JP3307136B2 - 電解コンデンサの製造方法 - Google Patents

電解コンデンサの製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、各種電子機器に利用さ
れるアルミ電解コンデンサにおいてコンデンサ素子へ駆
動用電解液を含浸させる電解コンデンサの製造方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、電子機器の小型化が進むにつれ
て、電極箔に小さなピットを多数形成して表面積を拡大
することにより単位面積当たりの容量を増やした小型大
容量のアルミ電解コンデンサが主流になりつつある。
【0003】しかしながら、上記ピットの数が多くなる
につれて電極箔の表面に気泡が溜まりやすくなり、これ
により、駆動用電解液と電極箔の接触面が減少する。こ
の場合、駆動用電解液と陽極箔の接触面積が少なくなる
ことにより理想の駆動用電解液の含浸状態より容量値が
低下し、かつ駆動用電解液と陰極箔の接触面積が少なく
なることにより接触抵抗が増大してESR(等価直列抵
抗)値が大きくなってしまう。
【0004】この対策として、従来においては、図3
(a)〜(f)に工程順に断面図を示すような方法によ
りアルミ電解コンデンサを製造していた。そしてコンデ
ンサ素子へ駆動用電解液を含浸させる場合は、図3
(a)〜(c)に示すような方法により行っていた。す
なわち、図3(a)に示すように、陽極箔と陰極箔をそ
の間にセパレータを介在させて巻回することにより構成
され、かつ前記陽極箔と陰極箔に接続された一対のリー
ド線1を有するコンデンサ素子2における一対のリード
線1を運搬用チャック3に挟み、そして図3(b)に示
すように、コンデンサ素子2を浸漬槽4内の駆動用電解
液5中に浸漬し、その後、図3(c)に示すように、駆
動用電解液5が含浸されたコンデンサ素子2を真空槽6
内に入れ、この真空槽6で真空引きして残っている気体
を吸い出すという真空含浸方法により行っていた。そし
てこの駆動用電解液5を含浸したコンデンサ素子2は図
3(d)に示すようにアルミニウムよりなる金属ケース
7内に挿入するとともに、コンデンサ素子2の一対のリ
ード線1の部分に封口部材8を挿入し、その後、図3
(e)に示すように、金属ケース7の封口部材8と対応
する部分を絞り加工することにより、金属ケース7の開
口部の封止を行ってアルミ電解コンデンサを製造する。
その後、図3(f)に示すように、アルミ電解コンデン
サ9を使用保証温度で加熱しながら使用電圧を一対のリ
ード線1に印加して電極箔の再化成を行っていた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た真空含浸方法においては、コンデンサ素子2を浸漬槽
4内の駆動用電解液5中に浸漬した場合、コンデンサ素
子2の巻き具合や大きさによりコンデンサ素子2に浸漬
される駆動用電解液の量が変化するため、電解コンデン
サの寿命のバラツキも大きくなり、したがって、アルミ
電解コンデンサの寿命は、コンデンサ素子2に含浸され
た駆動用電解液5の最低量で保証せざるを得なかった。
【0006】本発明は上記従来の課題を解決するもの
で、駆動用電解液をコンデンサ素子に含浸させる場合、
確実に駆動用電解液を含浸させることができて容量値が
低下したり、ESR(等価直列抵抗)値が大きくなった
りすることのないコンデンサ素子への駆動用電解液の含
浸方法による電解コンデンサの製造方法を提供すること
を目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明の電解コンデンサにおけるコンデンサ素子への
駆動用電解液の含浸方法は、陽極箔と陰極箔をその間に
セパレータを介在させて巻回することにより構成された
コンデンサ素子に駆動用電解液より浸透性が高く、かつ
沸点の低い液体を含浸させ、続いて、規定量の駆動用電
解液をケース内に入れるとともに、前記コンデンサ素子
をケース内に挿入し、その後、前記ケースを封口するこ
とにより封止を行うとともに、前記駆動用電解液より
透性が高く、かつ沸点の低い液体が沸騰するまで加熱処
理することにより駆動用電解液をコンデンサ素子に含浸
させるようにしたものである。
【0008】また本発明の電解コンデンサにおけるコン
デンサ素子への駆動用電解液の含浸方法は、ケース内に
規定量の駆動用電解液を入れ、さらにこの駆動用電解液
の上に駆動用電解液より浸透性が高く、かつ沸点の低い
液体を加えて2層構造とし、この状態で前記ケース内に
陽極箔と陰極箔をその間にセパレータを介在させて巻回
することにより構成されたコンデンサ素子を挿入するこ
とにより前記駆動用電解液より浸透性が高く、かつ沸点
の低い液体と駆動用電解液を順次コンデンサ素子に含浸
させ、その後、前記ケースを封口することにより封止を
行うとともに、前記駆動用電解液より浸透性が高く、か
沸点の低い液体が沸騰するまで加熱処理することによ
り駆動用電解液をコンデンサ素子に含浸させるようにし
たものである。
【0009】
【作用】上記した含浸方法は、コンデンサ素子に駆動用
電解液よりも浸透性が高く、かつ沸点の低い液体を含浸
させ、続いて、規定量の駆動用電解液をケース内に入
れ、そして前記コンデンサ素子をケース内に挿入する
か、あるいはケース内に規定量の駆動用電解液を入れ
さらにこの駆動用電解液の上に駆動用電解液よりも浸透
性が高く、かつ沸点の低い液体を加えて2層構造とし
この状態で前記ケース内にコンデンサ素子を挿入し、そ
の後、前記ケースを封口することにより封止を行うとと
もに、前記駆動用電解液より浸透性が高く、かつ沸点の
低い液体が沸騰するまで加熱処理することにより駆動用
電解液をコンデンサ素子に含浸させるようにしたもの
で、前記駆動用電解液より浸透性が高く、かつ沸点の低
い液体はコンデンサ素子への含浸によりコンデンサ素子
における電極箔を構成する陽極箔および陰極箔に浸透す
るが、前記加熱処理により駆動用電解液より浸透性が高
く、かつ沸点の低い液体は熱で気化するため、この気化
により電極箔の表面およびピット内に溜まっている気泡
を押し出すとともに、ピット内に気体として充満するこ
とになり、そして温度が下がることにより、ピット内に
充満している気体は液体に戻るもので、この際の体積収
縮によりピット内に駆動用電解液が入り込むものであ
る。
【0010】このように駆動用電解液はコンデンサ素子
を構成する電極箔のピット内に入り込んで駆動用電解液
のコンデンサ素子への確実な含浸がなされるため、容量
値が低下したり、ESR(等価直列抵抗)値が大きくな
ったりするということはなくなる。
【0011】
【実施例】以下、本発明の実施例を添付図面をもとづい
て説明する。図1(a)〜(g)は本発明の一実施例の
アルミ電解コンデンサにおけるコンデンサ素子への駆動
用電解液の含浸方法の工程図を示したもので、まず、図
1(a)に示すように、陽極箔と陰極箔をその間にセパ
レータを介在させて巻回することにより構成され、かつ
前記陽極箔と陰極箔に接続された一対のリード線11を
有するコンデンサ素子12における一対のリード線11
を運搬用チャック13に挟む。この状態で、次に図1
(b)に断面を示すように、イソプロピルアルコール等
浸透性が高く、かつ駆動用電解液より沸点の低い(約7
0℃)液体14を入れた浸漬槽15内に前記コンデンサ
素子12を浸漬して、コンデンサ素子12に前記沸点の
低い(約70℃)液体14を規定量含浸させる。その
後、図1(c)に示すように、アルミニウムよりなるケ
ース16内に規定量の駆動用電解液17(沸点約180
℃)を入れ、そしてこの後、図1(d)に示すように、
駆動用電解液17が入っているケース16内に、駆動用
電解液17より沸点の低い(約70℃)液体14を含浸
させたコンデンサ素子12を挿入するとともに、コンデ
ンサ素子12の一対のリード線11の部分に封口部材1
8を挿入する。次に、図1(e)に示すように、ケース
16の封口部材18と対応する部分を絞り加工すること
により、ケース16の開口部の封止を行う。その後、図
1(f)に示すように、前記駆動用電解液17より沸点
の低い(約70℃)液体14が沸騰するまで加熱装置1
9によって加熱処理し冷却することにより、前記コンデ
ンサ素子12を構成する陽極箔と陰極箔からなる電極箔
のピット内に駆動用電解液17を入り込ませる。その
後、図1(g)に示すように、加熱装置20により使用
保証温度で加熱しながら使用電圧を一対のリード線11
に印加して電極箔の再化成を行うようにしている。
【0012】なお、上記図1(b)に示す駆動用電解液
より沸点の低い(約70℃)液体14のコンデンサ素子
12への含浸は、前記駆動用電解液より沸点の低い(約
70℃)液体14を加熱気化させてコンデンサ素子12
に吹きつけ、そしてこのコンデンサ素子12上で液化さ
せることにより行ってもよいものである。また前記駆動
用電解液より沸点の低い(約70℃)液体14はイソプ
ロピルアルコール以外に、水やフロン,フロリナート
(商品名)等の常温では液体で、かつ70〜120℃で
気体となるものが好ましい。
【0013】上記した本発明の一実施例の含浸方法の工
程において、図1(f)に示すように加熱装置19によ
って駆動用電解液17より沸点の低い(約70℃)液体
14が沸騰するまで加熱処理することにより、前記液体
14は熱で気化し、この気化により電極箔の表面および
ピット内に溜まっている気泡は押し出されてこの液体1
4がピット内に気体として充満することになる。そして
温度が下がることにより、ピット内に気体として充満し
ている前記液体14は液体に戻るもので、この体積収縮
によりピット内に駆動用電解液17が入り込むものであ
る。
【0014】図2(a)〜(f)は本発明の他の実施例
のアルミ電解コンデンサにおけるコンデンサ素子への駆
動用電解液の含浸方法の工程図を示したもので、まず、
図2(a)に示すように、アルミニウムよりなるケース
21内に規定量の駆動用電解液22(沸点約180℃)
を入れるとともに、この駆動用電解液22の上に、イソ
プロピルアルコール等の浸透性が高く、かつ駆動用電解
液22より沸点の低い(約70℃)液体23を規定量加
え、その後、図2(b)(c)に示すように、陽極箔と
陰極箔をその間にセパレータを介在させて巻回すること
により構成され、かつ前記陽極箔と陰極箔に接続された
一対のリード線24に封口部材25を挿入したコンデン
サ素子26をケース21内に挿入することによりコンデ
ンサ素子26に駆動用電解液22とこの駆動用電解液2
2より沸点の低い(約70℃)液体23を含浸させ、そ
の後、図2(d)に示すように、ケース21の封口部材
25と対応する部分を絞り加工することにより、ケース
21の開口部の封止を行い、その後、図2(e)に示す
ように、前記駆動用電解液22より沸点の低い(約70
℃)液体23が沸騰するまで加熱装置27によって加熱
処理し、その後冷却することにより、前記コンデンサ素
子26を構成する陽極箔と陰極箔からなる電極箔のピッ
ト内に駆動用電解液22を入り込ませ、その後、図2
(f)に示すように、加熱装置28により使用保証温度
で加熱しながら使用電圧を一対のリード線24に印加し
て電極箔の再化成を行うようにしている。
【0015】なお、上記した図1の(f)と(g)の工
程および図2の(e)と(f)の工程は、加熱装置によ
る加熱温度を沸点の低い液体14,23の沸点以上とす
ることにより2つの工程における加熱処理を同時に行っ
ても差し支えないものである。また上記した図1の
(f)と図2の(e)における加熱含浸工程において、
再化成のための使用電圧を一対のリード線11,24に
印加するようにしても差し支えないものである。そして
また、前記加熱装置による加熱温度は、駆動用電解液1
7,22の沸点〜沸点+30℃が好ましいもので、この
場合、加熱温度を上げすぎると電極箔の酸化や駆動用電
解液17,22の劣化が進んで容量値が減少する場合も
あり、さらにケース16,21の内部圧力の上昇により
封口部材18,25の膨れや破壊が発生する場合もあ
る。
【0016】上記した本発明の他の実施例の含浸方法の
工程において、図2(e)に示すように加熱装置27に
よって駆動用電解液22より沸点の低い(約70℃)液
体23が沸騰するまで加熱処理することにより、前記液
体23は熱で気化するため、この気化により電極箔の表
面およびピット内に溜まっている気泡は押し出されてこ
の液体23がピット内に気体として充満することにな
る。そして温度が下がることにより、ピット内に気体と
して充満している前記液体23は液体に戻るもので、こ
の体積収縮によりピット内に駆動用電解液22が入り込
むものである。
【0017】次に図1(a)〜(g)に示す駆動用電解
液の含浸方法を用いて製造した直径4mm,高さ5mmのア
ルミ電解コンデンサと、この方法を用いずに製造した直
径4mm,高さ5mmのアルミ電解コンデンサをそれぞれ1
0個ずつ用意し、これらについて容量値とESR(等価
直列抵抗)値を測定して10個の平均値を比較して見る
と、図1(a)〜(g)に示す駆動用電解液の含浸方法
を用いない場合は、容量値は44.26μF,ESR
(等価直列抵抗)値は9.81Ωであった。これに対
し、図1(a)〜(g)に示す駆動用電解液の含浸方法
の場合は、沸点の低い液体14としてアルコールを1μ
l用い、そして加熱装置19による加熱温度を80℃と
して30秒加熱するという条件で処理した場合、容量値
は45.06μF,ESR(等価直列抵抗)値は8.7
3Ωで、図1(a)〜(g)に示す駆動用電解液の含浸
方法を用いない場合に比べて容量値が0.8μF上が
り、かつESR(等価直列抵抗)値が1.08Ω下がる
という好ましい結果を得た。
【0018】
【発明の効果】以上のように本発明の電解コンデンサに
おけるコンデンサ素子への駆動用電解液の含浸方法は、
コンデンサ素子に駆動用電解液よりも浸透性が高く、か
沸点の低い液体を含浸させ、続いて、規定量の駆動用
電解液をケース内に入れ、そして前記コンデンサ素子を
ケース内に挿入するか、あるいはケース内に規定量の駆
動用電解液を入れ、さらにこの駆動用電解液の上に駆動
用電解液よりも浸透性が高く、かつ沸点の低い液体を加
て2層構造とし、この状態で前記ケース内にコンデン
サ素子を挿入し、その後、前記ケースを封口することに
より封止を行うとともに、前記駆動用電解液より浸透性
が高く、かつ沸点の低い液体が沸騰するまで加熱処理す
ることにより駆動用電解液をコンデンサ素子に含浸させ
るようにしたもので、前記駆動用電解液より浸透性が高
く、かつ沸点の低い液体はコンデンサ素子への含浸によ
りコンデンサ素子における電極箔を構成する陽極箔およ
び陰極箔に浸透するが、前記加熱処理により駆動用電解
液より浸透性が高く、かつ沸点の低い液体は熱で気化す
るため、この気化により電極箔の表面およびピット内に
溜まっている気泡を押し出すとともに、ピット内に気体
として充満することになり、そして温度が下がることに
より、ピット内に充満している気体は液体に戻るもの
で、この際の体積収縮によりピット内に駆動用電解液が
入り込むもので、このように駆動用電解液はコンデンサ
素子を構成する電極箔のピット内に入り込んで駆動用電
解液のコンデンサ素子への確実な含浸がなされるため、
容量値が低下したり、ESR(等価直列抵抗)値が大き
くなったりするということはなくなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(a)〜(g)本発明の一実施例を示すアルミ
電解コンデンサにおけるコンデンサ素子への駆動用電解
液の含浸方法を示す断面を順に並べた工程図
【図2】(a)〜(f)本発明の他の実施例を示すアル
ミ電解コンデンサにおけるコンデンサ素子への駆動用電
解液の含浸方法を示す断面を順に並べた工程図
【図3】(a)〜(f)従来例を示すアルミ電解コンデ
ンサにおけるコンデンサ素子への駆動用電解液の含浸方
法を示す断面を順に並べた工程図
【符号の説明】
12 コンデンサ素子 14 沸点の低い液体 16 ケース 17 駆動用電解液 19 加熱装置
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−243107(JP,A) 特開 平2−109269(JP,A) 特開 平6−89833(JP,A) 特開 昭63−128619(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01G 9/02 H01G 13/00 - 13/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 陽極箔と陰極箔をその間にセパレータを
    介在させて巻回することにより構成されたコンデンサ素
    子に駆動用電解液より浸透性が高く、かつ沸点の低い液
    体を含浸させ、続いて、規定量の駆動用電解液をケース
    内に入れるとともに、前記コンデンサ素子をケース内に
    挿入し、その後、前記ケースを封口することにより封止
    を行うとともに、前記駆動用電解液より浸透性が高く、
    かつ沸点の低い液体が沸騰するまで加熱処理することに
    より駆動用電解液をコンデンサ素子に含浸させるように
    した電解コンデンサの製造方法。
  2. 【請求項2】 ケース内に規定量の駆動用電解液を入
    れ、さらにこの駆動用電解液の上に駆動用電解液より
    透性が高く、かつ沸点の低い液体を加えて2層構造と
    、この状態で前記ケース内に陽極箔と陰極箔をその間
    にセパレータを介在させて巻回することにより構成され
    たコンデンサ素子を挿入することにより前記駆動用電解
    より浸透性が高く、かつ沸点の低い液体と駆動用電解
    液を順次コンデンサ素子に含浸させ、その後、前記ケー
    スを封口することにより封止を行うとともに、前記駆動
    用電解液より浸透性が高く、かつ沸点の低い液体が沸騰
    するまで加熱処理することにより駆動用電解液をコンデ
    ンサ素子に含浸させるようにした電解コンデンサの製造
    方法。
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