JP3276121B2 - 繊維糊剤組成物 - Google Patents

繊維糊剤組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリビニルアルコール
(以下、PVAと略記する)を用いた繊維糊剤組成物に
関し、更に詳しくは、繊維同士の膠着性の改善されたP
VA系繊維糊剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】従来より、長繊維織物の製造に際して使
用される経糸糊剤としては、ポリビニルアルコール又は
変性ポリビニルアルコールを主体とし、これに適宜油剤
や助剤を配合したり、アクリル系共重合体や澱粉などを
配合した水溶液が広く実用に供されている。しかしなが
ら、かかる従来の繊維糊剤にあっては接着性が不足した
り、落糊や毛羽発生を完全には防止しえなかったり、抱
合力が低かったり、又製織性が悪かったりすることが多
かった。かかる欠点を解決すべく、本出願人はPVAに
糖類を配合する方法(特開昭52−81191号公
報)、低ケン化PVAにアニオン系界面活性剤を配合す
る方法(特開昭53−86890号公報)、曇点が発現
しないPVAを併用する方法(特開昭54−16088
2号公報)及びスルホン酸変性PVAと有機酸アルカリ
金属塩を用いる方法(特開昭54−160883号公
報)を出願した。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、最近の
織機の性能向上に伴い、市場での要求も一段と厳しくな
り、特に接着性及び膠着性の一層の向上が望まれている
のである。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等はか
かる課題を解決すべく鋭意研究を重ねた結果、ケン化度
40モル%以上、平均重合度300〜2000のPVA
系樹脂及び炭素数6以上のヒドロキシ脂肪酸又はその誘
導体を含有してなり、PVA系樹脂100重量部に対し
て炭素数6以上のヒドロキシ脂肪酸又はその誘導体が
0.1〜20重量部配合されている繊維糊剤組成物が、
繊維同士の膠着性防止効果に優れ、かつ繊維への接着
性、抱合力、毛羽や糸切れの防止、製織性等の繊維糊剤
に要求される性能を充分満足することを見出し本発明を
完成するに至った。以下、本発明について詳述する。
【0005】本発明のPVA系樹脂は、通常、公知の方
法で製造される。かかるPVA系樹脂とは、ポリ酢酸ビ
ニルのケン化物のみならず、ビニルエステルと共重合し
うる単量体、例えばエチレン、プレピレン、イソブチレ
ン、α−オクテン、α−ドデセン、α−オクタデセン等
のオレフィン類、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン
酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸等の不飽
和酸類あるいはその塩あるいはモノ又はジアルキルエス
テル等、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のニ
トリル類、アクリルアミド、メタクリルアミド等のアミ
ド類、エチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、メタア
リルスルホン酸等のオレフィンスルホン酸あるいはその
塩、アルキルビニルエーテル類、N−アクリルアミドメ
チルトリメチルアンモニウムクロライド、アリルトリメ
チルアンモニウムクロライド、ジメチルジアリルビニル
ケトン、Nービニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニ
リデン、ポリオキシエチレン(メタ)アリルエーテル、
ポリオキシプロピレン(メタ)アリルエーテルなどのポ
リオキシアルキレン(メタ)アリルエーテル、ポリオキ
シエチレン(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレ
ン(メタ)アクリレート等のポリオキシアルキレン(メ
タ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリ
ルアミド、ポリオキシプロピレン(メタ)アクリルアミ
ド等のポリオキシアルキレン(メタ)アクリルアミド、
ポリオキシエチレン(1−(メタ)アクリルアミド−
1,1−ジメチルプロピル)エステル、ポリオキシエチ
レンビニルエーテル、ポリオキシプロピレンビニルエー
テル、ポリオキシエチレンアリルアミン、ポリオキシプ
ロピレンアリルアミン、ポリオキシエチレンビニルアミ
ン、ポリオキシプロピレンビニルアミン等との共重合体
ケン化物が挙げられるが、必ずしもこれに限定されるも
のではない。該PVA系樹脂は1種のみならず2種以上
併用して用いることも可能である。
【0006】但し、本発明においてはケン化度40モル
%、平均重合度300〜2000のPVAであることが
必須でケン化度が40モル%未満では、糊付糸の粘着性
が大きくなり該糸の取扱いが困難となり、又平均重合度
が300未満では、糊剤の形成皮膜の強度も弱くなり、
落糊が多くなり、性能が発揮できず、2000を越える
と糊剤の粘度が高くなり、糊付が不可能となる。尚、平
均重合度とは、残存酢酸基を完全にケン化し、水溶液の
極限粘度から求めた値を言う。
【0007】また、本発明における炭素数6以上のヒド
ロキシ脂肪酸とは、2−オキシ−2−メチルペンタン
酸、2−オキシ−5−メチルヘキサン酸、3−オキシ−
2−メチルペンタン酸、11−オキシテトラデカン酸、
11−オキシヘキサデカン酸、14−オキシヘキサデカ
ン酸、12−オキシドデカン酸、16−オキシヘキサデ
カン酸、12−オキシオクタデカン酸、9−オキシオク
タデカン酸、22−オキシドコサン酸及びこれらのアル
カリ塩、エステル化物等があげられ、特に12−オキシ
オクタデカン酸が実用的である。炭素数が5以下のヒド
ロキシ脂肪酸では本発明のごとき効果は発揮できない。
かかるヒドロキシ脂肪酸は、PVA系樹脂100重量部
に対して0.1〜20重量部、好ましくは0.1〜5重
量部混合される。混合量が0.1重量部未満では本発明
の効果は発揮できず、20重量部を越える場合は抱合力
が低下し、製織効率に劣る。
【0008】本発明の樹脂組成物を得るためのPVA系
樹脂、炭素数6以上のヒドロキシ脂肪酸類のブレンド方
法としては、通常よく知られている方法、即ち撹拌機付
き溶融缶、押出機、ロール混練機等により溶融混合され
る。またブレンド順序にも特別の制限はなく、2種類の
樹脂を同時にブレンドしても良いし、一方の樹脂に他方
の樹脂をブレンドする方法のいずれでも良い。かかる溶
融混合温度は120〜180℃程度が好適である。糊液
調製にあたっては上記PVA及びヒドロキシ脂肪酸類の
ほかにさらに他の糊剤、例えばアクリル系糊剤、澱粉、
化工澱粉、カルボキシメチルセルロース等の高分子や各
種の油剤を併用しても、上記効果には変わりなく、また
場合によっては一段と効果が大きくなることもある。
【0009】特にアクリル系糊剤との併用は重要であ
り、この併用により極めて優秀な繊維糊剤が得られる。
アクリル系糊剤とはアクリル酸エステル、メタクリル酸
エステルを主体とした疎水性モノマーとアクリル酸、メ
タクリル酸をはじめとするエチレン性不飽和カルボン酸
やスルホン酸との共重合体をアルカリ性物質で中和して
水溶性又は水分散性にしたものを言う。アクリル系糊剤
と併用するときの配合割合は前記PVAとアクリル系糊
剤との重量比が95:5〜60:40の範囲に入るよう
に選択するのが最も適当であり、アクリル系糊剤の割合
が余りに少ないときは併用による相乗効果を期待しがた
く、一方アクリル系糊剤の割合が余りに多いときは糊付
糸の粘着性が高くなり、織機上で落糊がガムアップし、
さらにワープビームで経糸が膠着し、開口状態が悪くな
る上、コスト的にも不利になる。
【0010】また、公知の経糸糊付用の平滑剤、柔軟
剤、浸透剤、静電防止剤、消泡剤などの油剤、助剤を適
当量併用しても何ら差し支えない。糊液中の樹脂分濃度
は、2〜13重量%にコントロールするのが通常であ
る。かくして調製された糊液は、フィラメント糸、ウー
リー加工糸、紡績糸などの糊付けに供されるが、経糸糊
剤としてのみでなく、繊維製品の仕上剤としての使用も
可能である。
【0011】
【作 用】本発明の繊維糊剤組成物は、PVA系樹脂
に特定のヒドロキシ脂肪酸を配合しているため、繊維へ
の接着力、抱合力、毛羽や糸切れの防止、製織性等の繊
維糊剤の一般的性能を有し、かつ繊維同士の膠着性防止
効果に優れており、大変有用である。
【0012】
【実施例】以下、実施例を本発明を具体的に説明する。
尚、実施例中、「部」、「%」とあるのは、特に断りの
ない限り重量基準である。 実施例1 (糊液組成) ・ケン化度75モル%、平均重合度500のPVA 100部 ・12−オキシオクタデカン酸 2部 ・アクリル系糊剤 500部 (プラスサイズ780,互応化学工業社製, アクリル酸エステル共重合体ナトリウム塩,30%溶液) ・油剤 20部 (サイテックスT−190,互応化学工業社製, ワックス及び非イオン活性剤含有,30%溶液) ・水 2000部
【0013】(糊付条件) 対象糸 ポリエステルフィラメント糸 (75デニール/36フィラメント、無撚) 糊付機 津田駒社製KS−J型ワーピングスラッシャ
ー 糊付条件 絞り全荷重 180〜260kg 糊液温度 50℃ 乾燥温度 チャンバー 120℃×2 シリンダー 100℃×2 巻取速度 95m/min 着量 12.1%
【0014】(製織条件) 織物はタフタで、総経糸本数4600本、織上巾38イ
ンチ、経糸密度118本/インチ、緯糸密度90本/イ
ンチ、織機は自動織機160rpmで、50mを1疋と
して1〜40疋まで糊付し、製織した。接着性、膠着
性、抱合力、毛羽や糸切れの発生状況、製織効率を調べ
た。評価結果は表3に示す。尚、評価方法は以下の通
り。
【0015】・接着性 別途テトロンフイルム上に10μ厚に糊剤を製膜し、2
5℃、75%RHに1週間放置後、糊皮膜/テトロンフ
イルムの層間の剥離強度を測定した。 引張速度は40mm/min ・膠着性 糊付後の糊付糸を1本だけボビンに巻取り、25℃、8
5%RHに1週間放置後、20℃、65%RHの条件下
で、糊付糸をボビンから解除する(速度10m/min)
時の抵抗(g)を測定した。 ・抱合力 糊付後の糊付糸をTM式抱合度試験機(松井精機製)を
用いて荷重100g/10本、角度145゜で摩擦した
時のフィラメントが集束を失うまでの平均摩擦回数を測
定した。 ・毛羽及び糸切れ発生 製織時の毛羽(単糸切れ)及び糸切れによる織機の停台
回数(回/疋)を測定した。 ・製織効率 製織時の織機の回転数と緯糸打込密度による目的織上げ
時間と、実際の織上げ時間との比を%で表した。
【0016】実施例2〜5及び比較例1〜6 表1,表2に示す糊液を用いて実施例1と同様に糊付・
製織を行い、同様に評価を行った。評価結果は表3に示
す。
【表1】 P V A ヒドロキシ脂肪酸類 SV(モル%) P 配合量(部) 化合物名 配合量(部) 実施例1 75 500 100 12−オキシオクタテ゛カン酸 2 〃 2 78 〃 〃 〃 0.5 〃 3 70 〃 〃 〃 3 〃 4 82 〃 〃 〃 2 〃 5 75 1500 〃 〃 2 比較例1 75 500 100 − 0 〃 2 75 〃 〃 12−オキシオクタテ゛カン酸 30 〃 3 75 〃 〃 オキシフ゜ロヒ゜オン酸 2 〃 4 75 100 〃 12−オキシオクタテ゛カン酸 2 〃 5 75 3000 〃 〃 2 〃 6 30 500 〃 〃 2 註)SV:ケン化度、P:平均重合度
【0017】
【表2】 アクリル系糊剤 油 剤* 配合量(部) 配合量(部) 配合量(部) 実施例1 100 10 2000 〃 2 〃 〃 〃 〃 3 〃 〃 〃 〃 4 〃 〃 〃 〃 5 〃 〃 〃 比較例1 500 20 2000 〃 2 〃 〃 〃 〃 3 〃 〃 〃 〃 4 〃 〃 〃 〃 5 〃 〃 〃 〃 6 〃 〃 〃 *アクリル系糊剤及び油剤はそれぞれ有効成分が20%及び30%のものを配合
【0018】
【表3】 接着性 着量 膠着性 抱合力 毛羽及び糸切れ発生 製織効率 (g/cm) (%) (g) (回) (回/疋) (%) 実施例1 150 12.1 0.8 30 0.1 93 〃 2 130 12.3 1.0 30 0.8 88 〃 3 140 11.9 0.7 35 0.1 92 〃 4 100 11.8 0.6 30 0.9 85 〃 5 160 13.6 1.0 35 0.1 90 比較例1 160 12.2 2.0 30 1.3 80 〃 2 50 11.2 0.3 15 0.7 78 〃 3 150 12.4 2.5 30 1.4 80 〃 4 100 10.8 1.8 10 1.7 80 〃 5 150 粘度高く糊付け不可 − − 〃 6 190 13.1 2.5 35 膠着ひどく製織不可
【0019】
【発明の効果】本発明の繊維糊剤組成物は、PVA系樹
脂に特定のヒドロキシ脂肪酸を配合しているため、繊維
への接着力、抱合力、毛羽や糸切れの防止、製織性等の
繊維糊剤の一般的性能を有し、かつ繊維同士の膠着性防
止効果に優れており、大変有用である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ケン化度40モル%以上、平均重合度3
    00〜2000のポリビニルアルコール系樹脂及び炭素
    数6以上のヒドロキシ脂肪酸またはその誘導体を含有し
    てなり、ポリビニルアルコール系樹脂100重量部に対
    して炭素数6以上のヒドロキシ脂肪酸又はその誘導体が
    0.1〜20重量部配合されていることを特徴とする繊
    維糊剤組成物。
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