JP3263105B2 - 酸化窒素の処理方法及び処理装置 - Google Patents

酸化窒素の処理方法及び処理装置

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、エンジン、ボイラ等の
排ガス中に含有される酸化窒素の無害化等を目的として
提案されている酸化窒素の処理方法及びその装置に関す
るものであり、さらに詳細には、リーン燃焼後の排ガス
中において、酸化窒素を還元ガスとともに触媒に接触さ
せて、窒素に還元する選択還元法を採用した酸化窒素の
処理方法及びこの方法を使用する酸化窒素の処理装置に
関する。
【0002】
【従来の技術】この種選択還元法は、リーン燃焼後の排
ガス等の酸素共存下の雰囲気中で酸化窒素を窒素に還元
(窒素と酸素に分解)するために提案されているもので
ある。従来、この方法においては、触媒としてゼオライ
ト系化合物やアルミナ等を使用し、還元性ガスとしてプ
ロパンやプロピレン等が使用される。この方法を使用す
る場合は、触媒反応部に還元性ガスを供給するととも
に、処理対象の酸化窒素を同時に供給し、酸化窒素を還
元処理することにより、これを浄化する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら前述の従
来技術においては、触媒としてゼオライトやアルミナを
使用する場合、還元性ガスとしてはカーボン数が3以上
の炭化水素を使用する必要があった。即ち、プロパンや
プロピレン等が還元ガスとして使用されるのである。そ
してここで、例えばこれを家庭用燃焼機器に対して使用
する場合は、プロパンやプロピレン等のボンベをこの機
器とともに備えておく必要があり、装置が複雑になると
ともに、機器に必要となる空間が大きくなる問題があっ
た。
【0004】そこで、本発明の目的は、選択還元法にお
いて、例えば還元ガスとしてメタン等のより低級な炭化
水素をも使用でき、酸化窒素の還元処理(これは結局、
排ガスの除去・浄化につながる。)が可能な酸化窒素の
処理方法を得るとともに、この方法を使用する酸化窒素
の処理装置を得ることである。
【0005】
【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
の本発明による酸化窒素の処理方法の特徴手段は、触媒
が白金属元素を担持した酸化錫(SnO2)を主成分と
する材料であるとともに、還元ガスが炭化水素であり、
選択還元法における還元反応を常温より高い温度でおこ
なうことにある。さらに、本発明による酸化窒素の処理
装置の特徴構成は、白金属元素を担持した酸化錫を主成
分とする化合物が配設される触媒反応部と、この触媒反
応部にリーン燃焼後の排ガスと炭化水素とを同時に供給
する供給手段とを備え、さらに触媒反応部を常温より高
い温度に保持する保温手段が設けられていることにあ
り、その作用・効果は次の通りである。
【0006】
【作用】つまり本願の酸化窒素の処理方法を使用する場
合は、酸化窒素が常温より高い温度に維持された白金属
元素を担持した酸化錫を主成分とする化合物の触媒作用
により、炭化水素と反応し、窒素、二酸化炭素、水に変
化する(ここで、窒素については還元反応となってい
る。)。この反応は、リーン燃焼後の排ガス中において
選択的に進行する。この場合炭素数が3以上の炭化水素
のみならず、表1、図2に示すようにメタン等の炭素数
の少ない炭化水素を還元ガスとして使用する場合もその
反応が進行する。結果、酸化窒素を含有するリーン燃焼
後の排ガスに対してこの方法を採用すると、この排ガス
が無害化される。
【0007】本願の酸化窒素の分解処理装置を使用する
場合は、供給手段により触媒反応部にリーン燃焼後の排
ガスおよび炭化水素が供給され、前述の還元反応が行わ
れる。
【0008】
【発明の効果】従って、本願の発明を採用することによ
り、例えば炭化水素として炭素数の少ないメタンを採用
する場合も、酸化窒素の還元が行えるようになった。こ
こで、還元ガスとしてメタンを採用する場合は、都市ガ
ス成分であるメタンが使用できるため、これを燃料とし
た燃焼器においては、例えば同一の都市ガス供給元から
燃焼器をバイパスしてメタンを燃焼器の排ガス中に供給
して、混合状態のガスを触媒部に導くだけでNOxフリ
ーの清浄なガスを得ることが可能となる。即ち、燃焼器
への適応が非常に容易であるとともに、装置構成におい
ても、プロパン等のボンベを別個に設置する必要がない
ため、省スペースな排ガス浄化システムを提供できる。
【0009】
【実施例】本願の実施例を図面に基づいて説明する。図
1には本願の発明をガスエンジンヒートポンプに適応す
る場合の燃焼・排気系1の構成が示されている。このガ
スエンジンヒートポンプのガスエンジン2は燃料ガス供
給系3及び燃焼空気供給系4よりそれぞれ燃料ガスpと
燃焼用空気aが供給される。そして、ガスエンジン2内
の燃焼により発生する酸化窒素を含有する排気ガスgが
排気系5へ放出される。この排気系5には、ぺレット状
に成型された白金属元素を担持した酸化錫が配設されて
いる触媒反応部6が介装されている。また使用に際し
て、この触媒反応部6を反応に適した温度に維持する保
温手段としての保温装置8が、触媒反応部6の周部に設
置されている。従って、触媒反応部6は排ガスgの保有
する熱と、保温装置8により反応に適当な温度に保たれ
る(ここで、ガスエンジンによる排ガスの温度が充分に
高い場合は、この保温装置8は必要とされない。)一
方、図示するようにガスエンジン2をバイパスして還元
ガスである燃料ガスpを燃料ガス供給系3から直接排気
系5へ導くバイパス系9が設けられている。このバイパ
ス系9にはマスフローコントローラといった流量制御器
10が配設されており、バイパス系9より排ガスgに供
給される還元ガス(燃料ガス)の量(排ガスに対する還
元ガスの量)が制御される。そして運転状態において、
酸化窒素を含有する排ガスは、触媒反応部6を通過する
ことにより浄化されて排気側7へ排出される。この構造
において、排気系5、バイパス系9、流量制御器10
は、触媒反応部6に酸化窒素及び還元ガスを同時に供給
する。そこで、この機構を供給手段と呼ぶ。
【0010】以下に上述の燃焼・排気系1の作動につい
て説明する。先ず、燃料ガス(これは還元ガスとしても
働く。)として、メタン(13A都市ガス)を採用した
場合の例について以下に説明する。前述のガスエンジン
2を理論空燃比より酸素過剰(λ>1)な状態で燃焼
(即ちリーン燃焼)させ、この排熱と保温装置8により
触媒反応部6の温度を500℃付近に維持する。ここ
で、SV値(ガス流量/反応部容積)は10000h-1
になるように調節する。左記の条件下での燃料ガスpの
混入比(排ガスg量に対するバイパスされる燃料ガスの
比)と排ガスg中に含有される酸化窒素の浄化率及び触
媒の関係を表1に示した。(但し、この表には実施例に
おけるパラジウム(Pd)を担持した酸化錫、白金(P
t)を少量担持した酸化錫、パラジウム(Pd)及びア
ルミナ(Al23)を担持した酸化錫の結果が共に示さ
れている。)
【0011】
【表1】
【0012】結果、還元ガスであるメタンの混入比の増
加に従って酸化窒素の除去率が上昇した。この状態にお
いて排ガス中には当然酸化窒素、メタン、酸素、二酸化
炭素が共存しており、酸化窒素が還元されていることよ
り選択還元が起こっていることがわかる。ここで、排ガ
ス中の酸化窒素の代表例としてのNO、NO2に対する
メタンの触媒上での反応は、以下のように記述される。
【0013】
【数1】4NO+CH4 → 2N2+CO2+2H2O 2NO2+CH4 → N2+CO2+2H2O この反応によりNOは還元され窒素、二酸化炭素、水に
変化して、無害化される。
【0014】上記の酸化窒素の処理方法に於ける、反応
温度と酸化窒素の還元性能の関係を、図2に基づいて説
明する。使用した装置構成は図1のものと同様である。
図2には反応温度の変化に対する還元反応状態の変化
が、示されている。(図2においてNOにて酸化窒素を
代表する。) 実験時の条件 NO濃度 1000ppm SV値(ガス流量/反応部容積) 38000h-1 還元ガス メタン (1)温度変化に伴う還元性能の変化 図2は、縦軸が夫々のガスの濃度を、横軸が触媒反応部
の温度を示している。NOが実線で、メタンが破線で、
二酸化炭素が一点鎖線で、窒素が二点鎖線で示されてい
る。さらに各ガスの濃度のスケールについては、メタ
ン、二酸化炭素は図左に示すスケールに従い、窒素、N
Oのスケールはそれぞれ0〜500及び0〜2000p
pmである。温度変化に伴う還元性能について温度の上
昇に従って説明する。 (a)100〜300℃の温度域においては、ほとんど
反応は起こっていない。 (b)300〜600℃域においてメタンの濃度が減少
するとともに、窒素の出現が確認でき、さらに二酸化炭
素の濃度も上昇している。このとき、NOの減少量は、
窒素の出現量にモル比で対応している。ここで、酸素量
は完全に0となっていない(図示せず)。よって選択還
元が起こっていることがわかる。ただし、窒素の出現量
は、500℃程度をピークとして600℃に到るまでに
減少傾向に転じる。 (c)600℃の温度域においては、元の状態にもどっ
ている。この時メタンの酸化反応は進行している。
【0015】この結果を、今日提案されているペロブス
カイト化合物による酸化窒素の分解除去と比較すると
(この場合反応濃度は800℃程度以上)、本願の反応
温度域がひくく、燃焼機器に対して適応しやすくなって
いる。
【0016】以下にメタンに代えてプロパンを還元ガス
として使用した場合の結果を、表2及び図3に基づいて
説明する。装置構成および条件は還元ガスとしてメタン
を使用した場合のものと同じである。表2に表1に対応
する結果を示した。
【0017】
【表2】
【0018】結果、還元ガスとしてのメタンの場合と同
様にプロパンの混入比に比例して酸化窒素の除去率が上
昇している。この状態において排ガス中には当然酸化窒
素、プロパン、酸素、二酸化炭素が共存しており、酸化
窒素が還元されていることより選択還元が起こっている
ことがわかる。この反応により酸化窒素は還元され窒素
と二酸化炭素と水とに変化し、無害化される。
【0019】さらに、図2に対応するプロパンを使用し
た場合の反応温度と還元性能の関係を図3に示した。
(図2と同様にNOにて酸化窒素を代表する。)温度変
化に伴う還元性能について温度の上昇に従って説明す
る。 (a)100〜300度Cの温度域においては、ほとん
ど異種ガス間の反応は起こっていない。(NO濃度に変
化は見られるがこれは触媒に吸着されていたものによる
と考えられる。) (b)300〜600℃域においてプロパン、窒素の出
現が確認できるとともに、二酸化炭素の濃度も上昇して
いる。ここで、酸素量は完全に0となっていないことよ
り選択還元が起こっていることがわかる。ただし、窒素
の出現量は、440℃付近をピークとして600℃に到
るまでに減少傾向に転じる。 (d)600℃の温度域においては、前例同様に元の状
態にもどっている。ただし、700℃以上の温度域にお
いてNO濃度の低下が認められるが、これは酸化錫が有
するNOxの直接分解作用に起因するものと考えられ
る。
【0020】この例においてはプロパンの全排ガス量に
対する濃度を0.1%としたが、濃度を上げて0.5%
とした場合でも、良好に酸化窒素の還元が行われた。
【0021】〔別実施例〕本願の別実施例を以下に箇条
書きする。 (イ)上述の実験例においては、還元ガスとしては、炭
化水素であればいかなるものでもよい。
【0022】(ロ)化合物としては、使用状態で前述の
条件を満たしていればよく、その合成過程における、出
発原料物質は特に限定されるものではなく、合成方法に
ついても固相反応法、液相反応法等あるがとくに限定す
るものではない。
【0023】(ハ)さらに前述の実施例においては、化
合物をペレット状のまま酸化窒素を含むガス中に配設し
たが、これはハニカム状等いかなる形状に成形して使用
してもよい。
【0024】(ニ)さらに、上記の実施例においては、
ガスエンジンを備えた燃焼・排気系1に於ける酸化窒素
の処理についてその実施例を示したが、本願の方法はプ
ラント等に於ける酸化窒素の処理等、いかなる場合に対
しても使用することができる。また実施例においても、
還元ガスとガスエンジンに供給される燃料ガスが異なっ
たものであってもよい。さらに、流量制御器としてはマ
スフローコントローラの他、ニードルバルブ、キャピラ
リ等も採用できる。
【0025】尚、特許請求の範囲の項に図面との対照を
便利にするために符号を記すが、該記入により本発明は
添付図面の構成に限定されるものではない。
【0026】
【図面の簡単な説明】
【図1】本願の排ガス浄化装置の構成を示す図
【図2】還元ガスとしてメタンを使用した場合の酸化窒
素の還元状態を示す図
【図3】還元ガスとしてプロパンを使用した場合の酸化
窒素の還元状態を示す図
【符号の説明】
6 触媒反応部 8 保温手段
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI F23J 15/00 A (56)参考文献 特開 昭62−234547(JP,A) 特開 昭60−175546(JP,A) 特開 昭62−251415(JP,A) 特開 平4−16238(JP,A) 特開 平4−78442(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B01D 53/94 B01J 21/00 - 38/74 F01N 3/08

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 リーン燃焼後の排ガス中において、酸化
    窒素を還元ガスとともに触媒に接触させて、前記酸化窒
    素を窒素に還元する選択還元法による酸化窒素の処理方
    法であって、 前記触媒が白金属元素を担持した酸化錫(SnO2)を
    主成分とする材料であるとともに、前記還元ガスが炭化
    水素であり、 前記選択還元法における還元反応を常温より高い温度で
    おこなう酸化窒素の処理方法。
  2. 【請求項2】 前記白金属元素を担持した酸化錫(Sn
    2)がパラジウム(Pd)を担持した酸化錫(Sn
    2)であり、前記還元反応を300〜600℃でおこ
    なう請求項1記載の酸化窒素の処理方法。
  3. 【請求項3】 白金属元素を担持した酸化錫(Sn
    2)を主成分とする化合物が配設される触媒反応部
    (6)と、前記触媒反応部(6)にリーン燃焼後の排ガ
    と炭化水素とを同時に供給する供給手段とを備え、さ
    らに前記触媒反応部(6)を常温より高い温度に保持す
    る保温手段(8)が設けられている酸化窒素の処理装
    置。
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