JP3242242B2 - マイクロ波誘電体磁器組成物 - Google Patents

マイクロ波誘電体磁器組成物

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JP3242242B2 JP31430793A JP31430793A JP3242242B2 JP 3242242 B2 JP3242242 B2 JP 3242242B2 JP 31430793 A JP31430793 A JP 31430793A JP 31430793 A JP31430793 A JP 31430793A JP 3242242 B2 JP3242242 B2 JP 3242242B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、マイクロ波誘電体磁器
組成物に関し、更に詳しく言えば、無負荷(以下、「Q
u」という。)及び共振周波数の温度係数(以下、「τ
f 」という。)を実用的な特性範囲で維持しつつ、高い
比誘電率(以下、「εr 」という。)を備えるマイクロ
波誘電体磁器組成物に関する。本発明は、マイクロ波領
域における誘電体共振器(特に、基地局用共振器)、マ
イクロ波集積回路基板、各種マイクロ波回路のインピー
ダンス整合等に利用される。
【0002】
【従来の技術】マイクロ波誘電体磁器組成物(以下、
「磁器組成物」という。)は、使用周波数が高周波とな
るに従って誘電損失が大きくなる傾向にあるので、マイ
クロ波領域でQuの大きな磁器組成物が望まれている。
また、この磁器組成物には、マイクロ波領域に適した高
いεr をもち、且つ、τf が小さいことが要求されてい
る。特に、近年では、上記基地局用共振器の小型化のた
め、高いεr (45程度)を有するものが求められてい
る。
【0003】そして、これらの要求を満足させる為、
(1─x)La(Mg1/2 Ti1/2)O3 −xCaTi
3 で示される組成を有する磁器組成物(特開昭61−
128411号公報)、所定のモル比で配合されたM
gO、CaO、TiO2 、Nd2 3 、ZnO及びPb
Oからなる6成分系の磁器組成物(特開昭61−291
456号公報)、所定のモル比で配合されたCaTi
3 、La2 Ti2 7 、Nd(Mg1/2 Ti1/2 )O
3 及びMgTiO3 ・ZnO混合物を主成分とする磁器
組成物(特開昭62−283862号公報、特開昭62
−283863号公報)等が提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、現在に
おいては、上記磁器組成物の使用範囲の拡大等に伴い、
上記〜と同様に上記各要求性能(Qu、εr 等)に
優れた他の磁器組成物の出現が望まれている。また、高
品質の磁器組成物を安定的に得るには、その製造工程の
一つである焼成工程の焼成温度がある程度ばらついて
も、製造される各組成物間の性能に大きなばらつきを生
じさせない(即ち、磁器組成物の「焼成温度の変化に伴
う性能のばらつき」が小さい)ことが必要となる。
【0005】本発明は、上記問題点を解決するものであ
り、上記各要求性能を満足すると共に、それらの要求性
能を安定的に発揮できる磁器組成物を提供することを目
的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の磁器組成物は、
組成式x[yMgTiO−(1−y)CaTiO
−(1−x)(Nd・2TiO)〔但し、0.
85≦x≦0.95、0.55≦y≦0.65〕で示さ
、且つ測定周波数3.0〜4.2GHzにおける比誘
電率が43.1以上であることを特徴とする。
【0007】上記の如く「x」の範囲を定めるのは、以
下の理由による。即ち、xが0.85未満の場合には、
高いQuを得られず、xが0.95を越える場合には、
τfが許容範囲外の大きな正の値になり好ましくない。
また、xが上記範囲内の場合には、Qu、εr 及びτf
の値の上記「性能のばらつき」が小さいからである。特
に、xが0.9程度の場合に、高いQuが得られると共
に、上記「性能のばらつき」も小さく好ましい。また、
上記の如く「y」の値を定めるのは、yが0.55未満
の場合には、Quの値が小さくなると共に、τf が許容
範囲外の大きな正の値をとり、yが0.65を越えると
εr の値が小さくなるからである。
【0008】
【実施例】以下、実施例により本発明を具体的に説明す
る。 (1)試験片の作製 本実施例の各試験片は、組成式x[yMgTiO3
(1−y)CaTiO3]−(1−x)(Nd2 3
2TiO2 )で表される磁器組成物(但し、各試験例毎
に、表1〜5に示すx、y及び焼成温度の少なくとも1
つが異なる。)となる様に、所定の調合粉末を用いて作
製したものである。
【0009】
【表1】
【0010】
【表2】
【0011】
【表3】
【0012】
【表4】
【0013】
【表5】
【0014】これらの調合粉末を構成する出発原料とし
ては、TiO2 粉末(純度;99.98%)、MgO粉
末(純度;99.3%)、CaCO3 粉末(純度;9
9.7%)、Nd2 3 粉末(純度;99.9%)を用
いた。そして、上記各調合粉末を所定量(約560g)
ずつ、アイリッヒミキサーにより、20〜30分掛けて
一次粉砕した。次いで、大気雰囲気中にて、1100℃
の温度の下、2時間仮焼を行った。尚、このときの昇温
速度は200℃/hであり、降温速度は−200℃/h
であった。
【0015】更に、これらの各仮焼粉末500gに、所
定の有機バインダー29gと水300〜400gを加
え、ボールミル(20mmφのアルミナボール、回転
数;90rpm)により、23時間掛けて2次粉砕を行
った。その後、真空凍結乾燥(真空度;約0.4Tor
r、真空乾燥時間;約20時間、凍結温度;−20〜−
40℃、乾燥温度;40〜50℃)により造粒し、これ
らの造粒された原料を用いて1000kg/cm2 のプ
レス圧で19mmφ×10mmt(高さ)の円柱状に成
形した(以下、この成形体を「仮焼試験片」とい
う。)。
【0016】次に、これらの仮焼試験片を大気中500
℃、3時間にて脱脂し、その後、1350〜1475℃
の範囲の温度で、4時間焼成し、最後に両端面を約16
mmφ×8mmt(高さ)の円柱状に研磨して、各試験
例に係わる磁器組成物(以下、これらの組成物を「焼成
試験片」という。)を作製した。尚、この焼成工程にお
ける昇温速度は100℃/hで、降温速度は−100℃
/hであった。
【0017】(2)性能試験とその評価 以上の各試験片の性能を評価するために、以下に述べる
各項目の試験と評価を行った。 A.マイクロ波誘電特性 εr 、Qu及びτf 平行導体板型誘電体円柱共振器法(TE011 MODE)
等により行った。尚、測定周波数は3.0GHz〜4.
2GHzである。また、τf は30〜80℃の温度領域
で測定し、τf =(f80−f30)/(f30×ΔT)、Δ
T=80−30=50℃にて算出した。 焼結密度 アルキメデス法により測定した。
【0018】これらの結果を上記表1〜5及び図1〜1
3に示す。尚、これらの図のうち、図1〜8は、上記
「x」、「y」の値と、各特性値(εr 、Qu等)との
関係を示すグラフ(焼成温度;1400℃)である。ま
た、図9〜13は、表4に示される各試験例〔組成式x
(0.65MgTiO3 −0.35CaTiO3 )−
(1−x)(Nd2 3 ・2TiO2 )で示されるも
の〕において、焼成温度(焼成温度;1350〜145
0℃)と焼成試験片の特性値(εr 、Qu等)の関係を
示している。更に、表6は同試験例において、焼成温度
が各焼成試験片の特性値(εr 、Qu等)に与える影響
〔焼成温度を1350〜1450℃間で変化させた場合
の各特性値の変動(同表中に±を付して示した特性値の
ばらつき)〕を示している。
【0019】
【表6】
【0020】以上の結果によれば、Quは、xの値が大
きくなるに従って増加し、x=0.9付近で3000以
上の良好な値になる。しかしながら、xの値が0.9を
越えると減少する傾向にある(図5等参照)。また、Q
uは、x=0.9及び1.0の場合において、yの値が
大きくなると増加する傾向にある(図1等参照)。更
に、εr は、yの値に影響され易く、yの値が大きくな
る(特に、yが0.65以上になる)と、減少する(約
50→40)傾向にある(図2、6等参照)。
【0021】また、τf は、xの値が大きくなるに従っ
て、正の大きな値から0へと近づくが、xの値が0.7
〜0.8に達すると、逆に正の大きな値に向かう傾向に
ある(図3、7参照)。一方、yの値が大きくなると、
より0に近い良好な値に向かう傾向にある(同図参
照)。更に、焼結密度は、xの値に影響され易く、xの
値が大きくなると減少する傾向にあるが、いずれも許容
範囲内の数値を示している(図4、8等参照)。
【0022】更に、図9及び表6によれば、x=0.7
の場合にはQu値のばらつきが±180であるのに対し
て、x=0.9の場合には±50となり、約1/4に迄
低減されている。また、その他の特性値も、図10、1
1及び表6に示す様に、x=9の場合には、x=0.7
の場合に比べ、εrのばらつきは約1/15、τfのば
らつきは約1/10にまで低減されている。この様に、
焼成温度の変化に伴う各性能のばらつきは、xの値が大
きくなるに従って、徐々に小さくなり、xが0.9のと
きに、好ましい範囲内になる。一方、xが0.85未満
の小さな値の場合に、各性能のばらつきが大きいのは、
この様な場合(Nd2 3 ・2TiO2の組成物全体に
占める比率が大きい場合)には、低い焼成温度では磁器
組成物が緻密化し難く、高い焼成温度では液相が生成
し、セッターに滲み出て素子(同組成物)の組成が変わ
ったためと考えられる。尚、焼結密度に関しても、同様
な結果を示している(図12及び13)。
【0023】以上より、総合的に判断すれば、0.85
≦x≦0.95、0.55≦y≦0.65の範囲の場合
に、各特性値がいずれも良好であると共に、焼成温度に
よる性能のばらつきも小さい。
【0024】B.結晶構造 上記表4に示す試験例No.411及び414の「仮焼
試験片」及び「焼成試験片」の結晶構造をX線により分
析した。また、表3の試験例No.314の「焼成試験
片」の結晶構造もX線により分析した。そして、これら
の結果を図14〜18に示す。
【0025】これによれば、仮焼試験片の場合(図14
及び15)には、いずれもMgTiO3 (各図中「○」
で表示)、CaTiO3 (各図中「●」で表示)、Mg
Ti2 5(各図中「×」で表示)、TiO2 (各図中
「R」で表示)、Nd2 3(各図中「△」で表示)及
びNd2 Ti2 7 (各図中「N」で表示)のピークが
表れた。
【0026】一方、焼成試験片の場合(図16〜18)
には、MgTiO3 及びCaTiO3 〔但し、試験例N
o.411(図16)では、Nd2 3 も〕のピークが
表れたが、MgTi2 5、TiO2 及びNd2 Ti2
7 のピークは表れなかった。これにより、上記各焼成
試験片を構成している磁器組成物が、MgTiO3 、C
aTiO3 及びNd2 Ti2 7 の混晶系ではなく、M
gTiO3 とCaTiO3 に、TiO2 とNd2 3
固溶した組成系からなると考えられる。
【0027】また、仮焼試験片の場合は、xの値が大き
くなる(Nd2 3 ・2TiO2 の比率が小さくなる)
に従って、MgTiO3 、CaTiO3 及びMgTi2
5の生成量が多くなるが、TiO2 、Nd2 3 及び
Nd2 Ti2 7 の生成量は、減少する傾向にある。一
方、焼成試験片の場合は、xの値が大きくなるに従っ
て、MgTiO3 及びCaTiO3 の生成量が多くなる
が、Nd2 3 の生成量は減少する傾向にある(図示し
ないが、xが0.8を越えるあたりから、同Nd2 3
のピークが表れなくなる)。
【0028】また、図17及び18を比べてみると、C
aTiO3 の回折ピークは、xの値が小さくなる(Nd
2 3 ・2TiO2 の比率が多くなる)に従って、低角
側へシフトする傾向にあり(xが0.6と0.9の場合
では、0.2程ずれる)、xの値により結晶構造が変化
することを示している。
【0029】C.微細組織構造 本性能評価においては、各焼成試験片の平均結晶粒径の
測定を行った。上記試験例No.411〜414の焼成
試験片の各平均結晶粒径をIntercept法により測定した
結果を図19に示す。これによれば、xの値が変化して
も(Nd2 3 ・2TiO2 の比率が変わっても)、平
均結晶粒径に与える影響は小さい。また、同様の方法に
より測定した試験例No.434及び444の各平均結
晶粒径と上記試験例No.414の平均結晶粒径とを用
いて、焼成温度と平均結晶粒径の関係を示すグラフ(図
20)を作成した。これによれば、焼成温度の上昇と共
に、平均結晶粒径が大きくなっている。
【0030】尚、本発明においては、前記具体的実施例
に示すものに限られず、目的、用途に応じて本発明の範
囲内で種々変更した実施例とすることができる。即ち、
前記仮焼温度等の仮焼条件、焼成温度等の焼成条件等は
種々選択できる。
【0031】
【発明の効果】以上の様に、本発明の磁器組成物は、Q
u及びτf が実用的な特性範囲で維持されると共に、高
いεr を備えている。また、焼成ばらつきの小さな磁器
組成物であるため、高品質な誘電体を安定的に製造でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】組成式x[yMgTiO3 −(1−y)CaT
iO3 ]−(1−x)(Nd23 ・2TiO2 )で示
される磁器組成物において、xを各値に定めたときのy
とQuとの関係を示すグラフである。
【図2】図1と同様の磁器組成物において、xを各値に
定めたときのyとεr との関係を示すグラフである。
【図3】図1と同様の磁器組成物において、xを各値に
定めたときのyとτf との関係を示すグラフである。
【図4】図1と同様の磁器組成物において、xを各値に
定めたときのyと焼結密度との関係を示すグラフであ
る。
【図5】図1と同様の磁器組成物において、yを各値に
定めたときのxとQuとの関係を示すグラフである。
【図6】図1と同様の磁器組成物において、yを各値に
定めたときのxとεr との関係を示すグラフである。
【図7】図1と同様の磁器組成物において、yを各値に
定めたときのxとτf との関係を示すグラフである。
【図8】図1と同様の磁器組成物において、yを各値に
定めたときのxと焼結密度との関係を示すグラフであ
る。
【図9】組成式x[0.65MgTiO3 −0.35C
aTiO3 ]−(1−x)(Nd2 3 ・2TiO2
で示される磁器組成物において、xを各値に定めたとき
の焼成温度とQuとの関係を示すグラフである。
【図10】図9と同様の磁器組成物において、xを各値
に定めたときの焼成温度とεr との関係を示すグラフで
ある。
【図11】図9と同様の磁器組成物において、xを各値
に定めたときの焼成温度とτf との関係を示すグラフで
ある。
【図12】図9と同様の磁器組成物において、xを各値
に定めたときの焼成温度と焼結密度との関係を示すグラ
フである。
【図13】組成式0.9[yMgTiO3 −(1−y)
CaTiO3 ]−0.1(Nd23 ・2TiO2 )で
示される磁器組成物において、yを各値に定めたときの
焼成温度と焼結密度との関係を示すグラフである。
【図14】試験例No.414の仮焼試験片のX線回折
の結果を示すグラフである。
【図15】試験例No.411の仮焼試験片のX線回折
の結果を示すグラフである。
【図16】試験例No.414の焼成試験片のX線回折
の結果を示すグラフである。
【図17】試験例No.411の焼成試験片のX線回折
の結果を示すグラフである。
【図18】試験例No.314の焼成試験片のX線回折
の結果を示すグラフである。
【図19】図9と同様の組成物からなる焼成試験片にお
いて、xの値と平均結晶粒径の関係を示すグラフであ
る。
【図20】図9と同様の組成物からなる焼成試験片にお
いて、焼成温度と平均結晶粒径との関係を示すグラフで
ある。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−115704(JP,A) 特開 昭51−67999(JP,A) 特開 昭61−291456(JP,A) 特開 昭63−138605(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/42 - 35/50 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 組成式x[yMgTiO−(1−y)
    CaTiO]−(1−x)(Nd・2Ti
    )〔但し、0.85≦x≦0.95、0.55≦y
    ≦0.65〕で示され、且つ測定周波数3.0〜4.2
    GHzにおける比誘電率が43.1以上であることを特
    徴とするマイクロ波誘電体磁器組成物。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
US6541656B2 (en) 2000-02-10 2003-04-01 Nippon Shokubai Company, Ltd. Process for producing α, β-unsaturated carboxylic acid esters and catalyst for use in such process

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* Cited by examiner, † Cited by third party
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US6541656B2 (en) 2000-02-10 2003-04-01 Nippon Shokubai Company, Ltd. Process for producing α, β-unsaturated carboxylic acid esters and catalyst for use in such process

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