JP3283936B2 - 機械構造用鋼およびその製造方法 - Google Patents

機械構造用鋼およびその製造方法

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JP3283936B2
JP3283936B2 JP33722292A JP33722292A JP3283936B2 JP 3283936 B2 JP3283936 B2 JP 3283936B2 JP 33722292 A JP33722292 A JP 33722292A JP 33722292 A JP33722292 A JP 33722292A JP 3283936 B2 JP3283936 B2 JP 3283936B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、自動車、産業機械等
の機械部品の素材として用いられる機械構造用鋼および
その製造方法に関し、とくに快削性、さらには窒化処理
を施した場合における強度および潤滑性の向上を図ろう
とするものである。
【0002】
【従来の技術】機械構造用鋼の中で、とくに被削性が要
求される鋼材については、従来、Pb,Te, Bi, Pおよび
S等を添加させて、その被削性の向上が図られてきた。
とくにPbは、その添加によって鋼材の機械的性質の劣化
を伴うことなく、またTeやBi等に比較して経済的なこと
から、快削性元素として多用されている。しかし、Pbは
人体に極めて有害であることから、鋼材の製造工程のみ
ならず、それを用いた機械部品の製造工程において、大
がかりな排気設備を必要とし、また鋼材のリサイクルの
上からも問題があった。このため従来から、Pbを添加せ
ずに、Pb添加鋼と同等程度の被削性を有する鋼材の開発
が望まれていた。
【0003】上記の要請に応えるものとして、例えば特
開昭49-67816号、特開昭49−103817号および特開昭50-9
6416号各公報では、鋼中のCを黒鉛として存在させ、こ
の黒鉛の切欠潤滑効果を利用することによって、Pbを用
いることなしに被削性を改善する方法が開示されてい
る。しかしこれらの方法はいずれも、鋼中のCを黒鉛化
する必要上、その前処理として焼入れが不可欠であり、
必ずしも経済的な方法とは言えなかった。
【0004】また近年、環境問題の観点から、自動車か
ら排出される CO2ガス量の低減が必要となり、燃費の向
上すなわち自動車の軽量化が模索されている。それに伴
い、機械部品に用いられる鋼材に対して一層の高強度化
が要求されている。さらに自動車、産業機械等の機械部
品において、接合部に生じるフリクションロスは、自動
車、産業機械のエネルギー損失の大きな部分を占めてい
る。従ってこれら機械部品の潤滑性を高めることができ
れば、燃費向上への寄与は極めて大といえる。ここに機
械部品の潤滑性は、外部からの強制潤滑という方法もあ
るが、材料自身が潤滑性を保有している、すなわち自己
潤滑性を有していればとりわけ有利である。
【0005】材料自身に自己潤滑性を付与するという観
点からは、鋼中Cの黒鉛化が考えられる。しかし鋼中C
を黒鉛化した場合、鋼材の強度が大幅に低下することか
ら、たとえ潤滑性は付与できたとしても、機械部品とし
て必要な強度は得ることは難しい。この点、特開平1−
132739号公報には、鋼中Cを黒鉛化し、低強度として良
加工性を得たのち、焼き入れ−焼き戻し処理を施すこと
によって強度を得る方法が開示されている。しかしなが
ら上記の方法のように、鋼材の強度の向上を図るべく焼
き入れ−焼き戻し処理を施すと、鋼中の黒鉛が固溶し消
失してしまうため、鋼材の強度向上は達成できたとして
も、鋼に自己潤滑性を保有させることはできない。
【0006】ところで表面を窒化すると、より硬さの高
い表層部が得られ、耐摩耗性、疲れ強さ等が向上するこ
とから、かかる表面窒化処理が機械部品の分野において
多用されている。従って鋼材の強度向上手段として、か
かる窒化処理を黒鉛化した鋼材に適用することが考えら
れるが、黒鉛化状態で窒化処理を施した場合には通常、
有効硬化深さが浅く、一方窒化処理の影響を受けない部
分では強度が低すぎるため、全体としての強度上昇は十
分とはいえない。なお窒化処理に適した鋼として、JIS
G 4202に窒化用鋼が規定されている。しかしこの窒化用
鋼は、CrおよびAlの含有量を高めた鋼であることから、
窒化により高強度は達成されるものの、これらの化学組
成では、鋼中のCを黒鉛化することは難しいという問題
がある。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】この発明は、上記の諸
問題を有利に克服するもので、被削性に優れ、しかも窒
化処理を施した場合においても高強度と自己潤滑性とを
兼ね備える機械構造用鋼を、その有利な製造方法と共に
提案することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】この発明は、上記の課題
を解決すべく、黒鉛化と表面窒化処理とに適した化学組
成に関し、鋭意検討を重ねた末に開発されたものであ
る。すなわち、この発明の要旨構成は次のとおりであ
る。
【0009】1.C:0.1 〜1.5 wt%(以下単に%で示
す)、 Si:0.5 〜2.0 %、 Mn:0.1 〜2.0 %、 P:0.020 %以下、 S:0.001 〜0.03%、 V:0.01〜0.5 %、 Al:0.01〜0.1 %、 N:0.0015〜0.0150%、B:0.0005〜0.0050%、 O:0.0020%以下 を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になり、
しかも金属組織中に黒鉛相を有することを特徴とする機
械構造用鋼(第1発明)。
【0010】2.第1発明において、さらに Cu:0.10〜1.0 %、 Ni:0.10〜2.0 % のうちから選んだ一種または二種を含有してなる機械構
造用鋼(第2発明)。
【0011】3.第1発明において、さらに Cr:0.05〜1.0 %、 Mo:0.05〜0.5 % のうちから選んだ一種または二種を含有してなる機械構
造用鋼(第3発明)。
【0012】4.第1発明において、さらに Nb:0.005 〜0.05%、 Ti:0.005 〜0.05% のうちから選んだ一種または二種を含有してなる機械構
造用鋼(第4発明)。
【0013】5.第1発明において、さらに Cu:0.10〜1.0 %、 Ni:0.10〜2.0 % のうちから選んだ一種または二種と、 Cr:0.05〜1.0 %、 Mo:0.05〜0.5 % のうちから選んだ一種または二種とを含有してなる機械
構造用鋼(第5発明)。
【0014】6.第1発明において、さらに Cu:0.10〜1.0 %、 Ni:0.10〜2.0 % のうちから選んだ一種または二種と、 Nb:0.005 〜0.05%、 Ti:0.005 〜0.05% のうちから選んだ一種または二種とを含有してなる機械
構造用鋼(第6発明)。
【0015】7.第1発明において、さらに Cr:0.05〜1.0 %、 Mo:0.05〜0.5 % のうちから選んだ一種または二種と、 Nb:0.005 〜0.05%、 Ti:0.005 〜0.05% のうちから選んだ一種または二種とを含有してなる機械
構造用鋼(第7発明)。
【0016】8.第1発明において、さらに Cu:0.10〜1.0 %、 Ni:0.10〜2.0 % のうちから選んだ一種または二種と、 Cr:0.05〜1.0 %、 Mo:0.05〜0.5 % のうちから選んだ一種または二種と、 Nb:0.005 〜0.05%、 Ti:0.005 〜0.05% のうちから選んだ一種または二種とを含有してなる機械
構造用鋼(第8発明)。
【0017】9.C:0.1 〜1.5 %、 Si:0.5 〜2.
0 %、 Mn:0.1 〜2.0 %、 P:0.020 %以下、 S:0.001 〜0.03%、 V:0.01〜0.5 %、 Al:0.01〜0.1 %、 N:0.0015〜0.0150%、 B:0.0005〜0.0050%、O:0.0020%以下 を含有する組成になる鋼を、熱間圧延したのち、 Ar3
以下の温度に加熱保持することを特徴とする機械構造用
鋼の製造方法(第9発明)。
【0018】この発明に従い、Al,B,N及びVを複合
添加すると、熱間圧延後に焼入れを必要とせず、黒鉛化
処理のみで効率良く黒鉛化が促進されることが判明し
た。鋼中のCは、通常、熱間圧延ままではセメンタイト
として存在しているが、黒鉛化処理によりこれが黒鉛に
変化する。このセメンタイトの黒鉛化の過程は、発明者
らの検討によれば、セメンタイトの分解、フェライト中
のC原子の拡散、黒鉛の結晶化および分解したセメンタ
イトを構成していたFe原子の拡散の過程よりなることが
判明した。またこの過程において、特に黒鉛化のサイト
を多数形成しておけば、黒鉛化は極めて迅速に進行する
ことが見出された。そして、この黒鉛の結晶化のサイト
としては、AlN,BNおよびVN等の窒化物がとりわけ
有効であることも究明された。
【0019】この発明において、快削性および自己潤滑
性の点からは、組織中に少なくとも10%の黒鉛相を形成
することが望ましい。また強度の面から、窒化処理を施
す場合には、表面に5〜11%程度の窒素を含有させるこ
とが望ましい。
【0020】
【作用】この発明において、成分組成を上記の範囲に限
定した理由を以下に示す。 C:0.1 〜1.5 % Cは、黒鉛相を形成させ、快削性および自己潤滑性を付
与する上で必須の元素であるが、0.1 %未満ではその効
果が小さく、また 1.5%を超えて含有してもその効果は
飽和するので 0.1〜1.5 %の範囲に限定した。
【0021】Si:0.5 〜 2.0% Siは、脱酸のために必要な元素であり、また黒鉛化促進
元素としても有用である。さらに窒化特性にも有効に寄
与するので積極的に添加するが、 0.5%未満ではその効
果に乏しく、また 2.0%を超えて含有させてもその効果
は飽和に達し、むしろ靭性の劣化を招くので、 0.5〜
2.0%の範囲で含有させるものとした。
【0022】Mn:0.1 〜 2.0% Mnは、鋼材の強度を確保する上で有用なだけでなく、脱
酸材としても有効であるので積極的に用いるが、 0.1%
未満ではその効果が小さく、また 2.0%超の添加では靭
性を劣化させるので、 0.1〜2.0 %の範囲に限定した。
【0023】P: 0.020%以下 Pは、靭性を劣化させるだけでなく黒鉛化を阻害する元
素でもあるので、極力低減することが望ましいが、 0.0
20%までならば許容できる。
【0024】S:0.001 〜0.03% Sは、黒鉛化や窒化に悪影響を及ぼすことなしに被削性
の改善に有効に寄与するので、被削性の要求水準に応じ
て添加するが、 0.001%未満ではその効果は少なく、ま
た0.03%を超えて含有させると靭性を劣化させるので、
0.001〜0.03%の範囲で含有させるものとした。
【0025】V:0.01〜0.5 % Vは、VNを形成し、黒鉛結晶化の核となって黒鉛化を
促進させるだけでなく、窒化後の表面硬度および有効硬
化深さを増大させ、さらには析出強化により強度を上昇
させる上でも有用であるので、積極的に用いるが、0.01
%未満ではその効果に乏しく、一方 0.5%を超えて含有
させると黒鉛化が阻害されるので、0.01〜0.5 %の範囲
に限定した。
【0026】Al:0.01〜0.1 % Alは、AlNを形成し、黒鉛化を促進するだけでなく、窒
化後の表面硬度および有効硬化深さを向上させる有用元
素であるが、0.01%未満ではその効果が小さく、一方
0.1%を超えて含有させると製鋼過程でAl2O3 が多量に
形成され、鋼の機械的特性が劣化するので、0.01〜0.1
%の範囲で含有させるものとした。
【0027】N:0.0015〜0.0150% Nは、Al, BおよびVと共に窒化物を形成し、黒鉛結晶
化の核となって黒鉛化を促進させるだけでなく、とくに
VNの析出強化により鋼の強度を上昇させる有用元素で
あるが、0.0015%未満ではその効果が小さく、一方0.01
50%以上含有させてもその効果は飽和するので、0.0015
〜0.0150%の範囲に限定した。
【0028】B:0.0005〜0.0050% Bは、黒鉛化を阻害するNをBNとして固定することによ
り黒鉛化を促進するので積極的に添加するが、0.0005%
未満ではその効果が小さく、また 0.005%以上添加して
も効果が飽和するので、0.0005〜0.0050%の範囲とす
る。
【0029】O:0.0020%以下 Oは、鋼の疲労特性を著しく劣化させる元素であり、極
力低減することが望ましいが、0.0020%までならば許容
できる。
【0030】以上、基本成分について説明したが、この
発明では、さらに黒鉛化の促進や窒化の向上を図るた
め、以下の元素を含有させることができる。 Cu:0.10〜1.0 % Cuは、黒鉛化を促進させると共に、被削性を向上させる
有用元素であるが、窒化に対しては有害であるので、黒
鉛化を一層促進させる必要のある場合や強度の向上を必
要とする場合に用いる。しかし0.10%ではその効果が小
さく、一方 1.0%を超えると窒化性が害されるので、0.
10〜1.0 %の範囲で含有させる必要がある。
【0031】Ni:0.10〜2.0 % Niも、Cuと同様、黒鉛化は促進するものの窒化に対して
は有害であるので、黒鉛化を一層促進させる必要がある
場合に用いるものとし、その含有量が0.10%未満ではそ
の効果が小さく、一方 2.0%を超えて含有させると窒化
性が害されるので、0.10〜2.0 %の範囲で含有させるも
のとした。
【0032】Cr:0.05〜1.0 % Crは、窒化性を向上させる有用元素であるが、黒鉛化に
対しては有害であるので、窒化時の表面硬度および有効
硬化深さを向上させる必要がある場合のみ用いる。しか
し0.05%未満ではその効果が小さく、また 1.0%を超え
て含有させると黒鉛化が阻害されるので、0.05〜1.0 %
の範囲で含有させるものとした。
【0033】Mo:0.05〜0.5 % Moも、Crと同様、窒化性は向上させるものの黒鉛化を阻
害する元素であるので、窒化時の表面硬度および有効硬
化深さを向上させる必要がある場合のみ用いるものと
し、その含有量が0.05%未満ではその効果が小さく、ま
た 0.5%を超えて含有させると黒鉛化が阻害されるの
で、0.05〜0.5 %の範囲で含有させるものとした。
【0034】Nb:0.005 〜0.05% Nbは、析出強化元素であり、また焼入れ性を向上させる
作用があるので、強度の一層の向上を図る場合に有用で
ある。しかしながら、含有量が 0.005%に満たないとそ
の強化効果が十分に発揮されず、一方0.05%を超えて添
加しても効果は飽和にたっするので、 0.005〜0.05%の
範囲で含有させるものとした。
【0035】Ti:0.005 〜0.05% Tiは、NをTiNとして固定することにより、Bの焼入れ
性向上効果を十分に発揮させることができるので、Nbと
同様、一層の強度向上を図る場合に添加する。しかしな
がら、この発明において、Bの添加はBNを形成し、こ
れを核として黒鉛化を促進させることにあるから、Tiが
全てのNをTiNとして固定すると、黒鉛化の遅延を招
く。そこで、Tiの含有量としては、焼入れ性に有効なB
を確保できると同時に、BNを形成させることができる
程度のNを残存させる程度とすることが肝要であり、こ
れらの観点から 0.005〜0.05%の範囲に限定した。
【0036】さて上記の成分組成範囲に調整することに
よって、被削性、黒鉛化および窒化性に富む鋼材とする
ことができる。ここに前述した自己潤滑性の確保に必要
な10%以上の黒鉛相を得るには、Ar3点以下好ましくは
600〜800 ℃の温度範囲に加熱保持する必要がある。と
いうのは 600℃に満たないと満足いくほどの黒鉛相が得
られず、一方 800℃を超えるとオーステナイト中に黒鉛
が固溶するからである。なお保持時間は5〜20h程度で
十分である。
【0037】次に、この発明の製造方法について説明す
る。まず素材の製造については、従来公知の転炉、電気
炉などで溶製した後、連続鋳造法または造塊・分塊法に
よってスラブとする。ついで熱間圧延により所定の形状
としたのち、上記の条件下で黒鉛化焼なましを施して、
金属組織中に所定の黒鉛相を析出させる。しかるのち所
定の部品形状に成形後、機械部品とする。また窒化処理
を施して製品とする場合もある。
【0038】
【実施例】
実施例1 表1に示す化学組成の鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造に
よりブルームとしたのち、150 mm角ビレットに熱間圧延
し、さらに棒鋼圧延により52mmφ棒鋼とした。ついで圧
延ままの棒鋼を 690℃, 15h保持後空冷の黒鉛化焼なま
し処理を施したのち、黒鉛化率、硬さおよび被削性につ
いて調査した。被削性は、超硬工具P10を用いて、切削
速度:200 m/min 、切り込み:2mm、送り速度:0.25 m
m/rev.の条件で切削を行い、工具の逃げ面摩耗が0.2 mm
に達するまでの切削時間を工具寿命と定義し、この工具
寿命により評価した。また硬さについては、 35 mmφ×
100 mml の試験片を作製し、 865℃, 30 minの加熱保持
後、焼入れおよび 550℃×1h→空冷の焼入れ・焼戻し
処理を行い、試験片の表層部および中深部の硬さを測定
した。得られた調査結果を表2に示す。
【0039】
【表1】
【0040】
【表2】
【0041】表1のNo.1〜18は、鋼の化学組成がこの発
明の範囲内にあるもので、これらはいずれも、従来のPb
快削鋼である No.23および24に比較して、工具寿命は3
倍以上にも達し、極めて優れた被削性を呈した。また、
焼入れ・焼戻し後の表面部の硬さは、従来鋼と発明鋼と
でほとんど差は認められなかったが、中心部の硬さは発
明鋼の方が優れており、従って発明鋼を用いることによ
り、大型の機械部品に対しても機械部品として必要な強
度が容易に得られることが判る。
【0042】これに対し、 No.19〜22の比較鋼のうち、
No.19は、Vが適正範囲外であることから、工具寿命は
優れるものの、焼入れ・焼戻し後の中心部の硬さは発明
鋼よりも劣る。また No.20〜22はそれぞれ、B,Siおよ
びAlが適正範囲外であることから、黒鉛化の程度が不十
分であり、工具寿命が従来鋼よりも劣っていた。
【0043】実施例2 表3に示す化学組成の鋼を転炉にて溶製し、連続鋳造に
よりブルームとしたのち、150 mm角ビレットに熱間圧延
し、さらに棒鋼圧延により35mmφ棒鋼とした。ついで圧
延ままの35mmφ丸棒を 690℃, 15h保持後空冷の黒鉛化
焼きなまし処理を施したのち、硬さおよび黒鉛化率を測
定した。さらに NH3:RX=1:1の混合比になるガス雰
囲気中で、 570℃,3h保持後空冷のガス軟窒化処理を
施した後、有効硬化深さおよび表面硬さを測定した。上
記の測定結果を、強度および自己潤滑性の調査結果と共
に表4に示す。ここに自己潤滑性は、黒鉛化焼なまし後
の素材より作製した50mm×50mmの試験片上に平均圧力 1
11 kgf/mm2で押し付けたボールを一定速度で移動させる
ことにより測定した動摩擦係数によって評価した。
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】No.1〜18は、鋼の化学組成がこの発明の
範囲内にあるもので、黒鉛化率が高いと同時に黒鉛化後
の硬さも高い。同時に窒化処理後の表面硬度および有効
硬化深さも実用に供せられる水準である。
【0047】これに対し、Vが含有しないNo.19 は、黒
鉛化率は高いものの低強度であり、窒化後の有効硬化深
さが極めて浅い。またBの添加がないNo.20 は、窒化特
性は満足しているけれども、黒鉛化が不十分である。さ
らにSi量が少なく、かつBの添加がないNo.21 は、黒鉛
化が全く進行してなく、自己潤滑性に劣る。
【0048】
【発明の効果】かくしてこの発明によれば、Pb快削鋼と
同等以上の被削性を有し、工具寿命も長く、焼入れ・焼
戻し後の硬さも良好で、しかも窒化処理を施しても劣化
することのない自己潤滑性を備える機械構造用鋼を得る
ことができるので、高強度・軽量でかつフリクションロ
スが小さな自動車および産業機械用部品の製造が可能と
なり、その結果、燃費が向上して自動車から排出される
CO2ガス量が低減するなど産業上の利用価値は極めて大
きい。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.020 wt%以下、 S:0.001 〜0.03wt%、 V:0.01〜0.5 wt%、 Al:0.01〜0.1 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 B:0.0005〜0.0050wt%、O:0.0020wt%以下 を含有し、残部はFeおよび不可避不純物の組成になり、
    しかも金属組織中に黒鉛相を有することを特徴とする機
    械構造用鋼。
  2. 【請求項2】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.020 wt%以下、 S:0.001 〜0.03wt%、 V:0.01〜0.5 wt%、 Al:0.01〜0.1 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 B:0.0005〜0.0050wt%、O:0.0020wt%以下 を含有し、かつ Cu:0.10〜1.0 wt%、 Ni:0.10〜2.0 wt% のうちから選んだ一種または二種を含有し、残部はFeお
    よび不可避的不純物の組成になり、しかも金属組織中に
    黒鉛相を有することを特徴とする機械構造用鋼。
  3. 【請求項3】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.020 wt%以下、 S:0.001 〜0.03wt%、 V:0.01〜0.5 wt%、 Al:0.01〜0.1 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 B:0.0005〜0.0050wt%、O:0.0020wt%以下 を含有し、かつ Cr:0.05〜1.0 wt%、 Mo:0.05〜0.5 wt% のうちから選んだ一種または二種を含有し、残部はFeお
    よび不可避的不純物の組成になり、しかも金属組織中に
    黒鉛相を有することを特徴とする機械構造用鋼。
  4. 【請求項4】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.020 wt%以下、 S:0.001 〜0.03wt%、 V:0.01〜0.5 wt%、 Al:0.01〜0.1 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 B:0.0005〜0.0050wt%、O:0.0020wt%以下 を含有し、かつ Nb:0.005 〜0.05wt%、 Ti:0.005 〜0.05wt% のうちから選んだ一種または二種を含有し、残部はFeお
    よび不可避的不純物の組成になり、しかも金属組織中に
    黒鉛相を有することを特徴とする機械構造用鋼。
  5. 【請求項5】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.020 wt%以下、 S:0.001 〜0.03wt%、 V:0.01〜0.5 wt%、 Al:0.01〜0.1 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 B:0.0005〜0.0050wt%、O:0.0020wt%以下 を含有し、かつ Cu:0.10〜1.0 wt%、 Ni:0.10〜2.0 wt% のうちから選んだ一種または二種と、 Cr:0.05〜1.0 wt%、 Mo:0.05〜0.5 wt% のうちから選んだ一種または二種とを含有し、残部はFe
    および不可避的不純物の組成になり、しかも金属組織中
    に黒鉛相を有することを特徴とする機械構造用鋼。
  6. 【請求項6】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.020 wt%以下、 S:0.001 〜0.03wt%、 V:0.01〜0.5 wt%、 Al:0.01〜0.1 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 B:0.0005〜0.0050wt%、O:0.0020wt%以下 を含有し、かつ Cu:0.10〜1.0 wt%、 Ni:0.10〜2.0 wt% のうちから選んだ一種または二種と、 Nb:0.005 〜0.05wt%、 Ti:0.005 〜0.05wt% のうちから選んだ一種または二種とを含有し、残部はFe
    および不可避的不純物の組成になり、しかも金属組織中
    に黒鉛相を有することを特徴とする機械構造用鋼。
  7. 【請求項7】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.020 wt%以下、 S:0.001 〜0.03wt%、 V:0.01〜0.5 wt%、 Al:0.01〜0.1 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 B:0.0005〜0.0050wt%、O:0.0020wt%以下 を含有し、かつ Cr:0.05〜1.0 wt%、 Mo:0.05〜0.5 wt% のうちから選んだ一種または二種と、 Nb:0.005 〜0.05wt%、 Ti:0.005 〜0.05wt% のうちから選んだ一種または二種とを含有し、残部はFe
    および不可避的不純物の組成になり、しかも金属組織中
    に黒鉛相を有することを特徴とする機械構造用鋼。
  8. 【請求項8】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.020 wt%以下、 S:0.001 〜0.03wt%、 V:0.01〜0.5 wt%、 Al:0.01〜0.1 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 B:0.0005〜0.0050wt%、O:0.0020wt%以下 を含有し、かつ Cu:0.10〜1.0 wt%、 Ni:0.10〜2.0 wt% のうちから選んだ一種または二種と、 Cr:0.05〜1.0 wt%、 Mo:0.05〜0.5 wt% のうちから選んだ一種または二種と、 Nb:0.005 〜0.05wt%、 Ti:0.005 〜0.05wt% のうちから選んだ一種または二種とを含有し、残部はFe
    および不可避的不純物の組成になり、しかも金属組織中
    に黒鉛相を有することを特徴とする機械構造用鋼。
  9. 【請求項9】C:0.1 〜1.5 wt%、 Si:0.5 〜2.0
    wt%、 Mn:0.1 〜2.0 wt%、 P:0.020 wt%以下、 S:0.001 〜0.03wt%、 V:0.01〜0.5 wt%、 Al:0.01〜0.1 wt%、 N:0.0015〜0.0150wt%、 B:0.0005〜0.0050wt%、O:0.0020wt%以下 を含有する組成になる鋼を、熱間圧延したのち、 Ar3
    以下の温度に加熱保持することを特徴とする機械構造用
    鋼の製造方法。
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