JP3266808B2 - ワーク保持装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は，リング状のワーク
を，支持体の外周に着脱可能に嵌装，保持するためのワ
ーク保持装置に関する。

【０００２】

【従来の技術】ベアリングやバルブシート等のリング状
のワークを取付体の圧入孔に圧入するにあたって，ワー
クは，圧入孔に挿脱可能に挿入される支持体の外周に嵌
装されるのであるが，圧入方向が上下方向である場合に
は圧入前にワークが支持体から落下することを防止する
必要があり，従来では，ワークの支持体への着脱作動が
可能なコレットが支持体に設けられたり，ワークの内周
に接触するボールが支持体の外周から突出する方向に弾
発付勢されて成るボールプランジャや，ワークの内周に
弾発的に接触するＯリングが支持体に設けられたりして
いる。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】ところが，上記従来の
コレットでは，機構が複雑となるだけでなく，特に小径
であるワークに対しては保持力の調整が困難である。ま
たボールプランジャやＯリングでは，汎用性はあるが破
損し易いので寿命が短い。

【０００４】本発明は，かかる事情に鑑みてなされたも
のであり，簡単な構成で支持体にワークを保持し得るよ
うにするとともに比較的長期間にわたって使用可能なワ
ーク保持装置を提供することを目的とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に，請求項１記載の発明は，リング状のワークを支持体
の外周に着脱可能に嵌装，保持するためのワーク保持装
置において，支持体の外周面に環状溝が設けられ，支持
体の半径方向に沿う弾発力を自ら発揮すべくすり割りを
有してリング状に形成される金属製の保持部材が，ワー
クの内周に弾発的に接触することを可能として前記環状
溝に装着され，前記保持部材が，ワークの内周に弾発的
に接触する円筒部と，大径端を前記円筒部の一端に連な
らせたテーパ部とを有しており，そのテーパ部が，ワー
クが挿脱される支持体の一端側に配置されることを特徴
とする。

【０００６】かかる構成によれば，リング状の保持部材
が支持体の環状溝に装着されるだけの簡単な構成でワー
クを支持体に保持することができ，しかも保持部材が金
属製であることにより，保持部材を長期間にわたり使用
することが可能である。

【０００７】また特にワークの内周に弾発的に接触する
円筒部と，大径端を前記円筒部の一端に連ならせたテー
パ部とを有する保持部材が，ワークが挿脱される支持体
の一端側に前記テーパ部を配置して環状溝に装着される
ので，ワークが保持部材に線接触するものであったとし
ても，支持体の軸線方向に比較的長い範囲で保持部材の
外周をワークの内周に接触させ得るようにして，保持部
材によるワークの安定 的な保持を可能とするとともに，
ワーク内への円筒部の挿脱時にテーパ部でワークを円筒
部まで円滑に案内するようにしてワークの円滑な挿脱が
可能となる。

【０００８】また請求項２記載の発明によれば，保持部
材の内周の周方向に間隔をあけた複数個所に溝が設けら
れることにより，保持部材の弾性を，その周方向に沿っ
て略均等とすることができる。

【０００９】

【発明の実施の形態】以下，本発明の実施の形態を，添
付図面に示した本発明の一実施例に基づいて説明する。

【００１０】図１ないし図５は本発明をバルブシート圧
入装置に適用したときの一実施例を示すものであり，図
１はバルブシート圧入装置の縦断面図，図２はバルブシ
ート圧入直前の状態での図１の要部拡大図，図３は保持
部材の平面図，図４は図３の４−４線断面図，図５は圧
入完了時の図２に対応する断面図である。

【００１１】先ず図１において，固定の支持台１１上に
はシリンダヘッド１２が固定的に支持されており，支持
台１１上において，シリンダヘッド１２は，リング状の
ワークとしてのバルブシート１３を圧入するために該シ
リンダヘッド１２に設けられた圧入孔１４と，バルブシ
ート１３に着座する吸気弁あるいは排気弁のステムを摺
動可能に嵌合させるべくシリンダヘッド１２に圧入され
たガイド筒１５とを，圧入孔１４を上方位置とした鉛直
軸線上に配置した姿勢に在る。

【００１２】支持台１１の上方には，図示しない駆動手
段により昇降駆動される昇降台１６が配置されており，
該昇降台１６に，バルブシート１３を嵌装，保持するた
めの支持体１７と，バルブシート１３に圧入孔１４への
押圧力を作用せしめる押圧体１８とが配設される。

【００１３】図２を併せて参照して，昇降台１６の下部
には，該昇降台１６の下面との間に円板部材１９および
リング板部材２０を挟むようにして円筒状の支持筒２１
が複数のボルト２２，２２…により固着されており，支
持筒２１の下端には，半径方向内方に張出す内向きフラ
ンジ２１ａが一体に設けられる。押圧体１８は，支持筒
２１の内向きフランジ２１ａを上下移動自在に貫通する
円筒部１８ａと，該円筒部１８ａの下端から半径方向内
方に張出す規制鍔部１８ｂと，支持筒２１の内向きフラ
ンジ２１ａに上方から対向するようにして円筒部１８ａ
の上端から半径方向外方に張出す外向きフランジ１８ｃ
と，支持筒２１で同軸に囲繞されるようにして外向きフ
ランジ１８ｃの外端から上方に延びる規制筒部１８ｄと
を有する。しかも支持筒２１内で，規制筒部１８ｄおよ
び円板部材１９間にはリング状の座板２３が配置されて
おり，この座板２３と外向きフランジ１８ｃとの間に
は，外向きフランジ１８ｃおよび座板２３を相互に離反
せしめる方向すなわち外向きフランジ１８ｃを支持筒２
１の内向きフランジ２１ａに近接させる方向のばね力を
発揮する板ばね２４が設けられており，座板２３は，円
板部材２１に押しつけられて実質的に固定される。而し
て押圧体１８は，内向きフランジ２１ａに外向きフラン
ジ１８ｃが当接することにより支持筒２１すなわち昇降
台１６に対する下限位置が規制され，規制筒部１８ｄの
上端が座板２３に当接することにより昇降台１６に対す
る上限位置が規制されるようにして，昇降台１６に支承
されることになる。

【００１４】支持体１７は，横断面円形の外周面を有し
た円柱状のものであり，押圧体１８の円筒部１８ａに摺
動可能に嵌合されるとともに板ばね２４および座板２３
を軸方向移動自在に貫通して上端を円板部材２３に対向
せしめる大径部１７ａと，大径部１７ａよりも小径にし
て大径部１７ａの下端に同軸に連なるとともに押圧体１
８の規制鍔部１８ｂを軸方向移動自在に貫通する中径部
１７ｂと，中径部１７ｂよりも小径にして中径部１７ｂ
の下端に同軸に連なる小径部１７ｃと，下方に向うにつ
れて小径となるようにして小径部１７ｃの下端に同軸に
連なるテーパ部１７ｄとを有する。而して，大径部１７
ａおよび中径部１７ｂ端の段部が，押圧体１８における
規制鍔部１８ｂに当接することにより押圧体１８に対す
る支持体１７の下限位置が規制され，大径部１７ａの上
端が円板部材１９に当接することにより昇降台１６に対
する支持体１７の上限位置が規制される。

【００１５】支持体１７の下部には，該支持体１７の下
面から下方に延びてシリンダヘッド１２のガイド筒１５
に挿脱可能に嵌合されるガイドロッド２５の上端部が同
軸に嵌合されており，このガイドロッド２５の上部外周
に設けられている環状の係合溝２５ａに，支持体１７の
テーパ部１７ｄにその半径方向に沿う軸線を有して螺合
されるねじ部材２６の先端が係合されることにより，ガ
イドロッド２５が支持体１７の下部に同軸に取付けられ
る。しかもガイドロッド２５の下部は，ガイド筒１５へ
の嵌合時に縮径方向に撓んでガイド筒１５への嵌合を円
滑にすべく二叉状に分かれて形成されている。

【００１６】ところで，シリンダヘッド１２の側面に
は，図１で示すように，吸気ポート２７あるいは排気ポ
ートが開口されており，この吸気ポート２７あるいは排
気ポートに通じてシリンダヘッド１２に設けられている
通路２８と，圧入孔１４との間には段部２９が形成され
る。圧入孔１４に圧入されるバルブシート１３は，テー
パ状に形成される内周面１３ａを有してリング状に形成
されており，テーパ状である内周面１３ａの大径端が通
路２８に滑らかに連なるようにして，段部２９に当接す
るまで圧入孔１４に圧入されるものである。

【００１７】圧入孔１４への圧入にあたって，バルブシ
ート１３は，テーパ状である内周面１３ａの大径端を下
方位置として，押圧体１８よりも下方で支持体１７に嵌
装，保持されるものであり，支持体１７における中径部
１７ｂおよび小径部１７ｃの連設部外面に設けられた環
状溝３０に，バルブシート１３の内周に弾発的に接触し
てバルブシート１３の支持体１７からの脱落を阻止する
保持部材３１が装着される。

【００１８】図３および図４を併せて参照して，保持部
材３１は，支持体１７の半径方向に沿う弾発力を自ら発
揮すべく，すり割り３２を有して金属たとえばＪＩＳ−
Ｓ５０Ｃ等によりリング状に形成されており，環状溝３
０への装着時には，その外周を環状溝３０から外方に突
出させてバルブシート１３における内周面１３ａの大径
端すなわち下端に弾発的に接触し得るものである。

【００１９】しかも保持部材３１は，バルブシート１３
の内周に弾発的に接触する円筒部３１ａと，大径端を前
記円筒部３１ａの一端に連ならせたテーパ部３１ｂとか
ら成るものであり，支持体の半径方向に沿う弾発力を発
揮しつつ剛性を高めるために，保持部材３１は，その内
周面の全周にわたる凹部３１ｃが設けられており，略コ
字形の断面形状を有するように形成される。また保持部
材３１の内周の周方向に間隔をあけた複数個所たとえば
３個所には溝３３…が設けられており，該保持部材３１
は，テーパ部３１ｂを下方位置として環状溝３０に装着
される。

【００２０】次にこの実施例に作用について説明する
と，バルブシート１３をシリンダヘッド１２の圧入孔１
４に圧入するにあたっては，昇降台１６を上昇せしめた
状態で，支持体１７にその下方からバルブシート１３を
嵌装せしめる。この際，支持体１７の環状溝３０に装着
されている保持部材３１は，そのテーパ部３１ｂを下方
位置としているので，バルブシート１３を，その下端す
なわち内周面１３ａの大径端を保持部材３１の円筒部３
１ａまで円滑に案内することができ，保持部材３１がそ
の円筒部３１ａをバルブシート１３の内周面１３ａにお
ける下端に弾発的に接触する弾発力を発揮することによ
り，バルブシート１３が支持体１７の外周に嵌装，保持
されることになる。

【００２１】この際，バルブシート１３の内周面１３ａ
がテーパ状に形成されていることにより，保持部材３１
およびバルブシート１３は線接触することになるのであ
るが，バルブシート１３が保持部材３１の円筒部３１ａ
に接触していることにより，支持体１７の軸線方向に比
較的長い範囲で保持部材３１をバルブシート１３の内周
に接触させることができ，バルブシート１３が支持体１
７の軸線方向に多少動いても保持部材３１の円筒部３１
ａをバルブシート１３の内周に弾発接触した状態を保持
するようにしてバルブシート１３の安定的な保持が可能
となる。これに対し，ボールプランジャや０リング等の
ように，バルブシート１３への接触部の断面が円形のも
のである場合には，同じ線接触であっても，接触位置が
支持体１７の軸方向に多少でもずれるとバルブシート１
３の保持ができなくなるものであり，バルブシート１３
の保持が不安定である。

【００２２】保持部材３１によってバルブシート１３が
支持体１７に嵌装，保持された状態で昇降台１６が下降
駆動され，図５で示すように，支持体１７の下端がガイ
ド筒２５の上端に当接するまで下降した後に，さらに昇
降台１６を下降せしめると，押圧体１８が，板ばね２４
を圧縮しながら支持体１７に対して下方に相対移動し，
該押圧体１８の先端で押されることにより，バルブシー
ト１３が段部２９で受けられるまで圧入孔１４に圧入さ
れることになる。この際，シリンダヘッド１２の成形時
の寸法公差によって，図５の鎖線で示すように，圧入孔
１４の段部２９および通路２８の連設部が保持部材３１
に接触する可能性があるが，保持部材３１が，テーパ部
３１ｂを下方位置として環状溝３０に装着されているの
で，前記連設部との接触によって保持部材３１は縮径作
動することになり，支持体１７の降下に支障を来たすこ
とはない。

【００２３】このようにして，バルブシート１３は，圧
入孔１４への圧入まで保持部材３１によって支持体１７
に保持され，支持体１７から落下することはないが，保
持部材３１は，金属製のものであり，バルブシート１３
へに繰り返して弾発的に接触しても損傷を生じるおそれ
はなく，比較的長期間にわたって使用することが可能で
ある。しかも保持部材３１の内周の周方向に間隔をあけ
た複数個所には，溝３３…が設けられており，金属製で
ある保持部材３１の弾性を周方向に沿ってほぼ均等にす
ることが可能であり，それにより，バルブシート１３の
支持体１７への保持をより確実なものとすることができ
る。

【００２４】以上，本発明の実施例を詳述したが，本発
明は上記実施例に限定されるものではなく，特許請求の
範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計
変更を行なうことが可能である。

【００２５】たとえば，本発明は，上記実施で示したバ
ルブシート圧入装置だけでなく，リング状のワークを支
持体に着脱可能に保持するためのワーク保持装置として
広く実施することができる。

【００２６】

【発明の効果】以上のように請求項１記載の発明によれ
ば，支持体の半径方向に沿う弾発力を自ら発揮すべくす
り割りを有してリング状に形成される金属製の保持部材
が，ワークの内周に弾発的に接触することを可能とし
て，支持体外周面の環状溝に装着されるので，リング状
の金属製保持部材が支持体の環状溝に装着されるだけの
簡単な構成でワークを支持体に保持することができ，し
かも保持部材を長期間にわたり使用することが可能であ
る。

【００２７】また特にワークの内周に弾発的に接触する
円筒部と，大径端を前記円筒部の一端に連ならせたテー
パ部とを有する保持部材が，ワークが挿脱される支持体
の一端側に前記テーパ部を配置して環状溝に装着される
ので，ワークおよび保持部材の接触可能な範囲を支持体
の軸線方向に沿って比較的長くしてワークの安定的な保
持を可能とし，従って，ワークが保持部材に線接触する
ものであったとしても，支持体の軸線方向に比較的長い
範囲で保持部材の外周をワークの内周に接触させ得るよ
うにして，保持部材によるワークの安定的な保持を可能
とするとともに，ワーク内への円筒部の挿脱時にテーパ
部でワークを円筒部まで円滑に案内するようにして，ワ
ークの該円筒部に対する円滑な挿脱を可能とする。

【００２８】また請求項２記載の発明によれば，保持部
材の弾性を，その周方向に沿って略均等として，支持体
へのワークの保持をより確実なものとすることができ
る。

【図面の簡単な説明】

【図１】バルブシート圧入装置の縦断面図である。

【図２】バルブシート圧入直前の状態での図１の要部拡
大図である。

【図３】保持部材の平面図である。

【図４】図３の４−４線断面図である。

【図５】圧入完了時の図２に対応する断面図である。

【符号の説明】

１３・・・ワークとしてのバルブシート １７・・・支持体 ３０・・・環状溝 ３１・・・保持部材 ３１ａ・・・円筒部 ３１ｂ・・・テーパー部 ３２・・・すり割り ３３・・・溝

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B23P 19/00 - 21/00

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 リング状のワーク（１３）を，支持体
   （１７）の外周に着脱可能に嵌装，保持するためのワー
   ク保持装置において， 支持体（１７）の外周面に環状溝（３０）が設けられ，
   支持体（１７）の半径方向に沿う弾発力を自ら発揮すべ
   くすり割り（３２）を有してリング状に形成される金属
   製の保持部材（３１）が，ワーク（１３）の内周に弾発
   的に接触することを可能として前記環状溝（３０）に装
   着され， 前記保持部材（３１）は，ワーク（１３）の内周に弾発
   的に接触する円筒部（３１ａ）と，大径端を前記円筒部
   （３１ａ）の一端に連ならせたテーパ部（３１ｂ）とを
   有しており，そのテーパ部（３１ｂ）は，ワーク（１
   ３）が挿脱される支持体（１７）の一端側に配置される
   ことを特徴とする，ワーク保持装置。
2. 【請求項２】 保持部材（３１）の内周の周方向に間隔
   をあけた複数個所に溝（３３）が設けられることを特徴
   とする請求項１記載のワーク保持装置。