JP3236608B2 - ブレオマイシン類の安定な水溶液 - Google Patents

ブレオマイシン類の安定な水溶液

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【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は注射又はインフュージョン(infusion)での
投与に好適な用事再溶解不要なブレオマイシン類の安定
な水溶液製剤に関する。
(従来の技術) ブレオマイシンは、1962年梅沢らにより発見された抗
腫瘍性抗生物質であり、放線菌、例えばストレプトミセ
ス属に属するストレプトミセス・バーチシラスを通常の
栄養源を含有する液体培地で通気攪拌下に培養すること
により産生され、培養濾液より公知の方法で抽出、精製
することにより、一原子の銅をキレートした青色粉末と
して得られる。(梅沢ら、J.Antibiotics 19A巻、210
頁、1966年) 通常の培養法によれば、末端アミン残基が異なる十数
種のブレオマイシン混合物が生産される。
又、末端アミン残基に対応する第一級アミンを前駆体
として培養液に添加する方法により培養すれば、一種類
のブレオマイシンが選択的に産生される。
第一の方法で得られるブレオマイシン混合物及び第二
の方法により得られるペプロマイシンが、それぞれの脱
銅体として癌治療の臨床面で広く使用されており特に偏
平上皮癌を中心に、皮膚癌、頭頸部癌、肺癌、悪性リン
パ腫、前立腺癌などで優れた成績を上げている。
これら臨床で用いられているブレオマイシン類は通常
水溶液中では極めて不安定であり、それぞれ、凍結乾燥
粉末として供給されており用時再溶解し注射、又はinfu
sionで投与されている。
(発明が解決しようとする課題) しかし、用時溶解して使用する事は繁忙時には極めて
面倒であり、ブレオマイシンのような強力な抗腫瘍剤の
場合には溶解時の事故、例えば液漏れ等は、注射液を作
る個人に健康上の危害を与える危険性もある。そのた
め、再溶解を必要としないブレオマイシン類の水溶液製
剤の製造が求められていたが、その不安定生の為未だに
実現されていない。
本発明の目標は、少なくとも冷所(<10℃)、2年間
安定な(<10%の含量低下)ブレオマイシン類の水溶液
製剤を供給することにある。
(課題を解決するための手段) 本発明者らはブレオマイシン水溶液の安定性を向上さ
せるため種々検討した結果、ブレオマイシン類の水溶液
の安定性はその溶液のpHに大きく影響されpH4.6〜6好
ましくはpH4.8〜5.6より好ましくはpH5.0〜5.4に調整す
る事により安定化されること及びその溶液の調製に金属
塩類を用いることにより更に安定な水溶液となることを
見出し本発明を完成した。
本発明においてはブレオマイシン類の濃度は特に制限
はないが、使用目的により異なり、注射を目的とする場
合は2〜20mg力価/ml、infusionで用いる場合には、0.0
5〜0.2mg力価/mlで用いることが好ましい。
本発明でpH調整用に用いられる酸としては、生理学的
に許容されるものであれば特に制限はないが、例えば、
塩酸、硫酸、硝酸、過塩素酸、燐酸、酢酸、クエン酸、
コハク酸等が挙げられる。pHの安定化という面で、燐
酸、酢酸、クエン酸などの緩衝液の使用がより好まし
い。
又、本発明で同様に用いられる金属塩類としては、上
記の酸の金属塩であれば何でも良いが、特に、安定化の
観点からはニッケル、亜鉛、銅、ガリウム、インジウ
ム、ビスマス等の二価の金属と上記の酸の塩が好まし
い。
これら酸、塩類は、単独に、或いは適当に組み合わせ
て使用される。
又、これらの濃度はpHが前記の範囲なら特に限定はな
いが通常0.001〜10%、好ましくは0.01〜5%程度であ
る。
本発明の水溶液製剤は通常バイアルまたはアンプルま
たはプラスチック製輸液用ボトルに密封して供給され
る。
次に、実験例により、本発明のブレオマイシン類の水
溶液製剤が安定である事を示す。
実験例1. ブレオマイシンを5mg力価/mlとなるように0.05M酢酸
−酢酸ナトリウム緩衝液に溶解し、表1に示すpHの溶液
を調整、これを40℃、10日間保存後、高速液体クロマト
グラフィーにより残存ブレオマイシン量を定量した。
結果は表1に示すようにpH4.6〜6.0で安定であること
を示している。
実験例2. 後記実施例2の製剤を60℃4日間保存後、高速液体ク
ロマトグラフィーにより残存ブレオマイシン量を定量し
た。結果を表2に示す。塩類の添加により著しく安定化
されていることが明らかである。
次に、実施例により本発明の製剤を具体的に示す 実施例1 ブレオマイシン150mg力価を0.05Mの燐酸ナトリウム溶
液に溶解し、クエン酸を加えてpHを5に調製全容を30ml
とし、ミリポアーろ過後、3mlづつバイアル瓶に充填、
密栓した。
この製剤を用い、高速液体クロマトグラフィーで残存
ブレオマイシン量を定量する方法により、30℃、40℃、
50℃の苛酷条件下の安定性を求めた。その結果から本製
剤は、10℃以下においては2年間の保存が可能である事
が予測された。(<10%の含量低下) 実施例2 ブレオマイシン150mg力価、硫酸亜鉛15mgを生理食塩
水に溶解30mlとし(pH5)、ミリポアーろ過後3mlづつバ
イアル瓶に充填、密栓した。
表2に示した他の塩類についても同様に処理し溶液製
剤とした。
実施例3 ブレオマイシン150mg力価を0.05Mの燐酸ナトリウムを
含む生理食塩水に溶解し、クエン酸を加えてpHを5に調
整全容を1000mlとし、ミリポアーろ過後、100mlづつ輸
液用プラスチック瓶に充填、密栓した。
(発明の効果) 本発明により得られるブレオマイシン水溶液製剤は使
用時の煩雑さ、危険性を回避するのみでなく、製造工程
においても凍結乾燥を省く事が出来、コストの低い製品
を供給出来ると言う利点も持つ。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 「全訂 医薬品要覧」、大阪府病院薬 剤師会編、株式会社 薬業時報社、昭和 58年11月10日発行、第1072頁−第1073 頁、第1108頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A61K 31/7064 A61K 9/08 A61P 35/00 C07H 15/26

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ブレオマイシン類に二価の金属の塩類を加
    え、pHを4.8〜5.6に調整した水溶液製剤
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