JP3230115B2 - 防眩性に優れたステンレス鋼板 - Google Patents

防眩性に優れたステンレス鋼板

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JP3230115B2 JP26927693A JP26927693A JP3230115B2 JP 3230115 B2 JP3230115 B2 JP 3230115B2 JP 26927693 A JP26927693 A JP 26927693A JP 26927693 A JP26927693 A JP 26927693A JP 3230115 B2 JP3230115 B2 JP 3230115B2
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淳 中塚
芳弘 藤井
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は優れた表面性状を有する
防眩性に優れたステンレス鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、防眩性を必要とするステンレス鋼
板の製造方法として、表面粗度の粗いロールを用いて冷
間圧延を行ってステンレス鋼板の表面を荒らす方法や冷
間圧延後あるいは冷間圧延・焼鈍後の酸洗を硝酸や弗酸
を含む水溶液中で電解または浸漬を行ってステンレス鋼
板の表面を荒らす方法等が用いられている。
【0003】前記の方法の一例として、冷間圧延で表面
を荒らしたステンレス鋼板に酸洗を施して防眩性を付与
する技術、例えば特開平5−163528号公報に開示
されているように、表面粗さ(Ra)が0.5〜10.
0μmのステンレス冷延鋼板を光輝焼鈍した後最終的に
硝酸と弗酸の混酸に浸漬する酸洗方法がある。しかしな
がら、この方法はステンレス鋼板の表面を冷間圧延ある
いは酸洗によって著しく荒らしているため、表面に埃等
の汚れが付き易く、表面の美観を損ない、さらに耐食性
も劣化させる。また、酸洗に用いる酸は取扱が難しく、
環境衛生上好ましくない。しかしながら、これまでの技
術では、表面を著しく荒らす冷間圧延方法や酸洗処理を
施す方法以外に防眩性を付与する方法は提案されておら
満足できる防眩性に優れたステンレス鋼板は提供さ
れていない
【0004】
【発明が解決しようとする課題】BA製品や2B製品に
おいてステンレス鋼板の表面光沢を低下させるものに冷
間圧延中に発生するオイルピットがある。これは冷間圧
延中にロール表面とステンレス鋼板表面との間に潤滑油
が多量に浸入した際にステンレス鋼板表面とロール表面
との間に発生するもので、静水圧によりステンレス鋼板
表面が変形してピット状欠陥になるものである。本発明
はこの現象に着目し、素材表面を極端に荒らすことな
く、冷間圧延のみで表面光沢を効果的に低下させて防眩
優れたステンレス鋼板を提供することを目的とす
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨とするとこ
ろは表面粗度Raが0.1μm未満、かつ深さ0.1
μm以上の表面の窪みが面積率で5%以上50%以下で
あることを特徴とする防眩性に優れたステンレス鋼板
ある
【0006】
【作用】本発明の防眩性に優れたステンレス鋼板の製造
方法は、通常のプロセスを経てきたステンレス鋼板に対
し、最終冷間圧延工程において、圧延ロール粗さ、圧下
率、圧延パス回数を特定範囲内で行うことを特徴として
いる。本発明の限定理由を以下に説明する。
【0007】先ず、ステンレス鋼板の防眩性と鋼板表面
の窪みの面積率の関係について説明する。ステンレス鋼
板の防眩性の要因として、表面の平均粗さ即ち平滑性が
重要なものとして挙げられるが、特に表面の平均粗さ
(Ra)が高い鋼板は、図2の暴露試験(海岸より1k
mの場所で1年間暴露した)結果に示すように、汚れ、
銹が生じ易く内外装壁、屋根や精密部品等に用いる場合
には問題となる。本発明者らは、表面の平均粗さ(R
a)が低くかつ光沢が鈍い(防眩性に優れた)鋼板の製
造方法を検討し、鋼板の冷延工程において、表面に細か
な窪みを残留させることにより、本発明の鋼板を開発し
た。
【0008】表面の光沢は一般には表面の平均粗さ(R
a)に依存するが、本発明者らは、ステンレス鋼板表面
に浅く細かな窪みを生じさせた場合、平均粗さ(Ra)
が低いにも関わらず非常に鈍い光沢となること、浅く細
かな窪みはオイルピットとして生じさせることが有効で
あり、その量が冷間圧延の条件によって制御できること
を見出した。これらの窪みの発生量と冷間圧延条件を検
討した結果、表面粗さRaが0.1μm未満の平滑な表
面で、深さが0.1μm以上の窪みの面積率を5%以上
とする防眩性ステンレス鋼板の製造が可能となった。窪
みの測定については、深さ0.1μm以上について20
0倍の光学顕微鏡で観察し、その面積率を測定してい
る。図1に示すように窪みの面積率が5%に満たないと
光沢度が高くなって防眩性が劣ることから、本発明のス
テンレス鋼板は深さ0.1μm以上の窪みの面積率を5
%以上とする。また窪みの面積率は高ければ高い程防眩
性に優れているが、50%を超えるとほぼ横這いとなり
効果が飽和するため、上限を50%とした。
【0009】また、ステンレス鋼板表面の汚れの付着性
や耐銹性に対しては、平滑な表面程汚れの付着および発
銹が生じ難い。図2に示す暴露試験結果より耐銹性に優
れた表面とするためには、表面粗度をRaで0.1μm
未満にする必要がある。本発明者らは、表面粗度および
窪みの発生の双方を制御できる冷間圧延技術を確立し
た。その基本的な考え方を以下に示す。
【0010】最終冷間圧延に供する板の前履歴(オイ
ルピット、割れ、粒界腐食欠陥、研削目残り)を粗圧延
によって掻き消す。続いて中間圧延において粗圧延に
よるロールスクラッチ目を潰し、オイルピットを多数生
じさせる。さらに仕上圧延において製品板の表面粗度
を調節する。この技術思想に基づいて最終冷間圧延を行
う場合、の粗圧延におけるロールの表面はあまり粗度
が低いと前履歴を掻き消すことができず、一方、粗度が
高すぎるとの圧延でスクラッチ目を充分に潰すことが
難しくなるため、粗圧延におけるロールの粗度として
は、Raを0.20〜1.20μmの範囲としなければ
ならない。また、圧下率に関しては、粗圧延は中間圧
延、仕上圧延に比べて高圧下率がとりやすいことから、
圧下率は少なくとも15%以上は確保する。圧下率があ
まり稼げない中間圧延、仕上圧延の圧延の圧下量分が大
きくなると、パス回数が増加し生産効率が悪くなる。ま
た、あまり大きな圧下率とすると設備の能力上安定した
操業ができない。従って粗ロール圧延の圧下率は、15
%以上30%以下とした(図3)。そしてこの条件で圧
延した場合、熱間圧延後酸洗デスケールを施した素材、
あるいは熱間圧延後焼鈍酸洗を施した素材、あるいは引
き続いて冷間圧延を施した素材、あるいは更に焼鈍酸洗
を施した素材の履歴を掻き消すことが可能である。加え
て、研磨や研削を施した素材に対しても同等の効果を持
つ。
【0011】の中間圧延の目的は粗圧延において生じ
たロールスクラッチ目の除去とオイルピットの新たな生
成であり、そのためにはロール粗度、圧下率と圧延パス
回数の条件が重要である。ロール粗度が低いとオイルピ
ットが生じ難くなり、高過ぎると製品板の表面粗度が高
くなる。本発明において狙いとする窪みの面積率5%以
上を得るためには、ロール表面粗度はRaで0.10μ
m以上とすることが必要である。一方、中間圧延後の表
面粗さが製品板に残留することを防ぐためには、上限は
Raで0.20μm未満でなければならない。また、圧
下率は、粗ロールの目を除去するためには5%以上必要
で、足りない場合には粗ロールのスクラッチ目が残留し
製品板のRaが0.1μmを超える。一方、高い圧下率
で圧延すると十分なオイルピットが生じ難くなるため上
限を15%とした(図4)。
【0012】中間圧延を効果的かつ安定的に行うために
は2回パス以上の圧延が必要であることが図5の試験結
果より明らかであり、該圧延を2回パス以上と定めた。
の仕上圧延の目的は、製品板の表面粗度をRaで0.
1μm未満に調節することである。そのためにはロール
粗度はRaで0.10μm未満でなければならない、一
方ロール粗度の下限は製品の品質上からはないが、ロー
ル製造技術上高平滑なロールはコストがかかるため好ま
しくない。よって下限を0.01μmとした。平滑ロー
ルで10%超の圧下率で圧延すると、オイルピットが消
失し深さが0.1μm以上の表面の窪みの面積率が5%
未満となる。また1%未満の圧下率では、前記窪みの面
積率が50%超となる。よって圧下率は1%以上10%
以下とした(図6)。
【0013】前記の工程で製造された冷延鋼板に対して
酸化スケールが生じない光輝焼鈍を行った場合も、防眩
性に優れたステンレス鋼板を得ることができる。
【0014】
【実施例】表1に本発明鋼板の製造例、表2に比較鋼板
の製造例および従来例を示す。鋼種としてはSUS30
4,SUS430を用い、最終冷間圧延前の工程、最終
冷間圧延工程の条件を示している。尚、本冷間圧延試験
は、12段のクラスターロール圧延機を用いて行った。
【0015】表3に表1、表2に示す冷間圧延板に対す
る光輝焼鈍の条件および得られた製品板の評価結果を纏
めて示している。本発明鋼板例は窪みの面積率が5%以
上、50%以下であり、比較鋼板例のNo.11,1
4,15,17に比べ防眩性に優れた(光沢度の低い)
ステンレス鋼板となっており、比較鋼板例、従来例のN
o.10,12,13,16,18,19に比べ耐発銹
性(暴露試験結果)の優れたステンレス鋼板となってい
る。
【0016】また、表面粗度RaはJIS B 060
1に基づいて評価している。窪みの面積率は表面を20
0倍に拡大し、画像処理を用いて窪みの面積を測定して
いる。光沢度はJIS Z 8741に基づいて測定し
ている。暴露試験は海岸から1km離れた位置に試験片
を垂直に吊るして1年間暴露した後、表面をエチルアル
コールで洗浄し、発銹および変色を観察している。
【0017】
【表1】
【0018】
【表2】
【0019】
【表3】
【0020】
【発明の効果】以上のことから明らかな如く、本発明に
よれば、表面性状の優れた防眩性ステンレス鋼板を提供
することが可能となる。特にその製造に際しては、酸洗
を必要としないため、環境対策の設備が不要となる上、
さらに素材の前履歴を殆ど問題にせず適応できるため、
鋼種毎に複雑に入り組んだステンレス鋼板の製造プロセ
スの集約も可能となり、生産性の大幅な向上が期待でき
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】ステンレス鋼板の光沢度(45°)に及ぼす鋼
板表面の窪みの面積率の影響を示す図である。
【図2】ステンレス鋼板の耐発銹性に及ぼす鋼板表面の
粗度の影響を示す図である。
【図3】最終冷間圧延工程の粗圧延におけるロール粗
さ、圧下率の適正な範囲を示す図である。
【図4】最終冷間圧延工程の中間圧延におけるロール粗
さ、各パスの圧下率の適正な範囲を示す図である。
【図5】最終冷間圧延工程の中間圧延における必要な圧
延パス回数を示す図である。
【図6】最終冷間圧延工程の仕上圧延におけるロール粗
さ、圧下率の適正な範囲を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤井 芳弘 山口県光市大字島田3434番地 新日本製 鐵株式会社光製鐵所内 (72)発明者 松元 俊彦 東京都千代田区大手町2−6−3 新日 本製鐵株式会社内 (56)参考文献 特開 昭63−112002(JP,A) 特開 昭63−49305(JP,A) 特公 平3−34406(JP,B2) 特公 昭64−3561(JP,B2) 特許2642571(JP,B2) 社団法人日本塑性加工学会発行「第 148回塑性加工シンポジウム”鋼および 非鉄金属材料の熱間・冷間圧延潤滑技術 の最近の動向”」(平成4年11月30日発 行)、第61−70頁(特に図12参照) 社団法人日本鉄鋼協会発行「材料とプ ロセス」Vol.5(1992)、No. 5、第1599頁 社団法人日本鉄鋼協会発行「鉄と鋼」 Vol.78(1992)、No.10、第42− 49頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 1/22 B21B 3/02 B21B 27/00

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 表面粗度Raが0.1μm未満、かつ
    さ0.1μm以上の表面の窪みが面積率で5%以上50
    %以下であることを特徴とする防眩性に優れたステンレ
    ス鋼板。
JP26927693A 1993-10-27 1993-10-27 防眩性に優れたステンレス鋼板 Expired - Lifetime JP3230115B2 (ja)

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JPH07116702A JPH07116702A (ja) 1995-05-09
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Non-Patent Citations (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
社団法人日本塑性加工学会発行「第148回塑性加工シンポジウム"鋼および非鉄金属材料の熱間・冷間圧延潤滑技術の最近の動向"」(平成4年11月30日発行)、第61−70頁(特に図12参照)
社団法人日本鉄鋼協会発行「材料とプロセス」Vol.5(1992)、No.5、第1599頁
社団法人日本鉄鋼協会発行「鉄と鋼」Vol.78(1992)、No.10、第42−49頁

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