JP3246973B2 - 攪拌ミルを有する粉砕装置 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】 本発明は、粉体の湿式微粉砕
又は顔料等の微粉末をさらに微細に分散するために使用
される粉砕装置及び該粉砕装置に使用される攪拌ミルに
関する。特に本発明は、容器と該容器内に回転自在に配
置された攪拌軸との間の粉砕室に粉砕媒体が充填され、
被粉砕物スラリーを粉砕室に軸方向に通しながら攪拌軸
を回転させて粉砕媒体を攪拌し、被粉砕物を粉砕又は分
散させるようになった形式の攪拌ミル又は該攪拌ミルを
使用する粉砕装置に関する。

【０００２】

【従来技術】 従来、この用途に使用されている攪拌
ミルは、円筒形の容器内に軸方向に攪拌軸を配置し、該
攪拌軸に攪拌ピンを放射状に取り付けた構造を有する。
スラリー導入口は容器の軸方向一端部に、スラリー取り
出し口は容器の軸方向他端部に設けられる。容器にガラ
スビーズ等の粉砕媒体を充填し、スラリー導入口からス
ラリーを導入しながら攪拌軸により攪拌ピンを回転さ
せ、スラリーを粉砕媒体の間に通すことにより所望の微
粉砕及び微細分散を行う。スラリーは容器の軸方向に流
れ、スラリー取り出し口から取り出される。スラリー取
り出し口には、粉砕媒体をスラリーから分離するスクリ
ーン等の分離手段が設けられる。

【０００３】この従来の攪拌ミルにおいては、被粉砕物
スラリーを１回通すだけで十分な粉砕又は分散の効果が
達成できるように、粉砕室の長さと内径の比を２．５な
いし３．５に設定していた。しかし、従来の構造では、
作動中に、粉砕媒体が遠心力を受けて半径方向外側に集
中する傾向を生じる。このため、容器の半径方向内側で
は粉砕媒体の密度が疎になる空洞部を生じ、スラリーが
この空洞部を通過するいわゆるバイパス現象を生じて、
粉砕ないしは分散効果を低減させる。また、粉砕室の内
部では、スラリー導入口からスラリー取り出し口に向け
ての流れが生じるため、粉砕媒体が流れの圧力によりス
ラリー取り出し口側に集中する傾向があり、粉砕室を有
効に利用することができず、かつ粉砕媒体が圧縮されて
磨耗が大きくなる、という問題がある。さらに、粉砕の
ための動力は、ほとんどが攪拌熱として消費されるの
で、スラリーの温度上昇が大きく、温度制御が困難にな
る、という問題もある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】 本発明は、従来の攪
拌ミルにおいて、粉砕媒体が粉砕室の一部に集中する傾
向を有する、という問題及び温度制御が困難である、と
いう問題を解決することを課題とする。

【０００５】

【課題を解決するための手段】 上記課題を解決するた
め、本発明は、被粉砕物スラリーを循環して粉砕室に通
すことができる粉砕装置を提供する。また、本発明は、
このような循環式粉砕装置に適しており、かつ粉砕室内
で粉砕媒体が循環させられ、一部に集中することがない
ようになった攪拌ミルを提供する。本発明による攪拌ミ
ルは、円筒状の容器と、該容器内に同軸かつ回転自在に
配置され周面に攪拌部材を設けた中空の攪拌軸とを備え
る。攪拌軸の内部は実質的に多の部品が存在しない空洞
とされる。容器には、軸方向一端部に隣接してスラリー
入口が、他端部に隣接してスラリー出口がそれぞれ形成
される。容器のスラリー出口に隣接する中空の攪拌軸の
端部には、該空洞への媒体循環用入口が、スラリー入口
に隣接する中空の攪拌軸の端部には該空洞からの媒体循
環用出口がそれぞれ形成される。媒体循環用出口は、攪
拌軸の周面に周方向に間隔をもって形成した複数の開口
により形成され、攪拌軸の周面に形成した複数の開口
は、攪拌軸の回転に伴って攪拌軸内の媒体を粉砕室に排
出するように、周方向側縁面が傾斜している。スラリー
出口を囲んでスクリーンが設けられ、容器内面と攪拌軸
の外面との間に形成される粉砕室に充填された粉砕媒体
が、スラリーの循環圧力により容器の軸方向に移動し攪
拌軸の媒体循環用入口から攪拌軸内に入り該攪拌軸の媒
体循環用出口から粉砕室内に入る循環径路により容器内
で循環する。

【０００６】本発明による粉砕装置は、上述した構成の
攪拌ミルを使用するものであり、攪拌ミルの入口にスラ
リー給送ポンプの吐出口が接続され、スラリー給送ポン
プの吸入口と攪拌ミルの出口との間にスラリー攪拌タン
クが接続される。そして、被粉砕物スラリーは、タンク
からポンプにより吸引されて攪拌ミルに送られ、攪拌ミ
ルから攪拌タンクに循環させられる。

【０００７】

【作用】 本発明による攪拌ミルにおいては、被粉砕物
スラリーは、容器に形成したスラリー入口から粉砕室に
導入される。粉砕室に充填された粉砕媒体はスラリーと
ともに攪拌軸により攪拌され、スラリー中の被粉砕物は
粉砕媒体間の摩擦により微細粒子に粉砕される。粉砕媒
体は、スラリーの圧力により出口方向に押されるが、容
器出口付近に達した粉砕媒体は、中空攪拌軸の端部に形
成された媒体循環用入口から攪拌軸内に入り、容器入口
付近において媒体循環用出口から粉砕室に戻される。こ
のように、粉砕媒体が攪拌ミル内で循環するため、粉砕
媒体が粉砕室の一部に集中することが防止され、粉砕室
の全体を有効に利用した粉砕作用が達成できる。

【０００８】このような攪拌ミルを使用した本発明の循
環式粉砕装置においては、攪拌ミルを出た被粉砕物媒体
は、タンクに戻され、スラリー給送ポンプにより再び攪
拌ミルに給送される。この循環経路において、冷却装置
を設けるなどの手段により、スラリーの温度制御をする
ことは容易である。

【０００９】

【実施例】 以下、本発明の一実施例を図について説明
する。図１を参照すると、本発明を実施した攪拌ミル１
は、円筒状の容器２を有し、該容器２の周囲には、冷却
用ジャケット３が形成されている。冷却用ジャケット３
には、冷却水入口３ａ冷却水出口３ｂが形成され、該ジ
ャケット３に冷却水が循環される。容器２は、円筒の両
端部が端板２ａ、２ｂにより閉じられ、該端板２ａ、２
ｂ間にわたって円筒壁２ｃが設けられる。容器２内に
は、攪拌軸４が配置される。この攪拌軸４は、一端が開
口し、他端が閉じたコップ形状であり、閉じた方の端部
から軸方向外向きに駆動軸５が延びている。攪拌軸４
は、容器２内において該容器２と同軸に配置され、駆動
軸５が容器２の端壁２ａを貫通して容器２の外部に突出
している。

【００１０】容器２には、攪拌軸４の閉じた方の端部に
隣接する端板２ａに被粉砕物スラリー導入用のスラリー
入口６が形成され、反対側の端板２ｂの中央にスラリー
出口７が形成されている。容器２内には、スラリー出口
７を囲んで円筒状のスクリーン８が設けられる。このス
クリーン８は、端部が攪拌軸４の開口した端部から攪拌
軸４の内部に挿入されている。スクリーン８と攪拌軸４
の端部開口との間には粉砕媒体が流通できるだけの間隙
が形成される。この間隙が媒体循環用入口１２を構成す
る。攪拌軸４には、閉じた方の端部に隣接する位置に、
複数個の粉砕媒体循環用出口１３が周方向に間隔をもっ
て形成されている。

【００１１】攪拌軸４の外周には、放射状に突出する多
数の攪拌部材４ａが設けられる。攪拌軸４は、駆動軸５
に設けたプーリー９をベルト１０を介してモーターによ
り駆動することにより回転駆動される。容器２の円筒壁
２ｃの内面と攪拌軸４の外面との間に環状の粉砕室１１
が形成される。この粉砕室１１にはガラスビーズのよう
な粉砕媒体１５が充填されている。粉砕室１１は、軸方
向長さと内径の比が1.7 より大きくないように寸法を定
めることが好ましい。また、スクリーン８の外径と粉砕
室１１の内径の比は0.3より大きく設定することが好ま
しい。

【００１２】攪拌ミル１の他にスラリータンク１９が設
けられる。このスラリータンク１９には、モーター１６
により駆動される攪拌羽根１７が配置されている。攪拌
ミル１の容器２に設けたスラリー出口７がこのスラリー
タンク１９に接続される。さらにスラリータンク１９の
下端部に設けたスラリー出口１９ａは、スラリー給送ポ
ンプ１８の吸入口１８ａに接続される。また、スラリー
給送ポンプ１８の吐出口１８ｂは、攪拌ミル１の容器２
に設けたスラリー入口６に接続される。

【００１３】図３を参照すると、攪拌軸４の媒体循環用
出口１３は、矢印Ａで示す攪拌軸４の回転方向に対し
て、半径方向外側に向かって回転方向とは反対向きに傾
斜して形成される。この傾斜により、攪拌軸が矢印Ａ方
向に回転したとき、攪拌軸４の内部にある粉砕媒体１５
がこの媒体循環用出口１３から粉砕室１１に吸い出され
るような作用を生じる。

【００１４】本発明の図示した実施例の作動を説明す
る。スラリー給送ポンプ１８を作動させて被粉砕物スラ
リーを攪拌ミル１の粉砕室１１に供給しながら攪拌軸４
を回転駆動する。粉砕室１１内の粉砕媒体１５が攪拌軸
４の攪拌部材４ａにより攪拌され、その間を被粉砕物ス
ラリーが流通することにより、被粉砕物の微粉砕が行わ
れる。攪拌ミル１の粉砕室１１を通過した被粉砕物スラ
リーは、スラリー出口７においてスクリーン８により粉
砕媒体１５から分離されて攪拌タンク１９に送られる。
この攪拌タンク１９では、モーター１６により駆動され
る攪拌羽根１７によってスラリーの攪拌が行われる。

【００１５】攪拌タンク１９からのスラリーは、給送ポ
ンプ１８により再び攪拌ミル１に送られて、さらに微粉
砕が行われる。このようにして、連続循環による被粉砕
物の微粉砕が達成される。攪拌ミル１には被粉砕物スラ
リーを給送ポンプ１８により送り込むので、その送り込
みの圧力により、粉砕媒体１５がスラリーとともに出口
７側に押しやられる傾向を生じる。この出口７側に押し
やられた粉砕媒体１５は、媒体循環用入口１２から攪拌
軸４の内部に入る。そして、攪拌軸４内部の粉砕媒体１
５は、循環用出口１３からスラリー入口側において粉砕
室１１に戻される。このようにして粉砕媒体１５が粉砕
室１１から攪拌軸４内を経て再び粉砕室に戻る、という
循環を行うので、粉砕媒体１５が粉砕室１１の出口付近
に集中する、という問題が解消できる。なお、図４に示
すように、攪拌ミル１のスラリー出口７を切り換え弁２
０を介して製品タンク２１に接続することにより、粉砕
の終了したスラリーを該タンク２１に取り出すことがで
きる。

【００１６】

【効果】 以上述べたように、本発明においては、粉砕
室内の粉砕媒体が攪拌軸の内部を通って循環するように
攪拌ミルを構成したので、粉砕媒体が粉砕室の出口近傍
に集中することがなく、圧力損失が減少し、かつ粉砕室
を有効に使用して粉砕を行うことが可能になる。また、
攪拌タンク及び給送ポンプを含む循環経路に攪拌ミルを
接続したので、連続循環式の微粉砕を行うことが可能に
なり、粉砕の程度を高めることができる。

【図面の簡単な説明】

【図１】 本発明の一実施例を示す粉砕装置の概略図で
ある。

【図２】 図１の線Ｉ−Ｉにおける断面図である。

【図３】 本発明の実施例に使用される攪拌軸の拡大断
面図である。

【図４】 本発明の実施例の全体を概略的に示す図であ
る。

【符号の説明】

１・・・・攪拌ミル、２・・・・容器、３・・・・冷却ジャケット、
４・・・・攪拌軸、５・・・・駆動軸、６・・・・スラリー入口、７
・・・・スラリー出口、８・・・・スクリーン、１１・・・・粉砕
室、１２・・・・媒体循環用入口、１３・・・・媒体循環よう出
口、１８・・・・給送ポンプ、１９・・・・攪拌タンク。

Claims (8)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 内部に粉砕媒体が充填され前記粉砕媒体
   を攪拌しながら被粉砕物スラリーを入口から出口に流通
   させて粉砕を行う攪拌ミルと、前記攪拌ミルの前記入口
   に吐出口が接続されたスラリー給送ポンプと、前記スラ
   リー給送ポンプの吸入口及び前記攪拌ミルの前記出口に
   接続されたスラリー攪拌タンクとからなり、前記被粉砕
   物スラリーを前記タンクから前記ポンプにより吸引して
   前記攪拌ミルに送り、前記攪拌ミルから前記攪拌タンク
   に循環させるようになった、攪拌ミルを有する粉砕装置
   において、前記攪拌ミルは、円筒状の容器と、前記容器
   内に同軸かつ回転自在に配置され周面に攪拌部材を設け
   た中空の攪拌軸とを備えており、前記攪拌軸の内部は実
   質的に他の部品が存在しない空洞とされ、前記攪拌ミル
   の前記スラリー出口に隣接する前記中空の攪拌軸の端部
   には前記空洞への媒体循環用入口が、前記攪拌ミルの前
   記スラリー入口に隣接する前記中空の攪拌軸の端部には
   前記空洞からの媒体循環用出口がそれぞれ形成され、前
   記媒体循環用出口は、前記攪拌軸の周面に周方向に間隔
   をもって形成した複数の開口により形成され、前記攪拌
   軸の周面に形成した複数の前記開口は、前記攪拌軸の回
   転に伴って前記攪拌軸内の媒体を前記粉砕室に排出する
   ように、周方向側縁面が傾斜しており、前記攪拌ミルの
   前記スラリー出口を囲んでスクリーンが設けられ、前記
   容器内面と前記攪拌軸の外面との間に形成される粉砕室
   に充填された粉砕媒体は、前記スラリーの循環圧力によ
   り前記容器の軸方向に移動し前記攪拌ミルの前記スラリ
   ー出口に隣接する前記攪拌軸の媒体循環用入口から前記
   攪拌軸内に入り空洞となった攪拌軸内部を通って前記攪
   拌軸の媒体循環用出口から前記粉砕室内に入る循環径路
   により前記攪拌ミル内で循環するようになったことを特
   徴とする、攪拌ミルを有する粉砕装置。
2. 【請求項２】 円筒状の容器と、前記容器内に同軸かつ
   回転自在に配置され周面に攪拌部材を設けた中空の攪拌
   軸とを備え、前記攪拌軸の内部は実質的に他の部品が存
   在しない空洞とされ、前記容器には、軸方向一端部に隣
   接してスラリー入口が、他端部に隣接してスラリー出口
   がそれぞれ形成されており、前記容器の前記スラリー出
   口に隣接する前記中空の攪拌軸の端部には前記空洞への
   媒体循環用入口が、前記スラリー入口に隣接する前記中
   空の攪拌軸の端部には前記空洞からの媒体循環用出口が
   それぞれ形成され、前記媒体循環用出口は、前記攪拌軸
   の周面に周方向に間隔をもって形成した複数の開口によ
   り形成され、前記攪拌軸の周面に形成した複数の前記開
   口は、前記攪拌軸の回転に伴って前記攪拌軸内の媒体を
   前記粉砕室に排出するように、周方向側縁面が傾斜して
   おり、前記スラリー出口を囲んでスクリーンが設けら
   れ、前記容器内面と前記攪拌軸の外面との間に形成され
   る粉砕室に充填された粉砕媒体は前記スラリーの循環圧
   力により前記容器の軸方向に移動し前記攪拌ミルの前記
   スラリー出口に隣接する前記攪拌軸の媒体循環用入口か
   ら前記攪拌軸内に入り空洞となった攪拌軸内部を通って
   前記攪拌軸の媒体循環用出口から前記粉砕室内に入る循
   環径路により前記容器内で循環するようになったことを
   特徴とする、攪拌ミル。
3. 【請求項３】 請求項１に記載した粉砕装置又は請求項
   ２に記載した攪拌ミルにおいて、前記媒体循環用入口
   は、前記攪拌軸の軸方向端部の開口により形成されたこ
   とを特徴とする、粉砕装置又は攪拌ミル。
4. 【請求項４】 請求項３に記載した粉砕装置又は攪拌ミ
   ルにおいて、前記スクリーンは前記攪拌軸の前記軸方向
   端部の開口に隣接して配置されたことを特徴とする、粉
   砕装置又は攪拌ミル。
5. 【請求項５】 請求項１に記載した粉砕装置又は請求項
   ２に記載した攪拌ミル若しくは請求項３ないし請求項４
   のいずれか１項に記載した粉砕装置又は攪拌ミルにおい
   て、前記粉砕室の軸方向長さと内径の比が１．７より大
   きくないことを特徴とする、粉砕装置又は攪拌ミル。
6. 【請求項６】 請求項１に記載した粉砕装置又は請求項
   ２に記載した攪拌ミル若しくは請求項３ないし請求項５
   のいずれか１項に記載した粉砕装置又は攪拌ミルにおい
   て、前記スクリーンは円筒形であり、前記スクリーンの
   外径と前記粉砕室の内径の比が０．３より大きい寸法と
   されたことを特徴とする、粉砕装置又は攪拌ミル。
7. 【請求項７】 請求項４に記載した粉砕装置又は攪拌ミ
   ルにおいて、前記スクリーンは、円筒状のスクリーンで
   あり、該円筒状スクリーンの一端部が前記攪拌軸の前記
   軸方向端部の開口に挿入されて配置されたことを特徴と
   する、粉砕装置又は攪拌ミル。
8. 【請求項８】 請求項１に記載した粉砕装置又は請求項
   ２に記載した攪拌ミル若しくは請求項３ないし請求項７
   のいずれか１項に記載した粉砕装置又は攪拌ミルにおい
   て、前記攪拌軸の周面には放射状に突出する攪拌部材が
   設けられたことを特徴とする、粉砕装置又は攪拌ミル。