合金材の特性を低下
させにくい。
【0010】易加工性金属材料の除去が容易であること
は、その除去に当って難加工性の急冷凝固合金材の形態
をくずすことがないので、その後の急冷凝固合金材成形
体の塑性加工を容易にする。又、除去自体、対象物が易
加工性の金属材料であるため、特別な除去手段を講ずる
必要がなく、ごく普通の手段で除去することができる。
【0011】塑性加工としては、前述のように、鍛造、
押出鍛造、プレス等があるが、最初の押出材作製工程で
維持された急冷凝固合金材の優れた特性をさらに維持す
るためには、比較的高温とならないように、又、短時間
で加工を行う必要がある。塑性加工は多段階で加工を施
すことも可能であるが、できれば一回の加工で成形する
ことが好ましく、複雑な形状を一回の加工で成形する場
合、押出鍛造がより有効である。
【0012】成形の具体的な条件は、温度は急冷凝固合
金材の結晶化温度以上で、好ましくは結晶化温度に近い
方が有効である。具体的には200℃〜600℃が有効
である。成形時間は300秒以内で行うのが好ましく、
成形後は50℃/s以上の冷却速度で冷却するのが好ま
しい。さらに材料の加熱速度は30℃/s〜300℃/
sで行うのが好ましい。成形時間は150秒以内である
ことがより好ましい。
【0013】かかる製造法に用いる急冷凝固合金材は、
一連の工程を考慮すると超塑性を示す材料が好ましい。
【0014】被覆層の除去は押出材の作製と塑性加工と
の間で行われるが、加工を連続的に行うためには、押出
材押出し直後あるいは塑性加工の直前に行うことが好ま
しく、押出し直後に行う場合には、押出しの際に加えら
れた材料の熱を利用して加工が行えるため、より容易な
加工が行える。
【0015】本出願人はかねてより一連の超塑性Al基
合金の開発に携わってきた。すなわち、特定の組成を有
する合金材料を急冷することによって、非晶質相、非晶
質と微細結晶質の混合相又は微細結晶質相を得て超塑性
加工に適した材料を提案してきた。かかる合金は、比較
的高速で行われる高速鍛造、高速圧延に適すると共に高
強度を有するもので、従来のAl基合金とは異質の合金
材料として注目されている。この超塑性Al基合金は、
平均Al結晶粒径および金属間化合物の平均粒子径が1
μm以下のものであり、より好ましくは、平均Al結晶
粒径が0.005〜1μm、金属間化合物の平均粒子径
が0.001〜0.1μmである。かかる材料が本発明
には有効に適用できる。
【0016】具体的な合金材料の組成としては下記のも
のが例示される。勿論これは例示であって他にも本発明
に適用できる材料はある。
【0017】 Al78Ni12Mm10 Al92Ni4Fe1Mm3 Al87Ni85 Al89.5Ni8Zr2.5 Al89.6Ni8Zr2Mg0.5 Al90Ni7Zr2Cu1 Al91.8Ni6Nb0.2Hf1Ce1 Al92.5Ni5Fe1Zr1Ta0.5 Al93.5Ni211.5Ti2 Al87Co8Si1Cu2Nb1Zr1 Al91Mn2Mg2Zn14 Al87.5Ni7Co1Cr0.5Ca0.5Hf1Ti2.5 Al88.7Ni8Cr1Mg0.2Zn0.1Ce
【0018】
【発明の実施の形態】以下、図面に基づいて本発明の実
施の態様を説明する。
【0019】図1は本発明の具体的な工程の説明図で、
まず急冷凝固合金粉末をアトマイズ法により作製し、得
られた粉末をこれとは異なる易加工性金属粉末が表面側
になるように共に押出をして被覆押出材Aを作製する。
押出材Aは難加工性の急冷凝固合金材の表面に易加工性
の金属材料が被覆されたものである。
【0020】次に被覆押出材Aの表面の被覆された易加
工性金属材料を除去(皮剥ぎ)し、急冷凝固合金材のみ
の成形体とする長尺の被覆押出材Aを被覆層除去の前後
で次工程の加工に必要な長さのビレットB(押出材:以
下ビレットとする。)に切断する。
【0021】得られたビレットBは急速加熱又は炉中加
熱し、成形型の成形部(キャビティ)に押出し、成形品
とする。
【0022】図2ないし図5は、各工程の実施に適した
装置の説明図である。
【0023】図2並びに図3は、第1の具体的手法を示
し、図2は急冷凝固合金材1の表面に易加工性金属材料
2を被覆しながら押出し成形する工程の説明図である。
押出機はコンテナ3とステム4とから構成され、コンテ
ナ3内には、その内方側に難加工性の急冷凝固合金材を
外方側に易加工性金属材料を充填し、ステム4により反
対側の開口5より被覆押出材6を押出する。押出された
被覆押出材6は皮剥ぎ刃7によって表面の易加工性金属
材料2を除去し、つぎに切断刃8にて適当長さのビレッ
トBに切断する。
【0024】図3は塑性加工工程における押出鍛造装置
の説明図である。押出鍛造装置は上型9と下型10と、
これらの間につくられた成形部(キャビティ)11と、
その成形部11直上に設けられてビレットBが配される
収納孔12と、ビレットBを成形部11に押入するステ
ム13とから構成される。又、上型9と下型10のそれ
ぞれにはビレットBおよび成形品を加熱する加熱手段1
4が設けられ、加熱温度は熱電対15を基にして調節す
る。上型9の収納孔12に配されたビレットBは加熱手
段14により加熱され、ステム13により成形部11内
へ押出され、成形品が作製される。
【0025】図4並びに図5は第2の具体的手法を示
し、図4は急冷凝固合金材1の表面に易加工性金属材料
2を被覆しながら押出し成形する工程の説明図で、コン
テナ3、ステム4、開口5はいずれも前記図2の場合と
同じであるが、皮剥ぎ刃7を備えておらず、被覆押出材
6は皮を剥がないまま切断刃8により切断して被覆ビレ
ットB´を作製する。
【0026】図5は塑性加工工程における押出鍛造装置
の説明図である。上型9、下型10、成形部11、収納
孔12、加熱手段14、熱電対15は図3の場合と同様
であるが、図3との違いは、上型9の直上にコンテナ1
6が形成され、コンテナ16には上型9の収納孔12と
連通する挿通孔17が形成されていると共に、コンテナ
16と上型9との間に前記被覆ビレットB´の易加工性
金属材料よりなる被覆部18を除去する除去手段19が
設けられ、該除去手段19の外方側に除去した被覆部1
8を排出する排出部20が設けられている。被覆ビレッ
トB´はコンテナ16の挿通孔17に挿通され、ステム
21により成形部11に向って押圧することにより、上
型9上部の除去手段19により被覆部が除去され、急冷
凝固合金材のみからなるビレットが上型19の収納孔1
2に挿入される。さらにステム21を押圧することによ
り、ビレットは成形部11内へ挿入され成形品が作製さ
れる。ビレットの加熱は収納孔12に配された時点で加
熱手段14によりなされるが、コンテナ16に加熱手段
を設け、加熱されたビレットB´を被覆部を除去して成
形部11に押入することも可能である。
【0027】図6はビレットBから成形品22が得られ
ることを示すもので、成形品22は基部周縁から末広が
りに突出する突出部を有する形状のもので、難加工性の
急冷凝固合金材としては従来成形し難い複雑な形状のも
のである。
【0028】
【実施例】以下実施例について説明する。
【0029】ガスアトマイズ装置によりAl93Ni6
0.9Ag0.1(at%)からなる急冷凝固Al基合金粉
末を作製し、得られたAl基合金粉末をJISA606
3合金(Al−Mg−Si合金)からなる金属カプセル
に充填後、脱ガスを行い、図2に示す押出機のコンテナ
3内に配して、押出しを行い、最終的に被覆層を除去し
て適宜長さに切断し、急冷凝固Al基合金からなるビレ
ットBを作製した。ここで得られたビレットBの強度は
75kgf/mm2であった。
【0030】ついでビレットBを図3に示す押出鍛造装
置の収納孔12内に配し、加熱手段14により昇温速度
75℃/sで500℃まで加熱した。ついでステム13
をもって10mm/sの押出速度で成形部11へ押入
し、図6に示す成形品22を作製した。加熱から成形品
22の取出しまでは8秒間で行った。取出した成形品2
2は冷却速度100℃/sで冷却した。得られた製品の
強度は70kgf/mm2であった。
【0031】これに対して、従来の単純な押出、鍛造で
は成形が困難であるばかりでなく、成形し得たとしても
上記実施例のように70kgf/mm2という高強度を
もった複雑形状の製品を得ることはできない。
【0032】図4、図5に示す手法によって成形品をつ
くっても、上記と同様に強度の高い複雑な成形品を得る
ことができる。
【0033】
【発明の効果】本発明によれば、難加工性の急冷凝固合
金材をもって比較的複雑な形状を有する成形品を容易に
作製することができ、しかも得られる成形品は急冷凝固
合金材のもつ優れた特性を維持すると共に、優れた機械
的性質を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の具体的な工程の説明図である。
【図2】実施例の1つのビレットの製造工程の説明図で
ある。
【図3】図2に続く押出鍛造工程の説明図である。
【図4】他の実施例の被覆ビレットの製造工程の説明図
である。
【図5】図4に続く押出鍛造工程の説明図である。
【図6】ビレットから成形品とする説明図である。
【符号の説明】
1 急冷凝固合金材 2 易加工性金属材料 3 コンテナ 4 ステム 5 開口 6 被覆押出材 7 皮剥ぎ刃 8 切断刃 9 上型 10 下型 11 成形部 12 収納孔 13 ステム 14 加熱手段 15 熱電対 16 コンテナ 17 挿通孔 18 被覆部 19 除去手段 20 排出部 21 ステム 22 成形品
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21J 1/00 - 13/14 B21J 17/00 - 19/04 B21K 1/00 - 31/00 B21C 23/00 B21C 23/14

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 急冷凝固合金材を易加工性金属材料と共
    に、該易加工性金属材料が急冷凝固合金材の表面を被覆
    するように押出して押出材を作製し、該押出材を成形型
    に設けた成形部に連接するコンテナ内に配し、加熱した
    押出材を前記成形部内に押出し、その押出材成形時の押
    出端部あるいは塑性加工時のコンテナの成形部側におい
    て、押出材の易加工性金属材料よりなる被覆層を取除い
    て塑性加工することを特徴とする成形品の製造方法。
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