JP3248936B2 - 低損失マンガン亜鉛フェライトの製造方法 - Google Patents

低損失マンガン亜鉛フェライトの製造方法

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JP3248936B2 JP02285792A JP2285792A JP3248936B2 JP 3248936 B2 JP3248936 B2 JP 3248936B2 JP 02285792 A JP02285792 A JP 02285792A JP 2285792 A JP2285792 A JP 2285792A JP 3248936 B2 JP3248936 B2 JP 3248936B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、鉄、マンガン、亜鉛を
主成分とする低磁心損失フェライト製造方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】マンガン亜鉛フェライトは、エレクトロ
ニクス製品の電源部のトランス磁心として広く用いられ
ている。これらのトランスは kHzオーダーの周波数で駆
動するので、比較的固有抵抗の低いマンガン亜鉛フェラ
イトをそのまま用いたのでは、高周波になるほど渦電流
損失が増大し、その結果、磁心損失が増大して発熱を引
き起こしてしまうという課題があった。これを解決する
ために特公昭36−2283号公報にあるように、マン
ガン亜鉛フェライトには、結晶粒界に抵抗の高い層を形
成する作用のあるSiO2 とCaOの添加がなされてい
た。
【0003】しかし、近年、エレクトロニクス製品の小
型化が進み、その電源部にも小型化が要求され、トラン
スの駆動周波数がより高周波へと移行した結果、SiO
2 とCaOの添加だけでは渦電流損失の抑制が十分でな
く100kHz 程度、もしくは、それ以上の周波数ではこ
の系のマンガン亜鉛フェライトは、使用できなかった。
そこで、例えば特開昭58−15037号公報にあるよ
うに、さらに渦電流損失を抑制する目的で、結晶格子中
に固溶して結晶粒子全体の固有抵抗を高める成分や、ヒ
ステリシス損失を低くする目的で緻密化を促進する成分
が、SiO2 ,CaOに加えてさらに添加されてきた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記従来技術では、マ
ンガン亜鉛フェライトにSiO2 およびCaO、もしく
は、他の成分を添加することにより高周波における磁心
損失を低減させていた。本発明では焼結条件を工夫する
ことにより、緻密かつ結晶粒径を小さくし、渦電流損失
を抑制し高周波における磁心損失を低減させたマンガン
亜鉛フェライト製造方法を提供するものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、マンガン亜鉛
フェライト成形体の本焼結において、焼結温度1200
〜1280℃、昇温過程における600℃以上の温度お
よび焼結過程の初期の10〜30分の雰囲気中の酸素濃
度を1%以下とし、かつ、焼結後下記式で規定される範
囲内の酸素雰囲気で冷却することを特徴とする低損失マ
ンガン亜鉛フェライト製造方法である。logP=a−20000/(T+273) 13.6≦a≦14.3,P≦10 P:酸素濃度(%)、T:温度(℃) a:定数
【0006】以下、本発明について詳細に説明する。本
発明のマンガン亜鉛フェライトは、焼結体の平均結晶粒
径が10μm以下かつ理論密度の94%以上の密度を有
するものである。ここで、焼結体の密度と磁心損失の関
係について述べる。本発明者らは、従来法により製造し
たマンガン亜鉛フェライトの密度と磁心損失の関係につ
いて調査を行った。図1に示すように焼結体密度が高く
なるに伴い、磁心損失が低下する傾向がみられた。特
に、理論密度94%を超えるとその傾向が顕著であっ
た。
【0007】次に、焼成体の平均結晶粒径と磁心損失の
関係であるが、これを詳説する前に磁心損失について述
べる。磁心損失は、一般にヒステリシス損失Phと渦電
流損失Pe の和で表される(例えば、山田 一 監修;
“〜R&Dのための〜磁気回路の計算法”,トリケップ
ス 1987年刊による)。 〈磁心損失〉=Ph +Pe =Ph f+Pe 2 但し、Ph ;ヒステリシス損失係数、Pe ;渦電流損失
係数、f;周波数 つまり、ヒステリシス損失は周波数に比例し、渦電流損
失は周波数の2乗に比例する。すなわち、本発明で目的
としている高周波での磁心損失を低減させるためには、
渦電流損失を低減させることが効果的である。
【0008】渦電流損失を低減させるためには、前述し
たように固有抵抗を高めなければいけない。そのために
は、抵抗の大きい粒界相を増やすことが効果的である。
そこで、本発明者らは、従来法により製造したマンガン
亜鉛フェライトの平均結晶粒径と渦電流損失の関係につ
いて調査を行った。
【0009】図2に示すように平均結晶粒径が小さくな
るに伴い、渦電流損失は小さくなる傾向がみられた。特
に、平均結晶粒径が10μm以下になると著しく小さく
なる。このような理由により本発明のマンガン亜鉛フェ
ライトは、焼結体の平均結晶粒径が10μm以下かつ理
論密度の94%以上の密度を有するものと定めた。
【0010】以下、本発明のマンガン亜鉛フェライトを
得る手段について詳細に述べる。本発明のマンガン亜鉛
フェライトは、主成分の鉄、マンガン、亜鉛および添加
物であるSiO2 およびCaOは、軟質磁性を有し、高
透磁率材料として用いられる材料の組成範囲と同様でよ
く、例えば、Fe2 3 50〜60 mol%、MnO20
〜40 mol%、ZnO10〜15 mol%、SiO2 0.
01〜0.2 mol%、CaO0.08〜0.4 mol%の
範囲から選ばれる。
【0011】主成分の鉄、マンガン、亜鉛の組成がこの
範囲以外では透磁率が低く、軟質磁性材料として実用的
でなく、SiO2 とCaOの添加量がこの範囲以外では
固有抵抗を高める作用が小さいからである。また、前記
した主要3成分の組成であるが、好ましくはFe2 3
52〜55mol %、MnO34〜37 mol%、ZnO9
〜13 mol%とすると磁心損失を低減させたフェライト
を得るのに有効である。
【0012】さらに、好ましくは結晶格子中に固溶して
結晶粒子全体の固有抵抗を高める効果を有すTiO2
の添加物を加えることにより、上記以上に渦電流損失を
抑制し高周波における磁心損失を低減させたマンガン亜
鉛フェライトを得ることが可能となる。
【0013】次に、製造法について説明する。上記の成
分を配合したものからフェライト成形体を得るまでに通
常、混合−仮焼−粉砕−造粒−成形といったプロセスを
経るが、これらは通常のマンガン亜鉛フェライトの製造
条件で行う。
【0014】フェライト成形体は、次に本焼結される
が、本発明の平均結晶粒径10μm以下かつ理論密度の
94%以上の密度を有する低損失マンガン亜鉛フェライ
トを得るために本発明者らは、この本焼結条件に着目し
以下の方法により焼結した。
【0015】通常、マンガン亜鉛フェライトの理論密度
の94%以上の密度を有する焼結体を得るためには、焼
結温度を1280〜1350℃程度としているが、これ
では平均結晶粒径がどうしても10μmよりも大きくな
り、高周波、特に100kHz以上の周波数域で渦電流が
増大してしまう。
【0016】そこで、本発明者らは、粒成長を抑制する
ために焼結温度を1200〜1280℃に引き下げた。
しかし、単に焼結温度を下げただけでは密度が低下しヒ
ステリシス損失が増大してしまう。密度の低下を防ぐた
めに、昇温過程での600℃以上の温度における雰囲気
中の酸素濃度1%以下とした。これによって、粒成長が
盛んになる以前の段階で結晶粒子中に酸素イオン空孔を
積極的に導入することができ、緻密化を律速している酸
素イオンの移動度を増加させ、緻密化を促進させる。
【0017】その結果、低温焼結により結晶粒子の平均
粒径を10μm以下に抑えたまま、高密度な組織が得ら
れ、渦電流損失とヒステリシス損失を同時に低下させる
ことができ、大幅に磁心損失を低下させることが可能と
なる。1%超の雰囲気酸素濃度では緻密化を促進する効
果は小さい。また、600℃未満ではバインダーを酸化
除去する必要があるため、酸素濃度を低下させる開始温
度は、600℃以上となる。
【0018】さらに、焼結温度に達した後、10〜30
分程度雰囲気酸素濃度を1%以下に保つことにより緻密
化を促進させ、ヒステリシス損失をさらに低下させるこ
とが可能である。但し、この雰囲気酸素濃度のまま理論
密度のおよそ90%以上まで緻密化させると、その後の
焼結過程での酸素イオンの拡散が困難になり、磁心損失
を増大させる。
【0019】そのため、この雰囲気酸素濃度に保持する
時間は、焼結温度に合わせ上記の10〜30分の範囲で
選択する。この後、焼結温度における雰囲気中の酸素濃
度は、通常のマンガン亜鉛フェライトを焼結する場合と
同じく2〜10%の範囲とする。
【0020】焼結終了後の冷却条件であるが、冷却速度
は通常の場合と同じく50〜250℃/hの範囲から選
ばれる。このときの雰囲気中の酸素濃度は、非磁性のα
−Fe2 3 あるいはFeOが析出しないような条件に
する必要がある。このような相がマンガン亜鉛フェライ
ト中に析出すると磁心損失を著しく劣化するからであ
る。
【0021】そこで、冷却中にマンガン亜鉛フェライト
中のFe2+イオンとFe3+イオンの比率が変化しないよ
うな条件を選択する。この比率が冷却中に変化、特にF
2+イオンの量が増加するとFe3+イオンとの電子交
換、いわゆるホッピング伝導が活性化することにより、
固有抵抗が低下し渦電流損失が増加するといった問題が
生じる可能性があるからである。
【0022】上記の条件を満たすために、下記の式で規
定される範囲内の雰囲気酸素濃度で冷却する。 logP=a−20000/(T+273) 13.6≦a≦14.3,P≦10 P:酸素濃度(%)、T:温度(℃) a:定数 ここで、aは13.6≦a≦14.3の範囲から選ばれ
る定数で、冷却時の雰囲気酸素濃度は、上式にaおよび
温度Tを代入することによって求まるPで規定される。
【0023】aが13.6≦a≦14.3の範囲で規定
される理由は、a<13.6、即ちlogP<13.6
−20000/(T+273)では雰囲気中の酸素濃度
が低すぎるため結晶中のFe3+イオンが還元され、その
結果、Fe2+イオンの量が増加するので固有抵抗が減少
し、渦電流損失が増大して磁心損失が増大するからであ
る。
【0024】また、logP>14.3−20000
(T+273)では雰囲気中の酸素濃度が高くなりすぎ
て過度に酸化され、非磁性のα−Fe2 3 が析出して
磁気特性を損ね、磁心損失が増大するからである。さら
に、aおよび温度Tを代入して求まるPがP≦10とす
る理由は、冷却過程での雰囲気酸素濃度が10%を超え
ると過度の酸化が起こり、非磁性のα−Fe2 3 が析
出して磁心損失が増大するからである。
【0025】
【実施例】表1に用いたマンガン亜鉛フェライトの化学
組成を示す。微量添加物としてSiO2 およびCaOの
み添加した系、さらにこれらに加えTiO2 およびV2
5 を添加した系を選んだ。
【0026】
【表1】
【0027】表2に焼結条件を示す。比較例として冷却
時の酸素濃度を変化させたもの、および従来法の焼結温
度1180℃および1300℃についても実施した。
【0028】
【表2】
【0029】表3に各製造条件によって得られた試料の
特性を示す。
【0030】
【表3】
【0031】
【発明の効果】本発明では焼結条件を工夫することによ
り、緻密かつ結晶粒径を小さくし、渦電流損失を抑制し
高周波における磁心損失を低減させたマンガン亜鉛フェ
ライトを提供することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】磁心損失と相対密度の関係を示す図表である。
【図2】渦電流損失と平均結晶粒径の関係を示す図表で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭62−87459(JP,A) 特開 平5−36515(JP,A) 特開 昭61−117804(JP,A) 特開 昭59−83977(JP,A) 特開 昭50−34010(JP,A) 特開 平3−268404(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H01F 1/12 - 1/375

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マンガン亜鉛フェライト成形体の本焼結
    において、焼結温度1200〜1280℃、昇温過程に
    おける600℃以上の温度および焼結過程の初期の10
    〜30分の雰囲気中の酸素濃度を1%以下とし、かつ、
    焼結後下記式で規定される範囲内の酸素雰囲気で冷却す
    ることを特徴とする低損失マンガン亜鉛フェライトの製
    造方法。 logP=a−20000/(T+273) 13.6≦a≦14.3,P≦10 P:酸素濃度(%)、T:温度(℃) a:定数
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