JP3263020B2 - 定着ローラ及び定着装置 - Google Patents

定着ローラ及び定着装置

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JP3263020B2 JP35287497A JP35287497A JP3263020B2 JP 3263020 B2 JP3263020 B2 JP 3263020B2 JP 35287497 A JP35287497 A JP 35287497A JP 35287497 A JP35287497 A JP 35287497A JP 3263020 B2 JP3263020 B2 JP 3263020B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、複写機、プリンタ
ー、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる定着ロ
ーラ及び定着装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】複写機、プリンタ、ファクシミリなどで
は、現像された画像の定着に、定着ローラと加圧ローラ
とからなる定着装置を用いている。この定着装置では、
トナーが転写されて現像された転写紙は定着ローラと加
圧ローラとの間を通され、トナーが加熱溶融(軟化)さ
れて転写紙上に融着して定着される。
【0003】この種の定着ローラでは、その外周面の温
度が定着に要求される温度(定着可能温度又は所定温度
(例えば、180度C))に達するまで、予めウオーミ
ングアップすることが行われている。このウオーミング
アップには長時間を要し、一般にはメイン電源のオンと
共に定着ローラを予備加熱する構成が採用されている。
【0004】しかしながら、この予備加熱する構成の定
着ローラでは、電力の浪費が大きく、地球環境保護、省
エネルギーの観点から必ずしも望ましいものではない。
そこで、本件出願人は、筒状の芯金の外周に、非晶質と
結晶質との間で相転移が可能な相転移発熱物質からなる
相転移発熱層を設け、その相転移発熱層を保護層で被覆
する構成の定着ローラを提案した(例えば、特開平7−
140823号公報を参照)。この定着ローラによれ
ば、ヒータ加熱により定着ローラの外周面の温度が定着
可能温度に達するまでの間に、相転移発熱物質が非晶質
から結晶質に相転移するときに発生する熱エネルギーに
より、定着ローラの外周面の温度上昇をヒータのみによ
る昇温と較べて促進させている。これにより、ウオーミ
ングアップ時間の短縮及び省電力化が図られる。
【0005】この種の定着ローラでは、相転移発熱物質
が結晶化する際に発生する熱エネルギーを利用している
ため、この相転移発熱物質の再使用を図るためには、こ
れらの相転移発熱物質は、溶融状態から急冷させること
により非晶質化し、その非晶質化した物質を昇温すると
結晶化する性質を有することが必要である。
【0006】この種の物質として、無機系物質では、周
期律表第III族〜第VI族の元素は多元系で、非晶質
化可能領域を有することが知られている。その中でもS
e(セレン)を主成分としたカルコゲンやカルコゲナイ
ド化合物は、急速に結晶化して発熱し、結晶化の際の発
熱エネルギーも大きいので好適な材料である。
【0007】有機系物質では、PET(ポリエチレンテ
レフタレート)系やPBT(ポリブチレンテレフタレー
ト)系等のポリエステル類のような結晶性熱可塑性樹脂
などの高分子系物質が非晶質化可能領域を有することが
わかってきた。さらに、低分子の有機系物質では、イソ
フタル酸ジフェニルの誘導体、ビスフェノール誘導体等
は結晶化の際に発熱することが確認されている。
【0008】例えば、図1は熱分析装置(DTA)によ
る代表的な相転移発熱物質(Se)の熱分析特性を示し
ている。この図1において、符号L1はコントロール温
度直線を示し、この図1には、毎分10分の割合で昇温
させたときの発熱−吸熱曲線Qが示されている。符号T
gは相転移発熱物質のガラス転移点、Pg、Pmはその
物質の吸熱ピーク、Pcはその物質の発熱ピーク部分、
Tcpはその物質の発熱ピーク温度、Tciはその物質
が非晶質から結晶質に相転移を開始するときの結晶化開
始温度、Tcfはその物質による相転移が完了してコン
トロール温度になったときの結晶化終了温度、Tmはそ
の物質の溶融温度(融点)である。これらの温度特性値
は、コントロール速度が大きくなると若干高温側にシフ
トする。
【0009】この発熱−吸熱曲線Qでは、時間の経過
(温度上昇)に従って、まずガラス転移点Tgにおいて
小さな吸熱ピークPgが観測される。次いで結晶化に伴
う大きな発熱ピークPcが観測され、その後、溶融に基
づく吸熱ピークPmが観測される。
【0010】ところで、ウオーミングアップ時間を一層
短縮するためには、定着ローラの外周の表面温度を、定
着可能温度(トナーの軟化(溶融))温度以上に速やか
に上昇させることが必要である。相転移発熱物質を定着
可能温度に比べて著しく低い温度領域で発熱させると、
定着ローラの表面が定着可能温度に上昇するまでに、発
生した熱が周囲に散逸し、相転移発熱物質を有効に利用
することができない。一方、定着可能温度に達してから
相転移発熱物質を発熱させたとしてもウオーミングアッ
プ時間の短縮は図れない。また、相転移発熱物質が発熱
を開始してから発熱を終了するまでの発熱温度領域が高
すぎる場合には、所定の定着可能温度到達時以後も発熱
を伴うので、その温度以上に加熱され、いわゆるオーバ
ーヒートが生じる。
【0011】しかしながら、各相転移発熱物質には、各
物質固有の結晶化開始温度Tci、発熱ピーク温度Tc
p、融点Tm、結晶化終了温度Tcf等の結晶化温度特
性があり、この相転移発熱物質は、適切な特性を有する
ことが望まれ、市販の定着ローラの場合、相転移発熱物
質としてその結晶化開始温度Tciから融点Tmまでの
温度範囲が通常80〜200°Cのものが望まれるが、
この温度領域を広くカバーできる相転移発熱物質の選択
は難しい。
【0012】本発明は、上記の事情を考慮して為された
もので、ウォーミングアップ時間の大幅な短縮化を実現
し得て、かつ、相転移発熱物質の選択の自由度が増大し
て製造上の制約が大幅に軽減され、しかも、ヒータの省
電力化を実現できる定着ローラ及び定着装置を提供する
ことを目的とする。
【0013】
【課題を解決するための手段】請求項1に記載のもの
は、上記課題を解決するため、結晶質と非晶質とに相転
移が可能な相転移発熱物質からなる相転移発熱層を芯金
上に設け、前記相転移発熱物質が非晶質から結晶質へ相
転移するときの発熱を利用して昇温が促進される定着ロ
ーラにおいて、前記相転移発熱物質には非晶質から結晶
質に相転移を開始する結晶化開始温度が少なくとも二つ
以上存在し、前記相転移発熱物質は互いに異なる単一の
結晶化開始温度を有する少なくとも二種類の物質の混合
物からなり、前記混合物は第1相転移発熱物質と第2相
転移発熱物質からなり、前記第1相転移発熱物質の結晶
化開始温度が前記第2相転移発熱物質の結晶化開始温度
と第2相転移発熱物質の発熱ピーク温度との間にあるこ
とを特徴とする。
【0014】請求項2に記載のものは、請求項1に記載
定着ローラにおいて、前記第1相転移発熱物質の発熱
ピーク温度が前記第2相転移発熱物質の融点未満である
ことを特徴とする。
【0015】請求項3に記載のものは、上記課題を解決
するため、結晶質と非晶質とに相転移が可能な相転移発
熱物質からなる相転移発熱層が芯金上に設けられて前記
相転移発熱物質が非晶質から結晶質へ相転移するときの
発熱を利用して昇温が促進される定着ローラと、前記相
転移発熱物質を非晶質から結晶質に相転移させる加熱部
と、結晶化した相転移発熱物質を溶融させる溶融部と、
溶融状態の相転移発熱物質を非晶質の相転移発熱物質に
固化させる冷却部とを備え、前記相転移発熱物質が互い
に異なる単一の結晶化開始温度を有する少なくとも二種
類の物質の混合物からなる定着装置であることを特徴と
する。
【0016】請求項4に記載のものは、請求項3に記載
定着装置において、前記混合物が第1相転移発熱物質
と第2相転移発熱物質からなり、前記第1相転移発熱物
質の非晶質から結晶質に相転移を開始する結晶化開始温
度が前記第2相転移発熱物質の結晶化開始温度と第2相
転移発熱物質の発熱ピーク温度との間にあり、前記加熱
部は少なくとも第1相転移発熱物質の結晶化開始温度ま
で前記相転移発熱層を加熱することを特徴とする。
【0017】請求項5に記載のものは、請求項4に記載
定着装置において、前記第1相転移発熱物質のピーク
温度が第2相転移発熱物質の融点未満であることを特徴
とする。
【0018】請求項6に記載のものは、請求項3に記載
定着装置において、前記混合物が第1相転移発熱物質
と第2相転移発熱物質からなり、前記溶融部は第1相転
移発熱物質の融点と第2相転移発熱物質の融点とのう
ち、高い方の融点以上に前記相転移発熱層を加熱し、前
記冷却部は第1相転移発熱物質と第2相転移発熱物質と
のうち、融点の高い方の相転移発熱物質が溶融状態から
非晶質の固体へ相転移する冷却速度により冷却すること
を特徴とする。
【0019】
【0020】請求項7に記載のものは、請求項3に記載
定着装置において、前記混合物が第1相転移発熱物質
と第2相転移発熱物質からなり、前記溶融部は第1相転
移発熱物質の融点と第2相転移発熱物質の融点とのう
ち、高い方の融点以上に相転移発熱層を加熱し、前記冷
却部は第1相転移発熱物質が非晶質の固体へ相転移する
冷却速度と第2相転移発熱物質が非晶質の固体へ相転移
する冷却速度とのうち、早い方の冷却速度により前記第
1相転移発熱物質と第2相転移発熱物質とを冷却するこ
とを特徴とする。
【0021】
【0022】請求項10に記載のものは、円筒形状の芯
金の外周表面に円周状凹所が形成され、該円周状凹所内
に結晶質と非晶質との間で相転移可能の相転移発熱層が
配設され、前記相転移発熱層は少なくとも第1相転移発
熱物質と第2相転移発熱物質との混合物から構成され、
前記第1相転移発熱物質と第2相転移発熱物質とは、ヒ
ータを用いて加熱することにより非晶質から結晶質に相
転移され、結晶質の各相転移発熱物質は溶融状態にされ
た後、冷却ファンを用いて冷却することにより非晶質に
相転移され、前記相転移発熱層の外周面には保護層が形
成され、該保護層の端部は前記芯金の表面の端部に密着
され、前記ヒータは前記芯金の中空内に設置されて制御
部によって制御され、該制御部は、前記各相転移発熱物
質を非晶質から結晶質に相転移させるときに第1相転移
発熱物質の非晶質から結晶質に相転移を開始する結晶化
開始温度と第2相転移発熱物質の非晶質から結晶質に相
転移を開始する結晶化開始温度とのうち少なくとも低い
方の結晶化開始温度まで前記ヒータを加熱制御する一
方、前記第1相転移発熱物質と前記第2相転移発熱物質
とを溶融させるときに前記第1相転移発熱物質の融点と
前記第2相転移発熱物質の融点とのうち高い方の融点ま
で前記ヒータを加熱制御し、前記冷却ファンは第1相転
移発熱物質が溶融状態から非晶質の固体となるときの冷
却速度と第2相転移発熱物質が溶融状態から非晶質の固
体となるときの冷却速度とのうち早い方の冷却速度によ
り溶融状態の相転移発熱層を前記保護層を介して冷却す
ることを特徴とする。
【0023】
【発明の実施の形態】
【0024】
【発明の実施の形態1】次に、本発明の定着ローラを複
写機に適用した実施例について図面を参照しつつ説明す
る。
【0025】図2において、複写機1は、装置本体2に
着脱可能に装着された給紙カセット3と、給紙カセット
3内にセットされた転写紙Pを装置本体2内に送り出す
給紙ローラ4と、表面に感光層5aを有するドラム式感
光体5と、ドラム式感光体5に付着したトナー像を転写
紙Pの一面に転写する転写装置6と、トナー転写後の転
写紙Pを定着部7に案内する補助ローラ8,8とを備え
ている。
【0026】定着部7は、アルミニウムや鉄等の芯金の
外周にゴム等の弾性体を装着した加圧ローラ9と、加圧
ローラ9の回転に従動して回転する定着ローラ10とを
備えている。補助ローラ8,8によって案内された転写
紙Pに転写されたトナーは、定着ローラ10の熱によっ
て転写紙Pに定着される。その後、転写紙Pは装置本体
2の排出口2aから排出される。
【0027】定着ローラ10は、図3に示すように、熱
伝導率の良好なアルミニウム合金等の金属からなる芯金
11を有する。芯金11の外周面には円周状凹所11a
が形成されている。芯金11の外表面で円周状凹所11
a内には相転移発熱層12が設けられている。相転移発
熱層12は保護層13により被覆され、保護層13の端
部13aは芯金11の端部11bに密着されている。芯
金11の内表面にはヒータ14が設けられている。な
お、ヒータ14には配線14a,14aから電源が供給
される。このヒータ14は図3に示す筒状体のほか、ハ
ロゲンランプ等でもよい。なお、この実施例の定着ロー
ラ10は、基本的には、芯金11の外表面に相転移発熱
層12と保護層13とを設けることにより構成される
が、その他、図4に示すように接着層15、通電発熱
層、絶縁層等を必要に応じて追加形成してもよい。
【0028】相転移発熱層12は結晶質と非晶質との間
で相転移が可能な相転移発熱物質から構成されている。
この相転移発熱物質には非晶質から結晶質に相転移を開
始する結晶化開始温度(発熱開始温度ともいう)が二以
上存在しているものを使用する。ここでは、相転移発熱
層12を構成する相転移発熱物質は少なくとも二種類の
物質からなり、例えば、ヒータ14の発熱によって低温
領域で相転移を開始する第2相転移発熱物質(低温域相
転移発熱物質)と、第2相転移発熱物質の相転移に伴う
発熱に誘引されて相転移を開始する第1相転移発熱物質
(高温域相転移発熱物質)の混合物からなる。
【0029】相転移発熱層12を形成する混合物は、下
記の表1に示す結晶化開始温度Tci、発熱ピーク温度
Tcp、融点Tm、結晶化終了温度Tcf、結晶化発熱
潜熱Lcが知られている物質を第1相転移発熱物質、第
2相転移発熱物質として用いる。これらの物質は選択的
に組み合わされる。
【0030】
【表1】 相転移発熱層12は、溶融時に相互反応、相互溶解を起
こさない物質を使用することが望ましい。
【0031】というのは、電源OFFから再度電源ON
として、相転移による発熱を利用するための初期化を行
う際、一旦相転移発熱物質を融点以上に加熱溶融した後
に冷却するからである。従って、相転移発熱物質を繰り
返し使用するためには、これらの物質が化学反応等の相
互作用をせず、しかも、溶融時に相溶性がないことが必
要である。溶融時に二種類の物質が相溶すると変質し、
非晶質化が困難となる。また、結晶化開始温度、発熱ピ
ーク温度、融点が変化することが考えられ、再結晶化が
困難になるおそれがあるからである。
【0032】適宜の相転移発熱物質を、低温領域で発熱
を開始する第2相転移発熱物質と高温領域で発熱を開始
する第1相転移発熱物質とを選択して組み合わせること
により、ヒータ14による低温加熱状態で第2相転移発
熱物質を発熱させて、定着ローラ10の表面温度を第2
相転移発熱物質の結晶化開始温度にまで急速に昇温さ
せ、従って、その急速な第2相転移発熱物質による発熱
によって第1相転移発熱物質の結晶化を誘発させること
ができ、これにより定着ローラ10の表面温度を素早く
立ちあげることができる。結晶化開始温度が単一の物質
では狭い温度範囲のみで発熱現象が生じるが、二以上の
結晶化開始温度を有する相転移発熱物質(混合物)を用
いているので、幅広い温度範囲に渡って急速に発熱させ
ることができる。
【0033】この理由を図5を参照しつつ更に詳細に説
明する。
【0034】図5は従来の定着ローラ10’を加熱した
場合の温度−時間特性(昇温特性直線Aを破線で示す)
と、第2相転移発熱物質のみからなる相転移発熱層12
が形成された定着ローラを加熱した場合の温度−時間特
性(昇温特性曲線Bを1点鎖線で示す)と、第1相転移
発熱物質のみからなる相転移発熱層12が形成された定
着ローラを加熱した場合の温度−時間特性(昇温特性曲
線Cを2点鎖線で示す)と、第1相転移発熱物質と第2
相転移発熱物質との混合物からなる相転移発熱層12が
形成された定着ローラ10を加熱した場合の温度−時間
特性(昇温特性曲線Dを実線で示す)を比較して説明す
るためのグラフ図である。なお、従来の定着ローラ1
0’の構成は、例えば、図6に示されている。その定着
ローラ10’は芯金11’の外表面に離型層12’が形
成され、芯金11’の内部に設けられたハロゲンランプ
14’により加熱される。
【0035】第2相転移発熱物質のみから相転移発熱層
12がなる定着ローラの立ち上げ時間は従来の定着ロー
ラ10’の立ち上げ時間に較べてt1分短縮でき、第1
相転移発熱物質のみから相転移発熱層12がなる定着ロ
ーラの立ち上げ時間は従来の定着ローラ10’の立ち上
げ時間に較べてt2分短縮でき、第1相転移発熱物質と
第2相転移発熱物質との混合物から相転移発熱層12が
なる定着ローラ10の立ち上げ時間は従来の定着ローラ
10’の立ち上げ時間に較べてt3分短くできる。
【0036】第1相転移発熱物質の発熱ピーク温度Tc
p1は第2相転移発熱物質が固体状態を維持する必要が
あるため、第2相転移発熱物質の融点Tm2よりも低い
ことが条件である。第2相転移発熱物質が溶融すると、
定着ローラ10の表面の剛性を維持できず、加圧ローラ
9と定着ローラ10との間のニップ9’(図2参照)の
間隔を維持できなくなり、定着を適正に行うことができ
なくなるおそれがあるからである。
【0037】第2相転移発熱物質の結晶化開始温度Tc
i2とこの第2相転移発熱物質の発熱ピーク温度Tcp
2との間に第1相転移発熱物質の結晶化開始温度Tci
1が存在する第1相転移発熱物質と第2相転移発熱物質
とを組み合わせることにより、なだらかな昇温特性曲線
Dを得ることができる。
【0038】第2相転移発熱物質はその発熱ピーク温度
Tcp2を過ぎると温度が一旦下がり、定着ローラ10
の温度上昇が鈍くなるが、第2相転移発熱物質の結晶化
開始温度Tci2とその発熱ピーク温度Tcp2との間
に第1相転移発熱物質の結晶化開始温度Tci1を存在
させると、第2相転移発熱物質の発熱により定着ローラ
の温度が結晶化開始温度Tci1を越えた時点で、第1
相転移発熱物質による発熱が開始され、第2相転移発熱
物質による発熱に第1相転移発熱物質による急激な発熱
が重なるからである。従って、第2相転移発熱物質の発
熱を第1相転移発熱物質の発熱に有効利用できる。
【0039】この加熱は第1相転移発熱物質の結晶化開
始温度Tci1まで行えば充分であるが、少なくとも第
2相転移発熱物質の結晶化開始温度Tci2まで加熱す
る必要がある。
【0040】ここで、記号Iは第1相転移発熱物質の結
晶化開始温度Tci1と第2相転移発熱物質の結晶化開
始温度Tci2との温度差を示し、記号IIは第1相転
移発熱物質の結晶化開始温度Tci1と第2相転移発熱
物質の発熱ピーク温度Tcp2との温度差を示し、II
Iは第1相転移発熱物質の発熱ピーク温度Tcp1と第
2相転移発熱物質の発熱ピーク温度Tcp2との温度差
を示し、IVは結晶化開始温度Tci2と発熱ピーク温
度Tcp2との温度差を示し、定着可能温度よりも上昇
している箇所Eはオーバシュートをしていることを示し
ている。
【0041】このオーバシュートが大きすぎると、トナ
ーの定着に支障が生じる。従って、第1相転移発熱物質
の発熱ピーク温度Tcp1は定着可能温度の近傍である
ことが望ましい。このオーバシュートによる温度は、以
下に説明する実施例では、ほとんど支障のない程度であ
った。なお、ヒータ14は定着可能温度を維持するため
にコントロールされ、通常ヒータ14は定着ローラ10
の表面温度が定着可能温度よりも若干低くなるようにコ
ントロールされる。
【0042】二種類の相転移発熱物質は、複写時に固体
状態の結晶質となっている。従って、固体状態の非晶質
から固体状態の結晶質に相転移するときに発生する熱エ
ネルギーを再利用するために、二種類の相転移発熱物質
を一旦溶融させる。この場合、第1相転移発熱物質の融
点Tm1と第2相転移発熱物質の融点Tm2とのうちい
ずれか高い方よりも高い温度で各物質を溶融させる。第
2相転移発熱物質の発熱ピーク温度Tcp2が第1相転
移発熱物質の発熱ピーク温度Tcp1よりも低いからと
いって、必ずしも第2相転移発熱物質の融点Tm2が第
1相転移発熱物質の融点Tm1よりも低いとは限らない
からである。すなわち、発熱ピーク温度Tcp2が低い
第2相転移発熱物質の融点Tm2が発熱ピーク温度Tc
p1が高い第1相転移発熱物質の融点Tm1よりも高い
場合がある。
【0043】例えば、Te8重量%含有のSeTe合金
は、結晶化開始温度Tciが100度C、発熱ピーク温
度Tcpが150°Cであり、その融点Tmは230°
Cである。一方、Te50重量%含有のSeTe合金
は、結晶化開始温度Tciが90度C、発熱ピーク温度
Tcpが110°Cであり、その融点Tmは280°
である。従って、結晶化開始温度Tci1が結晶化開始
温度Tci2と発熱ピーク温度Tcp2との間に存在す
るTe8重量%含有のSeTe合金を第1種相転移発熱
物質として用い、第2種相転移発熱物質としてTe50
重量%含有のSeTe合金を用いた場合、融点Tm1と
融点Tm2との関係が逆転する。
【0044】二つの相転移発熱物質は急冷により溶融状
態から非晶質の固体に相転移する。この場合、融点の高
い方の相転移発熱物質が溶融状態から非晶質の固体状態
に相転移する冷却速度により冷却する。この二種類の相
転移発熱物質を急冷することにより各相転移発熱物質が
非晶質の固体となる。
【0045】二種類の相転移発熱物質を効率よく非晶質
化する場合には、融点の低い相転移発熱物質の凝固点T
m’(融点Tmとほぼ同じ温度)の近傍で冷却速度を切
り替える。各相転移発熱物質を効率よく非晶質化するた
めの冷却速度は各物質によって異なっており、融点Tm
の高い相転移発熱物質は融点Tmの低い方の相転移発熱
物質の凝固点近傍で非晶質化がほぼ完了するため、融点
の低い方の相転移発熱物質の凝固点近傍でその物質を効
率良く冷却できる冷却速度に切り替えると、非晶質化効
率が向上するからである。
【0046】また、第1相転移発熱物質が溶融状態から
非晶質の固体に相転移する冷却速度と第2相転移発熱物
質が溶融状態から非晶質の固体に相転移する冷却速度と
のうち早い方の冷却速度により冷却しても良い。これに
より、速やかに溶融状態の相転移発熱物質を非晶質の固
体状態に移行させることができる。この場合にも、融点
の低い相転移発熱物質の凝固点近傍で、冷却速度を切り
替えることにより、各相転移発熱物質を効率良く非晶質
化できる。相転移完了後、後述する冷却ファンによる冷
却を停止する。相転移発熱物質はその後、環境温度とな
る。その図5において、符号Fは早い方の冷却速度を示
し、符号Gは遅い方の冷却速度を示している。相転移発
熱物質の発熱を再利用するときには、ヒータ14により
定着ローラ10を再加熱する。
【0047】図7〜図10は加熱・溶融から冷却までの
制御を説明するための具体例を示している。
【0048】図7に示すように、芯金11はその軸部1
1eが支持筒11fに回転可能に保持されている。芯金
11には送風ファン20が臨まされている。この送風フ
ァン20はモータ21によって駆動され、送風ファン2
0とモータ21とは冷却部を構成する。ヒータ14はこ
こではハロゲンランプからなり、ヒータ14は相転移発
熱層12を加熱する加熱部として機能すると共に、結晶
質化した相転移発熱物質を溶融させる溶融部として機能
する。そのヒータ14、モータ21は制御部(CPU)
22によりコントロールされる。この制御部22には温
度センサ23とメインスイッチ24と図示を略す本体パ
ネルの開閉検知スイッチ25とが接続されている。温度
センサ23は定着ローラ10の表面温度を検出する。
【0049】メインスイッチ24をオンすると、制御部
22はヒータ14に通電を開始し、定着ローラ10が加
熱される。これにより、各相転移発熱物質が各結晶化開
始温度で発熱を開始し、定着ローラ10が急速に定着可
能温度にまで立ち上げられる。
【0050】制御部22は温度センサ23により定着ロ
ーラ10の表面温度が定着可能温度を維持するようにヒ
ータ14を通電制御する。メインスイッチ24をオフ又
は本体パネルを開成すると、制御部22は相転移発熱物
質を溶融させるためにヒータ14への通電量を増加す
る。温度センサ23は相転移発熱物質が溶融したか否か
を表面温度により判定する。制御部22は温度センサ2
3に基づき相転移発熱物質の溶融を判断し、ヒータ14
への通電を停止する。次に、同時に又は所定時間後、制
御部22はモータ21を駆動し、相転移発熱物質の冷却
を開始する。制御部22により冷却速度を切り替える場
合、定着ローラ10の表面温度が温度センサ23により
融点の低い方の凝固点近となった時点で行う。制御部2
2は各相転移発熱物質が固体状態の非晶質となった時点
で送風を停止させる。図8はその通電制御のタイミング
図である。これらの制御は、後述する発明の実施の形態
2、形態3についても適用できる。
【0051】制御部22はメインスイッチ24がオン又
は本体パネルが閉じられると再びヒータ14に通電を開
始し、これにより定着ローラ10が急速に定着可能温度
に立ち上げられる。ここでは、加熱と溶融とを1個のヒ
ータ14により行っているが加熱部と溶融部とを別々に
設けても良く、また芯金11を加熱する構成となってい
るが、相転移発熱層12を直接加熱する構成を採用して
も良い。
【0052】図7では相転移発熱層12を内部から冷却
する構成としているが、図9に示すように、相転移発熱
層12を外側から強制的に送風ファン20により冷却す
る構成とすることもできる。この場合、ニップ9’に向
けて送風するようにすると、定着ローラ10の変形を防
止できて望ましい。また、図10に示すように、定着ロ
ーラ10を回転させながら溶融させると共に冷却するよ
うにすると、加圧ローラ9による加圧力が均一に定着ロ
ーラ10の外周面に加わることとなるので、溶融・冷却
後の相転移発熱層12の厚さを均一に保つことができ
る。
【0053】次に、この発明の実施の形態の定着ローラ
10の各種実施例と比較例とを説明する。
【0054】
【実施例1】外径20mmの芯金11の表面上に、2つ
の蒸発源を真空蒸着槽内にセットして、その1つにTe
8重量%含有のSeTe合金を、他の1つにイソフタル
酸ジフェニールの誘導体を(分子量約600、融点21
0℃)を投入して両者の蒸発源に通電加熱して蒸着し、
厚さ60μmの相転移発熱層12を形成した。
【0055】その後、PFAの熱収縮チューブを保護層
13として被せて封止し、250℃まで加熱した後、毎
分10℃以上の冷却速度により急冷して発熱定着ローラ
10を作成した(表2に示すSample No1)。
【0056】
【実施例2】外径20mmの芯金11の表面上に、2つ
の蒸発源を真空蒸着槽内にセットして、その1つにイソ
フタル酸ジフェニールの誘導体を、他の1つにビスフェ
ノールAに炭酸ジフェニールを付加した3〜5量体の誘
導体(分子量約800、融点215℃)を、それぞれ投
入して両者の蒸発源に通電加熱して蒸着し、厚さ60μ
mの相転移発熱物質層12を形成した。
【0057】その後、PFAの熱収縮チューブを保護層
13として被せて封止し、230℃まで加熱した後、毎
分10℃以上の冷却速度により急冷して定着ローラ10
を作成した(表2に示すSample No2)。
【0058】
【実施例3】予め粉末にしたPET、及びTe50重量
%含有のSeTe合金を1:1の比率で混合し、この混
合粉末を静電塗装により外径20mmの芯金11の表面
上に塗装して厚さ60μmの相転移発熱物質層12を形
成した。
【0059】その後、150℃付近の温度にまで急速に
加熱して合金が結晶化して芯金11に焼き付けを起こし
た段階で、PFAの熱収縮チューブを保護層13として
被せて封止し、285℃まで減圧加熱した後、毎分50
℃以上の冷却速度により急冷して定着ローラ10を作成
した(表2に示すSample No3)。
【0060】
【比較例1】実施例1〜3で使用した相転移発熱物質
を、各々単体で各実施例と同様にして芯金11の表面上
に膜形成して定着ローラ10を作成した。但し、SeT
e合金、イソフタル酸ジフェニールの誘導体および炭酸
ジフェニール付加ビスフェノールA誘導体は真空蒸着に
より膜を形成し、PETは予備加熱カール法で形成した
(表2に示すSample No4,5,6,7,
8)。
【0061】
【比較例2】Te50重量%含有SeTe合金と、Se
単体とを別々の蒸発源に投入し、これらを芯金11の外
表面に真空中で同時に蒸着して相転移発熱層12を形成
した。その後、PFAの熱収縮チューブを保護層13と
して被せて封止して発熱定着ローラ10を作成した(表
2に示すSample No9)。
【0062】
【比較例3】実施例2で使用したビスフェノールAに炭
酸ジフェニールを付加した3〜5量体の誘導体と、ビス
フェノールA誘導体とを別々の蒸発源に投入し、これら
を芯金11の外表面に真空中で同時に蒸着して相転移発
熱層12を形成した。その後、PFAの熱収縮チューブ
を保護層13として被せて封止して定着ローラ10を作
成した(表2に示すSample No10)。
【0063】これらの実施例1〜3、比較例1〜3の発
熱定着ローラ10をリコー社製電子写真複写機M210
の定着装置に組込み、ヒーター電力960Wで加熱しな
がら定着ローラの表面温度の上昇状況等を調べてみた。
尚、表2は以下に示す各実施例並びに比較例の実験結果
を示す。
【0064】
【表2】 この結果、実施例では、図5に示したように、表面温度
の上昇が2つの相転移物質の結晶化発熱パターンが複合
化した形となり、第2相転移発熱物質の結晶化開始温度
Tci2から温度急上昇が起こって連続的に上昇し良好
な結果が得られた。第2相転移発熱物質のみによる昇温
では結晶化開始温度Tci2が低いので定着可能温度付
近で息切れして昇温効果が薄れ、第1相転移発熱物質の
みによる昇温では、結晶化開始温度Tci1が高い分だ
け昇温開始が遅れた。なお、2種の相転移発熱物質が類
似の性質を持つ場合、初期には2つの相転移発熱物質に
よる昇温が別々に認められるが、繰り返すと段々結晶化
開始温度が変化し、安定していないことが確認された。
【0065】この相転移発熱層12を3種類以上の複数
の相転移発熱物質の混合物により形成しても良い。
【0066】このように、相転移発熱物質が固有の温度
特性を有することを積極的に利用して、ヒータ14のみ
による昇温よりも急激な昇温作用を有する2種類の相転
移発熱物質によって相転移発熱層12を形成し、この相
転移発熱層12の発熱によって、比較的低い温度から段
階的に急激な昇温効果を得ることができ、ウォーミング
アップ時間の大幅な短縮、並びに、ヒータ14の省電力
化を実現できた。
【0067】また、複写機を使用する環境下での常温か
ら定着可能温度までの温度範囲で昇温させるとき、結晶
化温度特性(結晶化開始温度、発熱ピーク温度等をい
う)の異なる物質を混合して相転移発熱層12を形成す
ることにしたので、使用する物質の組み合わせにより、
温度範囲の選定が容易となった。
【0068】
【発明の実施の形態2】発明の実施の形態1では、相転
移発熱層12を第1相転移発熱物質と第2相転移発熱物
質との混合物から形成した。この発明の実施の形態2で
は、相転移発熱層12を第1相転移発熱物質のみからな
る第1層と第2相転移発熱物質のみからなる第2層とに
より構成したものである。この作用効果は発明の実施の
形態1と大略同一であるのでその詳細な説明は省略する
こととし、異なる部分についてのみ説明することとす
る。
【0069】図11は相転移発熱層12を第1層12a
と第2層12bとから構成し、保護層13により相転移
発熱層12を被覆した構成を示している。第1層12a
は第1相転移発熱物質のみから構成され、第2層12b
は第2相転移発熱物質のみから構成され、第1層12a
は第2層12bの上に積層形成されている。ここでは、
第1相転移発熱物質の結晶化開始温度を第1結晶化開始
温度といい、第2相転移発熱物質の結晶化開始温度を第
2結晶化開始温度ということにする。第1結晶化開始温
度は第2結晶化開始温度よりも高い。
【0070】この相転移発熱層12には図12に示すよ
うに、第1層12aと第2層12bとの間に結晶化開始
温度が第1結晶化開始温度と第2結晶化開始温度との間
に存在する相転移発熱物質のみからなる第3層12cを
設けても良い。
【0071】さらに、図13に示すように、第2層12
bと第1層12aとの間にアルミニウム合金等の熱伝導
率の大きな仕切り層12dを介在させても良い。この仕
切り層12dにはその融点が各相転移発熱物質の融点T
m1、Tm2よりも高いものを使用するのが望ましい。
各相転移発熱物質の溶融時に相互に融合しないようにす
るためである。相溶性を有する物質を組み合わせて用い
る場合には、上述した仕切り層12dを設けることが望
ましい。
【0072】第1層12a、第2層12bを構成する物
質には、発明の実施の形態1と同様に表1に示す物質を
使用する。
【0073】以下に、発明の実施の形態2の定着ローラ
10各種実施例と比較例とを説明する。
【0074】
【実施例1】外径20mmのアルミニウム合金からなる
芯金11の外表面に、イソフタル酸ジフェニールの誘導
体を分散した塗工液を塗布して第2層12bを形成し、
この第2層12bを乾燥させた後、真空蒸着槽内にセッ
トし、Te8重量%含有のセレン・テルル(SeTe)
合金を蒸発源として通電加熱して、これを第2層12b
の上に蒸着して膜厚60μmの第1層12aを形成し
た。
【0075】その後、ペルフルオロアルコキシフッ素樹
脂(PFA)の熱収縮チューブを第1層12aに被せて
封止し、250℃まで加熱した後、毎分10℃以上の冷
却速度により急冷して定着ローラ10を作成した(表3
に示すSample No1)。
【0076】
【実施例2】外径20mmの芯金11の外表面に、2つ
の蒸発源を真空蒸着槽内にセットして、その1つにイソ
フル酸ジフェニールの誘導体を投入し、他の1つにビス
フェノールAに炭酸ジフェニールを付加した3〜5量体
の誘導体を投入し、まずイソフル酸ジフェニールの誘導
体の蒸発源を通電加熱して蒸着することにより、第2層
12bを形成し、その後、ビスフェノールAの誘導体に
通電加熱して蒸着し、第1層12aを形成して、厚さ6
0μmの相転移発熱層12を形成した。
【0077】その後、PFAの熱収縮チューブを被せて
封止して保護層13とし、220℃まで加熱した後、毎
分10℃以上の冷却速度により急冷して定着ローラ10
を作成した(表2に示すSample No2)。
【0078】
【実施例3】予め予備加熱カール法によってPET膜
(第2層12b)を形成した外径20mmの芯金11の
外表面にTe8重量%含有のSeTe合金を真空蒸着し
て膜(第1層12a)を形成して、厚さ60μmの2層
の相転移発熱層12を形成した。
【0079】その後、PFAの熱収縮チューブを被せて
封止して保護層13とし、285℃まで減圧加熱した
後、毎分50℃以上の冷却速度で急冷して定着ローラ1
0を作成した(表2に示すSample No3)。
【0080】
【実施例4】外径20mmの芯金11の外表面に真空蒸
着でTe50重量%含有SeTe合金を第2層12bと
して形成した後、その表面にスパッタリングによってス
テンレス鋼膜(仕切り層12d)を形成し、さらにその
上にTe8重量%含有SeTe合金を第1層12aとし
て形成した。
【0081】その後、PFAの熱収縮チューブを被せて
封止して保護層13とし、285℃まで減圧加熱した
後、毎分10℃以上の冷却速度により急冷して定着ロー
ラ10を作成した(表2に示すSample No
4)。
【0082】
【実施例5】外径20mmの芯金11の外表面に、イソ
フタル酸ジフェニールの誘導体を分散した塗工液を塗布
して第2層12bを形成し、この第2層12bが乾燥し
た後、予めアルミニウム膜(仕切層12d)を形成した
PETシートを、アルミニウム膜面を内側にして予備加
熱でカールさせた後、第2層12bを形成した芯金11
の上に第1層12aを形成した。
【0083】その後、PFAの熱収縮チューブを被せて
封止して保護層13とし、250℃まで減圧加熱した
後、毎分50℃以上の冷却速度により急冷して定着ロー
ラ10を作成した(表2に示すSample No
5)。
【0084】
【比較例1】実施例1〜3で使用した相転移発熱物質
を、各々単体で実施例と同様にして芯金11支持体の上
に形成した。ただし、SeTe合金、イソフタル酸ジフ
ェニールの誘導体および炭酸ジフェニール付加ビスフェ
ノールA誘導体は真空蒸着により膜を形成し、PETは
予備加熱カール法で形成したものである(表2に示すS
ample No6,7,8,9)。
【0085】
【比較例2】実施例4の2種類のSeTe合金を真空蒸
着で順次積層して第2層12bと第1層12aとを形成
し、その後、PFAの熱収縮チューブを被せて封止して
保護層13として定着ローラ10を作製した(表2に示
すSample No10)。
【0086】
【比較例3】実施例5と同様にして、第2層12bと第
1層13aとの間にアルミニウム被膜のない(仕切層1
2dのない)定着ローラ10を作製した(表2に示すS
ample No11)。
【0087】これらの実施例1〜5、比較例1〜3の定
着ローラ10をリコー製電子写真複写機M210の定着
装置に組込み、ヒーター電力960Wで加熱しながら各
定着ローラ10の表面温度の上昇状況等を調べてみた。
尚、表3は以下に示す各実施例並びに比較例の実験結果
を示す。
【0088】
【表3】 この比較結果は、発明の実施の形態1とほぼ同じであっ
たが、比較例2、3のように相溶性を有する物質を積層
形成した場合、繰り返し使用により段々と結晶化開始温
度がずれ、しかも、発熱も劣化してきたが、実施例4、
5のように第1層12aと第2層12bとの間に仕切り
層12dを形成した場合には繰り返し使用でも、結晶化
開始温度が安定していた。
【0089】
【発明の実施の形態3】発明の実施の形態1では二種の
異なる相転移発熱物質を混合して芯金11に相転移発熱
層12を形成した。発明の実施の形態2では単一の相転
移発熱物質のみからなる第2層と第1層とを積層して芯
金11に少なくも2層からなる相転移発熱層12を形成
した。
【0090】しかし、2種以上の相転移発熱物質を用い
る場合には、結晶化温度範囲の選択に加え、2種以上の
物質の相溶性、融点、ガラス転移点等の特性を極めて相
性よく選択する必要がある。それ故、発明の実施の形態
1、2ではそれでもなお、物質の適用範囲が限定されて
いる。
【0091】例えば、結晶化した相転移発熱層12を溶
融させるとき、その融点が300°C近傍以上の相転移
発熱物質は、転写紙Pの発火点温度を考慮すると高すぎ
る。他方、その融点が定着可能温度以下である場合、昇
温時にその相転移発熱物質が融解されると吸熱する。こ
れにより、定着ローラ10の温度上昇は促進されず、か
えって減速される。また、ガラス転移点が常温よりも低
い場合には、非晶化された相転移発熱層が経時的に結晶
化される。さらに、相溶性があると、2種の相転移発熱
物質は相互に溶解される。
【0092】一般に、相転移発熱物質の結晶化温度(T
ci,Tcp,Tcf)はその物質に固有の温度であ
り、使用する相転移発熱材料によって決ってしまうと考
えられていた。また、ガラス転移点Tg、融点Tmも同
様に一般にその物質固有の温度である。それ故、異なる
結晶化温度を有する材料を選択すると融点も同様に異な
ると予想される。
【0093】しかしながら、本発明者の研究によれば、
相転移発熱材料は一般的に固有の結晶化温度を有する
が、ある特定の処理、たとえば粉砕処理を行なうことに
より本来の塊(バルク)の固有の結晶化温度よりも低い
第二の結晶化発熱温度を有する特性に改良できることが
判明した。これにより、相転移発熱材料の固有の値であ
る融点Tmやガラス転移点Tgは元のままで、相転移の
結晶化温度領域を拡大することができた。
【0094】この現象は結晶の成長速度の方向性、成長
速度の異方性などの結晶成長時の条件に起因すると推測
される。たとえば、水の結晶である雪がいわゆる雪印形
の平面デンドライト形態を有したり、水晶のような石柱
錘形を有すように、結晶成長時の条件で結晶の形状が変
化することが知られている。
【0095】Se系非晶質物質の結晶化の粒径による結
晶化パターンの変化の理由は、たとえば、次のように考
えることができる。
【0096】Seにおいて発生した2重ピークの結晶化
の活性化エンタルピーは、低温域ピークで1.3eV
(379cal/g)、高温域ピークで1.0eV(2
92cal/g)となる。Teを6重量%(wt%)含
むSeTe合金でも同様に低温域ピークの活性化エンタ
ルピーが高いとの測定結果が得られている。このこと
は、高温域ピークは結晶化し易く、低温域ピークは結晶
化しにくいことを示している。それ故、この低温域ピー
クは高温域ピークに比べて活性化エンタルピーが高いの
で塊中ではこの低温域ピークに基づく結晶化は発現しに
くいと考えられる。
【0097】ここで、Se等のカルコゲンでは、塊を粉
砕するとその破断面では結合手が切断され、無数のダン
グリングボンドが発生する。このダングリングボンド
は、空気中に放置しておくと酸素と結合して安定化す
る。一方、Seは酸素濃度の増大に従って結晶化しやす
くなることが確認されている(特願平7−144130
号明細書参照)。これらの事実を総合すると、ダングリ
ングボンド自体は結晶核としても働くが、この安定化し
たダングリングボンドも結晶核として作用するものと推
定される。これにより微細化は、結晶成長を促進する結
晶核を表面に多数発生させるのに、寄与していると考え
られる。
【0098】また、Se等のカルコゲンでは、塊中での
結晶成長形態は球晶であるが、しばしば蒸着薄膜の結晶
形態を観察すると、くらげ状あるいは茸状の平面放射状
の大きな結晶が認められる。このことは、この材料では
塊中での成長よりも表面での結晶成長速度が速いと考え
られる。微細化は、この結晶成長速度の速い表面の増大
に寄与していると考えられる。
【0099】それ故、この物質では、微粒子化すること
により粒子表面に結晶核が多数発生して結晶化が促進さ
れるとともに、結晶化が塊中よりも速いと考えられる表
面の微粒子化に伴う増大によって、更に結晶化が促進さ
れると考えられる。したがって、微細化により発生した
粒子表面の多数の結晶核や、微細化による粒子表面積の
増大、により結晶化が促進され、これらの結晶化の促進
により活性化エンタルピーが高くて結晶化しにくい低温
域ピークが出現するものと推定される。
【0100】有機高分子の結晶化のメカニズムは複雑で
あるが、基本的には塊(バルク)中と自由表面での関係
は同様であると推定される。すなわち、微細化すること
により表面積を増大させたり、高分子粒子の表面に公知
の結晶核剤を付着させることにより、第2の結晶化ピー
クの発現が促進される。
【0101】この相転移発熱物質は複数の結晶化発熱温
度を有するので、単一の結晶化発熱温度を有する相転移
発熱物質に比べて比較的広い範囲の温度領域でこの促進
が行なわれる。したがって、この発熱の促進は比較的低
い温度から開始され、また、定着ローラの定着温度付近
の高い温度まで加速させることが可能となる。さらに、
このものは同一物質であり、融解に基づく単一の吸熱温
度を有する材料であるので、非晶質化のために溶融する
場合には単一の融点以上に加熱すればよい。従って、複
数の異なる物質を用いる場合に比べて材料の選択が容易
となる。
【0102】また、粒径を異ならせた同一物質を選択的
に組み合わせて用いることにより二種以上の結晶化開始
温度を有する相転移発熱層12を形成できる。
【0103】たとえば、カルコゲン系元素を主体とした
合金は、粉砕して微粒子にすれば低温域に新たに結晶化
開始温度を発生させることができる。また、カルコゲン
系元素合金の中でもSeは融点が217°であること
から、合金になっても融点は大きくはシフトしない。し
たがって、非晶質初期化の融解過程で高温を必要せずに
効果的に行える。
【0104】相転移発熱層12を構成する物質には、溶
融水中ショット法で調製された高純度Se(純度99.
999%)ペレットが用いられる。本発明者の研究によ
れば、第二の結晶化開始温度は、塊を粉砕すると発現す
る。そこで、この現象を確認するため、ペレットを粉砕
機で粉砕させ、得られた粉末を0.5mm以上の塊、
0.2〜0.5mmの粉、0.1mm未満の微粉に分級
する。各々の試料を毎分10°Cの昇温速度の条件によ
り熱分析DTAを行ない、結果を表4にまとめた。
【0105】
【表4】 試料番号1の塊は、図14に示すように、図1と同様な
結晶化による発熱パターンを示し、140°Cにシャー
プな発熱ピーク温度Tcpを示している。
【0106】これに対して、機械的に微粉砕した粒径
0.1mm未満の試料番号3の微粉では、図15に示す
ように低温側に発熱パターンのピーク部分が広がった比
較的大きな発熱量を有する発熱ピークを認めることがで
きた。また、試料番号2,3の材料は、高温側の発熱ピ
ーク温度Tcp1(140°C)に加え、低温側の発熱
ピーク温度Tcp2(110°C)が発現するので、低
温側から高温側まで広い範囲の発熱領域を有する物質で
あることが理解される。また、結晶化開始温度も低温側
にずれている。これにより、粒径をコントロールすると
いう簡単な構成により結晶化開始温度がコントロールで
きることが理解される。また、この試料番号2、3の材
料は低温側から高温側まで広い範囲で昇温を促進させる
材料として有効に利用されることが理解される。
【0107】とくに、試料番号3の材料は、試料番号2
の材料に比べて発熱パターンがブロード化されているこ
とが理解され、この試料番号3の材料は、広い領域で連
続的に滑らかに昇温を促進させる効果が期待される。ま
た、これらの試料番号2,3の材料はいずれも融点T
m、ガラス転移点Tgともに試料番号1の材料と実質的
に変化は認められなかった。
【0108】一方、対照として同ペレットを支持体基板
温度50°Cにて真空蒸着して厚さ0.1mmの蒸着膜
を形成させ、剥離させて蒸着膜試料(試料番号4)を得
た。同様にして熱分析DTAを行なったところ、図14
と同様な発熱パターンを示し、その結果を併せて表4に
示した。蒸着膜では、厚さが0.1mmと薄くても第2
の発熱ピークは認められなかった。
【0109】同様に高純度Seに代えて、Teを6重量
%含むSeTe合金およびTeを50重量%含むSeT
e合金(融点285°C)についても粉砕、分級してD
TAを行なったところ、図16に示すように、Te組成
に基づき高純度Seに比較して発熱ピーク温度はやや高
温側にシフトするものの、Seと全く同じ挙動を示し、
粉砕された材料では、二つの発熱ピークが確認された。
これにより、カルコゲナイド系化合物ではSeと同様な
挙動を示すことが確認される。
【0110】これらの微粉砕化されたSeおよびSeT
e合金のDTAパターンは、その試料を数年間放置して
も初期の2重ピークパターンが維持されていることが確
認されている。したがって、この微粉砕化された試料を
加熱ロールの転移層を構成する材料として利用しても耐
久性がよいと理解される。
【0111】以上の説明から明らかなように、この発明
の実施の形態3によれば、相転移発熱物質の粒子径をコ
ントロールすることにより発熱温度範囲を制御すること
ができる。例えば、粒子径を小さくすることにより低温
域でより多くの発熱を伴う物質とすることができる。
【0112】すなわち、これらの粒子の径が異なる同一
物質を選択的に組み合わせることにすれば、発明の実施
の形態1、発明の実施の形態2で説明したと同様に、低
温領域から高温領域に渡って広い温度範囲で昇温させる
相転移発熱層12を形成することができる。相転移発熱
層12は図17〜図19に示すように第1粒子30と第
2粒子31とを混合した混合物からなる一層構成のもの
であっても良い。
【0113】相転移発熱層12を第1粒子30と第2粒
子31とからなる混合物により一層のみの構成とする場
合、第1粒子30と第2粒子31とを全体に渡って混在
させて均一に分散させる構成とするのが望ましい。
【0114】この相転移発熱層12は同一物質であるの
で、融点Tm、凝固点Tm’が同一である。このため、
溶融時に融合しないように第1粒子30の融点及び第2
粒子31の融点よりも高い融点を有する熱伝導性の形態
保持材料により保持することが必要である。特に、第1
粒子30よりも粒子径が小さい第2粒子31はその結晶
化開始温度が第1粒子30の結晶化開始温度よりも低い
ので、その第2粒子31の結晶化開始温度を維持するた
めに、図17に示すように、形態保持材料34により被
覆することが望ましいが、図18に示すように第1粒子
30と第2粒子31とを両方とも形態保持材料34によ
り被覆しても良い。
【0115】また、図19に示すように、第1粒子30
と第2粒子31とを、この各粒子30、31の融点より
も高い融点を有する熱伝導性の形態保持材料35中に均
一に分散させて混在させる構成としても良い。この場合
には、各粒子30、31を被覆する必要はない。
【0116】更に、図20に示すように、第1粒子30
を熱伝導性の形態保持材料36に均一に分散させて第1
層32を構成し、第2粒子31を熱伝導性の形態保持材
料37に均一に分散させて第2層33を構成し、この第
1層32と第2層33とにより相転移発熱層12を形成
しても良い。この場合、発明の実施の形態1と同様に結
晶化開始温度の高い第1粒子30のみからなる第1層3
2を第2粒子31のみからなる第2層33の上に形成す
るのが望ましい。なお、第1相転移発熱物質には、蒸着
膜を用いても良い。
【0117】また、熱伝導性の形態保持材料には、エポ
キシ系接着剤、熱可塑性ポリイミド系接着剤を用いる
が、粒子を被覆した状態で、相転移発熱物質を非晶質化
させるために、相転移発熱物質を溶融させた状態で、そ
の塗膜が溶融したり、分解したりせずに形態を保つこと
により、初期の粒子の形態を保持できるものであればよ
い。このような材料には、たとえば、架橋型高分子や高
融点高分子などがある。
【0118】なお、これらの実施例では、結晶化した固
体を非晶質の固体に相転移させるために、結晶化した固
体を溶融状態にし、この溶融状態の液体を急冷すること
により非晶質の固体に相転移させているが、結晶化した
固体にイオンを注入することにより結晶化した固体を非
晶質の固体に相転移させることができる。この場合、イ
オン注入装置を複写機内に組み込めば良い。
【0119】この発明の実施の形態3によれば、同一物
質で広い範囲の加熱促進が図れ、複数の異なる種類の相
転移発熱物質を用いるよりも製造上の制約が大幅に軽減
される。
【0120】異なる粒径の物質を均一に分散させること
により、ローラの全体に渡って昇温促進効果が均一とな
る。
【0121】機械的微粉砕により、相転移発熱物質の結
晶化温度を拡大できる。
【0122】非晶質化のために相転移発熱物質を溶融さ
せたとしても、被覆により保護、分離されているので、
互いの粒子は相溶することはなく、繰り返し使用に対し
て常に同じ粒子形状が保たれる。また、被覆物質が良熱
伝導性であるので、発生した熱の伝熱効率がよい。
【0123】カルコゲン系元素を主体とした合金は、粉
砕して微粒子にすることで容易に低温域結晶化発熱温度
を発生させることができる。
【0124】カルコゲン系元素合金の中でもSeは融点
が217°であることから、合金になっても融点は大
きくはシフト変化せず、非晶質初期化のための融解が効
果的に行える。
【0125】
【発明の効果】以上説明したように、本発明の定着ロー
ラ及び定着装置は、相転移発熱物質層を構成する相転移
発熱物質が、二種以上の結晶化開始温度を有しているの
で、ウォーミングアップ時間の大幅な短縮化を実現し得
て、しかも、温度範囲の選定が容易で、ヒータの省電化
をも実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 相転移発熱物質の発熱特性を説明するための
模式的なDTA曲線図を示す。
【図2】 本発明の実施の形態に係わる複写機の概略構
成を示す断面図である。
【図3】 本発明の実施の形態に係わる定着ローラの構
成の一例を示す拡大断面図である。
【図4】 本発明に係わる定着ローラの変形例を示す拡
大断面図である。
【図5】 本発明に係わる定着ローラの昇温特性を説明
するための温度−時間曲線を示す模式図である。
【図6】 従来の定着ローラの構成を示す断面図であ
る。
【図7】 本発明に係わる定着装置の制御を説明するた
めの構成図である。
【図8】 図7に示す定着装置の制御タイミングを示す
図である。
【図9】 定着ローラの外周面を冷却する構成を示す概
略図である。
【図10】 定着ローラを回転させながら冷却構成を示
す概略図である。
【図11】 相転移発熱層を第1層と第2層との2層構
成とした定着ローラの拡大断面図である。
【図12】 相転移発熱層を第1層と第2層と第3層と
の3層構成とした定着ローラの拡大断面図である。
【図13】 相転移発熱層を第1層と第2層との2層構
成とし、第1層と第2層との間に仕切り層を設けた定着
ローラの拡大断面図である。
【図14】 高純度Se塊の結晶化発熱特性を示すDT
A曲線図である。
【図15】 高純度Se微粉の結晶化発熱特性を示すD
TA曲線図である。
【図16】 SeTe合金粉の結晶化発熱特性を示すD
TA曲線図である。
【図17】 粒径の異なる同一物質を混合して芯金に相
転移発熱物質を形成した状態を示す定着ローラの部分拡
大図であり、粒径の小さい方の粒子を熱伝導性の形態保
持材料により被覆した状態を示している。
【図18】 同一物質からなる粒径の異なる第1粒子と
第2粒子とを混合して芯金に相転移発熱物質を形成した
定着ローラの部分拡大図であり、両方の粒子を熱伝導性
の形態保持材料により被覆した状態を示している。
【図19】 粒径の異なる第1粒子と第2粒子とを混合
して熱伝導性の材料に均一に分散させて相転移発熱層を
形成した定着ローラの部分拡大図である。
【図20】 同一物質の第1粒子のみからなる第1層と
第2粒子にのみからなる第2層とにより相転移発熱層を
形成した定着ローラの部分拡大図である。
【符号の説明】
10…定着ローラ 11…芯金 12…相転移発熱層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G03G 13/20 G03G 15/20 F16C 13/00

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 結晶質と非晶質とに相転移が可能な相転
    移発熱物質からなる相転移発熱層を芯金上に設け、前記
    相転移発熱物質が非晶質から結晶質へ相転移するときの
    発熱を利用して昇温が促進される定着ローラにおいて、 前記相転移発熱物質には非晶質から結晶質に相転移を開
    始する結晶化開始温度が少なくとも二つ以上存在し、前
    記相転移発熱物質は互いに異なる単一の結晶化開始温度
    を有する少なくとも二種類の物質の混合物からなり、該
    混合物は第1相転移発熱物質と第2相転移発熱物質から
    なり、前記第1相転移発熱物質の結晶化開始温度が前記
    第2相転移発熱物質の結晶化開始温度と第2相転移発熱
    物質の発熱ピーク温度との間にあることを特徴とする
    着ローラ
  2. 【請求項2】 請求項1に記載の定着ローラにおいて、
    前記第1相転移発熱物質の発熱ピーク温度が前記第2相
    転移発熱物質の融点未満であることを特徴とする定着ロ
    ーラ
  3. 【請求項3】 結晶質と非晶質とに相転移が可能な相転
    移発熱物質からなる相転移発熱層が芯金上に設けられて
    前記相転移発熱物質が非晶質から結晶質へ相転移すると
    きの発熱を利用して昇温が促進される定着ローラと、前
    記相転移発熱物質を非晶質から結晶質に相転移させる加
    熱部と、結晶化した相転移発熱物質を溶融させる溶融部
    と、溶融状態の相転移発熱物質を非晶質の相転移発熱物
    質に固化させる冷却部とを備え、前記相転移発熱物質が
    互いに異なる単一の結晶化開始温度を有する少なくとも
    二種類の物質の混合物からなる定着装置。
  4. 【請求項4】 請求項3に記載の定着装置において、前
    記混合物が第1相転移発熱物質と第2相転移発熱物質か
    らなり、前記第1相転移発熱物質の非晶質から結晶質に
    相転移を開始する結晶化開始温度が前記第2相転移発熱
    物質の結晶化開始温度と第2相転移発熱物質の発熱ピー
    ク温度との間にあり、前記加熱部は少なくとも第1相転
    移発熱物質の結晶化開始温度まで前記相転移発熱層を加
    熱することを特徴とする定着装置
  5. 【請求項5】 請求項4に記載の定着装置において、前
    記第1相転移発熱物質のピーク温度が第2相転移発熱物
    質の融点未満であることを特徴とする定着装置
  6. 【請求項6】 請求項3に記載の定着装置において、前
    記混合物が第1相転移発熱物質と第2相転移発熱物質か
    らなり、前記溶融部は第1相転移発熱物質の融点と第2
    相転移発熱物質の融点とのうち、高い方の融点以上に前
    記相転移発熱層を加熱し、前記冷却部は第1相転移発熱
    物質と第2相転移発熱物質とのうち、融点の高い方の相
    転移発熱物質が溶融状態から非晶質の固体へ相転移する
    冷却速度により冷却することを特徴とする定着装置
  7. 【請求項7】 請求項3に記載の定着装置において、前
    記混合物が第1相転移発熱物質と第2相転移発熱物質か
    らなり、前記溶融部は第1相転移発熱物質の融点と第2
    相転移発熱物質の融点とのうち、高い方の融点以上に相
    転移発熱層を加熱し、前記冷却部は第1相転移発熱物質
    が非晶質の固体へ相転移する冷却速度と第2相転移発熱
    物質が非晶質の固体へ相転移する冷却速度とのうち、早
    い方の冷却速度により前記第1相転移発熱物質と第2相
    転移発熱物質とを冷却することを特徴とする定着装置
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