JP3275594B2 - アルカリ蓄電池用正極の製造法 - Google Patents

アルカリ蓄電池用正極の製造法

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哲郎 大越
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は多孔性ニッケル焼結基板
を用いたアルカリ蓄電池用正極の製造法に関するもので
ある。
【0002】
【従来の技術】一般に急速充放電用アルカリ蓄電池の正
極としては、内部抵抗が小さくサイクル特性に優れた、
焼結式水酸化ニッケル電極が用いられる。この焼結式電
極は、まず、ニッケル粉末に増粘剤、および分散媒を含
むスラリを導電性芯体の両面に塗布し、乾燥後、還元性
雰囲気下で700〜1000℃の高温で焼成し、多孔質
の焼結基板を作製する。次に、当該基板を硝酸ニッケル
溶液に浸漬し、次いでアルカリ溶液中に浸漬し水酸化ニ
ッケル(活物質)を形成させるという充填操作を数回繰
り返すことによって製造する。充填操作を数回繰り返す
理由は、1回の充填操作では充分な活物質量を充填でき
ないためである。製造工程上、前記充填操作を繰り返す
回数は少ないほど好ましい。そのためには、硝酸ニッケ
ル溶液を高濃度にし、1回の浸漬操作での充填できる活
物質量を増やせばよいことが知られている。硝酸ニッケ
ル溶液を高濃度にするには、硝酸ニッケル溶液を高温に
ればよく、比重1.7〜1.8までにすることができ
る。しかし、そのような高濃度の硝酸ニッケル溶液は、
pHが低く、さらに高温であるため、これに浸漬した焼
結基板は腐食を受け、その結果機械的強度が劣化する。
そのような正極を用いて電池を形成し、充放電を繰り返
すと、充放電反応は活物質の膨張、収縮を伴うものであ
るため活物質の脱落を引き起こし、寿命性能が低下する
という問題を生ずる。また、近年、電池の高エネルギー
密度化が要望され、そのために高多孔度の焼結基板を用
いる必要性が生じてきた。焼結基板は、高多孔度化する
ほど腐食による脆弱化が大きくなる。そこで特開昭59
−78457号公報では、硝酸塩の含浸の前に焼結基板
表面を高温の大気雰囲気下で酸化し、比較的耐酸性を有
する酸化ニッケル被膜を形成させるという防蝕技術を提
案している。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記特開昭5
9−78457号公報で提案している技術では、防
効果は、充分に得られない。また、この技術で焼結基板
表面に形成される酸化ニッケル(NiO)は、導電性の
低いものであり、充放電を阻害するおそれがある。本発
明の目的は、高温、高濃度の硝酸ニッケル溶液を用いた
含浸工程において、焼結基板の腐蝕を低減し、且つ、充
放電を阻害しないアルカリ蓄電池用正極の製造法を提供
するものである。
【0004】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に、本発明に係るアルカリ蓄電池用正極の製造法は、多
孔性ニッケル焼結基板表面に2価より大なるニッケル化
合物を形成させた後、該基板に含浸による活物質充填操
作を行うものであって、前記2価より大なるニッケル化
合物は、前記多孔性ニッケル焼結基板表面に水酸化ニッ
ケルを存在させ、これを200℃以上で加熱処理したニ
ッケル酸化物であることを特徴とする。
【0005】
【作用】本発明の作用を以下に説明する。ニッケル焼結
基板を硝酸塩溶液に浸漬すると、ニッケル焼結基板は硝
酸溶液中でニッケルの溶解電位(以下、腐蝕電位と記
す)を示し、溶解(腐蝕)する。前述した特開昭59−
78457号公報で提案している、酸化ニッケル(Ni
O)を焼結基板表面に形成する方法で得られた焼結基板
もNiOが2価の酸化物であるため、硝酸溶液中で腐蝕
電位を示す。この理由は、上記の場合、いずれも焼結基
板が2価のニッケル酸化物あるいはニッケル金属で構成
され、Ni/Ni2+の平衡電位を硝酸塩溶液中で示して
いるためと考えられる。このNi/Ni2+の平衡電位は
腐蝕電位である。焼結基板表面に2価より大なるニッケ
ル化合物を形成させることにより、Ni2+/Ni(2+x)+
(x>0)あるいはNi(2+y)+/Ni(2+z)+(y>0、
z>0、z>y)の平衡電位を硝酸塩溶液中で示す。こ
の平衡電位は上記腐蝕電位ではなく、不動態電位である
ため金属ニッケルは腐蝕しない。
【0006】前記水酸化ニッケルを焼結基板表面に存在
させ、200℃以上で加熱処理する方法では、前記水酸
化ニッケルが2価より大なるニッケル酸化物となる。こ
の場合Ni3O4あるいはそれ以上の酸化数の酸化物と
なっているものと思われる。
【0007】
【実施例】
(実施例1)多孔度80%の焼結基板を常法により作製
し、温度35℃、比重1.2の硝酸ニッケル水溶液に3
0分浸漬し、70℃で乾燥した後、80℃、45wt%
の苛性ソーダ水溶液中に20分浸漬することにより 、
焼結基板表面に水酸化ニッケルを形成させた。この操作
中にも焼結基板を硝酸塩に浸漬するが、硝酸塩の濃度が
低いこと及び温度が低いことにより腐蝕はほとんどされ
なかった。形成量は焼結基板の孔の占有体積の3%を占
める量だった。これを電気炉内で、250℃、4時間加
熱し、基板aを作製した。これらの操作を行うことで焼
結基板表面に2価より大なるニッケル酸化物を形成でき
た。その後100℃、比重1.7の硝酸ニッケル水溶液
に、5分間浸漬し、乾燥し、80℃、20%の苛性ソー
ダ水溶液中に浸漬する一連の充填操作を4回繰り返すこ
とにより、電極 を作製した。
【0008】(比較例1) 実施例1と同条件で焼結基板表面に水酸化ニッケルを形
成させた後、30wt%のKOH水溶液中で形成させた
水酸化ニッケル量に対し充電率0.2CmA、150%
で陽極酸化し、焼結基板表面にNiOOHを形成させ、
基板bを作製した。これらの操作を行うことで焼結基板
表面に2価より大なるニッケル酸化物を形成た。その
実施例1と同様の充填操作を行い、電極を作製し
た。
【0009】(比較例) 実施例1で作製した多孔度80%の焼結基板を、前記特
開昭59−78457号公報のように、硝酸塩の含浸の
前に前記焼結基板表面を高温の大気雰囲気下(500℃
の電気炉内で5分間加熱)で酸化ニッケル(NiO)被
膜を形成して基板cを作製し、実施例1同様に活物質を
充填し、電極を作製した。
【0010】(従来例) 実施例1で作製した多孔度80%の焼結基板に防処理
を施さないものを基板dとし、これに実施例1同様に活
物質を充填し、電極を作製した。
【0011】図1に基板a〜dを硝酸ニッケル水溶液
と同じpHの硝酸水溶液中に浸漬したときの基板が示
す電位の経時変化を示す。電位は、Ag/AgCl/K
Cl飽和溶液の参照電極と基板との電位差を測定し
た。基板aと基板bは、浸漬後30分以上立っても、ニ
ッケルの不動態電位を示したが、基板bの電位が時間と
共に次第に腐蝕電位側に降下するのに対し、基板aの電
位は、降下を示さず安定していた。これは、焼結基板表
面に形成した、2価より大なるニッケル酸化物の違い
よるものと考えられる。それに対し、基板cと基板d
は、電位が低く、ニッケルの腐蝕電位を示した。
【0012】表1に各基板a〜dの活物質充填後の腐蝕
度を、含浸による活物質充填操作前後の基板の重量減
少率として示す。活物質充填操作後の活物質の除去は、
8wt%の酢酸水溶液に1wt%の硫酸ヒドラジニウム
を溶解した溶液に5時間電極を浸漬することにより行っ
た。基板aは、基板b〜dより腐蝕度は小さかった。
発明を用いた基板aによる防蝕効果は明らかである。
【0013】
【表1】
【0014】表2は、作製した各電極を、30wt%の
KOH水溶液中でそれぞれの理論容量(活物質充填を目
的とした含浸工程において充填された活物質量からの計
算値)に対し、0.2CmAの充電を150%行った
後、同じ電解液中でそれぞれ1.0CmA、3.0Cm
Aの放電率で放電したときの活物質利用率の比を示した
ものである。放電終止はHg/HgO参照電極に対し
0.0Vとした。実施例1、比較例1の電極は、約95
%を示し、防蝕処理をしなかった従来例の電極と同等の
値が得られた。比較例2の電極は、焼結基板表面に導電
の乏しいNiO層が存在しているためか、高率放電特
性が劣る結果となった。実施例1の電極については
結基板表面にNi3O4あるいはそれ以上の酸化数の酸化
物が形成され、それが充放電を阻害し、高率放電特性に
劣るのではないかという懸念があったが、特にそのよう
な問題はなかったこれは、水酸化ニッケルを加熱処理
して得られる2価より大なるニッケル酸化物量が当初考
えていたほど多くはないが、図1に示すような硝酸溶液
中でニッケルの不動態電位を示す程度の量は存在し、し
かも電極作製後、電解液中ではそれが充放電に関与して
いるためと考えている。
【0015】
【表2】
【0016】つぎに、作製した各電極と、公知のカドミ
ウム負極を用い、負極/正極の容量比を1.8とし、電
解液には30wt%のKOH水溶液を用い、公称容量5
00mAhのAA型のNi−Cd電池を作製し、充放電
サイクル試験を行った。充放電条件は、充電1.0C、
150%、充電休止1時間、放電1.0C(終止電圧
1.0V)である。その結果を図2に示す。実施例1
電極を用いた電池は良好なサイクル特性を示した。これ
は、図1において基板aの電位が、降下を示さず安定し
ていることによるものと考えられる。
【0017】実施例1では焼結基板表面に水酸化ニッケ
ルを形成した後250℃で加熱処理したが、200℃
以上であれは同様の効果が得られた。
【0018】また、本発明はアルカリ蓄電池用正極に
ついてのものであるが、焼結基板を用い、それを硝酸塩
溶液に浸漬する工程を経て製造する電極、例えばNi−
Cd電池の焼結式カドミウム電極の製造にも応用できる
と考えられる。
【0019】本発明により、アルカリ蓄電池用正極の製
造において、高温、高濃度の硝酸ニッケル溶液を用いた
含浸工程での焼結基板の腐食を低減し、且つ、充放電を
阻害しないアルカリ蓄電池用正極提供することができ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】硝酸溶液中における実施例、比較例1、比較
例2、従来例の基板a〜dが示す電位の経時変化を示
す図である。
【図2】実施例、比較例1、比較例2、従来例の
極を用いた電池のサイクル特性を示す図である。
【符号の説明】
aは実施例1により防処理した基板、bは比較例1
より防処理した基板、cは比較例により防処理し
た基板、dは従来例により防蝕処理しない基板

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】多孔性ニッケル焼結基板表面に2価より大
    なるニッケル化合物を形成させた後、該基板に含浸によ
    る活物質充填操作を行うアルカリ蓄電池用正極の製造法
    であって、前記2価より大なるニッケル化合物は、前記
    多孔性ニッケル焼結基板表面に水酸化ニッケルを存在さ
    せ、これを200℃以上で加熱処理したニッケル酸化物
    であることを特徴とするアルカリ蓄電池用正極の製造
    法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US7976982B2 (en) 2005-01-06 2011-07-12 Panasonic Corporation Alkaline storage battery

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