JP3253900B2 - 無電解めっき用樹脂組成物および無電解めっき方法 - Google Patents

無電解めっき用樹脂組成物および無電解めっき方法

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JP3253900B2
JP3253900B2 JP25600397A JP25600397A JP3253900B2 JP 3253900 B2 JP3253900 B2 JP 3253900B2 JP 25600397 A JP25600397 A JP 25600397A JP 25600397 A JP25600397 A JP 25600397A JP 3253900 B2 JP3253900 B2 JP 3253900B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、表面の腐蝕工程を必要
としない新たな無電解めっき方法に適する樹脂組成物と
その無電解めっき方法に関する。本発明は、多種類の基
材に適用することができ、その利用分野は無電解めっき
を必要とする分野全般に亙るものであるが、特に期待さ
れる分野は電磁波遮蔽用への利用、特に耐熱性樹脂の電
磁波遮蔽用への利用及びプリント配線基板への利用であ
る。
【0002】
【従来の技術】無電解めっきは通常非導電体であるプラ
スッチク成形品を電解めっきするための導電体化工程と
して行われるもので、成形品の被めっき面を何等かの方
法で腐蝕する前処理を行って微細な腐蝕孔を表面に形成
させ、次いで行われる無電解めっきによって腐蝕孔の内
面に析出する金属による投錨効果によりめっき層を基材
面に結合する方法が行われている。なお、腐食が困難な
樹脂、例えばポリプロピレン、ポリエ−テルイミド等に
おいては腐食工程の前に、腐食を容易にするため溶剤に
よる膨潤などの前処理が行われている。
【0003】プラスチックの無電解めっき方法として無
電解めっき用接着剤を使用する方法がプリント配線板の
製法として公知(特開平2-8281、特開平3-22081等)で
あるが、この無電解めっき用接着剤は基材より腐蝕され
やすい組成となっており、塗布後、腐蝕処理を行って接
着剤面に形成された腐食孔による前述と同様の投錨効果
によりめっき皮膜を基材に密着させる方法である。
【0004】また、電磁波遮蔽の従来の技術は導電性塗
料の塗布、亜鉛溶射、或いは導電性物質の充填された導
電性プラスチックを積層又は心材としてサンドイッチ成
形する方法等あるが、これ等の中では導電性塗料が最も
普及している。しかしいずれもその効果は十分とはいえ
ず、又最も普及している導電性塗料でも価格が極めて高
価で、かつ塗膜を厚くする必要があり塗装費は高価なも
のとなる。最近無電解めっき皮膜の電磁波遮蔽効果が高
く評価されるようになったが後述する問題点により十分
に普及していない。
【0005】
【本発明が解決しようとする課題】前述のような従来の
プラスチックの無電解めっき方法を行う場合、必ず腐蝕
工程を必要とし、この工程において硫酸−クロム酸混合
溶液処理が一般に行われている。この様な強力且つ危険
な腐蝕液を多量に使用するので公害対策を必要とし、こ
の対策設備の無い所では実施できないという制約及び公
害対策費という経済面の問題がある。
【0006】また、プラスチック自体においても、めっ
き層と素材(プラスチック)との密着性を満足させるた
めに、それぞれの樹脂に応じて腐蝕されやすいように改
質された、無電解めっきに適した専用の樹脂グレードが
使用されている。この場合、その樹脂が本来持っている
特性が一部犠牲にされ、しかも樹脂価格も高価になるる
という問題点がある。
【0007】これらの問題を解決する方法として、被め
っき面に腐食を行わずに無電解めっき皮膜が密着するよ
うな被膜を形成する方法が考えられる。このような方法
として、特公平6-33461にキトサン又はキトサン誘導体
を含む被膜を被めっき面に形成し、腐食を行わずに無電
解めっきする方法が開示されている。しかしながら、こ
の方法は被膜の被めっき基材に対する密着性が十分でな
く、これを補うために下塗り塗料を必要とする問題点が
ある。実施例においてはアクリル系の下塗り塗料を使用
しており、下塗り無しの実施例は記載されていない。又
剥離強さもJISK6400 8.5「塗料の付着性試験方法:ご
ばん目テ−プ法付着性試験」による結果のみである。こ
の無電解めっき方法以外に、塗布剤に無電解めっき用触
媒のパラジウムの微粒子を充填するようなこともしない
で、腐食工程を必要としない無電解めっき方法は、本発
明者等の発明による後記の特許出願の方法を除いて未だ
知られていない。
【0008】本発明者等はこのような被膜の樹脂組成に
ついて検討を行い、既に3件の特許を出願した(特開平
3-64481、特公平7-62253特開平4-103771)。しかしな
おプリント基板に要求されるハンダ耐熱性が得難いこと
および耐熱性の樹脂に対する適用範囲が狭いという問題
点がある。
【0009】本発明は上記の事情に鑑みてなされたもの
で、さらにプリント基板に要求されるはんだ耐熱性およ
び耐熱性の樹脂に対する適用範囲の十分な、無電解めっ
き被膜を形成する樹脂組成物およびその樹脂組成物を用
いる腐蝕工程を必要とせず、かつ負の高電圧を印加しな
いでも十分に実用に供し得る剥離強さのめっき被膜を形
成する無電解めっき方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、さらに耐
熱性のある樹脂組成を検討するために、前記3出願夫々
において見出した樹脂被膜に対し無電解めっき皮膜が腐
食孔による投錨効果に拠らずに密着する現象の発現機構
に対する次に述べる仮説の演繹として後述の検討を行っ
た。
【0011】すなわち無電解めっき皮膜が樹脂被膜に密
着するためには両者の界面において何等かの電子の授受
があり、そのためには樹脂被膜面が無電解めっきに好ま
しい電子分布状態にあるとした。得られる無電解めっき
皮膜の密着性が特に優れている本発明の方法は、本来陰
性の置換基である塩素基、ニトリル基を有するポリマ−
と、金属と塩を形成し得る官能基を組み合わせた樹脂組
成物被膜に、負の高電圧を印加することにより無電解め
っき皮膜の密着性が著しく改善される現象を見出したこ
とにより成されたもので、この機構として負の静電圧印
加により陰性置換基が印加面と反対方向に配向し、印加
面は正となり、錯陰イオンであるパラジウム触媒の付着
が容易となり、この付着したパラジウム錯イオンが活性
化工程において還元されて金属パラジウムとなる際に、
表面または表面近くに存在する官能基と結合し、金属化
されたパラジウムの触媒効果により引き続き還元されて
析出する金属皮膜も前記官能基と結合するため強い剥離
強さを示すものと推測した。
【0012】もし被膜を形成する樹脂組成物の化学構造
が本質的に求電子的な化学構造であるならば、その被膜
面には負の静電圧を印加する必要はないと推測し、その
ような化学構造としてアミノ基、イミノ結合、アミド結
合、ウレタン結合、尿素結合、二級アミン構造、メラミ
ン等の窒素・水素結合を含む化学構造を考え、これらの
構造の少なくとも一種と、カルボキシル基、スルフォン
酸基等の金属と塩を形成する官能基(本発明ではこれを
「造塩性官能基」と呼称する)とを組み合わせて有する
樹脂組成物の、かつ基材と接着性のある樹脂被膜を後述
する各種の方法により被めっき面に形成させ、該被膜の
無電解めっき性を、無電解めっき条件を含めて検討を実
施し、被膜形成後弱アルカリ性の脱脂洗浄を行った後、
触媒液浸漬及び触媒活性化工程を含む通常の無電解めっ
き方法により、予想通り負の高電圧を印加しないでも十
分に実用に供し得る剥離強さのめっき皮膜が得られるこ
とを見出だして本発明に至った。
【0013】すなわち本発明は下記(A)の群より選ば
れた少なくとも1種の窒素・水素結合を有する化学構造
と、(B)造塩性官能基とを組み合わせて有する樹脂組
成物であることを特徴とする無電解めっき用樹脂組成
物、(A)アミノ基、イミノ結合、アミド結合、ウレタ
ン結合、尿素結合、第二アミン構造およびメラミン構
造、および前記樹脂組成物の被膜を該被膜と接着性の有
る(接着可能な)基材の被めっき面に形成した後、弱ア
ルカリ性脱脂洗浄を行い、次いで触媒付与工程および触
媒活性化工程を含む無電解めっきを行うことを特徴とす
る、非導電体の無電解めっき方法である。
【0014】本発明者等はこの発明思想を立証するため
に、前記窒素・水素結合を有する化学構造と造塩性官能
基を組み合わせて有する樹脂組成物の被膜が得られる下
記(1)〜(7)の種々な組合せの方法を実施し、得ら
れた被膜に対し前述の方法で無電解めっきを行い、実用
に供し得る密着性のある無電解めっきを得ることができ
た。
【0015】(1)非水溶性で有機溶剤可溶性の窒素・
水素結合を有するポリマ−と、そのポリマ−と相溶性が
ありかつ造塩性官能基を有する化合物との2成分を含有
する樹脂組成物の塗布剤を、基材の被めっき面に塗布、
乾燥させることにより、窒素・水素結合と造塩性官能基
とを組み合わせ有する樹脂組成物被膜を形成させる方
法。
【0016】(2)窒素・水素結合を有する非水溶性低
分子化合物、その低分子化合物と相溶性のある陰性置換
基を含まない接着性ポリマ−および造塩性官能基を有す
る化合物の3成分、または窒素・水素結合を有する非水
溶性低分子化合物と造塩性官能基を有する接着性ポリマ
ーとの2成分、を含有する樹脂組成物の塗布剤を基材の
被めっき面に塗布、乾燥させることにより、窒素・水素
結合と造塩性官能基とを組み合わせて有する樹脂組成物
被膜を形成させる方法。
【0017】(3)数平均分子量10,000以上のポ
リエチレンイミンおよびメタノ−ルまたは水可溶性の多
塩基酸の2成分を含有する樹脂組成物の塗布剤を基材の
被めっき面に塗布、加熱処理により、イミノ結合を主結
合とする窒素・水素結合と造塩性官能基を組み合わせて
有する非水溶性の樹脂組成物被膜を形成させる方法。
【0018】(4)ジイソシアネ−ト化合物、ポリオ−
ルポリマ−およびそのポリオ−ルポリマ−と相溶性のあ
る造塩性官能基を有する化合物の3成分を含有する樹脂
組成物の塗布剤を基材の被めっき面に塗布、硬化させる
ことにより、ウレタン結合と造塩性官能基とを組み合わ
せて有する樹脂組成物被膜を形成させる方法。
【0019】(5)有機溶剤可溶性のポリアミノポリマ
−またはアミン、エポキシ基含有化合物またはエポキシ
基含有ポリマ−および使用される前記いずれかのポリマ
−と相溶性のある造塩性官能基を有する化合物の3成分
を含有する樹脂組成物の塗布剤を基材の被めっき面に塗
布、硬化させることにより、第二アミン構造と造塩性官
能基とを組み合わせて有する樹脂組成物被膜を形成させ
る方法。
【0020】(6)ジイソシアネ−ト化合物、有機溶剤
可溶性ポリアミノポリマ−および前記ポリアミノポリマ
−と相溶性のある造塩性官能基を有する化合物の3成分
を含有する樹脂組成物の塗布剤を基材の被めっき面に塗
布、硬化させることにより、尿素結合と造塩性官能基と
を組み合わせて有する樹脂組成物被膜を形成させる方
法。
【0021】(7)アルキル化メラミン樹脂、ポリオ−
ルポリマ−またはポリエポキシポリマーおよびそのポリ
オールポリマーまたはポリエポキシポリマーと相溶性の
ある造塩性官能基を有する化合物の3成分を含有する樹
脂組成物の塗布剤を基材の被めっき面に塗布、硬化させ
ることにより、メラミン構造と造塩性官能基とを組み合
わせて有する樹脂組成物被膜を形成させる方法。
【0022】
【発明の実施の形態】以上述べた本発明による無電解め
っき用樹脂組成物およびそれを用いて樹脂組成物被膜を
形成させる方法についてさらに詳細に説明する。
【0023】(A)群に列挙されている窒素・水素結合
を含む化学構造を有し、被膜形成可能な樹脂組成物に
は、そのまま適用できる樹脂としてメタノ−ル可溶性ナ
イロン、有機溶剤可溶性ポリウレタン等があるが、水可
溶性または有機溶剤可溶性の窒素含有化合物と、この化
合物と反応性を有する化合物との化学反応により得られ
る場合が多く、上記(3)〜(7)はこの化学反応によ
る被膜形成方法を提示したものである。また、窒素・水
素結合を含む低分子化合物と、この低分子化合物と相溶
性が有り、接着性被膜を形成することができ、かつハロ
ゲン原子等の陰性置換基を含まない樹脂とを組み合わせ
た樹脂組成物も適用することができる。前記(1)およ
び(2)は前記反応を伴わない方法について提示したも
のである。これらに就いてはそれぞれ個別に後述する。
【0024】(B)の造塩性官能基とは、金属原子と塩
を形成する官能基をいい、例えばカルボキシル基、スル
ホン酸基、フェノール性水酸基、リン酸基、メルカプト
基等があるが、本発明において実用上十分な効果を示す
のはカルボキシル基、スルフォン酸基およびリン酸基で
あり、メルカプト基は、組合せによっては負の効果を示
すことがあり、含まないものとする。
【0025】造塩性官能基を有する化合物とは、前記の
官能基を有するポリマ−または低分子化合物である。特
に好ましいのは造塩性官能基としてカルボキシル基を有
する化合物で、この場合1分子中に複数個のカルボキシ
ル基を有する多塩基酸および不飽和多塩基酸をコモノマ
ーとする共重合体あるいはグラフト共重合体が好まし
い。これらの化合物は本発明に例示されている総ての無
電解めっき方法に共通して使用できるものではなく、各
種無電解めっき方法において組み合わせられる窒素・水
素結合を有する樹脂組成物に対する相溶性、この配合に
よる樹脂組成物の基材に対する接着性の低下限度等に制
約される。
【0026】また上記(A)群の化学構造を有するポリ
マーまたは化合物と(B)の造塩性官能基を有する化合
物の組み合わせの他に、硬化剤、基材に対する接着性改
良剤、塗布作業性改良剤等の第三成分を無電解めっき性
に支障のない範囲内で添加することができる。
【0027】本発明の組成物被膜の無電解めっきを行う
ための最適膜厚は樹脂組成により、または対象とする基
材によって異なるが、1〜10μmの範囲内にあり、こ
の膜厚を得るのに適当な塗布剤濃度は1〜10%(重
量)である。
【0028】本発明の組成物被膜を基材の被めっき面に
形成させるための前記各種成分を含む塗布剤を塗布する
方法は、スプレ−ガンによる吹き付け塗装、刷毛塗り、
浸漬塗布、コ−タ−による塗布等目的、形状に応じて各
種の塗布方法を採用することができる。
【0029】本発明を適用できる基材は、熱可塑性樹
脂、熱硬化性樹脂、セラミック、および木材、木綿、皮
革、絹、羊毛等の天然物質と総ての分野に亙る。しかし
前記各種の方法が夫々これらの基材総てに適用できるわ
けではなく、夫々の方法において基材に対する接着性の
面から適した分野がある。なお直接接着しなくても、基
材と塗布剤との両者に対して接着性を有するプライマ−
を塗布することにより殆どの材料が腐食工程なしに無電
解めっきが可能となる。
【0030】特に、本発明の前記(4)以降の方法の検
討においては、ポリプロピレン用の無電解めっき用樹脂
組成物である低塩素化ポリプロピレンとマレイン化1、
4ポリブタジエンとからなる組成物を成分とする塗布剤
が、塗装性の改善されたポリプロピレンと(4)以降の
系統の組成物被膜間のプライマ−として顕著な効果を示
すので、実施例においては、この塗布剤が塗布されたポ
リプロピレン試料片が使用されている。
【0031】次に前記の各種無電解めっき方法について
個別に詳細に説明する。
【0032】(1)の方法は、窒素・水素結合を有する
(A)群の中の非水溶性で有機溶剤可溶性のポリマ−
と、そのポリマ−と相溶する(B)の造塩性官能基を有
する化合物とを両者の共通溶剤に溶解して塗布剤を調製
し、この塗布剤を、その塗膜に対し接着性のある基材の
表面に塗布して乾燥させるのみで無電解めっき用被膜を
形成させる方法である。この方法は、(A)群の窒素・
水素結合を有する被膜形成性のポリマ−をそのまま使用
する点で、後述の(A)群の化学構造を反応によって形
成する(3)以降の方法と異なる。
【0033】非水溶性で有機溶剤可溶性且つ被膜形成性
のある(A)群の化学構造を有するポリマ−の例として
はメタノ−ル可溶性のポリアミド樹脂、有機溶剤可溶性
のポリウレタンがある。なお、この方法において、接着
性改良の目的で接着性ポリマ−を添加することもでき
る。
【0034】(2)の方法は(1)と同じく(A)、
(B)両成分を共通溶剤に溶解して調製した塗布剤を塗
布して乾燥させるのみで無電解めっき用被膜を形成する
方法であるが、窒素・水素結合を有するポリマ−の代わ
りに、窒素・水素結合を有する非水溶性の低分子化合物
を使用する点で(1)の方法と異なる。この低分子化合
物としてはアミノフェノ−ル系化合物、、ジアミノジフ
ェニルエ−テル系化合物、イミダゾ−ル系化合物、トリ
アゾ−ル系化合物等であるが、カルボキシル基を併有す
るアミノ安息香酸も使用できる。これらの化合物は被膜
形成性が無いので、被膜形成を可能とするため次の2方
法を検討し、採用できることを見出だした。すなわち上
記低分子化合物との相溶性は有るが、陰性置換基を含ま
ない接着性ポリマ−を組み合わせて使用する方法と、
(B)の官能基を有する化合物として造塩性官能基を有
する接着性ポリマ−を組み合わせて使用する方法とであ
る。
【0035】この前者の方法で陰性置換基とはハロゲ
ン、ニトロ基、ニトリル基等で、これらの置換基を非含
有としたのは、これらの陰性置換基は窒素・水素結合の
陽性を相殺するからである。これに該当する接着性ポリ
マ−としては、各種フェノ−ル樹脂、ポリエステル樹
脂、アクリル樹脂等がある。後者の方法において組み合
わせて使用する(B)の造塩性官能基を有する接着性ポ
リマ−としては、末端にカルボキシル基を有するポリエ
ステル、各種のマレイン酸またはアクリル酸共重合体等
である。
【0036】(3)の方法は、(A)群の中のイミノ結
合と(B)の造塩性多価官能基を組み合わせて有する樹
脂組成物被膜を得る方法である。イミノ結合を有するポ
リマ−として、ポリエチレンイミンの数平均分子量を1
0,000以上と規定したのは、組み合わされる多塩基
酸が低分子化合物であるため、数平均分子量が10,0
00以下では実用に耐える被膜が形成されないからであ
る。好ましい数平均分子量は70,000前後である。
この方法において、メタノ−ルまたは水に可溶な多塩基
酸としては、マロン酸、コハク酸、マレイン酸、イタコ
ン酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸等の脂肪族多価カル
ボン酸、イミノジ酢酸、およびメタノ−ル可溶性モノア
ルキルリン酸エステル等の酸性リン酸エステル類であ
る。
【0037】またポリエチレンイミンと多塩基カルボン
酸の組み合わせにおいては、カルボン酸が過剰の場合メ
タノ−ル不溶性の生成物を生ずるので、両者を混合する
には、ポリエチレンイミンのメタノ−ル溶液中にカルボ
ン酸のメタノ−ル溶液を攪拌しながら加えることが必要
であり、多塩基カルボン酸の配合量はメタノ−ル不溶性
の生成物が生じない限度量である。両者の重量組成比は
60〜90:40〜10となる。ポリエチレンイミンは
本来水溶性のポリマ−で、このメタノ−ル溶液に多塩基
酸のメタノ−ル溶液を加えた液を基材に塗布し、単に乾
燥したのみでは非水溶性の被膜を形成されず、水を使用
する無電解めっきは不可能である。
【0038】前記塗膜を加熱処理することにより非水溶
性の樹脂組成物被膜が形成され、かつ腐食工程無しで無
電解めっき皮膜を接着する特殊機能を発揮する。この加
熱処理の最適条件は配合される酸成分によって異なる
が、100℃〜120℃で15〜60分である。この無電解めっき
方法を直接適用できる基材は熱硬化性樹脂ではエポキシ
樹脂、フェノ−ル樹脂、熱可塑性樹脂では熱可塑性ポリ
イミド樹脂、ポリエ−テルイミド樹脂、ポリアミド樹脂
等の樹脂類のほかに、木材、木綿、絹等の天然素材にも
適用できる。めっきが困難とされているポリプロピレン
に対してもプライマ−の使用により適用することができ
る。
【0039】(4)の方法は、(A)群の中のウレタン
結合と(B)の造塩性官能基として多価官能基を組み合
わせて有する樹脂組成物被膜を形成する方法である。ジ
イソシアネ−ト化合物は塗料用の硬化剤として一般に使
用されているMDI,TDI等またはこれらと少量のポ
リオ−ルポリマ−と反応させたプレポリマ−である。ポ
リオ−ルポリマ−は塗料用に一般に使用されているポリ
エ−テル系、ポリエステル系、ポリブタジエン系あるい
は接着剤としてそのままでも使用されている水酸基を有
する芳香族ポリエステル等である。この方法におけるジ
イソシアネ−ト化合物とポリオ−ルポリマ−との配合比
は、塗料等でメ−カ−が指定する配合比でよい。一般に
ジイソシアネ−ト化合物の配合量はポリオ−ルポリマー
の水酸基に対し化学当量比で80%前後である。
【0040】(B)の多価官能基を有する化合物として
はポリオ−ルポリマ−が塗料用の脂肪族ポリオ−ル系の
場合はマレイン化ポリブタジエン、マレイン化ロジン、
スチレン・無水マレイン酸共重合体等のマレイン酸変性
ポリマ−で、かつ酸価の高いものがよい。単なる低分子
化合物では相溶性の不良に基因するのか良い結果が得ら
れていない。ポリオ−ルポリマ−が芳香族ポリエステル
系ポリオ−ルの場合は前記と反対に、低分子化合物の芳
香族多塩基酸との組み合わせで良い結果が得られてい
る。(B)成分の(A)成分に対する配合比は、(A)
成分のウレタン結合量に対する化学当量比として5倍以
上、好ましくは10〜20倍である。
【0041】この方法においてウレタン結合を生成する
硬化条件は、一般のウレタン系塗料の硬化条件である80
〜100℃であり、また汎用樹脂にも適用させるためには
この条件内に入るような配合とする。なお、適正硬化条
件以上の過度の硬化はめっき皮膜の剥離強さを低下させ
る。この方法を直接適用できる基材は、ウレタン系塗料
と同じく広範囲であり、まためっきが困難とされている
ポリプロピレンに対してもプライマ−の使用により適用
できる。
【0042】(5)の方法は、(A)群の第2アミン構
造と(B)の造塩性官能基を組み合わせて有する樹脂組
成物被膜を形成する方法である。エポキシ樹脂には硬化
方法が種々有るが、この方法はエポキシ樹脂をアミノ基
含有化合物で硬化する際に、第2アミン構造の生成物が
得られることを利用した方法である。ポリアミノポリマ
ーおよびアミンはエポキシ樹脂の硬化剤に相当するもの
であり、アミノ基含有ポリマ−またはエポキシ系塗料、
接着剤等で通常硬化剤として使用されるアミンの内、第
3アミン以外は使用できる。第3アミンはエポキシ基と
反応しても窒素・水素結合を生成しない。エポキシ基を
含有する化合物およびポリマーはエポキシ樹脂の主剤に
相当するものであるが、相手がアミノ基含有ポリマ−で
ある場合はグリシジルアクリレ−ト、アリルグリシジル
エ−テルのようなモノマ−でもよい。(B)の造塩性官
能基を有する化合物には広範囲の多塩基酸が使用でき
る。すなわち脂肪族あるいは芳香族系の多塩基カルボン
酸、多塩基不飽和脂肪酸をコモノマ−とする共重合体、
スルホン酸類、次亜リン酸エステル等の中で、使用され
るポリマ−と相溶性のあるものが使用できる。
【0043】(6)の方法は、(A)群の中で尿素結合
構造と(B)の造塩性官能基を組み合わせて有する樹脂
組成物被膜を形成する方法である。この方法はイソシア
ネ−ト基とアミノ基との反応により尿素結合を生成する
反応を利用した方法である。この反応は通常極めて激し
く、発熱して瞬間的に反応するので、ポリ尿素樹脂の成
形においては型内に樹脂を注入する際、注入器内で両成
分を高速に混合しながら注入を行っている。しかし本方
法では濃度が5%と低いためか混合後、混合液を支障な
くスプレ−塗布を行うことができる。
【0044】ジイソシアネ−ト化合物には、ウレタン系
塗料あるいは接着剤用の硬化剤として一般に使用されて
いるTDI、MDIまたはこれらと少量のポリオ−ルと
反応させたプレポリマ−等が適用される。ポリアミノポ
リマ−には前記(5)の方法において挙げられているポ
リアミノポリマ−が使用できる。ジイソシアネ−ト化合
物とポリアミノポリマ−の割合は、遊離のイソシアネ−
ト基を残さないように前者に対し後者は過剰当量とす
る。(B)の造塩性官能基を有する化合物は前記方法
(4)の場合と同様ポリアミノポリマ−の化学構造に依
存する。
【0045】(7)の方法は、(A)群のメラミン構造
と(B)の造塩性官能基を組み合わせて有する樹脂組成
物被膜を形成する方法である。この方法はメラミンのア
ミノ基を本発明に利用する方法として考えたものであ
る。メラミンの3個のアミノ基はホルムアルデヒドとの
反応によりメチロ−ル化され、メチロ−ル基は6個まで
導入可能である。メラミン樹脂はこの多価メチロ−ル基
とアルコ−ル性OH基やエポキシ基との反応性を利用し
て、塗料の架橋剤として使用されている。この方法は、
アルキル化メラミン樹脂として塗料架橋剤用のメラミン
樹脂を使用するものであり、ポリオールポリマーはアル
コ−ル性OH基またはエポキシ基を有するポリマ−であ
る。
【0046】メラミンを完全にメチロ−ル化すればアミ
ノ基の水素は全部メチロ−ル基に置換され、窒素・水素
結合は無くなるが、塗料の架橋剤として使用されている
メラミン樹脂は一般に部分置換されたものであり、また
溶剤に対する溶解性、他樹脂との相溶性を改善する目的
で一部のメチロ−ル基は炭素数8以下の低級アルコ−
ル、通常ブチルアルコ−ルでエ−テル化されている。ア
ルキル化メラミン樹脂とはアルキルエ−テル化されたメ
ラミン樹脂をいう。メラミン樹脂の架橋反応は高温を必
要とするが、触媒としてp−トルエンスルホン酸を添加
することにより低温架橋が可能なことが公知であり、本
発明による方法の実施例においては、樹脂組成物に対し
1%添加し、硬化条件は80℃、30分としている。
【0047】以上、本発明の基本的な技術思想と、これ
を具体化するための各種の方法について述べた。さら
に、これら各種の方法についての実施例を方法別に後述
する。
【0048】
【実施例】(A)群の化学構造および(B)の造塩性官
能基を各種の組合せで含有する樹脂組成物の無電解めっ
きにおける効果について、以下各方法別に実施例により
具体的に説明する。これらの実施例における実施要領な
らびに評価方法は次の通りである。
【0049】なお、基材の樹脂の略号はJIS K 68
99-1992(ISO 1043−1:1987)によって規定されて
いる記号により記載した。
【0050】1.実施要領 (1)無電解めっき用樹脂組成物被膜面を有する試料の
作成 厚さ2乃至3mmの熱可塑性樹脂射出成形試験片または熱
硬化性樹脂プレス成形試験片をいずれも25×70mmサ
イズに切断、該切断試験片面に各方法の実施例で調製し
た塗布剤をスプレ−法または浸漬法により塗布した後、
試料片を夫々の条件により乾燥または硬化する。
【0051】(2)無電解めっき方法 前記加熱処理された試料片に次に記載する薬液及び条件
により無電解めっきを行う。 使用薬液: 脱脂剤 エ−スクリ−ン A220(奥野製薬工業(株)製) 触媒液 キャタリスト C (同上) 反応促進液 塩酸 無電解銅めっき液 TSP 810(奥野製薬工業(株)製) 無電解ニッケルめっき液 TMP化学ニッケル(同上) 電解銅めっき液 エレカッパ− II(同上)
【0052】めっき条件 1 脱脂(50℃、5分)−水洗−触媒液浸漬(常温、3
分)−水洗−反応促進剤液浸漬(30℃、2分)−水洗
−温水浴(50℃、浸漬1分)−無電解銅またはニッケ
ルめっき液浸漬(銅:50℃、ニッケル:35℃、各1
0分)−洗浄−乾燥。
【0053】試料片のめっき皮膜上に長手方向に剥離試
験部形成のため、間隔10mm、長さ50mm以上の平行な
2本の切れ目及び前記切れ目の末端にこれと直角な切れ
目を入れる。この切れ目入り試料を次の条件で電解銅め
っきを行い、めっき皮膜の厚さを約40μmとする。
電解銅めっき(25℃、90分、3Amp./dm2)
【0054】めっき条件 2(電磁波シ−ルドめっき条
件) 温水浴浸漬まで、めっき条件1に同じ。以後下記の通
り。 −無電解銅めっき液浸漬(50℃、15分)−洗浄−触
媒液浸漬(室温、5分) −反応促進剤液浸漬(室温、5分)−無電解ニッケルめ
っき液浸漬(50〜55℃、5分)−洗浄−乾燥
【0055】2.無電解めっき皮膜の評価方法 前記条件1及び2により作成した試料について、下記方
法により剥離強さを評価した。
【0056】(1)めっき条件1による試料 JIS(日本工業規格)H 8630「プラスチック上に施
しためっきの密着性試験方法」による。
【0057】(2)めっき条件2による試料 JIS K 6400 8.5「塗料の付着性試験方法:ごば
ん目テ−プ法付着性試験」に準ずる。
【0058】3.実施の具体例 以下の具体例の記述においては、(A)の群の化学構造
を有するポリマーおよび化合物を(A)成分、(B)の
造塩性官能基を有するポリマーおよび化合物を(B)成
分と呼称する。また表においては「窒素・水素結合」を
「N−H結合」と記載する。
【0059】無電解めっき方法(1) 表1に示す内容の濃度5%の塗布剤を下記要領で調製、
実施要領記載の方法で該塗布剤の塗布された試料片を作
成、無電解銅めっきを行った。なお塗布被膜の基材に対
する接着性改良の目的で接着性改良剤を添加した実施例
も示す。接着性改良剤を(C)とした。各実施例で得ら
れた無電解めっき皮膜について密着性試験を行った結果
を表2に、また使用した塗布剤用樹脂および基材の内容
を表3に示す。表1〜3において、「PA」は「ポリア
ミド」、「PU」は「ポリウレタン」、「PPE」は
「ポリフェニレンエーテル」、「PEI」は「ポリエー
テルイミド」、「PC」は「ポリカーボネート」、「A
BS」は「アクリロニトリルーブタジエンースチレン共
重合樹脂」の略号である。なお、表4〜21においても
同様の略号を使用する。
【0060】塗布剤の調製方法 実施例1−1−1−5 (A)成分のメタノ−ル可溶性ナイロンの濃度5%のメ
タノ−ル溶液を予め調製。(B)成分のメタノ−ル可溶
性の各種化合物夫々の濃度5%のメタノ−ル溶液を調製
し、表1に示す重量配合比で両者を混合攪拌して調製。
【0061】実施例1−6−1−8 (A)成分の有機溶剤可溶性ポリウレタンの濃度15%
のジメチルフォルムアミド(DMF)溶液を予め調製。
(B)成分はメチルエチルケトン(MEK)溶液とし、
表1に示す重量配合比となるよう両者を混合攪拌して調
製。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】無電解めっき方法(2) 表4に示す内容の濃度5%の塗布剤を下記要領で調製、
実施要領記載の方法で該塗布剤の塗布された試料片を作
成、無電解銅めっきを行った。各実施例で得られた無電
解めっき皮膜について密着性試験を行った結果を表5
に、また使用した塗布剤用樹脂および基材の内容を表6
に示す。表5〜6において「PBT」は「ポリブチレン
テレフタレート」の略号で以下同様に使用する。
【0066】塗布剤の調製方法 実施例 2−1−2−5 以下(A)成分として2種の化合物乃至ポリマーを用い
るときは、(A1)および(A2)の呼称を使用する。
【0067】窒素・水素結合を有する非水溶性低分子化
合物(A1)、この低分子化合物と相溶性がありかつ陰
性置換基を含まない接着性ポリマー(A2)および造塩
性官能基(B)の3成分を組み合わせる例である。(A
2)成分としてフェノ−ル樹脂のノボラックを使用。溶
剤には(A1)成分を溶解する溶剤(メタノ−ル、メタ
ノ−ルとシクロヘキサノンまたはDMFとの混合溶剤)
を使用して調製。
【0068】実施例 2−6 本実施例も前記3成分の組み合わせ例であるが、(A
2)成分として市販のアクリル塗料用樹脂を使用、溶剤
も同樹脂用シンナ−を使用して調製。
【0069】実施例 2−7 上記(A1)と(B)成分の造塩性官能基を有する接着
性ポリマーとの2成分の組み合わせ例である。(B)に
末端にカルボキシル基と水酸基を有するポリエステル系
接着性ポリマ−を使用。溶剤にはケトン系溶剤を使用し
て調製。
【0070】
【表4】
【0071】
【表5】
【0072】
【表6】
【0073】無電解めっき方法(3) 表7に示す内容の濃度5%の塗布剤を下記要領で調製、
実施要領記載の方法で塗布剤の塗布された試料片を作成
(硬化条件:110℃、30分)、無電解銅めっきを行
った。各実施例で得られた無電解めっき被膜について密
着性試験を行った結果を表8に、また使用した塗布剤用
樹脂および基材の内容を表9に示す。なお塗布剤の
(A)成分と(B)成分との配合比は、最初に好結果の
得られたマロン酸との組み合わせにおける配合比を基準
としてマロン酸と略等化学当量とした。表8以降におい
て、「EP」は「エポキシ樹脂」、「PI−T」は「熱
可塑性ポリイミド」の略号であり、以下同様に使用す
る。
【0074】なお実施例3−7では、基材の1つとして
ポリプロピレンに下記のプライマ−を塗布した試料片を
用いた。この試験片の略記号を*PPとし、以後各方法
の実施例においてもこの略記号を使用する。*PPはバ
ンパ用ポリプロピレンの試料片にプライマ−として、特
願平7-78104の発明のエッチングレス無電解めっき用塗
布剤の一例である塩素含有量22.5%の低塩素化ポリ
プロピレンとマレイン化1,4ポリブタジエンとを組み
合わせた塗布剤をスプレ−塗布して乾燥させたものであ
る。
【0075】塗布剤の調製方法 使用メタノ−ル量の約半量にポリエチレンイミンの所要
量を溶解、残量のメタノ−ル中に多塩基酸を溶解して
(A)、(B)2成分の夫々のメタノ−ル溶液を調製
し、(A)成分の溶液中に激しく攪拌しながら(B)成
分の溶液を注入する。殆どの場合、注入と同時に白色の
析出物を生ずるが直ちに消失する。(B)成分溶液の注
入量が増すに連れてこの消失速度が遅くなるが表7の配
合範囲では析出物が残留することはない。なおこの白色
析出物は水に可溶性である。
【0076】
【表7】
【0077】
【表8】
【0078】
【表9】
【0079】無電解めっき方法(4) 表10に示す内容の塗布剤を下記要領で調製、実施要領
記載の方法で該塗布剤が塗布された試料片を作成(硬化
条件:80℃、30分)、無電解ニッケルめっきを行っ
た。各実施例で得られた無電解めっき被膜について基材
に対する密着性試験を行った結果を表11に、使用した
塗布剤用樹脂および基材の内容を表12に示す。表中
「PS」は「ポリスチレン」の略号で以下同様に使用す
る。
【0080】塗布剤の調製法 実施例4−1−4−4 ウレタン系塗料(1)(実施例4−1−4−3)及び(2)
(実施例4−4)のA液を(A2)、B液を(A1)と
し、夫々を該塗料のシンナ−により8倍に希釈した液
(非揮発性成分約5%)、および該塗料のシンナ−によ
る(B)の酸成分の5%液を調製、塗布時に表10の実
施例4−1−4−4に示す重量配合比で混合し、塗布剤
を調製した。
【0081】実施例4−5−4−10 (A1)にウレタン系塗料のB液、(A2)に両末端に
水酸基または水酸基およびカルボキシル基を有する芳香
族ポリエステル系接着剤を使用、これらと(B)成分の
酸の3者夫々を該塗料のシンナ−に溶解して5%溶液を
調製、塗布時にこの3成分の溶液を表10の実施例4−
5−4−10に示す重量配合比で混合し、塗布剤を調製
した。
【0082】なお、(A2)の配合量が実施例4−1−
4−4に比べて著しく多量なのは、(A2)のポリエス
テル系接着剤のOH価が低いためであり、(A1):
(A2)の適正配合比は予備実験により決定した。且
つ、イソシアネート基と酸基との化学当量比を重視して
行なった実施例である。表示の当量比は(A1)成分中
のイソシアネ−ト基と(B)成分の酸基との化学当量比
の概算値である。
【0083】
【表10】
【0084】
【表11】
【0085】
【表12】
【0086】無電解めっき方法(5) 表13に示す内容の濃度5%の塗布剤を下記要領で調
製、実施要領記載の方法で該塗布剤の塗布された試料片
を作成(硬化条件:実施例5−1および5−2、140
℃、30分:実施例5−3〜5−10、80℃、30
分)、無電解ニッケルめっきを行った。各実施例で得ら
れた無電解めっき被膜について密着性試験を行った結果
を表14に、また使用した塗布剤用樹脂および基材の内
容を表15に示す。
【0087】塗布剤の調製法 実施例 5−1、5−2 アミノ基含有硬化剤(A1)、エポキシ基含有ポリマ−
(A2)および造塩性酸成分(B)夫々の5%溶液を溶
剤に市販エポキシ系塗料用シンナ−を使用して調製、使
用に先立って(A1)と(A2)を表13に示す重量配
合比で混合し、アミンまたはアミノ基とエポキシ基とを
反応させ、未反応のアミンまたはアミノ基が存在しない
状態とする。これらの未反応の塩基が残っていると、
(B)の添加時に酸と反応して不溶物を生成する。本実
施例では室温に48時間放置後(B)を添加した。不溶
物の生成は認められなかった。
【0088】実施例 5−3−5−10 アミノ基を含有するポリマ−溶液をA液、エポキシ基を
含有する化合物溶液をB液とするエポキシ系塗料を使
用、A液を(A1)、B液を(A2)として、夫々を該
塗料のシンナ−により8倍に希釈した液(非揮発性成分
約5%)を調製、また(B)の造塩性酸成分の5%液を
該シンナ−により調製、塗布時に表13に示す重量配合
比で混合し、塗布剤を調製した。(B)成分の配合量は
実施例5−3−3およびこれ以降の実施例では(A)成
分1gに対し約20mg当量とした。
【0089】
【表13】
【0090】
【表14】
【0091】
【表15】
【0092】無電解めっき方法(6) 表16に示す内容の濃度5%の塗布剤を下記要領で調
製、実施要領記載の方法で該塗布剤の塗布された試料片
を作成(硬化条件:80℃、30分)、無電解ニッケル
めっきを行った。各実施例で得られた無電解めっき被膜
について密着性試験を行った結果を表17に、また使用
した塗布剤用樹脂および基材の内容を表18に示す。
【0093】塗布剤の調製法 (A1)のジイソシアネ−ト化合物にウレタン系塗料の
B液を、(A2)にエポキシ系塗料に使用されているポ
リアミノポリマ−を使用、両者夫々のウレタン系塗料シ
ンナ−による8倍希釈(非揮発性成分約5%)溶液を調
製、また(B)の造塩性酸成分としてマレイン化ロジ
ン、マレイン化ポリブタジエンおよびマロン酸を使用、
前記シンナ−による5%溶液を調製。塗布時に前記3成
分溶液を表16に示す重量混合比で混合して塗布剤を調
製した。なお、(B)の配合量は実施例6−1および6
−2においては10mg当量/(A)gr.、実施例6ー3では20
mg当量/(A)gr.である。
【0094】
【表16】
【0095】
【表17】
【0096】
【表18】
【0097】無電解めっき方法(7) 表19に示す内容の濃度5%の塗布剤を下記要領で調
製、実施要領記載の方法で該塗布剤の塗布された試料片
を作成(硬化条件:80℃、30分)、無電解ニッケル
めっきを行った。なお、本実施例では総て架橋反応触媒
としてp-トルエンスルフォン酸を樹脂組成物に対し1%
添加している。各実施例で得られた無電解めっき被膜に
ついて密着性試験を行った結果を表20に、また使用し
た塗布剤用樹脂および基材の内容を表21に示す。な
お、試験結果において試料片がフィルムの場合、碁盤目
試験ができないので、単なるセロハンテープ剥離試験を
実施、全く剥離しない場合を○印により表示した。表2
0および21において、「PI」は「ポリイミド」、
「PEEK」は「ポリエーテル・エーテル・ケトン」の
略号で「ピーク」と一般的に呼ばれている。
【0098】塗布剤の調製方法 表19に記載の各種成分の5%溶液およびp-トルエンス
ルフォン酸の0.5%溶液(C)をエポキシ系塗料のシ
ンナ−により調製、塗布時に3成分と触媒溶液を混合攪
拌して調製した。(A1)のアルキル化メラミン樹脂と
してブチル化メラミン樹脂を使用、(A2)のポリオ−
ルポリマ−としてポリエステル系接着剤を、ポリエポキ
シポリマ−として接着剤用エポキシ樹脂を使用、また
(B)の造塩性酸成分として各種脂肪族および芳香族多
塩基酸およびマレイン化ポリブタジエンを使用した。
【0099】
【表19】
【0100】
【表20】
【0101】
【表21】
【0102】
【発明の効果】本発明は、公害源となるような薬品を使
用する腐蝕工程を必要としない環境的に無害な無電解め
っき方法であって、以下述べるように、あらゆる分野に
おいて適用できる可能性を示すものである。
【0103】すなわち、前記各種の方法と、後述する実
施例には、塗料または接着剤に一般的に使用されている
アクリル系、ウレタン系、エポキシ系およびメラミン系
の樹脂をベースに無電解めっき可能な樹脂組成物被膜を
形成する方法および実施例を多数示したが、これらの実
施例は、それ以外に多くの塗料用あるいは接着剤用樹脂
をベースに無数の無電解めっき可能な樹脂組成物被膜形
成方法が考えられる可能性を示すものである。
【0104】したがって、本発明の無電解めっき方法を
適用する対象となりうる基材は極めて広範であり、また
使用目的に合わせて本発明の化学構造を組み合わせて有
する新規な化合物を合成し、これを使用して目的に適合
する無電解めっき被膜を形成することができる可能性を
も示すものである。
【0105】なお、当面本発明の無電解めっき方法を適
用して顕著に効果のある分野は電磁波遮蔽の分野であ
る。性能面ではめっきが最も優れており、小型通信機の
普及で需要は増大しているが、めっき設備の新設または
増設が腐蝕工程があるため困難である。本発明の方法で
はこの環境面での配慮を必要とせず、また性能、加工費
の面でも他の電磁波遮蔽方法に優るものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 佐藤 一也 大阪府交野市神宮寺1丁目5番地8 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 18/00 - 18/54

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(A)の群より選ばれた少なくとも
    1種の窒素・水素結合を有する化学構造と、(B)とを
    組み合わせて有する樹脂組成物であることを特徴とする
    無電解めっき用樹脂組成物。 (A)アミノ基、イミノ結合、アミド結合、ウレタン結
    合、尿素結合、第二アミンおよびメラミン構造。 (B)造塩性官能基
  2. 【請求項2】 下記(A)の群より選ばれた少なくとも
    1種の窒素・水素結合を有する化学構造と、(B)とを
    組み合わせて有する樹脂組成物被膜を、該被膜と接着性
    を有する基材の被めっき面に形成した後、弱アルカリ性
    脱脂洗浄を行い、次いで触媒付与工程および触媒活性化
    工程を含む無電解めっきを行うことを特徴とする無電解
    めっき方法。 (A)アミノ基、イミノ結合、アミド結合、ウレタン結
    合、尿素結合、第二アミンおよびメラミン構造。 (B)造塩性官能基
  3. 【請求項3】 樹脂組成物被膜が、非水溶性で有機溶剤
    可溶性の窒素・水素結合を有するポリマ−および該ポリ
    マ−と相溶性のある造塩性官能基を有する化合物の2成
    分を含有する樹脂組成物の塗布剤を基材の被めっき面に
    塗布、乾燥させて形成された被膜である請求項2記載の
    無電解めっき方法。
  4. 【請求項4】 樹脂組成物被膜が、非水溶性で、有機溶
    剤可溶性の窒素・水素結合を有する低分子化合物、該低
    分子化合物と相溶性のある陰性置換基を含まない接着性
    ポリマ−および造塩性官能基を有する化合物の3成分、
    または前記低分子化合物と造塩性官能基を有する接着性
    ポリマ−の2成分を含有する樹脂組成物の塗布剤を、基
    材の被めっき面に塗布、乾燥させて形成された被膜であ
    る請求項2記載の無電解めっき方法。
  5. 【請求項5】 樹脂組成物被膜が、数平均分子量10,
    000以上のポリエチレンイミンおよびメタノ−ルまた
    は水可溶性の多塩基酸の2成分を含有する樹脂組成物の
    塗布剤を、基材の被めっき面に塗布し、加熱処理により
    形成された水不溶解性の、イミノ結合を主結合とする被
    膜である特許請求の範囲第2項記載の無電解めっき方
    法。
  6. 【請求項6】 樹脂組成物被膜が、ジイソシアネ−ト化
    合物、ポリオ−ルポリマ−および該ポリオ−ルポリマ−
    と相溶性があり、かつ造塩性官能基を有する化合物の3
    成分を含有する樹脂組成物の塗布剤を、基材の被めっき
    面に塗布、硬化させて形成された、ウレタン結合と造塩
    性官能基とを組み合わせて有する被膜である請求項2記
    載の無電解めっき方法。
  7. 【請求項7】 樹脂組成物被膜が、有機溶剤可溶性のポ
    リアミノポリマ−またはアミン、エポキシ基含有化合物
    またはエポキシ基含有ポリマ−および使用される前記い
    ずれかのポリマ−と相溶性があり、かつ造塩性官能基を
    有する化合物の3成分を含有する樹脂組成物の塗布剤
    を、基材の被めっき面に塗布、硬化させて形成された、
    第二アミン構造と造塩性官能基とを組み合わせて有する
    被膜である請求項2記載の無電解めっき方法。
  8. 【請求項8】 樹脂組成物被膜が、ジイソシアネ−ト化
    合物、有機溶剤可溶性ポリアミノポリマ−および前記ポ
    リアミノポリマ−と相溶性があり、かつ造塩性官能基を
    有する化合物の3成分を含有する樹脂組成物の塗布剤
    を、基材の被めっき面に塗布、硬化させて形成された、
    尿素結合と造塩性官能基とを組み合わせて有する被膜で
    ある請求項2記載の無電解めっき方法。
  9. 【請求項9】 樹脂組成物被膜が、アルキル化メラミン
    樹脂、ポリオ−ルポリマ−および該ポリオールポリマ−
    と相溶性があり、かつ造塩性官能基を有する化合物の3
    成分を含有する樹脂組成物の塗布剤を基材の被めっき面
    に塗布、硬化させて形成された、メラミン構造と造塩性
    官能基とを組み合わせて有する被膜である特許請求の範
    囲第2項記載の無電解めっき方法。
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