JP3263173B2 - 樹脂積層板の製造方法および金属張り積層板の製造方法 - Google Patents

樹脂積層板の製造方法および金属張り積層板の製造方法

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JP3263173B2 JP08011393A JP8011393A JP3263173B2 JP 3263173 B2 JP3263173 B2 JP 3263173B2 JP 08011393 A JP08011393 A JP 08011393A JP 8011393 A JP8011393 A JP 8011393A JP 3263173 B2 JP3263173 B2 JP 3263173B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、樹脂積層板の製造方
法、および金属張り積層板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】プリント配線基板用の樹脂積層板は、従
来、熱硬化性樹脂を基材に含浸させ一次乾燥させて形成
したプリプレグを積層成形することによって製造されて
いる。かかる樹脂積層板の構成としては、例えば、紙基
材 -フェノール系樹脂、ガラス布(Eガラス)基材 -エ
ポキシ系樹脂、ガラス布(Eガラス)基材 -ポリイミド
系樹脂等の組み合わせが知られている。しかしながら、
フェノール系樹脂を用いた樹脂積層板は、耐熱性が劣
り、最近の電気機器に求められている高集積化に対応す
ることができない。また、エポキシ系樹脂やポリイミド
系樹脂等を用いた樹脂積層板では、最近の移動通信機器
用のプリント配線基板や、高速演算回路用のプリント配
線基板に求められている低誘電率を満足しない(ガラス
布基材 -エポキシ系樹脂の積層板で4.5、ガラス布基
材 -ポリイミド系樹脂の積層板で4.0)。
【0003】近年、このような点に鑑みて、各種配線基
板用の樹脂積層板に用いる樹脂材料として、ポリフェニ
レンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、および
フッ素系樹脂等の低誘電率の熱可塑性樹脂が提案されて
いる。一方、基材としても、EガラスのSiO2 含有量
を増加させて低誘電率化を図ったSガラス(誘電率5.
4)、Dガラス(誘電率4.2)等の新しいガラス布基
材、また低誘電率に特徴のある芳香族アラミド系繊維布
基材等の有機系布基材が開発されている。
【0004】上述したような熱可塑性樹脂から構成され
る樹脂積層板は、樹脂の特性に応じ、種々の方法によっ
て製造され得る。例えば、ポリテトラフルオロエチレン
等の実質的に熱不溶融性のフッ素系樹脂を用いた樹脂積
層板の場合、熱硬化性樹脂を用いる場合と同様に、樹脂
をエマルジョン化して高濃度のワニスを調製し、このワ
ニスをシート状繊維布基材中に含浸させ一次乾燥してプ
リプレグを形成した後、プリプレグを加熱圧縮すること
によって樹脂積層板を得る。また、テトラフルオロエチ
レン -パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体等
の熱溶融性のフッ素系樹脂を用いる場合では、樹脂フィ
ルムとシート状繊維布基材とを交互積層し、得られた交
互積層体を加熱圧縮することによって樹脂積層板を得
る。更に、これらの方法で得られた樹脂積層板の片面ま
たは両面に、金属箔を張り合わせて成形することによっ
て金属張り積層板を形成し、エッチング等の所定の加工
を施してプリント配線基板を製造することができる。
【0005】しかしながら、上述したプリプレグを経て
樹脂積層板を製造する場合、プリプレグ形成時に、ワニ
スの調製、ワニスの基材への含浸、一次乾燥等の多段階
工程を要するため、生産性が劣り、工業的に不利であ
る。また、樹脂フィルムおよび繊維布基材の交互積層体
を経て樹脂積層板を製造する場合では、溶融粘度の高い
樹脂を布基材中に均一に含浸させるべく、布基材の空隙
率に対して過剰量の樹脂を、加熱圧縮によって布基材中
に強制的に押し込むことが必要となる。この際、樹脂の
強い流動によって、繊維布基材の層間のズレ、樹脂の充
填不良、および繊維布基材における織り目のズレ、糸の
切断、ボイド等が生じ、強度等の特性、形状に関して、
再現性をもって樹脂積層板を得ることができない。
【0006】更に、上述したような方法で熱可塑性樹脂
を用いて樹脂積層板を得た後、これを用いて金属張り積
層板を製造する場合では、熱硬化性樹脂から構成される
樹脂積層板を用いた場合に比べて高温且つ長時間の工程
が必要となるため、金属箔表面に酸化劣化が生じる。ま
た、樹脂積層板において樹脂が実質的に繊維布基材側に
充填されているため、樹脂積層板に金属箔を張り合わせ
た際に、金属箔の接着面の微細な凹凸にまで樹脂が充填
され得ず、高温での密着性が不充分となる恐れがある。
よって、従来の方法で得られた金属張り積層板におい
て、特に高密度実装に用いる多層印刷配線基板に適用す
る場合等により一層の性能の向上、例えば、高温での半
田処理時における耐熱性や、高温での金属箔のピール強
度等の改善が求められている。
【0007】ここで図3に、交互積層体を経て樹脂積層
板を形成し更にこれを用いて金属張り積層板を得る従来
の製造プロセスを縦断面的に示し、以下、同図を参照し
てこのような従来の方法について模式的に説明する。
【0008】即ち、従来の方法では、図3(a)に示す
如く、まず、熱可塑性樹脂フィルム31および繊維布基
材32を夫々1枚ずつ交互積層し、層構成体33を得
る。続いて、層構成体33を加熱圧縮して、同図(b)
に示す如く樹脂積層板34を形成する。更に、この樹脂
積層板34の上面および下面に金属箔35を張り合わせ
て成形することによって、同図(c)に示す如く金属張
り積層板36を得る。
【0009】しかし、当該方法によれば、樹脂積層板3
4において、特に繊維布基材の層間のズレ、糸の切断、
樹脂の充填不良等が生じる。また、金属張り積層板36
においては、樹脂積層板34と金属箔35との界面に微
細なボイドが生じ、当該界面での密着性が損われるとい
う恐れがある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記問題点
に鑑みてなされたもので、その第一の課題は、熱可塑性
樹脂および繊維布基材から構成される、プリント配線基
板用として好適な樹脂積層板の製造方法であって、樹脂
を繊維布基材中に無理なく均一に含浸させることが可能
であり、また繊維布基材の層間のズレ、および繊維布基
材における欠陥が生じることなく、特性、形状等に関し
て再現性よく、更に作業性よく樹脂積層板を形成し得る
方法を提供することである。
【0011】また、本発明の第二の課題は、熱可塑性樹
脂、繊維布基材、および金属箔から構成される、プリン
ト配線基板用として好適な金属張り積層板の製造方法で
あって、上記第一の課題と同様に、樹脂を繊維布基材中
に無理なく均一に含浸させることが可能であり、また繊
維布基材の層間のズレ、および繊維布基材における欠陥
が生じることなく、高温での半田処理時等における耐熱
性および金属箔のピール強度等に優れた金属張り積層板
を容易に形成し得る方法を提供することである。
【0012】
【課題を解決するための手段及び作用】本発明の第一の
課題は、熱可塑性樹脂およびクロスから構成される樹脂
積層板の製造方法であって、複数枚のシート状クロス
と、一枚の熱可塑性樹脂フィルムとが、最外層が熱可塑
性樹脂フィルムとなるように交互積層されてなる層構成
体を形成し、該層構成体を加熱圧縮して一体化させるこ
とを特徴とする樹脂積層板の製造方法、によって解決さ
れる。
【0013】かかる樹脂積層板の製造方法では、一対の
熱可塑性樹脂フィルムの間に、複数枚のシート状繊維布
基材を積層させた状態で加熱圧縮する。ここで、熱可塑
性樹脂フィルム間の繊維布基材が積層された部分には充
分な厚みがあり、また繊維布基材の織り目の目開き部分
からなる空隙が多く存在する。このため、加熱圧縮によ
って溶融した樹脂が、まず、繊維布基材の織り目に侵入
し、流動抵抗の小さい厚み方向に充分に流動した後、流
動抵抗の大きい面方向に、即ち繊維布基材の周縁部に向
かって流動する。また、溶融した樹脂が流動する際、繊
維布基材の空隙がエアベントとして機能し、溶融樹脂や
布基材中に不可避的に存在する空気を外部に逃す。従っ
て、当該方法によれば、熱溶融状態の樹脂を、繊維布基
材全体に亘って無理な力を付加することなく均一に含浸
させることができ、繊維布基材の層間のズレ、樹脂の充
填不良、および繊維布基材における織り目のズレ、糸の
切断、ボイド等の欠陥等を防止することができる。
【0014】また、上記方法では、複数枚の繊維布基材
についてその織り目に対する相対的な積層方向を適宜調
整することによって、樹脂積層板における補強効果をよ
り高めることができる。
【0015】以下、本発明の樹脂積層板の製造方法につ
いて詳述する。
【0016】本発明において、前記熱可塑性樹脂フィル
ムとしては、特に限定されないが、熱溶融性のフッ素系
樹脂のフィルムを特に好ましく用いることができる。か
かるフッ素系樹脂には、プリント配線基板の半田処理温
度以上の融点を有するものが好適であり、その具体例と
しては、テトラフルオロエチレン -パーフルオロアルキ
ルビニルエーテル共重合体(PFA:融点約305〜3
10℃)、テトラフルオロエチレン -ヘキサフルオロプ
ロピレン共重合体(融点270℃)等が挙げられる。
【0017】前記繊維布基材(クロス)には、種々の無
機系または有機系の繊維布を用いることができる。その
具体例としては、Sガラス、Dガラス等のガラス布;ケ
ブラー(商品名:デュポン・東レ・ケブラー社製)、テ
クノーラ(商品名:帝人社製)、コーネックス(商品
名:帝人社製)に代表されるポリ -p-フェニレンフタル
アミド、ポリ -m-フェニレンフタルアミド、p-フェニレ
ンフタルアミドおよび3,4'- ジフェニルエーテルフタル
アミドの共重合体等からなる芳香族ポリアミド系繊維布
やアラミド系繊維布が挙げられる。
【0018】前記熱可塑性樹脂フィルムの厚み(t)、
および熱可塑性樹脂フィルム間に積層する繊維布基材の
枚数(p)は、繊維布の空隙率(v)、即ち繊維布の織
り目の空隙および糸中のフィラメント間の空隙の総体積
の比率に基づいて設定され得る。具体的には、熱可塑性
樹脂フィルムの厚みtは、複数枚の繊維布基材の空隙率
pvに相当する空間を確保し得る理論的な膜厚の、好ま
しくは約1.1〜2倍、特に好ましくは1.2〜1.7
倍の範囲に調整される。
【0019】尚、繊維布の空隙率vは、次のようにして
求められる。即ち、まず融点以上の温度でも低粘度であ
るポリエチレンワックスを液状化し、この液槽内に所定
の枚数の繊維布基材を浸漬してワックスを含浸させる。
続いて、目的とする樹脂積層板を製造する際の加熱圧縮
時とほぼ同様の加圧条件で、得られた含浸体を加圧し、
更に冷却した後、固化した含浸体から所定形状の布片を
切り出し、その重量を測定すれば、この重量、繊維布基
材の目付け量(単位面積当たりの重量)、および使用し
たポリエチレンワックスの比重をから空隙率vを算出で
きる。
【0020】次に、図1に本発明の樹脂積層板の製造プ
ロセスを縦断面的に示し、同図を参照して本発明の樹脂
積層板の製造方法を具体的に説明する。
【0021】まず、同図(a)に示す如く、熱可塑性樹
脂フィルム11とシート状繊維布基材12p枚とを、最
外層が熱可塑性樹脂フィルム11となるように交互積層
して、熱可塑性樹脂フィルム11が(n+1)層、シー
ト状繊維布基材12p枚がn層夫々積層された層構成体
13を形成する。ここで、層構成体13は、最終的に図
示の如き構造であればよく、その形成過程は特に限定さ
れない。例えば、熱可塑性樹脂フィルム11上に繊維布
基材12を1枚ずつp枚まで積層した後、熱可塑性樹脂
フィルム11を積層し、更にこの操作を繰り返すことに
よって交互積層を行ってもよい。また、予めシート状繊
維布基材12をp枚積層して1ブロックとし、このブロ
ックと熱可塑性樹脂フィルム11とを交互に積層しても
よい。
【0022】続いて、層構成体13を、例えば一対の熱
盤間に押え板を介して挟装した状態で加熱圧縮して一体
化させる(図示せず)。こうして、同図(b)に示す如
く、繊維布基材12に熱可塑性樹脂を含浸させ、繊維布
基材12のプライ数がnpである樹脂積層板14を得
る。尚、同図では、各段におけるシート状基材12の枚
数が全てp枚となっているが、本発明においては、各段
におけるシート状繊維布基材12の枚数が夫々異なって
いても何等差し支えはない。
【0023】かかる加熱圧縮操作において、加熱温度
は、用いる熱可塑性樹脂および繊維布基材の耐熱性、熱
可塑性樹脂の溶融粘度に応じて適宜選択され得るが、好
ましくは約250℃以上に設定される。また、圧力は、
好ましくは約10〜150kg/cm2 の範囲で設定さ
れる。この理由は、当該圧力が10kg/cm2 未満で
ある場合、樹脂および繊維布基材中に混入した空気が充
分に脱気され得ない恐れがあり、150kg/cm2
超える場合、繊維布基材が過度の損傷を受ける恐れがあ
るためである。
【0024】尚、上記の如く得られた樹脂積層板14
は、好ましくは熱盤間に挟装した状態で、適切な条件で
冷却した後取り出される。このとき、上下の熱盤間の温
度差を、好ましくは約50℃以内、特に好ましくは30
℃以内に維持し、樹脂積層板14自体を約50℃以下に
まで冷却することによって、反りの発生を低減させるこ
とができる。
【0025】本発明の方法によって得られた樹脂積層板
では、樹脂の体積含有率が約20〜50体積%の範囲に
あることが好ましい。当該含有率が20体積%未満であ
ると、樹脂が各層を充分に結着させることができないこ
とがあり、50体積%を超えると、繊維布基材の補強効
果が不充分になることがあり、いずれの場合も樹脂積層
板の機械的強度が低下する恐れがある。従って、最終的
な樹脂の体積含有率が上記範囲内となるように、熱可塑
性樹脂フィルムの種類、厚み、シート状繊維布基材の種
類、枚数、層構成体の加熱圧縮の条件等を総合的に調整
することが好ましい。
【0026】一方、本発明の第二の課題は、熱可塑性樹
脂、クロス、および金属箔から構成される金属張り積層
板の製造方法であって、複数枚のシート状クロスと、
枚の熱可塑性樹脂フィルムとが、最外層が熱可塑性樹脂
フィルムとなるように交互積層されるとともに、該最外
層の上面および/または下面に、予め少なくとも一表面
が耐候処理され且つ該耐候処理された表面に熱可塑性樹
脂フィルムがラミネートされた金属箔が、該ラミネート
された熱可塑性樹脂フィルム側から積層されてなる層構
成体を形成し、該層構成体を加熱圧縮して一体化させる
ことを特徴とする金属張り積層板の製造方法、によって
解決される。
【0027】かかる金属張り積層板の製造方法では、熱
可塑性樹脂フィルムおよび複数枚のシート状繊維布基材
が、前述した樹脂積層板の製造方法と同様に交互積層お
よび一体化されるため、繊維布基材の層間のズレ、樹脂
の充填不良、および繊維布基材における欠陥の発生等が
防止されている。
【0028】また、上記方法では、金属箔の一表面、即
ち接着面において、熱可塑性樹脂フィルムがラミネート
されており、その微細な凹凸にまで樹脂が充填されてい
る。従って、当該金属箔は、熱可塑性樹脂フィルムと繊
維布基材とを交互積層した後、その最外層に樹脂フィル
ム側から張り合わせられるため、特に高温における密着
性が著しく向上する。更に、当該金属箔の表面は、耐候
処理が施された上に熱可塑性樹脂フィルムがラミネート
されているため、特に耐熱性が向上し、高温での酸化劣
化が防止される。従って、上記方法によれば、高温での
半田処理時における耐熱性および金属箔のピール強度の
ような、プリント配線基板に要求される特性に非常に優
れた金属張り積層板を製造することができる。
【0029】以下、本発明の金属張り積層板の製造方法
について詳述する。
【0030】前記熱可塑性樹脂および繊維布基材の種
類、厚み等の設定に関しては、前記樹脂積層板の製造方
法の場合と同様である。
【0031】一方、前記金属箔には、プリント配線基板
の部材として一般的な金属材料を用いることができる。
その具体例としては、銅箔、真鍮箔、鉄箔、ステンレス
箔、ニッケル箔、ケイ素鋼箔等が挙げられる。当該金属
箔の厚みは、最終的に得られる積層板を多層プリント配
線基板に適用する場合を考慮して可能な限り薄くするこ
とが好ましく、例えば、約18〜35μm の範囲で適宜
設定され得る。
【0032】前記金属箔の少なくとも一表面にラミネー
トされる熱可塑性樹脂フィルムには、繊維布基材と交互
積層する熱可塑性樹脂フィルムとして適用可能なものを
用いることができる。更に、金属箔にラミネートする熱
可塑性樹脂フィルムと、繊維布基材と交互積層する熱可
塑性樹脂フィルムとは、熱溶融特性が近似しており、相
互に密着可能であれば、同種であっても異種であっても
よい。
【0033】当該熱可塑性樹脂フィルムの厚みは、金属
箔の未処理の粗面を充分に平滑化することが可能な範囲
でできるだけ薄く設定され得るが、好ましくは、約10
〜30μm の範囲に設定される。
【0034】また、金属箔表面への熱可塑性樹脂フィル
ムのラミネートは、例えば、熱可塑性樹脂の融点より約
20〜40℃程度高い温度で、圧力約1〜10kg/c
2、時間約5〜20分の条件で行うことができる。
尚、このラミネートは、最終的に製造する積層板が小型
であれば、熱プレスを用いて行うことができるが、工業
的には熱ロールを用いて行うことが好ましい。
【0035】前記金属箔の一表面に施す耐候処理として
は、当該表面に被膜等を形成し、防食効果を付与するも
のであれば特に限定されない。例えば、ニッケル鍍金、
亜鉛鍍金、クロム鍍金等の鍍金処理が適用され得る。
尚、このような鍍金処理を行う場合、形成する鍍金層の
厚みは約0.5〜1.5μm であることが好ましい。
【0036】次に、図2に、本発明の金属張り積層板の
製造プロセスを縦断面的に示し、同図を参照して、本発
明の金属張り積層板の製造方法を具体的に説明する。
【0037】まず、同図(a)に示す如く、熱可塑性樹
脂フィルム21と、シート状繊維布基材22p枚とを、
最外層が熱可塑性樹脂フィルム21となるように交互に
積層するとともに、熱可塑性樹脂フィルム21が(n+
1)層、シート状繊維布基材22p枚がn層夫々積層さ
れた交互積層部分の最外層である熱可塑性樹脂フィルム
21に、一表面が耐候処理され(図示せず)且つ耐候処
理された表面に熱可塑性樹脂フィルム24がラミネート
された金属箔23を、熱可塑性樹脂フィルム24側で接
するように積層して層構成体25を形成する。尚、層構
成体25は、最終的に図示の如き構造であればよく、そ
の形成過程は特に限定されない。例えば、金属箔23上
に、熱可塑性樹脂フィルム21および繊維布基材22p
枚を交互に積層し、最後に金属箔23を積層して、層構
成体25を形成してもよい。また、予め前述した方法に
従って熱可塑性樹脂フィルム21および繊維布基材22
p枚を交互に積層し、更に一体化して樹脂積層板を形成
した後、この樹脂積層板の両面に熱可塑性樹脂フィルム
24がラミネートされた金属箔23を積層して層構成体
25を形成してもよい。
【0038】続いて、層構成体25を、例えば一対の熱
盤間に押え板を介して挟装した状態で加熱圧縮して一体
化させる(図示せず)。こうして、同図(b)に示す如
く、繊維布基材22に熱可塑性樹脂が含浸した金属張り
積層板26を得る。
【0039】かかる加熱圧縮操作の条件は、用いる熱可
塑性樹脂および繊維布基材の耐熱性、熱可塑性樹脂の溶
融粘度に応じて適宜設定され得る。好ましくは、加熱温
度は、熱可塑性樹脂の融点より約20〜40℃程度高い
温度範囲に、圧力は約10〜150kg/cm2 の範囲
に、加熱圧縮時間は約30〜120分の範囲で夫々設定
される。
【0040】尚、上記の如く得られた金属張り積層板2
6は、好ましくは熱盤間に挟装した状態で、適切な条件
で冷却された後取り出される。更に、この積層板にエッ
チング等の所定の加工を施すことによって、プリント配
線基板を得ることができる。
【0041】
【実施例】以下、本発明を実施例に沿って詳細に説明す
る。尚、これら実施例は、本発明の理解を容易にする目
的で記載されるものであり、本発明を特に限定するもの
ではない。 (繊維布基材の空隙率の測定)実施例で用いられる繊維
布基材(クロス)の空隙率を、以下の方法に従って求め
た。
【0042】まず、ポリエチレンワックスBARECO
665 Polywax(商品名:ペトロライト社
製)を、底面に離型紙としてテフロンフィルムを敷いた
金属製の桶に注入し、温度160℃に設定された熱風乾
燥機内で加熱溶融および液化させた。この液状ワックス
中に、予め所定形状に裁断されたポリ -p-フェニレンフ
タルアミドからなるケブラー平織りクロスT−740
(商品名:デュポン・東レ・ケブラー〜サカイ産業社
製)24枚を順次浸漬し、ワックスを含浸させた。次い
で、液面上に離型紙としてテフロンフィルムを設置し、
更に押え板を置いて100kg/cm2 で加圧した後、
その状態で冷却した。続いて、桶からワックス含浸体
(固体)を取り出し、所定形状のクロス片に切り出した
後、重量を測定した。このクロス片の重量、クロスの目
付け量71g/m2 、およびポリエチレンワックスの比
重0.96を基にしてクロスの空隙率を求めたところ、
21.3体積%であった。
【0043】尚、加圧条件を10kg/cm2 として、
上記同様の操作を行ってクロスの空隙率を求めたとこ
ろ、55.8体積%であった。 (熱可塑性樹脂の溶融粘度の測定)実施例において熱可
塑性樹脂として用いられるテトラフルオロエチレン -パ
ーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(粉体状)
の流動特性および溶融粘度を、キャピラリーレオメータ
(島津製作所社製)を用いて測定した。
【0044】かかる測定によれば、上記熱可塑性樹脂
は、温度330℃以上で流動性を示し、その溶融粘度
は、圧力30kg/cm2 で170ポイズ、圧力50k
g/cm2 で120ポイズ、圧力80kg/cm2 で7
0ポイズ、圧力100kg/cm2 で60ポイズであっ
た。 実施例1 1枚のトヨフロンPFAフィルム125P−X(商品
名:東レ社 -オーイーエス社製、膜厚125μm のテト
ラフルオロエチレン -パーフルオロアルキルビニルエー
テル共重合体フィルム)上に、ケブラー平織りクロスT
−740 7枚、125P−X1枚、T−740 7
枚、125P−X1枚を順次積層し、層構成体を形成し
た。次いで、この層構成体を、一対の熱盤間に押え板を
介して挟装し、温度350℃、圧力100kg/cm2
で1.5時間加熱圧縮して一体化させ、樹脂積層板を得
た。続いて、この樹脂積層板を、熱盤間に挟装した状態
で冷却した後、取り出した。
【0045】上記加熱圧縮操作では、熱盤(押え板)間
からのクロスの層間ズレは発生しなかった。また、冷却
後取り出された樹脂積層板には、クロスの織り目のズ
レ、糸の切断等の欠陥は見られなかった。 実施例2 PFAフィルムとして、150P−X(商品名:東レ社
-オーイーエス社製、膜厚150μm )を用いることを
除いて、実施例1と同様に樹脂積層板を作製した。
【0046】この場合においても、加熱圧縮操作中にク
ロスの層間ズレは発生せず、また、冷却後の樹脂積層板
には、クロスの織り目のズレ、糸の切断等の欠陥は見ら
れなかった。 実施例3 PFAフィルムとして、200P−X(商品名:東レ社
-オーイーエス社製、膜厚200μm )を用いることを
除いて、実施例1と同様に樹脂積層板を作製した。
【0047】この場合においても、加熱圧縮操作中にク
ロスの層間ズレは発生せず、また、冷却後の樹脂積層板
には、クロスの織り目のズレ、糸の切断等の欠陥は見ら
れなかった。 実施例4 PFAフィルムとして、250P−X(商品名:東レ社
-オーイーエス社製、膜厚250μm )を用いることを
除いて、実施例1と同様に樹脂積層板を作製した。
【0048】この場合、加熱圧縮操作中に若干のクロス
の流動が生じたが、冷却後の樹脂積層板には、クロスの
織り目のズレ、糸の切断等の欠陥は見られなかった。 実施例5 1枚のPFAフィルム150P−X上に、平織りクロス
T−740 2枚、150P−X1枚…の順で、総計で
平織りクロス2枚組4層、および150P−X4層を交
互に積層し、層構成体を形成した。次いで、この層構成
体を、一対の熱盤間に押え板を介して挟装し、温度35
0℃、圧力10kg/cm2 で1.5時間加熱圧縮して
一体化させ、樹脂積層板を得た。続いて、この樹脂積層
板を、熱盤間に挟装した状態で冷却した後、熱盤より取
り出した。
【0049】この場合においても、加熱圧縮操作中にク
ロスの層間ズレは発生せず、また、冷却後の樹脂積層板
には、クロスの織り目のズレ、糸の切断等の欠陥は見ら
れなかった。 比較例1 PFAフィルム25P−X(商品名:東レ社 -オーイー
エス社製、膜厚25μm )15枚と、平織りクロスT−
740 14枚とを、夫々1枚ずつ、最外層がPFAフ
ィルムとなるように交互積層し層構成体を形成した。次
いで、この層構成体を、一対の熱盤間に押え板を介して
挟装し、温度350℃、圧力1kg/cm2 で1.5時
間加熱圧縮して一体化させ、樹脂積層板を得た。続い
て、この樹脂積層板を、熱盤間に挟装した状態で冷却し
た後、取り出した。
【0050】上記加熱圧縮操作では、熱盤(押え板)間
からのクロスの層間ズレは発生しなかった。また、冷却
後取り出された樹脂積層板には、クロスの織り目のズ
レ、糸の切断等の欠陥は見られなかった。
【0051】しかしながら、この樹脂積層板では、樹脂
の充填不足に起因すると考えられる多数のボイドの発生
が認められた。 比較例2 PFAフィルムとして、37.5P−X(商品名:東レ
社 -オーイーエス社製、膜厚37.5μm)を用いるこ
とを除いて、比較例1と同様に樹脂積層板を作製した。
【0052】この場合、加熱圧縮操作中にクロスの層間
ズレは見られなかったものの、冷却後の樹脂積層板に
は、クロスの織り目のズレ、糸の切断が生じていた。 比較例3 PFAフィルムとして、50P−X(商品名:東レ社 -
オーイーエス社製、膜厚50μm)を用いることを除い
て、比較例1と同様に樹脂積層板を作製した。
【0053】この場合、加熱圧縮操作中にクロスの層間
ズレが発生した上、冷却後の樹脂積層板には、クロスの
織り目のズレ、糸の切断が生じていた。 比較例4 PFAフィルム90P−X(商品名:東レ社 -オーイー
エス社製、膜厚90μm )9枚と、平織りクロスT−7
40 8枚とを、夫々1枚ずつ、最外層がPFAフィル
ムとなるように交互積層し、層構成体を形成した。次い
で、この層構成体を、一対の熱盤間に押え板を介して挟
装し、温度350℃、圧力10kg/cm2 で1.5時
間加熱圧縮した。しかし、この操作中にクロスの層間ズ
レが発生したため、層構成体を一体化させることはでき
なかった。
【0054】更に、以上の実施例1〜5および比較例1
で得られた樹脂積層板の性能を、これらを用いて銅張り
積層板を作製して評価した。
【0055】まず、実施例1〜5および比較例1で得ら
れた樹脂積層板の上面および下面に、夫々、両面が酸化
処理された銅箔(福田金属箔社製)を張り合わせて、両
面銅張り積層板を作製した。続いて、これら両面銅張り
積層板について、樹脂含有率(重量%,体積%)、ボイ
ドの発生状況(体積%)、誘電率(3GHz)、誘電正
接(3GHz)、24時間吸水率(重量%)、260℃
での半田処理耐熱性(耐久時間)、150℃での線熱膨
脹係数(Z軸方向)、銅箔ピール強度(室温℃)、3点
曲げ強度、難燃性を、JIS C 6481-1900 等に
従って測定した。結果を表1に記す。
【0056】尚、表1には、銅張り前の樹脂積層板にお
ける、厚み(mm)、比重、更には、用いたPFAフィ
ルムの厚みのクロスの空間率基準に対する倍率、および
外観の欠陥(比較例2〜4を含む)を併記した。
【0057】
【表1】 以上の結果より、本発明の実施例1〜5では、樹脂が繊
維布基材中に無理なく均一に含浸され、且つ繊維布基材
間の層間ズレ、および繊維布基材における欠陥を生じる
ことなく容易に樹脂積層板を得ることができた。更に、
この樹脂積層板に対し銅張り等の適切な加工を施すこと
によって、電気的特性および機械的特性等の各種物性に
優れた、金属張り積層板が提供され得ることが判った。 実施例6 まず、表面がニッケル鍍金処理された銅箔(福田金属箔
社、膜厚35μm )、PFAフィルム25P−X(商品
名:東レ社 -オーイーエス社製、膜厚25μm)、およ
びカプトンフィルム(商品名:東レ社製、膜厚10μm
)を順次積層して積層体を形成した。
【0058】次いで、この積層体を一対の熱盤間に挟装
し、温度350℃、圧力1kg/cm2 で繰り返して圧
縮して層間のガス抜きを行った後、熱盤間の温度を再度
350℃まで昇温させ、圧力1kg/cm2 で10分間
加熱圧縮して、層間を圧着させた。続いて、この積層体
を熱盤間に挟装した状態で冷却した後取り出し、カプト
ンフィルムを剥離して、一方の表面にPFAフィルムが
ラミネートされた銅箔を得た。
【0059】次に、前記PFAフィルムがラミネートさ
れた銅箔/PFAフィルム(膜厚137μm )/平織り
クロスT−740 7枚/PFAフィルム125P−X
/平織りクロスT−740 7枚/PFAフィルム(膜
厚137μm )/前記PFAフィルムがラミネートされ
た銅箔の順で積層し、層構成体を形成した。次いで、こ
の層構成体を、一対の熱盤間に押え板を介して挟装し、
温度350℃、圧力150kg/cm2 で1.5時間加
熱圧縮して一体化させ、両面銅張り積層板を得た。続い
て、得られた銅張り積層板この積層板を、熱盤間に挟装
した状態で冷却した後、熱盤より取り出した。 実施例7 PFAフィルム(膜厚125μm )/平織りクロスT−
740 7枚/PFAフィルム(膜厚125μm )/平
織りクロスT−740 7枚/PFAフィルム(膜厚1
25μm )の順で積層し、層構成体を形成した。次い
で、この層構成体を、一対の熱盤間に押え板を介して挟
装し、温度350℃、圧力150kg/cm2 で1.5
時間加熱圧縮して一体化させ、樹脂積層板を得た。
【0060】続いて、この樹脂積層板の上面および下面
に、PFAフィルム(膜厚12μm)を介して、実施例
6で用いたPFAフィルムがラミネートされた銅箔を積
層して層構成体を形成した。この層構成体を、一対の熱
盤間に押え板を介して挟装し、温度350℃、圧力10
kg/cm2 で1.5時間加熱圧縮して一体化させ、両
面銅張り積層板を得た。次いで、得られた銅張り積層板
を、熱盤間に挟装した状態で冷却した後、熱盤より取り
出した。 実施例8 表面が亜鉛鍍金処理された銅箔(古河サーキットフォイ
ル社製)を用いたことを除いて、実施例6と同様に両面
銅張り積層板を作製した。 実施例9 表面が酸化処理された銅箔(福田金属箔社製)を用いた
ことを除いて、実施例6と同様に両面銅張り積層板を作
製した。
【0061】更に、以上の実施例6〜9で得られた金属
張り積層板(銅張り積層板)について、半田処理耐熱性
(常態260℃、1時間煮沸後260℃、常態300
℃)、銅箔ピール強度(室温、200℃)を測定した。
結果を表2に記す。
【0062】
【表2】 以上の結果より、本発明の実施例6〜8では、樹脂が繊
維布基材中に無理なく均一に含浸され、且つ繊維布基材
間の層間ズレ、および繊維布基材における欠陥を生じる
ことなく、実施例9に比較して高温での半田処理耐熱
性、銅箔ピール強度に優れた金属張り積層板を得ること
ができた。また、銅箔にニッケル鍍金処理の耐候処理が
施されている場合では、特に半田処理耐熱性が著しく向
上することが確認された。
【0063】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明によれば、
繊維布基材の層間のズレ、および繊維布基材における欠
陥が生じることなく、樹脂を繊維布基材中に無理なく均
一に含浸させることが可能であり、特性、形状等に関し
て再現性よく、また作業性よく樹脂積層板を製造するこ
とができる。更には、上記の改善に加えて、高温での半
田処理時等における耐熱性および金属箔のピール強度等
にも優れた金属張り積層板を製造することができる。従
って、本発明の方法は、プリント配線基板の製造プロセ
スに組み入れられて顕著な効果を奏するものであり、そ
の工業的価値は極めて大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の樹脂積層板の製造プロセスを示す縦断
面図。
【図2】本発明の金属張り積層板の製造プロセスを示す
縦断面図。
【図3】従来の樹脂積層板および金属張り積層板の製造
プロセスを示す縦断面図。
【符号の説明】
11,21,24,31…熱可塑性樹脂フィルム、1
2,22,32…繊維布基材、13,25,33…層構
成体、14,34…樹脂積層板、23,35…金属箔,
26,36…金属張り積層板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭50−10870(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 H05K 1/03

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 熱可塑性樹脂およびクロスから構成され
    る樹脂積層板の製造方法であって、 複数枚のシート状クロスと、一枚の熱可塑性樹脂フィル
    ムとが、最外層が熱可塑性樹脂フィルムとなるように交
    互積層されてなる層構成体を形成し、該層構成体を加熱
    圧縮して一体化させることを特徴とする樹脂積層板の製
    造方法。
  2. 【請求項2】 熱可塑性樹脂、クロス、および金属箔か
    ら構成される金属張り積層板の製造方法であって、 複数枚のシート状クロスと、一枚の熱可塑性樹脂フィル
    ムとが、最外層が熱可塑性樹脂フィルムとなるように交
    互積層されるとともに、該最外層の上面および/または
    下面に、予め少なくとも一表面が耐候処理され且つ該耐
    候処理された表面に熱可塑性樹脂フィルムがラミネート
    された金属箔が、該ラミネートされた熱可塑性樹脂フィ
    ルム側から積層されてなる層構成体を形成し、該層構成
    体を加熱圧縮して一体化させることを特徴とする金属張
    り積層板の製造方法。
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