JP3289161B2 - 水硬性セメント組成物の打設方法 - Google Patents

水硬性セメント組成物の打設方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は,セメントの流動性を増
大させる水硬性セメント組成物の打設方法に関するもの
である
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】近年,
建築物の高層化及び地下空間の大深度化などが進むにつ
れて,流動性に優れ,かつ高い強度及び高い耐久性をも
ったコンクリートを与える水硬性セメント組成物が,次
世代コンクリート開発に資するものとして脚光を浴び,
その開発が活発に行なわれている。もし,高い減水領域
において,このような高流動性コンクリートを用いるこ
とができれば,高強度コンクリートとすることができる
ばかりでなく,複雑な配筋場所でもバイブレーターによ
る締め固めを不要にし,しかも確実に充填することがで
きる。さらに工数の削減による合理化,作業環境の改
善,品質向上等のメリットが期待できる。これまで,こ
のような高流動性コンクリートとして各種のタイプのも
のが開発されてきてはいるが,従来のものには依然とし
て下記のような問題点があり,充分に満足できるものが
得られていないのが現状である。
【0003】(1)凝結時間が遅くなる。 高強度,高耐久性コンクリート開発にあたっては高い減
水性を達成するために例えば,シリカフュームやフライ
アッシュ,その他の微粉末材料のような様々な混和材料
が用いられるが,このような混和材はかえってセメント
組成物の流動化を減少せしめるため,例えばオキシカル
ボン酸やリグニンスルホン酸塩等の流動化剤を添加する
ことが提案されている。しかし,これらの減水剤や流動
化剤を用いると,凝結時間が遅延せしめられ,初期強度
の低下ばかりでなく,形成コンクリートの充分な強度が
得られ難く,さらに脱型までに時間がかかる。またそれ
ら従来の減水剤や流動化剤は充分な流動性を付与してい
ない。 (2)結合材の量及び混和剤の添加量が大きい。 混和剤,例えば高性能減水剤,増粘剤等の添加量が比較
的多いなどのため,プラスチックシュリンケージが大き
く,表面に亀裂が生じ易いという問題があり,仕上げが
難しい。混和剤等として有機材料を用いているが,その
使用有機材料の安定性が不明であることから,コンクリ
ートに与える長年月にわたっての強度,耐火性能などの
影響が不明である。混練の時間を長くする必要があった
り,ポンプ圧送による輸送が困難となるなどのポンパピ
リティーが低下する。さらに気泡が残り易く,コンクリ
ートの強度上問題となり易い。 (3)材料費が高いなどの問題があり,コストのかかる
ものとなる。
【0004】
【課題を解決するための手段】本発明者等は,上記した
ような従来のセメント減水剤や流動化剤の有する問題点
を解決し,鋼管コンクリート造やRC造による超高層建
築あるいは超高深度地下建築物などを支える優れた次世
代コンクリートを与え,かつ安価で施工性の優れたセメ
ント用の混和剤を見出すべく,鋭意研究の結果,本発明
を完成するに至ったものである。すなわち本発明は,
和剤としてフッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤
とを用い,かつセメント組成物に対するそれらの添加順
序を,先ずフッ素系界面活性剤を添加混合し,その後炭
化水素系界面活性剤を添加混合するという水硬性セメン
ト組成物の打設方法であり,下記構成の水硬性セメント
組成物の打設方法である。 (1)セメント組成物に,フッ素系界面活性剤を添加後
混練し,次に炭化水素系界面活性剤を添加混合すること
を特徴とする水硬性セメント組成物の打設方法。 (2)フッ素系界面活性剤の配合量がセメントに対して
0.5重量%以下であることを特徴とする前記(1)に
記載の水硬性セメント組成物の打設方法。 (3)フッ素系界面活性剤の配合量が,セメントに対し
て0.5重量%以下で,炭化水素系界面活性剤の配合量
がセメントに対して1.0重量%以下であることを特徴
とする前記(1)又は(2)のいずれかに記載の水硬性
セメント組成物の打設方法。 (4)フッ素系界面活性剤が一般式 Rf−X’(上式
中,Rfはアルキル基のHの一部又は全部をFで置き換
えたフッ素化炭化水素基で,X’は界面活性剤において
知られた親水性付与基である)であることを特徴とする
前記(1)〜(3)のいずれか1項に記載の水硬性セメ
ント組成物の打設方法。 (5)炭化水素系界面活性剤がアリールスルホン酸ホル
ムアルデヒド縮合物又はその塩であることを特徴とする
前記(1)〜(4)のいずれか1項に記載の水硬性セメ
ント組成物の打設方法。 (6)水硬性セメント組成物が,セメント,骨材及び少
なくとも一種のセメント混和剤を含むものであることを
特徴とする前記(1)〜(5)のいずれか1項に 記載の
水硬性セメント組成物の打設方法。
【0005】本発明で用いられるフッ素系界面活性剤と
しては炭素に結合する水素原子が少なくとも1つのフッ
素原子で置換された有機基を有するものが挙げられる。
本発明で好ましく使用されるフッ素系界面活性剤として
は水の表面張力を25dyn/cm以下に下げるものが
挙げられ,さらに好ましくは20dyn/cm以下にま
で下げるものが挙げられ,より好ましくは15dyn/
cm以下にまで下げるものが挙げられ,特に好ましくは
15dyn/cmまで下げることができるものが挙げら
れるが,本発明の目的に沿う限りは特に限定されること
なく広くフッ素原子を有するものの中から選んで用いる
ことができる。本発明で好ましく使用されるフッ素系界
面活性剤は,低濃度で高い界面活性性能を有するもので
あり,特に好ましいものは極めて少ない使用量で,水硬
性セメント組成物に高い流動性を与えるものである。フ
ッ素系界面活性剤としては,例えばノニオン性のもので
は,次の一般式を有するものが挙げられる。
【0006】
【化1】
【0007】
【化2】
【0008】上式中Rfは,アルキル基のHの一部又は
全部をFで置き換えたフッ化炭化水素基で,好ましくは
炭素数4〜12個を有する基を示し,R及びR’は水素
又は低級アルキル基を示し,n,m,n’,m’及び
n”は0又は0より大きな整数を示す。但し,n及びm
の和又はn’及びm’の和は1以上の数である。Rf基
としては,例えばペルフルオロブチル,ペルフルオロペ
ンチル,ペルフルオロヘキシル,ペルフルオロヘプチ
ル,ペルフルオロオクチル,ペルフルオロノニル,ペル
フルオロデカニル,ペルフルオロウンデカニル,ペルフ
ルオロドデカニルなどが挙げられる。R及びR’基にお
ける低級アルキル基としては直鎖又は分岐鎖のものが挙
げられ,炭素原子1〜5個を有するものであってよく,
例えば,メチル,エチル,プロピル,イソプロピル,ブ
チルなどが挙げられる。また,アニオン性のものでは,
次の一般式を有するものが挙げられる。
【0009】
【化3】
【0010】
【化4】
【0011】上式中,Rf及びRf’は,同一又は異な
り,アルキル基のHの一部又は全部をFで置き換えたフ
ッ素化炭化水素基で,好ましくは炭素数4〜12個,よ
り好ましくは炭素数7〜10個を有する基を示し,Rは
水素又は低級アルキル基を示し,nは0又は0より大き
い整数を示し,Mは水素,アルカリ,アルカリ土類金
属,その他の金属,NH,アミン又はエタノールアミ
ンなどから誘導された基を示す。さらにカチオン性のも
のでは,次の一般式を有するものが挙げられる。
【0012】
【化5】
【0013】上式中,Rfはアルキル基のHの一部又は
全部をFで置き換えたフッ素化炭化水素基で,好ましく
は炭素数4〜12個,より好ましくは炭素数7〜10個
を有する基を示し,R,R’及びR”は同一又は異な
り,水素,低級アルキル,ヒドロキシ置換低級アルキレ
ンであり,あるいはR,R’及びR”のうちの任意の二
つは一緒になり,それらの結合する窒素原子と一緒にな
って複素環式基を形成していてよい。上式中,Xは,ハ
ロゲン又は硫酸,硝酸,リン酸,有機酸,スルホン酸か
ら誘導された陰イオン形成基である。上記ヒドロキシ置
換低級アルキレン基としては,例えばヒドロキシメチ
ル,ヒドロキシエチル,ヒドロキシプロピルなどが挙げ
られる。上記複素環式基としては,ピリジル基,ピペリ
ジン基,モルホリン基などが挙げられる。代表的なフッ
素系界面活性剤としては,例えば一般式
【0014】
【化6】
【0015】で示されるものが挙げられる。上記の親水
基としては,アニオン性のもの,カチオン性のもの,あ
るいはノニオン性のもの,さらには複数の親水基が存在
して,両性のものとなっているものが挙げられる。上記
親水基としては,例えばカルボン酸塩,硫酸エステル
塩,ポリエーテルサルフェート,亜リン酸塩,リン酸
塩,スルホン酸塩,リン酸エステル塩,ホスホン酸塩,
ポリエーテルリン酸塩,アミン塩,第4級アンモニウム
塩,ホスホニウム塩,チウロニウム塩,スルホニウム
塩,多価アルコール基,ポリアルキレングリコール基な
どの基を有するものが挙げられる。フッ素原子の結合す
る炭素原子鎖としては,本発明の目的に合致する限り特
に制限されないが,通常炭素数4〜15個,好ましくは
炭素数5〜12個,より好ましくは炭素数7〜10個で
ある。これらフッ素系界面活性剤は単一のフッ素系界面
活性剤を単独で配合して用いることもできるし,複数の
種類のフッ素系界面活性剤を二種以上混合して用いるこ
ともできる。
【0016】本発明で好ましく使用されるフッ素系界面
活性剤の具体例を挙げると,例えば商品名S−113
(旭硝子株式会社製)などのアニオン系フッ素系界面活
性剤,商品名S−121(旭硝子株式会社製)などのカ
チオン系フッ素系界面活性剤,商品名S−141(旭硝
子株式会社製)などのノニオン系フッ素系界面活性剤が
挙げられる。
【0017】本発明に従って,フッ素系界面活性剤をセ
メント組成物の流動性を増大させるセメント混和剤とし
て用いると,著しく低濃度で例えば市販のナフタリン系
高性能減水剤といった炭化水素系界面活性剤と比較して
低い濃度で,大きな流動性付与能を有している
【0018】本発明のセメントの流動性を増大させるセ
メント混和剤は,セメントに対して0.5重量%以下の
,さらに好ましくは,0.1重量%以下の量で用いら
れることができる。本発明のセメント混和剤は,非常に
少量でその有効性を発揮することができ,セメントに対
して0.05重量%以下,さらにより好ましくはセメン
トに対し約0.03重量%の量用いても好適な流動性
を付与することができる。本発明のセメント混和剤は,
水溶液としてあるいは粉末でセメント配合物へ添加され
ることができる。その添加は,セメントとのドライブレ
ンドとして,混練水に溶解することによって,又はセメ
ント配合物の混練を開始する時に行うことができる。本
発明のセメント混和剤は,セメントへの注水と同時若し
くは注水直後からセメント配合物に添加することも可能
である。
【0019】さらに,本発明のセメント混和剤は他の公
知のセメント添加剤あるいはセメント混和材との併用も
可能であり,このような公知のセメント添加剤等として
は,グラスファイバー,硬化促進剤,凝結遅延剤,分離
低減剤,ポリマー混和剤,着色剤,水溶性高分子,発泡
剤,消泡剤,セルフレベリング剤,高性能減水剤,AE
剤,AE減水剤,遅延剤,速強剤,促進剤,起泡剤,保
水剤,増粘剤,防水剤,防錆剤,防黴剤,ヒビワレ低減
剤,高分子エマルジョン,高炉スラッグ,フラッシュア
イ,シリカヒューム,膨張剤,除放性分散剤,除放性起
泡剤,分散剤などが挙げられる。
【0020】本発明に従えば,少なくとも一種のフッ素
系界面活性剤と,少なくとも一種の炭化水素系界面活性
剤とを組合わせて用いることにより,水硬性セメント組
成物に大きな流動性付与能を与えることができる。本発
明に従って,上記フッ素系界面活性剤と組合わせて用い
ることのできる炭化水素系界面活性剤としては,アリー
ルスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩,メラ
ミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩,リ
グニンスルホン酸又はその塩,ポリカルボン酸又はその
塩,ポリアルキル無水カルボン酸又はその塩などが挙げ
られる。炭化水素系界面活性剤としては,本発明の目的
を逸脱しない限り,従来知られた炭化水素系界面活性剤
のうちから選んで用いることができる。
【0021】このような界面活性剤としては,小田,寺
村「界面活性剤の合成とその応用」槙書店(1957
年)第473頁及びその他,西,今井,笠井「界面活性
剤便覧」産業図書(1960年)第771頁及びその
他,あるいは刈米「界面活性剤の性質と応用」幸書房
(1980年)第316頁及びその他に記載されたもの
のうちから選んで用いることができる。例えば,ナフタ
リンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩,ア
ルキルナフタリンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物,
ベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその
塩,アルキルベンゼンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合
物又はその塩,アルキルスルホン酸ホルムアルデヒド縮
合物又はその塩,アルキルカルボン酸ホルムアルデヒド
縮合物,アルキルポリカルボン酸ホルムアルデヒド縮合
物又はその塩などのナフタリンスルホン酸塩系,ポリカ
ルボン酸塩系として知られたものが挙げられる。
【0022】本発明に従って用いられる炭化水素系界面
活性剤の具体例を挙げると,例えば商品名マイティー1
50;花王株式会社製などが挙げられる。
【0023】本発明に従って,流動性を増大させるセメ
ント混和剤としてフッ素系界面活性剤と炭化水素系界面
活性剤とを併用して用いると,セメント減水剤や流動化
剤として用いる界面活性剤の量を大幅に減少せしめるこ
とができる。本発明に従ったこのような場合のフッ素系
界面活性剤の配合量は,セメントに対して0.5重量%
以下の量であることができ,更に好ましくはセメントに
対し,0.1重量%以下の量であってよく,特に好まし
くはセメントに対し,約0.05%程度あるいはそれ以
下の量であってよい。本発明に従えばこの併用の場合炭
化水素系界面活性剤の配合量を顕著に低減せしめること
が可能である。この場合の炭化水素系界面活性剤の配合
量はセメントに対し,1.0重量%以下であることがで
き,更にはその使用量を低減可能でセメントに対し0.
8重量%以下とすることができ,その使用量はセメント
に対し,0.6重量%以下にすることができる。炭化水
素系界面活性剤の配合量をセメントに対し約0.5重量
%の量としても良好な流動性が得られる。
【0024】こうした本発明の配合セメント混和剤は,
前述の本発明のセメント混和剤と同様にしてセメント配
合物へ添加されて用いられることができる。そして,こ
のセメント混和剤としてフッ素系界面活性剤と炭化水素
系界面活性剤とを組合わせて用いる場合に,先ずフッ素
系界面活性剤を添加して一旦混練した後に,炭化水素系
界面活性剤を添加するのである。このようにしてセメン
ト又はセメント配合物中にフッ素系界面活性剤を主成分
とするセメント混和剤を予め混合しておくか,あるいは
混練直前に配合した後,一旦混練処理後他方の炭化水素
系界面活性剤を主成分とするセメント減水剤や流動化剤
を配合する二段階添加処理を行うことにより,より好ま
しい作用効果,例えば流動性の増加を得ることができ
る。従って,本発明は上記二段階で異なった種類の界面
活性剤を添加する工程を含むことを特徴とする高性能セ
メント硬化物の製造法を提供する。この高性能セメント
硬化物の製造に当たっては,下記のセメントと所望の混
和材及び必要に応じたセメント添加剤を含む組成物に,
先ずフッ素系界面活性剤を加えた後混練し,次に炭化水
素系界面活性剤を加えることにより行う。
【0025】また,本発明は,上記セメント混和剤を配
合して製造されるセメント硬化物に関する。このような
セメント硬化物としては,通常のセメント,水,細骨
材,所望の混和材料を含むモルタル,さらに粗骨材を含
むコンクリート,例えば,フレッシュコンクリート,プ
レーンコンクリートに配合されたもの,AEコンクリー
ト,モルタル,セメントペースト,軽量コンクリート,
軽量骨材コンクリート,鉄筋コンクリート,鉄骨鉄筋コ
ンクリート,プレストレストコンクリート,などが挙げ
られる。本発明の上記セメント混和剤は,普通のポルト
ランドセメント,早強ポルトランドセメント,超早強ポ
ルトランドセメント,中よう熱ポルトランドセメント,
耐硫酸塩ポルトランドセメント,白色ポルトランドセメ
ント,高炉セメント,シリカセメント,フライアッシュ
セメントなどのセメント類を主成分とするものに配合さ
れて用いられることができる。
【0026】本発明に従えば配合される界面活性剤の量
を非常に少なくできる反面,高い流動性を与えることが
できる。従って,優れた減水性下で高性能セメント硬化
物を製造することができる。本発明に従えば,混和剤の
安定性についての問題も少なくかつ表面に亀裂を起こす
などの問題点のない高強度,高耐久性でかつ高い流動性
を持ち,特にそのワーカビリティーに優れた高性能セメ
ント硬化物を製造することが可能となり,鋼管コンクリ
ートへの適用,高密度配筋あるいは埋め込型枠への対応
が可能となる。さらに本発明によれば,その高性能セメ
ント硬化物をプレキャスト製品やPCのジョイント部に
適用でき,全自動化による型枠工事の改革あるいは圧入
工法(地階逆打ち)を適用することができる。
【0027】
【実施例】以下実施例及び比較例を挙げて本発明を具体
的に説明するが,本発明はこの実施例に示した具体例の
みに限定されるものではない。比較例 1: 練り混ぜ機に下記所定量の水と界面活性剤を入れる。次
に練り混ぜ機を低速すなわち自速度;毎分140回
転,公転速度;毎分約62回転で始動させ,パドルを回
転させながら30秒間に520gのセメントを入れる。
水/セメント比(W/C)は55%となるようにする。
練り混ぜを続けながら次の30秒間で1,040gの標
準砂を入れる。引き続いて60秒間練り混ぜた後,20
秒間休止する。休止の間にさじで練り鉢及びパドルに付
着したモルタルをかき落とす。さらに練り鉢の底のモル
タルをかき上げるよう2,3回かき混ぜる。休止が終わ
ったら再び始動させ120秒間練り混ぜる。練り混ぜが
終わったら練り鉢を練り混ぜ機から取り外し,さじで1
0回かき混ぜる。この練り混ぜたモルタルを乾燥した布
でよくぬぐったフローテーブル上の中央の位置に正しく
置いたフローコーンに2層に詰める。各層は,突き棒の
先端がその層の約1/2の深さまで入るよう,全面にわ
たって各々15回突き,最後に不足分を補い表面をなら
す。直ちにフローコーンを正しく上の方に取り去り,1
5秒間に15回の落下運動を与え,モルタルが拡がった
後の径を最大と認める方向と,これに直角な方向とで測
定し,フロー値を求めた。結果を図1に示す。
【0028】供試界面活性剤は,A;炭化水素系界面活
性剤(商品名MTー150花王社製で,B〜Dはフッ素
系界面活性剤で,B;アニオン型フッ素系界面活性剤
(商品名S−113,旭硝子社製),C;カチオン型フ
ッ素系界面活性剤(商品名S−121,旭硝子社製)及
びD;ノニオン型フッ素系界面活性剤(商品名S−14
1,旭硝子社製)である。
【0029】図1に示した結果から,フッ素系界面活性
剤は,セメントに対して0.5重量%以下の濃度で,炭
化水素系界面活性剤を使用した場合に比べて大きなフロ
ー値を与えた。これはフッ素系界面活性剤が水の表面張
力を大きく低下せしめ,水硬性セメント組成物中のセメ
ント粒子がその水により濡れ易くなって,これが水硬性
セメント組成物に高い流動性を与えていると考えられ
る。上記結果より,特にノニオン型フッ素系界面活性剤
を添加した場合その水硬性セメント組成物のフロー値
は,添加量の0.03重量%で,炭化水素系界面活性剤
を1.0重量%添加した場合のフロー値よりも大きな値
を示していることが認められる。つまり,このようなフ
ッ素系界面活性剤の使用により,炭化水素系界面活性剤
を使用する場合に比してその添加量を100分の3以下
にすることが可能で,大幅な流動化剤使用量の削減を達
成でき,優れた利点が得られる。
【0030】比較例2: フッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤を併用した
場合の水硬性セメント組成物の流動性付与に対する効果
を検討するため以下の処理を行った。水硬性セメント組
成物の流動性については,比較例1と同様にそのフロー
値を測定することにより検討を行った。比較例1での供
試界面活性剤に代えて,セメントに対して夫々0.05
重量%の下記フッ素系界面活性剤と,特定の量のA;炭
化水素系界面活性剤(商品名MT−150,花王社製)
を用いた以外は比較例1と同様にして水硬性セメント組
成物のフロー値を測定した。得られた結果を図2に示
す。
【0031】使用フッ素系界面活性剤は,E;カチオン
系界面活性剤(商品名S−121旭硝子社製),F;ア
ニオン系界面活性剤(商品名S−113旭硝子社製),
G;ノニオン系界面活性剤(商品名S−141,旭硝子
社製),H;オリゴマー混合物系界面活性剤(商品名S
−393,旭硝子社製)である。
【0032】図2に示した結果から,フッ素系界面活性
剤と炭化水素系界面活性剤とを水硬性セメント組成物に
配合した場合,それぞれの界面活性剤を単独で使用した
場合よりも水硬性セメント組成物のフロー値は大きくな
り,流動性はさらに向上していることが認められる。こ
れは水の表面張力が単独で使用した場合よりも両界面活
性剤の併用により相乗的作用効果によりさらに低下した
こと,及び炭化水素系界面活性剤がセメント粒子表面に
特異的に吸着し粒子の分散性を向上させていることに加
えて,フッ素系界面活性剤が水の表面張力を大きく低下
せしめてその分散性の良くなったセメント粒子表面を濡
らしてより一層の流動性を与えているものと考えられ
る。
【0033】実施例1: フッ素系界面活性剤を併用して用いる場合,その2種類
の界面活性剤をどのような順序で水硬性セメント組成物
に添加すべきかを検討した。その組成物への混合方法の
違いにより,流動性の向上に及ぼす影響をみた。水硬性
セメント組成物の流動性については,下記した点以外は
比較例1と同様にしてそのフロー値を測定することによ
り行った。比較例1の操作と違う点は,(I)2種類の
界面活性剤の同時添加では比較例1の操作での供試界面
活性剤に代えて,所定量のフッ素系界面活性剤と炭化水
素系界面活性剤とを同時に加え,(J)炭化水素系界面
活性剤後添加では,比較例1の操作での供試界面活性剤
添加時にその供試界面活性剤としてフッ素系界面活性剤
を所定量加え,次に60秒間の練り混ぜ後の20秒間の
休止の終了直前に,後添加として所定量の炭化水素系界
面活性剤を加え,以下120秒間練り混ぜるという比較
1の操作を行う。(K)フッ素系界面活性剤添加では
上記(J)の操作のうちのフッ素系界面活性剤と炭化水
素系界面活性剤とを置き換えて行う。得られた結果を図
3に示す。
【0034】フッ素系界面活性剤としては,(商品名S
−141,旭硝子社製)をセメントに対し0.03重量
%を用い,炭化水素系界面活性剤としては,(商品名M
T−150,花王社製)をセメントに対しそれぞれ0.
1重量%,0.5重量%及び1.0重量%用いた。図3
に示した結果から,炭化水素系界面活性剤後添加(J)
の場合は,予想外にも両種類の界面活性剤を同時に添加
(I)した場合及びフッ素系界面活性剤後添加(K)の
場合よりも水硬性セメント組成物のフロー値が大きく,
流動性が向上することが認められる。すなわち,この添
加順序によるセメントに対する炭化水素系界面活性剤の
添加量が0.1重量%の場合には,水硬性セメント組成
物のフロー値はさして増大していないが,添加量が0.
5重量%になるとフッ素系界面活性剤を同時添加した場
合及び後添加の場合に比較して50mmもの大差を示
し,さらに添加量が1.0重量%の場合には40mmの
差を示しており,まず水硬性セメント組成物にフッ素系
界面活性剤を添加混合した後,炭化水素系界面活性剤を
添加混合することにより,水硬性セメント組成物のフロ
ー値が顕著に増大し,水硬性セメント組成物の高流動性
化を図ることが可能となることが解る。
【0035】
【発明の効果】本発明により,高い減水性条件下での高
性能セメント硬化物の製造においても,水硬性セメント
組成物の高い流動性を保証できることから,そのワーカ
ビリティーが高まり,高密度配筋された型枠への適応性
に優れた水硬性セメント組成物が得られる。さらに本発
明により,配合される界面活性剤の量を大幅に減らすこ
とができ,セメント混和剤添加量が大きいことに伴う従
来の問題点を解消でき,高強度で高耐久性のセメント硬
化物を容易に得ることができる。このように本発明に従
えば,配合される界面活性剤の量を非常に少なくできる
反面,高い流動性を与えることができる。従って,優れ
た減水性下で高性能セメント硬化物を製造することがで
きる。本発明に従えば,混和剤の安定性についての問題
も少なくかつ表面に亀裂を起こすなどの問題点のない,
高強度,高耐久性でかつ高い流動性を持ち,そのワーカ
ビリティーに特に優れた高性能セメント硬化物を製造す
ることが可能となり,鋼管コンクリートへの適用,高密
度配筋あるいは埋め込型枠への対応が可能となる。さら
に本発明によれば,その高性能セメント硬化物をプレキ
ャスト製品やPCのジョイント部に適用でき,全自動化
による型枠工事の改革あるいは圧入工法(地階逆打ち)
が容易となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】各種界面活性剤の添加量と水硬性セメント組成
物のフロー値との関係を示す。
【図2】フッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤と
を併用した場合の水硬性セメント組成物のフロー値を示
す。
【図3】フッ素系界面活性剤と炭化水素系界面活性剤と
を併用する場合のそれらの添加順序の違いによる水硬性
セメント組成物のフロー値の違いを示す。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 24/00 - 24/42

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 セメント組成物に,フッ素系界面活性剤
    を添加後混練し,次に炭化水素系界面活性剤を添加混合
    することを特徴とする水硬性セメント組成物の打設方
    法。
  2. 【請求項2】 フッ素系界面活性剤の配合量がセメント
    に対して0.5重量%以下であることを特徴とする請求
    項1に記載の水硬性セメント組成物の打設方法。
  3. 【請求項3】 フッ素系界面活性剤の配合量が,セメン
    トに対して0.5重量%以下で,炭化水素系界面活性剤
    の配合量がセメントに対して1.0重量%以下であるこ
    とを特徴とする請求項1又は2のいずれかに記載の水硬
    性セメント組成物の打設方法。
  4. 【請求項4】 フッ素系界面活性剤が一般式 Rf−X’
    (上式中,Rfはアルキル基のHの一部又は全部をFで
    置き換えたフッ素化炭化水素基で,X’は界面活性剤に
    おいて知られた親水性付与基である)であることを特徴
    とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の水硬性セメ
    ント組成物の打設方法。
  5. 【請求項5】 炭化水素系界面活性剤がアリールスルホ
    ン酸ホルムアルデヒド縮合物又はその塩であることを特
    徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の水硬性セ
    メント組成物の打設方法。
  6. 【請求項6】 水硬性セメント組成物が,セメント,骨
    材及び少なくとも一種のセメント混和剤を含むものであ
    ることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載
    の水硬性セメント組成物の打設方法。
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