JP3289059B2 - 電気化学検出方法および検出装置 - Google Patents

電気化学検出方法および検出装置

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JP3289059B2
JP3289059B2 JP13248093A JP13248093A JP3289059B2 JP 3289059 B2 JP3289059 B2 JP 3289059B2 JP 13248093 A JP13248093 A JP 13248093A JP 13248093 A JP13248093 A JP 13248093A JP 3289059 B2 JP3289059 B2 JP 3289059B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、電気化学検出装置お
よびその方法に関し、特に、電気化学分析、化学センサ
ーあるいはバイオセンサー等に用いられる電気化学検出
方法および電気化学検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、水に溶けている物質の同定やそ
の量を測定する方法として電気化学検出方法がある。こ
の電気化学検出方法としては、測定対象の水溶液中を流
れる電流を測定して、その中に溶解している物質の定量
分析や定性分析を行なう方法である。この方法は、基本
的には、測定対象の水溶液中に浸漬した作用電極と参照
電極の間に電圧を印加し、この電圧印加によって作用電
極上で分析対象物質の酸化還元反応を発生させ、この反
応にともなって流れる電流値を測定することにより分析
を行う方法であり、感度が比較的高いため広く用いられ
ている。
【0003】この電流を測定する代表的な方法として
は、ボルタンメトリ法、ストリッピングボルタンメトリ
法(ストリッピング法)あるいはパルスボルタンメトリ
法などを挙げることができる。さらに具体的に説明する
と、ボルタンメトリ法は、参照電極の電位を基準として
被測定電解質溶液中に浸漬された作用電極に印加する電
位を変化させて掃引し、このときの電流変化を測定する
方法である。この方法を用いると、測定した電流値から
目的物質の濃度がわかり、しかも電位を掃引したときの
電流が流れ始める電位から物質の種類が分かるため、定
量分析と定性分析を同時に行なうことができる特徴があ
る。しかしながら、この方法では、電位を変化させて掃
引を行なうため、電位掃引速度に比例して流れる充電電
流や、分析対象の物質以外の共存種(溶存酸素、水素イ
オンなど)の電気化学反応や、電極表面自体の酸化状態
の変化がノイズとなって発生し、μM(モル/リット
ル)以下の目的物質の検出が難しいという欠点がある。
【0004】一方、ストリッピング法は、前電解とスト
リッピングの二つの段階に分けて分析を行う方法であ
る。例えば被測定電解質溶液中に溶解している金属イオ
ンの定量分析を行う場合、前電解では、参照電極の電位
を基準として、金属イオンの還元が充分に行われる一定
の電位を作用電極に与え、これにより作用電極上にその
金属を析出付着させる。そして、この後、ストリッピン
グにおいて、参照電極の電位を基準として、作用電極に
印加する電位を検出金属の酸化(溶解)が発生する電位
の方へ電位を掃引する。
【0005】この電位の掃引により、作用電極の電位が
金属の酸化還元電位となると、作用電極上に付着してい
た金属が急激に酸化して溶解し始める。このとき、作用
電極には大きな電流がながれ、この電流値を測定するこ
とにより被測定電解質溶液中に溶解していた金属の量を
分析することができる。このストリッピング法は、高い
検出感度を得ることができるため、主に水中や食品、体
液中の重金属イオンの微量分析(アノードストリッピン
グ法)に応用されている。この場合、ストリッピング法
で用いる作用電極としては、水銀電極,炭素電極、水銀
修飾炭素電極,金−アマルガム電極などが使用される。
【0006】例えば、金属イオンの分析に作用電極とし
て水銀電極を用いた場合、前電解で作用電極の電位を目
的金属イオンの還元電位以下に数分保持して金属イオン
の還元を行ない、還元された金属原子と作用電極の水銀
とでアマルガムを作らせることにより金属原子を作用電
極上に濃縮させる。その後、ストリッピングで作用電極
の電位を酸化側に向かって掃引すると、アマルガムの生
成により作用電極上に濃縮された金属が、その金属の酸
化還元電位において再び急激に酸化して溶解し始める。
このとき、作用電極に流れる電流値を測定することによ
り目的金属イオンの量が測定できる(例えば電気化学測
定法、藤島 昭、相澤 益男、井上 徹著、技報堂出
版、206頁)。この方法を使用して鉛、亜鉛、錫、イ
ンジウムなど金属イオンの分析でピコM領域の高感度が
得られている。
【0007】ストリッピング法としては、他に、塩素や
臭素、ヨウ素などの陰イオンを酸化反応により作用電極
上に濃縮し、その後、還元側への作用電極電位の電位掃
引によってストリッピングさせ分析する方法(カソード
ストリッピング法)や、作用電極表面を目的物質と相互
作用しやすい材料で修飾し、目的物質を作用電極上へ吸
着濃縮させた後、電位掃引により分析する方法(吸着ス
トリッピング法)などが報告されている。
【0008】他方、パルスボルタンメトリ法は、前述の
ボルタンメトリ法とは異なり、作用電極電位を直線的に
掃引するのではなく、例えば電位を数mVから数十mV
ずつ階段状にステップし、電位のステップ印加直後に流
れる充電電流が減衰してから、目的物質の電気化学反応
により作用電極に流れる電流を測定する方法である。こ
のパルスボルタンメトリ法は、前述したストリッピング
法で電極上へ濃縮できない物質の分析をボルタンメトリ
法より高感度で行いたいときに用いられる。パルスボル
タンメトリ法は、サブμMの感度が得られているが、p
Mの感度を有するストリッピング法に比較すると感度は
2桁以上小さい。
【0009】ところで、電解質溶液中で2つの近接した
作用電極に別々の電位を印加することで酸化還元種のレ
ドックスサイクルが非常に効率よく起こり、作用電極に
流れる電流を40倍以上に増幅することができること
は、すでに知られている(J.Electroana
l.Chem.,Preliminary note,
267巻、p291,1989年)。また、その2つの
作用電極にかみ合ったくし形電極を用いれば、くし形電
極の一方を掃引して他方の電極電位を固定した測定を行
なうことができるため、充電電流の影響が少ない測定が
可能となることも知られている。かみ合ったくし形電極
を用いることによって、金属錯体などの定量分析におけ
る検出下限が5〜10nMの検出感度が得られているこ
とも知られている(Anal.Chem.,62巻、4
47頁、1990年)。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】従来は、以上のように
なされていたので、酸化還元反応など電気化学反応の後
も溶液中に存在し、しかも電極上への析出・付着が困難
な物質は、上述したいずれの方法を用いても高感度に分
析をすることが困難であるという問題があった。まず、
前電解による作用電極上への目的物質の付着を行なわな
いボルタンメトリ測定では、パルスボルタンメトリ法を
用いても10nMから100nMの検出感度である。こ
こで、より感度の上げられる微小くし形電極を用いて
も、5〜10nM程度の検出感度しか得られない。これ
ではストリッピングボルタンメトリの感度には1〜2桁
及ばない。
【0011】また、従来のストリッピングボルタンメト
リーでは、被分析溶液中にイオンとして溶けている分析
対象の金属などを、電気化学反応により作用電極上に析
出(付着)させることにより分析をする。したがって、
酸化還元反応により溶解度が変化せず、酸化後または還
元後にもその前の状態と同じように溶液中に溶解したま
まで存在する物質は分析できない。例えば、ハイドロキ
ノン(p−ジオキシベンゼンC662 :hydroq
uinone)、カテコール(o−ジオキシベンゼンC
662 :catechol)、カテコールアミン(c
atechol amine)、NADH、ビタミンK
3(メナジオンC1182:vitamin K3 )な
どの電気化学的に可逆な生体物質、フェロセン(C10
10Fe:ferrocene)の誘導体やルテニウムヘ
キサミン、フェロシアナイド(フェロシアン化物:fe
rrocyanide)などの金属錯体などには、この
方法の適応が困難である。
【0012】一方、ストリッピング法でも、吸着ストリ
ッピング法のように目的物質と強い相互作用を有する材
料で作用電極を修飾し、目的物質との相互作用により作
用電極にその目的物質を吸着することも可能である。こ
の作用電極を修飾する材料(薄膜)を選ぶことにより有
機分子などの測定も行なわれている。しかしながら、目
的物質に応じて電極修飾を行なう材料をその都度選ぶ必
要があることや、相互作用が弱い場合は被測定電解質溶
液のイオン強度や、その溶液の僅かなpH変化によっ
て、作用電極への目的物質の吸着状態が変わるなど、測
定が難しいという問題があった。
【0013】この発明は、以上のような問題点を解消す
るためになされたものであり、電気化学反応後も溶液中
に存在して電極上への付着が困難な物質でも、高感度で
分析できるようにすることを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】この発明の電気化学検出
方法は、第1段階として、第2の作用電極とストリッピ
ング電極を接続した状態で、第1の作用電極に所定の電
位を与えて、ストリッピング電極に基準電解質溶液中の
電解質を付着させ、第2段階として、第2の作用電極と
ストリッピング電極との接続を切り放した後、ストリッ
ピング電極に電位を印加してこの電位を掃引し、第1段
階でストリッピング電極に付着した電解質がストリッピ
ング電極から離脱するときの電流値を測定し、測定した
電流の値により被測定電解質溶液に溶解している物質の
分析を行うことを特徴とする。
【0015】そして、この発明の電気化学検出装置は上
記のことを実現するために、第1の容器と第2の容器
と、第2の容器に入れられた基準電解質溶液と、第1の
容器に入れられる被測定電解質溶液中に浸漬されかつ隣
接配置された第1,第2の作用電極と、基準電解質溶液
中に入れられたストリッピング電極と、第1と第2の容
器との間に配置され、被測定電解質溶液と基準電解質溶
液とを電気的に接続するイオン伝導体とを有し、基準電
解質溶液はストリッピング電極に電位が与えられたとき
に電気化学反応による付着と溶解が可能な電解質を含む
ようにしている。さらに、第1段階では第2の作用電極
とストリッピング電極を接続した状態で第1の作用電極
に電位を与えてストリッピング電極に基準電解質中の電
解質を付着させる手段と、第2段階では第2の作用電極
とストリッピング電極の接続を切り放す手段と、電極の
切り放しの後、ストリッピング電極に電位を印加して掃
引する手段と、掃引によってストリッピング電極に付着
した電解質がストリッピング電極から離脱するときの電
流値を検出する手段とを備えたことを特徴とする。
【0016】
【作用】第2の作用電極とストリッピング電極が接続さ
れた第1の状態で、第1の作用電極に電位を印加するこ
とにより、ストリッピング電極と第2の作用電極、及
び、第1の作用電極との間に自己誘発レドックスサイク
ルが発生し、基準電解質溶液中の付着と溶解が可能な電
解質が、ストリッピング電極に付着する。次いで、第2
の状態において、ストリッピング電極に印加する電圧を
掃引する。その結果、ストリッピング電極の電位が、ス
トリッピング電極上に付着した電解質の酸化還元電位な
ると、この電解質が離脱して基準電解質溶液中に急速に
溶解し始め、このとき大きな電流が流れる。
【0017】
【実施例】以下この発明の1実施例を図を参照して説明
する。 (実施例1)図1は、この発明の1実施例である電気化
学検出装置の基本構成を示す構成図である。同図におい
て、1a,1bは微小間隙をおいて対向配置されたくし
歯状の作用電極、2はストリッピング電極、3は参照電
極、4は補助電極、5は分析対象の溶液が入れられた被
測定溶液容器、6は基準電解質溶液が入れられた補助溶
液容器、7は被測定溶液容器5と補助溶液容器6との間
に配置されて両容器に入れられた溶液を電気的に導通さ
せるイオン伝導体の機能を有する塩橋、8は塩橋7と各
容器との間に配置されたバイコールガラス(高珪酸ガラ
ス:Vycor glass)である。
【0018】本実施例では、上述した作用電極1a,1
b,参照電極3および補助電極4とは被測定溶液容器5
の中の被測定溶液中に浸されている。そして、ストリッ
ピング電極2は、印加される電位の制御により補助溶液
容器6中の電解質溶液に溶けている物質を着脱する電極
であり、参照電極3は電位の基準となり、補助電極4は
被測定溶液中に電流が支障無く流れるようにするための
電極である。
【0019】また、補助溶液容器6中の基準電解質溶液
は、被測定溶液で検出された電流によってストリッピン
グ電極2に付着,離脱可能な着脱物質を含んでいる。ま
た、ここで用いられる塩橋7は、ガラス細管の両端をバ
イコールガラス8で塞ぎ、内部に高濃度の電解質溶液を
満たした構成であり、バイコールガラス8を介して被測
定用溶液容器5と補助溶液容器6とを、それらの中の溶
液を混じり合わせずに電気的に接続する機能を有する。
【0020】一方、9は作用電極1a,参照電極3,お
よび補助電極4に電位を与える電源部であり、本実施例
では、ポテンシオスタット9aと、ポテンシャルスイー
パー9bとから構成されている。そして、10はレコー
ダー、11は2個の連動する切り替えスイッチ11a、
11bによって構成されたスイッチボックスである。こ
の、ポテンシオスタット9aの参照電極用端子T1は参
照電極3に接続され、ポテンシオスタット9aの補助電
極用端子T2は補助電極4に接続されている。また、ポ
テンシオスタット9aの作用電極用端子T3は、スイッ
チボックス11の切り替えスイッチ11aの共通端子に
接続されている。
【0021】ここで、スイッチボックス11の切り替え
スイッチ11aの共通端子に接続された可動部がA側に
倒されているときには、共通端子は作用電極1aに接続
され、共通端子がB側に倒されたときには、切り替えス
イッチ11bの共通端子およびストリッピング電極2に
接続される。また、切り替えスイッチ11bの共通端子
に接続された可動部がA側に倒されているときには、共
通端子は、作用電極1bに接続される。なお、切り替え
スイッチ11bのB側は解放されている。したがって、
このスイッチボックス11は、A側に倒した状態ではポ
テンシオスタット9aの作用電極用端子T3と作用電極
1aとが接続されるとともに、作用電極1bとストリッ
ピング電極2が接続される。一方、B側に倒した状態で
は、ポテンシオスタット9aの作用電極用端子T3とス
トリッピング電極2とが、直接に接続されることにな
る。
【0022】レコーダ10は、ポテンシオスタット9a
の作用電極用端子T3と参照電極用端子T1との間の電
圧(V)と、作用電極用端子T3に流れる電流(A)と
を検出できるようにポテンシオスタット9aに接続され
ている。また、ポテンシャルスイーパー9bはポテンシ
オスタット9aの参照電極用端子T1の電位を基準とし
て、作用電極用端子T3の電位を掃引するものである。
【0023】以下、上述した構成の電気化学検出装置の
動作を説明する。この実施例の電気化学装置の動作は、
基本的には、2段階に分けて行われる。第1の段階は、
前電解と呼び、ストリッピング電極2に補助溶液容器6
中の基準電解質溶液に溶解している電解質を付着させる
段階である。第2の段階は、これをストリッピングと呼
び、今度はストリッピング電極2上に付着した電解質を
脱離させ、基準電解質溶液中に溶解させる段階である。
このストリッピングのときにストリッピング電極に流れ
る電流を測定することにより、分析対象の溶液中に溶解
している目的物質の分析を行うことになる。
【0024】まず、前電解においては、スイッチボック
ス11の各切り替えスイッチ11a、11bの可動部
を、A側に倒した状態にする。この状態で、ポテンシオ
スタット9aを使って作用電極1aの電位を酸化あるい
は還元が十分行なわれる一定の電位に設定しておく。こ
の状態を必要な時間だけ続けることにより、作用電極1
a、1b間で酸化・還元反応が行われる。次に、ストリ
ッピングでは、スイッチボックス11の各切り替えスイ
ッチ11a、11bをB側に倒した状態で、ポテンシャ
ルスイーパー9bおよびポテンシオスタット9aでスト
リッピング電極2の電位を掃引する。
【0025】この掃引で電位が電解質の酸化還元電位と
なると、ストリッピング電極2に付着していた電解質が
脱離して基準電解質中に溶解するが、このとき大きな電
流がストリッピング電極2に流れる。この電流を検出し
てレコーダー10に記録することにより、レコーダー1
0にはストリッピング電極2上の付着物が一定の電位の
ときに離脱することによって流れるピークが観測され
る。このピークの大きさは付着物の量に比例する。
【0026】上述のことをもう少し具体的に説明する
と、前電解では、作用電極1aで酸化/還元により生成
された分析対象物の酸化体/還元体が、作用電極1bへ
と拡散していく。このことにより、作用電極1bにも分
析対象物質の酸化体/還元体が存在しているため、作用
電極1b上でそれらが還元/酸化反応を起こすことによ
って、この作用電極1bでも電子の消費/生産が行われ
る。そして、作用電極1bで生産された還元体/酸化体
は、作用電極1aへと拡散していき再び同じ反応を繰り
返すこととなる。すなわち、自己誘発レドックスサイク
ル現象が生じる。
【0027】このとき、塩橋7を介して電気的には接続
されている補助溶液容器6中の電解質溶液に浸漬してい
るストリッピング電極2では、電解質溶液に溶解してい
る負/正の電荷を持った着脱物質の析出による付着現象
が生じる。この着脱物質のストリッピング電極2への付
着の際に生産/消費される電子は、スイッチボックス1
1を介して接続された作用電極1bで消費/生産される
電荷量に対応する。上述した自己誘発レドックスサイク
ル現象は、作用電極1aに分析対象物質の酸化/還元が
起きる電位を印加しておく限り継続されるため、この
間、ストリッピング電極2には着脱物質が付着し続け
る。
【0028】発明者らは、ポテンシオスタット9aに接
続している作用電極1aと、ポテンシオスタット9aに
接続しない作用電極1bとを電解質中で隣接させ、その
作用電極1bをポテンシオスタット9aに接続した作用
電極1aから十分に離れたところで、被測定溶液に接触
させることにより、前述のレドックスサイクルと同様の
電流増幅効果が得られることを見いだした(例えばJ.
Electrochem.Soc.,138巻、No1
2、3549、1991年)。これが自己誘発レドック
スサイクルと呼ばれる現象であり、この自己誘発レドッ
クスサイクルの起きる状況を模式的に示したのが図10
の構成図である。
【0029】図10において、111は、ポテンシオス
タットに接続された第1の電極(図1の1aに対応)、
112はポテンシオスタットに接続されていない第2の
電極(図1の1bに対応)であり、第2の電極112の
一端は、第1の電極111に近接し、その他端は、第1
の電極111から離れている。この場合、第1の電極1
11と第2の電極112とは、還元体Rとその酸化体O
が溶解している溶液に接触している。
【0030】以下に、自己誘発レドックスサイクル現象
を図10を用いてさらに具体的に説明をする。まず、第
1の電極111に電位が印加されると、第1の電極11
1上の溶液では、電気化学反応により還元体Rが電子を
奪われ(酸化され)酸化体Oが生成する。これにより、
第2の電極112上では、第1の電極111付近のA点
とそこより離れたB点との近傍の溶液中の酸化体Oの濃
度が異なることになる。したがって、溶液中ではB点よ
りA点の方が酸化体Oの濃度が高い、すなわち平衡でな
い状態になる。
【0031】溶液中では、この状態を平行な状態に戻そ
うとして、酸化体Oが拡散して行くが、一方で、第2の
電極112内で電子がB点からA点へ移動していく。す
なわち、第2の電極112のB点では、還元体Rから電
子を奪い還元体Rを酸化してこれを酸化体Oとする。そ
して、その奪った電子が第2の電極112内を通じてA
点に移動し、ここでこの電子を供与することにより酸化
体Oを還元する。このことにより、第2の電極112の
A点とB点での酸化体Oの濃度不均衡を平衡な状態に戻
そうとする。このとき、第2の電極112内部には、電
子が移動したことにより起電力が生じたことになる。
【0032】一般に、溶液中のイオンの自然拡散による
移動に比較して、金属中の電子の移動は比較にならない
ほど速い。したがって、溶液中の酸化体Oの濃度不均衡
状態は、溶液中の拡散によるものより、上述した第2の
電極112上の電子の移動による、A点での還元による
酸化体Oの減少と、B点での酸化による酸化体Oの生成
とによる酸化体Oの濃度の平衡状態への変化の方が早く
行われ、これがほとんど支配的である。
【0033】ところで、第2の電極112のA点近傍で
は、電位が印加された第1の電極111により、還元体
Rが酸化されることにより酸化体Oが常に生成されてい
る。そして、前述したように、溶液中の酸化体Oの濃度
不均衡を無くすために、その酸化体Oが第2の電極11
2のA点ですぐに還元され還元体Rとなり、これが再び
すぐに第1の電極111で酸化されるという繰り返しで
あるレドックスサイクル113が発生する。図10に示
したレドックスサイクル113が、自己誘発レドックス
サイクルであり、これにより第1の電極111の電流が
増幅される。
【0034】以上示したように、自己誘発レドックスサ
イクルにより前電解において付着し続けてきた着脱物質
は、スイッチボックス11の各切り替えスイッチの可動
部をB側に倒して、ストリッピング電極2の電位を掃引
すること(ストリッピング)によって一気に離脱する。
この着脱物質がストリッピング電極2から一気に離脱す
る際にストリッピング電極2に流れるピーク電流を検出
することにより、分析対象物質の分析が可能となる。こ
のピーク電流は、ストリッピング電極2へ付着した着脱
物質の量に比例し、その付着した着脱物質の量は、被測
定溶液中の分析対象物質の濃度と前電解の時間との積に
比例するため、ピークの大きさから被測定溶液中の分析
対象物質の濃度を定量できる。
【0035】この発明では、被測定溶液中での自己誘発
レドックスサイクルと、補助溶液容器6中でのストリッ
ピング電極2への着脱物質の付着反応とを基本動作とし
ている。この、着脱物質の付着量は、前電解に費やした
時間と被測定溶液中の分析対象物質の濃度の積に比例す
る。したがって、分析対象物の濃度が低くても前電解の
時間を十分にとることによって大きな検出電流を得るこ
とができ、被測定溶液中に溶解している分析対象物質の
検出感度を著しく向上させることができる。
【0036】ここで用いる作用電極1a、1bの形態
は、くし形電極、微小対バンド電極、微小リングーディ
スク電極などの微小対電極であり、それらを作製するた
めの金属材料としては金、白金、銀、銅、パラジウム、
クロム、チタン、ステンレスなどを挙げることができ
る。また、p及びn型シリコン、p及びn型ゲルマニウ
ム、硫化カドミウム(CdS)、二酸化チタン(TiO
2 )、酸化亜鉛(ZnO)、ガリウムリン(GaP)、
ガリウム砒素(GaAs)、インジウムリン(In
P)、カドミウムセレン(CdSe)、カドミウムテル
ル(CdTe)、二硫化モリブデン(MoS2 )、セレ
ン化タングステン(WSe)、亜酸化銅(Cu2O )、
酸化スズ(SnO2)、酸化インジウム(In23)、
インジウムスズ酸化物などを作用電極の材料としてもよ
い。あるいは、半金属のグラッシーカーボン、導電性カ
ーボンペースト、導電性カーボン膜などを作用電極の材
料としてもよい。
【0037】ところで最近、生体内などの微小領域や微
量な溶液試料の分析を行なうために微小電極が広く研究
され、センサや生体細胞内微量物質の測定などへの応用
が試みられている。これらの微小電極の多くは、ガラス
細管中に白金、金などの金属線、炭素繊維などを封入し
て使用する。この微小電極の応答挙動は、電極形状に依
存しており、電極サイズが減少するにしたがって応答速
度、S/N比が向上し、原理的には高感度化ができるた
め種々の電極形状や微細化が検討されている。
【0038】しかし、電極半径を1μm程度にまで微細
化すると、検出できる電流値はnAオーダー以下に低下
し、測定時に外部ノイズに敏感になる等の理由で測定が
困難になる。そのため、微小電極の数を増やして(アレ
イ化して)、微小電極の高電流密度、充電電流に対する
高S/N比などの特徴を保持させたままで絶対電流値を
増加させることが提案されている。微小なアレイ電極を
作製する方法としては、最近リソグラフィ技術が多く用
いられており、任意の形状を持つ微小電極を多数再現性
良く基板上に作製することができる。
【0039】ここで、複数の作用電極をミクロンまたは
サブミクロンオーダーの微小間隙によって絶縁して作製
する方法としては、フォトリソグラフィとドライエッチ
ング法、あるいはリフトオフ法、あるいはイオンミリン
グ法などの微細加工技術を組み合わせて基板上に作製す
る方法がある。あるいは走査型トンネル顕微鏡(ST
M)を利用して導電体の上に針状の微小電極を接近させ
る方法、マイクロメータを用いるか、または、適当なス
ペーサーを利用して向かい合った2本の電極を接近させ
る方法などが挙げられる。
【0040】微小対電極の一方の電極と接続するストリ
ッピング電極の材料としては、以下に示すものが挙げら
れる。例えば、水銀滴下電極、水銀と金属(金など)の
アマルガム電極、水銀メッキカーボン電極、HOPG電
極、カーボンファイバー電極、グラッシーカーボン電
極、銀電極、カーボンペースト電極などである。また、
ナフィオン(Dupont社製)、ポリエステルスルホ
ン酸(コダック社製)、ポリビニルスルホン酸、ポリス
チレンスルホン酸などのアニオン性高分子修飾電極、ポ
リジメチルジアリルアンモニウムクロライド、ポリ4-
ビニルピリジンなどのカチオン性高分子、ポリピロー
ル、ポリチオフェン、ポリアニリン、ポリアズレンなど
の導電性高分子及びその誘導体の修飾電極などを挙げる
ことができる。
【0041】被測定溶液容器5と補助溶液容器6を結ぶ
塩橋7は、ガラスやプラスチックの細管に塩化カリウム
や硝酸カリウムなどの電解質を寒天に溶解させたイオン
導電体を入れたものや、ガラスやプラスチック管の両側
をイオン導電性で液絡量の小さい多孔質ガラス等で塞ぎ
内部に高濃度の電解質溶液を満たしたものや、セラミッ
クイオン導電体、及びその薄膜、高分子イオン導電体、
及びその薄膜などが挙げられる。
【0042】また、作用電極1bとストリッピング電極
2をスイッチボックス11を介して接続するための電子
伝導体としては、金属の導線や金属薄膜、導電性の炭素
棒やその薄膜、電子伝導性の高分子などが挙げられる。
なお、参照電極は、第1、第2容器あるいは塩橋のいず
れに場所に配置しても上述した実施例と同様の動作なら
びに効果が得られ、補助電極も、第1、第2容器あるい
は塩橋のいずれに場所に配置しても上述した実施例と同
様の動作ならびに効果が得られる。また、参照電極と補
助電極は、必ず同じ場所に配置するという必要性はな
い。
【0043】次に、以上のような構成によるこの発明の
電気化学検出装置によるルテニウムヘキサミンの微量分
析の実施例について説明する。 (実施例2)この実施例では、対になった作用電極1
a,1bはかみ合った金のくし形電極、ストリッピング
電極2は直径3mmの円柱形のグラッシーカーボン電極
で構成される。ここで、ルテニウムヘキサミンを使用し
たのは、溶液中で酸化体として存在し可逆性に優れてい
るためであり、また、従来のストリッピング法では測定
できない試料であるためである。
【0044】図2は、この実施例2の電気化学検出装置
の構成を示すブロック図、図3は、かみ合ったくし形の
作用電極1a、1b、参照電極3および補助電極4とを
同一の基板上に形成した状態を示す斜視図である。図2
において、101は、作用電極1a,1b、参照電極
3、補助電極4とが同一の基板上に一体に形成された検
出電極部であり、他は図1と同様の構成であり、詳細説
明は省略する。
【0045】また、図3において、検出電極部101
は、絶縁酸化膜46が形成されたシリコン基板45上
に、被測定溶液と接触する参照電極3,補助電極4,微
小なくし形の電極47を微小間隙を隔てて配置した作用
電極1a、1bとから構成されている。この検出電極部
101は、絶縁性酸化膜46上にレジストによる電極パ
ターン形成、スパッタリングによる電極材料の堆積、プ
ラズマCVDによる絶縁膜の堆積、反応性イオンエッチ
ングによる電極となる部分の露出など、公知のリソグラ
フィー技術を利用して作製する。
【0046】本実施例に用いた作用電極1a,1bのく
し形電極47は、電極幅2μm,ギャップ2μm,くし
の長さは2mm,くしの本数は750対によって構成さ
れ、電極材料としては、金/チタンを使用した。また、
参照電極3は、先端部に銀メッキを施して参照電極とし
ての機能を向上させた。そして、塩橋7としては、ガラ
ス細管の両端をバイコールガラスで塞ぎ、内部を飽和硝
酸カリウム溶液で満たしたものを用いた。
【0047】一方、検出電極部101の二つの作用電極
1a,1b、ストリッピング電極2、およびポテンシオ
スタット9a(扶桑製作所HECS972)の作用電極
用端子T3は、図1の基本構成と同様の機能を有するス
イッチボックス11に接続されている。そして、検出電
極部101の参照電極3および補助電極4は、ポテンシ
オスタット9aの参照電極用端子T1および補助電極用
端子T2に接続されている。
【0048】上述した構成の装置を使用して、ルテニウ
ムヘキサミンの微量分析を行う例を以下に示す。被測定
溶液はルテニウムヘキサミン1μMを含むpH4.0の
標準緩衝溶液(ナカライテスク社製)とし、補助溶液は
硝酸カリウム(KNO3 )0.1M、硝酸銀1μM含む
電解質溶液とした。前述したようにこの分析は、2段階
に分けて行なわれる。第1段階の前電解では、スイッチ
ボックス11の各切り替えスイッチ11a,11bをA
側の状態に倒しておき、検出電極部101の作用電極1
aの電位を−0.4Vに設定し、ルテニウムヘキサミン
の電解を10分間続けた。この間、補助溶液の撹拌を続
けた。前電解終了後ただちに撹拌をやめ、10秒間放置
し、溶液が静止するのを待った。その後、ただちに、次
に述べる第2段階の操作を行う。
【0049】第2段階のストリッピング操作では、スイ
ッチボックス11の切り替えスイッチ11a、11bを
B側に倒し、スキャンレート20mV/Secで−0.
4Vから0.5Vまでストリッピング電極2の電位を掃
引した。以上の操作を行なったところ、レコーダー10
には、電位が0.35Vの位置にストリッピング電極2
からの銀の離脱(溶出)に基づく7μAのピーク電流が
観測された。
【0050】このくし形の作用電極1aでルテニウムヘ
キサミンのサイクリックボルタングラムを行なっても、
溶存酸素の影響でルテニウムヘキサミンを観測すること
はできない。しかし、この形状の作用電極のこの場合に
おける検出電流の最大理論値は8nAと計算される。し
たがって、本発明によれば、およそ875倍に信号を増
幅することができことになり、より低濃度の試料の測定
が可能になる。同様な測定をルテニウムヘキサミンを含
有しない電解質で行なったところ、ピークは観測されな
かった。
【0051】引き続いて、同様な電極および測定系でル
テニウムヘキサミンの濃度を下げて微量分析を行なった
結果を、前述の結果(サンプル1)とともに(表1)に
示す。
【0052】
【表1】
【0053】前述のようにルテニウムヘキサミンの濃度
が高い場合(サンプル1)は、ブロードなストリッピン
グピークのために増幅率は低いが、濃度を低くするとシ
ャープなピークが得られるため、(表1)に示すように
増幅率が向上した。以上述べたように、本発明を用いれ
ば、従来のストリッピング法では検出できない低濃度の
分析対象物を極めて高感度に測定することが可能になっ
た。
【0054】(実施例3)この発明の第3の実施例とし
て、作用電極に微小孔対電極を、ストリッピング電極2
にグラッシーカーボン電極を用い、被測定溶液としてル
テニウムヘキサミンを使用したストリッピング微量分析
例について、図4の構成図に基づいて述べる。図4にお
いて、1cは図1の対になった作用電極1a,1bを図
5に示すような微小孔対電極構造とした検出電極、3a
はAg/AgClからなる参照電極、4aはPtからな
る補助電極であり、参照電極3aと補助電極4aは塩橋
7a内の電解質溶液中に配置されており、他は図1と同
様である。
【0055】また、図5は、検出電極1cの構成を部分
的に示している。図5において、51はAu/Tiから
なる表面電極、52はAu/Tiからなる微小孔電極
層、53は2酸化シリコンからなる絶縁膜,54は絶縁
性酸化膜、55はシリコン基板である。そして、この検
出電極1cは、たとえば、絶縁性酸化膜54が形成され
たシリコン基板55上に、スパッタリングにより微小孔
電極52層,絶縁膜53,表面電極51を順次積層し、
フォトリソグラフィ技術と反応性イオンエッチングなど
により微小孔56を開けることにより形成される。この
実施例では、検出電極1cは8mm角の大きさで、この
中に直径10μmの微小孔が約407500個開けられ
たものであった。
【0056】次に、図4に示される電気化学検出装置を
用いてルテニウムヘキサミンの微量分析を行った例を説
明する。なお、この実施例では、被測定溶液として、ル
テニウムヘキサミン1μMを含むpH4.0の標準緩衝
溶液とし、補助溶液として硝酸カリウム0.1M,硝酸
銀1μM含む電解質溶液を用いている。
【0057】まず、第1段階の前電解では、スイッチボ
ックス11の切り替えスイッチ11a,11bをA側の
状態に倒しておき、検出電極1cの微小電極52(図
5)の電位を−0.4Vに設定し、ルテニウムヘキサミ
ンの電解を5分間続けた。この間、補助溶液は撹拌し続
けた。前電解終了後ただちに撹拌を止め、10秒間放置
して溶液が静止するのを待ち、溶液が静止した後ただち
に以降の第2段階の操作に移った。第2段階のストリッ
ピング操作では、スイッチボックス11の切り替えスイ
ッチ11a、11bをB側に倒し、スキャンレート20
mV/Secで−0.4Vから0.5Vまでストリッピ
ング電極2の電位を掃引した。
【0058】以上の操作を行なったところ、レコーダー
10には0.35Vの位置にストリッピング電極2から
の銀の離脱(溶出)に基づく25.8μAのピーク電流
が観測された。この検出電極1cで、ルテニウムヘキサ
ミンのサイクリックボルタングラムを行なっても、溶存
酸素の影響でルテニウムヘキサミンを観測することはで
きなかったが、この形状の作用電極の理論値は200n
Aと計算される。したがって、本発明によって、およそ
128倍に信号を増幅することができ、より低濃度の試
料の測定が可能となる。同様な測定をルテニウムヘキサ
ミンを含有しない電解質で行なったところ、ピークは観
測されなかった。以上示したように、本発明によって、
微小対電極構造をした検出電極1cを用いた場合でも、
実施例2と同様に、低濃度の試料を極めて高感度に測定
することが可能になった。
【0059】(実施例4)この発明の第4の実施例とし
て、Au製のかみ合ったくし形電極とAu製のストリッ
ピング電極2を同一基板上に形成し、被測定溶液として
フェロシアン化カリウムのストリッピング微量分析を図
6の電気化学検出装置の構成図に基づいて述べる。な
お、フェロシアン化カリウムは、ルテニウムヘキサミン
と同様の理由で標準試料として適当である。
【0060】まず、実施例2と同様な方法で、図6に示
すように、微小なくし形電極47a、補助電極4、参照
電極3およびストリッピング電極2aを同一基板上に有
する検出電極部101aを作製した。かみ合ったくし形
電極47aは、くしの幅2μm、ギャップ2μm、くし
の長さ2mm、くしの本数750組で、ストリッピング
電極2aは2mm×3.5mmの長方形とした。また、
電極全体の大きさは1cm×3cmで、くし形電極47
a部分、ストリッピング電極2部分,各電極の端子部分
が図6のように配置されている。これらの電極は、たと
えばフォトリソグラフィ技術を使用して形成される。
【0061】そして、図6に示すように、中央が厚さ1
mmのバイコールガラス8で仕切られた上下に開放され
た1cm×2cm×1cmのパイレックスガラス(コー
ニング社製:Corning Glass Work
s)のセル64の下面に、この電極部101aをエポキ
シ系接着材で貼り付けて電気化学検出装置を作製した。
この場合、セル64は測定領域64aと基準領域64b
とに仕切られており、測定領域64a内には参照電極
3,補助電極4,くし形電極47aが配置され、基準領
域64b内にはストリッピング電極2aが配置されてい
る。また、測定領域64aと基準領域64bとの間の仕
切部材には、バイコールガラス8が配置され、両領域を
電気的に接続するように構成されている。なお、図6で
は示されていないが、各電極は、実施例1と同じよう
に、ポテンシオスタットおよび2個の切り替えスイッチ
を有するスイッチボックスに接続されている。
【0062】以上述べたように、電極部101a上にバ
イコールガラス8で仕切られた小さなセル64を取り付
け、このセル64を被測定溶液と補助溶液の容器とす
る、図6の装置を用いてフェロシアン化カリウムの微量
分析例を以下に説明する。ここで使用される被測定溶液
は、フェロシアン化カリウム1μMを含むpH4.0の
標準緩衝溶液とし、くし形電極47aを底部に有するセ
ル64a(図1の被測定溶液容器5に相当する)に満た
した。一方、補助溶液は、硝酸カリウム0.1M、硝酸
銀1μM含む電解質溶液とし、ストリッピング電極2を
底部に有するセル64b(図1の補助溶液容器6に相当
する)に満たした。
【0063】この実施例の操作は、前述した実施例と同
様に、2段階に分けて行なわれる。第1段階の前電解で
は、各切り替えスイッチをA側の状態に倒しておき、検
出電極のくし形電極47aの電位を−0.4Vに設定し
フェロシアン化カリウムの電解を10分間続けた。この
間、補助溶液を撹拌し続けた。そして、電解終了後ただ
ちに撹拌を止め、10秒間放置し、溶液が静止した後、
ただちに、第2段階の操作に移った。第2段階のストリ
ッピング操作では、各切り替えスイッチをB側に倒し、
スキャンレート20mV/Secで−0.4Vから0.
5Vまでストリッピング電極2の電位を掃引した。
【0064】以上の操作を行なったところ、レコーダー
には0.35Vの位置に銀の離脱に基づく0.1μAの
ピーク電流が観測された。このくし形電極47aの一方
の作用電極でフェロシアン化カリウムのサイクリックボ
ルタングラムを行なったところ2nAであった。したが
って、この実施例では、およそ50倍に信号を増幅する
ことができ、より低濃度の試料の測定が可能になった。
同様な測定をフェロシアン化カリウムを含有しない電解
質で行なったところピークは観測されなかった。
【0065】この実施例によっても溶液容量を小さくす
ることができ、被測定溶液が非常に微量で、かつ、低濃
度の試料でも極めて高感度に測定することが可能になっ
た。また、本実施例の構成をとることによって、電気化
学検出装置の寸法を非常に小さくすることができ、少量
の試料溶液でも測定が可能になるという利点を有する。
そして、同一基板上に電極部を一体化することによっ
て、2つの溶液容器を結ぶイオン伝導体(塩橋)の長さ
を短くすることができ、イオン伝導体の抵抗を小さくす
ることができる。その結果、検出感度の劣化を防ぐこと
ができる。
【0066】(実施例5)この発明の第5の実施例とし
て、カーボン/白金のかみ合ったくし形電極とカーボン
/白金のストリッピング電極2を同一基板上に形成し、
その電極を使用したルテニウムヘキサミンの微量分析例
を述べる。この電極は、カーボン電極の下部に金属膜を
有するため電極材質の全体的な導電性を高めることがで
きるので、電気化学測定に有利となる。また、カーボン
電極は電位窓が広いので、測定可能な試料を増やすこと
ができる。
【0067】ここでは始めに、図7の断面図を参照して
電極作製プロセスについて述べる。まず、図7(a)に
示すように、1μmの酸化膜72が形成されたシリコン
ウエハ71(大阪チタニウム社製)を、スパッタ装置
(アネルバ:SPF332H)内の所定位置に配置し、
圧力1.3Paとしたアルゴン雰囲気中で基板を回転さ
せながら、チタン:50W,1分、白金:70W,3.
5分間スパッタを行い、膜厚100nmの白金/チタン
薄膜73を形成した。
【0068】次に、1gの3,4,9,10−ペリレン
テトラカルボン酸無水物(PDTA)を80cm長の石
英管中の端に入れ、厚さ1cmの石英ガラスウールでカ
バーした。そして、その石英間の中央に、シリコン基板
71を入れ、0.1Torrまで真空度を上げた後、チ
ューブに2つのヒータを取付けた。ヒータによりシリコ
ン基板71の温度を1000℃に上げ、PDTAのボー
トの温度を450℃に上げ、PDTAを昇華させてシリ
コン基板71上に15分間カーボンの堆積を行なって、
シリコン基板1の白金/チタン薄膜73上にカーボン薄
膜74を形成した(図7(b))。
【0069】その後、石英管を電気炉から取り外して、
自然冷却し、真空状態を大気状態に開放してシリコン基
板71を取り出した。このカーボン薄膜74付きシリコ
ン基板71に、シリコン系のポジレジストを4000回
転,40秒間のスピンコートにより塗布し、90℃で9
0秒間プリベークした。そして、このレジスト付きウエ
ハーに、クロムによるパターンが形成されたフォトマス
クとステッパー(ニコン:NSR−1010G)とを用
いて露光現像し、図7(c)に示すように、レジストパ
ターン75を形成した。このとき、現像液にはNMD−
W(東京応化社製)を使用した。次いで、レジストパタ
ーン75を形成したシリコン基板71を、反応性イオン
エッチング装置(アネルバ:DEM451)中に入れ、
レジストパターン75で覆われていない部分のカーボン
膜をエッチングして、レジストパターン75をカーボン
薄膜74に転写した。
【0070】次に、下層の白金/チタン膜をアルゴンイ
オンミリング中でミリングし(図7(d))、その後レ
ジストパターン75を除去して、実施例4(図6)と同
様な形状のカーボン/金属の複合くし形電極を形成した
(図7(e))。このとき、図7には示されていない
が、その他のストリッピング電極なども同時に形成し
た。次に、図7(f)に示すように、この電極を形成し
たウエハーを、プラズマCVD装置(アプライドマテリ
アル:AMP3300)中に入れ、250nmの窒化シ
リコン膜76を形成した。
【0071】次に、このウエハー全面にレジスト(東京
応化社製TSR−V3)を4000回転,40秒間でス
ピンコートし、90℃で90秒間プリベークした後、ス
テッパーを用いてパターンを露光し、現像液NMD−W
で現像してパターン77を形成した(図7(g))。そ
して、パターン77を形成したシリコン基板71を反応
性イオンエッチング装置中に入れ、CF4ガスプラズマ
中でカーボン膜が露出するまで窒化シリコン膜76をエ
ッチングして、図7(h)に示すように、各電極間を絶
縁するようにした。
【0072】得られたくし形電極のくしの幅及び電極間
隔は、ともに2μm、くしの本数は50本とした。ま
た、ストリッピング電極は、2mm×3.5mmの長方
形とした。このくし形電極の参照電極は、ポテンシオス
タットに接続し、その接続のための銀線(参照電極)銀
ワイヤー(補助電極)と共に、70℃の銀めっき水溶液
に浸し、2μAの電流値で10秒間銀めっきを行なっ
た。このようにして得られた電極を実施例4と同様なセ
ルに貼り付けて電気化学検出装置を得た。
【0073】次に、この電極を用いたルテニウムヘキサ
ミンの微量分析例について述べる。この電気化学検出装
置の各電極を実施例1と同様なスイッチボックス11に
接続し、ポテンシオスタット9a、ポテンシャルスイー
パー9aと接続した。かみ合ったくし形電極のセルに
は、ルテニウムヘキサミン1μMを含むpH4.0の標
準緩衝溶液(ナカライテスク社製)を満たし、ストリッ
ピング電極のセルには硝酸カリウム0.1M、硝酸銀1
μM含む電解質溶液を満たした。
【0074】この実施例の操作もこれまでの実施例と同
様に2段階に分けて行なわれる。第1段階の前電解で
は、スイッチボックス11の各切り替えスイッチをA側
の状態に倒しておき(図1)、くし形電極の電位を−
0.4Vに設定しルテニウムヘキサミンの電解を10分
間続けた。この間、補助溶液を撹拌し続けた。電解終了
後ただちに撹拌を止め、10秒間放置して溶液が静止し
た後、ただちに第2段階の操作に移った。第2段階のス
トリッピング操作では、スイッチボックス11のスイッ
チをB側に倒し(図1)、スキャンレート20mV/S
ecで−0.4Vから0.5Vまでストリッピング電極
の電位を掃引した。
【0075】以上の操作を行なったところ、レコーダー
10には0.35Vの位置に銀の離脱に基づく0.48
μAのピーク電流が観測された。このくし形電極の一方
の作用電極で、ルテニウムヘキサミンのサイクリックボ
ルタングラムを行なっても、溶存酸素の影響でルテニウ
ムヘキサミンの還元波形を観測することはできなかった
が、この形状の作用電極の理論値は0.68nAと計算
される。すなわち、この実施例により、およそ700倍
に信号を増幅することができた。したがって、この実施
例を用いれば、前述した実施例と同様に、より低濃度の
試料の高感度測定が可能になる。同様な測定をルテニウ
ムヘキサミンを含有しない電解質で行なったところピー
クは観測されなかった。
【0076】(実施例6)本発明の第6の実施例とし
て、カーボン微小対のかみ合ったくし形電極とカーボン
のストリッピング電極を同一基板上に構成し、ストリッ
ピング電極を活性化処理した場合のルテニウムヘキサミ
ンの微量分析例を述べる。この実施例の電極は、図7に
おいて示される実施例5の電極とは異なり、図7のカー
ボン電極74の下部の金属膜73を除去した構造であ
る。このようにすると、溶液中で電極に高電位を印加し
ても電極材料の溶出がなく、電極表面を電解クリーニン
グで活性化することができ、着脱物質の付着,脱離量を
大きくすることができ、ストリッピング分析に有利であ
る。
【0077】はじめに、この実施例の電極の作製プロセ
スについて述べる。3,4,9,10−ペリレンテトラ
カルボン酸無水物(PDTA)1gを80cm長の石英
管中の端に入れ、厚さ1cmの石英ガラスのウールでカ
バーした。次に1μmの酸化膜付きシリコンウエハ−を
管の中央に入れ、0.1Torrまで真空度を上げた
後、チューブに2つのヒータを取付けた。次にヒータよ
り基板温度を1000℃に、PDTAのボートの温度を
450℃に上げ、PDTAを昇華させて基板上に15分
間堆積を行なってカーボン薄膜を得た。その後、石英管
を電気炉から取り外して自然冷却し、真空を破って基板
を取り出した。
【0078】次に、このカーボン膜付きシリコン基板に
シリコン系のポジレジストを4000回転、40秒間の
スピンコートで塗布し、90℃で90秒間プリベークし
た。このレジスト付きウエハーに、クロムマスクとステ
ッパーを用いて電極パターンを露光し、現像液NMD−
Wで現像してパターンを得た。このパターンを形成した
基板を反応性イオンエッチング装置中に入れ、パターン
で覆われていない部分のカーボン膜をエッチングして、
パターン形状をカーボン膜に転写した。次に、レジスト
のパターンを除去して、実施例4と同様な形状の電極部
の各電極パターンを得た。
【0079】続いて、このウエハー全面にレジスト(東
京応化社製TSR−V3)を4000回転,40秒間で
スピンコートし、90℃で90秒間プリベークした後、
ステッパーを用いて絶縁パターンを露光し、現像液NM
D−Wで現像してレジストパターンを作成した。そし
て、この基板を200℃で30分ベークし、レジストを
絶縁パターンとした。
【0080】得られたくし形電極のくしの幅及び電極間
隔はともに2μm、くしの本数は、50本とした。スト
リッピング電極は、2mm×3.5mmの長方形とし
た。この電極部の参照電極をポテンシオスタットに接続
し、その接続する銀線(参照電極)と補助電極となる銀
ワイヤーと共に、70℃の銀めっき水溶液に浸し、2μ
Aの電流値で10秒間銀めっきを行った。この電極を実
施例4と同様なセルに貼り付け電気化学検出装置を実現
した。
【0081】次に、この電極を用いたルテニウムヘキサ
ミンの微量分析例について述べる。はじめに、ストリッ
ピング電極の活性化処理について述べる。ストリッピン
グ用セルに0.1Mの硫酸を満たし、銀/塩化銀参照電
極と補助電極を取付け、1.8Vの電位で5分間ストリ
ッピング電極を活性化処理した。その後、この電気化学
検出装置の各電極を実施例1と同様にスイッチボックス
11に接続し、ポテンシオスタット9a、ポテンシャル
スイーパー9aと接続した。かみ合ったくし形電極のセ
ルにルテニウムヘキサミン1μMを含むpH4.0の標
準緩衝溶液(ナカライテスク社製)を、ストリッピング
電極のセルに硝酸カリウム0.1M、硝酸銀1μM含む
電解質溶液を満たした。
【0082】この発明の操作は上述した実施例と同様
に、2段階に分けて行なわれる。第1段階の前電解で
は、スイッチボックス11のスイッチをA側の状態に倒
しておき、検出電極のくし形電極の電位を−0.4Vに
設定しルテニウムヘキサミンの電解を10分間続けた。
この間、補助溶液を撹拌し続けた。電解終了後ただちに
撹拌を止め、10秒間放置して溶液が静止した後、ただ
ちに、第2段階の操作に移った。第2段階のストリッピ
ング操作では、スイッチボックス11のスイッチをB側
に倒し、スキャンレート20mV/Secで−0.4V
から0.5Vまでストリッピング電極の電位を掃引し
た。
【0083】以上の操作を行なったところ、レコーダー
10には0.35Vの位置に銀の離脱に基づく0.72
μAのピーク電流が観測された。ストリッピング電極を
活性化処理したことで、1.5倍大きなピークを検出で
きた。このくし形電極の一方の作用電極でルテニウムヘ
キサミンのサイクリックボルタングラムを行なっても、
溶存酸素の影響でルテニウムヘキサミンの還元波形を観
測することはできなかったが、この形状の作用電極の理
論値は0.68nAと計算される。したがって、この実
施例によれば、およそ1050倍に信号を増幅すること
ができ、より低濃度の試料の測定が可能になる。同様な
測定をルテニウムヘキサミンを含有しない電解質で行な
ったところピークは観測されなかった。以上説明したよ
うに、この実施例を用いることによって、低濃度の試料
を極めて高感度に測定することが可能になった。
【0084】(実施例7)この発明の第7の実施例とし
て、試料溶液中に投入することで簡便な測定を可能にす
る電気化学検出装置のセル構成を図8に基づいて述べ、
被測定溶液としてルテニウムヘキサミンのストリッピン
グ解析例について述べる。はじめに、試料溶液に投入し
て測定が可能な、図8の斜視図に示す、電気化学検出装
置のセル構成を述べる。
【0085】図8において、図1の基本構成のうち補助
溶液容器6に相当するものがセル86である。この実施
例では、試料溶液に投入して測定する型のため、被測定
容器に相当するものはない。実施例1と同様な方法でか
み合ったくし形電極、参照電極、補助電極を同一シリコ
ン基板上に形成して電極部81を構成した。次に、この
電極部81を直径7mmの円筒形のシリコンゴム栓82
のスリット部に挿入し、エポキシ系樹脂でシールした。
このシリコンゴム栓82の下部に電極部保護管83、上
部にリード線引き出し用のセル88をはめ込み、同時に
電極部81をコネクタ84を接続した。
【0086】また、リード引き出し用のセル88の上部
に外径8mm、長さ5mm、肉厚1mmのバイコールガ
ラス管85を配置し、さらにバイコールガラス管85の
上に外径8mm のストリッピング用のセル86を配置
した。リード引き出し用のセル88、バイコールガラス
管85、ストリッピング用のセル86は、お互いにテフ
ロン熱収縮チューブで接続して固定した。そして、スト
リッピング用のセル86に、硝酸カリウム0.1M、硝
酸銀1μM含む電解質溶液を満たし、最後に、グラッシ
ーカーボン電極(直径1mm、長さ2mm)87を装着
したリード引き出し用の穴の開いたシリコンゴム栓89
をストリッピング用のセル86の上部に取付けて、電気
化学検出装置を実現した。
【0087】次に、この電気化学検出装置をルテニウム
ヘキサミン溶液中に投入することによって行なった微量
分析例を述べる。ます、この実施例の電気化学検出装置
を実施例1と同様なスイッチボックス11を介してポテ
ンシオスタット9aに接続した。そして、ルテニウムヘ
キサミン1μMを含むpH4.0の標準緩衝溶液(ナカ
ライテスク社製)中に、この電気化学検出装置のバイコ
ールガラス管85が溶液に接するまで浸した。この電気
化学検出装置は、バイコールガラス管85以下の部分を
試料中に投入して使用し、最下部の電極部81の部分で
試料を検出し、セル86内部でストリッピングを行なう
ものであり、バイコールガラス管85がイオン導電体と
して機能するようにバイコールガラス管85部分まで試
料溶液中に浸漬している必要がある。
【0088】この装置の操作は、上述した実施例と同様
に、2段階に分けて行なわれる。第1段階の前電解で
は、スイッチボックス11(図1)の各切り替えスイッ
チをA側の状態に倒しておき、検出用の作用電極である
くし形電極の電位を−0.4Vに設定し、ルテニウムヘ
キサミンの電解を5分間続けた。電解終了後10秒間放
置し、その後ただちに、第2段階の操作に移った。第2
段階のストリッピング操作では、スイッチボックス11
のスイッチをB側に倒し、スキャンレート20mV/S
ecで−0.4Vから0.5Vまでストリッピング電極
(グラッシーカーボン電極87)の電位を掃引した。
【0089】以上の操作を行なったところ、レコーダー
10には0.35Vの位置に銀の離脱に基づく3.75
μAのピーク電流が観測された。このくし形電極の一方
の作用電極でルテニウムヘキサミンのサイクリックボル
タングラムを行なっても、溶存酸素の影響でルテニウム
ヘキサミンの還元波形を観測することはできなかった
が、この形状の作用電極の理論値は8nAと計算され
る。したがって、この実施例によれば、およそ470倍
に信号を増幅することができ、より低濃度の試料の高感
度測定が可能になる。同様な測定をルテニウムヘキサミ
ンを含有しない電解質で行なったところピークは観測さ
れなかった。
【0090】そして、試料溶液を替えて繰り返し測定を
行なう場合、実施例1のようなセル構成ではセル内の洗
浄が面倒であったが、この電気化学検出装置では、試料
溶液に触れるバイコールガラス管85以下の部分の洗浄
だけで済み、簡便で迅速な測定に適している。
【0091】(実施例8)この発明の第8の実施例とし
て、くし形電極の性能をより向上させた、段差型くし形
電極とグラッシーカーボン電極を組み合わせて構成した
電気化学検出装置を用いて行なったビタミンK3の微量
分析例について述べる。この実施例における段差形くし
形電極は、薄い絶縁膜を介して上下にくし形電極が配置
された構造をもち、ギャップは絶縁層の膜厚となる。こ
のため、実施例2の場合のくし形電極よりもギャップ間
を狭くすることが可能となり、微小電極としての性能が
向上する。なお、セル構成は実施例2と同じである。
【0092】はじめに、段差型のくし形電極の作製プロ
セスを図9の断面図を参照して説明する。まず、図9
(a)に示すように、シリコンウエハ91上に1μmの
酸化膜92を形成し、これをスパッタ方により、クロ
ム,白金を順次形成した。そして、圧力10-2Torr
のアルゴン雰囲気で、クロム:50W,10秒、白金:
70W,1分間スパッタを行い、膜厚100nmの白金
/クロム薄膜を形成した。
【0093】その後、このシリコンウエハ91上にフォ
トレジスト(シプレイ社製、MP1400−27)を
1.0μmの厚みに塗布した。このレジストを塗布した
シリコンウエハ91をホットプレート上で90℃,2分
の条件でベ−クし、その後、コンタクトマスクアライナ
−によりマスクパターンを15秒間密着露光した。露光
したシリコンウエハ91は、レジスト現像液(シプレ−
社製、MF319)を用いて、20℃,60秒間現像を
行い、水洗,乾燥してマスクパタ−ンをフォトレジスト
に転写した。次いで、このシリコンウエハ91をイオン
ミリング装置内の所定位置に取付け、アルゴンガス圧2
×10-4Torr、引きだし電圧550Vで白金/クロ
ムのイオンミリングを2分間行なった。この後、アッシ
ング装置(東京応化製、プラズマアッシャー)にてレジ
ストを除去して、図9(b)に示すように、下部電極9
3を得た。
【0094】次に、この上に再びスパッタ法により、全
面に膜厚100nmの二酸化シリコン膜94を形成した
(図9(c))。その後、再びクロム、白金を順次スパ
ッタして成膜し、膜厚100nmの白金/クロム薄膜を
形成した。その後、この上にフォトレジスト(シプレ−
社製AZ1400−27)を1μmの厚みに塗布し、位
置合わせを行ってくし形パタ−ンを密着露光した。レジ
ストを現像しパタンを形成した後、白金/クロムのイオ
ンミリングを行ってレジストパタンの形状を転写し、こ
の後、レジストをアッシングで剥離して上部くし形電極
95を作製した(図9(d))。
【0095】次に、再びスパッタ法により、基板全面に
100nmの二酸化シリコン膜96を形成し(図9
(e))、フォトレジスト(シプレ−社製AZ1400
−27)を1μmの厚みに塗布し、クロムマスクを用い
て上下にかみ合ったくし形電極部分(1mm×0.25
mm),パッド部分のみを露光,現像し、その部分を露
出させた形状のレジストパタン97を形成した(図9
(f))。
【0096】次に、そのシリコンウエハ91を反応性イ
オンエッチング装置中にいれ、CF4ガス、流量:25
SCCM、圧力:0.25Pa、150Wの条件でレジ
ストパタ−ンをマスクにして二酸化シリコン膜96のエ
ッチングを5分間行った。それにより、上部くし形電極
95と、その上部くし形電極95の間の下部電極93と
を露出させた(図9(g))。ところで、他の電極も上
部くし形電極95形成と同時に形成されるが、図9には
示されていない。この結果、上下にわかれた2つの作用
電極の間が非常に小さい、かみ合ったくし形電極が得ら
れた。
【0097】このくし形電極の参照電極をポテンシオス
タットに接続し、その銀線(参照電極)と補助電極とな
る銀ワイヤーと共に70℃の銀めっき水溶液に浸し、2
μAの電流値で10秒間銀めっきを行ない、参照電極を
形成した。作製したくし形電極の形状は、各くしの電極
幅1.5μm、くし形電極間の段差0.3μm、くしの
長さ2mm、くしの本数各200本づつであった。実施
例1と同様に、作製した電極部やグラッシーカーボン電
極(ストリッピング電極)をスイッチボックス11,ポ
テンシオスタット9aに接続した。
【0098】以上述べた実施例装置を用いてビタミンK
3の微量分析例を以下に示す。被測定溶液はビタミンK
3を1μMを含むpH4.0の標準緩衝溶液(ナカライ
テスク社製)とし、補助溶液は硝酸カリウム0.1M、
硝酸銀1μM含む電解質溶液とした。この装置の操作
は、上述した実施例と同様に、2段階に分けて行なわれ
る。
【0099】第1段階の前電解では、スイッチボックス
11(図1)のスイッチをA側の状態に倒しておき、電
極部のくし形作用電極の電位を−0.4Vに設定し、ビ
タミンK3の電解を10分間続けた。この間、補助溶液
を撹拌し続けた。電解終了後ただちに撹拌をやめ、10
秒間放置して溶液が静止するのを待ち、その後、ただち
に第2段階の操作に移った。第2段階のストリッピング
操作では、スイッチボックス11のスイッチをB側に倒
し、スキャンレート20mV/Secで−0.4Vから
0.5Vまでストリッピング電極2の電位を掃引した。
【0100】以上の操作を行なったところ、レコーダー
には0.35Vの位置に銀の離脱に基づく1.2μAの
ピーク電流が観測された。このくし形電極の一方の作用
電極で、ビタミンK3のサイクリックボルタングラムを
行なっても、溶液中の溶存酸素の影響でビタミンK3を
観測することはできなかったが、この形状の作用電極の
理論値は4nAと計算される。したがって、この実施例
によれば、およそ300倍に信号を増幅することがで
き、より低濃度の試料の高感度測定が可能になる。同様
な測定をビタミンK3を含有しない電解質で行なったと
ころ、ピークは観測されなかった。
【0101】(実施例9)この発明の第9の実施例にお
いては、検出用電極(作用電極)として、一対のバンド
電極を使用し、ストリッピング電極に金アマルガム電極
を使用し、被測定溶液としてルテニウムヘキサミンを使
用した場合のストリッピング微量分析例を述べる。ここ
で使用されるバンド電極は1本の線状の電極であり、こ
れを2本組み合わせて一対のバンド電極とする。この電
極は構造が非常に簡単なために作製が容易であり、実施
例2と同様な方法で酸化膜付きシリコンウエハー上に金
を堆積して作製した。電極のサイズは、共に幅2.3μ
m、長さ2mm、電極間隔は1μmとした。次に、スト
リッピング用の電極として、直径3mmの円形金電極の
表面に水銀を吸着させて、金アマルガム電極にした。セ
ルおよび測定器の構成は図1の基本構成と同様である。
【0102】以上に述べた構成の装置を用いて、ルテニ
ウムヘキサミンの微量分析を行う例を以下に説明する。
この場合、被測定溶液としてルテニウムヘキサミン1μ
Mを含むpH4.0の標準緩衝溶液、補助溶液として硝
酸カリウム0.1M,硝酸銀1μM含む電解質溶液を使
用した。この装置の操作も上述した実施例と同様に、2
段階に分けて行なわれる。第1段階の前電解では、検出
電極部のバンド電極の電位を−0.4Vに設定しルテニ
ウムヘキサミンの電解を10分間続けた。この間、補助
溶液を撹拌し続けた。電解終了後ただちに撹拌をやめ、
10秒間放置して溶液が静止するのを待ち、その後、た
だちに第2段階の操作に移った。第2段階のストリッピ
ング操作では、スキャンレート50mV/Secで−
0.4Vから0.5Vまでストリッピング電極2の電位
を掃引した。
【0103】以上の操作を行なったところ、レコーダー
には0.35Vの位置に銀の離脱に基づく0.43μA
のピーク電流が観測された。この実施例9のように、バ
ンド電極でルテニウムヘキサミンのサイクリックボルタ
ングラムを行なっても、被測定溶液中の溶存酸素の影響
でルテニウムヘキサミンを観測することはできなかった
が、この形状の作用電極の理論値は1.9nAと計算さ
れる。したがって、この実施例によれば、およそ230
倍に信号を増幅することが可能となり、より低濃度の試
料の測定が可能になる。同様な測定をルテニウムヘキサ
ミンを含有しない電解質で行なったところ、ピークは観
測されなかった。以上述べたように、この実施例のよう
な構造の簡単な対バンド電極を使用した場合において
も、低濃度の試料を極めて高感度に測定することが可能
になった。
【0104】(実施例10)この発明の第10の実施例
として、検出用電極(作用電極)に薄層形電極をストリ
ッピング電極に水銀修飾炭素電極を使用し、被測定溶液
にビタミンK3を使用したストリッピング微量分析例を
述べる。ここで使用される薄層形電極は二枚の平面形電
極を対向させた構造で以下の方法で作製した。
【0105】まず、縦3cm、横1cmのITO(イン
ジウム−スズ酸化物)コート石英ガラス上にレジストを
1μmの厚みにコートした。そして、このレジスト塗布
ITO基板をオーブン中に入れ、80℃、30分の条件
でベークした。その後、クロムマスクを用いてパラレル
ライトマスクアライナ(キヤノン製PLA−501F)
により20秒間密着露光した。露光したシリコンウエハ
をレジスト現像液(シプレー社製、AZデベロパー)の
中で20℃,120秒間現像を行ない、水洗,乾燥して
マスクパターンをレジストに転写した。
【0106】その後、レジストに覆われていない部分の
ITOを緩衝フッ酸溶液中でエッチング、除去した。エ
ッチング後、1mm角のITO電極パターン、及び導通
のためのリードのITOパターンが形成された。このI
TO付きガラス基板2枚を、ITO付きの面を対向させ
て間に12.5μmのテフロンスペーサーを挟んで薄層
形電極を作製した。
【0107】次にストリッピング電極は、グラッシーカ
ーボン電極に水銀を含浸させて、水銀修飾炭素電極とし
た。なお、セルおよび測定器の構成は図1の基本構成と
同じである。上述した構成の装置を使用して、ビタミン
K3の微量分析例を示す。被測定溶液はビタミンK31
μMを含むpH4.0の標準緩衝溶液とし、補助溶液は
硝酸カリウム0.1Mと硝酸銀1μMとを含む電解質溶
液とした。
【0108】この実施例の操作は、これまでの実施例と
同様に、2段階に分けて行なわれる。第1段階の前電解
では、薄層形電極の一方の平面電極の電位を−0.4V
に設定しビタミンK3の電解を10分間続けた。この
間、補助溶液を撹拌し続けた。電解終了後ただちに撹拌
をやめ、10秒間放置して溶液が静止するのを待ち、そ
の後、ただちに第2段階の操作に移った。第2段階のス
トリッピング操作では、スキャンレート20mV/Se
cで−0.4Vから0.5Vまでストリッピング電極2
の電位を掃引した。
【0109】以上の操作を行なったところ、レコーダー
には0.35Vの位置に115nAの銀の離脱に基づく
ピーク電流が観測された。この平面作用電極でビタミン
K3のサイクリックボルタングラムを行なっても溶存酸
素の影響でビタミンK3観測することはできなかった
が、この形状の作用電極の理論値は1.1nAと計算さ
れる。したがって、この実施例によれば、およそ105
倍に信号を増幅することができ、より低濃度の試料の測
定が可能になる。同様な測定をビタミンK3を含有しな
い電解質で行なったところ、ピークは観測されなかっ
た。以上述べたように、この実施例の薄層セル形電極に
おいても、低濃度の試料を極めて高感度に測定すること
が可能になった。
【0110】(実施例11)この発明の第11の実施例
として、かみ合ったくし形電極を10組同一基板上に作
製し10個のストリッピング電極と組み合わせ、被測定
溶液としてルテニウムヘキサミン、フェロシアン化カリ
ウムの混合溶液を使用して10組のストリッピング解析
を同時に行なった例を述べる。実施例1から9までは、
低濃度の被測定溶液の検出が目的であったが、本実施例
の目的は、溶液の同定に重要な酸化還元電位を低濃度な
被測定溶液から測定することである。
【0111】本実施例の構成は、基本的に実施例1の検
出電極部およびストリッピング電極2を10組並列に配
した構成となるが、それに対応して、ポテンシオスタッ
ト(扶桑製作所:HECS966)、レコーダー(グラ
フテック:WR8000)、およびスイッチボックスを
10チャンネル対応にしたものを使用した。検出電極部
のかみ合ったくし形電極は、くしの電極幅が2μm、ギ
ャップは2μm、くしの長さは2mm、くしの本数は7
5対とした。そして、このかみ合ったくし形電極10組
は同一基板上に配置されている。また、ストリッピング
用の電極は、10組の直径1mmのグラッシーカーボン
電極とした。
【0112】このような構成の装置をルテニウムヘキサ
ミン、フェロシアン化カリウムの混合溶液の微量分析に
適用した例を以下に説明する。ここで、被測定溶液は、
ルテニウムヘキサミン1μM,フェロシアン化カリウム
1μMを含むpH4.0の標準緩衝溶液、補助溶液は、
硝酸カリウム0.1M、硝酸銀1μM含む電解質溶液を
使用した。
【0113】この実施例の操作は、これまでの実施例と
同様に、2段階に分けて行なわれる。第1段階の前電解
では、10組ある各くし形電極の一方の作用電極の電位
を−0.4Vから0.5Vまで0.1V刻みで設定し、
被測定溶液の電解を10分間続け、この間補助溶液を撹
拌し続けた。電解終了後ただちに撹拌をやめ、10秒間
放置して溶液が静止するのを待ち、その後、ただちに第
2段階の操作に移った。第2段階のストリッピング操作
では、スキャンレート20mV/Secで−0.4Vか
ら0.5Vまで、10組のストリッピング電極2の電位
を同時に掃引した。
【0114】以上の操作を行なったところ、レコーダー
には0.35Vの位置に前電解の設定電位に応じて異な
った大きさのピーク波形を観測した。そこで、横軸に前
電解での設定電位、縦軸にピーク高さをとってグラフに
すると−0.3Vから立ち上がり、−0.1Vで飽和し
はじめる第1の階段波形と0.1Vから立ち上がり0.
3Vで飽和し始める第2の階段波形をもった波形が得ら
れた。同様にしてルテニウムヘキサミンを含まず、フェ
ロシアン化カリウム1μMのみ含む被測定溶液で測定し
たところ、第1の階段は消失し、第2の階段波形のみで
あった。
【0115】上記のことから、ルテニウムヘキサミンは
第1の階段波形に対応し、酸化還元電位が−0.2V程
度であり、フェロシアン化カリウムは第2の階段波形に
対応し、酸化還元電位が0.2V程度にあることが分か
った。また階段の高さは、ストリッピング測定の効果の
ために通常のサイクリックボルタングラムで得られるも
のより大きく増幅されるため、低濃度の試料の測定に適
している。以上述べたように、この実施例によれば、低
濃度の溶液の酸化還元電位を測定することが可能になっ
た。
【0116】(実施例12)この発明の第12の実施例
として、被測定溶液に水溶性フェロセンを使用して行な
ったカソーディックストリッピング微量分析例について
述べる。実施例2から11までの被測定溶液では、酸化
体の状態で溶液中に存在している。一方、水溶性フェロ
セン(フェロセニルメチルトリメチルアンモニウムブロ
マイド)は、還元体として存在しているために、測定方
法を変更する必要がある。検出用電極、セルおよび測定
器の構成は実施例1と同じである。また、ストリッピン
グ電極2は、直径3mmの円形銀電極を使用した。
【0117】このような構成の装置を用いて水溶性フェ
ロセンの微量分析を行う例を以下に説明する。被測定溶
液は、水溶性フェロセン1μMを含むpH7のリン酸緩
衝溶液とし、補助溶液は、硝酸カリウム0.1Mとヨウ
化カリウム1μMとを含む電解質溶液とした。このよう
な実施例の装置の操作は、これまでの実施例と同様に2
段階に分けて行なわれる。
【0118】第1段階の前電解では、検出用電極部の一
方のくし形電極の電位を0.55Vに設定し水溶性フェ
ロセンの電解を10分間続けた。この間、補助溶液を撹
拌し続けた。電解終了後ただちに撹拌をやめ、10秒間
放置して溶液が静止するのを待ち、溶液が静止したら、
ただちに第2段階の操作に移った。第2段階のストリッ
ピング操作では、検出用電極への電位の印加を停止し、
スキャンレート20mV/Secで0.2Vから−0.
4Vまでストリッピング電極2の電位を掃引した。
【0119】以上の操作を行なったところ、レコーダー
には−0.15Vの位置にヨウ素の離脱に基づく8μA
のピーク電流が観測された。このかみ合ったくし形電極
の一方の作用電極で、水溶性フェロセンのサイクリック
ボルタングラムを行なったところ、8nAのピーク電流
を得た。したがって、この実施例によれば、およそ10
00倍に信号を増幅することができ、より低濃度の試料
の測定が可能になる。同様な測定を水溶性フェロセンを
含有しない電解質で行なったところピークは観測されな
かった。以上述べたように、この実施例によれば、低濃
度で還元体として溶存している試料を極めて高感度に測
定することが可能になった。
【0120】(実施例13)この発明の第13の実施例
として、被測定溶液にジヒドロキシベンジルアミンを使
用した、カソーディックストリッピング微量分析例につ
いて述べる。ここで、ジヒドロキシベンジルアミンも実
施例12と同ように還元体として溶液中に存在してい
る。また、検出用電極,セルおよび測定器の構成は、実
施例1と同様であり、ストリッピング電極は、直径3m
mの円形銀電極を使用した。
【0121】このような構成の装置を用いて、ジヒドロ
キシベンジルアミンの微量分析を行う例を以下に説明す
る。この例で使用される被測定溶液は、ジヒドロキシベ
ンジルアミン1μMを含むpH7のリン酸緩衝溶液、補
助溶液は、硝酸カリウム0.1Mとヨウ化カリウム1μ
Mとを含む電解質溶液である。
【0122】この実施例においても、分析は2段階に分
けて行なわれる。第1段階の前電解では、検出用電極部
の一方のくし形電極の電位を0.45Vに設定しジヒド
ロキシベンジルアミンの電解を10分間続けた。この
間、補助溶液を撹拌し続けた。電解終了後ただちに撹拌
を止め、この状態を10秒間放置して溶液が静止するの
を待ち、静止したら、ただちに第2段階の操作に移っ
た。第2段階のストリッピング操作では、検出用電極部
の櫛形電極(作用電極)への電位の印加を停止し、スキ
ャンレート20mV/secで0.2Vから−0.4V
までストリッピング電極の電位を掃引した。
【0123】以上の操作を行ったところ、レコーダーに
は−0.15Vの位置に、ストリッピング電極からのヨ
ウ素の脱離に基づいた4μAのピーク電流が観測され
た。この、かみ合ったくし型電極の一方の作用電極で、
ジヒドロキシベンジルアミンのサイクリックボルタング
ラムを行ったところ、17nAのピーク電流を得た。す
なわち、この実施例によれば、おおよそ250倍に信号
を増幅することができた。したがって、より低濃度の試
料の測定が可能になる。ジヒドロキシベンジルアミンを
含有しない電解質で同様な測定を行ったところ、ピーク
は観測されなかった。以上述べたように、この実施例に
よれば、低濃度の試料を極めて高感度に測定することが
可能になった。
【0124】
【発明の効果】以上説明したように、この発明は、目的
物質が微小電極対上に形成する濃度勾配によって生じる
電位差を駆動源とし、微小電極上でのレドックスサイク
ルによって生じる観測電流を、ストリッピング電極上で
の金属などの析出に変換・蓄積するものであって、スト
リッピング時には析出した金属などを一度にイオン化す
ることによって流れる電流を観測するものである。した
がって、この発明によれば、積算された電流値を検出す
るため、高い増幅率を実現できるという効果がある。
【0125】また、従来のストリッピング法による分析
では、目的物質が金属やハロゲンイオンに限られており
適用範囲が非常に狭かったが、この発明を用いることに
より、可逆な活性種のストリッピング法による分析を行
うことができ、適用範囲を広げることが可能となる。さ
らに、通常のストリッピング特性を有するため、前電解
の時間やストリッピング時のスキャンレートを変えるこ
とにより、信号の増幅率を変えることができる。そし
て、リソグラフィー技術を用いて作製した電極を使用す
るため、任意のサイズ,形状,電極間距離の作用電極,
参照電極,補助電極を持つ、安価で均一な性能のセルを
大量に得ることができる。加えて、測定装置も簡便であ
るため、微量分析装置として極めて利用価値が高くな
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の1実施例である電気化学検出装置の
基本構成を示す構成図である
【図2】この発明の実施例2の電気化学検出装置の構成
を示すブロック図である。
【図3】図2のかみ合ったくし形の作用電極1a、1
b、参照電極3および補助電極4とを同一の基板上に形
成した状態を示す斜視図である。
【図4】この発明の第3の実施例である電気化学検出装
置の構成を示すブロック図である。
【図5】図4の作用電極1a,1bの構造を示す斜視図
である。
【図6】この発明の第4の実施例である電気化学検装置
の構成を示す斜視図である。
【図7】この発明の第5の実施例の電極作製プロセスを
示す断面図である。
【図8】この発明の第7の実施例である電気化学検出装
置のセル構成を示す構成図である。
【図9】この発明の第8の実施例における段差型のくし
形電極の作製プロセスを示す断面図である。
【図10】自己誘発レドックスサイクルの原理を示す説
明図である。
【符号の説明】
1a,1b 作用電極 2 ストリッピング電極 3 参照電極 4 補助電極 5 被測定溶液容器 6 補助溶液容器 7 塩橋 8 バイコールガラス 9 電源部 9a ポテンシオスタット 9b ポテンシャルスイーパー 10 レコーダー 11 スイッチボックス 11a,11b 切り替えスイッチ
フロントページの続き (72)発明者 森田 雅夫 東京都千代田区内幸町1丁目1番6号 日本電信電話株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−19758(JP,A) 特開 平3−179248(JP,A) 特開 平5−223772(JP,A) 特開 平1−301159(JP,A) 特開 昭52−38999(JP,A) Tsutomu Horiuchi, Osamu Niwa,Hisao T abei,Limiting Curr ent Enhancement by Self−Induced Redo x Cycling on a Mic ro−Macro Twin Elec trode,J.Electroche m.Soc,米国,Vol.138 No 12,3549−3553 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 27/48 301 G01N 27/30 JICSTファイル(JOIS)

Claims (13)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 第1の容器と第2の容器と、 前記第2の容器に入れられた基準電解質溶液と、 前記第1の容器に入れられる被測定電解質溶液中に浸漬
    されかつ隣接配置された第1,第2の作用電極と、 前記基準電解質溶液中に入れられたストリッピング電極
    と、 前記第1と第2の容器との間に配置され、前記被測定電
    解質溶液と基準電解質溶液とを電気的に接続するイオン
    伝導体とを備え、 前記基準電解質溶液は、前記ストリッピング電極に電位
    が与えられたときに電気化学反応による付着と溶解が可
    能な電解質を含んでおり、 第1段階として、前記第2の作用電極とストリッピング
    電極を接続した状態で、前記第1の作用電極に所定の電
    位を与えて、前記ストリッピング電極に前記基準電解質
    溶液中の電解質を付着させ、 第2段階として、前記第2の作用電極と前記ストリッピ
    ング電極との接続を切り放した後、前記ストリッピング
    電極に電位を印加してこの電位を掃引し、前記第1段階
    で前記ストリッピング電極に付着した電解質が前記スト
    リッピング電極から離脱するときの電流値を測定し、測
    定した前記電流の値により前記被測定電解質溶液に溶解
    している物質の分析を行うことを特徴とする電気化学検
    出方法。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の電気化学検出方法におい
    て、 前記第1の容器の被測定電解液に、参照電極および補助
    電極を有することを特徴とする電気化学検出方法。
  3. 【請求項3】 請求項1記載の電気化学検出方法におい
    て、 前記イオン伝導体は、塩橋であることを特徴とする電気
    化学検出方法。
  4. 【請求項4】 請求項3記載の電気化学検出方法におい
    て、 前記塩橋内の電解質溶液に、参照電極および補助電極を
    有することを特徴とする電気化学検出方法。
  5. 【請求項5】 請求項1記載の電気化学検出方法におい
    て、 参照電極および補助電極を有し、これらの電極は、前記
    第1の容器、前記第2の容器、およびこれらの間に配置
    される塩橋のいずれかに設置されることを特徴とする電
    気化学検出方法。
  6. 【請求項6】 第1の容器と第2の容器と、 前記第2の容器に入れられた基準電解質溶液と、 前記第1の容器に入れられる被測定電解質溶液中に浸漬
    され、かつ隣接配置された第1,第2の作用電極と、 前記基準電解質溶液中に入れられたストリッピング電極
    と、 前記第1と第2の容器との間に配置され、前記被測定電
    解質溶液と基準電解質溶液とを電気的に接続するイオン
    伝導体とを備え、 前記基準電解質溶液は、前記ストリッピング電極に電位
    が与えられたときに電気化学反応による付着と溶解が可
    能な電解質を含んでおり、 さらに、第1段階で、前記第2の作用電極と前記ストリ
    ッピング電極を接続した状態で前記第1の作用電極に電
    位を与えて前記ストリッピング電極に前記基準電解質中
    の電解質を付着させる手段と、 第2段階で、前記第2の作用電極と前記ストリッピング
    電極の接続を切り放す手段と、 前記電極の切り放しの後ストリッピング電極に電位を印
    加して掃引する手段と、 掃引によって前記ストリッピング電極に付着した電解質
    がストリッピング電極から離脱するときの電流値を検出
    する手段とを備えたことを特徴とする電気化学検出装
    置。
  7. 【請求項7】 請求項6記載の電気化学検出装置におい
    て、 前記第1の容器の被測定電解液に入れられた参照電極お
    よび補助電極を有することを特徴とする電気化学検出装
    置。
  8. 【請求項8】 請求項6記載の電気化学検出装置におい
    て、 前記イオン伝導体は、塩橋であることを特徴とする電気
    化学検出装置。
  9. 【請求項9】 請求項8記載の電気化学検出装置におい
    て、 前記塩橋内の電解質溶液に入れられた参照電極および補
    助電極を有することを特徴とする電気化学検出装置。
  10. 【請求項10】 請求項6記載の電気化学検出装置にお
    いて、 前記第1,第2の作用電極とストリッピング電極との組
    み合わせを2組以上有することを特徴とする電気化学検
    出装置。
  11. 【請求項11】 請求項6記載の電気化学検出装置にお
    いて、 参照電極および補助電極を有し、これらの電極は、前記
    第1の容器、前記第2の容器、およびこれらの間に配置
    される塩橋のいずれかに設置されることを特徴とする電
    気化学検出装置。
  12. 【請求項12】 請求項6記載の電気化学検出装置にお
    いて、 前記第1と第2の容器は、 絶縁基板と、 この基板上に固着される測定領域用孔と基準領域用孔と
    を有するセルとを備え、 前記イオン伝導体は、前記セルの測定領域用孔と基準領
    域用孔との間に配置されることを特徴とする電気化学検
    出装置。
  13. 【請求項13】 請求項12記載の電気化学検装置にお
    いて、 各電極は、前記基板上に形成されていることを特徴とす
    る電気化学検出装置。
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