JP3941772B2 - 根菜類由来ペクチンを含む安定剤、並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法 - Google Patents

根菜類由来ペクチンを含む安定剤、並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法 Download PDF

Info

Publication number
JP3941772B2
JP3941772B2 JP2003380148A JP2003380148A JP3941772B2 JP 3941772 B2 JP3941772 B2 JP 3941772B2 JP 2003380148 A JP2003380148 A JP 2003380148A JP 2003380148 A JP2003380148 A JP 2003380148A JP 3941772 B2 JP3941772 B2 JP 3941772B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
pectin
acidic
milk
acidic protein
protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2003380148A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2004041239A (ja
Inventor
太郎 高橋
均 古田
順子 戸邉
良介 木綿
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Fuji Oil Co Ltd
Original Assignee
Fuji Oil Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Fuji Oil Co Ltd filed Critical Fuji Oil Co Ltd
Priority to JP2003380148A priority Critical patent/JP3941772B2/ja
Publication of JP2004041239A publication Critical patent/JP2004041239A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3941772B2 publication Critical patent/JP3941772B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Landscapes

  • Dairy Products (AREA)
  • Tea And Coffee (AREA)
  • General Preparation And Processing Of Foods (AREA)
  • Jellies, Jams, And Syrups (AREA)
  • Non-Alcoholic Beverages (AREA)

Description

本発明は根菜類由来ペクチンを含む安定剤、並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法に関し、詳しくは牛乳、豆乳等の蛋白飲料に柑橘類果汁又はその他の果汁、有機酸もしくは無機酸を添加してなる酸性蛋白飲料、酸性乳飲料、酸性冷菓、酸性デザート、及び乳入りコーヒー飲料、乳酸菌飲料、醗酵乳、液状ヨーグルトなどの酸性蛋白食品及びそれらの製造法に関する。
根菜類、特に、イモ類にはデンプン質と共にペクチン質が含まれることが古くより知られており(非特許文献1)、ペクチンの製造原料としての検討が種々なされてきた(非特許文献2〜5、特許文献1〜2)。また、用途に関しても古くより研究が行われており、主にゲル化剤としての使用の検討がなされている(非特許文献6〜7、特許文献2)。
上記の如く、イモ類からのペクチンの製造は古くより研究課題として検討されていた。しかし、主な用途として検討されたジャム等のゲル化剤としての機能では、リンゴあるいは柑橘類などの果実類由来のペクチンに優るものではなく、現実的な使用にまで至っていない。さらに、用途、製造法に関しても果実類由来のペクチンに準じて検討されており、根菜類、特に、イモ類から得られるペクチンの特徴的な機能ならびに詳細な製造条件の設定に関する検討は、殆どなされていないというのが現状であった。
また、従来より酸性蛋白食品の製造に際しては、蛋白粒子の凝集、沈殿等を防止する目的でリンゴ、柑橘類由来のペクチン、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステルなどが使用されている。しかし、何れの安定剤を使用した場合においても、蛋白の分散を良好に安定化できるのは蛋白の等電点以下のpH 域に限られており、等電点を超える酸性pH 域において酸性蛋白食品を安定化できる安定剤は存在しないという問題があった。
一方、中性からpH 5.2 までの微酸性pH域においては有機酸塩を加えることにより蛋白成分を安定化できるという提案が報告されているが(特許文献3)、この提案においても安定化された蛋白液の乳濁性が消失する、加えた有機酸塩の影響により良好な酸味が得られなかったりする等の問題点があった。
さらに、いわゆる飲むヨーグルトや乳酸菌飲料、フルーツ牛乳等の酸性の乳飲料中の乳蛋白は、非常に不安定であり乳蛋白が凝集し、さらに時間が経過すると乳蛋白の沈殿が生じ乳漿が分離する。また、殺菌加熱時にはこの凝集が著しくなり、全く商品価値を失ってしまう。
また、例えば、従来より常温流通可能な乳成分入りコーヒーはコーヒー抽出液、コーヒーエキス、乳成分、糖類、乳化剤などの原料を混合溶解してコーヒー調合品を調製し、これを均質機にかけて、保存容器に充填される前、又は充填された後の何れかに殺菌のため110 〜135 ℃の加熱工程を経て製造されているが、上記の加熱工程においては高温のためコーヒー成分の分解反応が生じ、コーヒー液のpH 低下が生じる。このため、pH が低下して溶液がpH 6.0 以下の酸性になるとコーヒー液に含まれる乳成分中の乳蛋白が変性して、分離凝集等を起こして商品価値がなくなる。そこで、上記乳蛋白の変性を防止するため、コーヒー液に予め炭酸水素ナトリウム等のアルカリ性物質を添加して、加熱工程の前に、コーヒー液のpH が6.5 を越えるようにpH 調整を行うことが行われているが、かかる方法で製造された乳成分入りコーヒーはpH が6.5 を越えた状態で加熱殺菌されるため、コーヒーの香りが変化し、本来のレギュラーコーヒーとは違った、いわゆるレトルト缶コーヒーとしての特異な香味、風味を形成している。
一方、酸味を有する風味の優れた、常温保存可能な加熱殺菌済みの乳成分入りコーヒー飲料の開発は強く望まれており、酸味を有する乳成分入りコーヒー飲料の製造法に関しては、乳成分として生クリーム、バター等を使用して蔗糖脂肪酸エステル等の乳化剤と結晶セルロースを加える方法(特許文献4) 、酸性多糖類を使用して乳蛋白を安定化させる方法( 特許文献5) などが提案されているが、何れの方法においてもコーヒー特有の風味、物性を損なわずに乳成分を安定化できるものではなかった。
このように、コーヒーは本来pH 6.5 以下の弱酸性pH 域でレギュラーコーヒー特有の香りと酸味を発揮するものであり、調合時にコーヒー液のpH を調整してpH 6.5 を越えるように保つと、レギュラーコーヒー特有の香りと酸味が消失してしまい、加熱殺菌して得られるコーヒーは本来のレギュラーコーヒーに比べて、風味が大幅に低下してしまうという問題点があった。すなわち、レギュラーコーヒー特有の風味、物性を損なわず、乳成分を長期的に安定化できる技術は存在しなかった。
上述のように、等電点以下のpH 域ならびにpH 5.2 から中性までのpH 域においては、蛋白の分散を安定化できる技術は既に存在するが、蛋白の等電点より高い酸性pH 域全般において、酸性蛋白食品を良好に安定化できる技術は存在しなかった。
特開昭60-161401 号公報 WO 97/49298 号公報 特公平5-52170号公報 特開平6-245703号公報 特開昭62-74241号公報 Ullmanns Enzyklopaedie der techn. Chemie, Bd. 13, 171, Urban & Schwarzenberg, Muenchen-Berlin (1962) Die Staerke 26 (1974) 12, 417-421 CCB 3,1 (1978) 48-50 Getreide Mehl und Brot 37,5 (1983)131-137 Chem. Eng. Technol 17 (1994) 291-300 ZSW Bd. 31(1978) H. 9 348-351 Getreide Mehl undBrot 37,5 (1983) 131-137
本発明は、根菜類、特にイモ類から得られる特徴的なペクチン及びその製造法、並びに蛋白質の等電点以上の酸性pH 域において安定な酸性蛋白食品及びその製造法を提供することを目的とし、乳成分が長期間にわたり安定していて、常温流通可能な、加熱殺菌済みの乳成分入り飲料を提供することを目的とする。ここでいう、酸性とはpH 6.5 以下のpH 域を指す。
本発明者らは、上記課題の解決を指向して鋭意研究した結果、イモ類の加工副産物であるデンプン粕から弱酸性条件下において熱水抽出されるペクチンに特徴的な機能が発現することを見出した。特に、馬鈴薯由来のペクチンを使用することにより、蛋白質の等電点以上のpH 域において酸性蛋白食品を果実由来のペクチンよりも低粘度で良好に安定化できるという知見を得た。本発明は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
従って本発明は、根菜類からpH3.8〜5.3の弱酸性条件下で熱水抽出して得られるペクチンを含むことを特徴とする蛋白質の等電点以上のpHを有する酸性蛋白食品用安定剤、該安定剤を使用することを特徴とする蛋白質の等電点以上のpHを有する酸性蛋白食品の製造法、該製造法によって製造された酸性蛋白食品、特に該製造法によって得られた乳成分を含むコーヒー飲料、並びに該ペクチンと従来の安定剤を併含することを特徴とする酸性蛋白食品用安定剤、である。
本発明のように、根菜類、特に、イモ類からpH 3.8 〜 pH 5.3 の弱酸性下において、100 ℃以上の温度で抽出されたペクチンに、等電点以上の酸性pH 域における蛋白質の分散安定化能という、従来の安定剤とは異なる特徴的な機能を見出した。この機能を利用することにより、従来なかった等電点以上の酸性pH 域で安定な酸性蛋白質食品を製造することが可能となった。さらに、製造された酸性蛋白食品は、レトルト殺菌などの加熱後も安定な状態を保持できるようになる。
本発明においてペクチンを抽出する原料としての根菜類は、馬鈴薯、甘藷、里芋、山芋、コンニャクなどのイモ類、ゴボウ、ニンジン、大根、ハス、ビートなどが例示できるが、特にイモ類が好ましい。このようなイモ類は生又は乾燥したものをそのまま使用することもできるが、デンプン産業の加工副産物として生成される生又は乾燥したデンプン粕を使用することが好ましい。
原料からのペクチンの抽出は、pH 3.8からpH 5.3 の弱酸性下にて行うことが必須である。このpH 域から外れた範囲において抽出されたペクチンには、等電点以上のpH 域での蛋白質の分散安定化機能は発現されない。
因みに、このようなpH 域の範囲内において抽出されたペクチンが、何故、上述のような機能を発現するかについて詳細に説明することはできないが、恐らく抽出されるペクチン中のポリガラクチュロン鎖のエステル化度、ならびに、中性糖鎖の立体構造が関与しているものと推察される。
また、上記のpH 範囲におけるペクチンの抽出温度は、100 ℃以上にて行うのが好ましい。100 ℃未満の温度で抽出を行った場合には、ペクチンの溶出に時間がかかり経済的に不利である。一方、温度が高温になるに従って抽出は短時間で済むが、余りに高温にし過ぎると風味、色調に悪影響を及ぼすと共にペクチンの低分子化が進み機能の発現効果が低下するので、130 ℃以下で行うのが好ましい。
さらに、本発明におけるペクチンは夾雑するデンプン質を除去して純度を上げることにより、機能がより強く発揮されるようになる。夾雑するデンプン質は、酵素を用いた定量法による含量の測定において60%以下、好ましくは50% 以下にすることが望ましい。デンプン質の除去には、公知の方法を用いれば良く、例えば酵素による分解、あるいは、100 ℃以下の水による原料からの洗浄除去、抽出液中の不溶化部分の分離等が挙げられる。さらに、ペクチンは、その分子量がどの様な値のものでも使用可能であるが、好ましくは平均分子量が数万〜数百万、具体的には5万〜30万であるのが好ましい。なお、このペクチンの平均分子量は標準物質プルラン(昭和電工(株))を標準物質として0.1 モルのNaNO3 溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値である。
本発明によって得られる、根菜類、特にイモ類由来のペクチンは、従来のリンゴあるいは柑橘類などの果実由来のペクチンとは異なる特徴的な機能を有する。即ち、果実由来のペクチンが、等電点以下のpH 域において蛋白質の分散を安定化できる機能を利用して酸性乳飲料の安定剤として使用されているのに対して、本発明におけるペクチンは、等電点以上のpH 域において蛋白質の分散を安定化できる機能を有するのであって、かかる機能により、従来では得られなかった等電点以上のpH 域での安定な酸性蛋白食品を製造することが可能となる。
本発明における酸性蛋白食品とは、動植物性蛋白を含有する酸性の食品であって、牛乳、豆乳等の動植物性蛋白を使用した飲料に柑橘類果汁又はその他の果汁、或いはクエン酸、乳酸などの有機酸もしくは燐酸などの無機酸を添加してなる酸性蛋白飲料、乳製品を酸性にした酸性乳飲料、アイスクリームなどの乳成分入りの冷菓に果汁等を加えた酸性アイス、フローズンヨーグルトなどの酸性冷菓、プリン、ババロア等のゲル化食品に果汁などを加えた酸性デザート及びコーヒー飲料、乳酸菌飲料(生菌、殺菌タイプを含む)、醗酵乳(固体状又は液体状)等の酸性を帯びた蛋白食品を包含する。また、動植物性蛋白とは、牛乳、山羊乳、脱脂乳、豆乳、これらを粉末化した全脂粉乳、脱脂粉乳、粉末豆乳、さらに糖を添加した加糖乳、濃縮した濃縮乳、カルシウム等のミネラル、ビタミン類等を強化した加工乳及び醗酵乳やそれに由来する蛋白を指す。なお、醗酵乳は上記動植物性蛋白を殺菌後、乳酸菌スターターを加えて醗酵させた醗酵乳を指すが、所望によりさらに粉末化し、又は糖などを加えたものであってもよい。
本発明におけるペクチンの使用量としては、標準的に最終製品に対して0.05〜10重量% 、好ましくは0.2 〜2 重量% 程度でよいが、蛋白濃度の相違などに応じて変化し得るので、この使用量は本発明の範囲を制限するものではない。
また、本発明の酸性蛋白食品の製造に際して、従来よりある安定剤、例えばリンゴまたは柑橘類由来のペクチン、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン、微結晶セルロース、キトサン、有機酸塩、重合リン酸塩、乳化剤、加熱変性蛋白質などと併用しても良く、それにより安定なpH 域の拡大等を図ることができる。
以下、実施例により本発明の実施態様を説明するが、これは例示であって本発明の精神がこれらの例示によって制限されるものではない。なお、例中、部及び%は何れも重量基準を意味する。
実施例1
乾燥した精製馬鈴薯デンプン粕(商品名:POTEX,リカビー・シュテルケルセン社、水分5%、デンプン含量(固形分中)7%)500gを水9500g に懸濁した後に、1000g 宛に分けて、pH を2.0 、3.0 、3.5 、4.0 、4.5 、5.0 、5.5 、6.0 、7.0 、8.0 に調整後、120 ℃、30分間加熱して、ペクチンを抽出した。冷却後、遠心分離(10000g×30分間)を行いペクチン抽出液と沈殿部に分離した。分離した沈殿部は等重量の水を加えて再度遠心分離を行い、上澄み液を先のペクチン抽出液と混合した後に、そのまま凍結乾燥して各粗ペクチン(デンプン含量(固形分中)15% )を得た。回収した粗ペクチンを使用して下記表1の配合によりpH 5.0 での蛋白質の分散安定化機能の評価に供した。
Figure 0003941772
1%ペクチン液20部、35% 砂糖液10部、牛乳20部を冷却しながら混合した後に、50% クエン酸液を滴下してpH 5.0 に調整して状態の観察を行った。この評価の結果について以下の表2にまとめた。
Figure 0003941772
表2に示したように、馬鈴薯デンプン粕由来のペクチンでは抽出液pH が3.8から5.3 の範囲内にあるときにpH 5.0 における蛋白質の分散安定化能が発現されることが確認された。
比較例1
ペクチンの抽出原料をリンゴ搾汁粕(商品名:アップルファイバー,ニチロ社、水分5%)に代えた他は実施例1と同様にして果実類由来のペクチンのpH 5.0における蛋白質の分散安定化能の観察を行った。評価の結果は下表3にまとめた。
Figure 0003941772
表3に示したように、果実類由来のペクチンでは抽出pH の如何にかかわらず、pH 5.0における蛋白質の分散安定化能は認められなかった。
実施例2
○ペクチン(イ)の調製
乾燥した精製馬鈴薯デンプン粕(商品名:POTEX,リカビー・シュテルケルセン社、水分5% 、デンプン含量(固形分中) 7%) 500gを水9500g に懸濁した後に、塩酸でpH を4.5 に調整後、120 ℃、30分間加熱して、ペクチンを抽出した。冷却後、遠心分離(10000g×30分間)を行いペクチン抽出液と沈殿部に分離した。分離した沈殿部は等重量の水を加えて再度遠心分離を行い、上澄み液を先のペクチン抽出液と混合した後に乾燥して、ペクチン(イ)を得た。
実施例3
○ペクチン(ロ)の調製
実施例2と同様にして得られたペクチン抽出液を活性炭カラムに通液して精製処理を行った後に乾燥して、ペクチン(ロ)を得た。
実施例4
○ペクチン(ハ)の調製
未精製の乾燥馬鈴薯デンプン粕(水分10% 、デンプン含量(固形分中) 36% )50g を水950gに懸濁した後に、塩酸でpH を4.5 に調整して120 ℃、30分間加熱することにより粗ペクチン(デンプン含量(固形分中) 74%)を抽出した。冷却後、遠心分離(10000g×30分間)を行いペクチン抽出液と沈殿部に分離した。分離した沈殿部は等重量の水を加えて再度遠心分離を行い、上澄み液を先のペクチン抽出液と混合した後、5 ℃にて12時間静置した後に、10000g×10分間の遠心分離を行い、不溶化したデンプン質を除去してから乾燥して、ペクチン(ハ)を得た。
実施例5
○ペクチン(ニ)の調製
実施例4と同様にして得られた粗ペクチン液に、デンプン糖化酵素(商品名:アミログルコシダーゼ,ノボ社)を40単位(1 分間に1 μmol のマルトースを分解する酵素量を1単位とする)添加し、50℃で1時間作用させた。反応終了後、90℃、10分間の熱処理を行うことにより酵素を失活させ、ロ別して得られた糖化液にアルコール濃度80% となるようにエタノールを加えて沈殿精製処理を行った。回収した沈殿部は乾燥して、ペクチン(ニ)を得た。
以上の得られた各ペクチンの分析結果を纏めると以下の表4通り。なお、全糖の測定はフェノール硫酸法により、ウロン酸の測定はBlumenkrantz法により、澱粉含量の測定は酵素による分解後にSomogyi-Nelson法による還元末端の測定により行った。また、平均分子量は標準プルラン(昭和電工(株)を標準物質として0.1 モルのNaNO3 溶液中の粘度を測定する極限粘度法で求めた値である。
Figure 0003941772
実施例6
得られた各ペクチン(イ)〜(ニ)を使用して実施例1と同様にpH 5.0 での蛋白質の分散安定化能を確認したところ、いずれも良好な分散安定性を示した。
比較例2
未精製の乾燥馬鈴薯デンプン粕(水分10% 、デンプン含量(固形分中) 36%)50g を水950gに懸濁した後に、塩酸でpH を4.5 に調整して120 ℃、30分間加熱することにより粗ペクチンを抽出した。冷却後、遠心分離(10000g×30分間)を行いペクチン抽出液と沈殿部に分離した。分離した沈殿部は等重量の水を加えて再度遠心分離を行い、上澄み液を先のペクチン抽出液と混合した後そのまま乾燥させて、粗ペクチン(デンプン含量(固形分中)74%)を回収した。回収した粗ペクチンを使用して実施例1と同様にpH 5.0 での蛋白質の分散安定化能を確認したが、酸性化牛乳に凝集が認められ、良好な分散安定性は示さなかった。
比較例3
未精製の馬鈴薯デンプン粕(水分80% 、デンプン含量(固形分中)36% )250gを水750gに懸濁した後に、pH調整を行わずpH 5.8 のまま、120 ℃、30分間加熱することにより粗ペクチンを抽出した。得られた粗ペクチン液を実施例5と同様にしてデンプン糖化酵素処理後にエタノールによる沈殿処理を行ってペクチンを回収した。回収されたペクチン(デンプン含量(固形分中)2%)を使用して実施例1と同様にpH 5.0 での蛋白質の分散安定化能を確認したが、酸性化牛乳に著しい凝集が認められ、良好な分散安定性は示さなかった。
比較例4
精製馬鈴薯デンプン粕(商品名:POTEX,リカビー・シュテルケルセン社、水分5%、デンプン含量(固形分中)7%)50g を水950gに懸濁した後に、pH 3.3に調整して、110 ℃、60分間加熱することにより粗ペクチンを抽出し、そのまま乾燥した。回収された粗ペクチンを使用して実施例1と同様にpH 5.0 での蛋白質の分散安定化能を確認したが、酸性牛乳に著しい凝集が認められ、良好な分散安定性は示さなかった。
比較例5
精製馬鈴薯デンプン粕(商品名:POTEX,リカビー・シュテルケルセン社、水分5%、デンプン含量(固形分中)7%)50g を0.5%のヘキサメタリン酸ナトリウム液950gに懸濁した後に、pH 3.5に調整して、75℃、60分間加熱することにより粗ペクチンを抽出した。粗ペクチン液をpH 2.0 に調整してペクチンを沈殿させた。回収されたペクチンを、再度、水に溶解した後にアルコール濃度80% となるようにエタノールを加えてペクチンを沈殿精製した。回収された精製ペクチンを使用して実施例1と同様にpH 5.0 での蛋白質の分散安定化能を確認したが、酸性牛乳に著しい凝集が認められ、良好な分散安定性は示さなかった。
実施例7
精製馬鈴薯デンプン粕(商品名:POTEX,リカビー・シュテルケルセン社、水分5%、デンプン含量(固形分中)7%)1kg を水19kgに懸濁した後に実施例2と同様にしてペクチンを抽出した。ペクチン抽出液を、そのまま噴霧乾燥して得られた粗ペクチンを安定剤として使用して下記の表5配合により各pH での蛋白質の分散安定化機能の評価を行った。
Figure 0003941772
1%安定剤液20部、35% 砂糖液10部、8%脱脂粉乳液20部を冷却しながら混合した後に、50% クエン酸液を滴下してpH を4.0 、4.3 、4.5 、4.8 、5.0 、5.3 、5.5 、5.8 、6.0 、6.5 に調整後、ホモゲナイザーを使用して150kgf/cm2 で均質化を行い酸性乳飲料とした。この酸性乳飲料の評価について以下の表6にまとめた。
Figure 0003941772
表6に示したように、馬鈴薯デンプン粕由来のペクチンを安定剤として使用した酸性乳飲料では、乳蛋白の等電点であるpH 4.6 を超える酸性pH 域全般において低粘度で蛋白質の分散安定化能が発現されることが確認された。
比較例6
使用する安定剤をリンゴ由来の市販ペクチン(商品名:クラシックAM201,大日本製薬(株)製)に代えた他は実施例7と同様にして、各pH における酸性乳飲料の安定性の評価を行った。評価の結果は下表7にまとめた。
Figure 0003941772
表7に示したように、リンゴ由来の市販ペクチンを安定剤として使用した酸性乳飲料では、乳蛋白の等電点であるpH 4.6 を超える酸性pH 域においては蛋白質の分散安定化能は観察されなかった。また、pH4.5以下にて乳蛋白の分散が安定化された場合でも粘度が高くドロッとした糊状の食感となった。
比較例7
使用する安定剤を市販のクエン酸三ナトリウム(キシダ化学(株)製)に代えた他は実施例7と同様にして、各pH における酸性乳飲料の安定性の評価を行った。評価の結果は下表8にまとめた。
Figure 0003941772
表8に示したように、市販のクエン酸三ナトリウムを安定剤として使用した酸性乳飲料では、pH5.3を超える酸性pH 域において蛋白質の分散安定化能が観察されたが、安定化できた酸性乳飲料では乳濁性が消失しており乳飲料としての商品価値が失われていた。
○ミルクコーヒー飲料の調製(実施例8〜10、比較例8)
中炒りのコロンビアコーヒー豆粉砕品500 g を熱水5 リットルで抽出し、25℃以下に冷却してコーヒー抽出液4.5 リットルを得た。グラニュー糖700g及び、蔗糖脂肪酸エステル3gを純水1.3 リットルに溶解して糖混合液を得た。これらのコーヒー抽出液、糖混合液、さらに3%ペクチン(イ)液、ならびに水を下表9 の配合に従って混合し、全体を1.8 リットルに調整した後に、牛乳を徐々に加え全体を2 リットルとした。全量混合後に重曹、もしくはL−アスコルビン酸を用いて、それぞれpH 7.0 、6.0 、5.0 に調整して150kg/cm 2 の条件にて均質化し、ミルクコーヒー飲料をそれぞれ調製した。調製したミルクコーヒー飲料は121 ℃、30分間のレトルト殺菌を行い、本発明ペクチンの乳蛋白分散安定化機能の耐熱安定性の評価を行った。
Figure 0003941772
調製したミルクコーヒー飲料は、プレートヒーターにて95℃まで加熱し空缶に充填して、巻締めをし得られた缶入りミルクコーヒー飲料をレトルト釜に入れ、121 ℃、30分間の条件でレトルト殺菌をして、目的とするミルクコーヒー飲料を得た。これら各実施例ならびに比較例で得られた缶入りミルクコーヒー飲料の評価結果を表10に示す。表中の「ホットベンダー保存後の評価」は、各実施例ならびに比較例によって得られたミルクコーヒー飲料を60℃恒温区に4 週間静置保存し、内容物を缶からビーカに移し沈澱の状態を目視により観察した。「レトルト殺菌後の評価」「ホットベンダー保存後の評価」の欄の「凝集」は乳蛋白の沈澱や脂肪の分離が認められたことを示す。また官能検査は得られたミルクコーヒー飲料の官能試験による酸味、風味などのチェックを行なったものである。官能検査については、20名のパネラー(男:女=10:5 、20代:30代:40代=6 :7:2 )が試飲した時、レギュラーコーヒーの香り、酸味に似て非常に優れているを+2 点、普通を0 点、非常に劣っているを−2 点として採点し、その平均値を示した。
Figure 0003941772
表10に示すように、本発明のペクチンを使用せず調製したミルク入りコーヒーの場合(比較例8)は、レトルト殺菌後に乳成分が分離沈澱し、商品価値のあるミルク入りコーヒー飲料が得られない。これに対し、本発明におけるペクチン(イ)を用いた場合には、121 ℃、30分間のレトルト殺菌後に広いpH 域において乳蛋白の凝集分離は認められず、耐熱安定性にも優れることが確認できた。

Claims (5)

  1. 根菜類からpH3.8〜5.3の条件下で100℃以上で熱水抽出して得られるペクチンを含み、蛋白質の等電点以上のpHを有する乳成分含有酸性蛋白食品用であって、酸性蛋白食品が、酸性蛋白飲料、酸性冷菓、ゲル化食品の酸性デザート、又は固体状醗酵乳であることを特徴とする酸性蛋白食品用安定剤。
  2. 請求項1に記載の安定剤を使用することを特徴とする、蛋白質の等電点以上のpHを有する酸性蛋白食品の製造法。
  3. 請求項2記載の方法によって製造された酸性蛋白食品。
  4. 酸性蛋白食品が乳成分を使用した飲料に果汁,有機酸もしくは無機酸を添加してなるもの、液体状醗酵乳、乳酸菌飲料並びに乳成分を含むコーヒー飲料から選択される酸性蛋白飲料である、請求項3記載の食品。
  5. リンゴ由来のペクチン、柑橘類由来のペクチン、水溶性大豆多糖類、カルボキシメチルセルロースナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、カラギーナン、微結晶セルロース、キトサン、有機酸塩、重合リン酸塩及び乳化剤からなる群より選ばれる1種又は2種以上を併含することを特徴とする請求項1記載の酸性蛋白食品用安定剤。
JP2003380148A 1999-01-19 2003-11-10 根菜類由来ペクチンを含む安定剤、並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法 Expired - Fee Related JP3941772B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2003380148A JP3941772B2 (ja) 1999-01-19 2003-11-10 根菜類由来ペクチンを含む安定剤、並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法

Applications Claiming Priority (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP998499 1999-01-19
JP2003380148A JP3941772B2 (ja) 1999-01-19 2003-11-10 根菜類由来ペクチンを含む安定剤、並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法

Related Parent Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP24946499A Division JP3511952B2 (ja) 1999-01-19 1999-09-03 ペクチン及びその製造法並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2004041239A JP2004041239A (ja) 2004-02-12
JP3941772B2 true JP3941772B2 (ja) 2007-07-04

Family

ID=31717183

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2003380148A Expired - Fee Related JP3941772B2 (ja) 1999-01-19 2003-11-10 根菜類由来ペクチンを含む安定剤、並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP3941772B2 (ja)

Families Citing this family (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US10537124B2 (en) * 2013-01-31 2020-01-21 Pepsico, Inc. Stabilizing sorbic acid in syrup and finished beverage
JP6187669B1 (ja) * 2016-11-28 2017-08-30 不二製油グループ本社株式会社 根菜類由来の水溶性多糖類及びその製造方法

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPS60161401A (ja) * 1984-01-31 1985-08-23 Mitsui Toatsu Chem Inc ペクチン質の分離法
WO1997049298A1 (en) * 1996-06-24 1997-12-31 Societe Des Produits Nestle S.A. Pectinaceous gelling agent
JP3251858B2 (ja) * 1996-07-04 2002-01-28 新田ゼラチン株式会社 酸性飲食品、酸性飲食品用酸性クリームおよび粉末
UA73471C2 (en) * 1998-12-28 2005-08-15 Hercules Inc A process for producing pectin products separated into fractions
JP3511952B2 (ja) * 1999-01-19 2004-03-29 不二製油株式会社 ペクチン及びその製造法並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2004041239A (ja) 2004-02-12

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3511952B2 (ja) ペクチン及びその製造法並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法
EP3338564A1 (en) Welan gum-containing composition
TWI386168B (zh) 番石榴葉萃取物粉末及其製造方法
JP3772833B2 (ja) カカオハスク由来の水溶性食物繊維及びその製造法並びにそれを使用した飲食品及びその製造法
JP4899237B2 (ja) ペクチン及びその製造法並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法
JPH11332476A (ja) 酸性蛋白食品及びその製造法
JP2001190220A (ja) 低カロリー乳含有酸性飲料
JP3387457B2 (ja) 酸性蛋白食品及びその製造法並びに安定化剤
JP2009165498A (ja) クロロゲン酸含有飲料
JP3892144B2 (ja) ココア組成物
JP5939344B2 (ja) 液状飲食品、インスタント嗜好性飲料用組成物、インスタント嗜好性飲料用組成物の製造方法、及び食感付与剤
JP3941772B2 (ja) 根菜類由来ペクチンを含む安定剤、並びにそれを使用した酸性蛋白食品及びその製造法
JP6880539B2 (ja) 水性炭酸飲料
JP2018121541A (ja) 酸性乳性飲料
JP5882980B2 (ja) コンニャクマンナン含有ゲルによる発酵乳の乳漿分離、蛋白凝集防止方法
JP4488071B2 (ja) 大豆タンパク質系調製品の製造方法
JP4000173B1 (ja) フルーツプレパレーション用シロップ
Charoensuk et al. Formulation, sensory and pulp stability of durian (Durio zibethinus Murr) juice.
JP2022140350A (ja) 香気含有糖焙焼物
JP4872892B2 (ja) 過発酵ヨーグルト類用の離水防止剤及びそれを用いたヨーグルト類
JP2021083336A (ja) パフィア含有酸性飲食物

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20060731

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20061031

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20070104

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20070313

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20070326

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110413

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20110413

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20120413

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130413

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130413

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130413

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140413

Year of fee payment: 7

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S531 Written request for registration of change of domicile

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313531

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R360 Written notification for declining of transfer of rights

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R360

R371 Transfer withdrawn

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R371

S533 Written request for registration of change of name

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313533

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

S111 Request for change of ownership or part of ownership

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R313111

R350 Written notification of registration of transfer

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R350

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees