JP3240914B2 - 耐チッピング性のすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具 - Google Patents

耐チッピング性のすぐれた表面被覆超硬合金製切削工具

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】この発明は、硬質被覆層を構
成する酸化アルミニウム(以下、Al23で示す)を主
成分とするAl23系化合物層が、これを厚膜化しても
その層厚が均一化し、したがって例えば鋼や鋳鉄などの
連続切削は勿論のこと、特に断続切削に用いた場合にも
切刃にチッピング(微小欠け)の発生なく、長期に亘っ
てすぐれた切削性能を発揮する表面被覆超硬合金製切削
工具(以下、被覆超硬工具という)に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】従来、炭化タングステン基超硬合金基体
(以下、超硬基体という)の表面に、Tiの炭化物(以
下、TiCで示す)層、窒化物(以下、同じくTiNで
示す)層、炭窒化物(以下、TiCNで示す)層、酸化
物(以下、TiO2で示す)層、炭酸化物(以下、Ti
COで示す)層、窒酸化物(以下、TiNOで示す)
層、および炭窒酸化物(以下、TiCNOで示す)層
(以下、これらを総称して「Ti炭・窒・酸化物層」と
いう)のうちの1種または2種以上と、Al23層とか
らなる硬質被覆層を3〜20μmの平均層厚で化学蒸着
および/または物理蒸着してなる被覆超硬工具が知られ
ている。また、特に上記被覆超硬工具の硬質被覆層を構
成するAl23層が、反応ガスとして、容量%で、 三塩化アルミニウム(以下、AlCl3で示す):1〜
20%、 二酸化炭素(以下、CO2示す):0.5〜30%、 [必要に応じて一酸化炭素(CO)または塩化水素(H
Cl):1〜30%]、 水素(以下、H2示す):残り、 からなる組成を有する水素系反応ガスを用い、 反応温度:950〜1100℃、 雰囲気圧力:20〜200torr、 の条件で形成されることも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】一方、近年の切削加工
のFA化はめざましく、かつ省力化に対する要求も強
く、これに伴い、被覆超硬工具には使用寿命のさらなる
延命化が求められ、これに対応する手段として、これを
構成する硬質被覆層のうち、特に耐酸化性と熱的安定性
にすぐれ、さらに高硬度を有するAl23層の厚膜化が
広く検討されているが、前記Al23層は、これを厚く
すると、上記の従来Al23層形成手段では層厚が局部
的に不均一になり、切刃の逃げ面およびすくい面、さら
に前記逃げ面とすくい面の交わるエッジ部の間には層厚
に著しいバラツキが発生するようになり、これが原因
で、例えば鋼や鋳鉄などの断続切削に用いた場合に切刃
にチッピングが発生し易く、比較的短時間で使用寿命に
至るのが現状である。
【0004】
【課題を解決するための手段】そこで、本発明者等は、
上述のような観点から、被覆超硬工具の硬質被覆層を構
成するAl23層に着目し、厚膜化した場合の層厚の局
部的バラツキの減少を図るべく研究を行った結果、化学
蒸着法によるAl23層の形成に際して、反応ガスとし
て、上記の従来水素系反応ガスに代って、容量%で、基
本的に、 AlCl3:1〜10%、 H2:1〜5%、 窒素酸化物(以下、NOで示す):5〜15%、 四塩化チタン(以下、TiCl4で示す):0.05〜
0.7%、 Ar:残り、 からなる組成を有するAr系反応ガスを用い、反応温度
および雰囲気圧力は以下の条件、すなわち、 反応温度:850〜1100℃、 雰囲気圧力:20〜200torr、 の条件で層形成を行うと、形成された層中にTiおよび
Cl(塩素)が含有するようになり、このTiおよびC
lの含有割合を、主に上記Ar系反応ガスの組成および
反応雰囲気を調整することにより、重量%(重量%と質
量%は実質的に同じ割合を示すので、以下の重量%の表
示は質量%でも同じ表示となる)で、Ti:1.5〜1
5%およびCl:0.005〜0.1%となるようにす
ると、この結果のAl23を主成分とし、かつTiおよ
びClを含有するAl23層系化合物層は、これを厚膜
化しても、その層厚に局部的バラツキが著しく少なく、
切刃の逃げ面、すくい面、および前記逃げ面とすくい面
の交わるエッジ部の層厚が相互に均一化するようにな
り、さらにAl23を主成分とするので、Al23の具
備する特性、すなわち、すぐれた耐酸化性と熱的安定
性、および高硬度を有し、したがって、このAl23
化合物層と上記Ti炭・窒・酸化物層からなる硬質被覆
層を形成した被覆超硬工具は、例えば鋼や鋳鉄などの連
続切削は勿論のこと、断続切削に用いた場合にも切刃に
チッピングの発生なく、長期に亘ってすぐれた切削性能
を示すという研究結果を得たのである。
【0005】この発明は、上記の研究結果に基づいてな
されたものであって、超硬基体の表面に、 (a)化学蒸着または物理蒸着形成された、Ti炭・窒
・酸化物層のうちの1種または2種以上と、 (b)容量%で、AlCl3:1〜10%、H2:1〜5
%、NO:5〜15%、TiCl4:0.05〜0.7
%、Ar:残り、からなる組成を有するAr系反応ガス
を用いて化学蒸着形成され、Al23を主成分とし、か
つ重量%(質量%)で、 Ti:1.5〜15%、 Cl:0.005〜0.1%、 を含有するAl23系化合物層、以上(a)および
(b)からなる平均層厚:3〜20μmの硬質被覆層を
形成してなる、耐チッピング性のすぐれた耐チッピング
性のすぐれた被覆超硬工具に特徴を有するものである。
【0006】なお、この発明の被覆超硬工具の硬質被覆
層を構成するAl23系化合物層におけるTiおよびC
lは、上記の通り、これら両成分が共存して層厚の均一
化に作用するものであり、したがって、これら両成分の
うちのTiの含有量が1.5%未満でも、またClの含
有量が0.005%未満でも前記作用に所望の効果が得
られず、一方これら両成分のうちのいずれかの含有量で
もTi:15%およびCl:0.1%を越えると、Al
23系化合物層のもつ特性が損なわれるようになるもの
であり、これらの結果から、その含有量を、それぞれT
i:1.5〜15%、、Cl:0.005〜0.1%%
と定めた。また、硬質被覆層の平均層厚を3〜20μm
としたのは、その層厚が3μm未満では所望のすぐれた
耐摩耗性を確保することができず、一方その層厚が20
μmを越えると、切刃に欠けやチッピングが発生し易く
なるという理由からである。
【0007】
【発明の実施の形態】つぎに、この発明の被覆超硬工具
を実施例により具体的に説明する。 原料粉末として、平均粒径:2.8μmを有する中粒W
C粉末、同4.9μmの粗粒WC粉末、同1.5μmの
(Ti,W)C[重量比で(質量比に同じ)、以下同
じ、TiC/WC=30/70]粉末、同1.2μmの
(Ti,W)CN(TiC/TiN/WC=24/20
/56)粉末、同1.2μmの(Ta,Nb)C(Ta
C/NbC=90/10)粉末、および同1.1μmの
Co粉末を用意し、これら原料粉末を表1に示される配
合組成に配合し、ボールミルで72時間湿式混合し、乾
燥した後、ISO・CNMG120408(超硬基体A
〜D用)および同SEEN42AFTN1(超硬基体E
用)に定める形状の圧粉体にプレス成形し、この圧粉体
を同じく表1に示される条件で真空焼結することにより
超硬基体A〜Eをそれぞれ製造した。さらに、上記超硬
基体Bに対して、100torrのCH4ガス雰囲気
中、温度:1400℃に1時間保持後、徐冷の滲炭処理
を施し、処理後、超硬基体表面に付着するカーボンとC
oを酸およびバレル研磨で除去することにより、表面か
ら11μmの位置で最大Co含有量:15.9重量%、
深さ:42μmのCo富化帯域を基体表面部に形成し
た。また、上記超硬基体AおよびDには、焼結したまま
で、表面部に表面から17μmの位置で最大Co含有
量:9.1重量%、深さ:23μmのCo富化帯域が形
成されており、残りの超硬基体CおよびEには、前記C
o富化帯域の形成がなく、全体的に均質な組織をもつも
のであった。なお、表1には、上記超硬基体A〜Eの内
部硬さ(ロックウエル硬さAスケール)をそれぞれ示し
た。
【0008】ついで、これらの超硬基体A〜Eの表面
に、ホーニングを施した状態で、通常の化学蒸着装置を
用い、表2(表中のl−TiCNは特開平6−8010
号公報に記載される縦長成長結晶組織をもつものであ
り、また同p−TiCNは通常の粒状結晶組織をもつも
のである)および表3[表中のAl23(a)〜(h)
はAl23系化合物層を示し、Al23(i)は通常の
Al23層を示す。これは表4、5においても同じ]に
示される条件にて、表4、5に示される組成および目標
層厚(切刃の逃げ面での層厚)の硬質被覆層を形成する
ことにより本発明被覆超硬工具1〜17および従来被覆
超硬工具1〜10をそれぞれ製造した。この結果得られ
た各種の被覆超硬工具の硬質被覆層を構成するAl23
系化合物層およびAl23層(なお、表6、7には、こ
れらを総称してAl23層で示す)について、切刃の逃
げ面とすくい面の交わるエッジ部の最大層厚を測定し、
さらに前記エッジ部からそれぞれ1mm内側の箇所の逃
げ面とすくい面における層厚を測定した。この測定結果
を表6、7に示した。なお、硬質被覆層を構成するAl
23系化合物層およびAl23層以外のその他の層の層
厚には、いずれも局部的バラツキがほとんどなく、目標
層厚とほぼ同じ値を示すものであった。
【0009】さらに、いずれも耐チッピング性を評価す
る目的で、上記本発明被覆超硬工具1〜8および従来被
覆超硬工具1〜4については、 被削材:JIS・SCM440の丸棒、 切削速度:300m/min.、 切込み:1.5mm、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:15分、 の条件での合金鋼の乾式連続切削試験、並びに、 被削材:JIS・SCM440の長さ方向等間隔4本縦
溝入り丸棒、 切削速度:150m/min.、 切込み:2mm.、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での合金鋼の乾式断続切削試験を行い、いずれの
切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
【0010】また、同じく本発明被覆超硬工具9〜13
および従来被覆超硬工具5、6については、 被削材:JIS・FCD450の丸棒、 切削速度:300m/min.、 切込み:1.5mm、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:15分、 の条件でのダクタイル鋳鉄の乾式連続切削試験、並び
に、 被削材:JIS・FCD450の長さ方向等間隔4本縦
溝入り丸棒、 切削速度:150m/min.、 切込み:2mm.、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件でのダクタイル鋳鉄の乾式断続切削試験を行い、
いずれの切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
【0011】同じく本発明被覆超硬工具14および従来
被覆超硬工具7については、 被削材:JIS・SNCM439の丸棒、 切削速度:300m/min.、 切込み:1.5mm.、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:15分、 の条件での合金鋼の乾式連続切削試験、並びに、 被削材:JIS・SNCM439の長さ方向等間隔4本
縦溝入り丸棒、 切削速度:150m/min.、 切込み:2mm.、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での合金鋼の乾式断続切削試験を行い、いずれの
切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
【0012】同じく本発明被覆超硬工具15および従来
被覆超硬工具8については、 被削材:JIS・S45Cの丸棒、 切削速度:300m/min.、 切込み:1.5mm.、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:15分、 の条件での炭素鋼の乾式連続切削試験、並びに、 被削材:JIS・S45Cの長さ方向等間隔4本縦溝入
り丸棒、 切削速度:150m/min.、 切込み:2mm.、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での炭素鋼の乾式断続切削試験を行い、いずれの
切削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
【0013】同じく本発明被覆超硬工具16および従来
被覆超硬工具9については、 被削材:JIS・FC300の丸棒、 切削速度:350m/min.、 切込み:1.5mm.、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:15分、 の条件での鋳鉄の乾式連続切削試験、並びに、 被削材:JIS・FC300の長さ方向等間隔4本縦溝
入り丸棒、 切削速度:150m/min.、 切込み:2mm.、 送り:0.3mm/rev.、 切削時間:5分、 の条件での鋳鉄の乾式断続切削試験を行い、いずれの切
削試験でも切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。
【0014】さらに同じく本発明被覆超硬工具17およ
び従来被覆超硬工具10については、 被削材:幅100mm×長さ500mmの寸法をもった
JIS・SCM440の角材、 使用条件:直径125mmのカッターに単刃取り付け、 回転数:510r.p.m.、 切削速度:200m/min.、 切込み:2mm.、 送り:0.2mm/刃、 切削時間:3パス(1パスの切削時間:5.3分)、 の条件での合金鋼の乾式フライス切削(断続切削)試験
をおこない、切刃の逃げ面摩耗幅を測定した。これらの
測定結果を表6、7に示した。
【0015】
【表1】
【0016】
【表2】
【0017】
【表3】
【0018】
【表4】
【0019】
【表5】
【0020】
【表6】
【0021】
【表7】
【0022】
【発明の効果】表6、7に示される結果から、いずれも
Ar系反応ガスを用いて、積極的にTiおよびClを含
有させたAl23系化合物層およびTi炭・窒・酸化物
層からなる硬質被覆層を形成してなる本発明被覆超硬工
具1〜17は、前記Al23系化合物層の層厚に、これ
を厚膜化しても局部的バラツキがきわめて少なく、切刃
の逃げ面、すくい面、および逃げ面とすくい面の交わる
エッジ部の層厚が均一化しているのに対して、硬質被覆
層を構成するAl23層の形成に水素系反応ガスを用い
て製造された従来被覆超硬工具1〜10においては、逃
げ面、すくい面、およびエッジ部における層厚のバラツ
キが著しく、この結果として本発明被覆超硬工具1〜1
7は、前記Al23系化合物層がAl23と同等の特性
を具備することと相まって、鋼および鋳鉄の連続切削で
すぐれた耐摩耗性を示すほか、特に断続切削で、従来被
覆超硬工具1〜10に比して一段とすぐれた耐チッピン
グ性を示すことが明らかである。上述のように、この発
明の被覆超硬工具は、これの硬質被覆層を構成するAl
23系化合物層を厚膜化しても、局部的バラツキがきわ
めて少なく、この結果として例えば鋼や鋳鉄などの連続
切削は勿論のこと、断続切削においてもすぐれた耐チッ
ピング性を示し、長期に亘ってすぐれた切削性能を発揮
するので、切削加工のFA化および省力化に寄与するな
ど工業上有用な特性を有するのである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大鹿 高歳 埼玉県大宮市北袋町1−297 三菱マテ リアル株式会社 総合研究所内 (56)参考文献 特開 昭59−162270(JP,A) INTERNATIONAL JOU RNAL OF Refractry& HardMetals VOL5[4 ](1986−12)(英)p222−228 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23B 27/14 B23P 15/28 C23C 16/30 - 16/40 C23C 14/06

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭化タングステン基超硬合金基体の表面
    に、 (a)化学蒸着または物理蒸着形成された、Tiの炭化
    物層、窒化物層、炭窒化物層、酸化物層、炭酸化物層、
    窒酸化物層、および炭窒酸化物層のうちの1種または2
    種以上と、 (b)容量%で、三塩化アルミニウム:1〜10%、水
    素:1〜5%、窒素酸化物:5〜15%、四塩化チタ
    ン:0.05〜0.7%、Ar:残り、からなる組成を
    有するAr系反応ガスを用いて化学蒸着形成され、酸化
    アルミニウムを主成分とし、かつ重量%(質量%)で、 Ti:1.5〜15%、 Cl:0.005〜0.1%、 を含有する酸化アルミニウム系化合物層、 以上(a)および(b)からなる平均層厚:3〜20μ
    mの硬質被覆層を形成してなる、耐チッピング性のすぐ
    れた表面被覆超硬合金製切削工具。
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