JP3305902B2 - 粗糸落下防止機構を備える精紡機用クリール - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は精紡機用クリールパート
の一構成要素であるロービングパイプの上側に、粗糸落
下防止用のプレートを設けたクリール機構に関する。

【０００２】

【従来の技術】前記精紡機においては従来図１に示す通
り、ドラフトパート（１）の裏側に、これと若干離れた
位置にクリールパート（２）を設け、該クリールパート
（２）に上下２段に粗糸列（３）（４）を装着してい
る。このような構成において、巻着する粗糸の全量を使
い切るため、裸ボビン上に直接巻かれた第１層の粗糸を
解舒する場合は時に粗糸が下方へ滑落する状態となる
が、このような状態となっても前記図１に示す粗糸装着
形態では何んらの支障も生ぜず、滑落した粗糸端は単に
クリールボード（５）上への落下に止るものである。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが近時、粗糸の
ラージパッケージ化が進行するに伴ってスピンドルピッ
チと粗糸径の適合が崩れ、粗糸列の段数を多くしなけれ
ばならず、それがため、粗糸の装着位置をドラフトパー
ト（１）の上方、更にはドラフトパート（１）前面の通
路上方までその領域を拡大しなければならなくなってい
る。粗糸装着位置をドラフトパート（１）上方とした場
合は、下方へ滑落する粗糸端がドラフトパート（１）上
へ落下し、各構成部材への巻き付きや、それによる周辺
部での糸切れを生ずることとなる。

【０００４】更に最近、当業者が呼称する所謂「サイロ
スパン紡績糸」、即ち精紡機のドラフトパートを経由し
て得られた並列する２本のフリース状繊維束を所定の撚
数でもって同時に且つ同方向に撚転して得られる紡績糸
が広範囲に使用されるに及んで、シングルロービンにあ
っては粗糸装着本数が倍に増え、又ダブルロービングに
あっては粗糸１本当りの糸条数が２本となり、いずれも
粗糸の滑落による事故が増大する傾向にある。

【０００５】本発明は上記問題点を一挙に解消すること
の出来る粗糸落下防止機能を備える精紡機用クリールを
提供しようとするもので、粗糸の構成形態のシングルあ
るいはダブルを問わず、良好に粗糸滑落を防止し得るよ
うにしたものである。

【０００６】

【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明の精紡機用クリールは次の構成を備えている。
即ち複数段の粗糸列から夫々解舒された糸条を精紡機の
軸線方向に延在する複数列のロービングパイプを介して
ドラフトパートへ案内する精紡機のクリールパートにお
いて、上段の粗糸から解舒された糸条の走行路に、第１
ロービングパイプと、該パイプ上面に適宜な間隔を保っ
て水平に固着する粗糸落下防止用プレートを設け、前記
糸条が第１ロービングパイプの周面とプレートの内周面
間を通過し得るように構成したことを特徴とするもので
ある。

【０００７】

【作用】本発明に係る精紡機用クリールによれば、上段
の粗糸列から解舒された糸条は第１ロービングパイプの
周面と前記パイプの上面に水平に取り付けられた粗糸落
下防止用プレートの内周面を経由する。かかる走行形態
から紡出中、特に裸ボビン上の第１層の解舒時、仮令巻
着粗糸の急速な解きほぐしが生じ、複数輪の粗糸が同時
に下方へ落下する事態となっても、粗糸落下防止用プレ
ートがこれを阻止し、ドラフトパート等機台上への直接
落下を阻止することが可能となる。

【０００８】

【実施例】以下図面に示す実施例により本発明装置を其
体的に説明する。図２は精紡機の左半台側の紡出状態を
示す説明図、図３は本発明に係るプレートの取付状態を
示す斜視図である。精紡機は周知の通り、左半分側のド
ラフトパート（１１）と右半分側のドラフトパート（１
１）とが同一の機台に装着されており、両ドラフトパー
ト（１１）（１１）の中間に１つのクリールパート（１
２）が設置された構造となっており、図２はその左半分
側のドラフトパート（１１）とそれに対応するクリール
パート（１２）の粗糸装着状態を示すものである。

【０００９】図２に示す通り、実施例の装置において
は、１つのドラフトパート（１１）に対して４段のダブ
ルロービングよりなる粗糸（１３Ａ）（１３Ｂ）（１３
Ｃ）（１３Ｄ）列が設置されており、各クリールパート
（１２）には上部から下方へ順に、第１ロービングパイ
プ（１４），第２ロービングパイプ（１５），第３ロー
ビングパイプ（１６）の３者が配列しており、これらは
機台の軸線に沿って長く延在している。図上（１７）は
機台固着の支柱（図示しない）に設けたタブル形のロー
ビングガイドである。

【００１０】図２図示の状態において、左側上段のＡ粗
糸（１３Ａ）から解舒されたＡ糸条（Ａ），右側上段の
Ｂ粗糸（１３Ｂ）から解舒されたＢ糸条（Ｂ）の両者は
夫々別個に、ロービングガイド（１７），第１ロービン
グパイプ（１４），第２ロービングパイプ（１５），第
３ロービングパイプ（１６）を順に経由し、ドラフトパ
ートのバックボトムローラー対（１８）に達する。一方
左側下段のＣ粗糸（１３Ｃ）から解舒されたＣ糸条
（Ｃ），右側下段のＤ粗糸（１３Ｄ）から解舒されたＤ
糸条（Ｄ）の両者は同様に、夫々別個に、第１ロービン
グパイプ（１４），第２ロービングパイプ（１５），第
３ロービングパイプ（１６）を順に経由し、ドラフトパ
ートのバックボトムローラー対（１８）に達する。前記
第１ロービングパイプ（１４）上におけるＡ・Ｂ・Ｃ・
Ｄ各糸条（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）（Ｄ）の走行態様は、図２
の矢視Ｘ方向から見た斜視図の図３に示す通り、各糸条
（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）（Ｄ）が左側から順に配列してお
り、これが図上左右方向に順に繰り返し配列している。

【００１１】前記公知のクリールパート（１２）及びド
ラフトパート（１１）を経由する粗糸走行路において、
本発明の中核となる構成要素は図３に示す通り、第１ロ
ービングパイプ（１４）に固着する粗糸落下防止用のプ
レート（１９）にある。

【００１２】前記プレート（１９）は平面から見て、取
付用ねじ孔を有する基部（２４）と、項縁（２０）を凸
曲線とした頭部（２２）により形成せしめたＴ字形の平
板、所謂「いかり形」の平板からなっており、これをね
じ（２１）により図３及び図４に示す通り、第１ロービ
ングパイプ（１４）の上面に適宜な間隔（Ｔ）を保って
取付けてなるものである。尚プレート（１９）の作用面
は略々水平に装着されている。

【００１３】各解舒糸条（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）（Ｄ）と、
プレート（１９）と、第１ロービングパイプ（１４）の
表面、以上三者の相互の位置関係は図３及び図４に示す
通り、上方より下方に向って垂下走行するＡ糸条（Ａ）
及びＢ糸条（Ｂ）は夫々プレート頭部（２２）の基部側
内周面（２３）と第１ロービングパイプ（１４）の間に
あり、下段から解舒されたＣ糸条（Ｃ），Ｄ糸条（Ｄ）
は夫々略々水平方向先方より走行して来て第１ロービン
グパイプ（１４）の周面で屈曲し、次いで下方へ走行す
る態様になっている。しかして先に説明した通り、第１
ロービングパイプ（１４）上においてＡ・Ｂ・Ｃ・Ｄの
各糸条（Ａ）（Ｂ）（Ｃ）（Ｄ）は前記配置状態を繰り
返して配列している。

【００１４】前記の使用態様からプレート（１９）の形
状としては、巾方向の長さが並列走行する隣接２糸条を
十分に渡る巾であることを要し、又軸線方向の長さは内
周面（２３）と第１ロービングパイプ（１４）間に糸条
が十分遊嵌し得る領域を確保出来る長さであることを要
する。

【００１５】実施例の精紡機用クリールは上述の如き構
成からなるものであって、各粗糸（１３Ａ）（１３Ｂ）
（１３Ｃ）（１３Ｄ）より解舒された各糸条（Ａ）
（Ｂ）（Ｃ）（Ｄ）は先に説明した各過程を経由してド
ラフトパートのバックローラー対に達するが、その際上
段の粗糸（１３Ａ）（１３Ｂ）より解舒された糸条
（Ａ）及び（Ｂ）は、第１ロービングパイプ（１４）と
プレート（１９）の間隙を必ず経由することとなり、こ
れにより上段から落下する粗糸を完全に防止することが
可能となる。

【００１６】

【発明の効果】精紡機のクリールパートに装着された粗
糸群の巻着量は、それが消費され略々完了する時点で、
紡出中の糸切れによるロービングストッパー（粗糸供給
を積極的に停止させる機能を有する）の作動、ドラフト
パートのエプロン切れ等による空錘等の原因により、そ
の残量が大きく変動する。しかして先に説明した通り、
通常形式のクリールにあっては最後まで粗糸を使い切る
と、早くなくなった粗糸の篠尻がドラフトパート上に落
下し、これが飛散し、種々のトラブルを生じている。こ
の様なことを避けるため、機台運転要員は結果として早
期に粗糸の一斉切り替えを実施し、残粗糸を大量に屑物
としなければならなかった。ところが本発明の精紡機用
クリールを用いることにより、粗糸を最後まで使用する
ことが可能となり、大量屑物の発生を防止することが出
来る。

【００１７】又、上記の様なトラブル発生を防ぐため、
上記要員は粗糸一斉替の適時期を常時覧視しなければな
らなかったが、この必要がなくなり、要員の作業効率を
大きく向上させることが出来る。

【００１８】尚、上記実施例においては第１ロービング
パイプに装着するプレートを「いかり形」としたが、こ
れに限定されるものではなく、四辺形でも使用可能であ
る。しかし「いかり形」が操作上、周辺に支障を生じな
い点で最も適している。又ブレートを装着する位置とし
ては本発明の場合第１ロービングパイプとしたが、他の
ロービングパイプに装着しても良い。しかし粗糸落下に
伴うトラブルは上段粗糸によるものが最も大きい被害を
生ずるので、この走行路において最も粗糸に近いロービ
ングパイプ、即ち第１ロービングパイプには必ず装着す
る必要がある。

【図面の簡単な説明】

【図１】従来のクリールパートの全体を示す側面図であ
る。

【図２】本発明の実施例を示すもので、精紡機の左半分
側の紡出状態を示す説明図である。

【図３】本発明の実施例を示すもので、プレートの取付
状態を示す斜視図である。

【図４】本発明の実施例を示すもので、プレートの取付
状態を示す平面図である。

【符号の説明】

１３Ａ〜１３Ｄ 粗糸 １４ 第１ロービングパイプ Ａ〜Ｄ 糸条 １９ プレート ２２ プレート頭部 ２３ プレート内周面 ２４ プレート基部

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 複数段の粗糸列から夫々解舒された糸条
   を精紡機の軸線方向に延在する複数列のロービングパイ
   プを介してドラフトパートへ案内する精紡機のクリール
   パートにおいて、上段の粗糸（１３Ａ）（１３Ｂ）から
   解舒された糸条（Ａ）（Ｂ）の走行路に、第１ロービン
   グパイプ（１４）と、該パイプ（１４）上面に適宜な間
   隔を保って水平に固着する粗糸落下防止用プレート（１
   ９）を設け、前記糸条（Ａ）（Ｂ）が第１ロービングパ
   イプ（１４）の周面とプレート（１９）の内周面（２
   ３）間を通過し得るように構成したことを特徴とする粗
   糸落下防止機構を備える精紡機用クリール。
2. 【請求項２】 粗糸落下防止用プレート（１９）が、取
   付用ねじ孔を有する基部（２４）と、頂縁（２０）を凸
   曲線とした頭部（２２）により形成されたＴ字形平板で
   ある請求項１記載の粗糸落下防止機構を備える精紡機用
   クリール。