JP3238639B2 - 電動スクリュドライバのサイレントクラッチ - Google Patents

電動スクリュドライバのサイレントクラッチ

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JP3238639B2
JP3238639B2 JP5191797A JP5191797A JP3238639B2 JP 3238639 B2 JP3238639 B2 JP 3238639B2 JP 5191797 A JP5191797 A JP 5191797A JP 5191797 A JP5191797 A JP 5191797A JP 3238639 B2 JP3238639 B2 JP 3238639B2
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  • One-Way And Automatic Clutches, And Combinations Of Different Clutches (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、ねじの締め付け作
業に用いられる電動スクリュドライバのクラッチ機構に
関し、詳しくはねじを所定深さまで締付けた時にモータ
からの回転力を遮断してねじ締めを停止するとともに、
その後モータが回転し続けても静かに空転して騒音を発
しないクラッチ機構に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、上記のような機能を有するサイレ
ントクラッチ機構としては、例えば特公平3−5952
号公報に開示されているものが知られている。この従来
のクラッチ機構の構成を、同公報の図2aを援用した図
14に基づいて説明すると、このクラッチ機構50は、
第1および第2のクラッチエレメント51,52と、中
間クラッチエレメント53を有している。第1クラッチ
エレメント51はスピンドル54に回転可能に支持さ
れ、スピンドル54は第1クラッチエレメント51に対
して軸方向へ移動可能に支持され、中間クラッチエレメ
ント53はスピンドル54に軸方向移動可能に支持さ
れ、第2クラッチエレメント52はスピンドル54に固
定されている。
【0003】第1クラッチエレメント51の外周面には
駆動ギャ部51aが形成されて、図示省略されたモータ
のピニオンギャが噛み合わされている。また、この第1
クラッチエレメント51の図示下面にはクラッチ歯とし
てのカムメンバ51bが形成されている。中間クラッチ
エレメント53の図示上面には、このカムメンバ51b
に噛み合うカムメンバ53aが形成され、図示下面には
係合メンバ53bが形成されている。第2クラッチエレ
メント52の図示上面には、この係合メンバ53bに噛
み合う係合メンバ52aが形成されている。
【0004】なお、第1クラッチエレメント51と中間
クラッチエレメント53との間には圧縮コイルバネ(図
示省略)が介装されているため、中間クラッチエレメン
ト53は第1クラッチエレメント51から離れる方向す
なわち第2クラッチエレメント52に近づく方向に付勢
されている。
【0005】このような構成により、ストッパスリーブ
55の先端が被締付材Wに当接するまでの過程において
は、第1クラッチエレメント51と中間クラッチエレメ
ント53および中間クラッチエレメント53と第2クラ
ッチエレメント52とは図示するように噛み合っている
ため、このクラッチ機構50を経てモータの回転力がス
ピンドル54に伝達されてねじ類Sが被締付材Wに締め
込まれていく。ストッパスリーブ55の先端が被締付材
Wに当接した後、さらにスピンドル54が回転してねじ
類Sの締め込みが進行すると、中間クラッチエレメント
53および第2クラッチエレメント52がスピンドル5
4と一体となって図示下方に移動するが第1クラッチエ
レメント51は移動しないので、第1クラッチエレメン
ト51と中間クラッチエレメント53は徐々に相互に離
れていく。そして、ねじ類Sが所定の深さまで締め込ま
れると第1クラッチエレメント51と中間クラッチエレ
メント53との噛合いが外れ、この瞬間に中間クラッチ
エレメント53への回転力の伝達が遮断され、スピンド
ル54の回転が停止される。そして、中間クラッチエレ
メント53に対して駆動力が遮断されると、これと同時
に中間クラッチエレメント53は圧縮コイルバネにより
第1クラッチエレメント51から離れる方向すなわち第
2クラッチエレメント52に近づく方向に移動し、従っ
て第1クラッチエレメント51と中間クラッチエレメン
ト53との間に適正な隙間が確保されて、第1クラッチ
エレメント51は空転し、これによりクラッチ機構50
の静かな空転状態が実現される。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記し
た従来のクラッチ機構50にあっては、第1クラッチエ
レメント51の空転状態を得るためには中間クラッチエ
レメント53を不可欠の要素とする構成であるので、そ
の分だけ部品点数が増えかつ重量が増加し、またこの中
間クラッチエレメント53を介在させるためのスペース
を必要とするため電動スクリュドライバの機長が長くな
ってしまう問題があった。さらに、中間クラッチエレメ
ント53の両側面には第1および第2クラッチエレメン
ト51,52に対する噛合い歯としてのカムメンバ53
aおよび係合メンバ53bを設ける必要があり、この点
で、この中間クラッチエレメント53の耐久性、耐摩耗
性あるいは加工精度等について一定以上のレベルを確保
する必要があるためコスト高となる問題があった。
【0007】そこで、本発明は、上記従来の中間クラッ
チエレメントに相当する部材を排除して、重量増加、機
長の増加さらにはコストアップを招くことなく静かな空
転状態を実現できる、電動スクリュドライバのサイレン
トクラッチを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】このため、本発明は前記
請求項に記載した構成のサイレントクラッチとした。請
求項1の記載において、ピンとは、クラッチ機構におけ
る一種のクラッチ歯手段として構成されるものである。
【0009】上記の構成によれば、駆動ギャにはスピン
ドルのクラッチ歯に向けてピンが設けられ、このピン
は、当該スクリュドライバが押し付けられてスピンドル
が相対的に後退すると、クラッチ歯が当該ピンの先端部
に係合され、これによりこのピンは直立位置から回転方
向後ろ側に傾動して傾斜位置に至るとともに該ピンがク
ラッチ歯に噛み合って回転力の伝達がなされる。
【0010】ねじ締めの進行によりクラッチ歯とピンの
噛合いは徐々に浅くなり、ねじ締めが完了した時点でク
ラッチ歯とピンの噛合いが外れる。すると、ピンは駆動
ギャとスピンドルとの間に介装された弾性部材により傾
斜位置から直立位置に戻され、ピンとクラッチ歯との間
には軸方向の隙間が発生し、従って駆動ギャは静かに空
転する。
【0011】
【発明の実施の形態】次に、本発明の実施の形態を図1
〜図13に基づいて説明する。先ず、第1の実施の形態
を図1〜図6にしたがって説明する。図1は本例のクラ
ッチ機構4が適用された電動スクリュドライバ1の全体
を示している。図中2は、この電動スクリュドライバ1
のハウジングであり、このハウジング2の中央にはモー
タ3が収容されている。このモータ3はトリガ8を押し
操作している間起動し、トリガ8から指を離して押し操
作を止めると停止する。このモータ3の出力軸にはピニ
オンギャ部3aが形成されており、このピニオンギャ部
3aはスピンドル5の後端寄り(図示右端部寄り)に支
持された駆動ギャ11に噛み合っている。
【0012】スピンドル5は、軸受9a,9bを介して
ハウジング2に回転可能かつ軸方向に移動可能に支承さ
れている。上記した駆動ギャ11は、このスピンドル5
の後端部寄りにおいて当該スピンドル5とは独立して回
転自在かつ軸方向へ移動可能に支持されており、モータ
3が起動するとこの駆動ギャ11はスピンドル5のまわ
りを回転する。駆動ギャ11の後面側(図示右側面側)
はスピンドル5に遊嵌されたスラスト軸受10により支
持されており、このスラスト軸受10は後述の圧縮コイ
ルバネ19によって常にハウジング2に対して位置固定
されている。
【0013】上記駆動ギャ11の前面(図示左面)には
第1クラッチ歯11b〜11bが突出形成されている。
この第1クラッチ歯11bは、図2に示すように周方向
三等分位置の三箇所に放射状に形成されている。隣接す
る第1クラッチ歯11b,11b間には保持孔13が一
箇所づつ合計三箇所に形成されており、各保持孔13に
はピン12が一つづつ保持されている。このピン12
は、図3によく示されているように鍔付きピンであり、
鍔部12aとこの鍔部12aよりも小径かつ同心の円柱
体をなす本体部12bとを有している。
【0014】一方、各保持孔13は、ピン12の本体部
12bを挿入するのに必要かつ十分な径で、駆動ギャ1
1を板厚方向に貫通して形成された孔本体13aと、こ
の孔本体13aの図示上側(駆動ギャ11の後面側)に
は同心かつ段付き状に形成された、ピン12の鍔部12
aを嵌込み可能な径の受け孔13cと、ピン12が図中
二点鎖線で示す位置(以下、「傾斜位置」という)にま
で傾動することを許容するための逃がし凹部13bとか
ら構成されている。逃がし凹部13bは、孔本体13a
の、駆動ギャ11の回転方向(図中矢印で示した方向)
の後ろ側に連続して、かつその側壁は孔本体13aの図
示上端から下端に到って一定の角度θ2で傾斜して図示
下方へ開拡状に形成されている。
【0015】受け孔13cの深さは、ピン12の鍔部1
2aの板厚と同一寸法に設定されているため、ピン12
が図中実線で示す位置(以下、「直立位置」という)に
ある状態において駆動ギャ11の後面(図示上面)と鍔
部12aの後面(図示上面)とはほぼ面一に揃ってい
る。また、この受け孔13cの側壁13dは図示するよ
うに一定の角度θ1 で図示上方へ開拡する方向に傾斜し
ており、これによりピン12が傾斜位置に傾動する際の
鍔部12aに対する逃げが確保されている。この側壁1
3dの傾斜角度θ1 と上記逃がし凹部13bの側壁の傾
斜角度θ2 は同じ角度に設定されており(θ1 =θ2 =
θ)、この傾斜角度θがピン12の最大傾斜角度となっ
ている。従って、ピン12が、鍔部12aの図示左側の
下角部12cを支点として直立位置から傾斜位置に傾動
すると、鍔部12aの周面がそのほぼ半周にわたって受
け孔13cの側壁13dに当接されると同時に、本体部
12bのほぼ半周にわたる周面が逃がし凹部13bの側
壁に当接される。この傾斜位置にある状態においてピン
12は駆動側のクラッチ歯として機能するのであり、従
って上記傾斜角度θは第1クラッチ歯11bの歯面の傾
斜角度さらには後述する第2クラッチ歯14aの歯面の
傾斜角度にほぼ一致している。なお、図3ではθ1 =θ
2 =θ=約23°に設定されたものが例示されている。
【0016】ところで、ピン12が図中実線で示した直
立位置にある状態において、鍔部12aの後面(図示上
面)は駆動ギャ11の図示上面に面一に揃っていること
は上記したとおりであるが、このピン12が傾斜位置に
まで傾動されると鍔部12aの図示右側の上角部12d
は寸法L1 だけ図示上方へ変位する。例えば、鍔部12
aの直径をa、板厚をtとすると、ピン12が直立位置
からθ=23°傾動して傾斜位置に至ると、鍔部12a
の上記上角部12dは、 L1 =aSinθ−t+tCosθ =0.39a−0.08t だけ駆動ギャ11の図示上面から突き出た位置に変位す
る。すなわち、a=7mm、t=2mmとすると上記上
角部12dはL1 =約2.6mmだけ上方へ変位する。
【0017】また、ピン12が直立位置にある時には、
その本体部12bは駆動ギャ11の前面(図示下面)か
ら寸法L2 だけ突出され、この寸法L2 は上記した第1
クラッチ歯11bの高さと一致している(図4の分図
(a) 、図5の分図(a)(b)、図6の分図(e) 参照)。一
方、ピン12が鍔部12aの下角部12cを支点として
角度θだけ傾動されてその傾斜位置に至った状態におい
ては、本体部12bは駆動ギャ11の図示下面から寸法
L3 だけ突出され、この寸法L3 は、図からも明らかな
ように上記寸法L2 よりも小さく(L2 >L3 )、従っ
てクラッチ歯11bの高さよりも小さくなる(図5の分
図(c) 、図6の分図(d) 参照)。しかも、鍔部12aの
径は本体部12bの径よりも大きいことから、L1 >L
2 −L3 となる。
【0018】次に、図1に戻って上記説明した駆動ギャ
11の前方(図示左方)であって、スピンドル5の軸方
向ほぼ中央にはフランジ部14が一体に形成され、この
フランジ部14の後面(図示右側面)には、上記第1ク
ラッチ歯11bに噛み合う第2クラッチ歯14a〜14
aが形成されている。なお、このフランジ部14と上記
駆動ギャ11との間に前記した圧縮コイルバネ19が装
着されている。
【0019】上記第2クラッチ歯14aは、図2におい
て二点鎖線で示したように周方向六等分位置に放射状に
配置されている。また、この第2クラッチ歯14aのフ
ランジ部14からの突出高さは、第1クラッチ歯11b
と同じ寸法L2 となっている。ここで、この第2クラッ
チ歯14a〜14aの、第1クラッチ歯11b〜11b
およびピン12〜12に対する位置関係について説明す
る。図5の各分図には駆動ギャ11およびフランジ部1
4の展開図が示されているが、同図の分図(b)に示す状
態は、当該スクリュドライバ1をねじSの締め込み方向
に押し付けることによりスピンドル5ひいてはフランジ
部14が駆動ギャ11に押し付けられているが、ピン1
2は未だ直立位置にあってクラッチ機構4が接続されて
いない状態であり、この時には各第2クラッチ歯14a
は第1クラッチ歯11bとピン12との間にそれぞれ一
つづつ入り込み、第1クラッチ歯11bと第2クラッチ
歯14aは噛み合っていない。ところが、分図(c) に示
す状態は上記状態から、駆動ギャ11がフランジ部14
に対して回転方向(図中矢印で示した方向)に相対的に
変位して第2クラッチ歯14aによりピン12が直立位
置から傾斜位置に傾動され、これにより駆動ギャ11の
回転力がピン12と第2クラッチ歯14aとの噛合いを
経てスピンドル5に伝達されている状態であり、しかも
ピン12を傾動させている第2クラッチ歯14aに隣接
する第2クラッチ歯14aと駆動側の第1クラッチ歯1
1bが噛み合った状態が示されている。このように、従
動側の第2クラッチ歯14a〜14aは、駆動ギャ11
側のピン12を傾動させて回転力が伝達される状態にお
いて、同時に第1クラッチ歯11bと噛み合うよう、第
1クラッチ歯11bおよびピン12に対する位置関係が
設定されている。
【0020】以上説明した第1クラッチ歯11b〜11
b、ピン12〜12と第2クラッチ歯14により当該ス
クリュドライバ1におけるサイレントクラッチ機構4が
構成されており、これは後述するように作動する。
【0021】次に、スピンドル5の先端側には軸孔15
が形成されており、この軸孔15にドライバビット16
の後端部が挿入されてこのドライバビット16が当該ス
クリュドライバ1の先端に装着される。装着されたドラ
イバビット16は、ストッパスリーブ6に支持されつつ
スピンドル5と一体に回転し、かつ軸方向に移動する。
一方、ハウジング2の先端には、ねじ部2aを経てアジ
ャストスリーブ7が取付けられており、このアジャスト
スリーブ7の先端に上記したストッパスリーブ6が着脱
可能に取付けられている。このため、アジャストスリー
ブ7を回転させることによりこのストッパスリーブ6は
ハウジング2に対して軸方向の位置を調整可能でありか
つ任意の位置で固定できるようになっている。なお、ア
ジャストスリーブ7の後部とハウジング2との間には圧
縮コイルバネ7aが装着されているため、ストッパスリ
ーブ6が振動等により位置ズレすることなく、またスム
ーズな位置調整がなされるようになっている。また、ス
ピンドル5の先端部には、スチールボール17aとリー
フスプリング17bを主体とするストッパ機構17が設
けられて、ドライバビット16の抜け止めがなされるよ
うになっている。さらに、図中18は防塵リングであ
り、アジャストスリーブ7内に侵入したゴミ等の異物が
機器内(ハウジング2の内部)に侵入しないようになっ
ている。
【0022】以上のように構成された電動スクリュドラ
イバ1におけるクラッチ機構4は次のように作動する。
なお、以下図4、図5および図6に基づいて説明する
が、図4の各分図(a) 〜(d) はそれぞれ図5の分図(a)
〜(c) および図6の分図(d) に対応している。
【0023】さて、図4には、実際のねじ締め作業に伴
うクラッチ機構4の動作が順に示されている。先ず、分
図(a) はドライバビット16にねじSをセットし、この
ねじSを被締付材Wのねじ込み位置にあてがった状態で
あるが未だスクリュドライバ1は締め込み方向に押し付
けられていない状態を示している。この状態において
は、スピンドル5ひいてはフランジ部14は圧縮コイル
バネ19の付勢力により駆動ギャ11から離れているた
め、第1クラッチ歯11bと第2クラッチ歯14aは噛
み合っておらず、かつピン12は直立位置にあって当該
クラッチ機構4は遮断された状態にある。この遮断状態
におけるクラッチ機構4が図5の分図(a)に展開図で示
されている。
【0024】この状態から当該スクリュドライバ1を圧
縮コイルバネ19に抗してねじSの締め込み方向に押し
付けると、分図(b) に示すようにハウジング2とともに
ストッパスリーブ6は前方(図示左方)に移動するが、
ドライバビット16ひいてはスピンドル5は移動せず、
従って相対的に後退すなわち図示右方に移動し、これに
よりフランジ部14は駆動ギャ11に押し付けられる。
この状態において、各第2クラッチ歯14aは図5の分
図(b) に示すように駆動側である第1クラッチ歯11b
とピン12の間にそれぞれ入り込んだ状態となってい
る。この状態においては、ピン12は未だ直立位置にあ
り、かつ第1クラッチ歯11bと第2クラッチ歯14a
は回転方向(図示左方)について噛み合っていない。
【0025】上記状態に至った後、トリガ8を押し操作
してモータ3を起動すると駆動ギャ11が回転し、この
回転力がクラッチ機構4を経てスピンドル5に伝達さ
れ、ねじ締めが進行する。ここで、この段階におけるク
ラッチ機構4の状態を考えると、図5の分図(c) に示す
ように駆動ギャ11はフランジ部14に対して回転方向
(図示矢印方向)に変位している。このため、ピン12
の図面に向かって左側に入り込んでいた第2クラッチ歯
14aが相対的に図示右方(逆転方向)に移動し、これ
によりピン12の下端部が図示右方に押され、従ってピ
ン12はその鍔部12aの下角部12cを支点として図
面に向かって反時計回り方向に傾動され、最終的にその
傾斜位置に到っている。この傾斜位置に位置する状態に
おいては、前記したように鍔部12aの周面のほぼ半周
が受け孔13cの側壁13dに押し付けられ、かつ本体
部12bの周面のほぼ半周が逃がし凹部13bの側壁に
押し当てられている。この状態は、従動側である第2ク
ラッチ歯14aと駆動側であるピン12が言わば噛み合
った状態であり、この時点で始めて、クラッチ機構4が
連結された状態となり、よって駆動ギャ11の回転力が
スピンドルに伝達される。
【0026】しかも、上記のようにしてピン12が傾斜
位置に至ると、前記したようにその鍔部12aの上角部
12dが寸法L1 だけ駆動ギャ11の後面から突き出す
方向に変位するので、軸方向に移動しないスラスト軸受
10との間には寸法L1 の隙間が発生し、従って駆動ギ
ャ11はその反動によってフランジ部14ひいてはスピ
ンドル5と一体となって同寸法L1 だけ前方に押し出さ
れる(実際には、当該スクリュドライバ1が持ち上が
る)。
【0027】さらに、駆動ギャ11とフランジ部14が
周方向に変位することにより、上記したようにピン12
と第2クラッチ歯14aが噛み合う他、ピン12の図面
に向かって右側に位置していた第2クラッチ歯14aが
第1クラッチ歯11bと噛み合う。こうして、モータ3
が起動されることにより駆動ギャ11が回転し、回転し
始めた直後において駆動ギャ11に押し付けられていた
フランジ部14が相対的に逆転方向に変位することで、
ピン12、第1クラッチ歯11bと第2クラッチ歯14
aとの噛合い状態が実現される。
【0028】以上のようにしてクラッチ機構4が連結さ
れた状態が保持されてねじ締めが進行していくと、スト
ッパスリーブ6が被締付材Wに当接する。当接したま
ま、残り僅かな締め込み量をさらに締込んでいくことに
より、ねじSの締め込みが完了する。この完了した状態
が分図(d) に示されている。ここで、ストッパスリーブ
6が被締付材Wに当接した後においてねじ締めをさらに
進行していくと、ストッパスリーブ6ひいては当該スク
リュドライバ1はもはや移動しないのであるが、スピン
ドル5は第1クラッチ歯11bからの回転トルクによっ
て第2クラッチ歯14aの斜面に沿って前方に押し出さ
れて、締め込まれるねじSに追従してその軸方向に移動
する。このため、フランジ部14は駆動ギャ11から徐
々に離れていくこととなり、従ってピン12および第1
クラッチ歯11bに対する第2クラッチ歯14aの噛合
いは徐々に浅くなっていく。そして、図4および図6の
両分図(d) に示すようにねじSの締め込みが完了した時
点で、先ずピン12と第2クラッチ歯14aの噛合いが
外れる。ところが、図6の分図(d) によく示されている
ようにこの時点で、第1クラッチ歯11bは未だ第2ク
ラッチ歯14aと噛み合っている。これは、前記したよ
うに傾斜位置にあるピン12の、駆動ギャ11の前面か
らの突出寸法L3 は直立位置にあるときの突出寸法L2
よりも小さく、かつこの突出寸法L2 は第1クラッチ歯
11bの突出高さに一致しているため、第1クラッチ歯
11bの突出高さよりも低い状態にあることによる。従
って、この時点における第1クラッチ歯11bと第2ク
ラッチ歯14aとの噛合い深さは、同図に示したように
寸法(L2 −L3 )となる。
【0029】このように、第2クラッチ歯14aがピン
12から外れる一方、第1クラッチ歯11bとは噛み合
っている状態が瞬間的に現れるのであるが、ピン12が
第2クラッチ歯14aから外れると、このピン12は傾
斜位置から直立位置すなわち軸方向に沿った位置に瞬時
に戻される。この現象は、駆動ギャ11が圧縮コイルバ
ネ19によりスラスト軸受10側に押し付けられている
ため、両者11,10間の隙間(寸法L1 )がゼロにな
る方向、すなわちピン12の鍔部12aの上角部12d
が受け孔13c内に戻される方向に付勢されていること
による。このため、第2クラッチ歯14aによる押し付
けが解除されるとこのピン12は間接的に圧縮コイルバ
ネ19の付勢力によって傾斜位置から直立位置に戻され
るのである。
【0030】ピン12が直立位置に戻されると同時に、
駆動ギャ11はスラスト軸受10に押し付けられ、従っ
てフランジ部14から遠ざかる方向に寸法L1 だけ後退
する。この時点で第2クラッチ歯14aと第1クラッチ
歯11bの噛合いが外れる。この状態が、図6の分図
(e) に示されている。ここで、駆動ギャ11がL1 だけ
後退すると同時にピン12の突出し寸法はL2 −L3 だ
け大きくなるのであるが、前記したようにL1 >L2 −
L3 の関係にあることから駆動ギャ11が後退するとピ
ン12の先端と第2クラッチ歯14aとの間にL1 −
(L2 −L3 )に相当する隙間L4 が発生する。また、
第1クラッチ歯11bと第2クラッチ歯14aとの間に
も同じ距離の隙間L4 が発生する。このように、駆動ギ
ャ11が距離L1 だけ後退すると、第1クラッチ歯11
bと第2クラッチ歯14aの噛合いが外れるばかりでな
く、第1クラッチ歯11b、ピン12と第2クラッチ歯
14aとの間には図示するように適正な隙間L4 が発生
し、これにより駆動ギャ11が回転していても第1クラ
ッチ歯11b、ピン12と第2クラッチ歯14aとの干
渉は発生せず、よってクラッチ機構4の静かな空転状態
が実現される。
【0031】以上説明したように、本例のクラッチ機構
4によれば、従来サイレントクラッチ機構に必須の部材
であった中間クラッチエレメント53に相当する部材を
用いることなく静かな空転状態を実現できるので、その
ためのスペースを必要とすることなく従って機長を長く
することなくサイレントクラッチ機構4を備えた電動ス
クリュドライバ1を提供できる。また、第1クラッチ歯
11bあるいは第2クラッチ歯14aは、それぞれ駆動
ギャ11あるいはフランジ部14の片面にのみ形成して
おけば足りるので、従来の中間クラッチエレメント53
のように両面に形成する場合に比して耐久性、耐摩耗性
あるいは加工精度等の点について簡略化を図り、これに
よりコストダウンを図ることができる。
【0032】さらに、ピン12が摩耗等した場合にはこ
のピン12だけを交換することができ、駆動ギャ11等
はそのまま使用できるのでメンテナンスコストが低下す
る。この点、従来であれば、例えば片面のクラッチ歯が
摩耗した場合であっても中間クラッチエレメント53を
一体で交換する必要があったため、メンテナンスコスト
が割高になっていた。
【0033】また、後述する第2の実施の形態とは違っ
て、ピン12および第1クラッチ歯11bの双方が第2
クラッチ歯14aに噛み合って回転力が伝達される構成
であるので、ピン12と第2クラッチ歯14aとの噛合
いのみによって回転力を伝達する構成(第2の実施の形
)に比してより強固な回転力の伝達を行うことがで
き、かつピン12の負担を低減してその耐久性を高める
ことができる。従って、これらの点を改善することを目
的とする場合には、以上説明した第1の実施の形態を採
用することが望ましい。
【0034】なお、本例ではピン12は三本の場合を例
示したが、ピン12の数については二本あるいはスペー
スが許すならば四本以上であってもよく、任意に設定す
ればよい。ただし、第2クラッチ歯14aはピン12の
数に対応して設け、全てのピン12が同時に傾動される
構成とすることがクラッチ機構の強度あるいは伝達効率
の点で望ましい。
【0035】次に、第2の実施の形態を図7にしたがっ
説明する。前記第1の実施の形態における第1クラッ
チ歯11bは必ずしも必要なものではなく、ピン12と
第2クラッチ歯14aとの噛合いのみによって回転力を
伝達することが可能である。そこで、第2実施例におけ
るクラッチ機構20は、図7に示すように前記第1の実
施の形態における駆動ギャ11側の第1クラッチ歯11
bをなくした構成であり、その他については同様であ
る。従って変更を要しない点については説明を省略する
とともに以下の説明及び図では第1の実施の形態と同位
の符号を用いる。
【0036】駆動ギャ21の前面(図示下面)には三本
のピン12〜12のみが突き出されており、前記第1ク
ラッチ歯11bに相当するものは設けられていない。一
方、スピンドル5に一体形成されたフランジ部14の後
面(図示上面)には第2クラッチ歯14a〜14aが全
く同様に形成されている。このような構成によってもク
ラッチ機構20はほぼ同様に機能する。
【0037】すなわち、図7の分図(a) に示すようにス
ピンドル5ひいてはフランジ部14が駆動ギャ21に押
し付けられていない状態においては、各ピン12は直立
位置にあり、スクリュドライバを押し付けてフランジ部
14が駆動ギャ21に押し付けられると第2クラッチ歯
14aがピン12,12間に入り込む。然る後、モータ
3を起動して駆動ギャ21を回転すると駆動ギャ21
は、分図(b) に示すようにフランジ部14に対して回転
方向(図示左方)に変位し、このためピン12はその本
体部12bの先端部(図示下端部)を第2クラッチ歯1
4aに押されて直立位置から傾斜位置に傾動される。そ
して、本例の場合、駆動ギャ21に伝達された回転力は
三本のピン12〜12と三つの第2クラッチ歯14a〜
14aとの噛合いのみによってスピンドルに伝達され
る。
【0038】ねじ締めが進行して第2クラッチ歯14a
とピン12の噛合いが外れると、その瞬間ピン12は圧
縮コイルバネ19の間接的作用により直立位置に戻さ
れ、これと同時に駆動ギャ21が圧縮コイルバネ19に
より寸法L1 だけ後退してスラスト軸受10に押し付け
られ、従ってフランジ部14から遠ざけられる。ピン1
2が外れるとともに、駆動ギャ21がさらに寸法L1 だ
け遠ざけられるのでピン12と第2クラッチ歯14aと
の間には第1実施例と同様に適正な隙間(図5の分図
(e) のL4を参照)が発生し、よってクラッチ機構20
の静かな空転状態を実現できる。
【0039】このように第2の実施の形態に係るクラッ
チ機構20によっても前記第1の実施の形態と同様に、
従来の中間クラッチエレメントに相当する部材を用いる
ことなくねじ締め完了後におけるクラッチの静かな空転
状態を得ることができ、しかも本例の場合第1クラッチ
歯11bを設ける構成ではないので、第1の実施の形態
に比してより簡易かつ低コストのサイレントクラッチを
備えた電動スクリュドライバを提供できる。従って、サ
イレントクラッチをより簡易かつ低コストとする場合に
は、本例の構成を適用することが有用である。
【0040】なお、図では第2クラッチ歯14aを6箇
所に設けた場合を例示したが、周方向3等分の合計3箇
所に設けておけば、駆動力の伝達というクラッチ本来の
機能は果たせる。
【0041】次に、本発明の第3の実施の形態を図8に
したがって説明する。本例は、図8に示すように前記第
2実施例における保持孔13の逃がし凹部13bを、駆
動ギャ31の回転方向の前側(図示左側)および後ろ側
(図示右側)の双方に形成した実施の形態である。すな
わち、本例の保持孔32は、ピン12の鍔部12aが収
容される受け孔32aと、この受け孔32aの軸心に対
して駆動ギャ31の回転方向の前側と後ろ側の双方に相
互に連続して形成された二つの逃がし凹部32b,32
bから構成されている。この点、前記第1および第2
実施の形態では、逃がし凹部13bは各保持孔13にお
いて、駆動ギャ11の回転方向の後ろ側の一方にのみ形
成されていた。両逃がし凹部32b,32bは受け孔3
2aの軸心に対して前後(図示左右)対称に形成されて
おり、それぞれフランジ部14側の第2クラッチ歯14
aの歯面の傾斜角度と同じ角度で傾斜して図示下方へ開
拡状に形成されている。なお、本例の場合、回転方向の
前後双方に逃がし凹部32bが相互に連続して形成され
ているので、第1および第2実施例における孔本体13
aに相当する孔はなく、その他については第2の実施の
形態と同様であり、その余の構成は、第1および第2の
実施の形態でその説明を省略し、以下の説明及び図では
同位の符号を用いる。
【0042】このような保持孔32によれば、ピン12
は駆動ギャ31の回転方向の前後双方に傾動可能であ
り、従って正転・逆転の両方向に回転力を伝達すること
ができる。図8の分図(a) はピン12が直立位置にある
状態を、分図(b) は回転方向後ろ側の傾斜位置(正転用
の傾斜位置)に傾動した状態を、分図(c) は回転方向前
側の傾斜位置(逆転用の傾斜位置)に傾動した状態を示
している。
【0043】すなわち、分図(a) に示すようにドライバ
ビット、スピンドルを経てフランジ部14が駆動ギャ3
1に押し付けられていない状態にあっては、各ピン12
は直立位置に位置しているが、ドライバビット16の先
端にねじSをセットして当該スクリュドライバ1をねじ
Sの締め込み方向に押し付けると、フランジ部14は駆
動ギャ31に押し付けられ、この時点で第2クラッチ歯
14a,14a間にピン12が入り込んだ状態となる
(図5分図(b) 参照)。この状態からトリガ8を押し操
作してモータ3を正転方向に起動すると、駆動ギャ31
は図示左方の正転方向に回転するのであるが、この回転
開始直後において駆動ギャ31が正転方向へ変位するこ
とによりピン12の図示左側に位置している第2クラッ
チ歯14aが相対的に図示右方に変位し、これにより当
該ピン12が図示右方に傾動されて図示右側の逃がし凹
部32bの壁面に押し付けられ、傾斜位置に至る。以上
の点については前記第1および第2の実施の形態と同様
である。
【0044】ここで、スクリュドライバ1を逆転操作し
ていわゆる逆ねじを締め込む場合を考える。例えば、正
逆切換えスイッチを逆転側に切り換えた上で、トリガ8
を押し操作してモータ3を起動すると駆動ギャ31は上
記とは反対の逆転方向(図示右方)に回転する。従っ
て、この場合には分図(c) に示すようにピン12の図示
右側に位置している第2クラッチ歯14aが相対的に図
示左方に変位し、これにより当該ピン12は押されて図
示左方に傾動され、然る後、図示左側の逃がし凹部32
bの壁面に押し付けられて当該ピン12が上記とは反対
側の傾斜位置に至る。ピン12が傾斜位置に至ると、こ
のピン12を経て上記とは逆方向の回転力がスピンドル
5に伝達され、従って逆ねじが締め込まれる。ストッパ
スリーブ6が被締付材Wに当接した後、逆ねじの締め込
みが完了するとピン12は第2クラッチ歯14aから外
れて傾斜位置から直立位置に戻されるので、駆動ギャ3
1が後退し、これによりピン12と第2クラッチ歯14
aとの間に適正な隙間L4 が生じ、静かな空転状態が得
られる。
【0045】このように第3の実施の形態の構成によれ
ば、通常の右ねじSのみならずいわゆる逆ねじを締め込
む場合にもサイレントクラッチ機構4を機能させること
ができ、従ってこの点を目的とする場合にはこの第3
実施の形態の構成を採用することが望ましい。
【0046】次に、本発明の第4の実施の形態を図9か
ら図13にしたがって説明する。この実施の形態におい
、図9は、本例のクラッチ機構40を適用した電動ス
クリュドライバ1の全体を示している。本例は、図10
および図11に示すようにピン41およびこのピン41
を駆動ギャ43に所定の状態に保持するための保持孔4
2の別の実施の形態である。従って、その他の点につい
ては前記第1ないし第3の実施の形態と同様であるので
説明を省略するとともに以下の説明および図では同位の
符号を用いる。
【0047】図11に示すように本例のクラッチ機構4
0におけるピン41は、半球体をなす頭部41aとこの
頭部41aの頂部から図示下方に立設状に一体形成され
た、円柱体をなす本体部41bとから構成されている。
本体部41bの形状あるいは寸法は前記ピン12の本体
部12bと同じである。
【0048】保持孔42は、上記ピン41の頭部41a
を図示下方から受けるべく同一径の半球状の凹部をなす
受け孔42aと、この受け孔42aに貫通して形成さ
れ、ピン41の本体部41bが挿通される孔本体42c
と、この孔本体42cの図示右側すなわち駆動ギャ43
の回転方向後ろ側に連続して形成された逃がし凹部42
bとから構成されている。逃がし凹部42bにより本体
部41bひいてはピン41は駆動ギャ43の回転方向後
ろ側に傾動可能であり、傾動する際にはピン41の頭部
41aが受け孔42aの湾曲壁面に摺接される。すなわ
ち、ピン41の頭部41aはその側面のほぼ全面を受け
孔42aの湾曲壁面に当接した状態に保持され、この点
で頭部41aは保持孔42の受け孔42aに対して面当
たりで受けられるので、より大きな回転力を伝達する場
合のピン41および保持孔42の耐久性が高める点で有
用である。これに対して前記ピン12は、鍔部12aの
下角部12cを支点として傾動し、この状態で回転力を
受ける構成であるので、鍔部12aは受け孔13cに対
してほぼ点当たりで受けられる。このように、本例の構
成によればピン41および保持孔42の耐久性が高めら
れるので、第1〜第3の実施の形態に比してピン41お
よび保持孔42の耐久性を高めることを目的とする場合
にはこの第4の実施の形態の構成を用いることが有利で
ある。
【0049】図12および図13は本例のクラッチ機構
40の作動を示している。前記各実施の形態と大きな差
異はないが以下簡単に説明する。図12の分図(a) はス
クリュドライバ1を押し付けていない状態であり、フラ
ンジ部14と駆動ギャ43は圧縮コイルバネ19によっ
て離れている。この時、ピン41は圧縮コイルバネ19
の間接的作用により直立位置に位置している。この状態
から当該スクリュドライバ1を押し付けると、分図(b)
に示すようにフランジ部14が駆動ギャ43に押し付け
られ、これにより第2クラッチ歯14a,14a間にピ
ン41が入り込む。然る後、トリガ8を押し操作してモ
ータ3を起動すると駆動ギャ43が回転し、回転し始め
た直後おいて駆動ギャ43は分図(c) に示すようにフラ
ンジ部14に対して回転方向に変位し、従って第2クラ
ッチ歯14aは図示右方の回転方向後ろ側に相対的に変
位してピン41の先端部を同後ろ側に押し、最終的にピ
ン41が傾斜位置に傾動される。また、これと同時に第
1クラッチ歯43aと第2クラッチ歯14aが噛み合
う。この時点で、ピン41、第1クラッチ歯43aと第
2クラッチ歯14aとの噛合いを経て駆動ギャ43から
フランジ部14ひいてはスピンドル5に回転力が伝達さ
れ、ねじ締めが行われる。
【0050】ねじ締めが進行してストッパスリーブ6が
被締付材Wに当接するとスピンドル5だけが軸方向に移
動し、従って第2クラッチ歯14aに対するピン41お
よび第1クラッチ歯43aの噛合い深さが徐々に浅くな
って、ねじ締めがほぼ完了した時点で図13の分図(d)
に示すようにピン41と第2クラッチ歯14aとの噛合
いが外れる。ピン41が第2クラッチ歯14aから外れ
ると、図13の分図(e) に示すようにこのピン41は圧
縮コイルバネ19の間接的作用により即座に直立位置に
戻され、従って駆動ギャ43は圧縮コイルバネ19の付
勢力により距離L1 だけ後退してスラスト軸受10との
間の隙間L1 は零になる。このようにピン41が第2ク
ラッチ歯14aから外れるとその瞬間に駆動ギャ43が
十分な距離L1 だけ後退してフランジ部14から十分に
遠ざかるので、ピン41、第1クラッチ歯43aと第2
クラッチ歯14aとの間に適正な隙間L4 が発生し、よ
って当該クラッチ機構40の静かな空転状態が実現され
る。
【0051】なお、本実施の形態においても前記したと
同様で、第1クラッチ歯43aは必ずしも必要ではな
く、また逃がし凹部42bは駆動ギャ43の回転方向前
側にも設ける構成として逆ねじの締付けをも可能とする
ことができる。
【0052】
【発明の効果】本発明によれば、従来の中間クラッチエ
レメントに相当する部材を用いることなく、駆動ギャの
静かな空転状態を実現できるので、従来に比して機長を
短縮し、軽量化を図り、しかも低コストを実現した、サ
イレントクラッチを備えた電動スクリュドライバを提供
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態を示し、電動スクリ
ュドライバの要部を破断して示した全体図である。
【図2】駆動ギャの正面図である。
【図3】第1の実施の形態におけるピンの保持状態を示
した側面図である。
【図4】サイレントクラッチの動作状態を示し、分図
(a) はスクリュドライバの非押付け状態におけるクラッ
チの状態、分図(b) は押付け状態におけるクラッチの状
態、分図(c) はねじ締め中におけるクラッチの噛合い状
態、分図(d) はねじ締め完了時におけるクラッチの状態
を示す。
【図5】サイレントクラッチの噛合い状態を示し、分図
(a) はスクリュドライバの非押付け時、分図(b) は押付
け時、分図(c) はねじ締め中における状態を示す。
【図6】同じく、サイレントクラッチの噛合い状態を示
し、分図(d) はねじ締め完了時における状態、分図(e)
は空転時における状態を示す。
【図7】第2の実施の形態のサイレントクラッチの動作
状態を示し、分図(a) はスクリュドライバの非押付け時
における状態、分図(b) はねじ締め中における状態を示
す。
【図8】第3の実施の形態のサイレントクラッチの動作
状態を示し、分図(a) はスクリュドライバの非押付け時
における状態、分図(b)はねじ締め中における状態、分
図(c) は逆ねじの締付中における状態を示している。
【図9】第4の実施の形態にかかるサイレントクラッチ
が装備されたスクリュドライバの先端部の縦断面図であ
る。
【図10】第4の実施の形態のサイレントクラッチにお
ける駆動ギャの正面図である。
【図11】第4の実施の形態のサイレントクラッチにお
けるピンの動作状態を示す側面図である。
【図12】第4の実施の形態のサイレントクラッチの動
作状態を示し、分図(a) はスクリュドライバの非押付け
時における状態、分図(b) は押付け時の状態、分図(c)
はねじ締め中の状態を示す。
【図13】第4の実施の形態のサイレントクラッチの動
作状態を示し、分図(d) はねじ締め完了時点の状態、分
図(e) は空転時の状態を示す。
【図14】従来のサイレントクラッチを示し、特公平3
−5952号公報の図2aを援用した図である。
【符号の説明】
4…クラッチ機構(第1の実施の形態) 5…スピンドル 6…ストッパスリーブ 7…アジャストスリーブ 11…駆動ギャ 12…ピン 12a…鍔部 12b…本体部 13…保持孔 13b…逃がし凹部 13c…受け孔 13d…受け孔の側壁 14a…第2クラッチ歯 16…ドライバビット、19…圧縮コイルバネ 20…クラッチ機構(第2の実施の形態) 30…クラッチ機構(第3の実施の形態) 40…クラッチ機構(第4の実施の形態) L1 …駆動ギャとスラスト軸受との隙間 L2 …直立位置にあるピンの突出し寸法 L3 …傾斜位置にあるピンの突出し寸法 L4 …クラッチ空転時におけるピンと第2クラッチ歯と
の隙間 S…ねじ W…被締付材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B25B 21/00 530 B25B 23/14 610 B25B 23/157 F16D 43/20

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 電動スクリュドライバ本体の回転駆動機
    構に連係する駆動ギャとドライバビットが装着されるス
    ピンドルとを、該ドライバビットの軸心上に整合して対
    させるとともに、このスピンドルを前記電動スクリュ
    ドライバ本体に対して軸方向移動可能に支持して前記駆
    動ギャに対して接近、離間可能かつ離反方向にバネ付勢
    して設けた電動スクリュドライバのサイレントクラッチ
    において、 前記スピンドルの駆動ギャに対向する端面には前記軸心
    を中心とする円周上に複数のクラッチ歯を配設し、前記
    駆動ギャには、先端部が前記クラッチ歯に噛合及び解離
    可能なピンを、前記軸心に直交する方向を傾動支点とし
    て前記クラッチ歯と正対する状態から一定量だけ傾動可
    能に配置するとともに、常には正対状態となるように付
    勢し、前記電動スクリュドライバ本体のねじ締め方向への押し
    付け操作による前記スピンドルの前記駆動ギャ側への相
    対移動により前記クラッチ歯を前記ピンに 噛合させて、
    該ピンを傾動させた状態に保持しつつ前記駆動ギャとス
    ピンドルとを連結して該スピンドルにねじ締め力を伝達
    する一方、 ねじ締めの進行に伴う前記スピンドルの前記電動スクリ
    ュドライバ本体に対する前記駆動ギャから離間する方向
    への相対移動により前記 クラッチ歯とピンとの噛合を解
    離させて、該ピンを付勢力により正対状態に戻して前記
    駆動ギャと前記スピンドルとを解離するように構成した
    ことを特徴とする電動スクリュドライバのサイレントク
    ラッチ。
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