JP3279199B2 - 溶接性に優れたFe−Ni系アンバー合金 - Google Patents
溶接性に優れたFe−Ni系アンバー合金Info
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Description
【0001】
【発明の属する技術】この発明は、溶接性に優れたFe
−Ni系アンバー合金に関するものである。
−Ni系アンバー合金に関するものである。
【0002】
【従来の技術】近年、エネルギー源の多様化にともな
い、天然ガスが脚光を浴びており、その需要量は、全世
界的に増加の一途をたどっている。このような天然ガス
の輸送および貯蔵は、−160℃の極低温による液化天
然ガス(以下、LNGという)として行われている。
い、天然ガスが脚光を浴びており、その需要量は、全世
界的に増加の一途をたどっている。このような天然ガス
の輸送および貯蔵は、−160℃の極低温による液化天
然ガス(以下、LNGという)として行われている。
【0003】LNGを輸送するための船舶や陸上貯蔵用
容器には、それぞれいくつかの構造形成があるが、近年
その大型化傾向に伴い、LNG用輸送船は独立タンク方
式からメンブレン方式に移行し、陸上貯蔵用容器も2重
殻構造を有する金属性タンク方式から半地下式のメンブ
レンタンク方式に移行する傾向にある。
容器には、それぞれいくつかの構造形成があるが、近年
その大型化傾向に伴い、LNG用輸送船は独立タンク方
式からメンブレン方式に移行し、陸上貯蔵用容器も2重
殻構造を有する金属性タンク方式から半地下式のメンブ
レンタンク方式に移行する傾向にある。
【0004】LNGのためのメンブレン方式の船舶や貯
蔵容器用材料として、容器内におけるLNG液面の上下
によって生ずる熱膨張や収縮を緩和し、且つ、溶接部の
デザインを簡略化して施工性を高めるために、低熱膨張
率を有するFe−Ni系アンバー合金が使用されてい
る。
蔵容器用材料として、容器内におけるLNG液面の上下
によって生ずる熱膨張や収縮を緩和し、且つ、溶接部の
デザインを簡略化して施工性を高めるために、低熱膨張
率を有するFe−Ni系アンバー合金が使用されてい
る。
【0005】しかしながら、Fe−Ni系アンバー合金
は、使用状態において完全なオーステナイト組織である
ために、オーステナイト合金特有の溶接高温割れ、およ
び、再熱割れが生じやすいことが大きな欠点になってい
る。
は、使用状態において完全なオーステナイト組織である
ために、オーステナイト合金特有の溶接高温割れ、およ
び、再熱割れが生じやすいことが大きな欠点になってい
る。
【0006】即ち、メンブレン用材料の溶接施工時に、
熱影響部に溶接継ぎ目や亀裂が発生しやすく、特に、こ
れらの亀裂を塞ぐための補修溶接時に、熱影響部に新た
なミクロ割れが発生するため、タンクのリークを完全に
は防止し得ず、しかも、靱性が低下する問題が懸念され
ている。
熱影響部に溶接継ぎ目や亀裂が発生しやすく、特に、こ
れらの亀裂を塞ぐための補修溶接時に、熱影響部に新た
なミクロ割れが発生するため、タンクのリークを完全に
は防止し得ず、しかも、靱性が低下する問題が懸念され
ている。
【0007】従って、低熱膨張特性等の物理的性質や機
械的性質を阻害することなく、耐溶接割れ性を改善し、
靱性の優れたFe−Ni系アンバー合金を開発すること
が要望されている。
械的性質を阻害することなく、耐溶接割れ性を改善し、
靱性の優れたFe−Ni系アンバー合金を開発すること
が要望されている。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】前述したように、一般
にオーステナイト高合金は、溶接時に高温割れを生じや
すいが、この現象は、凝固冷却過程または再加熱冷却過
程で、材料が高温脆化を起こし大幅な靱性低下を招くた
めであり、その冶金的原因として、鋼中におけるPおよ
びS等の不純物元素の存在があげられている。
にオーステナイト高合金は、溶接時に高温割れを生じや
すいが、この現象は、凝固冷却過程または再加熱冷却過
程で、材料が高温脆化を起こし大幅な靱性低下を招くた
めであり、その冶金的原因として、鋼中におけるPおよ
びS等の不純物元素の存在があげられている。
【0009】このような背景から、オーステナイト合金
の溶接高温割れを防止するための研究が従来から行われ
ており、例えば、特開昭56−44749号公報には、
PおよびS量を可能な限り低減すること、および、合金
中の非金属介在物の総量を0.05wt.%以下に低減する
ことが有効である旨が開示されている(以下、先行技術
という)。
の溶接高温割れを防止するための研究が従来から行われ
ており、例えば、特開昭56−44749号公報には、
PおよびS量を可能な限り低減すること、および、合金
中の非金属介在物の総量を0.05wt.%以下に低減する
ことが有効である旨が開示されている(以下、先行技術
という)。
【0010】しかしながら、先行技術の合金では、溶接
条件によっては、依然として溶接部における高温割れお
よび再熱割れを防止することができない。従って、この
発明の目的は、上述した問題を解決し、低熱膨張特性等
の物理的性質や機械的性質を阻害することなく、耐溶接
割れ性を改善し、靱性の優れたFe−Ni系アンバー合
金を提供することにある。
条件によっては、依然として溶接部における高温割れお
よび再熱割れを防止することができない。従って、この
発明の目的は、上述した問題を解決し、低熱膨張特性等
の物理的性質や機械的性質を阻害することなく、耐溶接
割れ性を改善し、靱性の優れたFe−Ni系アンバー合
金を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明者等は、上述した
観点から、低熱膨張特性等の物理的性質や機械的性質を
阻害することなく、耐溶接割れ性を改善し、靱性の優れ
たFe−Ni系アンバー合金を開発すべく鋭意研究を重
ねた。その結果、耐溶接割れ性を改善し、靱性を向上さ
せるためには、P,S,Oおよび非金属介在物の含有量
を低減し、そして、Ca,Mg,Ti,Zrのうちの少
なくとも1つの元素を、P,S,Oの総量に見合う特定
量添加し化合物の形で固定すれば、無害化し得ること、
更に、特定量のBを含有させれば、結晶粒界の延性を向
上し得ることを知見した。
観点から、低熱膨張特性等の物理的性質や機械的性質を
阻害することなく、耐溶接割れ性を改善し、靱性の優れ
たFe−Ni系アンバー合金を開発すべく鋭意研究を重
ねた。その結果、耐溶接割れ性を改善し、靱性を向上さ
せるためには、P,S,Oおよび非金属介在物の含有量
を低減し、そして、Ca,Mg,Ti,Zrのうちの少
なくとも1つの元素を、P,S,Oの総量に見合う特定
量添加し化合物の形で固定すれば、無害化し得ること、
更に、特定量のBを含有させれば、結晶粒界の延性を向
上し得ることを知見した。
【0012】この発明は、上記知見に基づいてなされた
ものであって、この発明のFe−Ni系アンバー合金
は、ニッケル(Ni):30〜45 wt.% 、硫黄(S): 0.0030wt.
% 以下、燐(P): 0.0070 wt.%以下、酸素(O): 0.0040wt.
% 以下、アルミニウム(Al): 0.006 〜0.030 wt.%、窒素
(N): 0.003 wt.% 以下、および、必要に応じボロン(B):
0.010 wt.%以下を含有し、更に、下記からなる群、カル
シウム(Ca): 0.010 wt.%以下、マグネシウム(Mg): 0.01
0 wt.%以下、チタン(Ti): 0.10 wt.% 以下、ジルコニウ
ム(Zr): 0.20 wt.% 以下から選んだ少なくとも1つの元
素を含有し、残り鉄および不可避的不純物からなり、そ
して、下記(1) 式および(2) 式を満足し、 (S+1/5 O+1/2 P)≦0.0045・・・・・・・・・・(1) (Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S+2O)≧1・・・・(2) そし て、清浄度が0.019%以下であることに特徴を有す
るものである。
ものであって、この発明のFe−Ni系アンバー合金
は、ニッケル(Ni):30〜45 wt.% 、硫黄(S): 0.0030wt.
% 以下、燐(P): 0.0070 wt.%以下、酸素(O): 0.0040wt.
% 以下、アルミニウム(Al): 0.006 〜0.030 wt.%、窒素
(N): 0.003 wt.% 以下、および、必要に応じボロン(B):
0.010 wt.%以下を含有し、更に、下記からなる群、カル
シウム(Ca): 0.010 wt.%以下、マグネシウム(Mg): 0.01
0 wt.%以下、チタン(Ti): 0.10 wt.% 以下、ジルコニウ
ム(Zr): 0.20 wt.% 以下から選んだ少なくとも1つの元
素を含有し、残り鉄および不可避的不純物からなり、そ
して、下記(1) 式および(2) 式を満足し、 (S+1/5 O+1/2 P)≦0.0045・・・・・・・・・・(1) (Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S+2O)≧1・・・・(2) そし て、清浄度が0.019%以下であることに特徴を有す
るものである。
【0013】
【発明の実施の形態】次に、この発明のFe−Ni系ア
ンバー合金の化学成分組成を、上述した範囲内に限定し
た理由について、以下に述べる。 (1) ニッケル(Ni):Niは、このFe−Ni系アンバー
合金の熱膨張率を支配する主要な元素であり、Niを3
0〜45wt.%含有させることにより、常温からLNGの
温度である−162℃までの温度範囲において、低い熱
膨張係数を確保することができる。Ni含有量が30w
t.%未満または45wt.%を超えると、熱膨張係数が高く
なり、溶接施工時に高温割れが発生する。従って、Ni
含有量は、30〜45wt.%の範囲内に限定すべきであ
る。 (2) 燐(P):Pは、溶接高温割れを起こす有害な元素で
あり、その含有量が0.0070wt.%を超えると溶接時
の冷却過程において、オーステナイト粒界において低融
点の燐の化合物が生成して粒界が脆化する結果、本発明
で意図する溶接性が得られず、粒界の微小な割れによっ
て靱性も劣化する。従って、P含有量は、0.0070
wt.%以下に限定すべきである。 (3) 硫黄(S) :Sは、溶接高温割れ性に対して特に有害
な元素であり、その含有量が0.0030wt.%を超える
と、溶接時の冷却過程においてオーステナイト粒界にお
いてMnSが生成して粒界が脆化する結果、本発明で意
図する溶接性が得られず、粒界の微小な割れによって靱
性が劣化する。従って、S含有量は、0.0030wt.%
以下に限定すべきである。 (4) 酸素(0):Oは、本合金において非金属介在物を低
減するために、特に制御しなければならない有害な元素
である。Oが0.0040wt.%を超えると、介在物が本
合金中に多くなり、溶接時の冷却過程において、オース
テナイト粒界で低融点の酸化物が生成し、粒界が脆化す
る結果、本発明で意図する溶接性が得られず、粒界強度
の低下によって靱性も劣化する。従って、O含有量は、
0.0040wt.%以下に限定すべきである。 (5) アルミニウム(Al) :Alは、脱酸剤として添加され
る必須元素である。しかしながら、その含有量が0.0
06wt.%未満ではOが本発明の上限値である0.004
0wt.%を超え、酸化物系介在物が本合金中に多くなる。
一方、Al含有量が0.030wt.%を超えると逆に酸化物
系介在物が多くなる結果、本発明で意図する溶接性が得
られず、粒界強度の低下によって靱性も劣化する。従っ
て、Al含有量は、0.006〜0.030wt.%の範囲内
に限定すべきである。 (6) 窒素 (N):Nは、本合金の高温割れ性に対して有害
な元素であり、その含有量が0.0030wt.%を超える
と、本合金で脱酸剤として使用されているAlと反応して
AlN を生成し、粒界に存在するAlN により粒界脆化が引
き起こされ、本発明で意図する溶接性が得られず、靱性
も劣化する。従って、N含有量は、0.0030wt.%以
下に限定すべきである。 (7) ボロン(B) :Bは、耐溶接割れ性に重要な合金の粒
界強度を向上させる元素である。従って、必要に応じこ
れを含有させる。但し、B含有量が0.010wt.%を超
えると著しく偏析して粒界の延性を低下させ逆に有害に
なる。従って、Bを含有させる場合には、その量を0.
010wt.%以下に限定すべきである。 (8) カルシウム(Ca) 、マグネシウム(Mg)、チタン(T
i)、ジルコニウム(Zr) Ca、Mg、Ti、Zrは、何れも脱酸、脱硫作用を有してお
り、これら元素の少なくとも1つを含有させることによ
って、耐溶接割れ性を向上させることができる。
ンバー合金の化学成分組成を、上述した範囲内に限定し
た理由について、以下に述べる。 (1) ニッケル(Ni):Niは、このFe−Ni系アンバー
合金の熱膨張率を支配する主要な元素であり、Niを3
0〜45wt.%含有させることにより、常温からLNGの
温度である−162℃までの温度範囲において、低い熱
膨張係数を確保することができる。Ni含有量が30w
t.%未満または45wt.%を超えると、熱膨張係数が高く
なり、溶接施工時に高温割れが発生する。従って、Ni
含有量は、30〜45wt.%の範囲内に限定すべきであ
る。 (2) 燐(P):Pは、溶接高温割れを起こす有害な元素で
あり、その含有量が0.0070wt.%を超えると溶接時
の冷却過程において、オーステナイト粒界において低融
点の燐の化合物が生成して粒界が脆化する結果、本発明
で意図する溶接性が得られず、粒界の微小な割れによっ
て靱性も劣化する。従って、P含有量は、0.0070
wt.%以下に限定すべきである。 (3) 硫黄(S) :Sは、溶接高温割れ性に対して特に有害
な元素であり、その含有量が0.0030wt.%を超える
と、溶接時の冷却過程においてオーステナイト粒界にお
いてMnSが生成して粒界が脆化する結果、本発明で意
図する溶接性が得られず、粒界の微小な割れによって靱
性が劣化する。従って、S含有量は、0.0030wt.%
以下に限定すべきである。 (4) 酸素(0):Oは、本合金において非金属介在物を低
減するために、特に制御しなければならない有害な元素
である。Oが0.0040wt.%を超えると、介在物が本
合金中に多くなり、溶接時の冷却過程において、オース
テナイト粒界で低融点の酸化物が生成し、粒界が脆化す
る結果、本発明で意図する溶接性が得られず、粒界強度
の低下によって靱性も劣化する。従って、O含有量は、
0.0040wt.%以下に限定すべきである。 (5) アルミニウム(Al) :Alは、脱酸剤として添加され
る必須元素である。しかしながら、その含有量が0.0
06wt.%未満ではOが本発明の上限値である0.004
0wt.%を超え、酸化物系介在物が本合金中に多くなる。
一方、Al含有量が0.030wt.%を超えると逆に酸化物
系介在物が多くなる結果、本発明で意図する溶接性が得
られず、粒界強度の低下によって靱性も劣化する。従っ
て、Al含有量は、0.006〜0.030wt.%の範囲内
に限定すべきである。 (6) 窒素 (N):Nは、本合金の高温割れ性に対して有害
な元素であり、その含有量が0.0030wt.%を超える
と、本合金で脱酸剤として使用されているAlと反応して
AlN を生成し、粒界に存在するAlN により粒界脆化が引
き起こされ、本発明で意図する溶接性が得られず、靱性
も劣化する。従って、N含有量は、0.0030wt.%以
下に限定すべきである。 (7) ボロン(B) :Bは、耐溶接割れ性に重要な合金の粒
界強度を向上させる元素である。従って、必要に応じこ
れを含有させる。但し、B含有量が0.010wt.%を超
えると著しく偏析して粒界の延性を低下させ逆に有害に
なる。従って、Bを含有させる場合には、その量を0.
010wt.%以下に限定すべきである。 (8) カルシウム(Ca) 、マグネシウム(Mg)、チタン(T
i)、ジルコニウム(Zr) Ca、Mg、Ti、Zrは、何れも脱酸、脱硫作用を有してお
り、これら元素の少なくとも1つを含有させることによ
って、耐溶接割れ性を向上させることができる。
【0014】しかしながら、CaおよびMgの含有量が0.01
0 wt.%を超えると、逆に溶接時に粒界脆化が生ずるよう
になる。また、Tiの含有量が0.10wt.%を超えると母相元
素と金属間化合物が形成され脆化を促進させる。ZrもTi
と同様に、その含有量が0.20wt.%を超えると脆化を促進
させる。従って、CaおよびMgの含有量は0.010 wt.%以下
に、Tiの含有量が0.10wt.%以下に、そして、Zr含有量は
0.20wt.%以下に限定すべきである。 (9) (S+1/5 O+1/2 P) 本発明の目的である、低熱膨張特性等の物理的性質や機
械的性質を阻害することなく、耐溶接割れ性を改善し、
靱性の優れたFe−Ni系アンバー合金を得るために
は、(S+1/5 O+1/2 P)の値IPIを、0.004
5wt.%以下とすることが必要である。
0 wt.%を超えると、逆に溶接時に粒界脆化が生ずるよう
になる。また、Tiの含有量が0.10wt.%を超えると母相元
素と金属間化合物が形成され脆化を促進させる。ZrもTi
と同様に、その含有量が0.20wt.%を超えると脆化を促進
させる。従って、CaおよびMgの含有量は0.010 wt.%以下
に、Tiの含有量が0.10wt.%以下に、そして、Zr含有量は
0.20wt.%以下に限定すべきである。 (9) (S+1/5 O+1/2 P) 本発明の目的である、低熱膨張特性等の物理的性質や機
械的性質を阻害することなく、耐溶接割れ性を改善し、
靱性の優れたFe−Ni系アンバー合金を得るために
は、(S+1/5 O+1/2 P)の値IPIを、0.004
5wt.%以下とすることが必要である。
【0015】図1は、(S+1/5 O+1/2 P)の値IP
Iと、凝固割れ長さおよび再熱割れ長さとの関係を示す
グラフであって、清浄度は本発明の範囲内の0.019
%以下とする。なお、凝固割れ長さおよび再熱割れ長さ
の測定は、後述するバレストレイン試験によって行っ
た。
Iと、凝固割れ長さおよび再熱割れ長さとの関係を示す
グラフであって、清浄度は本発明の範囲内の0.019
%以下とする。なお、凝固割れ長さおよび再熱割れ長さ
の測定は、後述するバレストレイン試験によって行っ
た。
【0016】図1において、白四角印は凝固割れ長さを
示し、黒丸印は再熱割れ長さを示す。図1から明らかな
ように、上記IPI値を0.0045wt.%以下にするこ
とによって、凝固割れ長さおよび再熱割れ長さは共に0
または0に近くなり、耐溶接割れ性が顕著に改善され
る。 (10)(Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S+2
O) 本発明合金の靱性を向上させるためには、脱酸、脱硫作
用を有するCa、Mg、Ti、Zrの少なくとも1つの含有量
を、(Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S+2
O)で表される値IPRが1以上であることを必要とす
る。
示し、黒丸印は再熱割れ長さを示す。図1から明らかな
ように、上記IPI値を0.0045wt.%以下にするこ
とによって、凝固割れ長さおよび再熱割れ長さは共に0
または0に近くなり、耐溶接割れ性が顕著に改善され
る。 (10)(Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S+2
O) 本発明合金の靱性を向上させるためには、脱酸、脱硫作
用を有するCa、Mg、Ti、Zrの少なくとも1つの含有量
を、(Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S+2
O)で表される値IPRが1以上であることを必要とす
る。
【0017】図2は、(Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8
Zr)/(S+2O)で表されるIPR値と、凝固割れ
長さおよび再熱割れ長さとの関係を示すグラフであっ
て、清浄度は本発明の範囲内の0.019%以下とす
る。なお、凝固割れ長さおよび再熱割れ長さの測定は、
上記と同様、バレストレイン試験によって行った。
Zr)/(S+2O)で表されるIPR値と、凝固割れ
長さおよび再熱割れ長さとの関係を示すグラフであっ
て、清浄度は本発明の範囲内の0.019%以下とす
る。なお、凝固割れ長さおよび再熱割れ長さの測定は、
上記と同様、バレストレイン試験によって行った。
【0018】図2において、白四角印は凝固割れ長さを
示し、黒丸印は再熱割れ長さを示す。図2から明らかな
ように、上記IPR値を1以上とすることによって、凝
固割れ長さおよび再熱割れ長さは共に0または0に近く
なり、耐溶接割れ性が顕著に改善されると共に、靱性が
著しく向上する。 (11)清浄度 本発明合金の溶接性を、より良好なレベルとするために
は、JIS G 0555に従って測定される合金の清浄度を0.
019%以下とすることが必要である。清浄度が0.0
19%を超えると、合金中に非金属介在物が多くなり、
耐溶接割れ性が低下する。
示し、黒丸印は再熱割れ長さを示す。図2から明らかな
ように、上記IPR値を1以上とすることによって、凝
固割れ長さおよび再熱割れ長さは共に0または0に近く
なり、耐溶接割れ性が顕著に改善されると共に、靱性が
著しく向上する。 (11)清浄度 本発明合金の溶接性を、より良好なレベルとするために
は、JIS G 0555に従って測定される合金の清浄度を0.
019%以下とすることが必要である。清浄度が0.0
19%を超えると、合金中に非金属介在物が多くなり、
耐溶接割れ性が低下する。
【0019】なお、本発明においては特に規定してはい
ないが、Cは0.03wt.%以下の範囲で、また、Siは
0.18wt.%以下の範囲でそれぞれ含有していることが
許容される。また、必要に応じ、Mn,Si,Cr,Co,Mo,
Cu,Nbの少なくとも1つを1.0wt.%以下含有し、そし
て、Hf, Taの少なくとも1つを0.1wt.%以下含有して
いても、本発明の効果を何ら阻害するものではない。
ないが、Cは0.03wt.%以下の範囲で、また、Siは
0.18wt.%以下の範囲でそれぞれ含有していることが
許容される。また、必要に応じ、Mn,Si,Cr,Co,Mo,
Cu,Nbの少なくとも1つを1.0wt.%以下含有し、そし
て、Hf, Taの少なくとも1つを0.1wt.%以下含有して
いても、本発明の効果を何ら阻害するものではない。
【0020】
【実施例】次に、この発明を、実施例により比較例と対
比しながら説明する。表1に示す本発明の範囲内の化学
成分組成を有する合金を試験炉において真空溶解し、得
られた鋼塊を分塊、熱延、焼鈍の各工程を経て本発明供
試体No. 1〜14を調製した。比較のために、その少な
くとも1つの成分が本発明の範囲外の化学成分組成を有
する合金を試験炉において真空溶解し、得られた鋼塊を
分塊、熱延、焼鈍の各工程を経て比較用供試体No. 15
〜26を調製した。
比しながら説明する。表1に示す本発明の範囲内の化学
成分組成を有する合金を試験炉において真空溶解し、得
られた鋼塊を分塊、熱延、焼鈍の各工程を経て本発明供
試体No. 1〜14を調製した。比較のために、その少な
くとも1つの成分が本発明の範囲外の化学成分組成を有
する合金を試験炉において真空溶解し、得られた鋼塊を
分塊、熱延、焼鈍の各工程を経て比較用供試体No. 15
〜26を調製した。
【0021】
【表1】
【0022】上述した本発明供試体および比較用供試体
の各々に対して、次のようなクロスビード方式のバレス
トレイン試験を施した。即ち、上記各供試体から板厚5
mmの試験片を採取し、この試験片に対し、入熱18KJ/c
m の条件によりTIG溶接して第1ビードを形成し、次
いで、上記と同じ条件でTIG溶接して、第1ビードと
直交する第2ビードを形成した。そして、第1ビードに
第2ビードが達したときに、試験片に対し0.5%相当
の曲げ歪みを急激に与え、冷却後に生じた割れを光学顕
微鏡により観察し、第1ビード割れ長さにより高温凝固
割れを評価し、第2ビード割れ長さにより再熱割れ長さ
を評価した。表2に、各供試体の清浄度および第1ビー
ド割れ長さ、第2ビード割れ長さを示す。
の各々に対して、次のようなクロスビード方式のバレス
トレイン試験を施した。即ち、上記各供試体から板厚5
mmの試験片を採取し、この試験片に対し、入熱18KJ/c
m の条件によりTIG溶接して第1ビードを形成し、次
いで、上記と同じ条件でTIG溶接して、第1ビードと
直交する第2ビードを形成した。そして、第1ビードに
第2ビードが達したときに、試験片に対し0.5%相当
の曲げ歪みを急激に与え、冷却後に生じた割れを光学顕
微鏡により観察し、第1ビード割れ長さにより高温凝固
割れを評価し、第2ビード割れ長さにより再熱割れ長さ
を評価した。表2に、各供試体の清浄度および第1ビー
ド割れ長さ、第2ビード割れ長さを示す。
【0023】
【表2】
【0024】表1および表2から明らかなように、比較
用供試体No. 15〜23の各々は、順にS量,P量,O
量,Al量,N量,B量,Ca量,Mg量,Ti量およ
びZr量が本発明の範囲を超えるものであって、耐溶接
割れ性に劣っていた。
用供試体No. 15〜23の各々は、順にS量,P量,O
量,Al量,N量,B量,Ca量,Mg量,Ti量およ
びZr量が本発明の範囲を超えるものであって、耐溶接
割れ性に劣っていた。
【0025】また、比較用供試体No. 24は、1式に規
定する(S+1/5 O+1/2 P)値が本発明範囲を超える
ものであり、そして、比較用供試体No. 25は、2式に
規定する(Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S
+2O)が本発明の範囲を外れるものであって、何れ
も、耐溶接割れ性に劣っていた。比較用供試体No. 26
は、清浄度が本発明の範囲を超えており、同じく耐溶接
割れ性に劣っていた。
定する(S+1/5 O+1/2 P)値が本発明範囲を超える
ものであり、そして、比較用供試体No. 25は、2式に
規定する(Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S
+2O)が本発明の範囲を外れるものであって、何れ
も、耐溶接割れ性に劣っていた。比較用供試体No. 26
は、清浄度が本発明の範囲を超えており、同じく耐溶接
割れ性に劣っていた。
【0026】これに対し、本発明供試体No. 1〜14
は、高温割れが全く生ぜず、耐溶接割れ性に優れてい
た。このように、本発明によって、合金中のP,S,
O,Al,N,B,Ca,Mg,Ti,Zr量よび非金
属介在物の含有量を低減および規定し、そして、Ca,
Mg,Ti,Zrのうちの少なくとも1つの元素を、
P,S,Oの総量に見合う特定量含有させれば、耐溶接
割れ性および優れた靱性を発揮させることができる。
は、高温割れが全く生ぜず、耐溶接割れ性に優れてい
た。このように、本発明によって、合金中のP,S,
O,Al,N,B,Ca,Mg,Ti,Zr量よび非金
属介在物の含有量を低減および規定し、そして、Ca,
Mg,Ti,Zrのうちの少なくとも1つの元素を、
P,S,Oの総量に見合う特定量含有させれば、耐溶接
割れ性および優れた靱性を発揮させることができる。
【0027】
【発明の効果】以上述べたように、この発明によれば、
低熱膨張特性等の物理的性質や機械的性質を阻害するこ
となく、耐溶接割れ性を改善し、靱性の優れたFe−N
i系アンバー合金を得ることができる、工業上優れた効
果が発揮される。
低熱膨張特性等の物理的性質や機械的性質を阻害するこ
となく、耐溶接割れ性を改善し、靱性の優れたFe−N
i系アンバー合金を得ることができる、工業上優れた効
果が発揮される。
【図1】(S+1/5 O+1/2 P)の値IPIと、凝固割
れ長さおよび再熱割れ長さとの関係を示すグラフであ
る。
れ長さおよび再熱割れ長さとの関係を示すグラフであ
る。
【図2】(Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S
+2O)の値IPRと凝固割れ長さおよび再熱割れ長さ
との関係を示すグラフである。
+2O)の値IPRと凝固割れ長さおよび再熱割れ長さ
との関係を示すグラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 釣崎 勝義 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (56)参考文献 特開 平10−36948(JP,A) 特開 平10−18000(JP,A) 特開 平10−70706(JP,A) 特開 平7−62431(JP,A) 特開 昭56−44749(JP,A) 特開 昭53−83921(JP,A) 特開 昭49−65315(JP,A) 特開 昭62−290846(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22C 38/00 - 38/60
Claims (2)
- 【請求項1】ニッケル(Ni) : 30 〜 45 wt.%、 硫黄(S) : 0.0030 wt.%以下、 燐(P) : 0.0070 wt.%以下、 酸素(O) : 0.0040 wt.%以下、 アルミニウム(Al): 0.006〜0.030 wt.% 窒素(N) : 0.0030 wt.%以下、 下記からなる群から選んだ少なくとも1つの元素 カルシウム(Ca) : 0.010 wt.% 以下、 マグネシウム(Mg): 0.010 wt.% 以下、 チタン(Ti) : 0.10 wt.%以下、 ジルコニウム(Zr): 0.20 wt.%以下、および、 残り、鉄および不可避的不純物からなり、更に、 下記(1) 式および(2) 式を満足し、 (S+1/5 O+1/2 P)≦0.0045・・・・・・・・・・(1) (Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S+2O)≧1・・・・(2) そして、清浄度が0.019%以下であることを特徴と
する、溶接性に優れたFe−Ni系アンバー合金。 - 【請求項2】ニッケル(Ni) : 30 〜 45 wt.%、 硫黄(S) : 0.0030 wt.%以下、 燐(P) : 0.0070 wt.%以下、 酸素(O) : 0.0040 wt.%以下、 アルミニウム(Al): 0.006〜0.030 wt.% 窒素(N) : 0.0030 wt.%以下、 ボロン(B) : 0.010 wt.% 以下、 下記からなる群から選んだ少なくとも1つの元素 カルシウム(Ca) : 0.010 wt.% 以下、 マグネシウム(Mg): 0.010 wt.% 以下、 チタン(Ti) : 0.10 wt.%以下、 ジルコニウム(Zr): 0.20 wt.%以下、および、 残り、鉄および不可避的不純物からなり、更に、 下記(1) 式および(2) 式を満足し、 (S+1/5 O+1/2 P)≦0.0045・・・・・・・・・・(1) (Ca+2Mg+1.5 Ti+0.8 Zr)/(S+2O)≧1・・・・(2) そして、清浄度が0.019%以下であることを特徴と
する、溶接性に優れたFe−Ni系アンバー合金。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29546596A JP3279199B2 (ja) | 1996-11-07 | 1996-11-07 | 溶接性に優れたFe−Ni系アンバー合金 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP29546596A JP3279199B2 (ja) | 1996-11-07 | 1996-11-07 | 溶接性に優れたFe−Ni系アンバー合金 |
Publications (2)
Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH10140288A JPH10140288A (ja) | 1998-05-26 |
JP3279199B2 true JP3279199B2 (ja) | 2002-04-30 |
Family
ID=17820952
Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
---|---|---|---|
JP29546596A Expired - Fee Related JP3279199B2 (ja) | 1996-11-07 | 1996-11-07 | 溶接性に優れたFe−Ni系アンバー合金 |
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Country | Link |
---|---|
JP (1) | JP3279199B2 (ja) |
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Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
---|---|---|---|---|
EP4083249A4 (en) * | 2019-12-27 | 2023-11-29 | Nippon Steel Corporation | ALLOY |
-
1996
- 1996-11-07 JP JP29546596A patent/JP3279199B2/ja not_active Expired - Fee Related
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH10140288A (ja) | 1998-05-26 |
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