JP3251858B2 - 酸性飲食品、酸性飲食品用酸性クリームおよび粉末 - Google Patents

酸性飲食品、酸性飲食品用酸性クリームおよび粉末

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JP3251858B2 JP17529196A JP17529196A JP3251858B2 JP 3251858 B2 JP3251858 B2 JP 3251858B2 JP 17529196 A JP17529196 A JP 17529196A JP 17529196 A JP17529196 A JP 17529196A JP 3251858 B2 JP3251858 B2 JP 3251858B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、酸性食品、酸性飲
食品用酸性クリームおよび粉末に関する。
【0002】
【従来の技術】酸性飲食品は、含まれている有機酸によ
って様々な風味を呈することができ、飲料、デザート、
ソースなどとして広く飲食されている。他方、ホイップ
クリームやコーヒーホワイトナーのようなクリームは、
油脂、水、乳化剤や乳タンパクなどにより構成された水
中油型エマルションであり、広く一般的に使用されてい
る。
【0003】酸性飲食品の材料としてクリームを使用す
れば、油脂や乳タンパクの風味と有機酸の風味が組み合
わさって新しい風味を作ることができる。しかし、従来
のクリームを材料として使用して酸性飲食品を作ろうと
しても、均一な組織を持つ良好な酸性飲食品は得られな
い。クリーム中の乳化剤が油滴表面で水和して膜を作る
ことにより乳化を安定化している。しかし、酸性条件下
では、乳化剤の乳化能力、特に水和力が低下するため、
乳化破壊が起こり、油脂が分離する。しかも、この乳化
破壊は、酸性飲食品を作る過程で殺菌を行うときなど過
酷な加熱条件下で一層増大する。
【0004】また、酸性飲食品は、増粘、ゲル化などの
目的で使用される高分子コロイドを含むことがある。酸
性条件下では、この高分子コロイドのほとんどが負の電
荷を持っており、クリーム中に含まれる乳タンパク、特
にカゼインが正に帯電しているため、正の電荷のカゼイ
ンと負の電荷の高分子コロイドとが反応する。この反応
により正負の電荷が相殺されて電荷を帯びなくなるの
で、カゼインと高分子コロイドの凝集、沈殿を生じ乳化
破壊が増大し不均一な組織となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の課題は、酸性
条件下でのクリームの乳化安定性を向上させて油脂の分
離を防ぎ、クリームを材料として用いた酸性飲食品が均
一な組織を持つようにすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の酸性飲食品は、
クリームを材料として使用した酸性飲食品であって、前
記クリームが、水中油型のものであって、タンパクとペ
クチンを含むとともに前記タンパクの等電点よりも1.
1以下の範囲で低いpHを示し、この酸性条件下で前記
タンパクとペクチンが発揮する乳化力によって前記クリ
ーム中での油脂の乳化がなされている。
【0007】前記酸性飲食品において、前記ペクチン
が、エステル化度60%以上のハイメトキシルペクチン
である。 前記酸性飲食品において、前記ペクチンが、カ
ルシウム反応性(以下、「CS値」と言う。)50以上
のブロックワイズ型のものである。
【0008】前記酸性飲食品において、酸性条件下で負
の電荷を帯びる高分子コロイドをも含むことができる。
本発明の酸性飲食品用酸性クリームは、水中油型のクリ
ームであって、タンパクとペクチンを含むとともに前記
タンパクの等電点よりも1.1以下の範囲で低いpHを
示し、この酸性条件下で前記タンパクとペクチンが発揮
する乳化力によって油脂の乳化がなされている。
【0009】前記酸性クリームにおいて、前記ペクチン
が、エステル化度60%以上のハイメトキシルペクチン
である。 前記酸性クリームにおいて、前記ペクチンが、
CS値50以上のブロックワイズ型のものである。
【0010】上記酸性クリームを乾燥してなる酸性飲食
品用粉末がある。
【0011】
【作用】タンパクの等電点よりも1.1以下の範囲で低
いpHを示す酸性条件下では、タンパクのアミノ基が正
の電荷を帯びるとともにペクチンのカルボキシル基が負
の電荷を帯びるため、そのアミノ基とカルボキシル基と
が結びつくことによりタンパクとペクチンが複合体を形
成していると考えられる。ペクチンは、カルボキシル基
の比較的多いブロックと比較的少ないブロックとを備え
たブロックワイズ型である場合には、カルボキシル基の
比較的多いブロックでタンパクとより強固に結びつき、
より安定な複合体を形成することができる。
【0012】ペクチンの有する負の電荷はタンパクの有
する正の電荷よりも大過剰であるので、その複合体で
は、タンパク部分で正負の電荷が相殺され、ペクチン部
分の負の電荷が残る。電荷が相殺されたタンパク部分が
疎水性基として、負の電荷を持つペクチン部分が親水性
基として働くので、複合体は、乳化剤のごとく、油脂を
水中に安定に乳化することができる。しかも、ペクチン
部分の負の電荷により複合体同士が電気的に反発するの
で複合体同士の凝集が防がれる。また、酸性飲食品が、
酸性条件下で負の電荷を持つ高分子コロイド(以下で
は、「負のコロイド」と言う。)を含んでいる場合に
は、その複合体は、負の電荷を帯びているため、負のコ
ロイドと電気的に反発し、複合体と負のコロイドの凝
集、沈殿を生じるも防がれる。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の酸性飲食品としては、上
記酸性クリームを材料として使用したものであって酸性
を示す飲料または食品であれば特に限定はなく、たとえ
ば、ムース、ゼリー、ババロア、プリン、ヨーグルト、
ドレッシング、マヨネーズ、クリームソース、カスター
ドクリーム、シュークリーム、アイスクリーム、ソフト
クリーム、スプレッド、ミルクセーキなどが例示され
る。これらの飲食品を公知の方法で作るときに、材料の
1つとして上記酸性クリームを加えることにより、本発
明の酸性飲食品が得られる。酸性飲食品に用いる上記酸
性クリーム以外の材料は従来のものと同じであることが
できる。また、酸性飲食品の状態としては、クリーム
状、液状、ゲル状、ペースト状などが可能である。さら
に、これらの状態のものが固体状物で覆われたりあるい
は固体状物を含有していてもよい。ここで固体状物と
は、たとえば、シュー皮(またはシュー生地)、スポン
ジ、ゼリー、プリンなどのプディング、ムース、果肉、
果皮などである。
【0014】本発明では、酸性クリームは、ペクチンと
タンパクを含む水相とこの水相中に乳化された油相(油
脂相)とを酸性条件のもと任意の方法により乳化を行わ
せ、水中油型エマルションの形で安定な状態を維持する
ようにしておく。酸性条件としては、タンパクの等電点
よりも1.1以下の範囲で低いpHであればよい。タン
パクとペクチンが乳化力をより良く発揮するという点か
らは、タンパクの等電点よりも0.1〜1.1の範囲で
低いpHが好ましい。たとえば、タンパクが等電点4.
6のものである場合、酸性条件はpH3.5以上、4.
6未満であり、pH3.5〜4.5の範囲が好ましい。
タンパクの等電点よりも高いpH値だと、タンパクの負
の電荷が強いため、ペクチンとの親和性がなくなる。ま
た、上記範囲よりも低いpH値の場合、タンパクの正の
電荷が強すぎ親水性が強くなるため油脂との親和性がな
くなる。
【0015】酸性クリームの油相と水相の割合は、乳化
された状態が安定に維持されるように設定すればよく、
特に限定するものではない。通常、油相の割合は、酸性
クリーム全体に対して、たとえば10〜60重量%、好
ましくは20〜50重量%程度である。油相の油脂とし
ては、通常の飲食品用油脂材料が使用できる。たとえ
ば、大豆油、パーム油、ヤシ油、乳脂、その他の各種動
植物油あるいはこれらの硬化油、さらにはこれらの混合
油が例示できる。
【0016】水相を構成する材料には、乳化安定のため
のペクチンおよびタンパクと、酸性にするための各種酸
味料を使うことを必須条件とし、必要に応じて、甘味料
などの調味料、香料、着色料などの食品素材を使用する
ことができる。ペクチンとしては、酸性条件においてカ
ゼインなどのタンパクを安定化しうるハイメトキシルペ
クチン(以下、「HMペクチン」と言う。)を使用す
る。特に、HMペクチンのエステル化度は、乳化安定性
が比較的高いという点からは、60%以上が好ましく、
65〜75%がより好ましい。天然物から抽出されたペ
クチンは、通常、抽出工程での脱エステル化によりエス
テル化度75%以下である。ペクチンとしては、カルボ
キシル基がランダムに比較的均一に存在するランダムワ
イズ型と、カルボキシル基が比較的多いブロックと比較
的少ないブロックとが共存するブロックワイズ型とがあ
り、タンパクと反応してより乳化安定性の良い乳化剤を
生成しうるという点からはブロックワイズ型が好まし
い。ブロックワイズ型ペクチンは、CS値が好ましく5
0以上、より好ましくは100以上のものである。CS
値の上限は特に限定はなく、測定不可能なぐらいにカル
シウムとの反応性が強くてもよい。ここで、CS値は、
Caイオンを含んだHMペクチン水溶液を調製して粘度
を測定し、この測定した粘度(単位:mPa・s)で表
す。この粘度の測定方法は次のとおりである。純水(イ
オン交換水または蒸留水)にHMペクチンを溶解し、1
M−塩酸を添加してpH1.5に合わせ、最終ペクチン
濃度を0.8重量%に調整する。このpH1.5のペク
チン水溶液145gを粘度測定グラスに計り取り、25
0mM−塩化カルシウム水溶液5mlを添加する。この混
合物をマグネチックスターラーで攪拌しながら1M−酢
酸バッファー(pH4.75)25mlを添加して溶液の
pHを4.2に合わせる。マグネチックスターラーの回
転子を取り出し、グラスを25℃の恒温水槽で24時間
静置したのち、B型粘度計で粘度測定を行う。
【0017】酸性クリームへのペクチンの使用量は、油
相と水相の割合などの条件や水相中に含まれるタンパク
の種類または量などによって異なるが、乳化安定性がよ
り高くしかも流動性もより良いという点からは、0.3
〜1.5重量%の範囲であることが好ましい。0.3重
量%よりも少なくなると、乳化状態が不安定になり、
1.5重量%より多くなると、酸性クリームの液の粘性
に与える影響が大きくなることがある。
【0018】タンパクとしては、たとえば、乳由来の脱
脂粉乳、カゼイン、カゼインナトリウム、ラクトアルブ
ミンやそれらの分解物、大豆タンパク、ゼラチン、卵
白、その他動植物由来のタンパクなどが挙げられる。タ
ンパクの量は、タンパクの種類に応じて乳化安定となる
範囲で適宜使用すればよい。なお、タンパクの量は、ペ
クチンに対する割合で設定するのが好ましく、たとえ
ば、ペクチン100重量部に対して60〜1,000重
量部の範囲が好ましい。
【0019】酸味料としては、たとえば、クエン酸、乳
酸、酢酸、リンゴ酸、酒石酸、フマル酸、コハク酸、フ
ィチン酸などの各種有機酸や、リン酸などの無機酸が挙
げられるが、これらに限定されるものではなく、飲食品
に供されるものであればよい。酸味料の量は、酸性クリ
ームのpHや酸味の調整を考慮して適宜設定することが
でき、特に限定はない。
【0020】酸性クリームは、水相と油相を混合してエ
マルション化させる方法により作ることができる。この
エマルション化方法としては、各種飲食品製造に適用さ
れる通常の乳化工程において、酸による酸性化以外はな
んら異なることはない。具体的には、上記材料を適宜に
配合して水相および油相を調製し、これらの水相および
油相を60〜80℃に加温してから油相を水相に徐々に
添加してホモミキサーなどの乳化機により予備乳化を行
う。つぎに、酸味料を加えpHを調整した後、所定量に
調整後、ホモジナイザーなどの乳化機により本乳化を行
う。
【0021】上記のように乳化を行うことにより酸性ク
リームが得られる。この酸性クリームを酸性飲食品、た
とえばムースなどに供すればよく、外観の良い安定な製
品が得られる。この酸性クリームを、高分子コロイドを
多く含む酸性飲食品に添加した場合、酸性条件下で酸性
飲食品中の高分子コロイドのほとんどが負の電荷を帯び
ているので、ペクチンとタンパクとが安定的に複合体を
成し、この複合体が負に帯電しているので、酸性飲食品
中の負に帯電している高分子コロイドと電気的に反発し
て、このコロイドとの凝集が起こらないと考えられる。
【0022】高分子コロイドは、増粘、ゲル化などの目
的で使用され、たとえば、カラギーナン、ローメトキシ
ルペクチン(LMペクチン)、ジェランガム、寒天、ア
ルギン酸、キサンタンガム、アラビアガムなどが挙げら
れる。高分子コロイドの量は、コロイドの種類、量、使
用目的などによって大きく変わるものであり特に限定は
ない。
【0023】本発明の酸性飲食品用粉末は、本発明の酸
性クリームを乾燥してなるものである。乾燥方法として
は、スプレードライ、フリーズドライなどの従来のクリ
ームを粉末化する方法が使用可能である。本発明の粉末
は、水、果汁、牛乳などに加えて溶解させることによ
り、本発明の酸性クリームとなる。
【0024】
【実施例】以下に、本発明の具体的な実施例および比較
例を示すが、本発明は下記実施例に限定されない。 (実施例1および比較例1〜3)実施例1では次のよう
にして酸性クリームを得た。カゼイン分解物1重量%お
よびHMペクチン0.5重量%を添加した水約800g
を75℃に加温して、75℃に加温しておいた精製ヤシ
油200gと混合した。この混合物を、ホモミキサーを
用い、8,000rpmで3分間攪拌し、予備乳化を行
った。予備乳化の後、90重量%乳酸水溶液を加え、p
Hを4.0に調整し、全量が1,000gとなるように
水を添加することにより調整して、高圧ホモジナイザー
を用い、圧力200kg/cm2 で最終乳化処理を行い、酸
性水中油型エマルションのクリームを得た。
【0025】比較例1では次のようにしてクリームを得
た。実施例1において、精製ヤシ油200gと、カゼイ
ン分解物1重量%およびショ糖脂肪酸エステル0.5重
量%を添加した水800gとを用いて、酸性化しない以
外は、実施例1と同様の工程を行った。この比較例で
は、中性水中油型エマルションのクリームを得た。比較
例2では次のようにしてクリームを得た。実施例1にお
いて、精製ヤシ油200gと、カゼイン分解物1重量%
およびショ糖脂肪酸エステル0.5重量%を添加した水
約800gとを用い、90重量%乳酸水溶液を加えpH
を4.0に調整した以外は、実施例1と同様の工程を行
った。この比較例では、酸性水中油型エマルションが得
られず、カゼイン分解物が凝集したため水相と油相が分
離した状態となった。
【0026】比較例3では次のようにしてクリームを得
た。実施例1において、精製ヤシ油200gと、カゼイ
ン分解物1重量%およびHMペクチン0.5重量%を添
加した水800gとを用いて、酸性化しない以外は、実
施例1と同様の工程を行った。この比較例では、中性水
中油型エマルションのクリームを得た。タンパクとして
使用したカゼイン分解物の等電点はpH4.6であっ
た。また、HMペクチンは、エステル化度72%、CS
値728のものであった。
【0027】実施例1と比較例1〜3のクリームを利用
して、負のコロイドとして典型的なカラギーナンを含む
ゲル化剤を用いて酸性ムースを製造した場合の効果を例
に挙げて説明する。 <配合> 異性化糖液糖 200.0g(20 重量%) 砂糖 40.0g( 4 重量%) FGF−2049 12.0g(1.2重量%) <カラギーナン系ゲル化剤:新田ゼラチン株式会社製品> クエン酸ナトリウム 1.0g(0.1重量%) クエン酸(結晶) 1.2g(0.12重量%) 各種クリーム 50.0g( 5 重量%) 香料 1.0ml(0.1重量%) 水 残 量 合計 1,000g(100重量%) <製造工程>異性化糖液糖とFGF−2049を混合
し、水の中へ攪拌させながら分散した。続いて、クエン
酸ナトリウムと砂糖を加え、湯煎や蒸気釜などの加温器
を用い加熱攪拌しながら(80℃、10分間)溶解を行
った。溶解したところに50重量%クエン酸水溶液、ク
リーム、香料の順に加え、溶解した液がpH4.0とな
るようにクエン酸水溶液で調整し、全量1,000g
(100重量%)となるように重量補正し、容器への充
填を行った。この充填物に対して殺菌機などにより90
℃で30分間加熱殺菌を行った後、冷却して製品を得
た。この製品は、ムース状であった。製品の外観を目視
により観察し、均一に白濁している場合を外観良好と
し、白濁層中に透明層が含まれている場合を外観不良と
した。結果を表1に示した。
【0028】
【表1】
【0029】従来クリームのコンセプトである乳タンパ
クと乳化剤とを含む比較例1のクリームは、乳化状態は
よいものの、酸性食品に使用すると負のコロイドである
カラギーナンと反応しタンパクの凝集が起こり(カラギ
ーナンなどの負のコロイドを含んでいない場合には、比
較例1のクリームを酸性食品に使用すると、乳化物事態
が分離傾向にあることから、油が分離し上層に浮いてし
まった。)、外観の悪いものができ、従来のクリームを
酸性化した比較例2のクリームは乳化困難のため、分離
した。さらに、乳化剤を使用せずペクチンを用いても酸
性化しない比較例3のクリームは、乳化状態が数日後に
破壊されて分離し、酸性食品に添加するとタンパクが凝
集し外観の不良なものが得られた。
【0030】しかし、本発明のコンセプトで従来の乳化
剤を使用せずペクチンを用い酸性化した実施例1のクリ
ームは、乳化状態も良く、酸性食品に用いてもタンパク
の凝集もなく、外観の良好なものが得られた。しかも、
この酸性食品は負のコロイドをも含んでいたが、外観の
良好なものであった。 (実施例2〜4および比較例4、5)実施例1におい
て、pHを表2に示す値に調整した以外は、実施例1と
同様の工程を行った。pHの調整は、乳酸の添加量を調
整することにより行った。この実施例および比較例で
は、酸性水中油型エマルションのクリームを得、これら
のクリームを酸性ムースに使用した。
【0031】
【表2】
【0032】表2に示す結果から、タンパクの等電点
4.6よりも大きいpH5.0のクリームは数日後には
乳化がやや壊れ、分離した状態となり、酸性ムースに供
するとタンパクの凝集が起こり外観の悪いものであっ
た。また、タンパクの等電点よりも1.6低いpH3.
0のクリームは乳化状態も酸性ムースに供した場合も、
良好なものが得られなかった。
【0033】しかし、pHがタンパクの等電点よりも
1.1以下の範囲で低い、実施例のクリームは、乳化状
態も、負のコロイドを含む酸性ムースに供した場合で
も、良好な結果が得られた。 (実施例5、6および比較例6〜8)実施例1におい
て、エステル化度の異なるペクチン(表3に示す)を使
用した以外は、実施例1と同様の工程を行った。この実
施例および比較例では、酸性水中油型エマルションのク
リームを得、これらのクリームを酸性ムースに使用し
た。HMペクチンの、CS値は次とおりであった。
【0034】HMペクチン(エステル化度):CS値 HMペクチン (60%):137 HMペクチン1(72%):728 HMペクチン (55%): 10 HMペクチン2(72%): 39
【0035】
【表3】
【0036】表3に示す結果から、ローメトキシルペク
チン(比較例6で使用)、エステル化度が60%未満の
HMペクチン(比較例7で使用)もしくはCS値50未
満のHMペクチン(比較例8で使用)を用いたクリーム
は、乳化が壊れ、分離した状態となり、酸性ムースに供
するとタンパクの凝集が起こり外観の悪いものであっ
た。
【0037】しかし、エステル化度60%以上かつCS
値が50以上のHMペクチンを用いたクリーム(実施例
5,6)は、乳化状態も、負のコロイドを含む酸性ムー
スに供した場合も、良好な結果が得られた。これらの結
果から、高エステル化度でカルシウム反応性の高いペク
チンが酸性クリームの素材として好適であることがわか
る。
【0038】(実施例7〜10および比較例9〜11)
実施例1において、HMペクチンの添加量を表4に示す
ように調整した以外は、実施例1と同様の工程を行っ
た。この実施例および比較例では、酸性水中油型エマル
ションのクリームを得、これらのクリームを酸性ムース
に使用した。
【0039】
【表4】
【0040】表4に示す結果から、HMペクチンの添加
量が0重量%のとき乳化できないことから、本発明の酸
性クリームではペクチンが必須成分であることがうかが
える。また、HMペクチンの添加量が0.3重量%未満
のものは乳化が壊れ、分離した状態となり、酸性ムース
に供するとタンパクの凝集が起こり外観の悪いものであ
った。HMペクチンの添加量が1.8重量%以上のもの
は、負のコロイドを含む酸性ムースに供した場合、良好
なものが得られるが、乳化物の粘性がかなりあり製品と
して扱いにくいものであった。
【0041】しかし、HMペクチンの添加量が0.3〜
1.5重量%の範囲にあるものは、乳化状態も、負のコ
ロイドを含む酸性ムースに供した場合も、良好な結果が
得られた。 (実施例11〜15)実施例1において、タンパクとし
て表5に示すものを使用した以外は、実施例1と同様の
工程を行った。この実施例では、酸性水中油型エマルシ
ョンのクリームを得、これらのクリームを酸性ムースに
使用した。使用した各タンパクの等電点は次のとおりで
あった。
【0042】 タンパク : 等電点 カゼイン分解物 :pH4.6 ラクトアルブミン:pH4.8 ゼラチン :pH5.0 大豆タンパク :pH4.5 カゼイン :pH4.6
【0043】
【表5】
【0044】表5に示す結果から、タンパクとして乳由
来のタンパクやその分解物はもちろんのこと、動物由来
のゼラチンや植物由来の大豆タンパクを用いても、乳化
状態も、負のコロイドを含む酸性ムースに供した場合
も、良好な結果が得られた。 (実施例16〜18および比較例12、13)実施例1
において、タンパクの添加量を表6に示すように調整し
た以外は、実施例1と同様の工程を行った。この実施例
および比較例では、酸性水中油型エマルションのクリー
ムを得、これらのクリームを酸性ムースに使用した。
【0045】
【表6】
【0046】表6に示す結果から、タンパクの添加量が
0重量%のとき乳化できないことから、本発明の酸性ク
リームではタンパクが必須成分であることがうかがえ
る。また、タンパクの添加量が2重量%を超えると、や
や乳化が不安定であり、負のコロイドを含む酸性ムース
に供した場合も、やや凝集を起こしている。乳化が不安
定で流動性がないのは、酸性クリームのタンパクが凝集
を起こす限界付近と考えられるので、ペクチンの添加量
を増やすことにより安定性付与することができる。
【0047】タンパクの添加量が0.3重量%以上2.
0重量%未満の範囲にあるものは、乳化状態も、負のコ
ロイドを含む酸性ムースに供した場合も、良好な結果が
得られた。 (実施例19)実施例1において、酸性クリームの配合
を下記のごとく変えた以外は、実施例1と同様の工程を
行って酸性クリームを得た。
【0048】 <酸性クリームの配合> 精製ヤシ油 10.000重量% カゼイン分解物 1.000重量% HMペクチン 0.500重量% 90重量%乳酸水溶液 残 量 合計 100.000kg 得られた酸性クリームと50重量%に調整したデキスト
リン水溶液とを100:76の重量比で混合し、酸性ク
リーム・デキストリン混合溶液を得た。この混合溶液
を、大川原化工機(株)製L8型スプレードライヤー
(噴霧方法が円盤回転式である。)を用いて粉末化し
た。スプレードライヤー条件を、噴霧入り口温度180
℃、円盤回転数20,000rpmに調整した後、60
℃の酸性クリーム・デキストリン混合溶液を定量ポンプ
により一定量(17.0ml/min )で供給して酸性食品
用粉末(以下、「粉末クリーム」と言う。)を得た。こ
の粉末クリームの成分割合は以下のとおりである。
【0049】 成 分 割 合(重量%) 精製ヤシ油 20 カゼイン分解物 2 HMペクチン 1 乳酸 0.2 デキストリン 76.8 得られた酸性クリームを用いて実施例1と同様にして酸
性ムースを作った。また、液状の酸性クリームを用いた
場合の最終油含量と同じになるように、得られた粉末ク
リームを2.5%添加して実施例1と同様にして酸性ム
ースを作った。酸性クリームの乳化状態は分離なし
(○)であり、酸性クリームおよび粉末クリームをそれ
ぞれ酸性ムースに使用したときの外観はいずれも良好で
あった。この酸性ムースは、負のコロイドとして典型的
なカラギーナンを含むゲル化剤を用いたものであるが、
乳化が壊れず、しかも、タンパクの凝集もみられなかっ
た。このことから、粉末クリームは、粉末化しない酸性
クリーム同様の効果が認められた。
【0050】
【発明の効果】本発明によれば、酸性条件下でのクリー
ムの乳化安定性を向上させて油脂の分離を防ぎ、クリー
ムを材料として用いた酸性飲食品が均一な組織を持つこ
とができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI A23L 1/05 A23L 1/19 1/19 1/04 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23C 9/13 A23C 9/152 - 9/158 A23C 13/12 - 13/16 A23L 1/19

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 クリームを材料として使用した酸性飲食
    品であって、前記クリームが、水中油型のものであっ
    て、タンパクとペクチンを含むとともに前記タンパクの
    等電点よりも1.1以下の範囲で低いpHを示し、この
    酸性条件下で前記タンパクとペクチンが発揮する乳化力
    によって前記クリーム中での油脂の乳化がなされている
    ものであり、前記ペクチンが、エステル化度60%以上
    でカルシウム反応性50以上のブロックワイズ型のハイ
    メトキシルペクチンであることを特徴とする酸性飲食
    品。
  2. 【請求項2】 酸性条件下で負の電荷を帯びる高分子コ
    ロイドをも含む、請求項1に記載の酸性飲食品。
  3. 【請求項3】 水中油型のクリームであって、タンパク
    とペクチンを含むとともに前記タンパクの等電点よりも
    1.1以下の範囲で低いpHを示し、この酸性条件下で
    前記タンパクとペクチンが発揮する乳化力によって油脂
    の乳化がなされているものであり、前記ペクチンが、エ
    ステル化度60%以上でカルシウム反応性50以上のブ
    ロックワイズ型のハイメトキシルペクチンである、酸性
    飲食品用酸性クリーム。
  4. 【請求項4】 請求項に記載の酸性クリームを乾燥し
    てなる酸性飲食品用粉末。
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