JP3232864B2 - インクジェット記録用インク - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【産業上の利用分野】本発明は、インクジェット記録装
置により、被記録材に記録を行う為のインクジェット記
録用インクに関する。

【０００２】

【従来の技術】インクジェット記録方式の原理は、ノズ
ル、スリットあるいは多孔質フィルム等から液体あるい
は溶融固体インクを吐出し、紙、布、フィルム等に記録
を行うものである。インクを吐出する方法については、
静電誘引力を利用してインクを吐出させる、いわゆる電
荷制御方式、ピエゾ素子の振動圧力を利用してインクを
吐出させる、いわゆるドロップオンデマンド方式（圧力
パルス方式）、高熱により気泡を形成、成長させること
により生じる圧力を利用してインクを吐出させる、いわ
ゆる熱インクジェット方式等、各種の方式が提案されて
おり、これらの方式により、極めて高精細の画像を得る
ことができる。このようなインクジェット記録方式に使
用するインクとしては、各種の水溶性の染料または顔料
を水または水溶性有機溶媒からなる液状媒体に溶解また
は分散させたものが知られ、かつ使用されている。

【０００３】上記の如き従来のインクにおいて種々の改
善に関する検討が行われている。インクジェットプリン
ターに使用されるインクに関しては、（１）紙上で滲
み、かぶりのない、高解像度、高濃度で均一な画像が得
られること、（２）ノズル先端でのインク乾燥による目
詰まりが発生せず、常に吐出応答性、吐出安定性が良好
であること、（３）紙上においてインクの速乾性が良い
こと、（４）画像の堅ろう性が良いこと、（５）長期保
存安定性が良いこと、の５つの観点から検討され、これ
らの要求を満足すべく従来より多くの提案がなされてい
る。その中で、溶媒として、２，２′−チオジエタノー
ルを用いることが種々提案されている。例えば、特公昭
６１ー５５５４６号公報においては、特定の染料とチオ
ジエタノールを含む溶媒とを組み合せることが提案され
ている。また、特開平１−２６３１６９号公報において
も、Ｃ．Ｉ．ダイレクトブラック１６８と２，２′−チ
オジエタノールを含む特定の溶媒とを組み合せることが
提案されている。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】従来提案されているイ
ンクジェット記録用インクにおいて、２，２′−チオジ
エタノールを用いた場合には、ノズル先端の目詰まりが
なく、滲みのない鮮明な画質が形成されたものを得るこ
とができるが、ドット周辺の微小なインクの飛び散りが
発生し易く、また、特に低湿下において、インクの固着
が発生し、ゴム材料等を用いたノズル表面のクリーニン
グに不良が発生し易く、吐出の方向性不良等による画像
欠陥を生じるという問題がある。また、ノズル間、およ
び、同一ノズルからのドロップ量のばらつきが発生する
という欠点がある。本発明は、上記の様な現状に鑑み、
その問題点を解決することを目的としてなされたもので
ある。即ち、本発明の目的は、紙等の記録媒体上で滲
み、かぶりのない、高解像度、高濃度で均一な画像が得
られ、ノズル先端でのインク乾燥による目詰まりが発生
せず、種々環境下においても吐出応答性、吐出安定性が
良好であり、紙上においてインクの速乾性、画像の堅ろ
う性が良く、長期保存安定性が良いインクジェット記録
用インクを提供することにある。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明者等は、鋭意検討
の結果、水、色材を必須成分とし、２，２’−チオジエ
タノール、多価アルコールおよび界面活性剤を含有する
インクにおいて、各成分の含有量を特定の範囲に限定す
ることによって上記の目的を達成することができること
を見出し、本発明を完成するに至った。

【０００６】本発明のインクジェット記録用インクは、
水、色材を必須成分とし、 ａ）２，２′−チオジエタノール ｂ）多価アルコール ｃ）界面活性剤 を含有してなり、ａ）の含有量が３〜１０重量％であ
り、ｂ）／ａ）の比が、２．５以上であり、ａ）とｂ）
の合計量が１０．５重量％ないし５０重量％であり、か
つ、ｃ）の含有量が０．００１重量％ないし０．１重量
％であることを特徴とするものである。

【０００７】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
インクジェット記録用インクにおいて、ａ）の成分であ
る２，２′−チオジエタノールは、３〜１０重量％の範
囲で含有される必要があり、好ましくは４〜８重量％の
範囲である。２，２′−チオジエタノールの含有量が３
重量％未満の場合は、目詰まり性の改善が不十分であ
り、かつ鮮明な画像は得られない。また、１０重量％よ
り大きいと画像の滲みが発生し易く好ましくない。ま
た、２，２′−チオジエタノールは、臭気をなるべく抑
止するために、高純度であることが望ましい。

【０００８】ｂ）の成分である多価アルコールとして
は、公知の各種のものが使用でき、例えばエチレングリ
コール、ジエチレングリコール、プロピレングリコー
ル、ポリエチレングリコール、トリエチレングリコー
ル、ヘキシレングリコール、グリセリン、１，２，６−
ヘキサントリオール、１，５−ペンタンジオール等が挙
げられる。特に好ましいものは、エチレングリコール、
ジエチレングリコール、グリセリンであり、より好まし
くは、ジエチレングリコール、グリセリンであり、これ
らを混合させることも可能である。多価アルコールの含
有量は、２，２′−チオジエタノールとの重量比で２．
５以上であることが必要であり、２．５ないし５の範囲
が特に好ましい。多価アルコールの含有量が、２．５よ
りも低い場合には、インクが滲みやすく、画質が悪化
し、また、画像欠陥が発生しやすい。また、２，２′−
チオジエタノールと多価アルコールの合計量は１０．５
重量％ないし５０重量％であることが必要であり、好ま
しくは、１０．５重量％ないし３０重量％の範囲であ
る。これらの合計量が１０．５重量％よりも小さいと、
ノズル先端で目詰まりが発生しやすく、また、５０重量
％より大きいと、インクの粘度が高すぎ、吐出応答性、
吐出安定性が得られず、好ましくない。

【０００９】ｃ）の成分である界面活性剤としては、ノ
ニオン、アニオン、カチオン、あるいは両性界面活性剤
のいずれを用いてもよいが、特にノニオン界面活性剤が
好ましい。ノニオン界面活性剤としては、例えば、ポリ
オキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエ
チレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン
ドデシルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキ
ルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソル
ビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン／ポリオキ
シプロピレンブロック共重合体、ポリオキシエチレンソ
ルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド等
があげられる。アニオン界面活性剤としては、アルキル
ベンゼンスルフォン酸塩、アルキルフェニルスルフォン
酸塩、アルキルナフタレンスルフォン酸塩、アルキルナ
フタレンスルフォン酸塩のフォルマリン縮合物、高級脂
肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂
肪酸エステルのスルフォン酸塩、高級アルコールエーテ
ルの硫酸エステル塩、およびスルフォン酸塩、高級アル
キルスルフォンアミドのアルキルカルボン酸塩、スルフ
ォコハク酸エステル塩等があげられる。カチオン界面活
性剤としては、第１級ないし第３級アミン塩、第４級ア
ンモニウム塩等が使用でき、また両性界面活性剤として
は、ベタイン、スルフォベタイン、サルフェートベタイ
ン等が使用できる。この界面活性剤を、上記ａ）成分お
よびｂ）成分と組み合わせることにより、特に、低湿下
において、ゴム材料等を用いたノズル表面のクリーニン
グ不良を顕著に防止することが可能である。また、通
常、界面活性剤を含有するインクは、泡だち易く、イン
ク流路中に気泡が発生し、吐出安定性が阻害されるが、
特にｂ）の２，２′−チオジエタノールとの組み合わせ
により、泡だちは、著しく低減され、吐出安定性が改善
できる。これら界面活性剤の含有量は、０．００１重量
％から０．１重量％であることが必要であり、好ましく
は０．００１重量％ないし０．０５重量％の範囲であ
る。界面活性剤の含有量が０．００１重量％よりも少な
いと、添加効果が充分ではなく、０．１重量％より多い
と、ノズル先端からの滲みだしが発生し、安定な吐出が
得られず、また画像滲みが発生し、好ましくない。

【００１０】本発明において上記色材としては、各種染
料、顔料、着色ポリマーまたはワックスを含む油溶性染
料等を用いることができるが、水溶性染料、特に、酸性
染料および直接染料が好ましい。例えば、Ｂａｓａｃｉ
ｄ Ｂｌａｃｋ Ｘ３４ ｌｉｑｕｉｄ （ＢＡＳＦ社
製）、Ｓｐｅｃｉａｌ Ｂｌａｃｋ ＳＰ ｌｉｑｕｉ
ｄ，Ｓｐｅｃｉａｌ Ｂｌａｃｋ ＨＦ（Ｂａｙｅｒ社
製）、Ｃ．Ｉ．ダイレクトブラック−４、−９、−１
１、−１７、−１９、−２２、−３２、−８０、−１５
１、−１５４、−１６８、−１７１および−１９４、
Ｃ．Ｉ．ダイレクトブルー−１、−２、−６、−８、−
２２、−３４、−７０、−７１、−７６、−７８、−８
６、−１４２、−１９９、−２００、−２０１、−２０
２、−２０３、−２０７、−２１８、−２３６および−
２８７、Ｃ．Ｉ．ダイレクトレッド−１、−２、−４、
−８、−９、−１１、−１３、−１５、−２０、−２
８、−３１、−３３、−３７、−３９、−５１、−５
９、−６２、−６３、−７３、−７５、−８０、−８
１、−８３、−８７、−９０、−９４、−９５、−９
９、−１０１、−１１０および−１８９、Ｃ．Ｉ．ダイ
レクトイエロー−１、−２、−４、−８、−１１、−１
２、−２６、−２７、−２８、−３３、−３４、−４
１、−４４、−４８、−８６、−８７、−８８、−１３
５、−１４２および−１４４、Ｃ．Ｉ．フードブラック
−１および−２、Ｃ．Ｉ．アシッドブラック−１、−
２、−７、−１６、−２４、−２６、−２８、−３１、
−４８、−５２、−６３、−１０７、−１１２、−１１
８、−１１９、−１２１、−１７２、−１９４および−
２０８、Ｃ．Ｉ．アシッドブルー−１、−７、−９、−
１５、−２２、−２３、−２７、−２９、−４０、−４
３、−５５、−５９、−６２、−７８、−８０、−８
１、−９０、−１０２、−１０４、−１１１、−１８５
および−２５４、Ｃ．Ｉ．アシッドレッド−１、−４、
−８、−１３、−１４、−１５、−１８、−２１、−２
６、−３５、−３７、−２４９および−２５７、Ｃ．
Ｉ．アシッドイエロー−１、−３、−４、−７、−１
１、−１２、−１３、−１４、−１９、−２３、−２
５、−３４、−３８、−４１、−４２、−４４、−５
３、−５５、−６１、−７１、−７６および−７９等が
あげられる。これら染料は、単独でも使用できるが、２
種以上混合したり、シアン、マゼンタ、イエロー、ブラ
ックの４原色の外、赤、青、緑などのカスタムカラーに
調色してもよい。これらの染料の含有量は、全インク量
に対して１〜８重量％の範囲、より好ましくは２〜６重
量％である。

【００１１】本発明のインクには、さらに、色材の溶
解、分散状態を更に安定化させるため、いわゆる分散
剤、包接化合物等を添加してもよい。その他、アクリル
酸／メタクリル酸／マレイン酸またはその塩よりなる水
溶性ポリマー、ポリエチレンイミン、ポリアミン類、ポ
リビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、セルロ
ース誘導体、シクロデキストリン、大環状アミン類、ク
ラウンエーテル類、尿素、アセトアミド等を用いること
ができる。また、必要に応じてエチレングリコールモノ
メチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテ
ル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレ
ングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコー
ルモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチ
ルエーテル等の多価アルコール誘導体、ピロリドン、Ｎ
−メチル−２−ピロリドン、シクロヘキシルピロリド
ン、トリエタノールアミン等の塩基性溶媒、エタノー
ル、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベン
ジルアルコール等のアルコール類を含有させることも可
能である。その他、必要に応じてｐＨ調整剤、防カビ
剤、粘度調整剤あるいは導電剤等を含有させることも可
能である。特に熱イングジェット記録方法に本発明のイ
ンクを用いることが好ましい。熱インクジェット記録方
法は、膜沸騰現象を利用した記録方法で記録ヘッド内に
ヒーターが設けられいる。ヘッドの材料としては、シリ
コン、ポリイミド、エポキシ樹脂等が用いられている。
特に、ポリイミドやエポキシ樹脂はインクにより浸食さ
れやすいところ、本発明ではこれを防止することができ
る。特に、好ましくは、シリコンが用いられる。また、
印字記録に際しての、ヒーターによる加熱温度は、１５
０℃以上で用いられる。また、駆動時の周波数は、２ｋ
Ｈｚ以上１５ｋＨｚ以下が好ましい。

【００１２】

【作用】本発明においては、上記のように２，２′−チ
オジエタノールと多価アルコールおよび界面活性剤を特
定の割合で混合することによって、紙上で滲み、カブリ
となり、高解像度、高濃度の均一な画像が得られるが、
これは、２，２′−チオジエタノールを用いた際のイン
クの飛び散りが、多価アルコールを上記の特定量用いる
ことによって防止されること、およびノズル先端でのイ
ンクの乾燥による目詰まりが、界面活性剤を上記の特定
量添加することによって防止されることによるものと考
えられる。

【００１３】

【実施例】以下、実施例によって本発明を更に詳細に説
明する。 実施例１〜９および比較例１〜７ 後記表１（実施例１〜９）および表２（比較例１〜７）
に示した各成分およびバランスとしてイオン交換水を用
いて合計１００重量％とし、充分混合溶解した。得られ
た溶液を、０．２μｍフィルターで加圧濾過した後、真
空ポンプを用いて脱気処理し、インクを調製した。これ
らのインクについて以下のテストを行った。その結果を
表３に総括して示す。

【００１４】（１）インク表面張力 ２０℃、５０％ＲＨの環境において、ウイルヘルミー型
表面張力計を用いて測定した。 （２）インク粘度 ２０℃、５０％ＲＨの環境において、せん断速度１，４
００ｓ^-1で測定した。 （３）画像品質テスト 試作したヘッド（構成材料がシリコン、ポリイミド、お
よびエポキシ等よりなる）を有するサーマルインクジェ
ットプリンター（３００ｄｐｉ）を用い、ＦＸ−Ｌ紙
（富士ゼロックス社製）とインクジェット用コート紙
（ゼロックス社製）を用いて、印字テストを行った。評
価は、目視による比較評価として、次の基準で行った。 ○：５ポイントの漢字が判読可能。 △：８ポイントの漢字が判読可能。 ×：１０ポイントの漢字が判読不可能。 また、インクの微小な飛び散りは、比較的発生し易いソ
リッド画像の周辺で、発生有無を判定した。

【００１５】（４）画像欠陥テスト １０℃、１５％ＲＨの雰囲気中で連続１００枚の印字テ
ストを行い、画像の白抜け、ラインの曲がり、画像の歪
み、およびノズル表面のインク固着の有無を観察し、画
像欠陥の有無を調べた。 （５）吐出安定性テスト 試作したインクジェットプリンター（３００ｄｐｉ）を
用いて２０℃、５０％ＲＨ、および３０℃、８５％ＲＨ
の雰囲気中で、それぞれ印字テストを行い、以下の基準
で評価を行った。 ○：ドット径変化±１０％以下。 △：ドット径変化±１５％以下。 ×：ドット径変化±１５％以上。 （６）目詰まり性テスト １０℃、１５％ＲＨ、３０℃、８５％ＲＨの雰囲気中
で、所定時間放置後、印字テストを行い、以下の基準で
評価を行った。 ○：３００秒放置で印字可能。 △：１８０秒放置で印字可能。 ×：１８０秒放置で印字不可能。

【００１６】

【表１】

【００１７】

【表２】

【００１８】

【表３】

【００１９】

【発明の効果】本発明のインクジェット記録用インク
は、上記の構成を有するから、インクジェット記録法に
よって、紙上で滲み、かぶりのない、高解像度、高濃度
で均一な画像が得られる。また、ノズル先端でのインク
乾燥による目詰まりが発生せず、常に吐出応答性、吐出
安定性が良好であり、紙上においてインクの速乾性、画
像の堅ろう性が良く、長期保存安定性が良いという効果
を奏する。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 遠藤 保晴 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼ ロックス株式会社内 (72)発明者 橋本 健 神奈川県南足柄市竹松1600番地 富士ゼ ロックス株式会社内 (56)参考文献 特開 平７−238244（ＪＰ，Ａ) 特開 平７−26180（ＪＰ，Ａ) 特開 平７−207202（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−136306（ＪＰ，Ａ) 特開 平６−15949（ＪＰ，Ａ) 特開 昭56−8472（ＪＰ，Ａ) 特開 昭59−217772（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) C09D 11/00 - 11/20 B41J 2/01 B41M 5/00

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 水、色材を必須成分とし、 ａ）２，２′−チオジエタノール ｂ）多価アルコール ｃ）界面活性剤 を含有してなり、ａ）の含有量が３〜１０重量％であ
   り、ｂ）／ａ）の比が、２．５以上であり、ａ）とｂ）
   の合計量が１０．５重量％ないし５０重量％であり、か
   つ、ｃ）の含有量が０．００１重量％ないし０．１重量
   ％であることを特徴とするインクジェット記録用イン
   ク。
2. 【請求項２】 請求項１に記載のインクジェット記録用
   インクを被記録材に吐出して記録を行うことを特徴とす
   るインクジェット記録方法。