JP3350379B2 - 誘電体磁器組成物 - Google Patents

誘電体磁器組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、マイクロ波、ミリ
波等の高周波領域において低い比誘電率及び高いQ値を
有する誘電体磁器組成物に関し、特に、誘電体共振器、
フィルタ、コンデンサ等の高周波用の電子部品やMIC
用誘電体基板、ミリ波用導波路等に最適な誘電体磁器組
成物に関するものである。
【0002】
【従来技術】従来、誘電体磁器は、マイクロ波やミリ波
等の高周波領域において、誘電体共振器やMIC用誘電
体基板等に広く利用されている。また最近では、ミリ波
用導波路に誘電体線路が応用されている。
【0003】従来より、この種の誘電体磁器としては、
例えばZrO2 −SnO2 −TiO2 系材料、BaO−
TiO2 系材料、(Ba,Sr)(Zr,Ti)O3
材料及びBa(Zn,Ta)O3 系材料等が知られてお
り、これらの材料は各種の改良により周波数500MH
z〜5GHzにおいて比誘電率20〜40、Q値が10
00〜3000(Qf=15000以下)、さらに共振
周波数の温度係数(τf)が0ppm/℃付近の特性を
有している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、近年に
おいては使用する周波数がより高くなる傾向にあるとと
もに、誘電体材料に対してさらに優れた誘電特性、特に
Q値の向上が要求されている。ところが、前述した従来
の誘電体材料では、10GHzの使用周波数領域におい
て実用的レベルの高いQ値を有していないのが現状であ
る。
【0005】また、近年では、加工性の面から比誘電率
が小さい材料が要求されているが、上記従来の誘電体材
料では比誘電率が20〜30であり、加工性という観点
からさらに比誘電率の小さい材料が要求されていた。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の誘電体磁器組成
物は、金属元素として少なくともSr、La、Mgおよ
びWを含有し、これらの金属元素酸化物のモル比による
組成式をx〔aSrO・(1−a){bAO1/2 ・(1
−b)LaO3/2 }〕・yMgO・zWO3 と表した時
(AはNaおよび/またはK)、前記x、y、z、aお
よびbが、0.40≦x≦0.55、0.15≦y≦
0.30、0.20≦z≦0.30、0.05≦a≦
0.70、0.40≦b≦0.60、x+y+z=1を
満足するものである。
【0007】また、金属元素として少なくともCa、N
a、La、MgおよびWを含有し、これらの金属元素酸
化物のモル比による組成式をx〔aCaO・(1−a)
{bNaO1/2 ・(1−b)LaO3/2 }〕・yMgO
・zWO3 と表した時、前記x、y、z、aおよびb
が、0.40≦x≦0.55、0.15≦y≦0.3
0、0.20≦z≦0.30、0.05≦a≦0.6
0、0.40≦b≦0.60、x+y+z=1を満足す
るものである。
【0008】
【作用】本発明では、10GHzの測定周波数で比誘電
率が17以下と小さいため、マイクロ波、ミリ波等の高
周波で要求される精度での磁器の加工が容易であり、か
つ、10GHzの測定周波数でQ値が1500以上(Q
f=15000以上)と高い誘電体磁器組成物を得るこ
とができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明の誘電体磁器組成物は、金
属元素酸化物のモル比による組成式をx〔aMO・(1
−a){bAO1/2 ・(1−b)LaO3/2 }〕・yM
gO・zWO3 と表した時(MはSrまたはCa、Aは
Naおよび/またはK、但しMがCa、AがKの組み合
わせを除く)、前記x、y、z、aおよびbが、0.4
0≦x≦0.55、0.15≦y≦0.30、0.20
≦z≦0.30、0.40≦b≦0.60、x+y+z
=1を満足し、MがSrの場合には0.05≦a≦0.
70を満足し、MがCaの場合には0.05≦a≦0.
60を満足するものである。
【0010】上記組成式において、〔aMO・(1−
a){bAO1/2 ・(1−b)LaO3/2 }〕のモル比
xを0.40≦x≦0.55としたのは、xが0.40
よりも小さい場合や0.55よりも大きい場合には焼結
不良となったり、Q値が低下するからである。xはQ値
向上という点から0.48〜0.52が望ましい。
【0011】また、MgOのモル比yを0.15≦y≦
0.30としたのは、yが0.15よりも小さい場合に
は焼結不良となったり、Q値が低下し、0.30よりも
大きい場合にはQ値が低下したり、焼結不良となるから
である。MgOのモル比yは0.22〜0.28である
ことが望ましい。
【0012】さらに、WO3 のモル比zを0.20≦z
≦0.30としたのは、zが0.20よりも小さい場合
や0.30よりも大きい場合にはQ値が低下したい、焼
結不良となるからである。WO3 のモル比zは、Q値の
向上と焼結性という観点から0.22〜0.28である
ことが望ましい。
【0013】また、MO(SrOまたはCaO)の{b
AO1/2 ・(1−b)LaO3/2 }による置換量aを、
MOがSrOの場合には0.05≦a≦0.70を満足
し、MOがCaOの場合には0.05≦a≦0.60を
満足させたのは、aが0.05よりも小さい場合には、
Na成分の昇華抑制効果がなく、焼成温度幅が狭いから
であり、aが0.70よりも多い場合(SrOの場合)
または0.60よりも多い場合(CaOの場合)には、
比誘電率が大きくなるからである。aは、焼結性と比誘
電率向上の観点から、MOがSrOの場合には0.05
〜0.7、MOがCaOの場合には0.05〜0.6で
あることが望ましい。
【0014】また、bNaO1/2 ・(1−b)LaO
3/2 と表されるNaO1/2 とLaO3/ 2 のモル比bを
0.40≦b≦0.60としたのは、bが0.40より
も小さい場合にはQ値が低下するからであり、0.60
よりも大きい場合にはQ値が低下するからである。b
は、高Q値および低比誘電率という観点から0.43〜
0.52であることが望ましい。
【0015】本発明の誘電体磁器組成物は、高Q値およ
び低比誘電率という観点から、金属元素酸化物のモル比
による組成式をx〔aMO・(1−a){bNaO1/2
・(1−b)LaO3/2 }〕・yMgO・zWO3 と表
した時、x、y、z、aおよびbが、0.48≦x≦
0.52、0.22≦y≦0.28、0.22≦z≦
0.28、0.43≦b≦0.52、x+y+z=1を
満足し、MがSrの場合には0.05≦a≦0.70を
満足し、MがCaの場合には0.05≦a≦0.60を
満足することが望ましい。
【0016】本発明の誘電体磁器組成物は、SrOまた
はCaO、NaO1/2 またはKO1/ 2 、LaO3/2 、M
gO、WO3 からなるものであり、結晶相としてx〔a
MO・(1−a){bAO1/2 ・(1−b)La
3/2 }〕・yMgO・zWO3 で表されるペロブスカ
イト型結晶を主結晶相とするものである。即ち、ペロブ
スカイト型結晶のAサイトをNaおよびLaで構成し、
BサイトをMgおよびWを1:1で構成してなる結晶
で、AサイトにM(SrまたはCa)が固溶したもので
ある。尚、本発明の誘電体磁器組成物では、上記主結晶
相以外の結晶相として、LaO3/2 、La2/3 (Mg
1/2 1/2 )O3 、MgWO4 等が存在することもある
が、微量であれば特性上問題ない。
【0017】本発明の誘電体磁器組成物を作製する方法
としては、先ずSrまたはCa、NaまたはK、La、
Mg、Wを含有する原料粉末を準備する。この原料粉末
は、SrまたはCa、NaまたはK、La、Mg、Wを
含有する酸化物、炭酸塩、酢酸塩等の無機化合物、もし
くは有機金属等の有機化合物のいずれであっても、焼成
により酸化物となるものであれば良い。
【0018】これらの原料をSrOまたはCaO、Na
1/2 またはKO1/2 、LaO3/2、MgO、WO3
算で前述の範囲となるように秤量した後、十分に混合す
る。
【0019】その後、混合物を900〜1100℃で仮
焼し粉砕する。この仮焼粉末に所定のバインダー等を添
加し、プレス成形やドクターブレード法等の周知の成形
法により所定の形状に成形する。次に成形体を大気中等
の酸化性雰囲気中で1200〜1600℃で2〜8時間
焼成することにより本発明の誘電体磁器組成物を得るこ
とができる。
【0020】本発明の誘電体磁器組成物では、不可避不
純物としてCl、Al、P、Zr、Y、Ce、Yb、D
y等が混入する場合があり、また、これらが全量中0.
1重量%程度混入しても特性上問題ない。また、粉砕時
の粉砕ボールから金属酸化物等が混入する場合もある。
【0021】
【実施例】原料として純度99%以上のSrCO3 、N
2 CO3 、K2 CO3 、La3(CO3 2 、MgC
3 及びWO3 の各粉末を用いて、これらを焼結体がS
rO、NaO1/2 、KO1/2 、LaO3/2 、MgO、W
3 換算で表1、2、3に示す割合となるように秤量す
る。また、原料として純度99%以上のCaCO3、N
2 CO3 、La3 (CO3 2 、MgCO3 及びWO
3 の各粉末を用いて、これらを焼結体がCaO、NaO
1/2 、LaO3/2 、MgO、WO3 換算で表4、5、6
に示す割合となるように秤量する。
【0022】これをゴムで内張りしたボールミルに、Z
rO2 ボール、水とともに入れ、8時間湿式混合した。
次いで、この混合物を脱水、乾燥した後、1000℃で
2時間仮焼し、当該仮焼物をボールミルに水、有機バイ
ンダーとともに入れ8時間湿式粉砕した。
【0023】その後、この粉砕物を乾燥した後、50番
メッシュの網を通して造粒し、得られた粉末を3000
kg/cm2 の圧力で直径10mm、厚み5mmの寸法
の円柱に成形した。更に、この円柱を1500℃2時間
の条件で焼成して磁器試料を得た。この磁器を研摩して
直径8mm、厚み4〜5mmの寸法の試料を得た。
【0024】かくして得られた磁器試料について、周波
数10GHzにおける比誘電率(εr )、Q値を誘電体
共振器法にて測定し、また25℃から85℃までのTE
011モード共振周波数の温度係数(τf)を、τf=
[(f85−f25)/f25]/60×106 [ppm/
℃]に基づいて計算した。ここで、f85は85℃におけ
る共振周波数であり、f25は25℃における共振周波数
である。それらの結果を表1〜6に示した。尚、表1〜
3についてはSrにより置換した場合を、表4〜6につ
いてはCaにより置換した場合を記載した。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
【表3】
【0028】
【表4】
【0029】
【表5】
【0030】
【表6】
【0031】これらの表1〜6によれば、本発明の範囲
外にある試料No.22〜26、37〜40、62〜6
6、77〜81、85、107〜111、122〜12
5、147〜151、162〜165、169はQ値が
1400以下、もしくは比誘電率が大きく、あるいは焼
結不良を生じた。これに対して本発明に係る試料No.
1〜21、27〜36、41〜61、67〜76、82
〜84、86〜106、112〜121、126〜14
6、152〜161、166〜168は比誘電率が17
以下、Q値が1500以上(Qf=15000以上)で
あった。
【0032】そして、試料No.41の磁器に対してX線
回折測定を行い、その結果を図1に示した。図1によれ
ば、○印の回折ピークによりペロブスカイト型結晶構造
であることが理解される。
【0033】一方、試料No.81の磁器に対してX線回
折測定を行い、その結果を図2に示した。図2によれ
ば、○印の回折ピークが示すペロブスカイト型結晶の割
合が少ないために、誘電体共振器法において共振ピーク
が現れず、測定不能であった。
【0034】これは、〔bNaO1/2 ・(1−b)La
3/2 〕の一部をSrOまたはCaOで置換していない
ため、1350℃以上の高温で焼成した時にNa成分が
昇華したためと考えられる。
【0035】
【発明の効果】以上詳述した通り、本発明によれば、高
周波領域において加工性に適した低い比誘電率と高いQ
値を有する磁器を広い焼成温度域で得ることができ、マ
イクロ波やミリ波領域において使用される共振器材料、
MIC用誘電体基板材料、コンデンサー用材料、誘電体
アンテナ用材料、誘電体導波路用材料等に充分適用する
ことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】試料No.41のX線回折チャート図である。
【図2】試料No.81のX線回折チャート図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/495 H01B 3/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】金属元素として少なくともSr、La、M
    gおよびWを含有し、これらの金属元素酸化物のモル比
    による組成式を x〔aSrO・(1−a){bAO1/2 ・(1−b)L
    aO3/2 }〕・yMgO・zWO3 (AはNaおよび/またはK) と表した時、前記x、y、z、aおよびbが 0.40≦x≦0.55 0.15≦y≦0.30 0.20≦z≦0.30 0.05≦a≦0.70 0.40≦b≦0.60 x+y+z=1 を満足することを特徴とする誘電体磁器組成物。
  2. 【請求項2】金属元素として少なくともCa、Na、L
    a、MgおよびWを含有し、これらの金属元素酸化物の
    モル比による組成式を x〔aCaO・(1−a){bNaO1/2 ・(1−b)
    LaO3/2 }〕・yMgO・zWO3 と表した時、前記x、y、z、aおよびbが 0.40≦x≦0.55 0.15≦y≦0.30 0.20≦z≦0.30 0.05≦a≦0.60 0.40≦b≦0.60 x+y+z=1 を満足することを特徴とする誘電体磁器組成物。
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