JP3281115B2 - ポリヘキサメチレンアジパミド繊維及びその製造法 - Google Patents

ポリヘキサメチレンアジパミド繊維及びその製造法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、高強度で、耐疲労性に
優れ、タフネスも高く、耐衝撃性に優れるポリアミド繊
維に関するものであり、さらに詳しくは、各種産業用
途、例えば、ゴム補強用タイヤコード、ベルトコードや
エアーバッグ基布用途、コンピュータリボン用途、シー
トベルト、縫糸、漁網、各種カバー、シート等に用いら
れるポリヘキサメチレンアジパミド繊維に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】ポリアミド繊維は、高強度で、タフネス
が高く、耐疲労性、耐衝撃性に優れているため、各種産
業用途に用いられている。最近では、タイヤ内での強力
がさらに高く、かつ、疲労特性のより改善されたポリア
ミド繊維材料の出現が望まれている。従来、強度向上と
耐疲労性の改善に関して種々の提案がされているが、高
強度化を達成するには、生産性を犠牲にしたり、また、
こうした繊維をゴム補強コード用の加工工程を経て使用
した際、その強力の低下率が大きく、結果として、タイ
ヤ内での強力向上や疲労特性の改良に寄与しない等の問
題があった。
【0003】具体例を挙げると、耐疲労性が改善された
ポリアミド繊維に関しては、特開昭58−174623
号公報、特開昭61−34216号公報に測定周波数1
10Hzでの力学的損失(tanδ)のピーク温度(T
max)が90℃以下であって、そのピーク値(αh)
が0.10以上0.14以下となる耐疲労性が改善され
たナイロン6,6繊維が開示されているが、紡糸工程と
は別途に熱加工処理工程を要するなど生産効率上の問題
点があった。また、特開平4−153311号公報に
は、破断強度10g/d以上、破断伸度18%以上で、
固体NMR法によって測定される非晶相の割合が50%
以上、非晶相と中間相成分比が2以上、及び結晶相の縦
緩和時間が50秒以上となる高耐疲労性高強力ポリヘキ
サメチレンアジパミド繊維が開示されている。しかしな
がら、11.0g/d以上の破断強度を持ち、耐疲労性
に優れながら、安定して生産効率よく製造可能な繊維と
しては記載されていない。さらに特開平4−18571
1号公報には疲労破断エネルギ−値の大きい高タフネス
ポリアミド繊維が開示されているが、これはチュ−ブ破
壊時間の長さで示されるような耐疲労性においては充分
とはいえなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、タイ
ヤコードなどのゴム補強用に適したポリアミド繊維であ
って、高強度、高耐疲労性であり、高生産性、安定生産
に適した繊維及びその製造法を提供することである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記目的
を達成するために原糸構造特性のなかで高強度発現に関
する因子、またゴム補強コードに対して行われる各種処
理及びタイヤ等の使用中にさらされる繰返し歪に耐え、
強度保持率を高めることに関する因子とを鋭意検討した
結果本発明に至った。
【0006】すなわち、本発明の第1は繊度あたりの強
度が11.0g/d以上であり、かつ測定周波数35H
zにおける粘弾性的性質が以下の一般式を満足すること
を特徴とするポリヘキサメチレンアジパミド繊維であ
る。 115≦Tmax≦125 △(αa)1/2≦90 0.110≧αah≧0.060 △(β)1/2≦75 βh≦0.075 (ただし、式中αahは力学的損失正接(tanδ)−
温度(T)曲線において主分散帯αaでの最大のtan
δ値を、Tmax(℃)はそのときの温度を、βhは該
曲線において副分散帯βでの最大のtanδ値を、△
(αa)1/2、△(β)1/2はそれぞれ該曲線におけるα
a分散、β分散の半値幅(℃)を示す)かかる構造要件
を満たしたポリヘキサメチレンアジパミドは、紡糸巻取
速度が3000m/min程度でも毛羽発生量少なく製
造可能となり、また、ゴム中に配され加硫した後での強
度保持率は95%以上、また、通常タイヤコード用の疲
労試験として広く利用されるグッドイヤーチューブ疲労
試験で1500分を越えるチューブ破壊時間を示す。
【0007】本発明の繊維は強度が11.0g/d以上
であり、かつ測定周波数35Hzにおける粘弾性的性質
が一定の範囲にあることを特徴とする。本発明中で規定
する構造因子Tmax、αah、βh、Δ(α
a)1/2 、Δ(β)1/2 の測定法および定義を以下に説
明する。まず繊維の粘弾性的性質を示すtanδ−温度
(T)曲線は、オリエンテック社製DDV−01F P
レオバイブロンを使用し、糸長2cm、初期荷重0.1
75g/d、昇温速 度5℃/minの条件下35Hz
で単糸(繊度3d)1本について測定することによって
得られる。このモデル図は図1に示すとおりである。本
発明における構造因子はこのtanδ−温度(T)曲線
より得られる値であり、単糸10本について測定した値
の平均値である。
【0008】本発明においてTmaxは図1のαa分散
帯で最大のtanδ値を与える温度、αahはαa分散
帯で最大のtanδ値、Δ(αa)1/2 はαahの絶対
値の1/2に相当する位置で温度軸に平行線を引き、こ
の直線とαa分散帯を示すtanδ−T曲線との2交点
間の温度差、Δ(β)1/2 はβaの絶対値の1/2に相
当する位置で、温度軸に平行線を引き、この直線とβ分
散帯を示すtanδ−T曲線との2交点間の温度差、β
hはβ分散帯での最大のtanδ値をいう。
【0009】繊維の強度を高めるためには、高分子鎖全
体の配向を高めてTmaxを高くすべきであるが、12
5℃を越えると、無定型部の熱運動性が低下し、耐疲労
性を阻害する。また、その温度でのtanδmax値、
つまりαahは、高強度化のために高分子鎖の配向を進
めると低下するが、0.060未満では、熱運動可能な
分子鎖分率の低下により、急激に耐疲労性が悪化する。
しかしながら、繊維全体の配向を進めてゆくと、強度は
高まるものの高分子構造の破壊が併発し、破壊部位に起
因する熱運動がtanδ値に寄与してくる。繊維強度1
1.0g/d以上では、0.110を越えるαahを示
すものはこうした破壊構造を内包しており、毛羽や糸切
れ発生が増加し、ゴム補強コード用加工工程やタイヤ中
での強度低下も大きくなり耐疲労性も低下する。またΔ
(αa)1/2 が90℃を越えると、熱運動性の低い領域
の分子鎖の相対的量が増えるため、耐疲労性を阻害す
る。
【0010】さらに、従来、ゴム用繊維補強材料は最終
製品の運転、または、走行中には常に発熱系にあるた
め、摂氏0℃以下でβ分散を与える無定型分子鎖の凝集
部は、常温では常に運動状態にあり、耐疲労性には影響
しないものと考えられていたが、本発明者らは、β分散
によってさらに明確に耐疲労性が規定される事実を発見
した。すなわちβ分散においても繊維の高強度化のため
の配向を進めてゆくと、βピークは低下し、さらには高
分子構造破壊を伴って上昇する。強度11.0g/d以
上でβhが0.075以上を示すものは破壊構造を内包
しており、耐疲労性を阻害する。またΔ(β)1/2 が7
5℃を越えると、耐疲労性は低下する。科学的根拠は現
在のところ不明だが、β分散はエチレン鎖のコンフォメ
ーションに関与している凝集構造とも考えられるので、
この部分の分子鎖の凝集構造がより多い場合は、潜在的
な結晶化促進性を示すものと考えられる。
【0011】本発明の繊維の構造因子は、ゴム補強コー
ド用の加工工程やタイヤなどの中で繊維が受ける物理
的、化学的外力に対して、構造的に追随できる余地のあ
るものである。またそれだけではなく、不適切で過度の
延伸操作によって構造破壊を内包してしまい単に見かけ
上粘弾性的な構造追随性を示すような繊維ではないとい
うことである。
【0012】次に本発明の繊維の製造法について説明す
る。本発明に係る繊維は、ポリヘキサメチレンアジパミ
ドを溶融紡出し、冷却し、引取ロ−ルに引取った後、ゴ
デットロ−ル間で延伸を行うに際して、該引取りロ−ル
として表面温度Ts〔℃〕が下記一般式を満足し、かつ
糸条が次のゴデットロ−ルに引き渡される表面領域が梨
地加工されている引取りロ−ルを用いること、及び構造
破壊開始点における延伸倍率以下で延伸を行うことを特
徴とするポリヘキサメチレンアジパミド繊維の製造法に
よって好適に得られる。
【0013】Tgc−10≦Ts≦Tgc+40 (ただし、式中Tgc〔℃〕は引取りロ−ルに引取られ
る糸の貯蔵弾性率がガラス転移領域で急激に低下を完了
する温度を示す) 本発明に用いる繊維原料は、アジピン酸とヘキサメチレ
ンジアミンの縮重合反応によって得られるが、通常用い
られる添加剤、例えば、リン酸、次亜リン酸ソーダ等の
無機リン化合物、フェニルホスホン酸、トリフェニルホ
スファイト等の有機リン化合物、リン−窒素系錯塩、リ
ン−窒素系化合物等の重合触媒、酢酸銅、臭化銅、よう
化銅、2−メルカプトベンズイミダゾール銅錯塩等の銅
化合物、2−メルカプトベンズイミダゾール、テトラキ
ス−〔メチレン−3−(3,5ジt−ブチル−4−ヒド
ロキシルフェニル)−プロピオネート〕−メタン等の熱
安定剤、乳酸マンガン、次亜リン酸マンガン等の光安定
剤、二酸化チタン、カオリン等の艶消し剤、環状フェノ
ール類、エチレンビスステアリルアミド、同部分メチロ
ール化物、ステアリン酸カルシューム等の滑材、可塑
剤、結晶化阻害剤を含ませることが出来る。
【0014】ポリマーの重合度は、数平均分子量で20
000以上あれば充分である。また、高分子構造、とく
に、無定型部分の凝集構造を制御するためにポリマー中
の塩基濃度を高めておいても良い。その方法としては、
水酸化ナトリウム、アジピン酸ナトリウム等の有機金属
塩を、重合過程で直接ポリマーに添加する方法、また
は、繊維形成後、仕上げ剤等に溶解して付着させ添加す
る方法がある。また、ヘキサメチレンアジパミド等のジ
アミン、ジカルボン酸の縮合物からなるポリアミド繊維
の場合は、ジアミン成分をジカルボン酸成分対比多く添
加することでも達成される。この際、一般的にヘキサメ
チレンジアミン等の脂肪族ジアミンの蒸気圧は低いた
め、アミド化反応中に飛散し易いが、この飛散ジアミン
を回収し、リサイクルする事で効率的な生産が可能とな
る。
【0015】本発明の製造方法においては常法により溶
融紡出し、冷却されたポリヘキサメチレンアジパミドの
糸条は、引取りロールに引取られたのち特定の条件で延
伸されることを特徴とする。糸条は多段熱延伸法などで
延伸するが、引取りロールの温度を選ぶことによって無
定形界面に存在する結晶部を無定形部分に取り入れなが
ら延伸する事ができる。すなわち、引取りロール(1ゴ
デットロール)の温度Tsが温度Tgcに対して、(T
gc−10)℃から(Tgc+40)℃の範囲に選ぶこ
とによって、この目的が達成される。ここでTgcと
は、引取りロール表面温度を引取られる糸条の貯蔵弾性
率が、ガラス転移領域で急激に低下を完了する温度をい
う。すなわち、図2に示すように、引取りロール表面温
度が上昇すると共に、貯蔵弾性率が低下するが、その過
程で貯蔵弾性率が急激に低下する。この領域がガラス転
移領域であり、Tgcは、このガラス転移領域における
貯蔵弾性率の急激な低下が完了する温度である。貯蔵弾
性率はオリエンテック社製DDV−01FPレオバイブ
ロンを使用し、糸長2cm、初期荷重0.0278g/
d、昇温速度5℃/minの条件下、35Hzで単糸1
本について測定した。
【0016】またこのとき引取りロ−ルにおいて第2ゴ
デッドロ−ルへ引き渡す領域のロール表面を梨地加工等
にすることにより糸条を滑らせ、延伸の細化過程を広い
領域で行うことは、糸条走行の安定性を高めると共に延
伸糸の構造を均一化してΔ(αa)1/2 やΔ(β)1/2
を低くし、また後に詳述する構造破壊開始点を高延伸化
側へ移行させることに寄与する。ここで次の第2ゴデッ
ドロ−ルへ引き渡す領域としては好ましくは引き取った
糸の2ラップ目までをいう。
【0017】さらに多段延伸の延伸比配分は重要であ
り、第1段延伸の際に、結晶化があまり促進されていな
い状態での延伸を過度の延伸にならない範囲で充分行っ
て、第2段以降の結晶成長、結晶配向を主として伴う延
伸を行うことによって結果として無定形部分のtanδ
を高くすることができる。繊維は、不適切で過度の延伸
操作によって、急激に構造破壊を生ずる。延伸倍率の関
数として構造パラメータ―が極大、極小を示すことから
推察できる構造破壊開始点は、バイブロン測定やX線回
折測定(小角X線散乱及び広角X線散乱)などから決定
でき、構造破壊を起こす延伸倍率以下で延伸する事が望
ましい。構造破壊は繊維のマクロ的構造欠陥、すなわち
毛羽、糸切れにつながり、また、構造破壊を既に起こし
ている延伸糸は、後でいかなる方法をとっても、耐疲労
性は補償されない。構造破壊開始点の測定方法として
は、延伸倍率の異なる、すなわち繊維強度の異なる延伸
糸を20℃、65%の一定温調下に24時間放置した
後、上記tanδ−T測定条件で測定したときのβhと
延伸倍率の関係、もしくは繊維強度との関係により容易
に決定できる。図3にβhと延伸倍率の関係、及び構造
破壊を開始する延伸点を示す。図3において、βhが極
小値を示す延伸倍率(又は繊維構造破断強度)が構造破
壊開始点である。構造破壊開始点は延伸倍率、繊維強度
のいずれでも表現できる。
【0018】本発明の繊維の製法としては上記の方法が
好適であるが、本発明の繊維は上記の方法の他、紡糸条
件等を調整して得ることも可能である。すなわち上記に
定義したαahを大きな値にしたり、Δ(αah)1/2
を小さくするためには、紡糸速度が高いことは、未延伸
糸の無定型部分の配向度を上げ、冷却速度低下による球
晶生成により不利であるが、紡糸速度を落とさずにこれ
を克服するためのいくつかの方法を取ることが出来る。
まず、紡糸仕上げ剤を選ぶことで未延伸糸の構造を制御
できる。仕上げ剤は、非水系を用いることで水分による
球晶成長を抑制し、αah向上やΔ(αah)1/2 を小
さくすることに寄与するが、この目的で、ストレートオ
イル、ニートオイルなど通常用いられる仕上げ剤を用い
ることが出来る。また、水系のいわゆるエマルジョン仕
上げ剤を用いる場合には、仕上げ剤中に結晶成長抑制剤
を添加して用いることが好ましい。さらには、紡糸ポリ
マー中の水分率によって、溶融ポリマーの可塑化を推進
し、また結晶化温度を下げ球晶成長を抑制することがで
きる。
【0019】さらにその他の条件として、ゴム補強コー
ド用の加工工程では、繊維は熱や張力、接着剤などの激
烈な条件にさらされる、とくに、接着剤を付着させるデ
ィップ処理工程では、繊維の構造を大きく変化させるこ
とがあり、工程条件を適切に選ぶことが重要である。本
発明による繊維も、適切な加工条件下でその性能を充分
発揮し得るものである。
【0020】以下、実施例によって本発明を説明する
が、これに限定されるものではない。
【0021】
【実施例1〜3及び比較例1〜6】常法の重合法にて9
0%蟻酸相対粘度(以降VRと称す)80のポリヘキサ
メチレンアジパミドポリマーを重合した。ここでいう9
0%蟻酸相対粘度とは、90%蟻酸にポリマーを8.9
重量%溶解した溶液の25℃における相対粘度である。
このポリマーを、以下の条件で溶融紡糸した後、以下の
条件で多段熱延伸法で延伸しポリヘキサメチレンアジパ
ミド繊維を得た。得られた繊維の物性、および毛羽量を
表1に示す。 ・紡糸条件 ポリマー吐出量 378g/分 紡口 孔径 0.23mmφ、孔長 0.46mm、孔
数 420 仕上げ剤 ニート仕上げ剤としては、ジオイレイルアジ
ペ−ト45部、トリメチルプロパトリラウレ−ト40
部、硬化ヒマシ油/ステアリン酸/マレイン酸縮合物1
3部、酸化防止剤2部を混合したものを用い、エマルジ
ョン仕上げ剤としては、ナタネ油32部、ネオペンチル
グリコ−ルジオレ−ト30部、硬化ヒマシ油/ステアリ
ン酸/マレイン酸縮合物12部、酸化防止剤2部、硬化
ヒマシ油EO(25)16部、2エチルヘキシルアルコ
−ルEOPO8部を混合したものを用いた。また、スト
レート仕上げ剤は容量にて、ニート仕上げ剤30部とケ
ロシン70部、さらに、混和剤としてグリセリン1部を
混合して用いた。仕上げ剤付与率は繊維に対して1.9
重量%とした。 ・延伸条件 引取りロール(以下1GDと記載する。)温度 表1の
とおり 第2ゴデットロール(以下2GDと記載する。)温度
215℃ 第3ゴデットロール(以下3GDと記載する。)温度
220℃ 第4ゴデットロール(以下4GDと記載する。)温度
100℃ 巻取速度 2700m/分 3GD、4GDは同速度とした。
【0022】ただし、1GDロールは、表面仕上げ状態
の異なる2種類を用いた。すなわち、糸を引取る部分を
鏡面仕上げとし、同ロールの2GDロールへの引き渡し
部分を梨地仕上げとした「鏡面/梨地」タイプと、糸が
接するすべての部分を鏡面仕上げとした「全鏡面」タイ
プとを表1に示すように用いた。引取りロールで引取ら
れた糸の貯蔵弾性率と温度との関係を図2に示す。図2
から、Tgcは90℃であることが読み取れる。
【0023】表2に、実施した接着処理工程条件、処理
コード物性、チューブ破壊時間の結果を示す。なお、試
験、測定方法は以下のとおりである。 (1)毛羽量 東レフライカウンターTD−106を毛羽検知器として
用い、糸速500m/分で20分間測定した。 (2)接着剤処理条件 生コードの接着剤処理は、3オーブンホットストレッチ
装置(コンピュートリーター)を用いて、以下に条件で
接着剤すなわちレゾルシン−ホルマリン−ラテックス
(RFL)液の処理を施した。
【0024】 (3)グッドイヤーチューブ疲労試験(JIS L−1
0173.2.2.1Aに準ずる方法) チューブ形状 内径 12.5mm 外形 26mm 長さ 231mm 曲げ角度 90度 内 圧 3.5kgf・cm2 回転数 850rpm (4)繊維物性測定(強度、伸度) 島津製作所製オートグラフS−100Cを用い、原糸は
80回/mの撚を加えて、処理糸はそのまま、25cm
の試料に対して降下速度30cm/分で測定した値であ
る。
【0025】表1、表2に示したとおり、tanδ−T
解析におけるαa分散とβ分散の形状が、本発明の要件
を満たしている場合は、毛羽発生量が少なく安定した巻
取が可能となっており、さらに、処理糸の強度保持率が
高く、チューブ破壊時間が長く耐疲労性が大きく改善さ
れている。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】本発明のポリヘキサメチレンアジパミド
繊維によれば、繊維強度11.0g/d以上で、さらに
は繊維強度11.5g/d以上で、なおかつ、破壊構造
を内包しない繊維構造で、安定生産に適しており毛羽発
生量が10000m当たり20個以下となり、また、優
れた耐疲労性を持ち、グッドイヤーチューブ疲労試験で
は1500分を越えるチューブ破壊時間を示す、タイヤ
コード、ベルト等のゴム補強用コード等の産業用資材に
用いた際、高強度で耐久性の優れた製品となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】ポリヘキサメチレンアジパミド繊維の力学的損
失正接(tanδ)−温度(T)曲線の模式図である。
【図2】糸の貯蔵弾性率(E’)、tanδと温度との
関係を示す図である。
【図3】β分散ピークのtanδmax(βh)−延伸
倍率(または繊維破断強度)の模式図で、βhが極小値
を示す延伸倍率(または繊維破断強度)が構造破壊開始
点であることを示している。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI D02J 1/22 302 D02J 1/22 302D (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D01F 6/60 D02J 1/22

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊度あたりの強度が11.0g/d以上
    であり、かつ、測定周波数35Hzにおける粘弾性的性
    質が以下の一般式を満足することを特徴とするポリヘキ
    サメチレンアジパミド繊維。 115≦Tmax≦125 △(αa)1/2≦90 0.110≧αah≧0.060 △(β)1/2≦75 βh≦0.075 (ただし、式中αahは力学的損失正接(tanδ)−
    温度(T)曲線において主分散帯αaでの最大のtan
    δ値を、Tmax(℃)はそのときの温度を、βhは該
    曲線において副分散帯βでの最大のtanδ値を、△
    (αa)1/2、△(β)1/2はそれぞれ該曲線におけるα
    a分散、β分散の半値幅(℃)を示す)
  2. 【請求項2】 ポリヘキサメチレンアジパミドを溶融紡
    出し、冷却し、引取ロ−ルに引取った後、ゴデットロ−
    ル間で延伸を行うに際して、該引取りロ−ルとして表面
    温度Ts〔℃〕が下記一般式を満足し、かつ糸条が次の
    ゴデットロ−ルに引き渡される表面領域が梨地加工され
    ている引取りロ−ルを用いること、及び構造破壊開始点
    における延伸倍率以下で延伸を行うことを特徴とするポ
    リヘキサメチレンアジパミド繊維の製造法。 Tgc−10≦Ts≦Tgc+40 (ただし、式中Tgc〔℃〕は引取りロ−ルに引取られ
    る糸の貯蔵弾性率がガラス転移領域で急激に低下を完了
    する温度を示す)
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