JP3245779B2 - 窒化シリコン膜の成膜方法 - Google Patents

窒化シリコン膜の成膜方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、プラズマCVD装置に
よる窒化シリコン膜の成膜方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】窒化シリコン(Si N)膜は、薄膜トラ
ンジスタや薄膜ダイオード等の薄膜素子の絶縁膜に用い
られており、この窒化シリコン膜は、一般に、プラズマ
CVD装置によって成膜されている。
【0003】この窒化シリコン膜のプラズマCVD装置
による成膜は、従来、プロセスガスとしてモノシラン
(Si H4 )とアンモニア(NH3 )と窒素(N2 )を
用い、これらの流量比を、Si H4 :NH3 :N2
1:1:18に制御して行なわれている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記従来の方
法で成膜された窒化シリコン膜を絶縁膜とする薄膜素子
は、50℃を越える比較的高い温度にさらされると、し
きい値電圧が大きくシフトしてしまう。
【0005】このため、従来の方法で成膜された窒化シ
リコン膜を用いる薄膜素子は、この薄膜素子を使用する
電子機器(例えば薄膜素子を能動素子とするアクティブ
マトリックス液晶表示装置等)の使用中の温度変化によ
って、動作特性が大きく変化してしまうという問題をも
っていた。
【0006】本発明は、比較的高い温度でも薄膜素子の
しきい値電圧のシフト量を小さくしてその信頼性を向上
させるために、このような条件を満足する窒化シリコン
膜が得られる成膜方法を提供することを目的としたもの
である。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、プラズマCV
D装置による窒化シリコン膜の成膜において、前記窒化
シリコン膜を成膜する基板温度を250゜Cとし、プロ
セスガスとしてモノシランとアンモニアと窒素のみを用
い、モノシランに対するアンモニアの流量比を2以上1
0以下、モノシランに対する窒素の流量比を13以上1
7以下に制御して成膜することを特徴とするものであ
る。
【0008】
【作用】このようなガス流量比で窒化シリコン膜を成膜
すると、シリコン原子および窒素原子の未結合手に水素
原子(H)が結合し、未結合手が少なくなった窒化シリ
コンの膜が得られる。このため、この窒化シリコン膜を
絶縁膜とする薄膜素子は、温度が上昇したときに前記窒
化シリコンの未結合手にトラップされる電荷が少なく、
したがって、比較的高い温度にさらされても、しきい値
電圧のシフト量は小さい。
【0009】
【実施例】以下、本発明の実施例を説明する。
【0010】この実施例では、プラズマCVD装置によ
り、モノシラン(Si H4 )とアンモニア(NH3 )と
窒素(N2 )をプロセスガスとして、次の成膜条件で窒
化シリコン膜を成膜した。
【0011】成膜温度(窒化シリコン膜を成膜する基板
の温度);250℃ プロセスガス流量比;Si H4 :NH3 :N2 =1:1
0:13 圧力;0.5Torr RF周波数;13.56MHz RFパワー密度;84mW/cm2 上記成膜条件は、従来の成膜条件に対してプロセスガス
の流量比を変えたもので(従来はSi H4 :NH3 :N
2 =1:1:18)、このような成膜条件で窒化シリコ
ン膜を成膜すると、シリコン原子および窒素原子のそれ
ぞれの未結合手が少なくなった窒化シリコンの膜が得ら
れる。
【0012】これは、プロセスガスの流量比を上記のよ
うにSi H4 :NH3 :N2 =1:10:13とする
と、プロセスガス中の水素原子量が多くなるため、シリ
コン原子および窒素原子の未結合手に水素原子(H)が
結合して、シリコン原子および窒素原子のそれぞれの未
結合手がなくなるためである。
【0013】そして、窒化シリコン膜は、例えばa−S
i :H(水素化アモルファスシリコン)半導体を用いた
薄膜トランジスタのゲート絶縁膜等、各種薄膜素子の絶
縁膜に用いられるが、上記成膜条件で成膜した窒化シリ
コン膜を絶縁膜とする薄膜素子は、温度が上昇したとき
に前記窒化シリコンの未結合手にトラップされる電荷が
少なく、したがって、比較的高い温度にさらされても、
しきい値電圧のシフト量は小さい。
【0014】この効果は、プロセスガス流量比を種々の
値に選んで窒化シリコン膜を成膜した複数の被検体を製
作し、これら被検体をBT処理(Bias Temperature t
reatment)して、各被検体のBT処理温度に対する容量
−電圧特性のしきい値電圧Vthのシフト量ΔVthを調べ
た結果からも確認された。
【0015】図2および図3は上記被検体を示してい
る。この被検体は、ガラス基板1の上に、下部電極2
と、窒化シリコン膜3と、a−Si :Hからなるi型半
導体層4およびn型半導体層5と、上部電極6とを積層
したもので、下部電極2上の各積層膜3,4,5,6の
一部には、下部電極2に電圧を印加するための開口7を
設けてある。なお、上記窒化シリコン膜3は、平行平板
型プラズマCVD装置によって400nmの膜厚に成膜
した。
【0016】上記被検体のBT処理温度に対するしきい
値電圧のシフト量は、次のようにして求めた。
【0017】まず、被検体を無バイアス状態で200℃
に約10分間加熱して初期化処理し、この被検体の容量
−電圧特性を測定した。次に、初期化処理した被検体を
所定のBT処理温度に加熱して下部電極2と上部電極6
との間にバイアス電圧を約10分間印加するBT処理を
行ない、BT処理後の容量−電圧特性を測定した。この
BT処理は、負のバイアス電圧を印加する−BT処理
と、正のバイアス電圧を印加する+BT処理との両方の
処理を行ない、両方のBT処理後の容量−電圧特性をそ
れぞれ測定した。
【0018】なお、ここでは、BT処理温度を80℃と
し、また、上記−BT処理は、下部電極2に上部電極6
に対して−0.875MV/cmの電界を印加して行な
い、+BT処理は、下部電極2に上部電極6に対して+
0.875MV/cmの電界を印加して行なった。
【0019】次に、上記被検体の初期化処理後の容量−
電圧特性(以下初期特性という)と、−BT処理後およ
び+BT処理後の容量−電圧特性とから、初期特性に対
する−BT処理後のしきい値電圧のシフト量と、上記初
期特性に対する+BT処理後のしきい値電圧のシフト量
とを求め、これらシフト量から、BT処理温度に対する
しきい値電圧(Vth)のシフト量ΔVthを算出した。
【0020】なお、上記被検体のBT処理温度に対する
しきい値電圧のシフト量ΔVthは、上記−BT処理を行
なったときのシフト量ΔVth(-) と、+BT処理を行な
ったときのシフト量ΔVth(+) との和であり、ΔVth=
ΔVth(-) +ΔVth(+) として求められる。
【0021】図1は、上記のようにして各被検体のしき
い値電圧シフト量ΔVthを調べ、それに基づいて、窒化
シリコン膜を成膜する際のプロセスガス流量比と、上記
被検体のしきい値電圧シフト量ΔVthとの関係を求めた
結果を示しており、図1(a)は、Si H4 に対するN
2 の流量比(N2 /Si H4 )は一定(N2 /Si H4
=13またはN2 /Si H4 =17)とし、Si H4
対するNH3 の流量比(NH3 /Si H4 )を変化させ
たときのしきい値電圧シフト量ΔVthの変化を示してい
る。
【0022】また、図1(b)は、Si H4 に対するN
3 の流量比(NH3 /Si H4 )は一定(NH3 /S
i H4 =2またはNH3 /Si H4 =10)とし、Si
4 に対するN2 の流量比(N2 /Si H4 )を変化さ
せたときのしきい値電圧シフト量ΔVthの変化を示して
いる。
【0023】図1(a)から分かるように、N2 /Si
4 =13〜17の範囲では、SiH4 に対するNH3
の流量比(NH3 /Si H4 )が2以上であれば、上記
被検体のしきい値電圧シフト量ΔVthは10V以下であ
り、NH3 の流量比を大きくするほど上記しきい値電圧
シフト量ΔVthが小さくなる。ただし、NH3 /SiH
4 の値を15以上にすると、成膜された窒化シリコン膜
の膜質が脆弱になってしまう。したがって、窒化シリコ
ン膜の膜質およびその均一性を考慮すると、NH3 /S
i H4 の値は10以下が望ましい。
【0024】また、図1(b)から分かるように、NH
3 /Si H4 =2〜10の範囲では、Si H4 に対する
2 の流量比(N2 /Si H4 )が13〜17の範囲で
あれば、上記被検体のしきい値電圧シフト量ΔVthは1
0V以下であり、N2 /SiH4 の値が13より小さい
か、あるいは17を越えると、上記しきい値電圧シフト
量ΔVthは急激に大きくなる。
【0025】したがって、SiH4 に対するNH3 の流
量比(NH3 /SiH4 )が2以上10以下で、かつS
iH4 に対するN2 の流量比(N2 /SiH4 )が13
以上7以下のプロセスガス流量比で窒化シリコン膜を
成膜すれば、窒化シリコン膜を絶縁膜とする薄膜素子の
しきい値電圧シフト量ΔVthを10V以下に抑えること
ができる。
【0026】そして、上記実施例では、プロセスガス流
量比をSi H4 :NH3 :N2 =1:10:13(NH
3 /Si H4 =10,N2 /Si H4 =13)としてお
り、この実施例の成膜条件で窒化シリコン膜を成膜した
被検体のしきい値電圧シフト量ΔVthは、図1(a),
(b)からも分かるように80℃でBT処理した場合で
も約5と極く小さいから、上記実施例の成膜条件で窒化
シリコン膜を成膜すれば、比較的高い温度にさらされて
もしきい値電圧のシフト量が小さい、信頼性の高い薄膜
素子を得ることができる。
【0027】なお、従来のプロセスガス流量比(Si H
4 :NH3 :N2 =1:1:18)で窒化シリコン膜を
成膜した被検体のしきい値電圧シフト量ΔVthは、80
℃でBT処理した場合で約20V以上と非常に大きく、
したがって、上記実施例の成膜条件で窒化シリコン膜を
成膜した薄膜素子のしきい値電圧シフト量ΔVthは、従
来の成膜方法で窒化シリコン膜を成膜した薄膜素子に比
べて格段に小さい。
【0028】なお、上記実施例では、プロセスガス流量
比をSiH4 :NH3 :N2 =1:10:13とした
が、プロセスガス流量比は、SiH4 に対するNH3
流量比(NH3 /SiH4 )が2以上10以下で、か
つ、SiH4 に対するN2 の流量比(N3 /SiH4
が13以上7以下であればよく、この範囲であれば、
薄膜素子のしきい値電圧シフト量ΔVthを、従来の成膜
方法で窒化シリコン膜を成膜した薄膜素子の1/2以下
に小さくすることができる。
【0029】
【発明の効果】本発明の成膜方法によれば、シリコン原
子および窒素原子のそれぞれの未結合手が少なくなった
窒化シリコンの膜が得られるため、比較的高い温度にさ
らされてもしきい値電圧のシフト量が小さい、信頼性の
高い薄膜素子を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】NH3 /Si H4 流量比およびN2 /Si H4
流量比としきい値電圧シフト量との関係を示す図。
【図2】BT処理温度に対するしきい値電圧シフト量を
調べるのに用いた被検体の平面図。
【図3】図2の III−III 線に沿う断面図。
【符号の説明】
1…ガラス基板、2…下部電極、3…窒化シリコン膜、
4…i型半導体層、5…n型半導体層、6…上部電極、
7…開口。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】プラズマCVD装置による窒化シリコン膜
    の成膜において、前記窒化シリコン膜を成膜する基板温
    度を250゜Cとし、プロセスガスとしてモノシランと
    アンモニアと窒素のみを用い、モノシランに対するアン
    モニアの流量比を2以上10以下、モノシランに対する
    窒素の流量比を13以上17以下に制御して成膜するこ
    とを特徴とする窒化シリコン膜の成膜方法。
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