JP3247786B2 - β−カゼインを高度に含有する食品 - Google Patents

β−カゼインを高度に含有する食品

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、β−カゼインを高度に
含有する食品に関する。本発明の食品は、蛋白質の体内
利用効率が高いので、特に、経腸栄養剤等の特殊栄養組
成物としての利用が可能である。
【0002】
【従来の技術】人間にとって蛋白質は、筋肉、骨格、皮
膚及び毛髪等の重要な構成成分であるとともに、生命現
象をつかさどる酵素、抗体及びホルモン等を構成する成
分として、最も大切な栄養素である。このような蛋白質
の供給源としては、動物からは畜肉、魚肉、卵、乳等、
また、植物からは大豆、小麦、米等が挙げられる。 し
かし、蛋白質補給のみを目的にこれらの食品を摂取して
も、これらの食品中には蛋白質以外の成分である脂質、
糖質、ミネラル等の成分も含まれているため、蛋白質と
して摂取できる量は限られている。また、植物性蛋白質
は、元々食品中で存在している状態では、消化吸収率が
よくないとされている。
【0003】従って、蛋白質を効率的に補給でき、しか
も、蛋白質及び任意量の脂質、糖質、ミネラル等を配合
する食品を調製するためには、上記のような食品中から
蛋白質を分離、精製することにより、蛋白質含量を高め
る必要がある。そのため、これまでに、pHや温度変化
による分離・分画、有機溶媒による分離、クロマトグラ
フィー分画、膜分画等の様々な方法により、蛋白質が高
度に精製され、種々の食品、特に蛋白質補給を目的とし
た食品に利用されている。幼児から老人において、我々
が食する蛋白質として乳蛋白質、畜肉蛋白質、卵蛋白
質、大豆蛋白質および魚肉蛋白質等の種々の蛋白質が存
在するが、一般に動物性蛋白質のほうが、植物性蛋白質
よりも、栄養価が高く、消化吸収率が高い。特に乳蛋白
質は高い栄養価を有し、消化吸収性及び蛋白質を構成す
るアミノ酸のバランスが優れた貴重な蛋白源である。
【0004】この乳蛋白質は、大きく乳清蛋白質とカゼ
インに分類することができる。乳清蛋白質には、α−ラ
クトアルブミン、β−ラクトグロブリン、免疫グロブリ
ンやラクトフェリン等があり、免疫グロブリンやラクト
フェリンは、栄養成分としての働きだけでなく、感染防
御や鉄吸収促進作用等の機能も持ち合わせている。一
方、カゼインは、αs−カゼイン、β−カゼイン及びκ
−カゼインに分類され、栄養成分としての働きの他に、
最近ではその蛋白質の一次構造に潜在的に含まれるカル
シウム吸収促進作用やマクロファージ貪食能活性化作用
を有する生理活性ペプチド等が発見され、注目を集めて
いる。また、カゼインは高い栄養価とともに、乳製品の
原材料として、例えばチーズ、ヨーグルト、スキムミル
ク等の様々な食品に加工処理され、我々の食生活に寄与
している。
【0005】これまでのβ−カゼインの食品への応用と
しては、下記のことが挙げられる。人乳中のカゼイン
は、β−カゼインがほとんどであり、αs−カゼインは
存在しないか、または痕跡程度認められるのみである
が、牛乳中のカゼインは、αs−カゼイン、β−カゼイ
ンをほぼ等量含む。従って、牛乳蛋白質を主体とした育
児用調製乳には、人乳のように多くのβ−カゼインを含
まないことから、人乳組成近似化を目的として、β−カ
ゼインを増量させた育児用調製乳を製造することが考え
られ、β−カゼインを増量させた育児用調製乳及びその
製造法に関した技術が開示されている(特開昭54−9
5768号公報、特公昭59−48964号公報、特開
平3−240437号公報)。また、牛乳カゼインから
β−カゼインを分画・精製する方法としては、尿素法、
分子ふるい法、カルシウム沈澱法、寒冷沈降法など多く
の技術が開示されている(J.Dairy Sci,35,272,(195
2)、J.Dairy Sci,55,30,(1977)、特開昭54-95768号公
報、特公昭59-48964号公報、特開平5-146258号公報、特
開平5-153916号公報)。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来の
β−カゼインを食品中で増量させるという考え方は、乳
児を対象とする育児用調製乳に関するものであった。即
ち、従来において、乳中のカゼインをβ−カゼインとそ
れ以外のカゼインに分画してβ−カゼインを利用する場
合、乳児以上の年齢層の食品においてβ−カゼインを利
用する意義については全く考えられておらず、食品への
応用も全く試みられていなかった。また、育児用調製乳
において、β−カゼインを増量し、αs−カゼインを減
量することは、単に、人乳にはβ−カゼインが多く、α
s−カゼインが存在しないか、存在したとしても痕跡程
度認められるのみであるという知見に基づくことだけで
あった。それに対して、本発明は、β−カゼインを高度
に含有する食品を、育児用調製乳以外の食品として利用
することを試みたものであり、例えば、病態時の経腸栄
養剤、発育に寄与する学童用食品及びスポーツ等の激し
い運動時の食品として優れ、高い体内蛋白質利用効率が
付与された食品を提供することを課題とするものであ
る。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、β−カゼ
インが他の蛋白質に比較して高い栄養価、即ち、摂取後
の高い体内蛋白質保留率を有することを見出し、さら
に、このβ−カゼインを経腸栄養剤等の特殊栄養組成物
をはじめとする各種食品に、一定以上の量で配合または
添加することにより、高い体内蛋白質利用効率を付与
し、しかも良好な発育、栄養状態の改善及び速やかな蛋
白質補給が可能である食品を提供し得ることを見出し、
本発明を完成させた。即ち、本発明は、食品全体の重量
に基づく蛋白質量が固形換算で20重量%以上であり、
食品中に含まれる蛋白質全体の重量に基づくβ−カゼイ
ン量が50重量%であることを特徴とするβ−カゼイン
を高度に含有し、蛋白質、糖質、脂質、ビタミン及びミ
ネラルを含む、蛋白質補給用食品を提供する。本発明の
食品は、いずれの公知の食品であってもよく、例えば、
経腸栄養剤のような特殊栄養組成物を包含する。
【0008】本発明の食品に含まれる蛋白質は、β−カ
ゼイン単独からなるものであってもよいが、他の蛋白質
と併用することもできる。β−カゼインと併用できる蛋
白質としては、乳蛋白質、卵蛋白質、大豆蛋白質等があ
るが、蛋白質全体の中のβ−カゼイン量が50重量%以
上であることが必須要件とされる。蛋白質中のβ−カゼ
イン量が50重量%未満となると、高い体内蛋白質保留
率を達成することができず、蛋白質の体内利用効率が低
くなり、本発明の目的を達成することができない。ま
た、本発明の食品における蛋白質の量が、食品全体の重
量に基づいて、固形換算で20重量%以上であると、本
発明の効果を顕著に得ることができるので望ましい。
尚、配合されるβ−カゼインは、公知のいずれの方法に
よって得られたものでもよく、牛乳カゼインからβ−カ
ゼインを分画・精製する方法としては、例えば、尿素
法、分子ふるい法、カルシウム沈澱法、寒冷沈降法及び
全カゼインからαs−カゼインを選択的に分解してβ−
カゼイン含量を高める方法等が挙げられる。また、配合
されるβ−カゼインの形態は、液状、粉末状、顆粒状、
スラリー状、その他いずれの適宜な状態でもよい。
【0009】本発明の食品は、上記蛋白質の他、糖質、
脂質、ビタミン及びミネラルも含むものである。本発明
の食品に配合することができる糖質としては、食品にお
いて通常用いられるデンプン、可溶性多糖類、デキスト
リン、庶糖、乳糖、麦芽糖、ぶどう糖または人工甘味料
等が例として挙げられる。また、本発明の食品に配合す
ることができる脂質としては、バター、ラード、魚油、
パーム油、大豆油、サフラワー油、ナタネ油、ヤシ油等
の動植物由来の油脂が例として挙げられ、食用に供する
ことができる油脂であれば、いずれの油脂であってもよ
い。また、本発明の食品に配合することができるビタミ
ンは、いずれのビタミン類であってもよく、例えば、ビ
タミンA、B類、C、D、E、K類等の中から目的に応
じて1種またはそれ以上が適宜選択して配合される。ま
た、本発明の食品に配合することができるミネラルとし
ては、カルシウム、マグネシウム、カリウムまたはナト
リウム等が例として挙げられる。本発明の食品は、例え
ば、上記の蛋白質を、糖質、脂質、ビタミン及びミネラ
ルのようなその他の成分と、常法に従って、配合または
混合することにより、製造することができる。尚、これ
らの食品は、固体状、粉末状または液状等のいずれの形
態でも摂取することができる。
【0010】このようにして得られたβ−カゼインを高
度に含有する食品は、摂取後に高い体内蛋白質保留率を
有し、しかも風味も良好である。従来の病態栄養食とし
て利用されていた経腸栄養剤は、蛋白源として種々の蛋
白質を使用していたが、概して風味が悪く、経口摂取が
困難なものが多かった。しかし、経腸栄養剤の蛋白源と
してβ−カゼインを用いることによって、乳独特のおい
しさを持ち、かつ高い蛋白質利用効率、即ち、摂取後の
高い体内蛋白質保留率により、病態時の蛋白質補給によ
る栄養改善を行うことが可能になる。また、成長の盛ん
な学童期には、良質な蛋白質を多く摂取することが望ま
れるが、最近のインスタント食品やファーストフードな
どの氾濫で、手軽に食することはできるが、栄養面では
全く配慮されていない食品を間食として摂取する機会が
多くなってきている。このような、栄養摂取のバランス
が乱れがちな学童向け食品として、β−カゼインを高度
に含有する本発明の食品を摂取させることにより、速や
かな蛋白質補給が可能となり、その発育に大いに寄与す
ることができる。また、スポーツなどの激しい運動時に
は、新陳代謝も激しく、体内に蓄積している栄養分を多
く消費する。このような場合には、栄養分の速やかな補
給とともに、補給しても直ちに体外に排泄されないよう
な体内蛋白質保留率の高い栄養成分を摂取することが望
まれる。このような時、体内蛋白質保留率の高いβ−カ
ゼインを高度に配合した本発明の食品を用いることによ
って、速やかな蛋白質の補給が可能となる。
【0011】以下に本発明のβ−カゼインを高度に含有
した食品の効果を確認するための試験例を示す。蛋白質
の栄養評価方法としては、その構成アミノ酸組成から求
めるアミノ酸スコア及びケミカルスコア、動物の成長
(体重増加量)から求めるPER、窒素出納から求める
生物価並びにNPU等がある。このうち、アミノ酸スコ
ア及びケミカルスコアは、全卵や人乳蛋白質のアミノ酸
組成を理想的なアミノ酸組成として対象蛋白質のアミノ
酸組成と比較する方法で、その構成アミノ酸組成を測定
することで評価でき、非常に簡便であるが、理想的なア
ミノ酸組成が極めて暫定的な性質であり、対象となる蛋
白質の生物的利用率の差異に対しては考慮されていない
などの問題がある。従って、本発明者らはラットを用
い、その体重増加量から求めるPER(試験例1)、窒
素出納から求める生物価及びNPU(試験例2)及び飼
料中蛋白質レベルによる体重増加試験(試験例3)のよ
うな生物的利用率を考慮した方法により、β−カゼイン
の栄養価を評価した。
【0012】試験例1蛋白効率(PER)試験 (β−カゼインの調製)カゼインサブミセル溶液(β−
カゼインを全カゼイン中に35%重量含有)を、pH
3.5以下に調整し、次いで、その溶液を5℃以下にお
いてpH4.3に調整して、α−カゼインを凝固沈澱さ
せ、さらに限外ろ過による膜処理によって、α−カゼイ
ンを濃縮液側に、またβ−カゼインを透過液側にそれぞ
れ分画した。尚、α−カゼインには、αs−カゼインと
κ−カゼインが含まれる。また、透過液側に分画したβ
−カゼインをさらに膜処理し、β−カゼインが全カゼイ
ン中に85重量%及び50重量%含まれる高β−カゼイ
ン含有カゼインを調製した。尚、これらのβ−カゼイン
含量の測定は、電気泳動法(Urea−PAGE)によ
って行った。
【0013】(飼料の調製)ラットを用いた蛋白効率
(PER)試験により、これらの調製物の栄養価につい
て調べた。ラット飼料の組成は、β−カゼインが全カゼ
イン中に85重量%及び50重量%含まれる高β−カゼ
イン含有カゼイン並びに35重量%含まれる未分画物を
窒素源として、飼料中に窒素含量1.6重量%、蛋白質
として10重量%になるように調整した。飼料中の蛋白
質含量を10重量%に統一して調製した理由は、ラット
を用いて蛋白質の栄養価を測定する場合、ラットの週齢
と投与蛋白質量レベルが規定されており(「小動物を用
いる栄養実験」、p140;細谷憲政他編、第一出版社発
行、(1980))、成長期の4週齢であればその成長に
最低必要なレベル、蛋白質約10重量%で行うことが規
定されており、本試験例はそのレベルに従って、行った
ためである。また、脂肪源として精製大豆油、糖質源と
してαコーンスターチ、食物繊維源としてセルロース、
AIN−76組成によるミネラル混合物、ビタミン混合
物を混合し、飼料を調製した。
【0014】(PER試験)実験動物として、Wistar系
雄ラット(3週齢;日本クレア社より購入)を用い、5
日間の予備飼育後、各群5匹づつ平均体重が等しくなる
ように、全カゼイン当りβ−カゼイン85重量%含有食
群(以下、「β85群」と略す)、全カゼイン当りβ−
カゼイン50重量%含有食群(以下、「β50群」と略
す)及びβ−カゼイン35重量%含有食群(以下、「β
35群」と略す)の3群に分け、28日間、上記組成を
有する粉末飼料により本飼育を行った。本飼育期間中、
原則として毎日、飼料摂取量および体重を測定した。
尚、動物は、12時間毎の明暗、室温23±2℃、湿度
55±10%に空気調節された部屋で、1 匹づつ仕切ら
れたステンレス製ケージ中で飼育し、飼料、水は自由摂
取とした。PERの測定原理式は、下記の通りである。 PERの測定原理式 PER=体重増加量(g)/蛋白質摂取量(g) PERは、摂取蛋白質(g)あたりの体重増加量(g)
で、摂取蛋白質による体構成成分の生産効率を意味す
る。体組成に著しい変化がない限り、実質的な体蛋白質
の増加に対する効率として評価できる。そして、PER
は長期的な体重変化をみることができる特徴もある。得
られたPERの試験結果を下記表1に示す。
【0015】
【表1】 β85群 β50群 β35群 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− PER 3.68±0.13* 3.51±0.15* 3.33±0.10 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 平均値±標準偏差(n=5) *β35群との間に有意差あり(p<0.05)
【0016】(評価)上記表1に示されるように、β8
5群及びβ50群は、β35群と有意差が認められた。
PERは、一般的にその実測値から蛋白質の栄養価を判
断する基準として、3.5以上が極めて良質、3.5未満
から3.0以上が良質、3.0未満から2.0以上が普
通、2.0以下が劣質とされている。従って、この基準
から、β−カゼインが全カゼイン当り50重量%以上の
高β−カゼイン含有カゼインは、極めて良質な蛋白質で
あることが認められた。
【0017】試験例2生物価及び正味蛋白利用率(NPU)試験 高β−カゼイン含有カゼイン調製物及びこれを配合した
動物飼料は、試験例1において調製したものと同様のも
のを用いた。実験動物として、Wistar系雄ラット(3週
齢;日本クレア社より購入)を用い、1匹づつ仕切られ
たステンレス製ケージ中での7日間の予備飼育後、各群
5匹づつ平均体重が等しくなるように、β85群、β5
0群及びβ35群の3群に分け、プラスチック製代謝ケ
ージに移し、上記組成を有する粉末試験飼料により7日
間本飼育を行った。また、飼料中の蛋白質源の部分をα
コーンスターチで置き換えた無蛋白群を同時に設けた。
本飼育期間7日間の内、前半4日間を馴化期間とし、後
半3日間に採糞、採尿を行った。本飼育期間中、原則と
して毎日、飼料摂取量及び体重を測定した。尚、飼育条
件は試験例1のPER試験と同様の条件で行った。糞中
窒素含量は、糞を凍結乾燥、重量測定、全量粉砕後、1
g秤量し、ケルダール法にて測定した。また、尿中窒素
含量は、採尿時に防腐剤として2N硫酸1mlを添加し、
その尿を純水で30mlに定容後、2ml採取し、ケルダー
ル法にて測定した。
【0018】生物価及び正味蛋白利用率(NPU)は、
窒素出納による並列法によって求めた。尚、生物価及び
NPUの測定原理式は下記の通りである。 生物価及びNPUの測定原理式 生物価={[I−(F−F0)−(U−U0)]/[I−
(F−F0)]}×100 NPU={[I−(F−F0)−(U−U0)]/I}×
100 I:摂取窒素量、 F:糞窒素量、 U:尿窒素量, F0 :代謝性窒素量(無蛋白区糞窒素量×試験区飼料摂
取量/無蛋白区飼料摂取量) U0 :内因性窒素量(無蛋白区尿窒素量×試験区平均体
重/無蛋白区平均体重) 生物価は、蛋白質の吸収後の体内利用率を示す値で、体
内代謝とより直線的な関係をもつ栄養価として重要と考
えられている。また、NPUは、摂取蛋白質が体蛋白質
に保持される割合を示し、体構成蛋白質の維持及び増加
分の合計に対する摂取蛋白質の利用率として評価するこ
とが特徴である。本試験において得られた生物価及びN
PUを下記表2に示す。
【0019】
【表2】 生物価及びNPU試験結果 β85群 β50群 β35群 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 生物価 90.1±3.0* 87.2±1.4* 82.6±1.3 NPU 90.0±3.0* 87.0±1.5* 82.3±1.2 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 平均値±標準偏差(n=5) *β35群との間に有意差あり(p<0.05)
【0020】表2に示されるように、生物価では、β8
5群及びβ50群は、β35群と有意差が認められた。
生物価では、その実測値が85以上を示し、β−カゼイ
ンが全カゼイン当り50重量%以上の高β−カゼイン含
有カゼインは、高い栄養価を有することが認められた。
また、NPUでは、β85群及びβ50群は、β35群
と有意差が認められた。NPUでは、その実測値が85
以上を示し、β−カゼインが全カゼイン当り50重量%
以上の高β−カゼイン含有カゼインは、高い栄養価を有
することが認められた。
【0021】試験例3飼料中蛋白質レベルによる体重増加試験 PER、生物価及びNPU試験では、蛋白質の栄養価測
定法に基づき、また全カゼイン中のβ−カゼイン含量の
差を明確にするために、飼料中の蛋白質がラットの成長
に最低限必要な量の蛋白質レベルである10重量%に調
整した。しかしながら、蛋白質補給を目的としたときに
は、栄養組成物中に配合する蛋白質は、10重量%以上
配合することがさらに望ましいと考えられる。そこで、
蛋白質源として全カゼイン当りβ−カゼインを50重量
%含有したβ50群を用い、飼料中の蛋白質含量を1
0、15、20及び25重量%となるように段階的に調
整し、その蛋白質レベルと体重増加量に及ぼす影響につ
いて調べ、栄養組成物への蛋白質の最低配合レベルを検
討した。ラット飼料の組成は、β−カゼインが全カゼイ
ン中に50重量%含まれる高β−カゼイン含有カゼイン
を窒素源として飼料中に蛋白質として10、15、20
及び25重量%になるように調整した。また、脂肪源と
して精製大豆油、糖質源としてαコーンスターチ、食物
繊維源としてセルロース、AIN-76組成によるミネ
ラル混合物、ビタミン混合物を混合し、飼料を調製し
た。
【0022】実験動物として、Wistar系雄ラット(3週
齢;日本クレア社より購入)を用い、5日間の予備飼育
後、各群5匹づつ平均体重が等しくなるように、蛋白質
10重量%群(以下、「P10群」と略す)、蛋白質1
5重量%群(以下、「P15群」と略す)、蛋白質20
重量%群(以下、「P20群」と略す)及び蛋白質25
重量%群(以下、「P25群」と略す)の4群に分け、
上記組成を有する粉末飼料により本飼育を行い、28日
後に飼料摂取量及び体重を測定した。尚、動物は、12
時間毎の明暗、室温23±2℃、湿度55±10%に空
気調節された部屋で、1匹づつ仕切られたステンレス製
ケージ中で飼育し、飼料及び水は自由摂取とした。各蛋
白質レベルによる体重増加量を表3に示す。
【0023】
【表3】 飼料中蛋白質レベルによる体重増加量 P10群 P15群 P20群 P25群 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 初体重(g) 65.9±3.0 66.1±2.7 65.7±3.0 66.3±3.3 終体重(g) 195.4±5.5ab 202.8±8.1cd 240.3±7.7ac 248.5±10.1bd 体重増加量(g) 129.5±4.5ab 136.7±5.1cd 174.6±6.7ac 182.2±8.8bd 飼料摂取量(g) 361.2±20.1 370.6±15.2 382.8±23.2 388.3±25.1 −−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−− 平均値±標準偏差(n=5) a,b,c,d同一記号間に有意差あり(p<0.05)
【0024】上記表3に示されるように、体重増加量
は、摂取蛋白質レベルが高くなるに従い増加する傾向に
あり、P15群とP20群との間に有意な差が認められ
た。尚、飼料摂取量については、摂取蛋白質レベルが高
くなるに従い増加する傾向にあったが、各群間には有意
な差は認められなかった。以上の結果から、蛋白質レベ
ルは、15重量%と20重量%間で、その体重増加量に
差が認められたことから、飼料中の蛋白質レベルは20
重量%以上で良好な体重増加がみられると考えられた。
よって、栄養組成物への蛋白質の配合レベルは、20%
とすることがさらに望ましいと考えられる。
【0025】
【実施例】以下に本発明の実施例を示す。 実施例1 1)β−カゼインの調製 カゼインサブミセルを脱イオン水に溶解後、0.1N塩
酸溶液によりpHを3.5以下に調整し、液温を4℃に
冷却した後、0.01N水酸化ナトリウム溶液を添加し
てpHを4.4に調整し、α−カゼインの沈殿物を生成
させた。その後、冷却しながら、ポアサイズ0.1μm
の精密ろ過膜(中空糸膜)を用い、膜処理した。透過液
側にβ−カゼインを含む透過液を得た。さらに、濃縮側
の液にpH4.4、2℃の希塩酸を添加して透析膜によ
り膜処理し、その透過液も回収した。これらの透過液を
濃縮し、得られた濃縮液を0.1N水酸化ナトリウム溶
液でpHを6.7に中和した後、凍結乾燥により乾燥
し、高β−カゼイン含有カゼインを得た。この高β−カ
ゼイン含有カゼイン中のβ−カゼイン含有量は、電気泳
動法(Urea−PAGE)により測定したところ、β
−カゼインが全カゼイン中に85重量%含まれているこ
とが確認された。 2)経腸栄養剤の調製 この高β−カゼイン含有カゼイン2.4kg(β−カゼイ
ン2.04kg)を、温水30kgに溶解し、さらにデキス
トリン6.0kg、植物油脂1.5kg、及びビタミンとミネ
ラル成分0.2kg(ビタミンA、B1、B2、B6、B12
C、D、E、K、ナイアシン、パントテン酸、葉酸等及
びカルシウム、リン、マグネシウム、鉄、ナトリウム及
びカリウム)を混合して均質化した。得られた溶液を殺
菌し、常法により濃縮し、乾燥して、粉末経腸栄養剤1
0kgを得た。この経腸栄養剤は、固形換算で24重量%
の蛋白質を含み、この蛋白質中のβ−カゼイン量は、8
5重量%であった。
【0026】実施例2 上記実施例1中の1)で得られた高β−カゼイン含有カ
ゼイン150g(β−カゼイン127.5g)に、小麦
粉453g、重曹2g、食塩1g、ビタミン及びミネラ
ル成分2g(ビタミンA、B1、B2、B6、B12、C、
D、E、K、ナイアシン、パントテン酸、葉酸等及びカ
ルシウム、リン、マグネシウム、鉄、ナトリウム及びカ
リウム)を加えて混合した。別に、全卵180g、砂糖
200g及びバター12gを混合し、それに、前記の混
合物及び香料を少々加えて、再度よく混合した。この混
合物を延ばし、型抜きして、オーブントースター中で焼
き、学童に適した蛋白質が強化されたクッキー状の菓子
を得た。この菓子は、固形換算で約21重量%の蛋白質
を含み、その蛋白質中のβ−カゼイン量は、約60重量
%であった。
【0027】実施例3 上記実施例1の1)で得られた高β−カゼイン含有カゼ
イン140g(β−カゼイン119g)に、乳清蛋白質
濃縮物(WPC)50g、小麦粉330g、重曹2g、
食塩1g、ビタミン及びミネラル成分(ビタミンA、B
1、B2、B6、B12、C、D、E、K、ナイアシン、パ
ントテン酸、葉酸等及びカルシウム、リン、マグネシウ
ム、鉄、ナトリウム及びカリウム)2gを加えて混合し
た。別に、全卵200g、砂糖245g、バター20g
及び植物油脂10gを混合し、前記の混合物と香料を少
々加えて再度よく混合した。この混合物を延ばし、型に
入れオーブントースター中で焼き、スポーツ選手に適し
た蛋白質補給用食品を得た。この食品は、固形換算で約
21重量%の蛋白質を含み、その蛋白質中のβ−カゼイ
ンは約57重量%であった。
【0028】
【発明の効果】本発明の食品は、β−カゼインを高度に
含有しているので、高い蛋白質利用効率、即ち摂取後の
高い体内蛋白質保留率を有し、しかも、乳独特のおいし
さも有している。従って、従来の病態栄養食としての経
腸栄養剤と比較して、優れた栄養改善効果を有し、しか
も風味も優れているので容易に摂取することができる。
また、良質の蛋白質を多く摂取することが望まれる学童
に対しては、その発育に大いに寄与することができる。
さらに、栄養分の速やかな補給とともに、補給しても直
ちに体外に排泄されないような、体内蛋白質保留率の高
い栄養成分を摂取することが望まれるスポーツ等の激し
い運動時の食品として適している。このように本発明の
β−カゼインを高度に含有する食品は、栄養状態の改
善、良好な発育及び速やかな栄養分補給が可能な栄養価
の高い食品である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 井戸田 正 埼玉県川越市大字古谷上6083−7川越グ リンパークL1−207 (56)参考文献 特開 昭54−67055(JP,A) 特開 平5−153916(JP,A) 特開 平3−240437(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/305 A61K 38/17 JICSTファイル(JOIS) JAFICファイル(JOIS)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 食品全体の重量に基づく蛋白質量が固形
    換算で20重量%以上であり、食品中に含まれる蛋白質
    全体の重量に基づくβ−カゼイン量が50重量%である
    ことを特徴とするβ−カゼインを高度に含有し、蛋白
    質、糖質、脂質、ビタミン及びミネラルを含む、蛋白質
    補給用食品。
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