JP3236981B2 - モータ用冷却ファン - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、電動工具等のモータに
用いられる冷却ファンに関するものである。

【０００２】

【従来の技術】上記冷却ファンは、一枚の鋼板等から複
数の羽根を放射状に打ち抜き、これを絞り加工によって
ねじれさせる等して成形される。特に打ち抜いた羽根間
に設けられるスリットの底部形状は、図５（Ａ）の如
く、各羽根２０，２０間の側部２１，２１を半円２２で
連続させたものや、或は同図（Ｂ）の如く、羽根２３，
２３間を分断するスリットとしての切込み２４の底部へ
ピンホール２５を設ける形態等が採用されている。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】冷却ファンはその回転
に伴い、空気抵抗による振動や、モータ軸へ加わる衝撃
によって荷重が加わるが、この時の応力は前記スリット
の底部へ集中する。従って長時間の使用により、この底
部に亀裂２６等の疲労破壊が生じて使用に堪えなくなっ
てしまう。前記半円２２やピンホール２５はその応力緩
和を目的として付与された形状であるが、羽根のねじれ
により加えられるスリット底部、つまり羽根の根元形状
の変形によって応力の集中は避けられず、特に衝撃の強
い場合は満足する耐久性を得るに至っていない。

【０００４】

【課題を解決するための手段】そこで本発明は、羽根の
根元となるスリット底部の応力を効果的に緩和し、高い
耐久性が得られるモータ用冷却ファンを提供するもの
で、その構成は、スリットの底部を、下辺を直線状とし
た略Ｕ字を含む形状としたことを特徴とするものであ
る。尚本発明でいう直線状とは、直線そのものは勿論、
直線に近い円弧等の曲線も含む。

【０００５】

【作用】スリットの底部が、下辺を直線状とした略Ｕ字
を含む形状で形成されているから、羽根のねじれが直線
状部分で緩和され、ゆるやかにねじれ変形しながら連続
し、冷却ファンの回転により羽根が振動したりしてもそ
こでの応力が一部分に集中しにくく、亀裂等の疲労破壊
の発生を極力遅らせることができる。

【０００６】

【実施例】以下本発明の実施例を図面に基いて説明す
る。図１（Ａ）は冷却ファンの正面図で、絞り加工前の
状態で示す。冷却ファン１は、鋼板を打ち抜き加工し、
中央にモータ軸への取付孔２と、その周囲へ放射状のス
リット３ａ，３ａ・・を形成して複数の羽根３，３・・
を分断してなり、特に冷却効率を確保するためにスリッ
ト３ａの外周側の間隔を底部側より狭く設定している。
一方各スリット３ａの底部は図２の如く、両側の羽根
３，３の側部４，４が、線対称に小円弧５，５と夫々連
続し、両小円弧５，５はその中間で大円弧６と連続し
て、下側が略Ｕ字となる底部Ａを形成している。前記大
円弧６は、取付孔２との同心円７から得たもので、その
長さは１．０mmとなっている。更にここでの小円弧５，
５は半径１．５mm、同心円７の直径は５３．０mm、又冷
却ファン１の直径は９２．０mmである。このように形成
した冷却ファン１を絞り加工によって図１（Ｂ）のよう
に各羽根３，３にねじれを与えても、ねじれによるスリ
ット３ａ底部の変形は小円弧５，５と下辺の大円弧６と
で均等化され、大円弧６部分で緩やかに変化するため、
小円弧５，５間は滑らかに連続する。こうして成形され
た冷却ファン１は例えば図３のように、取付孔２へかし
め接合したブッシュ８をモータ軸９へ圧入することでモ
ータ軸９と一体化される。そしてモータ軸９と一体回転
する冷却ファン１は、各羽根３が振動したり、モータ軸
９への衝撃が伝わったりしても、底部Ａは前記の如く小
円弧５，５と直線状の大円弧６とで滑らかに連続してい
るから、ここでの応力は緩和され、亀裂等の疲労破壊が
生じにくくなる。ちなみに前記従来の技術で述べた半円
やピンホールを採用した冷却ファンと比較すると、約３
〜５倍の寿命が得られることになる。

【０００７】尚上記実施例では小円弧５，５間を大円弧
６で連結させたが、このような円弧でなく直線そのもの
で連結しても良く、又大円弧６は、取付孔２の同心円７
からでなく、逆カーブの円弧であっても差し支えない。
一方スリットとその底部の形態も、図４のように切込み
１０と、その底部に設けたピンホール１２でも、上記大
円弧や直線１１等を設けて下辺を直線状としたＵ字を含
む形状に形成することによって、上記実施例と同様の効
果を得ることができる。

【０００８】

【発明の効果】以上本発明によれば、スリットの底部
を、下辺を直線状とした略Ｕ字を含む形状としたこと
で、羽根間のねじれを滑らかに連続させることができ
る。よって振動等による応力を効果的に緩和して疲労破
壊の発生を極力遅らせることが可能となり、冷却ファン
の寿命が大幅に伸びることになる。

【図面の簡単な説明】

【図１】（Ａ）冷却ファンの正面図である。 （Ｂ）冷却ファンの断面図である。

【図２】スリット底部の説明図である。

【図３】冷却ファンのモータ軸への取付状態を示す説明
図である。

【図４】スリット底部の変更例を示す説明図である。

【図５】（Ａ）従来の冷却ファンを示す説明図である。 （Ｂ）従来の冷却ファンを示す説明図である。

【符号の説明】

１・・冷却ファン、２・・取付孔、３・・羽根、４・・
側部、５・・小円弧、６・・大円弧、７・・同心円、８
・・ブッシュ、９・・モータ軸、１０・・切込み、１１
・・直線、１２・・ピンホール。

Claims (1)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 放射状のスリットを設けて複数の羽根を
   成形してなるモータ用の冷却ファンであって、前記スリ
   ットの底部を、下辺を直線状とした略Ｕ字を含む形状と
   したことを特徴とするモータ用冷却ファン。