JP3300877B2 - 電子放出素子、電子源及び画像形成装置の製造方法 - Google Patents

電子放出素子、電子源及び画像形成装置の製造方法

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JP3300877B2 JP16669996A JP16669996A JP3300877B2 JP 3300877 B2 JP3300877 B2 JP 3300877B2 JP 16669996 A JP16669996 A JP 16669996A JP 16669996 A JP16669996 A JP 16669996A JP 3300877 B2 JP3300877 B2 JP 3300877B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子放出素子、該
電子放出素子を多数個配置してなる電子源、及び該電子
源を用いて構成した表示装置や露光装置等の画像形成
置の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、電子放出素子としては大別し
て熱電子放出素子と冷陰極電子放出素子の2種類が知ら
れている。冷陰極電子放出素子には電界放出型(以下、
「FE型」と称す。)、金属/絶縁層/金属型(以下、
「MIM型」と称す。)や表面伝導型電子放出素子等が
有る。
【0003】FE型の例としては、W.P.Dyke
and W.W.Dolan,“Field Emis
sion”,Advance in Electron
Physics,8,89(1956)あるいはC.
A.Spindt,“Physical Proper
ties of thin−filmfield em
ission cathodes withmolyb
denum cones”,J.Appl.Phy
s.,47,5248(1976)等に開示されたもの
が知られている。
【0004】MIM型の例としては、C.A.Mea
d,“Operation ofTunnel−Emi
ssion Devices”,J.Appl.Phy
s.,32,646(1961)等に開示されたものが
知られている。
【0005】表面伝導型電子放出素子の例としては、
M.I.Elinson,RadioEng.Elec
tron Phys.,10,1290(1965)等
に開示されたものがある。
【0006】表面伝導型電子放出素子は、絶縁性基板上
に形成された小面積の薄膜に、膜面に平行に電流を流す
ことにより、電子放出が生ずる現象を利用するものであ
る。この表面伝導型電子放出素子としては、前記エリン
ソン等によるSnO薄膜を用いたもの、Au薄膜によ
るもの[G.Dittmer:“ThinSolid
Films”,9,317(1972)]、In
/SnO薄膜によるもの[M.Hartwell a
nd C.G.Fonstad:“IEEE Tran
s.ED Conf.”,519(1975)]、カー
ボン薄膜によるもの[荒木久 他:真空、第26巻、第
1号、22頁(1983)]等が報告されている。
【0007】これらの表面伝導型電子放出素子の典型的
な例として、前述のM.ハートウェルの素子構成を図1
9に模式的に示す。同図において1は基板である。4は
導電性膜で、H型形状のパターンに形成された金属酸化
物薄膜等からなり、後述の通電フォーミングと呼ばれる
通電処理により電子放出部5が形成される。尚、図中の
間隔L1は、0.5〜1mm、W1は、0.1mmで設
定されている。
【0008】これらの表面伝導型電子放出素子において
は、電子放出を行う前に導電性膜4を予め通電フォーミ
ングと呼ばれる通電処理によって電子放出部5を形成す
るのが一般的である。即ち、通電フォーミングとは、前
記導電性膜4の両端に電圧を印加通電し、導電性膜4を
局所的に破壊、変形もしくは変質させて構造を変化さ
せ、電気的に高抵抗な状態の電子放出部5を形成する処
理である。尚、電子放出部5では導電性膜4の一部に亀
裂が発生しており、その亀裂付近から電子放出が行われ
る。
【0009】上述の表面伝導型電子放出素子は、構造が
単純であることから、大面積に亙って多数素子を配列形
成できる利点がある。そこで、この特徴を活かすための
種々の応用が研究されている。例えば、荷電ビーム源、
表示装置等の画像形成装置への利用が挙げられる。
【0010】従来、多数の表面伝導型電子放出素子を配
列形成した例としては、並列に表面伝導型電子放出素子
を配列し、個々の表面伝導型電子放出素子の両端(両素
子電極)を配線(共通配線とも呼ぶ)にて夫々結線した
行を多数行配列(梯子型配置とも呼ぶ)した電子源が挙
げられる(例えば、特開昭64−31332号公報、特
開平1−283749号公報、同2−257552号公
報)。
【0011】また、特に表示装置においては、液晶を用
いた表示装置と同様の平板型表示装置とすることが可能
で、しかもバックライトが不要な自発光型の表示装置と
して、表面伝導型電子放出素子を多数配置した電子源
と、この電子源からの電子線の照射により可視光を発光
する蛍光体とを組み合わせた表示装置が提案されている
(アメリカ特許第5066883号明細書)。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】前記電子源、画像形成
装置等に用いられる電子放出素子については、明るく均
一な表示画像を安定して提供できるよう、電子放出効率
の向上及び均一且つ安定な電子放出特性が要望されてい
る。
【0013】上記電子放出効率とは、例えば前述の表面
伝導型電子放出素子であれば、導電性膜の両端に電圧を
印加した際に、これに流れる電流(以下、「素子電流」
という。)と真空中に放出される電流(以下、「放出電
流」という。)との比で評価されるものであり、素子電
流が小さく、放出電流が大きい電子放出素子が望まれて
いる。
【0014】上記表面伝導型電子放出素子の放出電流量
を増大させ電子放出効率を向上させる方法の一つに、
「活性化」と称される処理を行う方法がある。この活性
化処理とは、有機物質を含む雰囲気中で、素子にパルス
電圧を印加し、前述の通電フォーミングによって形成さ
れた亀裂領域を含む電子放出部の近傍に、炭素又は炭素
化合物を堆積させる処理である。
【0015】また、活性化処理を行った場合には、安定
な電子放出特性を得るため、「安定化」と称させる処理
が行われるのが一般的である。この安定化処理とは、活
性化工程における有機物質を排気し、活性化工程以後に
炭素又は炭素化合物が素子上に堆積するのを抑制する処
理である。
【0016】しかしながら、上記活性化処理によって素
子の電子放出特性は改善されるものの、より性能の良い
安定した素子特性を有する電子放出素子を実現しようと
した場合には、素子毎に特性がばらつき、均一性が不十
分な場合があった。
【0017】また、上記電子放出素子を多数配置した電
子源を用いて画像形成装置を構成した場合には、輝度の
ばらつきが生じ、十分な表示品位が得られない場合があ
った。
【0018】本発明の目的は、上記問題点を解消し、良
好で安定した電子放出特性有し、且つ素子特性の均一性
の高い電子放出素子を実現することにある。また本発明
の別の目的は、かかる電子放出素子を複数用いて、高輝
度で輝度のばらつきの少なく、且つ安定した表示特性を
有する画像形成装置を実現することにある。
【0019】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成する本
発明の構成は、以下の通りである。
【0020】即ち、本発明の第一は、電極間に、電子放
出部を有する導電性膜を備える電子放出素子の製造方法
において、電子放出部の近傍に炭素又は/及び炭素化合
物からなる物質を堆積させる活性化工程を有し、該活性
化工程は、炭素又は/及び炭素化合物を形成するための
主成分となる第1の成分と、炭素又は/及び炭素化合物
の形成に関与しない第2の成分(組成式XY(但し、
X、Yは各々、水素またはハロゲン)で表されるガスを
除く。)を含む混合ガスを真空雰囲気に導入した後、導
電性膜に電圧を印加する工程であることを特徴とする電
子放出素子の製造方法にある。
【0021】上記本発明第一の製造方法は、更にその特
徴として、「前記第1の成分が有機化合物であり、前記
第2の成分が不活性ガスである」こと、「前記混合ガス
の全圧が、1Pa以下である」こと、「前記混合ガス中
の第1の成分の分圧が、10-2Pa以下である」こと、
「前記電子放出素子が、表面伝導型電子放出素子であ
る」こと、をも含むものである。
【0022】また、本発明の第二は、電極間に、電子放
出部を有する導電性膜を備える電子放出素子の製造方法
において、電子放出部の近傍に炭素又は/及び炭素化合
物からなる物質を堆積させる活性化工程を有し、該活性
化工程は、有機物質ガスと、キャリアガス(組成式XY
(但し、X、Yは各々、水素またはハロゲン)で表され
るガスを除く。)を含む混合ガスを真空雰囲気に導入し
た後、導電性膜に電圧を印加する工程であることを特徴
とする電子放出素子の製造方法にある。上記本発明第二
の製造方法は、更にその特徴として、「前記キャリアガ
スは、不活性ガスまたは窒素ガスである」こと、「前記
不活性ガスは、アルゴンまたはヘリウムである」こと、
「前記混合ガスの全圧が、1Pa以下である」こと、
「前記混合ガス中の有機物質ガスの分圧が、10 -2 Pa
以下である」こと、「前記電子放出素子が、表面伝導型
電子放出素子である」こと、をも含むものである。
【0023】また、本発明の第三は、基板上に、複数の
電子放出素子が配列された電子源の製造方法において、
前記電子放出素子が、上記本発明第一または第二の方法
にて製造されることを特徴とする電子源の製造方法にあ
る。
【0024】
【0025】上記本発明第三の製造方法は、更にその特
徴として、「前記複数の電子放出素子が、マトリクス状
に配線されている」こと、「前記複数の電子放出素子
が、梯子状に配線されている」こと、をも含むものであ
る。
【0026】また、本発明の第四は、基板上に、複数の
電子放出素子が配列された電子源と、該電子源から放出
される電子線の照射により画像を形成する画像形成部材
とを有する画像形成装置の製造方法において、前記電子
源が、上記本発明第三の方法にて製造されることを特徴
とする画像形成装置の製造方法にある。
【0027】
【0028】電子放出素子における電子放出特性の向上
に関しては、先述したようなフォーミング、活性化、安
定化の各処理工程を最適化することが重要であり、特に
活性化の処理において形成される炭素又は炭素化合物か
らなる堆積物の形態及び質は、電子放出量及び効率、さ
らには長期の安定性に大きな影響を与えることが解って
きている。
【0029】活性化処理は、上記炭素又は炭素化合物を
形成するために有機物質の存在する雰囲気下で行われる
が、本発明者の研究によれば、上記堆積物の形態及び質
に関しては、活性化における雰囲気が重要なパラメータ
ーであり、特に上記有機物質のガス圧を最適な範囲に制
御することが重要であることが判明した。
【0030】上記有機物質のガス圧の最適な範囲は、使
用する有機物質によって若干異なるが、一般に10-2
a〜10-6Pa程度である。しかしながら、通常、10
-4Pa以下に有機物質の分圧を制御することは難しく、
特に活性化処理に先立ち予め減圧された真空雰囲気の真
空度に近くなる程、その制御は困難となる。かかる制御
の困難性は、有機物質の分圧の再現性を低下させ、その
結果として素子特性の均一性の低下を招いていた。
【0031】そこで本発明においては、活性化処理にお
ける有機物質雰囲気を、炭素又は/及び炭素化合物を形
成するための主成分となる第1の成分と、炭素又は/及
び炭素化合物の形成に関与しない第2の成分(組成式X
Y(但し、X、Yは各々、水素またはハロゲン)で表さ
れるガスを除く。)を含む混合ガス、または有機物質ガ
スと、キャリアガス(組成式XY(但し、X、Yは各
々、水素またはハロゲン)で表されるガスを除く。)を
含む混合ガスを、予め減圧された真空雰囲気に導入して
創出することにより、有機物質のガス圧の最適な範囲が
例えば10-4Pa以下の場合であっても、混合ガスの全
圧を制御可能なオーダーに設定とすることにより、有機
物質の分圧の制御性を高め、均一な素子特性を実現した
ものである。
【0032】
【発明の実施の形態】次に、本発明の好ましい実施態様
を示す。
【0033】本発明を適用し得る電子放出素子は、先述
したような冷陰極型の電子放出素子に分類されるもの
で、電子放出機構の点から表面伝導型の電子放出素子と
云える。
【0034】本発明に係る表面伝導型電子放出素子の基
本的構成には大別して、平面型と垂直型がある。まず、
平面型の表面伝導型電子放出素子について説明する。
【0035】図1は、本発明に係る平面型の表面伝導型
電子放出素子の一構成例を示す模式図であり、図1
(a)は平面図、図1(b)は縦断面図である。図1に
おいて、1は基板、2と3は電極(以下、「素子電極」
という。)、4は導電性膜、5は電子放出部である。
【0036】基板1としては、石英ガラス、Na等の不
純物含有量を減少させたガラス、青板ガラス、青板ガラ
スにスパッタ法等によりSiO2 を積層した積層体、ア
ルミナ等のセラミックス及びSi基板等を用いることが
できる。
【0037】対向する素子電極2,3の材料としては、
一般的な導体材料を用いることができ、例えばNi、C
r、Au、Mo、W、Pt、Ti、Al、Cu、Pd等
の金属或は合金及びPd、Ag、Au、RuO2 、Pd
−Ag等の金属或は金属酸化物とガラス等から構成され
る印刷導体、In23 −SnO2 等の透明導電体及び
ポリシリコン等の半導体導体材料等から適宜選択するこ
とができる。
【0038】素子電極間隔L、素子電極幅W、導電性膜
4の形状等は、応用される形態等を考慮して、設計され
る。素子電極間隔Lは、好ましくは、数百nmから数百
μmの範囲とすることができ、より好ましくは、素子電
極間に印加する電圧等を考慮して数μmから数十μmの
範囲とすることができる。
【0039】素子電極幅Wは、電極の抵抗値、電子放出
特性を考慮して、数μmから数百μmの範囲とすること
ができる。素子電極2,3の膜厚dは、数十nmから数
μmの範囲とすることができる。
【0040】尚、図1に示した構成だけでなく、基板1
上に、導電性膜4、対向する素子電極2,3の順に積層
した構成とすることもできる。
【0041】導電性膜4を構成する材料としては、例え
ばPd,Pt,Ru,Ag,Au,Ti,In,Cu,
Cr,Fe,Zn,Sn,Ta,W,Pb等の金属、P
dO,SnO2 ,In23 ,PbO,Sb23 等の
酸化物、HfB2 ,ZrB2,LaB6 ,CeB6 ,Y
4 ,GdB4 等の硼化物、TiC,ZrC,HfC,
TaC,SiC,WCなどの炭化物、TiN,ZrN,
HfN等の窒化物、Si,Ge等の半導体、カーボン等
が挙げられる。
【0042】導電性膜4には、良好な電子放出特性を得
るために、微粒子で構成された微粒子膜を用いるのが好
ましい。その膜厚は、素子電極2,3へのステップカバ
レージ、素子電極2,3間の抵抗値及び後述するフォー
ミング条件等を考慮して適宜設定されるが、通常は、数
Å〜数百nmの範囲とするのが好ましく、より好ましく
は1nm〜50nmの範囲とするのが良い。その抵抗値
は、Rsが102 から107 Ω/□の値である。なおR
sは、幅がwで長さがlの薄膜の長さ方向に測った抵抗
Rを、R=Rs(l/w)とおいたときに現れる量であ
る。
【0043】ここで述べる微粒子膜とは、複数の微粒子
が集合した膜であり、その微細構造は、微粒子が個々に
分散配置した状態のみならず、微粒子が互いに隣接、あ
るいは重なり合った状態(いくつかの微粒子が集合し、
全体として島状構造を形成している場合も含む)をとっ
ている。微粒子の粒径は、数Åから数百nmの範囲、好
ましくは、1nmから20nmの範囲である。
【0044】なお、本明細書では頻繁に「微粒子」とい
う言葉を用いるので、その意味について説明する。
【0045】小さな粒子を「微粒子」と呼び、これより
も小さなものを「超微粒子」と呼ぶ。「超微粒子」より
もさらに小さく、原子の数が数百個程度以下のものを
「クラスター」と呼ぶことは広く行われている。
【0046】しかしながら、それぞれの境は厳密なもの
ではなく、どの様な性質に注目して分類するかにより変
化する。また「微粒子」と「超微粒子」を一括して「微
粒子」と呼ぶ場合もあり、本明細書中での記述はこれに
沿ったものである。
【0047】例えば、「実験物理学講座14 表面・微
粒子」(木下是雄 編、共立出版1986年9月1日発
行)では、「本稿で微粒子と言うときにはその直径がだ
いたい2〜3μm程度から10nm程度までとし、特に
超微粒子というときは粒径が10nm程度から2〜3n
m程度までを意味することにする。両者を一括して単に
微粒子と書くこともあってけっして厳密なものではな
く、だいたいの目安である。粒子を構成する原子の数が
2個から数十〜数百個程度の場合はクラスターと呼
ぶ。」(195ページ 22〜26行目)と記述されて
いる。
【0048】付言すると、新技術開発事業団の“林・超
微粒子プロジェクト”での「超微粒子」の定義は、粒径
の下限はさらに小さく、次のようなものであった。
【0049】「創造科学技術推進制度の“超微粒子プロ
ジェクト”(1981〜1986)では、粒子の大きさ
(径)がおよそ1〜100nmの範囲のものを“超微粒
子”(ultra fine particle)と呼
ぶことにした。すると1個の超微粒子はおよそ100〜
108 個くらいの原子の集合体という事になる。原子の
尺度でみれば超微粒子は大〜巨大粒子である。」(「超
微粒子−創造科学技術」林主税、上田良二、田崎明
編;三田出版 1988年 2ページ1〜4行目)/
「超微粒子よりさらに小さいもの、すなわち原子が数個
〜数百個で構成される1個の粒子は、ふつうクラスター
と呼ばれる」(同書2ページ12〜13行目)。
【0050】上記のような一般的な呼び方をふまえて、
本明細書において「微粒子」とは多数の原子・分子の集
合体で、粒径の下限は数Å〜1nm程度、上限は数μm
程度のものを指すこととする。
【0051】電子放出部5は、導電性膜4の一部に形成
された高抵抗の亀裂により構成され、導電性膜4の膜
厚、膜質及び後述する通電フォーミングの手法等に依存
したものとなる。電子放出部5の内部には、数Åから数
十nmの範囲の粒径の導電性微粒子が存在する場合もあ
る。この導電性微粒子は、導電性膜4を構成する材料の
元素の一部、あるいは全ての元素を含有するものとな
る。電子放出部5及びその近傍の導電性膜4には、後述
の活性化工程により形成される炭素又は/及び炭素化合
物を有する。
【0052】次に、垂直型の表面伝導型電子放出素子に
ついて説明する。
【0053】図2は、本発明に係る垂直型の表面伝導型
電子放出素子の一構成例を示す模式図であり、図1に示
した部位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号
を付している。21は段差形成部である。基板1、素子
電極2及び3、導電性膜4、電子放出部5は、前述した
平面型の表面伝導型電子放出素子の場合と同様の材料で
構成することができる。段差形成部21は、真空蒸着
法、印刷法、スパッタ法等で形成されたSiO2 等の絶
縁性材料で構成することができる。段差形成部21の膜
厚は、先に述べた平面型の表面伝導型電子放出素子の素
子電極間隔Lに対応し、数百nmから数十μmの範囲と
することができる。この膜厚は、段差形成部の製法、及
び、素子電極間に印加する電圧を考慮して設定される
が、数十nmから数μmの範囲が好ましい。
【0054】導電性膜4は、素子電極2及び3と段差形
成部21作製後に、該素子電極2,3の上に積層され
る。電子放出部5は、図2においては、段差形成部21
に形成されているが、作成条件、フォーミング条件等に
依存し、形状、位置ともこれに限られるものではない。
【0055】本発明の表面伝導型電子放出素子の製造方
法としては様々な方法があるが、その一例を図3に基づ
いて説明する。尚、図3においても図1に示した部位と
同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付してい
る。
【0056】1)基板1を洗剤、純水及び有機溶剤等を
用いて十分に洗浄し、真空蒸着法、スパッタ法等により
素子電極材料を堆積後、例えばフォトリソグラフィー技
術を用いて基板1上に素子電極2,3を形成する(図3
(a))。
【0057】2)素子電極2,3を設けた基板1上に、
有機金属溶液を塗布して、有機金属薄膜を形成する。有
機金属溶液には、前述の導電性膜4の材料の金属を主元
素とする有機金属化合物の溶液を用いることができる。
有機金属薄膜を加熱焼成処理し、リフトオフ、エッチン
グ等によりパターニングし、導電性膜4を形成する(図
3(b))。ここでは、有機金属溶液の塗布法を挙げて
説明したが、導電性膜4の形成法はこれに限られるもの
ではなく、真空蒸着法、スパッタ法、化学的気相堆積
法、分散塗布法、ディッピング法、スピンナー法等を用
いることもできる。
【0058】3)続いて、フォーミング工程を施す。こ
のフォーミング工程の方法の一例として通電処理による
方法を説明する。素子電極2,3間に、不図示の電源よ
り通電すると、導電性膜4の部位に、構造の変化した亀
裂領域が形成される。この亀裂領域が電子放出部5を構
成する(図3(c))。通電フォーミングの電圧波形の
例を図4に示す。
【0059】電圧波形は、特にパルス波形が好ましい。
これにはパルス波高値を定電圧としたパルスを連続的に
印加する図4(a)に示した手法と、パルス波高値を増
加させながらパルスを印加する図4(b)に示した手法
がある。
【0060】まず、パルス波高値を定電圧とした場合に
ついて図4(a)で説明する。図4(a)におけるT1
及びT2は電圧波形のパルス幅とパルス間隔である。通
常、T1は1μ秒〜10m秒、T2は10μ秒〜100
m秒の範囲で設定される。三角波の波高値(通電フォー
ミング時のピーク電圧)は、表面伝導型電子放出素子の
形態に応じて適宜選択される。このような条件のもと、
例えば、数秒から数十分間電圧を印加する。パルス波形
は、三角波に限定されるものではなく、矩形波等の所望
の波形を採用することができる。
【0061】次に、パルス波高値を増加させながら電圧
パルスを印加する場合について図4(b)で説明する。
図4(b)におけるT1及びT2は、図4(a)に示し
たのと同様とすることができる。三角波の波高値(通電
フォーミング時のピーク電圧)は、例えば0.1Vステ
ップ程度づつ、増加させることができる。
【0062】通電フォーミング処理の終了は、パルス間
隔T2中に、導電性膜4を局所的に破壊,変形しない程
度の電圧を印加し、電流を測定して検知することができ
る。例えば0.1V程度の電圧印加により流れる電流を
測定し、抵抗値を求めて、1MΩ以上の抵抗を示した時
に通電フォーミングを終了させることができる。
【0063】4)フォーミングを終えた素子には、活性
化工程と呼ばれる処理を施す。この工程により、素子電
流If及び放出電流Ieを著しく変化させることができ
る。
【0064】活性化工程は、有機物質のガスを含有する
雰囲気下で、例えば通電フォーミングと同様、素子電極
2,3間にパルスの印加を繰り返すことで行うことがで
きる。従来の方法では、この雰囲気は、例えば油拡散ポ
ンプやロータリーポンプなどを用いて真空容器内を排気
した場合に雰囲気内に残留する有機ガスを利用して形成
することもできるが、かかる残留ガスではその分圧まで
細かく制御できない。このため、本発明においては、イ
オンポンプ等のオイルを使用しない真空ポンプで所定の
真空度まで排気した後、所望の有機物質を導入する。こ
の時、かかる有機物質は、他のキャリアガスと混合して
導入される。
【0065】このときの好ましい有機物質のガス圧は、
前述の素子の形態、真空容器の形状や、有機物質の種類
などにより若干異なる。通常、有機物質の好ましいガス
分圧は、10-2〜10-6Paの範囲であり、本発明の製
造方法による優位性は、特に有機物質のガス分圧を10
-4Pa以下とする場合に発揮される。この点に関して
は、後述の実施例において詳しく説明する。また、有機
物質とキャリアガスを混合したガスの全圧は、1Pa以
下であることが好ましく、特に好ましくは10-2〜10
-4Paの範囲である。混合ガスの全圧が1Paを超える
と、活性化時に放出される電子によりイオン化されたガ
ス分子のため素子電極等を含む電子放出部周辺がダメー
ジを受ける場合がある。一方、混合ガスの全圧を10-4
Paよりも低くすると、混合ガス圧を制御することが難
しくなり、結果として有機物質の分圧を制御できなくな
る。以上のことを考慮して、有機物質とキャリアガスの
混合比、及び混合ガス圧を適宜設定する。
【0066】適当な有機物質としては、アルカン、アル
ケン、アルキンの脂肪族炭化水素類、芳香族炭化水素
類、アルコール類、アルデヒド類、ケトン類、アミン
類、フェノール、カルボン、スルホン酸等の有機酸類等
を挙げることが出来、具体的には、メタン、エタン、プ
ロパンなどCn2n+2で表される飽和炭化水素、エチレ
ン、プロピレンなどCn2n等の組成式で表される不飽
和炭化水素、ベンゼン、トルエン、メタノール、エタノ
ール、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アセト
ン、メチルエチルケトン、メチルアミン、エチルアミ
ン、フェノール、蟻酸、酢酸、プロピオン酸等が使用で
きる。
【0067】また、適当なキャリアガス(組成式XY
(但し、X、Yは各々、水素またはハロゲン)で表され
るガスを除く。)としては、Ar,He等の不活性ガ
ス、又は有機物質との反応性のないN2ガス等を用いる
ことができる。
【0068】上記の活性化処理により、雰囲気中に存在
する有機物質から、炭素又は/及び炭素化合物が素子上
に堆積し、素子電流If,放出電流Ieが、著しく変化
するようになる。
【0069】炭素・炭素化合物とは、例えばグラファイ
ト(いわゆるHOPG,PG,GCを包含するもので、
HOPGはほぼ完全なグラファイト結晶構造、PGは結
晶粒が20nm程度で結晶構造がやや乱れたもの、GC
は結晶粒が2nm程度になり結晶構造の乱れがさらに大
きくなったものを指す。)、非晶質カーボン(アモルフ
ァスカーボン及び、アモルファスカーボンと前記グラフ
ァイトの微結晶の混合物を指す。)であり、その膜厚
は、50nm以下の範囲とするのが好ましく、30nm
以下の範囲とすることがより好ましい。
【0070】活性化工程の終了判定は、素子電流Ifと
放出電流Ieを測定しながら、適宜行うことができる。
尚、活性化工程において素子電極2,3間に印加される
パルス電圧のパルス幅,パルス間隔,パルス波高値など
は適宜設定される。
【0071】5)このような工程を経て得られた電子放
出素子については、安定化工程を行うことが好ましい。
この工程は、真空容器内の有機物質を排気する工程であ
る。真空容器を排気する真空排気装置は、装置から発生
するオイルが素子の特性に影響を与えないように、オイ
ルを使用しないものを用いるのが好ましい。具体的に
は、ソープションポンプ、イオンポンプ等の真空排気装
置を挙げることが出来る。
【0072】真空容器内の有機成分の分圧は、上記炭素
又は炭素化合物がほぼ新たに堆積しない分圧で10-6
a以下が好ましく、さらには10-8Pa以下が特に好ま
しい。さらに真空容器内を排気するときには、真空容器
全体を加熱して、真空容器内壁や、電子放出素子に吸着
した有機物質分子を排気しやすくするのが好ましい。こ
のときの加熱条件は、80〜200℃、好ましくは15
0℃以上で、できるだけ長時間処理するのが望ましい
が、特にこの条件に限るものではなく、真空容器の大き
さや形状、電子放出素子の構成などの諸条件により適宜
選ばれる条件により行う。真空容器内の圧力は極力低く
することが必要で、10-5Pa以下が好ましく、さらに
は10-6Pa以下が特に好ましい。
【0073】安定化工程を行った後の、駆動時の雰囲気
は、上記安定化処理終了時の雰囲気を維持するのが好ま
しいが、これに限るものではなく、有機物質が十分除去
されていれば、圧力自体は多少上昇しても十分安定な特
性を維持することが出来る。このような真空雰囲気を採
用することにより、新たな炭素又は炭素化合物の堆積を
抑制でき、結果として素子電流If,放出電流Ieが、
安定する。
【0074】上述した工程を経て得られた本発明の電子
放出素子の基本特性について、図5,図6を参照しなが
ら説明する。
【0075】図5は、真空処理装置の一例を示す模式図
であり、この真空処理装置は測定評価装置としての機能
をも兼ね備えている。図5においても、図1に示した部
位と同じ部位には図1に付した符号と同一の符号を付し
ている。
【0076】図5において、55は真空容器であり、こ
の中に電子放出素子が配される。また、51は電子放出
素子に素子電圧Vfを印加するための電源、50は素子
電極2,3間の導電性膜4を流れる素子電流Ifを測定
するための電流計、54は素子の電子放出部5より放出
される放出電流Ieを捕捉するためのアノード電極、5
3はアノード電極54に電圧を印加するための高圧電
源、52は電子放出部5より放出される放出電流Ieを
測定するための電流計である。一例として、アノード電
極54の電圧を1kV〜10kVの範囲とし、アノード
電極54と電子放出素子との距離Hを2mm〜8mmの
範囲として測定を行うことができる。
【0077】真空容器55内には、更に不図示の真空計
等の真空雰囲気下での測定に必要な機器が設けられてい
て、所望の真空雰囲気下での測定評価を行えるようにな
っている。
【0078】また、56は排気ポンプである。排気ポン
プ56は、ターボポンプ,ロータリーポンプからなる通
常の高真空装置系と、更に、イオンポンプ等からなる超
高真空装置系とにより構成されている。
【0079】さらに、真空容器55には、容器内の雰囲
気を制御できるようなガス導入部58が設けられてい
る。ガス導入部58は、外部から所望の物質を真空容器
内に導入する構成であり、例えば、排気ポンプ56にバ
ルブ57を介して接続される。このガス導入部58は、
流量計、ニードルバルブや他のバルブ(不図示)等を介
して配管されている。
【0080】ここに示した電子放出素子基板を配した真
空処理装置の全体は、不図示のヒーターにより加熱でき
る。従って、この真空処理装置を用いると、前述の通電
フォーミング工程以降を行うことができる。
【0081】図6は、図5に示した真空処理装置を用い
て測定された放出電流Ie及び素子電流Ifと、素子電
圧Vfとの関係を模式的に示した図である。図6におい
ては、放出電流Ieが素子電流Ifに比べて著しく小さ
いので、任意単位で示している。尚、縦・横軸ともリニ
アスケールである。
【0082】図6からも明らかなように、本発明を適用
可能な表面伝導型電子放出素子は、放出電流Ieに関し
て次の3つの特徴的性質を有する。
【0083】即ち、第1に、本素子はある電圧(閾値電
圧と呼ぶ;図6中のVth)以上の素子電圧を印加する
と急激に放出電流Ieが増加し、一方閾値電圧Vth以
下では放出電流Ieが殆ど検出されない。つまり、放出
電流Ieに対する明確な閾値電圧Vthを持った非線形
素子である。
【0084】第2に、放出電流Ieが素子電圧Vfに単
調増加依存するため、放出電流Ieは素子電圧Vfで制
御できる。
【0085】第3に、アノード電極54(図5参照)に
捕捉される放出電荷は、素子電圧Vfを印加する時間に
依存する。つまり、アノード電極54に捕捉される電荷
量は、素子電圧Vfを印加する時間により制御できる。
【0086】以上の説明より理解されるように、本発明
による表面伝導型電子放出素子は、入力信号に応じて、
電子放出特性を容易に制御できることになる。この性質
を利用すると複数の電子放出素子を配して構成した電子
源、画像形成装置等、多方面への応用が可能となる。
【0087】図6においては、素子電流Ifが素子電圧
Vfに対して単調増加する(MI特性)例を示したが、
素子電流Ifが素子電圧Vfに対して電圧制御型負性抵
抗特性(VCNR特性)を示す場合もある(不図示)。
これらの特性は、前述の工程を制御することで制御でき
る。
【0088】本発明を適用可能な電子放出素子の応用例
について以下に述べる。本発明を適用可能な表面伝導型
電子放出素子を複数個基板上に配列し、例えば電子源あ
るいは、画像形成装置が構成できる。
【0089】電子放出素子の配列については、種々のも
のが採用できる。一例として、並列に配置した多数の電
子放出素子の個々を両端で接続し、電子放出素子の行を
多数個配し(行方向と呼ぶ)、この配線と直交する方向
(列方向と呼ぶ)で、該電子放出素子の上方に配した制
御電極(グリッドとも呼ぶ)により、電子放出素子から
の電子を制御駆動する梯子状配置のものがある。これと
は別に、電子放出素子をX方向及びY方向に行列状に複
数個配し、同じ行に配された複数の電子放出素子の電極
の一方を、X方向の配線に共通に接続し、同じ列に配さ
れた複数の電子放出素子の電極の他方を、Y方向の配線
に共通に接続するものが挙げられる。このようなものは
所謂単純マトリクス配置である。まず単純マトリクス配
置について以下に詳述する。
【0090】本発明を適用可能な表面伝導型電子放出素
子については、前述した通り3つの特性がある。即ち、
表面伝導型電子放出素子からの放出電子は、閾値電圧以
上では、対向する素子電極間に印加するパルス状電圧の
波高値と幅で制御できる。一方、閾値電圧以下では、殆
ど放出されない。この特性によれば、多数の電子放出素
子を配置した場合においても、個々の素子にパルス状電
圧を適宜印加すれば、入力信号に応じて、表面伝導型電
子放出素子を選択して電子放出量を制御できる。
【0091】以下この原理に基づき、本発明を適用可能
な電子放出素子を複数配して得られる電子源基板につい
て、図7を用いて説明する。図7において、71は電子
源基板、72はX方向配線、73はY方向配線である。
74は表面伝導型電子放出素子、75は結線である。
【0092】m本のX方向配線72は、Dx1,Dx
2,……,Dxmからなり、真空蒸着法、印刷法、スパ
ッタ法等を用いて形成された導電性金属等で構成するこ
とができる。配線の材料、膜厚、幅は適宜設計される。
Y方向配線73は、Dy1,Dy2,……,Dynのn
本の配線よりなり、X方向配線72と同様に形成され
る。これらm本のX方向配線72とn本のY方向配線7
3との間には、不図示の層間絶縁層が設けられており、
両者を電気的に分離している(m,nは、共に正の整
数)。
【0093】不図示の層間絶縁層は、真空蒸着法、印刷
法、スパッタ法等を用いて形成されたSiO2 等で構成
される。例えば、X方向配線72を形成した基板71の
全面或は一部に所望の形状で形成され、特に、X方向配
線72とY方向配線73の交差部の電位差に耐え得るよ
うに、膜厚、材料、製法が適宜設定される。X方向配線
72とY方向配線73は、それぞれ外部端子として引き
出されている。
【0094】表面伝導型電子放出素子74を構成する一
対の素子電極(不図示)は、それぞれm本のX方向配線
72とn本のY方向配線73に、導電性金属等からなる
結線75によって電気的に接続されている。
【0095】配線72と配線73を構成する材料、結線
75を構成する材料及び一対の素子電極を構成する材料
は、その構成元素の一部あるいは全部が同一であって
も、また夫々異なってもよい。これらの材料は、例えば
前述の素子電極の材料より適宜選択される。素子電極を
構成する材料と配線材料が同一である場合には、素子電
極に接続した配線は素子電極ということもできる。
【0096】X方向配線72には、X方向に配列した表
面伝導型電子放出素子74の行を選択するための走査信
号を印加する不図示の走査信号印加手段が接続される。
一方、Y方向配線73には、Y方向に配列した表面伝導
型電子放出素子74の各列を入力信号に応じて変調する
ための、不図示の変調信号発生手段が接続される。各電
子放出素子に印加される駆動電圧は、当該素子に印加さ
れる走査信号と変調信号の差電圧として供給される。
【0097】上記構成においては、単純なマトリクス配
線を用いて、個別の素子を選択し、独立に駆動可能とす
ることができる。
【0098】このような単純マトリクス配置の電子源を
用いて構成した画像形成装置について、図8と図9及び
図10を用いて説明する。図8は、画像形成装置の表示
パネルの一例を示す模式図であり、図9は、図8の画像
形成装置に使用される蛍光膜の模式図である。図10
は、NTSC方式のテレビ信号に応じて表示を行うため
の駆動回路の一例を示すブロック図である。
【0099】図8において、71は電子放出素子を複数
配した電子源基板、81は電子源基板71を固定したリ
アプレート、86はガラス基板83の内面に蛍光膜84
とメタルバック85等が形成されたフェースプレートで
ある。82は支持枠であり、該支持枠82には、リアプ
レート81、フェースプレート86がフリットガラス等
を用いて接続されている。88は外囲器であり、例えば
大気中あるいは窒素中で、400〜500℃の温度範囲
で10分間以上焼成することで、封着して構成される。
【0100】74は、図1に示したような表面伝導型電
子放出素子である。72,73は、表面伝導型電子放出
素子の一対の素子電極と接続されたX方向配線及びY方
向配線ある。
【0101】外囲器88は、上述の如く、フェースプレ
ート86、支持枠82、リアプレート81で構成され
る。リアプレート81は主に基板71の強度を補強する
目的で設けられるため、基板71自体で十分な強度を持
つ場合は別体のリアプレート81は不要とすることがで
きる。即ち、基板71に直接支持枠82を封着し、フェ
ースプレート86、支持枠82及び基板71で外囲器8
8を構成してもよい。一方、フェースプレート86とリ
アプレート81の間に、スぺーサーと呼ばれる不図示の
支持体を設置することにより、大気圧に対して十分な強
度をもつ外囲器88を構成することもできる。
【0102】図9は、蛍光膜を示す模式図である。蛍光
膜84は、モノクロームの場合は蛍光体のみで構成する
ことができる。カラーの蛍光膜の場合は、蛍光体の配列
により、ブラックストライプ(図9(a))あるいはブ
ラックマトリクス(図9(b))等と呼ばれる黒色導電
材91と蛍光体92とから構成することができる。ブラ
ックストライプ、ブラックマトリクスを設ける目的は、
カラー表示の場合、必要となる三原色蛍光体の各蛍光体
92間の塗り分け部を黒くすることで混色等を目立たな
くすることと、蛍光膜84における外光反射によるコン
トラストの低下を抑制することにある。黒色導電材91
の材料としては、通常用いられている黒鉛を主成分とす
る材料の他、導電性があり、光の透過及び反射が少ない
材料を用いることができる。
【0103】ガラス基板83に蛍光体を塗布する方法
は、モノクローム、カラーによらず、沈澱法や印刷法等
が採用できる。蛍光膜84の内面側には、通常メタルバ
ック85が設けられる。メタルバックを設ける目的は、
蛍光体の発光のうち内面側への光をフェースプレート8
6側へ鏡面反射することにより輝度を向上させること、
電子ビーム加速電圧を印加するための電極として作用さ
せること、外囲器内で発生した負イオンの衝突によるダ
メージから蛍光体を保護すること等である。メタルバッ
クは、蛍光膜作製後、蛍光膜の内面側表面の平滑化処理
(通常、「フィルミング」と呼ばれる。)を行い、その
後Alを真空蒸着等を用いて堆積させることで作製でき
る。
【0104】フェースプレート86には、更に蛍光膜8
4の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に透明電
極(不図示)を設けてもよい。
【0105】前述の封着を行う際、カラーの場合は各色
蛍光体と電子放出素子とを対応させる必要があり、十分
な位置合わせが不可欠となる。
【0106】図8に示した画像形成装置は、例えば以下
のようにして製造される。
【0107】外囲器88内は、前述の安定化工程と同様
に、適宜加熱しながら、イオンポンプ、ソープションポ
ンプ等のオイルを使用しない排気装置により不図示の排
気管を通じて排気し、10-5Pa程度の真空度の有機物
質の十分に少ない雰囲気にした後、封止が成される。外
囲器88の封止後の真空度を維持するために、ゲッター
処理を行うこともできる。これは、外囲器88の封止を
行う直前あるいは封止後に、抵抗加熱あるいは高周波加
熱等を用いた加熱により、外囲器88内の所定の位置に
配置されたゲッター(不図示)を加熱し、蒸着膜を形成
する処理である。ゲッターは通常Ba等が主成分であ
り、該蒸着膜の吸着作用により、例えば10-3〜10-5
Paの真空度を維持するものである。ここで、表面伝導
型電子放出素子のフォーミング処理以降の工程は、適宜
設定できる。
【0108】次に、単純マトリクス配置の電子源を用い
て構成した表示パネルに、NTSC方式のテレビ信号に
基づいたテレビジョン表示を行う為の駆動回路の構成例
について、図10を用いて説明する。図10において、
101は画像表示パネル、102は走査回路、103は
制御回路、104はシフトレジスタ、105はラインメ
モリ、106は同期信号分離回路、107は変調信号発
生器、Vx及びVaは直流電圧源である。
【0109】表示パネル101は、端子Dx1乃至Dx
m、端子Dy1乃至Dyn及び高圧端子87を介して外
部の電気回路と接続している。端子Dx1乃至Dxmに
は、表示パネル101内に設けられている電子源、即
ち、m行n列の行列状にマトリクス配線された表面伝導
型電子放出素子群を1行(n素子)づつ順次駆動する為
の走査信号が印加される。端子Dy1乃至Dynには、
前記走査信号により選択された1行の表面伝導型電子放
出素子の各素子の出力電子ビームを制御する為の変調信
号が印加される。高圧端子87には、直流電圧源Vaよ
り、例えば10K[V]の直流電圧が供給されるが、こ
れは表面伝導型電子放出素子から放出される電子ビーム
に、蛍光体を励起するのに十分なエネルギーを付与する
為の加速電圧である。
【0110】走査回路102について説明する。同回路
は、内部にm個のスイッチング素子(図中、S1乃至S
mで模式的に示している)を備えたものである。各スイ
ッチング素子は、直流電圧電源Vxの出力電圧もしくは
0[V](グランドレベル)のいずれか一方を選択し、
表示パネル101の端子Dx1乃至Dxmと電気的に接
続される。各スイッチング素子S1乃至Smは、制御回
路103が出力する制御信号Tscanに基づいて動作
するものであり、例えばFETのようなスイッチング素
子を組み合わせることにより構成することができる。
【0111】直流電圧源Vxは、本例の場合には表面伝
導型電子放出素子の特性(電子放出閾値電圧)に基づ
き、走査されていない素子に印加される駆動電圧が電子
放出閾値電圧以下となるような一定電圧を出力するよう
設定されている。
【0112】制御回路103は、外部より入力される画
像信号に基づいて適切な表示が行われるように、各部の
動作を整合させる機能を有する。制御回路103は、同
期信号分離回路106より送られる同期信号Tsync
に基づいて、各部に対してTscan,Tsft及びT
mryの各制御信号を発生する。
【0113】同期信号分離回路106は、外部から入力
されるNTSC方式のテレビ信号から、同期信号成分と
輝度信号成分とを分離するための回路で、一般的な周波
数分離(フィルター)回路等を用いて構成できる。同期
信号分離回路106により分離された同期信号は、垂直
同期信号と水平同期信号より成るが、ここでは説明の便
宜上Tsync信号として図示した。前記テレビ信号か
ら分離された画像の輝度信号成分は、便宜上DATA信
号と表した。このDATA信号は、シフトレジスタ10
4に入力される。
【0114】シフトレジスタ104は、時系列的にシリ
アルに入力される前記DATA信号を、画像の1ライン
毎にシリアル/パラレル変換するためのもので、前記制
御回路103より送られる制御信号Tsftに基づいて
動作する(即ち、制御信号Tsftは、シフトレジスタ
104のシフトクロックであると言い換えてもよ
い。)。シリアル/パラレル変換された画像1ライン分
のデータ(電子放出素子n素子分の駆動データに相当)
は、Id1乃至Idnのn個の並列信号として前記シフ
トレジスタ104より出力される。
【0115】ラインメモリ105は、画像1ライン分の
データを必要時間の間だけ記憶する為の記憶装置であ
り、制御回路103より送られる制御信号Tmryに従
って適宜Id1乃至Idnの内容を記憶する。記憶され
た内容は、Id’1乃至Id’nとして出力され、変調
信号発生器107に入力される。
【0116】変調信号発生器107は、画像データI
d’1乃至Id’nの各々に応じて、表面伝導型電子放
出素子の各々を適切に駆動変調する為の信号源であり、
その出力信号は、端子Dy1乃至Dynを通じて表示パ
ネル101内の表面伝導型電子放出素子に印加される。
【0117】前述したように、本発明の電子放出素子は
放出電流Ieに関して以下の基本特性を有している。即
ち、電子放出には明確な閾値電圧Vthがあり、Vth
以上の電圧が印加された時のみ電子放出が生じる。電子
放出閾値以上の電圧に対しては、素子への印加電圧の変
化に応じて放出電流も変化する。このことから、本素子
にパルス状の電圧を印加する場合、例えば電子放出閾値
電圧以下の電圧を印加しても電子放出は生じないが、電
子放出閾値電圧以上の電圧を印加する場合には電子ビー
ムが出力される。その際、パルスの波高値Vmを変化さ
せることにより、出力電子ビームの強度を制御すること
が可能である。また、パルスの幅Pwを変化させること
により、出力される電子ビームの電荷の総量を制御する
ことが可能である。
【0118】従って、入力信号に応じて電子放出素子を
変調する方式としては、電圧変調方式とパルス幅変調方
式等が採用できる。電圧変調方式を実施するに際して
は、変調信号発生器107としては、一定長さの電圧パ
ルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧パル
スの波高値を変調できるような電圧変調方式の回路を用
いることができる。パルス幅変調方式を実施するに際し
ては、変調信号発生器107として、一定の波高値の電
圧パルスを発生し、入力されるデータに応じて適宜電圧
パルスの幅を変調するようなパルス幅変調方式の回路を
用いることができる。
【0119】シフトレジスタ104やラインメモリ10
5は、デジタル信号式のものでもアナログ信号式のもの
でも採用できる。画像信号のシリアル/パラレル変換や
記憶が所定の速度で行なわれれば良いからである。
【0120】デジタル信号式を用いる場合には、同期信
号分離回路106の出力信号DATAをデジタル信号化
する必要があるが、これには同期信号分離回路106の
出力部にA/D変換器を設ければ良い。これに関連して
ラインメモリ105の出力信号がデジタル信号かアナロ
グ信号かにより、変調信号発生器107に用いられる回
路が若干異なったものとなる。即ち、デジタル信号を用
いた電圧変調方式の場合、変調信号発生器107には、
例えばD/A変換回路を用い、必要に応じて増幅回路等
を付加する。パルス幅変調方式の場合、変調信号発生器
107には、例えば高速の発振器及び発振器の出力する
波数を計数する計数器(カウンタ)及び計数器の出力値
と前記メモリの出力値を比較する比較器(コンパレー
タ)を組み合わせた回路を用いる。必要に応じて、比較
器の出力するパルス幅変調された変調信号を表面伝導型
電子放出素子の駆動電圧にまで電圧増幅するための増幅
器を付加することもできる。
【0121】アナログ信号を用いた電圧変調方式の場
合、変調信号発生器107には、例えばオペアンプ等を
用いた増幅回路を採用でき、必要に応じてレベルシフト
回路等を付加することもできる。パルス幅変調方式の場
合には、例えば電圧制御型発振回路(VCO)を採用で
き、必要に応じて表面伝導型電子放出素子の駆動電圧に
まで電圧増幅するための増幅器を付加することもでき
る。
【0122】このような構成をとり得る本発明を適用可
能な画像形成装置においては、各電子放出素子に、容器
外端子Dx1乃至Dxm、Dy1乃至Dynを介して電
圧を印加することにより、電子放出が生じる。高圧端子
87を介してメタルバック85あるいは透明電極(不図
示)に高圧を印加し、電子ビームを加速する。加速され
た電子は、蛍光膜84に衝突し、発光が生じて画像が形
成される。
【0123】ここで述べた画像形成装置の構成は、本発
明を適用可能な画像形成装置の一例であり、本発明の技
術思想に基づいて種々の変形が可能である。入力信号に
ついてはNTSC方式を挙げたが、入力信号はこれに限
られるものではなく、PAL、SECAM方式等の他、
これらよりも多数の走査線からなるTV信号(例えば、
MUSE方式をはじめとする高品位TV)方式をも採用
できる。
【0124】次に、前述の梯子型配置の電子源及び画像
形成装置について、図11及び図12を用いて説明す
る。
【0125】図11は、梯子型配置の電子源の一例を示
す模式図である。図11において、110は電子源基
板、111は電子放出素子である。112は、電子放出
素子111を接続するための共通配線D1〜D10であ
り、これらは外部端子として引き出されている。電子放
出素子111は、基板110上に、X方向に並列に複数
個配置されている(これを素子行と呼ぶ)。この素子行
が複数個配置されて、電子源を構成している。各素子行
の共通配線間に駆動電圧を印加することで、各素子行を
独立に駆動させることができる。即ち、電子ビームを放
出させたい素子行には、電子放出閾値以上の電圧を印加
し、電子ビームを放出させたくない素子行には、電子放
出閾値以下の電圧を印加する。各素子行間に位置する共
通配線D2〜D9は、例えばD2とD3、D4とD5、
D6とD7、D8とD9を一体の同一配線とすることも
できる。
【0126】図12は、梯子型配置の電子源を備えた画
像形成装置におけるパネル構造の一例を示す模式図であ
る。120はグリッド電極、121は電子が通過するた
めの開口、D1乃至Dmは容器外端子、G1乃至Gnは
グリッド電極120と接続された容器外端子である。1
10は各素子行間の共通配線を同一配線とした電子源基
板である。図12においては、図8、図11に示した部
位と同じ部位には、これらの図に付したのと同一の符号
を付している。ここに示した画像形成装置と、図8に示
した単純マトリクス配置の画像形成装置との大きな違い
は、電子源基板110とフェースプレート86の間にグ
リッド電極120を備えているか否かである。
【0127】図12においては、基板110とフェース
プレート86の間には、グリッド電極120が設けられ
ている。グリッド電極120は、表面伝導型電子放出素
子111から放出された電子ビームを変調するためのも
のであり、梯子型配置の素子行と直交して設けられたス
トライプ状の電極に電子ビームを通過させるため、各素
子に対応して1個ずつ円形の開口121が設けられてい
る。グリッド電極の形状や配置位置は、図12に示した
ものに限定されるものではない。例えば、開口としてメ
ッシュ状に多数の通過口を設けることもでき、グリッド
電極を表面伝導型電子放出素子の周囲や近傍に設けるこ
ともできる。
【0128】容器外端子D1乃至Dm及びグリッド容器
外端子G1乃至Gnは、不図示の制御回路と電気的に接
続されている。
【0129】本例の画像形成装置では、素子行を1列ず
つ順次駆動(走査)して行くのと同期してグリッド電極
列に画像1ライン分の変調信号を同時に印加する。これ
により、各電子ビームの蛍光体への照射を制御し、画像
を1ラインずつ表示することができる。
【0130】以上説明した本発明の画像形成装置は、テ
レビジョン放送の表示装置、テレビ会議システムやコン
ピューター等の表示装置の他、感光性ドラム等を用いて
構成された光プリンターとしての画像形成装置等として
も用いることができる。
【0131】
【実施例】以下に、具体的な実施例を挙げて本発明を説
明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものでは
なく、本発明の目的が達成される範囲内での各要素の置
換や設計変更がなされたものをも包含する。
【0132】[実施例1]本実施例に係る表面伝導型電
子放出素子の構成は、図1(a),(b)の平面図及び
断面図と同様である。
【0133】本実施例に係る表面伝導型電子放出素子の
製造法を、図3を用いて説明する。
【0134】1)絶縁性基板1として石英基板を用い、
これを洗剤、純水及び有機溶剤にて十分に洗浄を行った
後、フォトリソグラフィー技術により該基板1上にレジ
ストマスクを作製し、その後真空蒸着法により素子電極
材料としてPtを全面に形成した。その後、リフトオフ
法により、素子電極2,3を形成した(図3(a))。
この素子電極の間隔Lは10μm、幅Wは500μm、
膜厚dは1000Åである。
【0135】2)基板1上に設けられた素子電極2,3
の間に、有機パラジウム(CCP4230;奥野製薬
(株)製)をスピンナーにより回転塗布し、300℃で
20分間加熱焼成し、PdO膜を得た。その後、フォト
リソグラフィー法とドライエッチ法により、幅W’が3
00μmの導電性膜4を得た(図3(b))。この導電
性膜4の膜厚は10nmでシート抵抗値は6×104 Ω
/□であり、微粒子からなる膜であった。
【0136】3)次に、上記基板1を図5に示したよう
な真空処理装置の真空容器55内に配置し、素子電極
2,3間に電圧を印加してフォーミング処理を行い、導
電性膜4に亀裂からなる電子放出部5を形成した(図3
(c))。
【0137】本実施例では、フォーミング処理の電圧波
形として三角波のパルスを用い、約1.3×10-4Pa
の真空雰囲気下で40秒間行った。三角波の波高値は最
大で25V、パルス幅は1m秒、パルス間隔は10m秒
とした。
【0138】4)通電フォーミングが終了した素子に活
性化処理を施した。本実施例では、まず真空容器55内
をオイルを使用しない真空排気系を用いて2.7×10
-5Paの真空度とした。その後、ガス導入部58のバル
ブを調整し、有機物質としてブタン、キャリアガスとし
てArガスを1:19の割合で混合した混合ガスを、真
空容器55内に導入した。尚、その時の真空容器55内
の真空度は6.7×10-3Paとした。その後、素子電
極2,3間に波高値20Vのパルス電圧を30分間繰り
返し印加した。
【0139】この活性化工程により、炭素を主とする化
合物(不図示)が、電子放出部近傍に約100Å堆積し
た。
【0140】以上のように作製した本実施例の素子と、
従来方法で作製した素子(比較用素子)の特性につい
て、引き続き図5の真空処理装置を用いて測定した。
尚、従来方法とは、上記活性化処理で導入した混合ガス
に代えて、ブタンのみを導入する方法である。この場
合、両者におけるブタンの分圧を等しくするため、従来
方法では、ブタン導入後の真空容器55内の真空度を
6.7×10-3Pa/20≒3.3×10-4Paとし
た。
【0141】測定に際しては、素子及び真空容器全体を
100℃で30分間加熱しつつ、真空容器55内を再び
排気し2.7×10-5Paの真空度とした後、アノード
電極54に1kVの電圧を印加した状態で、素子電極
2,3間に素子電圧を印加した。その結果、本実施例の
素子と比較用素子は、図6に示した様な電子放出特性を
示し、両者とも平均的な特性として素子電圧(Vf)が
約16Vで電子が急激に放出しはじめた。
【0142】本発明における効果を確認するために、本
実施例の素子と比較用素子を、10回同様の工程を経て
作製することを繰り返し、特性を比較した。
【0143】その結果、Vf=20Vのときの平均値
は、比較用素子では、素子電流Ifは2.2mA、放出
電流Ieは5μAとなり、本実施例の素子では、素子電
流Ifは2.0mA、放出電流Ieは7μAとなった。
【0144】比較用素子の電子放出量の平均値が低くな
ったのは、再現性が悪く特性のばらつきが大きく、極端
に特性の悪い素子が発生したのが原因である。また、電
子放出効率のばらつきで比較すると、比較用素子は±8
0%、本実施例の素子は±20%であった。
【0145】比較用素子の特性のばらつきが大きいの
は、ガス(ブタン)導入の制御性の問題に起因する。即
ち、従来方法では、ガス導入前の真空度が2.7×10
-5Paであるのに対し、ガス導入後は3.3×10-4
aとしなければならない。このように、到達真空度が1
-5Paオーダーである場合に、ガス導入量を10-4
aのオーダーで制御するのは極めて困難である。
【0146】一方、本発明による本実施例では、ガス導
入前は同じ真空度でも、キャリアガスとの混合ガスを導
入することで、導入後のオーダーを1桁大きくでき、
6.7×10-3Paでよい。即ち、ガス導入量の絶対値
が多くなるため、その制御は従来方法よりも簡単であ
り、精度良く安定して制御することができる。従って、
本発明による製造方法によれば、活性化工程が均一且つ
安定になり、電子放出量の増大等の電子放出特性の向上
と共に、素子毎の特性をばらつきを低減し均一性の高い
素子が得られる。
【0147】本実施例においては、ブタンとArガスの
混合比は1:19としたが、かかる混合比は特に限定さ
れるものではなく、活性化処理前の真空容器内の到達真
空度や有機物質の最適分圧等を考慮して適宜設定するこ
とができる。ただし、キャリアガスの比率を大きくする
と、活性化に必要な有機物質の分圧を得るためには、混
合ガスによる全圧を大きくする、即ち真空度を低く(悪
く)する必要が生じ、例えば1Pa以上の低真空になる
と、活性化時に放出される電子によりイオン化されたガ
ス分子のため電子放出部周辺がダメージを受ける場合が
ある。そのため、活性化工程の真空度には制限があり、
不活性ガスの比率をむやみに大きくすることはできな
い。
【0148】本発明で有効な効果が得られるのは、活性
化工程で最適化される有機物質の分圧が比較的に低分圧
で、その制御性が劣っている領域であり、具体的には1
-2〜10-6Pa程度の範囲、特に10-2〜10-4Pa
程度の範囲の場合である。活性化工程で最適化される有
機物質の分圧が高分圧(10-2Pa〜大気圧)の場合に
は、従来の方法でも制御性はそれほど問題にならず、従
来方法は本発明による方法と比べて遜色がなくなってく
る。
【0149】以上の説明から理解されるように、本発明
の製造方法は、活性化工程において低分圧で最適化され
る有機材料においても、キャリアガスとの混合により導
入ガスの全圧を大きくして、ガス導入の制御性を高めよ
うとするものであり、本発明の効果を得るためには、使
用する有機物質の最適化分圧を保持しつつ、且つ制御性
の良いガス圧に設定するように、キャリアガスとの混合
比率を適宜設定するのが良い。
【0150】[実施例2]本実施例では、実施例1と同
様の電子放出素子を単純マトリクス配置した図7に示し
たような電子源基板を用いて、図8に示したような画像
形成装置を作製した例を示す。
【0151】電子源基板の一部の平面図を図13に示
す。また、図13中のA−A’の断面図を図14に、製
造手順を図15及び図16に示す。尚、図13〜図16
において同じ符号は同じ部材を示す。ここで、71は電
子源基板、72はX方向配線(下配線とも呼ぶ)、73
はY方向配線(上配線とも呼ぶ)、151は層間絶縁
層、152は素子電極2と下配線72と電気的接続のた
めのコンタクトホールである。
【0152】本実施例の製造方法を、図15及び図16
に基づいて工程順に従って具体的に説明する。尚、以下
の各工程−(a)〜(h)は図15及び図16の(a)
〜(h)に対応するものである。
【0153】工程−(a) 清浄化した青板ガラス上に厚さ0.5μmのシリコン酸
化膜をスパッタ法で形成した基板71上に、真空蒸着に
より、厚さ5nmのCr、厚さ600nmのAuを順次
積層した後、ホトレジスト(AZ1370;ヘキスト社
製)をスピンナーにより回転塗布、ベークした後、ホト
マスク像を露光、現像して、下配線72のレジストパタ
ーンを形成し、Au/Cr堆積膜をウエットエッチング
して、所望の形状の下配線72を形成した。
【0154】工程−(b) 次に、厚さ1.0μmのシリコン酸化膜からなる層間絶
縁層151をRFスパッタ法により堆積した。
【0155】工程−(c) 工程−(b)で堆積したシリコン酸化膜にコンタクトホ
ール152を形成するためのホトレジストパターンを作
り、これをマスクとして層間絶縁層151をエッチング
してコンタクトホール152を形成した。エッチングは
CF4 とH2 ガスを用いたRIE(Reactive・
Ion・Etching)法を用いた。
【0156】工程−(d) その後、素子電極2,3となるべき開口を有するパター
ンをホトレジスト(RD−2000N−41;日立化成
社製)で形成し、真空蒸着法により、厚さ50nmのP
tを堆積した。ホトレジストパターンを有機溶剤で溶解
し、Pt膜をリフトオフし、素子電極間隔Lが10μ
m、幅Wが300μmの素子電極2,3を形成した。
【0157】工程−(e) 素子電極2,3の上に上配線73となるべき開口を有す
るホトレジストパターンを形成した後、厚さ5nmのT
i、厚さ500nmのAuを真空蒸着により順次堆積
し、リフトオフにより不要の部分を除去して、所望の形
状の上配線73を形成した。
【0158】工程−(f) その上に有機Pd(ccp4230;奥野製薬(株)
製)をスピンナーにより回転塗布し、300℃で20分
間の加熱焼成処理をした。こうして形成された主として
PdOよりなる微粒子からなる導電性膜が全面に形成さ
れた。この導電性膜の膜厚は120Åであった。
【0159】工程−(g) さらに、フォトリソグラフィー法とドライエッチ法を組
み合わせてエッチングし、150μm角のパターンを有
する導電性膜4を、各素子電極対に対応して形成した。
このようにして形成された導電性膜4は、微粒子からな
っている。
【0160】工程ー(h) コンタクトホール152部分以外にレジストを塗布する
ようなパターンを形成し、真空蒸着により厚さ5nmの
Ti、厚さ500nmのAuを順次堆積した。リフトオ
フにより不要の部分を除去することにより、コンタクト
ホール152を埋め込んだ。
【0161】以上の工程により、基板71上に下配線7
2、層間絶縁層151、素子電極2,3、上配線73、
導電性膜4を形成した。
【0162】次に、以上のようにして作製した未フォー
ミングの電子源基板71を用いて表示装置を構成した例
を図8と図9を用いて説明する。
【0163】上述のようにして多数の導電性膜4をマト
リクス配線した電子源基板71(図13)をリアプレー
ト81上に固定した後、電子源基板71の5mm上方
に、フェースプレート86(ガラス基板83の内面に螢
光膜84とメタルバック85が形成されて構成される)
を支持枠82を介し配置し、フェースプレート86支持
枠82、リアプレート81の接合部にフリットガラスを
塗布し、大気中で400℃乃至500℃で10分以上焼
成することで封着した。尚、リアプレート81への電子
源基板71の固定もフリットガラスで行なった。
【0164】フェースプレート86に形成した蛍光膜8
4は、図9(a)に示すように、黒色導電材91と蛍光
体92とで構成され、ブラックストライプ配列のカラー
の蛍光膜を用いた。この蛍光膜84は、先にブラックス
トライプを形成し、その間隙部に各色蛍光体を塗布して
作製した。ブラックストライプの材料は、通常良く用い
られている黒鉛を主成分とする材料を用いた。ガラス基
板83に蛍光体を塗布する方法は、スラリー法を用い
た。
【0165】また、蛍光膜84の内面側にはメタルバッ
ク85を設けた。メタルバック85は、蛍光膜作製後、
蛍光膜の内面側表面の平滑化処理(通常、「フィルミン
グ」と呼ばれる。)を行い、その後、Alを真空蒸着す
ることで作製した。フェースプレート86には、更に蛍
光膜84の導電性を高めるため、蛍光膜84の外面側に
透明電極(不図示)が設けられる場合もあるが、本実施
例ではメタルバックのみで十分な導電性が得られたので
省略した。
【0166】前述の封着を行う際、カラーの場合は各色
蛍光体と電子放出素子とを対応させなくてはいけないた
め、十分な位置合わせを行った。
【0167】以上のようにして完成したパネル(外囲器
88)内の雰囲気を、不図示の排気管を通じて真空ポン
プにて約6.7×10-4Paまで排気した。その後、容
器外端子Dx1乃至DxmとDy1乃至Dynを通じ素
子電極2,3間に電圧を印加し、導電性膜4をフォーミ
ング処理することで、電子放出部5を作製した。このよ
うに作製された電子放出部5は、導電性膜4が溶融した
亀裂であった。尚、フォーミング処理の電圧波形は、実
施例1と同様とした。
【0168】次に、実施例1と同様にブタン:Ar混合
雰囲気において、素子電極2,3間に波高値20Vのパ
ルス電圧を30分間繰り返し印加した。この時のガス圧
は、約8×10-2Paで、ブタン:Arの混合比は1:
150である。これにより、炭素を主成分とする化合物
が、電子放出部近傍に約110Å堆積した。
【0169】本実施例におけるガス導入部の構成を図1
7に示した。同図中、88は図8に示したパネル(外囲
器)であり、ガスの導入は外囲器88に接続する排気管
89を介して行われる。排気管89の先には切り替えバ
ルブ402が取付けられており、真空排気系(排気ポン
プ400)とガス導入系とが切り替え可能な構成になっ
ている。有機材料とArのそれぞれのラインは、バルブ
403、マスフローコントローラ404、ニードルバル
ブ405が配管され、その導入量が制御される。
【0170】活性化終了後は、外囲器88全体を100
℃で30分間加熱しつつ再び排気し、約6.7×10-4
Paの真空度とした後、排気管89をガスバーナーで熱
することで溶着し、外囲器88の封止を行った。これに
より、その後の炭素及び炭素化合物の堆積を抑制するこ
とが可能となった。
【0171】最後に、封止後の真空度を維持するため
に、高周波加熱法でゲッター処理を行った。以上のよう
にして作製したパネルの容器外端子Dx1乃至Dxmと
Dy1乃至Dyn、及び高圧端子87を夫々必要な駆動
系に接続し、画像表示装置を完成した。この画像表示装
置において、各電子放出素子には、容器外端子Dx1乃
至DxmとDy1乃至Dynを通じ、電圧を印加するこ
とにより、電子放出させ、高圧端子87を通じ、メタル
バック85に数kV以上の高圧を印加し、電子ビームを
加速し、螢光膜84に衝突させ、励起・発光させること
で画像を表示することができる。
【0172】本実施例のような画像表示装置を構成する
場合には、構成部材の増加、形態上の制約により、有機
物質の最適化分圧を保持することは実施例1よりも更に
困難となり、従来方法では殆ど満足のいく制御はできな
い。しかし、本発明においては、ガスの混合比及び、ガ
スの全圧を適宜設定することで、有機物質の最適化分圧
を保持することが可能となった。このため、本実施例の
画像表示装置においては、輝度が高く、且つ輝度のばら
つきの少ない良好な画像を安定して表示することができ
た。
【0173】また、表示位置における輝度のばらつきに
関しては、前記排気管89の位置や数によっても影響さ
れ、排気管の周辺素子と、排気管から最も遠い素子の輝
度の差が特に大きくなりがちである。従来方法において
は、これらの比は1:10以上になったが、本実施例で
は1:3程度に改善された。かかる輝度のばらつきは、
例えば、排気管89を対角線上に複数配置したり、排気
系とガス導入系を独立にして、排気と同時にガス導入を
行い一定の真空度を保つなどの工夫により、防ぐことが
可能である。なお、これらの排気管及び排気・導入シス
テムの最適化は、適宜なされても本発明の効果には変わ
りない。
【0174】[実施例3]図18は、前述の本発明の表
面伝導型電子放出素子を電子源として用いたディスプレ
イパネル(図8)に、例えばテレビジョン放送を初めと
する種々の画像情報源より提供される画像情報を表示で
きるように構成した本発明の画像形成装置の一例を示す
図である。
【0175】図中201はディスプレイパネル、100
1はディスプレイパネルの駆動回路、1002はディス
プレイコントローラ、1003はマルチプレクサ、10
04はデコーダ、1005は入出力インターフェース回
路、1006はCPU、1007は画像生成回路、10
08及び1009及び1010は画像メモリーインター
フェース回路、1011は画像入力インターフェース回
路、1012及び1013はTV信号受信回路、101
4は入力部である。
【0176】尚、本画像形成装置は、例えばテレビジョ
ン信号のように、映像情報と音声情報の両方を含む信号
を受信する場合には当然映像の表示と同時に音声を再生
するものであるが、本発明の特徴と直接関係しない音声
情報の受信、分離、再生、処理、記憶等に関する回路や
スピーカー等については説明を省略する。
【0177】以下、画像信号の流れに沿って各部の機能
を説明する。
【0178】まず、TV信号受信回路1013は、例え
ば電波や空間光通信等のような無線伝送系を用いて伝送
されるTV信号を受信するための回路である。
【0179】受信するTV信号の方式は特に限られるも
のではなく、例えばNTSC方式、PAL方式、SEC
AM方式等、いずれの方式でもよい。また、これらより
更に多数の走査線よりなるTV信号、例えばMUSE方
式を初めとする所謂高品位TVは、大面積化や大画素数
化に適した前記ディスプレイパネルの利点を生かすのに
好適な信号源である。
【0180】TV信号受信回路1013で受信されたT
V信号は、デコーダ1004に出力される。
【0181】TV信号受信回路1012は、例えば同軸
ケーブルや光ファイバー等のような有線伝送系を用いて
伝送されるTV信号を受信するための回路である。前記
TV信号受信回路1013と同様に、受信するTV信号
の方式は特に限られるものではなく、また本回路で受信
されたTV信号もデコーダ1004に出力される。
【0182】画像入力インターフェース回路1011
は、例えばTVカメラや画像読み取りスキャナーなどの
画像入力装置から供給される画像信号を取り込むための
回路で、取り込まれた画像信号はデコーダ1004に出
力される。
【0183】画像メモリーインターフェース回路101
0は、ビデオテープレコーダー(以下VTRと略す)に
記憶されている画像信号を取り込むための回路で、取り
込まれた画像信号はデコーダ1004に出力される。
【0184】画像メモリーインターフェース回路100
9は、ビデオディスクに記憶されている画像信号を取り
込むための回路で、取り込まれた画像信号はデコーダ1
004に出力される。
【0185】画像メモリーインターフェース回路100
8は、静止画ディスクのように、静止画像データを記憶
している装置から画像信号を取り込むための回路で、取
り込まれた静止画像データはデコーダ1004に入力さ
れる。
【0186】入出力インターフェース回路1005は、
本表示装置と、外部のコンピュータもしくはコンピュー
タネットワークもしくはプリンターなどの出力装置とを
接続するための回路である。画像データや文字・図形情
報の入出力を行うのは勿論のこと、場合によっては本画
像形成装置の備えるCPU1006と外部との間で制御
信号や数値データの入出力などを行うことも可能であ
る。
【0187】画像生成回路1007は、前記入出力イン
ターフェース回路1005を介して外部から入力される
画像データや文字・図形情報や、あるいはCPU100
6より出力される画像データや文字・図形情報に基づ
き、表示用画像データを生成するための回路である。本
回路の内部には、例えば画像データや文字・図形情報を
蓄積するための書き換え可能メモリーや、文字コードに
対応する画像パターンが記憶されている読み出し専用メ
モリーや、画像処理を行うためのプロセッサー等を初め
として、画像の生成に必要な回路が組み込まれている。
【0188】本回路により生成された表示用画像データ
は、デコーダ1004に出力されるが、場合によっては
前記入出力インターフェース回路1005を介して外部
のコンピュータネットワークやプリンターに出力するこ
とも可能である。
【0189】CPU1006は、主として本表示装置の
動作制御や、表示画像の生成や選択や編集に関わる作業
を行う。
【0190】例えば、マルチプレクサ1003に制御信
号を出力し、ディスプレイパネルに表示する画像信号を
適宜選択したり組み合わせたりする。その際には表示す
る画像信号に応じてディスプレイパネルコントローラ1
002に対して制御信号を発生し、画面表示周波数や走
査方法(例えばインターレースかノンインターレース
か)や一画面の走査線の数など表示装置の動作を適宜制
御する。また、前記画像生成回路1007に対して画像
データや文字・図形情報を直接出力したり、あるいは前
記入出力インターフェース回路1005を介して外部の
コンピュータやメモリーをアクセスして画像データや文
字・図形情報を入力する。
【0191】尚、CPU1006は、これ以外の目的の
作業にも関わるものであってよい。例えば、パーソナル
コンピュータやワードプロセッサ等のように、情報を生
成したり処理する機能に直接関わってもよい。あるいは
前述したように、入出力インターフェース回路1005
を介して外部のコンピュータネットワークと接続し、例
えば数値計算等の作業を外部機器と協同して行ってもよ
い。
【0192】入力部1014は、前記CPU1006に
使用者が命令やプログラム、あるいはデータなどを入力
するためのものであり、例えばキーボードやマウスの
他、ジョイスティック、バーコードリーダー、音声認識
装置等の多様な入力機器を用いることが可能である。
【0193】デコーダ1004は、前記1007ないし
1013より入力される種々の画像信号を3原色信号、
又は輝度信号とI信号、Q信号に逆変換するための回路
である。尚、図中に点線で示すように、デコーダ100
4は内部に画像メモリーを備えるのが望ましい。これ
は、例えばMUSE方式を初めとして、逆変換するに際
して画像メモリーを必要とするようなテレビ信号を扱う
ためである。
【0194】画像メモリーを備える事により、静止画の
表示が容易になる。あるいは前記画像生成回路1007
及びCPU1006と協同して、画像の間引き、補間、
拡大、縮小、合成を初めとする画像処理や編集が容易に
なるという利点が得られる。
【0195】マルチプレクサ1003は、前記CPU1
006より入力される制御信号に基づき、表示画像を適
宜選択するものである。即ち、マルチプレクサ1003
はデコーダ1004から入力される逆変換された画像信
号の内から所望の画像信号を選択して駆動回路1001
に出力する。その場合には、一画面表示時間内で画像信
号を切り換えて選択することにより、所謂多画面テレビ
のように、一画面を複数の領域に分けて領域によって異
なる画像を表示することも可能である。
【0196】ディスプレイパネルコントローラ1002
は、前記CPU1006より入力される制御信号に基づ
き、駆動回路1001の動作を制御するための回路であ
る。
【0197】ディスプレイパネルの基本的な動作に関わ
るものとして、例えばディスプレイパネルの駆動用電源
(図示せず)の動作シーケンスを制御するための信号を
駆動回路1001に対して出力する。ディスプレイパネ
ルの駆動方法に関わるものとして、例えば画面表示周波
数や走査方法(例えばインターレースかノンインターレ
ースか)を制御するための信号を駆動回路1001に対
して出力する。また、場合によっては、表示画像の輝度
やコントラストや色調やシャープネスといった画質の調
整に関わる制御信号を駆動回路1001に対して出力す
る場合もある。
【0198】駆動回路1001は、ディスプレイパネル
201に印加する駆動信号を発生するための回路であ
り、前記マルチプレクサ1003から入力される画像信
号と、前記ディスプレイパネルコントローラ1002よ
り入力される制御信号に基づいて動作するものである。
【0199】以上、各部の機能を説明したが、図18に
例示した構成により、本画像形成装置においては多様な
画像情報源より入力される画像情報をディスプレイパネ
ル201に表示することが可能である。即ち、テレビジ
ョン放送を初めとする各種の画像信号は、デコーダ10
04におて逆変換された後、マルチプレクサ1003に
おいて適宜選択され、駆動回路1001に入力される。
一方、デイスプレイコントローラ1002は、表示する
画像信号に応じて駆動回路1001の動作を制御するた
めの制御信号を発生する。駆動回路1001は、上記画
像信号と制御信号に基づいてディスプレイパネル201
に駆動信号を印加する。これにより、ディスプレイパネ
ル201において画像が表示される。これらの一連の動
作は、CPU1006により統括的に制御される。
【0200】本画像形成装置においては、前記デコーダ
1004に内蔵する画像メモリや、画像生成回路100
7及び情報の中から選択したものを表示するだけでな
く、表示する画像情報に対して、例えば拡大、縮小、回
転、移動、エッジ強調、間引き、補間、色変換、画像の
縦横比変換等を初めとする画像処理や、合成、消去、接
続、入れ換え、嵌め込み等を初めとする画像編集を行う
ことも可能である。また、本実施例の説明では特に触れ
なかったが、上記画像処理や画像編集と同様に、音声情
報に関しても処理や編集を行なうための専用回路を設け
てもよい。
【0201】従って、本画像形成装置は、テレビジョン
放送の表示機器、テレビ会議の端末機器、静止画像及び
動画像を扱う画像編集機器、コンピュータの端末機器、
ワードプロセッサを初めとする事務用端末機器、ゲーム
機などの機能を一台で兼ね備えることが可能で、産業用
あるいは民生用として極めて応用範囲が広い。
【0202】図18に示した表示装置は、本発明の技術
的思想に基づいて種々の変形が可能である。例えば図1
8の構成要素の内、使用目的上必要のない機能に関わる
回路は省いても差し支えない。また、これとは逆に、使
用目的によっては更に構成要素を追加してもよい。例え
ば、本表示装置をテレビ電話機として応用する場合に
は、テレビカメラ、音声マイク、照明機、モデムを含む
送受信回路等を構成要素に追加するのが好適である。
【0203】本表示装置においては、とりわけ表面伝導
型電子放出素子を電子ビーム源とするディスプレイパネ
ルの薄型化が容易なため、表示装置の奥行きを小さくす
ることができる。それに加えて、大面積化が容易で輝度
が高く視野角特性にも優れるため、本表示装置は臨場感
にあふれ迫力に富んだ画像を視認性良く表示することが
可能である。
【0204】
【発明の効果】以上説明した様に、本発明によれば、活
性化処理における有機物質のガス圧の最適な範囲が例え
ば10-4Pa以下の場合であっても、混合ガスの全圧を
制御可能なオーダーに適宜設定することで、有機物質の
分圧の制御性を高めることができる。これにより、安定
な電子放出特性と高い電子放出効率を有すると共に、素
子毎の特性のばらつき少ない均一な電子放出素子を実現
することができる。
【0205】また、多数の電子放出素子を配列形成し、
入力信号に応じて電子を放出する電子源においては、各
電子放出素子が良好な電子放出特性を長時間にわたり保
持し得、かかる電子源を用いた画像形成装置において
は、高輝度且つ輝度のばらつきの少ない良好な画像を表
示することが可能となった。
【0206】以上のように、本発明によれば、カラー画
像にも対応可能で、高輝度且つ高コントラストで表示品
位の高い大面積フラットディスプレーが実現される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の電子放出素子の一例である平面型表面
伝導型電子放出素子を模式的に示した平面図及び縦断面
図である。
【図2】本発明の電子放出素子の一例である垂直型表面
伝導型電子放出素子を模式的に示した図である。
【図3】図1の表面伝導型電子放出素子の製造方法の一
例を説明するための図である。
【図4】フォーミング処理に用いる電圧波形の一例であ
る。
【図5】本発明の電子放出素子の製造に用いることので
きる真空処理装置(測定評価装置)の一例を示す概略構
成図である。
【図6】本発明に好適な表面伝導型電子放出素子の放出
電流Ieおよび素子電流Ifと素子電圧Vfの関係の典
型的な例を示す図である。
【図7】単純マトリクス配置の本発明の電子源の概略構
成図である。
【図8】単純マトリクス配置の電子源を用いた本発明の
画像形成装置に用いる表示パネルの概略構成図である
【図9】図8の表示パネルにおける蛍光膜を示す図であ
る。
【図10】図8の表示パネルを駆動する駆動回路の一例
を示す図である。
【図11】梯子型配置の本発明の電子源の概略平面図で
ある。
【図12】梯子型配置の電子源を用いた本発明の画像形
成装置に用いる表示パネルの概略構成図である。
【図13】実施例2にて示す単純マトリクス配置の電子
源基板の部分平面図である。
【図14】図13の電子源基板の部分断面図である。
【図15】図13の電子源基板の製造方法を説明するた
めの図である。
【図16】図13の電子源基板の製造方法を説明するた
めの図である。
【図17】実施例2におけるガス導入部の構成を示す模
式図である。
【図18】実施例3における画像形成装置を示すブロッ
ク図である。
【図19】従来例の表面伝導型電子放出素子の平面図で
ある。
【符号の説明】
1 基板 2,3 素子電極 4 導電性膜 5 電子放出部 21 段差形成部 50 導電性膜4を流れる素子電流Ifを測定するため
の電流計 51 電子放出素子に素子電圧Vfを印加するための電
源 52 電子放出部5より放出される放出電流Ieを測定
するための電流計 53 アノード電極54に電圧を印加するための高圧電
源 54 電子放出部5より放出される電子を捕捉するため
のアノード電極 55 真空容器 56 排気ポンプ 57 切り替えバルブ 58 ガス導入部 71 電子源基板 72 X方向配線 73 Y方向配線 74 表面伝導型電子放出素子 75 結線 81 リアプレート 82 支持枠 83 ガラス基板 84 蛍光膜 85 メタルバック 86 フェースプレート 87 高圧端子 88 外囲器 89 排気管 91 黒色導電材 92 蛍光体 101 表示パネル 102 走査回路 103 制御回路 104 シフトレジスタ 105 ラインメモリ 106 同期信号分離回路 107 変調信号発生器 Vx,Va 直流電圧源 110 電子源基板 111 電子放出素子 112 電子放出素子を配線するための共通配線 120 グリッド電極 121 電子が通過するための開口 151 層間絶縁層 152 コンタクトホール

Claims (14)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電極間に、電子放出部を有する導電性膜
    を備える電子放出素子の製造方法において、電子放出部
    の近傍に炭素又は/及び炭素化合物からなる物質を堆積
    させる活性化工程を有し、該活性化工程は、炭素又は/
    及び炭素化合物を形成するための主成分となる第1の成
    分と、炭素又は/及び炭素化合物の形成に関与しない第
    2の成分(組成式XY(但し、X、Yは各々、水素また
    はハロゲン)で表されるガスを除く。)を含む混合ガス
    を真空雰囲気に導入した後、導電性膜に電圧を印加する
    工程であることを特徴とする電子放出素子の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記第1の成分が有機化合物であり、前
    記第2の成分が不活性ガスであることを特徴とする請求
    項1に記載の電子放出素子の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記混合ガスの全圧が、1Pa以下であ
    ることを特徴とする請求項1又は2に記載の電子放出素
    子の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記混合ガス中の第1の成分の分圧が、
    10-2Pa以下であることを特徴とする請求項1〜3の
    いずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  5. 【請求項5】 電極間に、電子放出部を有する導電性膜
    を備える電子放出素子の製造方法において、電子放出部
    の近傍に炭素又は/及び炭素化合物からなる物質を堆積
    させる活性化工程を有し、該活性化工程は、有機物質ガ
    スと、キャリアガス(組成式XY(但し、X、Yは各
    々、水素またはハロゲン)で表されるガスを除く。)を
    含む混合ガスを真空雰囲気に導入した後、導電性膜に電
    圧を印加する工程であることを特徴とする電子放出素子
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記キャリアガスは、不活性ガスまたは
    窒素ガスであることを特徴とする請求項5に記載の電子
    放出素子の製造方法。
  7. 【請求項7】 前記不活性ガスは、アルゴンまたはヘリ
    ウムであることを特徴とする請求項6に記載の電子放出
    素子の製造方法。
  8. 【請求項8】 前記混合ガスの全圧が、1Pa以下であ
    ることを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載の電
    子放出素子の製造方法。
  9. 【請求項9】 前記混合ガス中の有機物質ガスの分圧
    が、10 -2 Pa以下であることを特徴とする請求項5〜
    8のいずれかに記載の電子放出素子の製造方法。
  10. 【請求項10】 前記電子放出素子が、表面伝導型電子
    放出素子であることを特徴とする請求項1〜9のいずれ
    に記載の電子放出素子の製造方法
  11. 【請求項11】 基板上に、複数の電子放出素子が配列
    された電子源の製造方法において、前記電子放出素子
    が、請求項1〜10のいずれかに記載の方法にて製造さ
    れることを特徴とする電子源の製造方法。
  12. 【請求項12】 前記複数の電子放出素子が、マトリク
    ス状に配線されていることを特徴とする請求項11に記
    載の電子源の製造方法
  13. 【請求項13】 前記複数の電子放出素子が、梯子状に
    配線されていることを特徴とする請求項11に記載の電
    子源の製造方法
  14. 【請求項14】 基板上に、複数の電子放出素子が配列
    された電子源と、該電子源から放出される電子線の照射
    により画像を形成する画像形成部材とを有する画像形成
    装置の製造方法において、前記電子源が、請求項11〜
    13のいずれかに記載の方法にて製造されることを特徴
    とする画像形成装置の製造方法。
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