JP3235035B2 - ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物

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JP3235035B2
JP3235035B2 JP11439793A JP11439793A JP3235035B2 JP 3235035 B2 JP3235035 B2 JP 3235035B2 JP 11439793 A JP11439793 A JP 11439793A JP 11439793 A JP11439793 A JP 11439793A JP 3235035 B2 JP3235035 B2 JP 3235035B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、ポリアリーレンスル
フィド樹脂組成物に関し、更に詳しくは、腐食性ガスの
発生を抑制し、近接する金属に対する短期的で急激な腐
食および長期的な腐食を防止することができ、例えばリ
レー、スイッチ、コネクター等の電気・電子部品をはじ
めとする幅広い分野で好適に使用することのできるポリ
アリーレンスルフィド樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術および発明が解決しようとする課題】近
年、ポリアリーレンスルフィド樹脂(以下、PASと称
することがある。)は、優れた耐薬品性、機械的性質、
耐熱性、難燃性等を有することから、電気・電子分野、
自動車部品等の幅広い分野において、優れたエンジニア
リングプラスチックとして利用されている。
【0003】ところが、このPASには、高温状態、特
に酸素雰囲気下における溶融状態において腐食性ガスを
生じやすく、PASに近接する金属金型や金属部品等に
錆を生じさせる欠点がある。この欠点は、従来の熱酸化
架橋型のポリフェニレンスルフィド(以下PPSと略称
することがある。)に顕著に見られる。前記熱酸化架橋
型PPSの場合、酸素が存在しない比較的低温の環境下
においてもSO2 等の腐食性ガスを生じることが判明し
ている。
【0004】そこで、PASにおける前記欠点を改良す
る方法が幾つか提案されている。例えば、特開昭59−
209644号公報および特開昭60−1241号公報
には、無機質のガススカベンジャーをPASに添加する
方法が提案されている。また、特開昭60−11565
8号公報には、低分子量のポリアミン化合物をPASに
添加することにより、PASから生じる腐食性の酸性ガ
スを中和する方法が提案されている。
【0005】しかしながら、これらの方法では、腐食性
の酸性ガスを充分に除去することができないばかりでな
く、長期に渡ってPASから生ずる腐食性ガスによる金
属の錆を防止することはできない。また、PASに近接
する金属に対する短期的で急激な腐食および長期的な腐
食を同時に解消することができないという問題がある。
【0006】前記問題を解決すべく、この発明の発明者
等が鋭意検討した結果、PASの特定量に対し、特定の
無機充填材と特定の金属防錆剤とを特定の割合で配合す
ると、射出成形時の高温状態において生じる金型金属の
急激な腐食のみならず、比較的低温状態において生じ
る、近接する金属の長期的な腐食をも効果的に防止する
ことができることを見出し、この発明に到達した。
【0007】この発明は、腐食性ガスの発生を抑制し、
近接する金属に対する短期的で急激な腐食および長期的
な腐食を防止することができ、例えばリレー、スイッ
チ、コネクター等の電気・電子部品をはじめとする幅広
い分野で好適に使用することのできるポリアリーレンス
ルフィド樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0008】
【前記課題を解決するための手段】前記課題を解決する
ための前記請求項1に記載の発明は、ポリアリーレンス
ルフィド類100重量部と、ハイドロタルサイト類化合
物およびMg/Al酸化物固溶体からなる群より選択さ
れる少なくとも一種の無機充填材0.5〜10重量部
と、ジ(シクロヘキシル)アンモニウム・ナイトライト
0.05〜3重量部とを有するポリアリーレンスルフィ
ド樹脂組成物であり、前記請求項2に記載の発明は、前
記ポリアリーレンスルフィド類が、実質的に熱酸化架橋
がされていないポリアリーレンスルフィド樹脂である前
記請求項1に記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成
物であり、前記請求項3に記載の発明は、前記ポリアリ
ーレンスルフィド類が、分子中にアミノ基および/また
はアミド基を有するポリアリーレンスルフィド樹脂であ
る前記請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフ
ィド樹脂組成物である。
【0009】以下、この発明のポリアリーレンスルフィ
ド樹脂組成物について詳述する。
【0010】この発明のポリアリーレンスルフィド樹脂
組成物は、ポリアリーレンスルフィド類と、ハイドロタ
ルサイト類化合物およびMg/Al酸化物固溶体からな
る群より選択される少なくとも一種の無機充填材と、ジ
(シクロヘキシル)アンモニウムナイトライトとを含有
する。更に、目的に応じて添加剤を適宜含有することが
できる。
【0011】−ポリアリーレンスルフィド類− この発明に用いるポリアリーレンスルフィド類は、主と
してスルフィド結合を含有するアリーレン部分からなる
重合体樹脂であり、ジハロ芳香族化合物と硫黄源とを、
有機極性溶媒中で重縮合反応させて得ることができる。
【0012】前記ジハロ芳香族化合物としては、例えば
m−ジハロベンゼン、p−ジハロベンゼン等のジハロベ
ンゼン類;2,3−ジハロトルエン、2,5−ジハロト
ルエン、2,6−ジハロトルエン、3,4−ジハロトル
エン、2,5−ジハロキシレン、1−エチル−2,5−
ジハロベンゼン、1,2,4,5−テトラメチル−3,
6−ジハロベンゼン、1−ノルマルヘキシル−2,5−
ジハロベンゼン、1−シクロヘキシル−2,5−ジハロ
ベンゼン等のアルキル置換ジハロベンゼン類またはシク
ロアルキル置換ジハロベンゼン類;1−フェニル−2,
5−ジハロベンゼン、1−ベンジル−2,5−ジハロベ
ンゼン、1−p−トルイル−2,5−ジハロベンゼン等
のアリール置換ジハロベンゼン類;4,4’−ジハロビ
フェニル等のジハロビフェニル類、1,4−ジハロナフ
タレン、1,6−ジハロナフタレン、2,6−ジハロナ
フタレン等のジハロナフタレン類等が挙げられる。これ
らのジハロ芳香族化合物における2個のハロゲン元素
は、それぞれフッ素、塩素、臭素またはヨウ素であり、
それらは同一であってもよいし、互いに異なっていても
よい。これらの中でも、好ましくはジハロベンゼン類で
あり、特に好ましくはp−ジクロロベンゼンを70モル
%以上含有するジハロベンゼン類である。
【0013】この発明の方法においては、前記ジハロ芳
香族化合物と共に、所望に応じて、活性水素含有ハロ芳
香族化合物、1分子中に3個以上のハロゲン原子を有す
るポリハロ芳香族化合物、およびハロ芳香族ニトロ化合
物等の分岐剤、若しくはモノハロ芳香族化合物等の分子
量調整剤等を適当に選択して反応系に添加して用いるこ
ともできる。
【0014】前記活性水素含有ハロ芳香族化合物として
は、例えばアミノ基、チオール基、ヒドロキシル基等の
活性水素をもつ官能基を有するハロ芳香族化合物を挙げ
ることができ、更に具体的には、2,6−ジクロロアニ
リン、2,5−ジクロロアニリン、2,4−ジクロロア
ニリン、2,3−ジクロロアニリン等のジハロアニリン
類;2,3,4−トリクロロアニリン、2,3,5−ト
リクロロアニリン、2,4,6−トリクロロアニリン、
3,4,5−トリクロロアニリン等のトリハロアニリン
類;2,2’−ジアミノ−4,4’−ジクロロジフェニ
ルエーテル、2,4’−ジアミノ−2’,4−ジクロロ
ジフェニルエーテル等のジハロアミノジフェニルエーテ
ル類およびこれらの混合物においてアミノ基がチオール
基やヒドロキシル基に置き換えられた化合物などが挙げ
られる。
【0015】前記の1分子中に3個以上のハロゲン原子
を有するポリハロ芳香族化合物としては、例えば1,
2,4−トリクロロベンゼン、1,3,5−トリクロロ
ベンゼン、1,4,6−トリクロロナフタレン等が挙げ
られる。
【0016】前記ハロ芳香族ニトロ化合物としては、例
えば2,4−ジニトロクロロベンゼン、2,5−ジクロ
ロニトロベンゼン等のモノまたはジハロニトロベンゼン
類;2−ニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルエーテ
ル等のジハロニトロジフェニルエーテル類;3,3’−
ジニトロ−4,4’−ジクロロジフェニルスルホン等の
ジハロニトロジフェニルスルホン類;2,5−ジクロロ
−3−ニトロピリジン、2−クロロ−3,5−ジニトロ
ピリジン等のモノまたはジハロニトロピリジン類、ある
いは各種ジハロニトロナフタレン類等が挙げられる。
【0017】前記モノハロ芳香族化合物としては、クロ
ロベンゼン、ブロモベンゼン、α−ブロモベンゼン、α
−クロロトルエン−o−クロロトルエン、m−クロロト
ルエン、p−クロロトルエン、α−ブロモトルエン、o
−ブロモトルエン、m−ブロモトルエン、p−ブロモト
ルエン等が挙げられる。
【0018】これらの活性水素含有ハロ芳香族化合物、
ポリハロ芳香族化合物、ハロ芳香族ニトロ化合物等を使
用することによって、生成する重合体の分岐度を増加さ
せたり、分子量を更に増加させたり、あるいは残存含塩
量を低下させるなど、ポリアリーレンスルフィド樹脂の
諸特性を改善することができる。
【0019】前記硫黄源としては、アルカリ金属硫化物
やアルカリ土類金属等が好適に使用される。
【0020】前記アルカリ金属硫化物としては、硫化リ
チウム、硫化ナトリウム、硫化カリウム、硫化ルビジウ
ム、硫化セシウム等が挙げられる。これらの中でも、好
ましいのは硫化リチウムおよび硫化ナトリウムであり、
特に好ましいのは硫化ナトリウムである。これらは、一
種単独で用いてもよいし、二種以上を組合せて用いても
よい。
【0021】前記アルカリ土類金属硫化物としては、硫
化カルシウム、硫化ストロンチウム、硫化バリウム、硫
化マグネシウム等が挙げられる。これらの中でも、好ま
しいのは硫化カルシウム、硫化バリウムであり、特に好
ましいのは硫化カルシウムである。これらは、一種単独
で用いてもよいし、二種以上を組合せて用いてもよい。
【0022】また、前記アルカリ金属硫化物またはアル
カリ土類金属硫化物は、アルカリ金属水硫化物またはア
ルカリ土類金属水硫化物のそれぞれと塩基との反応によ
って得られるものであってもよい。
【0023】前記アルカリ金属水硫化物としては、例え
ば水硫化リチウム、水硫化ナトリウム、水硫化カリウム
および水硫化セシウム等が挙げられる。前記アルカリ土
類金属水硫化物としては、水硫化カルシウム、水硫化ス
トロンチウム、水硫化バリウム、水硫化バリウム等が挙
げられる。
【0024】前記塩基としては、無機系塩基、有機系塩
基の各種の化合物が挙げられる。前記無機系塩基として
は、アルカリ金属水酸化物等を好適に使用でき、例えば
水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、
水酸化ルビジウム等が挙げられる。前記有機系塩基とし
ては、ω−ヒドロキシカルボン酸の金属塩、アミノカル
ボン酸アルカリ金属塩等が挙げられる。
【0025】また、前記有機極性溶媒としては、N−ア
ルキルピロリドン、N−アルキルラクタム等が挙げられ
る。
【0026】この発明における前記ポリアリーレンスル
フィド類としては、熱酸化架橋型のPAS、実質的に熱
酸化架橋されていないPAS、分子中にアミノ基および
/またはアミド基を有するPAS等が挙げられる。これ
らの中でも好ましいのは、実質的に熱酸化架橋処理され
ていないPPSであり、更に好ましくは、分子中にアミ
ノ基および/またはアミド基を有するPASである。こ
れらの各種のポリアリーレンスルフィド類のうち、特に
好ましいものの具体例をいくつか示すと、PPS、アミ
ノ基含有PPS、アミド基含有PPS、アミノ基とアミ
ド基とを同時に含有するPPSなどを挙げることができ
る。
【0027】前記熱酸化架橋型のPASは、重合により
比較的に低分子量の例えばポリフェニレンスルフィド等
のPASを得てから、通常、これを酸素の存在下で融点
以下の高温度下にてベーキングを行い、酸化架橋を促進
して粘度を向上させて得ることができる。一般に、この
熱酸化架橋型のPASは、茶色に着色しており、樹脂中
の酸素濃度が高く、熱的には不安定である。この熱酸化
架橋型のPASは、一般に機械的強度は大きいが、靭性
が低い即ち脆いという欠点がある。しかし、成形時の流
動性に優れているので薄肉成形分野では依然として多用
され、一般のエンジニアリング樹脂としては広く利用さ
れている。この熱酸化架橋型のPASの具体例として
は、東レ株式会社製造のPPS−M1900等を挙げる
ことができる。
【0028】前記実質的に熱酸化架橋されていないPA
Sは、触媒である重合助剤および/または分岐剤、例え
ばトリクロロベンゼン、ジクロロニトロベンゼン等を重
合時に共存させ、重合段階で目標とする粘度に調製され
たものであり、したがって、実質的に熱酸化架橋されて
いないものである。なお、この実質的に熱酸化架橋され
ていないPASは、樹脂中の酸素濃度が極めて低いこと
もその理由の一つとして、前記熱酸化架橋型のPASに
比べて、熱的に極めて安定であり、後述のようにSO2
等の腐食ガスの発生も著しく低くなり、実用上問題を生
じないなどの利点がある。この実質的に熱酸化架橋され
ていないPASは、前記熱酸化架橋型のPASに比べて
靭性、特に後加工時の耐衝撃強度あるいは伸び等にも優
れ、例えばリレー、スイッチ、コネクター等の電気・電
子部品を形成することができる。
【0029】また、前記分子中にアミノ基および/また
はアミド基を有するPASは、共重合によって分子鎖
に、例えば−NH2 等のアミノ基および/または例えば
−NHCOR等のアミド基(ただし、Rは、通常、Hま
たはアルキル基などの炭化水素基である。)を含有さ
せ、重合後に熱酸化架橋を行わないで得ることができ
る。これは、前記実質的に熱酸化架橋されていないPA
Sの一種である。
【0030】なお、上記において、実質的に熱酸化架橋
を行っていないとは、酸素の存在下で150℃以上の温
度で、粘度の向上を目的とした熱処理を行っていないこ
とをいう。
【0031】なお、ポリアリーレンスルフィド類が、実
質的に熱酸化架橋されていないか、あるいは、されてい
るかという判定は、上記のような熱処理を行っている
か、いないかによりなされるが、以下に示すような分析
から判定することもできる。
【0032】(a)ポリアリーレンスルフィド類中から
のSO2 発生量から判定する方法 試料であるポリアリーレンスルフィド類0.2gを、1
00ml/min.のN2 気流中で300℃で1時間加
熱し、得られるアウトガスを濃度1%のH22 水溶液
に導入して捕集し、捕集液を得る。捕集液を得てから、
アウトガス通路を一定量の濃度1%のH22 水溶液で
洗浄し、得られた洗浄液を捕集液に加えて最終的な捕集
液を得る。この最終的な捕集液中のSO4 2- イオン濃度
をイオンクロマトグラフィーで求め、樹脂量に対するS
2 量に換算して定量する。定量のオーダーはppm
(μg/g)である。この判定法によると、通常、実質
的に熱酸化架橋処理されていないポリアリーレンスルフ
ィド類のSO2 発生量は50ppm以下であり、更に厳
密に言えば、SO2 発生量は10ppm以下であり、熱
酸化架橋型のポリアリーレンスルフィド類のSO2 発生
量は50ppmを越える。
【0033】(b)ポリアリーレンスルフィド類中の酸
素濃度から判定する方法 試料であるポリアリーレンスルフィド類中の酸素量を元
素分析して求め、樹脂当たりの酸素量で定量する。この
定量評価法によると、通常、実質的に熱酸化架橋処理さ
れていないポリアリーレンスルフィド類の酸素量は、
0.5重量%以下であり、更に厳密に言えば、ポリアリ
ーレンスルフィド類の酸素量は、0.1重量%以下であ
り、熱酸化架橋型のポリアリーレンスルフィド類の酸素
量は、0.5重量%を越える。
【0034】なお、ポリアリーレンスルフィド類は無酸
素下で加熱しても若干の架橋性を有するに至り、実質的
にその粘度が向上する。しかるに、この様な場合は熱酸
化架橋型のポリアリーレンスルフィド類に該当しないこ
とは、上記の定量評価方法、特に前記(a)の方法によ
り容易に判別できる。
【0035】前記実質的に熱酸化架橋されていないPA
Sは、各種の方法で製造することができる。具体的に
は、例えば、特公昭53−25588号公報に記載され
ている方法によって製造することができる。
【0036】この好適な製造法の具体例の概略および好
適に使用されるポリアリーレンスルフィド類の種類の例
について以下に示す。
【0037】前記ポリアリーレンスルフィド類は、一般
式−(Ar−B−)n −で表わされる。ここで−Ar−
は、例えば以下の(化1)で示されるところの、少なく
とも一つの炭素6員環を含む2価の芳香族残基であり、
更に各芳香環に、F、Cl、およびBrなどのハロゲン
原子、CH3 などアルキル基などの原子または置換基が
導入されることもある。
【0038】
【化1】
【0039】特に典型的なポリアリーレンスルフィド類
は(化2)で表わされるポリフェニレンスルフィドであ
り、これは米国のフィリップスペトローリアム社より
「ライトン」の商標で一般に市販されている。その製造
方法は米国特許第3,354,129号明細書およびそ
れに対応する特公昭45−3368号公報に開示されて
おり、N−メチルピロリドン溶媒中で160〜250℃
に加熱しながら、加圧条件下にパラジクロルベンゼンと
硫化ナトリウム(Na2 S・H2 O)とを反応させるこ
とにより製造することができる。また、特公昭52−1
2240号公報、特公昭53−25588号公報および
特公昭53−25589号公報に開示されているように
酢酸リチウムまたは塩化リチウムなどの触媒を併用する
とさらに高重合度化したポリフェニレンスルフィドを製
造することもできる。
【0040】
【化2】
【0041】なお、前記したように、重合時に適宜に分
岐剤を共存もしくは添加して、化学的な架橋構造の付与
等による粘度の調節を行ってもよい。また、上記の重合
法において、前述したように、アミノ基および/または
アミド基を有するモノマーを用いて共重合すれば、同様
にして、所定の分子鎖にアミノ基および/またはアミド
基を有するPASを得ることができる。
【0042】なお、この発明におけるポリアリーレンス
ルフィド類は、通常の射出成形用材料として用いられる
場合、樹脂温度が300℃で剪断速度が200sec-1
の条件下において、細管押出し粘度計で測定した見掛け
の剪断速度ηapp の値が、通常50〜5,000poi
seであり、好ましくは200〜3,000poise
である。
【0043】前記剪断速度ηapp の値が、5,000p
oiseを越えると、組成物としての粘度が高くなり、
成形性が著しく悪くなることがあり、一方、50poi
se未満であると、粘度が低すぎて成形性が悪くなると
共に、機械的強度が著しく低下することがある。
【0044】−無機充填材− この発明においては、ハイドロタルサイト類化合物およ
びMg/Al酸化物固溶体からなる群より選択される少
なくとも一種の無機充填材を用いる。
【0045】前記ハイドロタルサイト類化合物は、Mg
Al2 (OH)16CO3 ・4H2 OまたはAl23
6MgO・12H2 Oのような化学構造を有する天然産
鉱物にほぼ相当する天然物質または合成物質である。
【0046】また一般に合成ハイドロタルサイトは、カ
チオン性成分の溶液とアニオン性成分の溶液との共沈澱
によって生成され、一般式は次のように示される。
【0047】 Mg1-X AlX (OH)2 (An-X/n ・mH2 O (ただし式中、Aは、例えばCO3 -、HPO3 2- 、SO
4 2- 、OH- 等のn価のアニオンを、mは水和水のモル
数で0<m<1である数を、Xは0<X<0.5である
数を、それぞれ示す。) このようにハイドロタルサイトは、マグネシウムとアル
ミニウムとの水和物が最も普通であるが、他の金属によ
って置換されてもよい。
【0048】例えばマグネシウムは、カルシウム、亜
鉛、銅、マンガン、リチウムまたはニッケルで置換さ
れ、またアルミニウムはクロム(III )、鉄で置換され
る。また前記アニオンAも炭酸塩、リン酸塩で置換され
る。最も入手し易いハイドロタルサイトはマグネシウム
−アルミニウムハイドロキシカーボネートハイドレード
で、次の化学構造式、Mg4.5 Al2 (OH)13CO3
・3.5H2 Oで示される。
【0049】また、前記Mg/Al酸化物固溶体は、固
溶体と呼んではいるが、これは必ずしも物理化学的に厳
密に定義されている狭義の固溶体に限定されるものでは
なく、例えば触媒分野等で言うマグネシアアルミナ等の
複合酸化物を含む広義の固溶体である。即ち、前記Mg
/Al酸化物固溶体は、一般に、酸化マグネシウムと酸
化アルミニウムからなる複合酸化物であり、各種の組成
のものを使用することができる。
【0050】中でも、通常は、その組成が形式的に一般
式(Mg1-X AlX )O1+X/2 (ただし、式中のXは、
通常0.4未満、好ましくは0.1以上0.35未満の
範囲の実数を表す。)で表される複合酸化物が好適に使
用される。
【0051】これらのMg/Al酸化物固溶体は、その
形状として特に限定されるものではなく、球状もしくは
略球状あるいは不定型の粒子状、リーフ状、板状、針状
など各種の形状であってもよい。もっとも、通常は、B
ET比表面積が大きいMg/Al酸化物固溶体、具体的
には5m2 /g以上のMg/Al酸化物固溶体が好まし
く、粒子のサイズとしても、超微粒子状のMg/Al酸
化物固溶体のようにできるだけ小さいMg/Al酸化物
固溶体が好ましい。
【0052】また、これらのMg/Al酸化物固溶体
は、結晶水や吸着水等の水分を含有していてもよいし、
また、その表面等に水酸基を有するものであってもよ
い。Mg/Al酸化物固溶体中に含有される水分の許容
含有量は、通常0.3重量%である。
【0053】更に、これらのMg/Al酸化物固溶体
は、他の金属成分等の不純物を含有していてもよいが、
通常は、MgとAl以外の他の金属成分ができるだけ少
ないほうが好ましい。したがって、このMg/Al酸化
物固溶体は、天然物でも純度が高いのであれば使用して
も問題ないが、通常は、人工合成されたMg/Al酸化
物固溶体が好ましい。
【0054】前記Mg/Al酸化物固溶体として、特に
好ましい例を挙げると、例えば、協和化学工業(株)製
のKW2200(組成式:Mg0.7 Al0.31.15;B
ET比表面積:約150m2 /g)を例示することがで
きる。
【0055】なお、これらのMg/Al酸化物固溶体
は、必要に応じて、異なる組成のものを二種以上用いて
もよい。
【0056】前記ハイドロタルサイト類化合物およびM
g/Al酸化物固溶体からなる群より選択される少なく
とも一種の無機充填材の配合量は、前記ポリアリーレン
スルフィド類100重量部に対し、0.5〜10重量部
が好ましく、更に好ましくは1〜5重量部である。
【0057】前記配合量が10重量部を越えると成形性
が低下し、成形品の外観や機械的性質が悪化することが
あり、一方、0.5重量部未満になると金属腐食防止効
果やバリ発生を防ぐ効果が小さくなることがある。
【0058】−ジ(シクロヘキシル)アンモニウムナイ
トライト− このジ(シクロヘキシル)アンモニウムナイトライト
(以下、DICHANと称することがある。)は、式
(C6112 NH・HNO2 で表される化合物であ
り、例えば、城北化学工業(株)製のものは、DICH
ANという商品名で市販されている。ジ(シクロヘキシ
ル)アンモニウムナイトライトは、純度の高いものは白
色結晶状であり、融点は約176℃であり、分子量は約
228である。
【0059】この発明におけるポリアリーレンスルフィ
ド樹脂組成物にこのジ(シクロヘキシル)アンモニウム
ナイトライトを添加含有させる場合には、通常、これを
微粒子状にして添加するのが好ましい。ただし、ジ(シ
クロヘキシル)アンモニウムナイトライトを添加した後
に、特に、溶融混練後のポリアリーレンスルフィド樹脂
組成物においては、必ずしも、その化学構造が前記式
(C6112 NH・HNO2 のままに保持されている
必要はない。
【0060】前記ジ(シクロヘキシル)アンモニウムナ
イトライトの配合量としては、ポリアリーレンスルフィ
ド類100重量部に対して、0.05〜3重量部が好ま
しく、更に0.1〜1重量部が好ましい。前記配合量が
0.05重量部未満であると、金属腐食、特に比較的低
温で長期間かけて発生する腐食を低減する効果が無くな
ることがあり、一方、3重量部を越えると、機械的強度
の極端な低下をもたらすことがある。
【0061】−任意成分− この発明においては、更に任意の成分として、充填剤
や、例えば滑剤、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線吸収
剤、難燃剤、離型剤、着色剤等の添加剤や、ポリアリー
レンスルフィド類以外の熱硬化樹脂または熱可塑性樹脂
等を、この発明の目的を害しない範囲で適宜配合するこ
とができる。
【0062】前記充填材としては、無機または有機の繊
維状充填剤および/または粉粒状充填材が挙げられる。
即ち、前記配合割合で配合されたポリアリーレンスルフ
ィドと前記無機充填材とジ(シクロヘキシル)アンモニ
ウムナイトライトとの混合物に、繊維状充填剤を配合し
てもよいし、また、粉粒状充填剤を配合してもよいし、
更には繊維状充填剤と粉粒状充填剤とを共に配合しても
よい。いずれの充填剤が好ましいかについては、一概に
言うことはできないけれど、繊維状充填剤を配合する方
が機械的物性、耐熱性の向上に資する。
【0063】前記繊維状充填材としては、例えばガラス
繊維、高ケイ酸繊維、アルミナケイ酸繊維等のガラス質
繊維;ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、アルミナ繊維、チ
ッ化ケイ素繊維、ジルコニア繊維、ケイ酸カルシウム繊
維、ロックウール等のセラミック繊維、酸化マグネシウ
ム繊維、マグネシウムオキシサルフェート繊維、水酸化
マグネシウム繊維、チタン酸カリウム繊維、石膏繊維等
の無機質繊維、銅繊維、黄銅繊維、鋼繊維、ステンレス
繊維、アルミ繊維、アルミニウム合金繊維等の金属繊
維;炭素繊維;ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊
維、アラミッド繊維等の高融点有機繊維;アルミナウイ
スカー、マグネシアウイスカー、黒鉛ウイスカー、炭化
ケイ素ウイスカー、窒化ケイ素ウイスカー等の各種ウイ
スカーなどが挙げられる。これらの繊維状充填剤はシラ
ン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤など
で表面処理をしてから配合時に添加するのが好ましい。
【0064】これらの中でも、ガラス繊維、アラミッド
繊維、炭素繊維等が好ましい。
【0065】前記粉粒状充填材としては、例えば酸化カ
ルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、酸化アルミ
ナ等の酸化物;水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウ
ム、水酸化カルシウム等の水酸化物;炭酸マグネシウ
ム、炭酸カルシウム、ドロマイト等の炭酸塩;硫酸バリ
ウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム等の硫酸塩;
亜硫酸カルシウム等の亜硫酸塩;シリカ;タルク、クレ
ー、マイカ;ケイソウ土、アスベスト、ゼオライト等;
ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト等
のケイ酸塩鉱物;鉄、アルミニウム、亜鉛、銅等の金属
粉末;炭化ケイ素、チッ化ケイ素、チッ化ホウ素等のセ
ラミック等が挙げられる。
【0066】これらの粉粒状充填材は形態に特に制限が
ないが、粉状、粒状、板状のいずれでもよい。
【0067】いずれの繊維状充填剤および/または粉粒
状充填剤を選択するかは、このポリアリーレンスルフィ
ド樹脂組成物の成形加工において、成形性を阻害しない
こと、あるいは成形品の要求物性により適宜に決定する
ことができる。
【0068】前記充填剤の配合量としては、ポリアリー
レンスルフィド類100重量部に対し、繊維状充填材や
粉粒状充填材を5〜300重量部、好ましくは10〜2
00重量部含有させることが重量である。前記配合量が
5重量部未満であると補強効果が充分でなく、一方、3
00重量部を超えると成形性が低下することがある。
【0069】また、前記滑剤としては、例えば流動パラ
フィン、天然パラフィン、ワックス等の炭化水素系滑
剤;ステアリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ミリス
チン酸、ベヘニン酸などの高級脂肪酸あるいはオキシ脂
肪酸等の脂肪酸系滑剤;ステアリン酸、パルミチン酸、
オレイン酸、ミリスチン酸、ベヘニン酸などの高級脂肪
酸のメチル、エチル、プロピル、ブチルなどの低級アル
キルエステルである脂肪酸エステル系;脂肪族の高級あ
るいは低級アルコール、ポリグリコール等のアルコール
系滑剤;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウ
ム等の金属石ケン;シリコンオイル、変性シリコン等の
シリコン等が挙げられる。
【0070】前記帯電防止剤としては、例えばポリオキ
シエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキ
ルアミドのような非イオン系帯電防止剤、アルキルスル
ホネート、アルキルベンゼンスルホネートのようなアニ
オン系帯電防止剤、第4級アンモニウムクロライド、第
4級アンモニウムサルフェートのようなカチオン系帯電
防止剤、アルキルベタイン型、アルキルイミダゾリン型
のような両性帯電防止剤等が挙げられる。
【0071】前記酸化防止剤としては、たとえば2,6
−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、2、2−メチレン
ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)のよう
なフェノール系化合物、フェニル−β−ナフチルアミン
のようなアミン系化合物、トリス(ノニルフェニル)ホ
スファイトのようなリン系化合物、ジラウリルチオジプ
ロピオネートのような硫黄化合物が挙げられる。
【0072】前記紫外線吸収剤としてはサリチル酸系紫
外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤等が挙げら
れる。
【0073】前記難燃剤、離型剤、着色剤等としては、
一般に使用されているものが使用できる。
【0074】これらの添加剤の配合量としては、ポリア
リーレンスルフィド類100重量部に対して、通常0.
05〜5重量部であり、好ましくは0.1〜3重量部で
ある。
【0075】また、前記熱硬化性樹脂としては、特に制
限はなく、例えばフェノール樹脂、不飽和ポリエステ
ル、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等を挙げることがで
きる。前記熱可塑性樹脂としては、熱可塑性のポリアミ
ド類、ポリエステル類、ポリオレフィン類等を挙げるこ
とができる。
【0076】前記熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂の配
合量としては、ポリアリーレンスルフィド類100重量
部に対して、通常1〜50重量部であり、好ましくは1
〜30重量部である。
【0077】−ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の
調製− この発明におけるポリアリーレンスルフィド樹脂組成物
は、少なくとも前記ポリアリーレンスルフィド類と、前
記ハイドロタルサイト類化合物及びMg/Al酸化物固
溶体からなる群より選択される少なくとも一種の無機フ
ィラーと、前記ジ(シクロヘキシル)アンモニウムナイ
トライトとを前記所定の割合で配合し、また、必要に応
じて前記任意成分も配合し、例えば溶融混練することに
よって調製することができる。この溶融混練は、通常の
公知の方法によって行うことができるが、いずれにして
も、その際、各成分を樹脂中に均一に混合・分散させ、
所定の樹脂組成物とする。
【0078】この溶融混練には、通常の2軸混練機、単
軸押出機などを好適に使用することができる。
【0079】この溶融混練の条件としては、通常のポリ
アリーレンスルフィド類の条件と特に変わりはないの
で、通常は、その場合と同様の条件が好適に採用できる
が、ジ(シクロヘキシル)アンモニウムナイトライトの
分解及び揮発をできる限り抑えるために、極端な高温度
や極端に長い滞留時間を避けるのが好ましい。
【0080】このようにして、溶融混練されて調製され
たポリアリーレンスルフィド樹脂組成物は、通常は、ペ
レット等の二次加工用材料特に射出成形用材料としてふ
さわしい形状・サイズに造粒もしくは切断されて取得さ
れる。その際、ペレット等の造粒物を適宜に乾燥するの
が好ましく、その場合には、前記ジ(シクロヘキシル)
アンモニウムナイトライトの揮発をできる限り抑えるた
めに、あまり高温度での乾燥は避ける方が望ましい。乾
燥温度は、通常100〜120℃でも十分であり、乾燥
時間は3〜6時間程度でよい。
【0081】このようにして得られるポリアリーレンス
ルフィド樹脂組成物は、射出成形、押出成形等の各種の
成形法により種々の成形品、フィルム、繊維等に成形さ
れる。
【0082】この発明のポリアリーレンスルフィド樹脂
組成物は、成形性が良好で、結晶速度が大きくてバリの
発生が少なく、機械的強度や剛性、耐熱性が大で、しか
も射出成形時の金型腐食防止性が大きく、成形品もそれ
に接触している金属部材を腐食することなく、優れた成
形品になることができる。
【0083】
【実施例】以下に、この発明の実施例およびその比較例
によってこの発明を更に具体的に説明するが、この発明
はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0084】(実施例1〜8および比較例1〜7)下記
の<1>に示すポリアリーレンスルフィドとハイドロタ
ルサイト類化合物及びMg/Al酸化物固溶体からなる
群より選択される少なくとも一種の無機フィラーとジ
(シクロヘキシル)アンモニウムナイトライトとを用い
て、これらを表1に示す組成で下記の<2>に記載の方
法にしたがって溶融混練し、ポリアリーレンスルフィド
樹脂組成物を調製した。
【0085】次いで、得られた各ポリアリーレンスルフ
ィド樹脂組成物の成形性およびその成形体の評価を下記
の<3>に記載の方法によって行った。その結果を表2
に示す。
【0086】<1>ポリアリーレンスルフィド樹脂組成
物の原料成分、任意成分、およびその製造方法 (1) 熱酸化架橋型のポリアリーレンスルフィド;熱酸化
架橋型のポリアリーレンスルフィドとして東レ(株)製
のポリフェニレンスルフィド(グレード名;M190
0、ポリマーの色調;茶色、ポリマーのηapp ;3,3
00poise{300℃、剪断速度=200se
-1})を用いた。前述した「(a)ポリアリーレンス
ルフィド類中からのSO2 発生量から判定する方法」に
従って測定したところ、このポリフェニレンスルフィド
からのSO2 発生量は120ppmであり、前述した
「(b)ポリアリーレンスルフィド類中の酸素濃度から
判定する方法」に従って測定したところ、このポリフェ
ニレンスルフィド中の酸素量は1.2重量%であった。
表1では、このポリフェニレンスルフィドをC−PPS
と表示した。
【0087】(2) 実質的に熱酸化架橋されていないポリ
アリーレンスルフィド;120kgのNa2 S・5H2
Oと102kgのp−ジクロロベンゼンと30kgのL
iClとを用いて、340リットルのN−メチルピロリ
ドン中で、145℃に加熱して1時間かけて脱水を行
い、次いで260℃に加熱しながら3時間かけて重縮合
反応を行った。反応後に分離して得られる生成物をアセ
トンで洗浄し、洗浄後のポリマーを120℃に加熱する
ことにより24時間かけて乾燥を行った。得られた顆粒
状のポリマーはホモポリp−フェニレンスルフィドであ
り、その顆粒収量は66kgであり、収率は87%であ
り、白色を呈しており、そのηapp は1,050poi
seであった。前述した「(a)ポリアリーレンスルフ
ィド類中からのSO2 発生量から判定する方法」に従っ
て測定したところ、このホモポリp−フェニレンスルフ
ィドからのSO2 発生量は5ppmであり、前述した
「(b)ポリアリーレンスルフィド類中の酸素濃度から
判定する方法」に従って測定したところ、このホモp−
ポリフェニレンスルフィド中の酸素量は0.2重量%で
あった。表1では、このホモポリp−フェニレンスルフ
ィドをL−PPSと表示した。
【0088】(3) アミノ基含有−ポリアリーレンスルフ
ィド;140kgのNa2 S・5H2 Oと122kgの
p−ジクロロベンゼンと6.8kgのp−ジクロロアニ
リンと35kgのLiClとを用いて、510リットル
のN−メチルピロリドン中で、145℃に加熱して1時
間かけて脱水を行い、次いで260℃に加熱しながら3
時間かけて重縮合反応を行った。反応後に分離して得ら
れる生成物をアセトンで洗浄し、洗浄後のポリマーを1
20℃に加熱することにより24時間かけて乾燥を行っ
た。得られた顆粒状のポリマーは、分子鎖中にアミノ基
を有し、このアミノ基により側鎖の形成されたホモポリ
p−フェニレンスルフィドであり、その顆粒収量は70
kgであり、収率は79%であり、白色を呈しており、
そのηapp は1,200poiseであった。また、分
子中のアミノ基含有量をFTIR内部標準法で定量した
結果、その量は2.5mol%であった。前述した
「(a)ポリアリーレンスルフィド類中からのSO2
生量から判定する方法」に従って測定したところ、この
ホモポリp−フェニレンスルフィドからのSO2 発生量
は1ppmであり、前述した「(b)ポリアリーレンス
ルフィド類中の酸素濃度から判定する方法」に従って測
定したところ、このホモp−ポリフェニレンスルフィド
中の酸素量は0.2重量%であった。表1では、このホ
モポリp−フェニレンスルフィドをDCA−PASと表
示した。
【0089】(4) ハイドロタルサイト類化合物及びMg
/Al酸化物固溶体からなる群より選択される少なくと
も一種の無機フィラー;使用されたハイドロタルサイト
類化合物は、以下の式、Mg4.5 Al2 (OH)13CO
3 ・mH2 O(ただし、mは0<m≦3.5である。)
で表わされる協和化学工業(株)製のDHT−4Cであ
り、そのBET比表面積は13m2 /gである。表1で
は、このハイドロタルサイト類化合物をH−1と表示し
た。
【0090】また、使用されたMg/Al酸化物固溶体
は、以下の式、 Mg0.7 Al0.31.15 で表わされる協和化学工業(株)製のKW2200であ
り、そのBET比表面積は150m2 /gである。表1
では、このハイドロタルサイト類化合物をH−2と表示
した。
【0091】(5) ジ(シクロヘキシル)アンモニウムナ
イトライト;使用されたジ(シクロヘキシル)アンモニ
ウムナイトライトは、城北化学工業(株)製のDICH
ANである。表1では、このジ(シクロヘキシル)アン
モニウムナイトライトをDICHANと表示した。
【0092】<2>ポリアリーレンスルフィド樹脂組成
物の製造 表1に示す各成分を表示の組成で、ポリアリーレンスル
フィド100重量部当たりに対しドライブレンドした。
そして、このドライブレンド品60重量部に対してチョ
ップドグラスファイバー(旭ファイバーグラス(株)
製、03JAFT591)40重量部を混練機にサイド
フィードして、更にドライブレンドした。このドライブ
レンド品を直径20mmの単軸混練押出機(田辺プラス
チックス機械(株)製、VS20−28)を使用して、
樹脂温度:320℃で溶融混練後造粒して最終的に表1
の組成で示される組成物を得た。
【0093】
【表1】
【0094】<3>評価 (1) 一般力学的強度の評価 射出成形機((株)日本製鋼所製、J50EP)にて、
樹脂温度を320℃にし、金型温度を135℃にして、
ファミリー取り試験片を成形した。この成形品を用い
て、ASTM D796に準拠して曲げ強度試験を、ま
たASTM D256に準拠してアイゾット衝撃試験
(ノッチ無し)を行った。なおサンプル数は5とし、5
個のサンプルについての試験結果の平均値を表2に示
す。
【0095】(2) 金属腐食度の評価 JIS−S55C相当の一般金型材を用い、#800サ
ンドペーパーおよび金型磨き用コンパウンドを用いてこ
の金型材の表面を研磨した後、その表面の油分をアセト
ン洗浄により除き、評価用試験片を調製した。
【0096】試料であるポリアリーレンスルフィド樹脂
組成物のペレット5gをガラスシャーレに入れ、上記の
金型材の研磨面を下にして前記ガラスシャーレの開口部
に蓋をする。前記ガラスシャーレを150℃に保持した
恒温槽に入れて168時間加熱する。その間にポリアリ
ーレンスルフィド樹脂組成物から発生するガスに金属表
面が暴露される。また、同様に前記ガラスシャーレを3
40℃に保持した恒温槽に入れて6時間加熱する。その
間にポリアリーレンスルフィド樹脂組成物から発生する
ガスに金属表面が暴露される。
【0097】暴露した金属試験片を、下段にイオン交換
水を入れたデシケーターの上段に、暴露面を上にして置
き、デシケーターを40℃の恒温槽に100時間保持す
る。試験片を取り出し、風乾した後の金属表面の腐触度
を下記判定基準に従い目視により観察し判定した。
【0098】《腐触度の判定》判 定 暴露面の腐触の状態 ◎ 錆が無し〜極微少の腐触 ○ 微少な腐触 △ 全体の半分以下の面積の腐触 × 全体の半分以上の面積の腐触 ×× 全面で顕著な腐触 <4>結果と考察 評価結果は表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】−考察− (1) 実施例の結果より、ハイドロタルサイト類化合物と
DICHANとが、それぞれこの発明で規定する範囲内
の量で配合された場合にのみ、力学的強度の極端な低下
が見られず、かつ高温及び低温条件下における金属腐食
性を低いレベルに抑えることできることが明らかであ
る。
【0101】これに対して、ハイドロタルサイト類化合
物の配合量がこの発明で規定する範囲を下回る量になる
と、特に高温での金属腐食性が激しくなる。また、DI
CHANの量がこの発明で規定する範囲を下回る量にな
ると、特に低温での長期の腐食が大きくなる。
【0102】また、それぞれの内片方でもこの発明で規
定する範囲を越えて過剰に配合されると、金属腐食性は
低いレベルに抑えられるものの、力学的強度の極端な低
下を招く。
【0103】更に、ポリアリーレンスルフィド類として
熱酸化架橋型のPASよりも、熱酸化型のPAS(L−
PPS)を用いた方が、更に好ましくは分子鎖中にアミ
ノ基および/またはアミド基を有して分岐鎖の形成され
たところの、熱酸化架橋されていないポリアリーレンス
ルフィドを用いた方が、金属腐食は低い値に抑えられる
上、力学的強度も高いレベルに保持されることが明らか
である。
【0104】以上の結果より、この発明に係るポリアリ
ーレンスルフィド樹脂組成物によると、高温で短期間に
急激に発生する金属腐食、及び、低温で比較的長期に発
生する金属腐食を同時に抑制することができる。
【0105】
【発明の効果】この発明によると、腐食性ガスの発生を
抑制し、近接する金属に対する短期的で急激な腐食及び
長期的な腐食を防止することができ、例えばリレー、ス
イッチ、コネクター等の電気・電子部品をはじめとする
幅広い分野で好適に使用することのできるポリアリーレ
ンスルフィド樹脂組成物を提供することができる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 81/00 - 81/02 C08K 3/18 - 3/22 C08K 5/16 - 5/17 CA(STN)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリアリーレンスルフィド類100重量
    部と、ハイドロタルサイト類化合物およびMg/Al酸
    化物固溶体からなる群より選択される少なくとも一種の
    無機充填材0.5〜10重量部と、ジ(シクロヘキシ
    ル)アンモニウムナイトライト0.05〜3重量部とを
    有することを特徴とするポリアリーレンスルフィド樹脂
    組成物。
  2. 【請求項2】 前記ポリアリーレンスルフィド類が、実
    質的に熱酸化架橋されていないポリアリーレンスルフィ
    ド樹脂である前記請求項1に記載のポリアリーレンスル
    フィド樹脂組成物。
  3. 【請求項3】 前記ポリアリーレンスルフィド類が、分
    子中にアミノ基および/またはアミド基を有するポリア
    リーレンスルフィド樹脂である前記請求項1または2に
    記載のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物。
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