JP3248752B2 - 光分解性ポリオレフィン樹脂組成物 - Google Patents

光分解性ポリオレフィン樹脂組成物

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JP3248752B2 JP10566792A JP10566792A JP3248752B2 JP 3248752 B2 JP3248752 B2 JP 3248752B2 JP 10566792 A JP10566792 A JP 10566792A JP 10566792 A JP10566792 A JP 10566792A JP 3248752 B2 JP3248752 B2 JP 3248752B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリオレフィン樹脂組
成物に係り、特に各種用途に使用したのち廃棄した際、
太陽光線或いは紫外線照射によって容易に劣化崩壊する
光分解性のポリオレフィン樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】ポリオレフィン樹脂は、光、酸素、酸、
アルカリなどに対して安定であるため各種の産業分野で
汎用されている。ところが、現在、世界中で多量に生産
され、使用されているポリオレフィン樹脂は自然環境に
おいて分解されないため、不要となった大量のポリオレ
フィン樹脂廃棄物をいかに処分するかが世界各国で深刻
な問題となっている。
【0003】近年、上記の環境汚染問題の解決策とし
て、不要となったポリオレフィン樹脂を回収処理する方
法のほか、日光に曝すと容易に分解するようにポリオレ
フィン樹脂を光分解性に転化する方法が盛んに研究され
ている。この種の光分解性プラスチックは、光化学反応
に必要なエネルギーを取り込むことのできる官能基また
は発色団を分子鎖中に導入(感光性官能基導入型)する
か、そのような化学物質を添加(感光性試薬添加型)す
ることによって得られることが知られている。
【0004】樹脂に光崩壊性の性質を付与する添加剤と
しては、当初、紫外線吸収剤だけをスチレン系の樹脂や
ポリエチレン樹脂に添加する方法(特公昭47−36011 号
公報、特公昭47−37262 号公報)が採られたが、ついで
遷移金属の錯化合物に光崩壊作用があることが見い出さ
れ、種々の錯化合物や塩が検討されている(特開昭49−
10946 号公報、特開昭50−100141号公報、特開昭49−11
9972号公報)。さらにその後、有機の光増感剤と遷移金
属の錯化合物あるいは高級脂肪酸塩、塩化物、酸化物を
併用することで添加量を減少させる方法が提案されてい
る(特開昭47−27244 号公報、特公昭56−22337 号公
報、特公昭57−8135号公報)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】従来知られている遷移
金属の錯化合物は実際に優れた光分解作用を有してお
り、鉄、銅、コバルトなどの錯化合物は実用されている
が、かなりの欠陥もある。例えば、鉄、銅、コバルトな
どの錯化合物はポリオレフィン樹脂に配合してマスター
バッチ化して保管して置くと、日光を当てなくとも自然
に劣化してしまう材質上の欠陥が認められる。また、こ
れら鉄、銅、コバルトなどの遷移金属は時間の経過と共
にポリオレフィン樹脂を着色する原因が生じる難点もあ
った。
【0006】本発明者らは、上記の欠陥を解消すべく鋭
意研究を進めた結果、ベンゾフェノンカルボン酸の金属
塩の中でも特にセリウム塩を選択使用してマスターバッ
チ化したポリオレフィン樹脂は、長時間の保存中におい
ても殆ど樹脂の着色化が認められず、分解特性も低下し
ないことを確認した。
【0007】本発明はかかる知見に基づいて開発された
もので、その目的は長期間に亘り着色や異臭の発生を伴
わずに安定に保管することができる光分解性ポリオレフ
ィン樹脂組成物を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めの本発明による光分解性ポリオレフィン樹脂組成物
は、下記の化学構造式で示されるベンゾフェノンカルボ
ン酸のセリウム塩を配合してなることを構成上の特徴と
する。
【0009】
【化2】
【0010】但し、式中X、Yは、水素原子、炭素数1
5以下のアルキル基、アリール基、水酸基、ハロゲン
、アミノ基を表すものとする。
【0011】本発明の組成物を構成するポリオレフィン
としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンのよ
うな低級オレフィンの単独重合体、エチレン−ブテン−
1共重合体、エチレン−ブタジエン共重合体、プロピレ
ン−イソプレン共重合体などの共重合体が挙げられる。
このうちポリエチレンには、低密度ポリエチレン(LD
−PE)直鎖状低密度ポリエチレン(LLD−PE)お
よび高密度ポリエチレン(HD−PE)が含まれる。
【0012】上記のポリオレフィンに配合されるベンゾ
フェノンカルボン酸のセリウム塩は下記の化学構造式で
示されるものである〔式中X、Yは、水素原子、炭素数
15以下のアルキル基、アリール基、水酸基、ハロゲン
原子、アミノ基などを表す〕。
【0013】
【化3】
【0014】具体的には、o−ベンゾイル安息香酸のセ
リウム塩、m−ベンゾイル安息香酸のセリウム塩、p−
ベンゾイル安息香酸のセリウム塩、2−p−トルオイル
安息香酸のセリウム塩、2−m−トルオイル安息香酸の
セリウム塩、2−o−トルオイル安息香酸のセリウム
塩、2−p−イソプロピオイル安息香酸のセリウム塩お
よび2,4−ジメチル−2−ベンゾイル安息香酸のセリ
ウム塩などが挙げられるが、ここに列挙されたものに限
定されるものではない。
【0015】ポリオレフィン樹脂とベンゾフェノンカル
ボン酸のセリウム塩との配合割合は、樹脂の種類、薬剤
の種類によって適宜設定されるが、ポリオレフィン樹脂
に対してベンゾフェノンカルボン酸のセリウム塩が0.01
〜20重量%の範囲になるように配合される。好ましくは
0.1〜2.0 重量%である。ベンゾフェノンカルボン酸の
セリウム塩の配合量が0.01重量%未満では光崩壊に時間
を要するようになり、20重量%を越えると光崩壊効果は
十分に生じるものの、樹脂の物性が低下するので好まし
くない。
【0016】本発明のポリオレフィン樹脂組成物は上記
のポリオレフィン樹脂とベンゾフェノンのセリウム塩か
らなるものであるが、組成物の形状は特に問わない。す
なわちポリオレフィン樹脂とベンゾフェノンカルボン酸
のセリウム塩を混合押出したペレット状、フレーク状、
ビーズ状のもの、またこれらのものをフイルムや繊維な
どに成形加工した成形物も本発明の組成物に含まれる。
【0017】また、本発明の光分解性ポリオレフィン樹
脂組成物はポリオレフィン樹脂とベンゾフェノンカルボ
ン酸のセリウム塩のみから構成してもよいが、その他必
要に応じて各種の添加剤、例えば、染料、顔料、シリ
カ、タルク、クレー、炭酸カルシウムおよびガラス繊維
などを配合することができる。
【0018】
【作用】本発明による光分解性ポリオレフィン樹脂組成
物は、ポリオレフィン樹脂に配合したベンゾフェノンカ
ルボン酸のセリウム塩が光分解性を促進し、同時に保存
安定性をもたらすために有効に機能する。しかし、付与
される保存安定性は直射日光または紫外線に対しては十
分ではない。このため、成形された製品は戸外に放置し
たとき分解が促進され崩壊するが、直射日光または紫外
線の照射を受けない限り分解が進行することはない。し
たがって、日光や紫外線の当たらない場所に保管するこ
とにより、変色や異臭を発生することなく長期間の安定
な貯蔵が可能となる。
【0019】
【実施例】以下、本発明の実施例を比較例と対比して具
体的に説明する。
【0020】実施例1 MI=5.0 の高密度ポリエチレン(密度0.966) 95.0 重
量部にo−ベンゾイル安息香酸セリウム塩を 5.0重量部
配合し、30mmベントタイプ押出機(ベントオープン)で
下記の条件によりマスターバッチペレットを作成した。 L/D:27 スクリュー回転数:57rpm 設定温度: 200℃
【0021】得られたマスターバッチを直射日光および
紫外線の当たらない場所に保管し、貯蔵安定性を調べ
た。その結果を表1に示した。
【0022】比較例1〜3 実施例1のo−ベンゾイル安息香酸のセリウム塩に代え
てo−ベンゾイル安息香酸の鉄塩(比較例1)、銅塩
(比較例2)およびコバルト塩(比較例3)を用いた。
その他は実施例1と同一の条件でマスターバッチを作成
し、得られたマスターバッチを直射日光および紫外線の
当たらない場所に保管し、貯蔵安定性を調べた。その結
果を表1に併載した。
【0023】
【表1】
【0024】上記の実施例および比較例のマスターバッ
チをナチュラルの高密度ポリエチレンで希釈してフイル
ムを成形した。フイルムの成形条件は下記によった。こ
の際のフイルム成形性を対比して表2に示した。 成形機:30mmインフレ押出機 成形温度: 200℃ フイルム厚み:30μ 希釈樹脂:高密度ポリエチレン(密度0.956)、MI=0.
01 光崩壊剤添加量: 0.2重量%、 1.0重量%(マスターバ
ッチとして5重量%、20重量%)
【0025】
【表2】
【0026】上記の各フイルムを屋外に暴露して光崩壊
性を調査した。その結果を表3に示した。
【0027】
【表3】 〔表注〕 ○:外観の変化無し △:脆化傾向有り ×:崩壊
【0028】表3の結果から、光分解効果の面ではo−
ベンゾイル安息香酸のセリウム塩に比べて鉄塩、銅塩、
コバルト塩の方が若干良好であったが、マスターバッチ
の安定性、成形時の臭気、成形品の着色性の面ではセリ
ウム塩が優れた効果を示すことが認められた。
【0029】実施例2 MI=7.0 の低密度ポリエチレン(密度0.922) 95.0 重
量部に2−p−トルオイル安息香酸セリウム塩を 5.0重
量部配合し、30mmベントタイプ押出機(ベントオープ
ン)で下記の条件によりマスターバッチペレットを作成
した。 L/D:27 スクリュー回転数:57rpm 設定温度: 200℃
【0030】得られたマスターバッチを直射日光および
紫外線の当たらない場所に保管し、貯蔵安定性を調べ
た。その結果を表4に示した。
【0031】比較例4〜6 実施例2の2−p−トルオイル安息香酸のセリウム塩に
代えて2−p−トルオイル安息香酸の鉄塩(比較例
4)、銅塩(比較例5)およびコバルト塩(比較例6)
を用い、その他は実施例2と同一条件でマスターバッチ
を作成した。得られたマスターバッチを直射日光および
紫外線の当たらない場所に保管し、貯蔵安定性を調べ
た。その結果を表4に併載した。
【0032】
【表4】
【0033】上記の実施例および比較例のマスターバッ
チをナチュラルの低密度ポリエチレンで希釈してフイル
ムを成形した。フイルム成形条件は下記によった。この
際のフイルム成形性を対比して表5に示した。 成形機:30mmインフレ押出機 成形温度: 200℃ フイルム厚み:30μ 希釈樹脂:低密度ポリエチレン(密度0.922)、MI=7.
0 光崩壊剤添加量: 0.2重量%、 1.0重量%(マスターバ
ッチとして5重量%、20重量%)
【0034】
【表5】
【0035】上記の各フイルムを屋外に暴露し、光崩壊
性を調べた。その結果を表6に示した。
【0036】
【表6】 〔表注〕 ○:外観の変化無し △:脆化傾向有り ×:崩壊
【0037】実施例3 MI=11.0のポリプロピレン(ホモポリマー) 95.0 重
量部にo−ベンゾイル安息香酸セリウム塩を 5.0重量部
配合し、30mmベントタイプ押出機(ベントオープン)で
下記の条件によりマスターバッチペレットを作成した。 L/D:27 スクリュー回転数:57rpm 設定温度: 200℃
【0038】上記のマスターバッチをナチュラルのポリ
プロピレンで希釈して下記の条件によりフイルムを成形
した。成形機:30mmインフレ押出機 成形温度: 230℃ フイルム厚み:30μ 希釈樹脂:ポリプロピレン、フイルムグレードMI=4.
0 光崩壊剤添加量: 0.2重量%、 1.0重量%(マスターバ
ッチとして5量%、20重量%)
【0039】このフイルムを屋外に暴露し、光崩壊性を
調べた。その結果を表7および表8に示した。なお、表
8の結果は暴露フイルムの劣化状態を赤外分光光度計に
おける(オレフィン樹脂が劣化して発生する)カルボニ
ル基の吸収(約1700cm-1) 強度の増加として捉えた。
【0040】比較例7 実施例3のo−ベンゾイル安息香酸のセリウム塩に代え
てo−ベンゾイル安息香酸の鉄塩を用い、実施例3と同
一条件でマスターバッチを作成した。得られたマスター
バッチをナチュラルのポリプロピレンで希釈してフイル
ムを成形し、このフイルムを屋外に暴露し、光崩壊性を
調べた。その結果を表7と表8に併せて示した。
【0041】
【表7】
【0042】
【表8】 〔表注〕*:崩壊のため測定不可能
【0043】
【発明の効果】本発明の光分解性ポリオレフィン樹脂組
成物は、屋外の日光や紫外線の照射されない場所に保管
しておくと非常に安定であり、保管中に異臭が発生した
り、着色することがない。また、成形加工時でも着色し
にくく異臭が発生することがないため、作業性良好であ
る。
フロントページの続き (72)発明者 村木 信博 大阪府枚方市東香里新町21−15 (72)発明者 立花 一弘 兵庫県神戸市垂水区本多聞6−23−5 (56)参考文献 特開 昭53−75186(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 23/00 - 23/36 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の化学構造式で示されるベンゾフェ
    ノンカルボン酸のセリウム塩を配合してなることを特徴
    とする光分解性ポリオレフィン樹脂組成物。 【化1】 但し、式中X、Yは、水素原子、炭素数15以下のアル
    キル基、アリール基、水酸基、ハロゲン原子、アミノ
    表すものとする。
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