JP3305053B2 - 帯電除去用部材 - Google Patents

帯電除去用部材

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JP3305053B2 JP20838893A JP20838893A JP3305053B2 JP 3305053 B2 JP3305053 B2 JP 3305053B2 JP 20838893 A JP20838893 A JP 20838893A JP 20838893 A JP20838893 A JP 20838893A JP 3305053 B2 JP3305053 B2 JP 3305053B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は帯電したエレクトロニク
ス関連部品などを取り扱う際に起きている急速な放電に
よって部品が電気的に破壊される現象を防ぎ、部品の帯
電を除去するのに使用される帯電除去用部材に関する。
【0002】
【従来の技術】半導体装置を始めとするエレクトロニク
ス関連部品の製造工程などにおいて、工程中で部品が実
帯電または誘電帯電によって電荷を帯びることがあり、
帯電した部品が電気抵抗が小さい金属などの導電性材料
と接触すると、電荷の急速な放電が起き、放電によって
部品が電気的に破壊(絶縁破壊など)されることが度々
あり、この放電による部品の破壊を防ぐことが重要な課
題となっている。
【0003】導電性を有するセラミックスとしては、例
えば特公平4−54630にアルミナに2族元素と3a
族元素を添加した導電性のセラミックスが、また、特公
平2−43699にTi、Ta、Zr、Hfの窒化物や
炭化物を窒化ケイ素に混入した、体積固有抵抗が小さく
放電加工が可能な窒化ケイ素の焼結体が開示されてい
る。帯電防止を目的とするセラミックスとしては、実公
平5−2303に金属製のピンセットの挟持部分に10
2〜106Ω・cmの体積固有抵抗を有する、チタニア
質、ジルコニア質、窒化ケイ素質または炭化ケイ素質セ
ラミックスを装着したものが開示されている。
【0004】また、実開平2−114441には、加工
ないし物性測定用の部材を吸引するチャックで、吸着面
に体積固有抵抗が10〜105Ω・cmのセラミックス
を使用して帯電によりごみが付着するのを防いだチャッ
クが提案され、特公昭61−42418には、シリコン
ウエハと接触する面を高純度の炭化ケイ素(表面抵抗率
は通常103〜104Ω/cm2の範囲にある)で構成し
た被取り扱い物を汚さない吸引運搬具(吸引チャック)
が提案されている。
【0005】しかし、これらの部材は、帯電除去に使用
する部材としては以下に述べる理由により信頼性が満足
なものではなかった。すなわち、部品など帯電してい
る静電気の電圧が2000Vを超える高いものとなって
いることが多くあり、放電が起きたときに部品が電気的
な破壊を受けないように保護するとともに、部品を破壊
することなく電荷を除去するには105Ω・cm以下の
レベルの体積固有抵抗では不充分であることが分かっ
た。
【0006】帯電を除去するための材料の電気抵抗の表
示方法としては、その特性の利用形態から表面抵抗率で
表すのが適当と考えられるが、現在統一した表現は採用
されていない。均質な素材の場合、表面抵抗率と体積固
有抵抗の関係は、測定値が一桁違う場合もあるが大抵の
場合は概ね一致する。これらの知見から、帯電除去の目
的に適した表面抵抗率は106〜1010Ω/cm2程度と
考えられるが、単一の組成からなる素材ではこの範囲の
表面抵抗率を示す適当な素材は見当たらない。
【0007】他方、プラスチックスにカーボン粉末を練
り込んだ帯電除去用の床材なども実用に供されている
が、プラスチックスは強い洗浄処理を行うと劣化しやす
く、摩耗すれば塵を放出し、被取り扱い物に触れると被
取り扱い物が塵で汚されるおそれがある。他方、セラミ
ックスは一般に化学的に安定であり、耐熱性と耐食性に
優れ、硬くて摩耗しにくいなどの長所があるので、汚れ
を嫌う被取り扱い物と直接接触する部材として好ましい
材料である。
【0008】しかし、セラミックスは脆性材料であって
破損しやすく、所要の形状に加工するのにダイヤモンド
砥石による研削加工を必要とするなど、製品としての仕
上げ加工に手間とコストがかかるという欠点がある。
【0009】また、帯電除去用セラミックスを帯電除去
用部材として使用するには、帯電除去用セラミックスを
アースに接続した導電材と電気的に接続する必要がある
が、帯電除去用セラミックスの表面抵抗率が106Ω/
cm2以上と大きいような場合、導電線などの導電材を
帯電除去用セラミックスに単に接触させるだけでは接触
抵抗が大きくかつ不安定であり、帯電除去用部材として
使用するときに帯電した部品の静電気の除去を確実に行
うことができないという問題がある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、これらの従
来技術を背景とし、帯電した静電気の急速な放電により
破壊を受けやすい被取り扱い物を扱う装置において、帯
電除去用部材を直接被取り扱い物に接触させることによ
り部品を放電破壊させることなく帯電した静電気を確
実、かつ速やかに除去できる使いやすい帯電除去用部材
を提供することを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明は前述の課題を達
成すべくなされたものであり、本発明の帯電除去用部材
は、表面抵抗率が2×106〜1010Ω/cm2の範囲に
ある帯電除去用セラミックスとアースに接続された導
電材とからなり、帯電除去用セラミックスと導電材が面
で接触または接合されて電気的に接続され、かつ帯電除
去用セラミックスがアルミナを主成分とするマトリック
ス中に炭化チタン、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウ
ム、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、窒化ニオブ、炭
化ニオブ、窒化タンタルおよび炭化タンタルからなる群
から選ばれる1種以上の導電性化合物を含み、その相対
密度が90%以上の焼結体であることを特徴とする。本
発明の別の帯電除去用部材は、表面抵抗率が2×106
〜9×1010Ω/cm2の範囲にある帯電除去用セラミ
ックスとアースに接続された導電材とからなり、帯電
除去用セラミックスと導電材が面で接触または接合され
て電気的に接続され、かつ帯電除去用セラミックスが、
窒化ケイ素と焼結助剤からなるマトリックス中に窒化チ
タン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、窒化ニオ
ブ、窒化タンタルからなる群から選ばれる1種以上と炭
化ケイ素を含み、その相対密度が90%以上の焼結体で
あることを特徴とする。
【0012】本発明の帯電除去用部材では、帯電除去用
セラミックスの表面抵抗率が2×106〜1010Ω/c
2 (マトリックスがアルミナを主成分とする場合、マ
トリックスが窒化ケイ素と焼結助剤からなる場合は9×
10 10 Ω/cm 2 の範囲とされていることによって、
例えば2000V以上に帯電した被取り扱い物から静
気を電気的なダメージを伴わずに確実に除去できる。帯
電除去用セラミックスの表面抵抗率が2×106Ω/c
2より小さいと、帯電した静電気の電圧が高いときに
被取り扱い物を電気的に破壊する可能性があり、他方表
面抵抗率が1010Ω/cm2 (マトリックスがアルミナ
を主成分とする場合、マトリックスが窒化ケイ素と焼結
助剤からなる場合は9×10 10 Ω/cm 2 より大きい
と、帯電した静電気の除去が難しくなる場合がある。
【0013】帯電除去用セラミックスの表面抵抗率の範
囲は、使用性能の面から、さらには107〜9×109Ω
/cm2とするのが好ましい。また、アースに接続さ
れた導電材と面で確実に電気的に接続されていることに
より、帯電除去用セラミックスに移された電荷を導電材
を経て確実にアースに逃がし、帯電除去用部材として
の機能を発揮する。106Ω/cm2より大きい表面抵抗
率を有する部材では静電気を帯電しやすいが、アース
と確実に接続されていることによって静電気が除去さ
れ、帯電除去用セラミックスに帯電した静電気により塵
が付着することなく、被取り扱い物がこの塵で汚される
こともない。接触または接合面の面積は、1mm 2
上、好ましくは2mm 2 以上とし、帯電除去用セラミッ
クスと導電材との間の電気的な接続抵抗が不安定になっ
たり、断線したりする可能性を完全に排除する。
【0014】このような大きさの表面抵抗率を有する帯
電除去用セラミックスは、例えば、絶縁材料であるアル
ミナや窒化ケイ素を主成分とするセラミックス中に、導
電性の無機化合物である窒化チタン、炭化チタン、窒化
ジルコニウム、炭化ジルコニ ウム、窒化ハフニウム、炭
化ハフニウム、窒化ニオブ、炭化ニオブ、窒化タンタル
および炭化タンタルの微粒子を単独でまたは併用して存
在せしめることによって得ることができる。
【0015】導電材は、好ましくは電気抵抗が小さく加
工の容易な金属材料とされ、導電材と帯電除去用セラミ
ックスとの電気的接続は、点でなく面で接触または接合
する。かくして本発明の帯電除去用部材では、帯電除去
用セラミックスの表面抵抗率が大きいことに起因する
安定になりやすい導電材との間の接続抵抗を低くし、か
つ安定させることで電流が流れ難くなる現象を防ぎ、帯
電除去用部材としての機能を確保している。
【0016】接触または接合面の面積は、好ましくは1
mm2以上、さらに好ましくは2mm2以上とし、帯電除
去用セラミックスと導電材との間の電気的な接続抵抗が
不安定になったり、断線したりする可能性を完全に排除
する。
【0017】導電材と帯電除去用セラミックスとの間の
電気的接続を接触によって確保するには、例えば柔らか
く錆びにくい金属の薄板を帯電除去用セラミックスと導
電材との間に配置し、ネジやボルトまたはナットなどに
より機械的な押圧力を加えた状態とすればよい。すなわ
ち、柔らかい金属の薄板が押圧力で変形すれば面による
接触が得られる。
【0018】導電材が表面の錆びやすい金属材料である
場合など、接触抵抗が大きくなる危険性が高いので、好
ましくは接触または接合する面をメタライジング、また
はさらに導電材と接合して、電気的接続を安定させるの
がよい。接合する場合には、接合面の面積を1mm2
上確保し、電気的接続と接合強度を同時に確保するのが
好ましい。接合の方法としては、セラミックス接合用の
ハンダでハンダ付けしたり、メタライジング後ロウ付け
したり、導電ペーストを焼き付けたり、有機の導電性接
着材を使用するなどの他、接合強度をあまり必要としな
い場合には、導電性を有する両面接着テープを使用する
こともできる。
【0019】アース線には例えば銅線を使用し、導電材
とアース線との間の電気的接続は、両者の電気抵抗が小
さいので点接触によっても確保できるが、断線すること
がないようネジやハンダまたはロウ付けにより接続する
のが好ましい。
【0020】本発明の帯電除去用部材では、帯電除去用
セラミックスに、アルミナを主成分とするマトリックス
中に炭化チタン、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウ
ム、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、窒化ニオブ、炭
化ニオブ、窒化タンタルおよび炭化タンタルからなる群
から選ばれる1種以上の導電性化合物を含み、その相対
密度が90%以上(閉じた気孔率も含めて気孔率10%
以下)の焼結体とする。ここで、相対密度は、先ず嵩比
重を測定し、原料粉末の密度が変化しないと仮定して嵩
比重から気孔率を計算し、100%から気孔率を差し引
くことにより求められる。
【0021】アルミナは絶縁材料として知られ、焼結が
容易な細かくて純度の高い原料粉末の入手が容易なの
で、帯電除去用セラミックスの主原料として適するもの
である。本発明者らは、平均粒径5μm以下のアルミナ
の原料粉末に、同じく5μm以下の平均粒径を有する
化チタン、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、窒化
ハフニウム、炭化ハフニウム、窒化ニオブ、炭化ニオ
ブ、窒化タンタルおよび炭化タンタルいずれも体積固
有抵抗は10-4〜10-5Ω・cmの範囲にある)からな
る群から選ばれる1種以上の粉末を混合して成形し、成
形体を焼結することにより、目標とする範囲内の表面抵
抗率を有し、相対密度が90%以上の帯電除去用セラミ
ックスを得ることに成功した。
【0022】目標とする表面抵抗率が得られる原料組成
は、原料粉末の性状、焼結条件などによって変化する
が、5μm以下の平均粒径の原料粉末を使用し、炭化チ
タン、窒化ジルコニウム、炭化ジルコニウム、窒化ハフ
ニウム、炭化ハフニウム、窒化ニオブ、炭化ニオブ、窒
化タンタルおよび炭化タンタルからなる群から選ばれる
1種以上の導電性化合物の粉末を合わせて4〜23体積
と、残部がアルミナを主成分とするマトリックスの原
料粉末と混合したものを焼結することにより、比較的容
易に目標とする表面抵抗率を有する焼結体が得られる。
【0023】焼結体の原料粉末は、平均粒径が5μm以
下、さらには2μm以下と細かいものの方が焼結性がよ
いので、緻密で均質な焼結体を得やすいように、混合し
た原料粉末をさらに粉砕するのが好ましい。混合と粉砕
は回転ボールミル、振動ミル、アトリションミルなどに
より、エタノールなどを分散媒として湿式で粉砕すると
効率がよい。
【0024】焼結体がアルミナを主成分とするマトリッ
クスからなるとしたのは、原料粉末中に含まれる不可避
不純物や、焼結を促進するために加えるイットリア、マ
グネシアなどの焼結助剤、または結晶成長を抑制する
グネシア、シリカなどの添加剤が他に含まれていても差
し支えないからである。導電性化合物を混入するとアル
ミナ結晶の成長を抑制する効果も得られ、平均粒径が5
μm以下の原料粉末を使用することにより、大抵の場合
均粒径5μm以下、例えば平均粒径2〜3μmの材料
物性の安定した帯電除去用セラミックスが得られる。
【0025】焼結体の強度は大きい方が破損し難く、耐
摩耗性の大きい方が塵を放出せず、耐久性に優れた帯電
除去用セラミックスが得られるので、強度と耐摩耗性を
確保するため、焼結体の密度は相対密度(以下単に密度
という)で90%以上とされている。さらに焼結体の有
する気孔をすべて閉じた気孔として吸湿性をなくするに
は、焼結体の密度93%以上とするのが好ましい。
【0026】混合粉末の成形には、通常行われているプ
レス成形法、スリップキャスト成形法、射出成形法、ア
イソスタチックプレス成形法などが採用でき、射出成形
法により得られた成形体では、多量の結合剤を含んでい
るため、最終的な焼成を行う前に脱脂処理を行う必要が
ある。成形体の焼結は、無加圧焼結やホットプレスによ
り行い、導電性化合物が酸化されて非導電性とならない
ように、非酸化性雰囲気中において行う。
【0027】炉内を非酸化性雰囲気とするには、炉内に
窒素、アルゴン、ヘリウムなどのガスを導入し、155
0〜1700℃の温度で1〜5時間保持して無加圧焼結
する。より緻密な焼結体を得たい場合には、90%以上
の密度とした無加圧焼結体をさらにホットアイソスタチ
ックプレスで焼結するとよい。無加圧焼結とホットアイ
ソスタチックプレスは、成形体が複雑な形状を有してい
ても焼結ができる。
【0028】本発明の他の帯電除去用部材では、帯電除
去用セラミックスが、窒化ケイ素と焼結助剤からなるマ
トリックス中に窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハ
フニウム、窒化ニオブおよび窒化タンタルからなる群
ら選ばれる1種以上と炭化ケイ素を含む密度が90%
以上の焼結体とされている。
【0029】この窒化ケイ素を主成分とする帯電除去用
セラミックスは、目標とする範囲内の表面抵抗率を有す
るとともに、アルミナを主成分とする帯電除去用セラミ
ックスと比べてより高強度を有するものが得られる。す
なわち、アルミナを主成分とする帯電除去用セラミック
スの曲げ強度が25〜35kg/mm2のレベルにある
のに対し、窒化ケイ素を主成分とする帯電除去用セラミ
ックスでは50kg/mm2以上の曲げ強度を有するも
のが容易に得られ、構造材料としても利用できる。
【0030】このような帯電除去用セラミックスは、平
均粒径5μm以下の炭化ケイ素粉末0.1〜17重量%
と、窒化チタン、窒化ジルコニウム、窒化ハフニウム、
窒化ニオブおよび窒化タンタルからなる群から選ばれる
1種以上の平均粒径5μm以下の粉末22〜55重量%
と、残部の焼結助剤を含む平均粒径5μm以下の窒化ケ
イ素粉末からなる混合された粉末を成形、焼結して得る
ことができる。
【0031】この帯電除去用セラミックス中に、窒化チ
タン窒化ニオブなどの金属窒化物の他に、中間的な体
積固有抵抗を有する炭化ケイ素(体積固有抵抗は105
Ω・cm以下)が含まれているのは、焼結体の表面抵抗
率の制御を容易とするためである。しかし、炭化ケイ素
を3体積%を超えて含む混合粉体は無加圧焼結で緻密化
するのが難しいので、ホットアイソスタチックプレスに
より焼結を行うのが好ましい。
【0032】また、窒化ケイ素粉末の無加圧焼結を可能
にする焼結助剤としては、マグネシア、アルミナ、スピ
ネルおよびイットリアから選ばれる1種以上を合わせて
2〜15重量%添加するのが好ましく、これにより密度
が90%以上で、曲げ強度が60kg/mm2以上の焼
結体を容易に得ることができる。
【0033】帯電除去用セラミックスの表面抵抗率を目
標とする範囲におさめて、強度の大きい焼結体とするの
に、窒化チタンの適切な含有量は22〜33重量%であ
る。また、窒化ジルコニウムおよび/または窒化ニオブ
の適切な含有量はいずれも27〜40重量%であり、い
ずれの場合にも、炭化ケイ素の含有量は0.1〜12重
量%とするのが好ましい。
【0034】窒化ケイ素質の帯電除去用セラミックスの
製造方法は前述のアルミナ質の帯電除去用セラミックス
の製造方法と基本的には同じであるが、窒化ケイ素がS
iとN2に分解して焼結が阻害されるのを防ぐため、少
なくともN2雰囲気中で、好ましくはN2とSiを含む雰
囲気中で焼成を行う。また、原料粉末の粒径はアルミナ
質の帯電除去用セラミックスを製造する場合より細かく
した方がよく、密度が大きく、曲げ強度の大きい焼結体
が得られるように、平均粒径が5μm以下、好ましくは
0.1〜2μmの原料粉末を使用する。
【0035】目標とする表面抵抗率と密度を有する帯電
除去用セラミックスを得るための焼結条件は、原料粉末
の混合の程度、粒径分布、成形条件および組成によって
かなり変わるが、無加圧焼結を行う場合には、通常焼結
温度を1700〜1800℃とし、1〜10時間保持し
て焼結する。
【0036】の帯電除去用部材では、帯電除去用セラ
ミックスが、導電材である金属基材上に形成された金属
のアンダーコート層上に溶射により形成されたものであ
り、アンダーコート層の熱膨張率が金属基材とセラミッ
クス層の中間の熱膨張率を有するものである。
【0037】通常、導電材と導電材の間の電気的接続
は、ネジやバネで単に接触させれば充分であるが、表面
抵抗率が2×106Ω/cm2以上9×1010Ω/cm2
以下である帯電除去用セラミックスと導電材との間の電
気的接続は、単なる接触では接触抵抗が安定しないこと
があるため信頼性に欠ける。しかし、金属基材がセラミ
ックス層と一体化された帯電除去用部材ではこの間の電
気的接続の問題はなく、導電材である金属基材とアース
線を電気的に接続すればよく、単なる接触によってもア
ースとの接続が可能であるが、より信頼性の高いハンダ
付けやロウ付けなどにより接続するのが好ましい。
【0038】また金属材料の加工はセラミックスと比べ
て顕著に容易であり、加工コストも安いので、予め所要
の形状に加工した金属基材を準備しておいてセラミック
ス層を形成すれば、種々の形状を有する帯電除去用部材
を安価に製造できる。
【0039】金属基材として、例えば、Cu、ステンレ
ス、アルミニウムなどを使用するとき、これらの熱膨張
率が17〜18×10-6/℃と大きいのに対し、Al2
3−TiO2系セラミックス層やAl23−TiN系セ
ラミックス層の熱膨張率は8〜9×10-6/℃と小さく
その差はかなり大きい。
【0040】の帯電除去用セラミックスでは、セラミ
ックス層が溶射によって形成されるので、溶射時には金
属基材の温度が上昇し、温度が高い時点では熱歪みがな
いか非常に小さい状態となっていても、室温まで冷却さ
れると両者の熱膨張率の差によって境界付近に歪みが生
じ、セラミックス層に亀裂が生じたり、セラミックス層
が金属基材から剥離したりする場合が多い。
【0041】このため、他の帯電除去用部材では、金属
基材の上に予め両者の中間の熱膨張率を有する金属のア
ンダーコート層を施すことにより熱膨張率が大きい金属
基材と熱膨張率が小さいセラミックス層の接合面に生じ
る熱歪みを小さくし、熱歪みによってセラミックス層に
亀裂が生じたり、セラミックス層が金属基材から剥離す
るのを防ぐとともに、アンダーコート層にセラミックス
層と金属基材の間の電気的な接続を確保する機能を担わ
せている。
【0042】アンダーコート層は、例えばMo、Ti、
Ni、Nb、Ta、W、Ni−Al、Ni−Cr、Ni
−Cr−Al、Ni−Cr−Al−Y、Ni−Co−C
r−Al−Yなどの金属や合金をメッキ、火炎溶射、プ
ラズマ溶射、スパッタリング、Mo−Mn法メタライジ
ング、蒸着などによって形成する。
【0043】アンダーコート層は、特にプラズマ溶射法
によって形成するのが好ましく、その理由は非酸化性雰
囲気で溶射して金属の酸化を防ぐことが可能なことであ
る。また、プラズマ溶射法によれば、温度を高くできる
のでアンダーコートできる材料の選択の幅が広く、やや
厚いアンダーコート層や2層構造のアンダーコート層を
形成するのが容易である。
【0044】これらのアンダーコート層の熱膨張率は、
好ましくは12〜15×10-6/℃とされ、さらに好ま
しくはアンダーコート層を熱膨張率が異なる複層で構成
し、セラミックス層側のアンダーコート層の熱膨張率を
金属基材側のアンダーコート層の熱膨張率よりセラミッ
クス層の熱膨張率に近いものとするのが好ましい。
【0045】セラミックス層側のアンダーコート層とセ
ラミックス層との熱膨張率の差を2×10-6/℃より小
さくするとセラミックス層の剥離の心配がない帯電除去
用部材が得られる。熱膨張率が小さい金属のアンダーコ
ート層としては、Ti、Nb、W、Mo、Ta、これら
の金属を含む合金などが挙げられる。
【0046】アンダーコート層の厚さは、金属基材とセ
ラミックス層の熱膨張差に起因する熱応力を緩和してア
ンダーコート層の上に密着したセラミックス層を安定し
て形成できれば薄いものでよい。両者の熱膨張差が大き
い場合には少し厚めのアンダーコート層とされるが、ア
ンダーコート層を2層構成としてセラミックス層側にも
アンダーコート層を施した場合には、金属基材側のアン
ダーコート層の厚さ分も合わせて好ましくは30〜15
0μm、さらに好ましくは80〜120μmとする。
【0047】また、他の帯電除去用部材は、金属基材と
一体とされていることにより、セラミックス層の強度が
小さく薄いものであっても、複合化されて実用的に充分
な強度と靭性が付与されており、金属基材と一体の帯電
除去用部材はセラミックスの帯電除去用部材と比べて所
要の形状とするのが容易なので機械に組み付けることも
容易である。
【0048】アンダーコート層の形成は、好ましくは、
予め金属基材の表面をアルミナや炭化ケイ素の砥粒でサ
ンドブラスト処理して荒れた表面としておくことによっ
てアンダーコート層の金属基材への密着性を向上させる
ことができる。また、金属基材の表面に溝やねじを切っ
ておき、溝やねじを設けた面をさらにサンドブラスト処
理してアンダーコート層を形成すると、アンダーコート
層の密着性がさらに向上する。アンダーコート層の厚さ
は、密着性のよいセラミックス層を形成できるように、
30〜150μm程度とするのが適当である。
【0049】の帯電除去用部材では、セラミックス層
の溶射材料としてアルミナにTiの酸化物および/また
は窒化物を含むものが選ばれる。その理由は溶射によっ
て目標とする範囲内の表面抵抗率を再現性よく得られる
セラミックス層が形成できるからである。また、アルミ
ナは高純度で、溶射しやすい粒度が揃った原料粉末の入
手が容易であり、形成されるセラミックス層が化学的に
安定で硬度が高く耐摩耗性を具備しているためである。
【0050】セラミックス層中の副成分であるTiの酸
化物および/または窒化物の必要とされる含有量は溶射
条件によって変化するが、好ましくはいずれも5〜50
重量%である。また、セラミックス層は、表面抵抗率を
目標とする狭い範囲に制御するのが容易であることか
ら、プラズマ溶射法を採用するのが好ましい。
【0051】セラミックス層を形成する溶射粉末には、
所要の表面抵抗率を有する均質なセラミックス層を形成
するため、予め所定の組成とした溶射粉末を使用するの
が好ましく、例えば、原料粉末を混合して焼結した所定
の組成を有する焼結体を粉砕して溶射しやすい粒径の粉
体、例えば平均粒径10〜75μmのものを使用すると
よい。平均粒径が10μmより小さいと、溶射装置への
原料の供給が難しくなり、75μmより大きいと粒子が
ガス中で融けにくくなり、緻密なセラミックス層の形成
が困難となる。
【0052】セラミックス層の厚さは、ある程度の厚さ
にした方が安定した表面抵抗率を得やすいので、100
μm以上とするのが好ましい。また、アンダーコート層
を2層とすれば、セラミックス層の密着性も高くなり、
厚いセラミックス層を形成できるが、セラミックス層を
厚く形成するとセラミックス層が剥離しやすくなり、溶
射に必要な時間が長くなることから、厚くても2mm以
下にとどめるのが好ましい。
【0053】本発明の他の好ましい帯電除去用部材で
は、帯電除去用部材がエレクトロニクス関連部品を取り
扱うマニピュレータまたはチャックの少なくとも一部分
とされている。
【0054】マニピュレータはいわゆるロボットの手で
あり、例えば被取り扱い物を掴む指(この場合少なくと
も2本の指があればよい)の先に本発明の帯電除去用部
材が取り付けられており、被取扱い部品が静電気を帯び
ている場合には、静電気が帯電除去用セラミックスを介
して緩慢に放電して除去され、静電気がアースに流れる
ので部品の電荷が除去されると同時に、急速放電によっ
て電気的に破壊されることがない。
【0055】チャックは例えば吸引チャックであり、吸
引チャックの被取り扱い物と接触する部分に本発明の帯
電除去用部材が取り付けられており、同様にして帯電し
た電荷の急速な放電によって被取り扱い物を破壊するこ
となく電荷が除去される。
【0056】本発明の他の好ましい帯電除去用部材で
は、帯電除去用部材の導電材がエレクトロニクス関連部
材を取り扱う装置の、アースに接続された金属材料か
らなる枠体と電気的に接続されている。
【0057】このようにしてアースと接続することに
より、アース線を顕著に短くでき、帯電除去用部材が装
置の重心に対して移動する場合にも、アース線を帯電除
去用部材が取り付けられているアームに添わせたり、導
電材のアームをアース線の一部分として利用するなどに
よりアース線を引きずらないように配線することが可能
となる。
【0058】
【実施例】以下、本発明を実施例によって具体的に説明
するが、本発明はこれらの実施例によってなんら限定さ
れるものではない。
【0059】試験例1〜51 平均粒径0.26μm、純度99.99%のアルミナ粉
末(住友化学工業社製AKP−50)に、平均粒径1〜
2μmのいずれも純度が約99%の窒化チタン(Ti
N)、窒化ジルコニウム(ZrN)、炭化チタン(Ti
C)、炭化ジルコニウム(ZrC)(以上、シュタルク
社製)、窒化ハフニウム(HfN)、炭化ハフニウム
(HfC)、窒化ニオブ(NbN)、炭化ニオブ(Nb
C)、窒化タンタル(TaN)および炭化タンタル(T
aC)(以上、日本新金属社製)から選ばれた粉末を、
表1と表3に示した1〜30体積%含む組成となるよう
にアルミナと調合し、ナイロン製ポットとナイロン製ボ
ールを使用する振動ミルにより、エタノールを媒体とし
て湿式で混合した。
【0060】得られたスラリーを約60℃の減圧下で乾
燥してエタノールを除き、乾燥物を解砕して成形用の混
合粉末を得た。この混合粉末を、金型プレスによって1
00kg/cm2でプレス成形し、寸法が50mm×1
20mm×10mmの成形体とし、さらにこれを200
0kg/cm2の圧力で静水圧プレスした。
【0061】各成形体を、窒素またはアルゴンの非酸化
性雰囲気中において1550〜1700℃で3時間無加
圧焼結した。各焼結体から、30mm×30mm×2m
mの平板を切り取って表面抵抗率の測定を行うととも
に、各焼結体から3mm×4mm×40mmの試験片を
それぞれ5個切り出して3点曲げ強度を測定した。
【0062】また、除電特性と放電特性の試験として、
切り取ったそれぞれの試験片の一端をメタライジング
し、この一端を金属製の棒の先端にロウ付けした。金属
棒をアースに接続しておいて、予め帯電させた金属板に
接続したリード線に試験片の先を接触させて除電と放電
の状況を観察し、帯電除去用部材としての特性を評価し
た。
【0063】これらの結果を焼結体の密度も含めて表2
と表4に示す。除電特性と放電特性の結果は〇が良好、
×が不良を意味する。すなわち、除電特性は帯電した電
荷が実質的に除去されれば良好とされ、放電特性は帯電
している電荷の放出速度(電位の低下速度を計器で測
定)が速すぎないもの(本試験では、電荷が半減するの
に要する時間が0.5〜8msecのもの)を良好とし
た。また、これらの表中No.1、2、3、20、2
1、22、23、24、25、46、47、48、4
9、50および51の試験例は比較例であり、No.
7、9、12、14、17、19、26〜45は本発明
の実施例であり、他は参考例である。
【0064】
【表1】
【0065】
【表2】
【0066】
【表3】
【0067】
【表4】
【0068】以上の試験結果から、本発明によるアルミ
ナ質の帯電除去用セラミックスは2×106〜1010Ω
/cm2の範囲内の表面抵抗率を示し、帯電除去用セラ
ミックスとアースされた導電材を組み合わせた帯電除去
用部材は良好な除電特性を示すことが分かった。
【0069】また帯電除去用セラミックスの曲げ強度も
27〜39kg/mm2とアルミナを素材とするもので
は高いレベルの値が得られ、本発明のアルミナ質の帯電
除去用セラミックスに導電材を組み合わせた帯電除去用
部材は信頼性が高いことが示された。
【0070】試験例61〜82 平均粒径0.7μmの窒化ケイ素粉末(宇部興産社製、
SN−E10)に、平均粒径1〜2μmで、いずれも純
度が約99%である窒化チタン(TiN)、窒化ジルコ
ニウム(ZrN)、窒化ハフニウム(HfN)、窒化ニ
オブ(NbN)および窒化タンタル(TaN)から選ば
れた導電性の金属窒化物粉末(いずれも日本新金属社
製)と、平均粒径0.6μmの炭化ケイ素粉末(昭和電
工社製、A−1)と、表5に示した焼結助剤粉末とを、
表5に示した割合(重量%)で窒化ケイ素粉末と調合し
た。
【0071】この調合した粉末を、ナイロン樹脂製ポッ
トと窒化ケイ素製ボールを使用する回転ボールミルに入
れ、エタノールを媒体とし湿式で混合した。なお、表5
において、窒化ケイ素欄には混合粉末全量に対する窒化
ケイ素粉末と焼結助剤粉末との合量の重量%を、焼結助
剤欄には窒化ケイ素粉末と焼結助剤粉末との合量に対す
る各焼結助剤粉末の重量%を示した。
【0072】湿式混合により得られた混合粉末のスラリ
ーを約60℃に加熱しつつ減圧下で乾燥してエタノール
を除き、乾燥物を解砕して帯電除去用セラミックス成形
用の粉体を得た。この粉体を金型に入れ、200kg/
cm2でプレス成形し、50mm×120mm×10m
mの寸法に成形し、さらに2000kg/cm2の圧力
で静水圧プレスして成形体とした。
【0073】この成形体を窒素中で1730℃〜177
0℃において約2時間焼結した後、一部の試料について
はさらに100kg/cm2の窒素ガス圧力下において
1750℃で2時間焼成し、より緻密な焼結体を得た。
表5および表6中の例72〜74が、さらに100kg
/cm2の窒素圧力下において1750℃で2時間焼結
されたものである。
【0074】それぞれの焼結体から30mm×30mm
×2mmの平板を切り出して表面抵抗率の測定を行うと
ともに、同じ焼結体から3mm×4mm×40mmの試
験片を各5個切り出して3点曲げ強度の測定を行った。
また、除電特性と放電特性の試験として、切り取った3
mm×4mm×40mmの試験片の一端をメタライジン
グし、メタライジングした一端を金属の棒の先端にロウ
付けした。金属の棒をアースに接続しておき、予め帯
電させた金属板と接続したリード線に試験片の先を接触
させて除電と放電の状況を観察し、帯電除去用部材とし
ての特性を評価した。
【0075】これらの評価結果を、焼結体の密度および
曲げ強度と併せて表6に示した。なお、表6の除電と放
電の評価結果は〇が良好、×が不良を示す。これらの表
中、No61、62、64、81および82の試験例は
比較例であり、他は本発明の実施例である。
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】表5、表6に示された結果から、本発明に
よる窒化ケイ素質セラミックスは、いずれも2×106
9×1010Ω/cm2の範囲内の表面抵抗率を示し、
この帯電除去用セラミックスにアースされた導電材を組
み合わされた帯電除去用部材は良好な除電特性を示すこ
とが分かる。また、この帯電除去用セラミックスの曲げ
強度は、いずれの焼結体においても60kg/mm2
上の高い値を示し、本発明による帯電除去用部材が優れ
た帯電除去特性とともに優れた信頼性を具備しているこ
とが分かる。
【0079】参考例91〜110 溶射してセラミックス層を形成するセラミックス粉末を
得るため、表7に示した調合組成からなる、99.5重
量%純度のアルミナ粉末とチタニア粉末(純度99.5
重量%)の混合物および同じアルミナ粉末と窒化チタン
粉末(純度99.5重量%)の混合物をそれぞれ150
0℃と1600℃の非酸化性雰囲気中で焼結して塊状の
焼結物を得た。この焼結物を粉砕後分級し、10〜45
μmの範囲の粒径を有する20種類の溶射用セラミック
ス粉末を得た。
【0080】他方で、20mm×50mm×10mmの
寸法のアルミニウム板を金属基材とし、その20mm×
50mmの表面をアルミナ砥粒でサンドブラスト処理し
て粗面とし、この粗面上に、Ni−Al(成分比8:
2)合金の粉末(粒径10〜45μm)をプラズマ溶射
(メテコ社製のプラズマ溶射装置を使用)し、厚さ50
μmのアンダーコート層を形成した。
【0081】プラズマ溶射にはArとH2の混合ガス
(容積比8:2)をプラズマガスとして使用した。すな
わち、毎分42.5リットルの流量で混合ガスを流し、
35kV、700Aの電力を印加し、10000〜20
000℃のプラズマガス流を形成し、Ni−Al合金の
粉末をこのプラズマガス流に乗せて瞬間的に加熱して半
溶融状態とし、金属基材上に溶射した。この際、プラズ
マ溶射ガンを左右に動かす操作を繰返して約50μmの
厚さの第1のアンダーコート層を形成した。
【0082】同様にしてこの第1のアンダーコート層の
上にTi粉末をプラズマ溶射し、厚さ50μmの第2の
アンダーコート層を形成した。別に、剥がしやすいよう
に溶射したアンダーコート層を剥がし取って熱膨張率を
測定したところ、第1のアンダーコート層と第2のアン
ダーコート層の熱膨張率は、それぞれ12.5×10-6
/℃および8.5×10-6/℃であった。
【0083】次に、前述の各種溶射用粉末を第2のアン
ダーコート層上にプラズマ溶射して厚200〜100
0μmのセラミックス層を形成し、20種類の帯電除去
用部材のサンプルを得た。これらのサンプルのセラミッ
クス層の金属基材への密着性はいずれも良好で剥離は認
められず、セラミックス層の気孔率はいずれも4%以下
と小さく、硬度が大きくて耐摩耗性にも優れたものであ
った。
【0084】これらの帯電除去用部材のセラミックス層
についてそれぞれ表面抵抗率を測定し、除電特性と放電
特性の試験として、各帯電除去用部材の金属基材を金属
製の棒の先端にロウ付けして接合した。また、金属基材
をアースに接続しておき、予め2000Vに帯電させ
た金属板に接続したリード線に帯電除去用部材のセラミ
ックス層と接触させて除電と放電の状況を観察し、帯電
除去用部材としての適否を評価した。これらの試験結果
を表7に併せて示した。
【0085】
【表7】
【0086】た、除電と放電の試験結果は○が良好、
△が若干問題あり(帯電の条件によっては不良となる可
能性がある)、×が不良であったことを意味する。な
お、アンダーコート層を施さない金属基材上にセラミッ
クス層をプラズマ溶射し、剥がし取ったセラミックス層
の熱膨張率を測定したところ、7〜9×10-6/℃の範
囲にあることが分かった。
【0087】以上の試験結果から、セラミックス層が2
×1069×1010Ω/cm2の範囲内の表面抵抗率を
有している、優れた帯電除去特性を示すことが分かっ
た。
【0088】また、別途直径200mm、厚さ10mm
のアルミニウム円盤を旋盤に固定して10rpmで回転
させておき、この円盤の円面をアルミナ砥粒によりサン
ドブラスト処理して粗面とし、この粗面上に上記試験例
の方法に準じてアンダーコート層を施し、さらに試験例
3と同じ組成のセラミック層を形成した帯電除去用部材
を作成した。
【0089】この帯電除去用部材のセラミックス層は試
験例3とほぼ同じ表面抵抗率を示し、金属基材をアース
に接続しておき半導体部材を取り扱う作業台として使
用するときに半導体部材から帯電を除去するのに適した
ものであることが分かった。
【0090】図1は本発明の帯電除去用部材の一例を示
す吸引チャックの断面図であり、図において1は吸引チ
ャック、2は金属基材、3はロウ付け層、4は帯電除去
用セラミックス、5は図示されていない減圧ポンプと接
続される吸引孔、6は被取り扱い物、7はアースであ
る。また、図2は本発明の帯電除去用部材の他の一例を
示す吸引チャックの側面図であり、図において8はプラ
ズマ溶射されたセラミックス層、9はアンダーコート
層、10は駆動アームである。
【0091】試験として、図1の金属基材2にステンレ
ス鋼(SUS304)を使用し、複数の吸引孔5を設け
た帯電除去用セラミックス4に試験例8のアルミナ質焼
結体(表面抵抗率1×109Ω/cm2、密度94%)を
使用し、帯電除去用セラミックスの一面をメタライジン
グし、この面に金属基材2をロウ付けした。
【0092】また、図2の金属基材2にステンレス板を
使用し、金属基材の被取り扱い物6を吸引する側の面に
前述の例と同じ2層構造のアンダーコート層9を施し、
15重量%の酸化チタンを含むアルミナ粉末をプラズマ
溶射して厚さが400μmのセラミックス層8を付け、
セラミックス層8の表面を研磨仕上げし、帯電除去用部
材の一種である吸引チャック1とした。この吸引チャッ
クのセラミックス層8の研磨面の表面抵抗率を測定した
ところ、3×108Ω/cm2であった。
【0093】アースに接続したこれら2種類の吸引チ
ャックにより、被取り扱い部材として2000Vに帯電
させた金属板6をそれぞれの吸引チャックで吸引したと
ころ、いずれの場合も2000Vから200Vまで、接
触後約1.4msecで除電され、帯電除去用部材とし
て適していることを確認した。
【0094】
【発明の効果】本発明の帯電除去用部材は、電子部品な
どを製造する工程で、電子部品などに帯電した電荷が急
速に放電して電子部品の回路が破壊されるのを防止する
のに適した帯電除去特性を有している。例えば、電子部
品を搬送する際に用いられるマニピュレータ、吸引チャ
ック、作業台などの電子部品などと直接接触する部分に
本発明の帯電除去用部材を使用することにより、電子部
品などに帯電している電荷を火花を生じることなく速や
かに除去して電子部品の回路の放電破壊を回避し、電子
部品関連製造装置の信頼性の向上と電子部品などの歩留
りの向上に寄与する。
【0095】また、本発明の帯電除去用部材を構成する
帯電除去用セラミックスは、高密度化することにより、
高強度で耐摩耗性に優れたものとできるので、電子部品
などと直接接触する部分に用いてもほとんど破損したり
摩耗することがなく、電子部品などを塵などによって汚
したり、無塵室中に塵を放出する心配もない。
【0096】また、本発明の他の帯電除去用部材では、
帯電除去用セラミックスが金属基材の上に溶射されたセ
ラミックス層とされているので、金属基材によって補強
されていて破損し難く、金属基材の加工が容易なので装
置に組み込むのに必要とされる各種形状の帯電除去用部
材の製造が容易であり、製造コストも安く、金属基材と
一体化されているので使用時にアースと接続すること
も容易である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の帯電除去用部材の一例である吸引チャ
ックの断面図。
【図2】本発明の帯電除去用部材の他の一例である吸引
チャックの断面図。
【符号の説明】
1:吸引チャック(帯電除去用部材) 2:金属基材 3:ロウ付け層 4:帯電除去用セラミックス 5:吸引孔 6:被取り扱い物 7:アース 8:セラミックス層 9:アンダーコート層 10:駆動アーム
フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−21584(JP,A) 特開 平4−230904(JP,A) 特開 平1−209739(JP,A) 特開 平4−59652(JP,A) 特開 平6−151084(JP,A) 特開 平5−275513(JP,A) 特開 昭59−78973(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01R 4/64 C04B 35/10 - 35/584 H01B 1/08 H01L 21/00 - 21/68

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】表面抵抗率が2×106〜1010Ω/cm2
    の範囲にある帯電除去用セラミックスとアースに接続
    された導電材とからなり、帯電除去用セラミックスと導
    電材が面で接触または接合されて電気的に接続され、か
    つ帯電除去用セラミックスがアルミナを主成分とするマ
    トリックス中に炭化チタン、窒化ジルコニウム、炭化ジ
    ルコニウム、窒化ハフニウム、炭化ハフニウム、窒化ニ
    オブ、炭化ニオブ、窒化タンタルおよび炭化タンタルか
    らなる群から選ばれる1種以上の導電性化合物を含み、
    その相対密度が90%以上の焼結体であることを特徴と
    する帯電除去用部材。
  2. 【請求項2】前記焼結体が、炭化チタン、窒化ジルコニ
    ウム、炭化ジルコニウム、窒化ハフニウム、炭化ハフニ
    ウム、窒化ニオブ、炭化ニオブ、窒化タンタルおよび炭
    化タンタルからなる群から選ばれる1種以上の導電性化
    合物の平均粒径5μm以下の粉末を合わせて4〜23体
    積%と、残部の平均粒径5μm以下のアルミナを主成分
    とする粉末とからなる組成物を焼結して得られたもので
    ある請求項1に記載の帯電除去用部材。
  3. 【請求項3】表面抵抗率が2×106〜9×1010Ω/
    cm2の範囲にある帯電除去用セラミックスとアース
    に接続された導電材とからなり、帯電除去用セラミック
    スと導電材が面で接触または接合されて電気的に接続さ
    れ、かつ帯電除去用セラミックスが、窒化ケイ素と焼結
    助剤からなるマトリックス中に窒化チタン、窒化ジルコ
    ニウム、窒化ハフニウム、窒化ニオブ、窒化タンタルか
    らなる群から選ばれる1種以上と炭化ケイ素を含み、そ
    の相対密度が90%以上の焼結体であることを特徴とす
    る帯電除去用部材。
  4. 【請求項4】前記焼結体が、平均粒径5μm以下の炭化
    ケイ素粉末0.1〜17重量%と、窒化チタン、窒化ジ
    ルコニウム、窒化ハフニウム、窒化ニオブおよび窒化タ
    ンタルからなる群から選ばれる1種以上の平均粒径5μ
    m以下の粉末22〜55重量%と、残部の焼結助剤を含
    む平均粒径5μm以下の窒化ケイ素粉末からなる組成物
    を焼結して得られたものである請求項3に記載の帯電除
    去用部材。
  5. 【請求項5】接触または接合されている面の面積が1m
    以上である請求項1、2、3または4に記載の帯電
    除去用部材。
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