JP3307167B2 - 電動機及び電動送風機 - Google Patents

電動機及び電動送風機

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、電動機に係り、特に、
軸受にボールベアリング等のころがり軸受を用いた回転
数の高い電動機及び電動送風機の信頼性向上に関するも
のである。
【0002】
【従来の技術】一般に、軸受にボールベアリング、ニー
ドルベアリング等のころがり軸受を用いた電動機におい
て、回転数を増加するに伴い発生する問題の一つにクリ
ープ現象が知られている。これは、固定側のレースが、
反回転方向に回転する現象で、ころがり軸受自体の回転
を不安定にさせることから、ころがり軸受寿命の低下、
及び電動機特性の低下を引き起こし、電動機の信頼性を
低下させる原因となっていた。
【0003】例えば、電気掃除機等に用いられる整流子
電動機は、高速回転が要求され、その寿命確保の為に軸
受にはボールベアリングが用いられている。軸受の保持
構造については、ボールベアリング内輪を回転軸に圧入
固定し、外輪はハウジングあるいはエンドブラケットの
軸受保持部内周に挿入という方式が一般に多く用いられ
が、しかし、上記の如く電動機の回転数増加に伴い、外
輪が反回転方向に軸受保持部と相対的に回動して軸受の
早期摩耗や、振動増加によるカーボンブラシの早期摩耗
による電動機の寿命を早める原因となっていた。
【0004】そこで、従来は、前記ボールベアリングの
クリープ現象を防止する手段として、ボールベアリング
に加える軸方向の予圧を増して外輪の回動を抑えたり、
あるいは回転子を電動機内に組み込む前にボールベアリ
ング外輪外周に接着剤を塗布した後に、軸受保持部に挿
入するといった方法がとられている。
【0005】また、実開昭62−190123号公報に
記載されているように、保持体(外輪)を支持している
本体に孔と流入溝を設け、その孔に接着剤を注入し、流
入溝を介して保持体を固定する方法か提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】上記、従来例におい
て、まず、ボールベアリングの予圧を増して外輪の回動
を抑える方法は、ボールベアリング自体のメカロスが増
すため、電動機の特性が低下するという問題があった。
次の、外輪に接着剤を塗布して組み立てる方法について
は、接着剤が組立途中にで固着し始め、所定の予圧がボ
ールベアリングに掛からず、その回転不安定により、ボ
ールベアリングの寿命が短くなるといった問題があっ
た。また、実開昭62−190123号公報に記載され
ている方法では、接着面積が限定されているため、確実
な接着力を得るのが困難であるという問題があった。
【0007】本発明の目的は、上記問題を解決すべく、
ころがり軸受外輪の回動を抑えて、クリープ現象を防止
し、回転寿命を伸ばす電動機及び電動送風機を提供する
ことにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明は、回転子を両端支持しかつ軸受外輪の端面
に面取りを設けているころがり軸受を保持する有底円筒
状の軸受保持部を有する電動機において、前記軸受保持
部のうち、少なくとも一方の前記軸受保持部の底面に孔
部を設け、該孔部と隙間を有して前記軸受保持部と嵌合
する略環状のリブを設けた導入板を、前記軸受保持部底
面と前記ころがり軸受の端面との間に配設し、さらに前
記導入板と前記軸受の外輪端面とを付勢する弾性体を前
記軸受保持部内に設け、前記導入板の外周部が前記軸受
の外輪まで延び、かつ前記導入板の外周部に前記軸受保
持部内周と前記軸受外輪の端面外周面取り部との隙間の
周方向から接着剤を浸透させる凹み部が形成されている
ことを特徴とする。
【0009】また、本発明の他の特徴は、軸受外輪の端
面に面取りを設けているころがり軸受に両端支持された
回転子と、前記回転子の一端の前記ころがり軸受を保持
する軸受保持部を備えたハウジングと、前記回転子の他
端のころがり軸受を保持する軸受保持部を備えたエンド
ブラケットを有する電動送風機において、前記軸受保持
部のうち、少なくとも一方の前記軸受保持部の底面に孔
部を設け、該孔部と隙間を有して嵌合する略環状のリブ
を設けた導入板を、前記軸受保持部底面と挿入される軸
受の端面との間に配設し、さらに前記導入板と前記軸受
の外輪端面とを付勢する弾性体を前記ハウジングの軸受
保持部内に設け、前記導入板の外周部が前記軸受の外輪
まで延び、かつ前記導入板の外周部に前記ハウジングの
軸受保持部内周と前記軸受外輪の端面外周面取り部との
隙間の周方向から接着剤を浸透させる凹み部が形成され
ていることにある。
【0010】
【作用】本発明によれば、軸受保持部の底面に孔部を設
け、該孔部と隙間を有して軸受保持部と嵌合する略環状
のリブを設けた導入板を、軸受保持部底面と挿入される
軸受の端面との間に配設する。導入板の略環状のリブと
孔部との隙間を通して、接着剤を、軸受保持部内側に導
入し、毛細管現象により導入板と軸受保持部底面との間
にできる隙間に浸透させ、導入板の外周部の凹み部へ到
達後、さらに凹み部から、軸受保持部内周ところがり軸
受の端面外周面取り部の隙間に円周方向に浸透させて、
軸受外輪を軸受保持部と一体固着させることができる。
【0011】また、軸受保持部内径は、ころがり軸受の
回転精度を上げるために、ころがり軸受外径との隙間は
約10μm以下の小さな隙間を必要とするが、組立前に
軸受外周に接着剤を塗布する方法では、塗布された接着
剤のほとんどが軸受挿入時に隙間に入らず、軸受保持部
内径寸法によって、軸受端面側に押し寄せられてしま
い、接着力不足となることがあったが、本発明では、前
述したように、接着剤を、軸受保持部内周ところがり軸
受の端面外周面取り部との隙間に円周方向に浸透させ
て、軸受外輪を軸受保持部と一体固着させることができ
るので、接着力不足とはならず、接着力をより安定なも
のとすることができる。
【0012】これにより、接着時間、接着面積等の接着
条件のバラツキによる予圧不足を起こさず、また、所定
の適正な予圧を得ることによってメカロス増加もなく、
ころがり軸受のクリープ現象を防止することができる。
【0013】
【実施例】以下、本発明の一実施例に係る電動送風機
を、図面を用いて説明する。
【0014】図1は、本発明の一実施例に係る電動送風
機の縦断面を示し、電気掃除機に用いられた例を示す。
電動送風機20は電動機部30と送風機部40から構成
される。
【0015】電動送風機20は、ハウジング1とエンド
ブラケット2が形成され、その内部には軸受3A,3B
に両端支持構成された回転子4を有し、回転軸5が送風
機側に延びている。軸受3A,3Bはボールベアリング
で構成されている。固定子6はハウジング1に固定さ
せ、かつ巻線が所定数巻かれている。回転子4には整流
子7が固定され、ハウジング1にネジ8にて位置決め固
定されるブラシ保持器9に内臓されるカーボンブラシ1
0が整流子7の外周面に当接し、電気的に接続する。一
方、回転子4の回転軸5には遠心ファン11が固定さ
れ、エンドブラケット2外周部にはファンケーシング1
3が締結固定されている。また、エンドブラケット2上
には、遠心ファン11側およびエンドブラケット1側双
方に固定案内翼を有するディフューザ14が構成されて
いる。
【0016】電動機部30の組立順序は、まずハウジン
グ1に固定子6を圧入し、所定の位置に固定する。次に
ハウジング1の軸受保持部1Aに波形ワッシャ等の弾性
体21を挿入し、次に接着剤を導入する導入板50、そ
して回転子4の回転軸5の一端に圧入固定された軸受3
Aを挿入する。最後にエンドブラッケット2をハウジン
グ1の開口側端面に配設し、ハウジング1と同様、中央
の軸受保持部2A内に、回転子4の回転軸5の他端に圧
入固定された軸受3Bを挿入し、ネジ23で固定する。
この時点で、弾性体21によって軸受3A,3Bに所定
の予圧が加わり、内外輪の回転軸5の方向の位置が決ま
る。
【0017】ここで、導入板50は、図2に示すよう
に、円板の形をしており、外径は、軸受保持部1Aの内
径より若干小さく、軸受保持部1Aに挿入した時にガタ
がないように形成されている。また、中心部には、軸受
保持部1Aの底面に設けた孔部25に隙間gを有して嵌
合する環状リブ50Aと、外周部には、接着剤を浸透さ
せるために、軸受保持部1Aの軸に対して対称に、少な
くとも2ヶ所の凹み部50Cが形成されている。
【0018】次に、軸受保持部1Aの底部に設けた孔部
25から隙間gを通して接着剤が注入され、軸受保持部
1A内周と軸受3Aの外輪が接着固定される。
【0019】その後、ブラシ保持器9及び送風機部40
側が組立てられ、電動送風機20の組立が完成する。
【0020】この時、注入された接着剤は、図3の矢印
の如く、隙間gを通過した後、軸受保持部1Aの底面と
導入板50の間の隙間を浸透して導入板50の外周部に
到達し、凹み部50Cから、軸受保持部1Aの内周と軸
受3Aの外輪端面外周の面取り部の隙間に円周方向に浸
透して、軸受保持部1A内周と軸受3Aの外輪を一体固
着するので、接着力を安定させることが可能となる。
【0021】このように、軸受保持部1A内周と軸受3
Aの外輪端面外周の面取部にできる隙間に浸透した接着
剤で、接着力が十分確保できるので、軸受保持部1Aの
内径と軸受3Aの外径との隙間は、軸受3Aの回転精
度、すなわち軸芯精度を向上させるために、約10μm
以下の小さな値に設定することができる。そして、軸芯
精度を向上させることにより、電動送風機20の振動及
び騒音の低減を図ることができる。
【0022】一方、この時、導入板50と軸受3Aの外
輪端面とは、弾性体21の付勢により密着されているの
で、一般的に粘度の低い接着剤でも、接着剤が外周に到
達した後、この密着面に浸透することはないことが実験
で確認されている。したがって、軸受3Aの構造上、軸
受内部に接着剤が浸透して、内部を固着させることは全
くない。
【0023】図4は、図3の軸受保持部のH矢視を示
す。接着剤が注入しやすいように、注入部25Aが軸に
対して対称方向に2ケ所設けられており、ここに接着剤
の注入ノズルを差し込んで、注入を行うことができるた
め、接着作業が容易になり、接着の信頼性が向上する。
【0024】図5は、他の実施例で、図1のエンドブラ
ケット2側の軸受保持部2Aに適用した図を示す。この
実施例では、ハウジング1側の軸受保持部1Aのよう
に、弾性体21は挿入されず、まず、導入板60が直接
挿入される、導入板60は、図6に示すように、導入板
60の略環状のリブ60Aの周囲の平坦部には放射状に
複数の凸部60Bが設けられ、導入板60の外周部に
は、軸受保持部2Aの軸に対して対称に、少なくとも2
ヶ所の凹み部60Cが形成されている。凸部60Bは軸
受保持部2Aの底面に当接する。次に、回転子4の回転
軸5に圧入固定された軸受3Bを挿入する。
【0025】接着剤を注入する時は、図7に示すよう
に、電動送風機20を逆さにし、隙間gに注入する。注
入された接着剤は、矢印の如く、放射状に設けられた各
凸部60Bと軸受保持部2Aの底面との間の隙間を浸透
して導入板60の外周部に到達し、さらに、凹み部60
Cから、軸受保持部2Aの内周と軸受3Bの外輪端面外
周の面取り部の隙間に円周方向に浸透して、軸受保持部
2A内周と軸受3Bの外輪を一体固着する。
【0026】また、図4と同様に、接着剤が注入しやす
いように、軸受保持部2Aの底面の孔部26にも、注入
部26Aが軸に対して対称方向に2ケ所設けられてい
る。
【0027】一般に、軸受3A、3Bの接着には嫌気性
の接着剤が使用されるが、嫌気性の接着剤は空気と遮断
されると固まるために、隙間が狭すぎると軸受3Bの外
周に到達する前に固まってしまう恐れがある。本実施例
においては、凸部60Bによって隙間を十分確保できる
ため、確実に接着剤を軸受3Bの外周に到達させ軸受保
持部2Aと一体固着させることができる。
【0028】
【発明の効果】本発明によれば、ころがり軸受のクリー
プ現象を防止して、電動機及び電動送風機の寿命を延ば
すことにより、電動機及び電動送風機の信頼性を向上さ
せることができる。
【0029】また、軸受保持部内周と外輪端面外周の面
取部にできる隙間に浸透した接着剤で、接着力が十分確
保できるので、軸受保持部内径と軸受外径の隙間は小さ
くすることができる。したがって、ころがり軸受の軸芯
精度が向上でき、電動機及び電動送風機の振動および騒
音の低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例に係る電動送風機の縦断面図
である。
【図2】図1のハウジング側の軸受保持部に挿入する導
入板の斜視図である。
【図3】図1のハウジング側の軸受保持部の縦断面図で
ある。
【図4】図1のハウジング側の軸受保持部のH矢視図で
ある。
【図5】本発明の他の実施例のエンドブラケット側の軸
受保持部の縦断面図である。
【図6】図5のエンドブラケット側の軸受保持部に挿入
する導入板の斜視図である。
【図7】図5の軸受保持部の逆さの縦断面図である。
【符号の説明】
1…ハウジング、2…エンドブラケット、3…回転子、
4…固定子、5…回転軸、1A,2A…軸受保持部、3
A,3B…軸受、25,26…孔部、25A,26A…
注入部、50,60…導入板、50A,60A…環状リ
ブ、60B…凸部、50C,60C…凹み部
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 常楽 文夫 茨城県日立市東多賀町一丁目1番1号 株式会社 日立製作所 電化機器事業部 内 (72)発明者 川口 卓男 茨城県日立市東多賀町一丁目1番1号 株式会社 日立製作所 電化機器事業部 内 (72)発明者 石山 忠雄 茨城県日立市東多賀町一丁目1番1号 株式会社 日立製作所 電化機器事業部 内 (72)発明者 植村 茂 茨城県日立市東多賀町一丁目1番1号 株式会社 日立製作所 電化機器事業部 内 (72)発明者 遠藤 正和 茨城県日立市東多賀町一丁目1番1号 株式会社 日立製作所 電化機器事業部 内 (56)参考文献 特開 平2−188699(JP,A) 特開 平3−168413(JP,A) 特開 平4−341615(JP,A) 実開 昭63−178629(JP,U) 実開 平6−9358(JP,U) 実開 平2−103760(JP,U) 実開 昭62−190123(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F16C 19/00 - 19/56 F16C 33/30 - 33/66 F16C 35/00 - 43/08 H02K 5/167 F04D 29/04

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】回転子を両端支持しかつ軸受外輪の端面に
    面取りを設けているころがり軸受を保持する有底円筒状
    の軸受保持部を有する電動機において、 前記軸受保持部のうち、少なくとも一方の前記軸受保持
    部の底面に孔部を設け、該孔部と隙間を有して前記軸受
    保持部と嵌合する略環状のリブを設けた導入板を、前記
    軸受保持部底面と前記ころがり軸受の端面との間に配設
    し、さらに前記導入板と前記軸受の外輪端面とを付勢す
    る弾性体を前記軸受保持部内に設け、前記導入板の外周
    部が前記軸受の外輪まで延び、かつ前記導入板の外周部
    に前記軸受保持部内周と前記軸受外輪の端面外周面取り
    部との隙間の周方向から接着剤を浸透させる凹み部が形
    成されていることを特徴とする電動機。
  2. 【請求項2】 軸受外輪の端面に面取りを設けているころ
    がり軸受に両端支持された回転子と、前記回転子の一端
    の前記ころがり軸受を保持する軸受保持部を備えたハウ
    ジングと、前記回転子の他端のころがり軸受を保持する
    軸受保持部を備えたエンドブラケットを有する電動送風
    機において、 前記軸受保持部のうち、少なくとも一方の前記軸受保持
    部の底面に孔部を設け、該孔部と隙間を有して嵌合する
    略環状のリブを設けた導入板を、前記軸受保持部底面と
    挿入される軸受の端面との間に配設し、さらに前記導入
    板と前記軸受の外輪端面とを付勢する弾性体を前記ハウ
    ジングの軸受保持部内に設け、前記導入板の外周部が前
    記軸受の外輪まで延び、かつ前記導入板の外周部に前記
    ハウジングの軸受保持部内周と前記軸受外輪の端面外周
    面取り部との隙間の周方向から接着剤を浸透させる凹み
    部が形成されていることを特徴とする電動送風機。
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JP5281055B2 (ja) * 2010-08-19 2013-09-04 株式会社東芝 電動機

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