JP3238304B2 - スケール溶解液 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、金属表面から金属
酸化物を含むスケールを溶解除去するためのスケール溶
解液に関する。

【０００２】

【従来の技術】金属表面からスケールを除去する従来の
一般的な方法として、塩酸、硫酸などの無機酸又はクエ
ン酸、しゅう酸などの有機酸を用いて洗浄する方法があ
る。これらの方法においては、主として洗浄液の酸性度
が高い（ｐＨ４以下）ことによる過酸洗の恐れ、取扱上
の危険性、環境汚染の恐れなどの問題点があった。本発
明者らは、これらの従来技術における問題点を解決する
方法として、燐酸塩又はキレート剤に硝酸イオン、塩素
イオン、硫酸イオンなどを添加し、かつｐＨを５．５〜
９．５に調整してなるスケール溶解組成物を提案した
（特願平２−１４５４７５号、特願平２−１８７９６４
号及び特願平２−１８７９６５号）。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】本発明者らが先に提案
したスケール溶解組成物を使用することにより、無機酸
及び有機酸による従来法の欠点は解消されたが、なおス
ケールの溶解に長時間を要するという問題点を有してい
た。

【０００４】本発明は上述した問題点を解消し、中性付
近のｐＨ域にありながらスケールの溶解速度が速く、洗
浄所要時間を短縮することができる金属表面から金属酸
化物を含むスケールを溶解除去するためのスケール溶解
液を提供しようとするものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明は１−ヒドロキシ
エチリデン−１，１−ジホスホン酸の第三アルカノール
アミン塩の水溶液であって、かつ水溶液のｐＨ値を５．
０〜８．５の範囲に調整してなることを特徴とする金属
表面から金属酸化物を含むスケールを溶解除去するため
のスケール溶解液である。

【０００６】本発明のスケール溶解液の有効成分である
１−ヒドロキシエチリデン−１，１−ジホスホン酸の第
三アルカノールアミン塩を形成する第三アルカノールア
ミンとしては、例えばＮ，Ｎ−ジメチルエタノールアミ
ン、Ｎ−メチルジエタノールアミン、トリエタノールア
ミン、トリイソプロパノールアミン、ポリオキシエチレ
ン４モルエチレンジアミン付加物、などの分子内に１個
以上のＯＨ基を有する脂肪族第三アルカノールアミン類
が挙げられ、これらの第三アルカノールアミンのポリオ
キシエチレン付加物などの誘導体も使用できる。

【０００７】スケール溶解液中における前記１−ヒドロ
キシエチリデン−１，１−ジホスホン酸の第三アルカノ
ールアミン塩の濃度は０．１〜３０重量％、好ましくは
１〜１０重量％とする。０．１重量％未満の濃度ではス
ケール除去速度が低くなり、また３０重量％を越えても
濃度の上昇に見合っただけのスケール除去速度の向上は
なく、スケール除去に要する経費が増大するので好まし
くない。

【０００８】本発明のスケール溶解液は前記１−ヒドロ
キシエチリデン−１，１−ジホスホン酸の第三アルカノ
ールアミン塩の水溶液のｐＨを５．０〜８．５の範囲に
調整したものである。ｐＨの調整は中和のために添加す
る第三アルカノールアミンの添加量を調整することによ
って行うことができる。

【０００９】（作用）本発明のスケール溶解液が、金属
表面から金属酸化物を含むスケールを溶解除去する作用
機構については不明確であるが、１−ヒドロキシエチリ
デン−１，１−ジホスホン酸を第三アルカノールアミン
で中和し、これらの第三アルカノールアミンの塩とする
ことにより、特異的にスケール溶解力（速度）が向上す
る。

【００１０】

【実施例】各種第三アルカノールアミンの１−ヒドロキ
シエチリデン−１，１−ジホスホン酸塩について、濃度
３重量％、ｐＨが６の水溶液を調整し、洗浄試験を行っ
た。また、比較のため１−ヒドロキシエチリデン−１，
１−ジホスホン酸のアルカリ金属塩、ＯＨ基を持たない
第一アミン塩、第二アミン塩又は第三アミン塩の水溶液
についても同様の試験を行った。

【００１１】試験方法は次のとおりである。５００ミリ
リットルのビーカに前記のように調整したスケール溶解
液の試料を３００ミリリットルずつ入れ、４０ｍｍ×７
０ｍｍ×２ｍｍのテストピース（ＳＳ−４１製、１ヵ月
間屋外に放置して自然発錆させたもの）を浸漬して２４
〜２８℃で１時間静置した。その後、各試験片を取出
し、それぞれの脱スケール状況を観察、評価した。

【００１２】脱スケール状況の評価結果を表１に示し
た。表１から明らかなように、脂肪族第一アミン、第二
アミン、ＯＨ基を持たない第三アミン又は環状アミンで
ｐＨ調整したものはＫＯＨ、ＮａＯＨ又はアンモニアで
ｐＨ調整したものとほぼ同程度で約５０％程度の脱スケ
ール性能を示した。これに対し、本発明の第三アルカノ
ールアミンでｐＨ調整したものはいずれも良好な脱スケ
ール性能を示した。特に、トリエタノールアミンを使用
した場合は優れた脱スケール性能を示した。ただし、分
子構造が複雑になると効果は劣る傾向を示した。なお、
表１中の脱錆力の評価は、脱スケール状況を観察し、脱
スケールの程度がほぼ９０〜１００％のものを◎、約６
０〜９０％のものを○、約５０〜６０％のものを△、５
０％程度以下のものを×とした。

【００１３】

【表１】

【００１４】

【発明の効果】本発明によるスケール溶解組成物を適用
することにより、次の効果がある。 １）洗浄所要時間が短縮され、工事費を低減することが
できた。 ２）溶解速度が速くなったため、適用範囲が拡大した。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 坂西 彰博 長崎県長崎市深堀町五丁目717番１号 三菱重工業株式会社 長崎研究所内 (72)発明者 牧浦 秀治 長崎県長崎市飽の浦町１番１号 三菱重 工業株式会社 長崎造船所内 (72)発明者 福岡 重範 奈良県奈良市西九条町５丁目２番地の５ 共栄社化学株式会社 奈良研究所内 (72)発明者 手塚 秀樹 奈良県奈良市西九条町５丁目２番地の５ 共栄社化学株式会社 奈良研究所内 (56)参考文献 特開 平６−205604（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C23G 5/02 C07F 9/38 C11D 7/36

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 １−ヒドロキシエチリデン−１，１−ジ
   ホスホン酸の第三アルカノールアミン塩の水溶液であっ
   て、かつ水溶液のｐＨ値を５．０〜８．５の範囲に調整
   してなることを特徴とする金属表面から金属酸化物を含
   むスケールを溶解除去するためのスケール溶解液。