JP3229199B2 - 導電性ポリシラン組成物およびその製造方法 - Google Patents

導電性ポリシラン組成物およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、導電材料として有
用な導電性ポリシラン組成物に関し、また、基材表面に
該導電性ポリシラン組成物の膜を形成する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】ポリシランは、ポリエチレンやポリアセ
チレンなどの従来の炭素系高分子とは異なり、光照射に
よりSi−Si結合が切断されたり、光導電性を示すと
いう特徴的な光・電子的性質を有する。その特徴的なポ
リシランの性質は、主鎖のSi−Si結合を構成するσ
電子が、炭素共役系のπ電子のように、主鎖骨格全体に
非局在化しているために発生する。したがって、ポリア
セチレンのようにドーピングによって導電性を発現する
ことから、ポリシランは、有機導電材料やホトレジスト
への応用が可能であり、また、空気中で光照射を行うこ
とにより容易に酸化され、絶縁体であるシロキサン化合
物に変換できることから、機能変換材料への応用も考え
られ、それらの研究が盛んに行われてきている。ドーパ
ントとしては、主にヨウ素、五フッ化アンチモン、塩化
鉄(II)などが挙げられ、ポリフェニルメチルシラン・
ジメチルシラン共重合体の場合、ドーピング前の導電率
が1×10-12Scm-1以下と絶縁体の領域であるのに対
し、五フッ化アンチモンをドープすることで導電率は5
×10-5Scm-1 となり、導電率の向上が観測されている
(R. Westら; J. Am. Chem. Soc., 103, 7352 (1981))。
このようなドーピングによる導電性の発現は、非局在化
しているσ電子により形成されている荷電子帯を、ドー
パントにより生成するホールが移動するために起きる。
【0003】導電性を有するとはいえ、ポリシランの導
電率は半導体の領域にすぎず、導電材料として用いるた
めには、さらなる導電性の向上が望まれていた。そのた
めに、側鎖にカルバゾリルプロピル基のような電子受容
性の置換基を導入したポリシランの合成(いわゆる分子
内ドーピング)を行い、安定した、高い導電性の達成を
目指した研究も行われている(E. Tabeiら; Syn. Metal
s, 73, 113 (1995))。しかしながら、このような置換基
をポリシランに導入するには、ポリシランの合成が煩雑
になり、工業的に有利ではない。
【0004】たとえば、森らは、N−カルバゾリル基を
有する直鎖状ポリシラン化合物の合成に成功し、これに
ヨウ素をドーピングして、体積抵抗率7.7×102 Ω
cmの導電性材料を得ている(Synthetic Metals 73, 199
5., p113〜116 、特開平6−128488号公報参
照)。石川らは、ジエチニレンジピリジレンジシラニレ
ンポリマーの合成に成功し、ヨウ素または第二塩化鉄を
ドーピングして、体積抵抗率7.1×103 Ωcmの導電
性材料を得ている(Organometallics 1995, 14, p714〜
720 参照)。これらのポリマーは、特殊な置換基を導入
する必要があるため、いずれも合成が困難である。ま
た、玉尾、伊藤らにより、体積抵抗率1×103 Ωcmの
導電性を示すチオフェン−シロール共重合体が報告され
ている(特開平6−100669号公報および特開平6
−166746号公報参照)が、これはポリシランとは
異なる構成単位からなる共重合体であるため、機能変換
材料への応用の点で満足できるものではない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、合成
と取扱いの容易なポリシランをベースポリマーとして、
溶媒に可溶で、任意の形状の膜への賦形性が良好であ
り、簡便な操作によって調製でき、劣化が少なく、高導
電性のケイ素系高分子組成物を提供することである。本
発明のもうひとつの目的は、そのような組成物からなる
膜を、基材表面に形成する方法を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記の課
題を解決するために鋭意検討を行った結果、炭素原子に
結合したヒドロキシル基を有する有機化合物(以下、ヒ
ドロキシル基含有有機化合物という)を添加した固体ポ
リシランが、有機溶媒に可溶で、任意の形状の膜に賦形
でき、しかも予期しなかったことに、ヨウ素のような酸
化性物質をドーピングすることにより、劣化が少なく、
該有機化合物を添加しないで酸化性物質をドーピングし
た系に比べて組成物の導電性が著しく向上することを見
出して、本発明を完成するに至った。
【0007】すなわち、本発明は、ポリシラン100重
量部に対して、アルコール類、エーテルアルコール類お
よびフェノール類から選ばれる1種または2種以上の、
ヒドロキシル基含有有機化合物1〜50重量部を配合し
た固体ポリシランに、酸化性物質1〜1,000重量部
をドーピングしたことを特徴とする導電性ポリシラン組
成物に関し、また上記の有機化合物を配合した固体ポリ
シランの塗膜を基材表面に形成させ、ついで酸化性物質
をドーピングする、導電性ポリシラン組成物の製造方法
に関する。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に用いられるポリシラン
は、常温で固体を呈するものであれば特に限定されない
が、好ましくは、平均式(I):
【化1】 (式中、R1 はたがいに同一でも異なっていてもよく、
ケイ素原子に結合した、置換または非置換の1価の炭化
水素基を表し、一部は水素原子であってもよく;R2
たがいに同一でも異なっていてもよく、酸素原子を介し
てケイ素原子に結合した、水素原子または置換もしくは
非置換の1価の炭化水素基を表し;R3 は2個のケイ素
原子に結合した、2価の置換もしくは非置換の炭化水素
基または複素環基を表し;主鎖骨格がSi−Si結合お
よび場合によってはSi−R3 −Si結合から構成さ
れ、aは1.00〜2.00、bは0または正の数、c
は0≦c/(an+bn+c)≦0.3を満足させる数
であり;nはポリシラン化合物の重量平均分子量が50
0〜3,000,000になるように選ばれる数であ
る)で示される。
【0009】このようなポリシランは、直鎖状、分岐
状、環状、網目状のいずれのポリシラン骨格を有するも
のであってもよく、またその構造中に、部分的に、分子
中に分散して、ケイ素原子の間に上記のR3 が存在して
いてもよいが、酸化性物質をドーピングすることによる
劣化や分子量の低下を抑制することから、ポリシラン骨
格自体および/またはR3 によって網目状構造を形成し
ていることが好ましい。
【0010】このようなポリシランとしては、たとえば
一般式(II)または(III)
【化2】 (式中、R1 、R2 およびR3 は前述のとおりであり;
p、qおよびsは0または正の整数、rは正の整数であ
って、該p、q、rおよびsは上記の平均式(I)の
a、b、cおよびnを満足させる数であり;式はシラン
単位およびR3 の数を表わすもので、ブロック共重合体
を意味するものではない)で示され、R1 Si単位およ
び必要に応じてR3 によって架橋され、網目状骨格を有
するポリシランが挙げられる。
【0011】R1 はポリシランのケイ素原子に結合した
置換または非置換の1価の炭化水素基で、メチル、エチ
ル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、オクチ
ル、デシル、ドデシル、テトラデシル、オクタデシルな
どの直鎖状または分岐状のアルキル基;シクロヘキシル
などのシクロアルキル基;2−フェニルエチル、2−フ
ェニルプロピルなどのアラルキル基;フェニル、トリ
ル、キシリル、メシチルなどのアリール基;ビニル、ア
リルなどのアルケニル基;p−ビニルフェニルなどのア
ルケニルアリール基;ならびにクロロメチル、トリフル
オロプロピル、メトキシフェニルなどの置換炭化水素基
が例示され、一部のR1 は水素原子であってもよい。こ
れらのうち、合成のし易さから、メチル、エチル、プロ
ピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルのような炭素数1〜
6のアルキル基、シクロヘキシル基およびフェニル基が
好ましい。
【0012】ポリシラン分子中のR1 の数は、前述の網
目状構造の度合と関係があり、そのケイ素原子に対する
比R1 /Siが1.00〜2.00の範囲であることが
好ましく、1.00〜1.91がさらに好ましい。
【0013】R2 は、ケイ素原子に結合したOR2 基を
構成する水素原子または置換もしくは非置換の1価の炭
化水素基であり、該OR2 基が存在すると、固体ポリシ
ランのSi−Si結合が、使用中の露光のために活性化
されて開裂しても、そこに生じた活性種がトラップされ
て、全体としてのSi−Si結合の数や架橋密度が保た
れ、分子量の低下をもたらすことなく、固体ポリシラン
の電子的・光学的特性が保持される。R2 としては、水
素原子のほか;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペ
ンチル、ヘキシル、ドデシルなどの直鎖状または分岐状
のアルキル基;シクロヘキシルなどのシクロアルキル
基;フェニル、トリル、キシリル、メシチルなどのアリ
ール基;および2−メトキシエチル、2−エトキシエチ
ルおよび2−ブトキシエチルのような置換炭化水素基が
例示され、合成のし易さおよび取り扱い易さから、メチ
ル、エチル、プロピル、ブチルのような炭素数1〜4の
アルキル基およびフェニル基が好ましく、メチルおよび
エチルが最も好ましい。すなわち、OR2 基としては、
メトキシ、エトキシのような低級アルコキシ基が最も好
ましい。このようなOR2 基は、ポリシラン分子鎖の末
端、中間および分岐位置のいずれのケイ素原子に結合し
ていてもよい。
【0014】R3 は、ポリシラン鎖中、ポリシラン鎖を
架橋する形、または網目状ポリシラン構造中に、ケイ素
原子の間に導入された置換もしくは非置換の2価の炭化
水素基または複素環基であり、ポリシランの分子中に分
散して存在することが好ましい。R3 としては、メチレ
ン、エチレン、トリメチレンなどのアルキレン基;ブタ
ジエニレンなどの2価の脂肪族飽和炭化水素基;フェニ
レン、ナフチレン、9,10−アントラセニレン、フェ
ロセニレンなどのアリーレン基;キシリレンなどの2価
の芳香族置換炭化水素基;チエニレン、ジチエニレン、
ピロリレン、ピリジニレンなどの複素環基が例示されビ
フェニレン、トリフェニレン、チエニレンのような、2
個以上の芳香環または複素環が反復して存在する2価の
連鎖であってもよく、合成のし易さと組成物の導電性か
ら、芳香族炭化水素基または複素環が好ましく、フェニ
レン、9,10−アントラセニレンおよびチエニレンが
特に好ましい。
【0015】ポリシラン中にR3 、特に芳香族基または
複素環基であるR3 が存在することにより、ポリシラン
組成物の導電性を高めるとともに、溶媒に対する溶解性
を付与し、該ポリシランの薄膜をより容易に、かつ均一
に行うことができる。この場合、R3 の数cは、ポリシ
ラン中の置換基の全個数an+bn+cに対して30%
以下であることが好ましく、0.1〜20%がさらに好
ましい。この比率が大きいほどポリシランの導電性を上
げることができるが、30%を越えると、高分子量の固
体ポリシランを得ることが困難となり、安定で物性の良
好な薄膜を形成できない。
【0016】ポリシランの重量平均分子量は、該ポリシ
ランが溶媒に可溶であって、固体膜が形成できれば特に
限定されないが、合成のし易さ、溶媒への可溶性、成膜
性などから、500〜3,000,000の範囲が好ま
しく、1,000〜1,000,000がさらに好まし
く、2,500〜100,000が特に好ましい。
【0017】本発明に用いられるポリシランのうち、直
鎖状ポリシランは、アルカリ金属の存在下でジクロロシ
ラン類の縮合反応、ジルコノセンなどの遷移金属触媒に
よるヒドロシラン類の脱水素縮合反応、マスクされたジ
シレンのアニオン重合反応、または環状オリゴシランの
開環重合反応によって合成が可能である。また網目状骨
格ポリシランは、既知のポリシランの合成法を用いて製
造することができる。たとえば、金属リチウムや金属ナ
トリウムによるオルガノクロロシラン類の脱塩縮合反応
(ウルツ法)を用いて、原料のオルガノクロロシラン類
の混合比を調整することにより、分子骨格の網目の程度
を制御した様々な網目状骨格ポリシランを得ることがで
きる。
【0018】さらに、アルコキシジシラン類の不均化反
応を利用すれば、温和な条件で、様々な有機置換基を有
する網目状骨格のポリシランの合成が可能である(特開
平4−311727号公報、特開平6−57002号公
報およびK. Kabeta ら; Chem. Lett., 1994, p835 〜83
8 参照)。さらに、2個のケイ素原子の間にR3 を導入
したポリシランを得ることも可能である(Chem. Lett.,
1994, 119〜120 参照)。これらはアルコキシ基含有ポ
リシランについて記載されたものであるが、これをアル
コキシ基以外のOR2 基を有するポリシランに適用する
ことは、当業者にとっては容易であろう。
【0019】本発明において、ポリシランに配合される
ヒドロキシル基含有有機化合物は、本発明のポリシラン
組成物に高い導電性を付与するために不可欠な成分であ
る。このようなヒドロキシル基含有有機化合物として
は、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタ
ノール、オクタノール、ノナノール、デカノール、ウン
デカノール、ドデカノール、トリデカノール、テトラデ
カノール、ペンタデカノール、ヘキサデカノール、シク
ロヘキサノール、ベンジルアルコールなどの1価のアル
コール類;エチレングリコール、プロピレングリコー
ル、1,3−プロパンジオール、ブタンジオール、ペン
タンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、
オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオールな
どの2価のアルコール類;グリセリン、トリメチロール
プロパン、ブタントリオール、ヘキサントリオール、ヘ
プタントリオールなどの3価のアルコール類;ペンタエ
リトリトール、ソルビトール、マンニトールなどの4価
又はそれ以上の多価アルコール類;ジエチレングリコー
ル、ジプロピレングリコールなどのエーテルアルコール
類;ならびにフェノール、キシレノールなどのフェノー
ル類が例示され、直鎖状、分岐状、環状のいずれの炭素
鎖を有するものでよく、分子中のどの位置の炭素原子に
ヒドロキシル基が結合していてもよい。このようなヒド
ロキシル基含有有機化合物は、単独で用いても、2種以
上を併用してもよい。
【0020】これらのうちで、高い導電性が得られるこ
とからアルコール類が好ましく、ポリシランの混合が容
易で、混合後の保存中における系の安定性、製膜性およ
び製膜後の保存性が優れていることから、アルコール類
の中でも、揮発性の低いものまたは常温で固体のものが
より好ましく、揮発性に関しては、常圧で沸点が100
〜500℃のものがさらに好ましく、200〜300℃
のものが特に好ましい。このようなヒドロキシル基含有
有機化合物としては、テトラデカノール、ペンタデカノ
ール、ヘキサデカノール、1,2,6−ヘキサントリオ
ールなどが例示される。
【0021】ヒドロキシル基含有有機化合物の配合量
は、ポリシラン100重量部に対して通常1〜50重量
部であり、10〜50重量部がさらに好ましい。ヒドロ
キシル基含有有機化合物の配合量が1%未満では導電率
の向上効果が現れず、また50%を越えるとポリシラン
膜の製膜性が著しく低下する場合がある。
【0022】固体ポリシランとヒドロキシル基含有有機
化合物を、適切な溶媒に溶解して、基材表面に薄膜を形
成させるための処理液を調製することができる。また、
あらかじめ該有機化合物を添加した固体ポリシランを溶
媒に溶解してもよく、該有機化合物が液体の場合には、
その種類と量に応じて、ポリシランに含浸させたり、ポ
リシランを該有機化合物に溶解させてもよい。
【0023】溶媒としては、非極性溶媒、極性溶媒のい
ずれを用いてもよく、たとえば、n−ヘプタン、n−ヘ
キサン、トルエン、キシレン、ベンゼン、ジメチルホル
ムアミド、テトラヒドロフラン、ジエチルエーエル、ク
ロロホルムなどが挙げられるが、ポリシランを容易に溶
解させることから、テトラヒドロフランのような極性溶
媒の方が好ましい。良好な作業性を得るための溶媒の量
は、ポリシラン100重量部に対して、通常50〜1
0,000重量部、好ましくは500〜2,000重量
部である。
【0024】ヒドロキシル基含有有機化合物を配合した
ポリシランの薄膜を形成する方法は、たとえば上述のよ
うな溶媒に溶解して得られた処理液を基板上に塗布し、
常圧または減圧で常温に放置、または加温して溶媒を揮
散させ、ポリシラン膜を得る方法が一般的である。塗布
方法としてはディッピング、スピンコーティングなどが
例示され、スピンコーティングを用いることが好まし
い。
【0025】このようにして得られたポリシラン膜に、
酸化性物質をドーピングして、導電性ポリシラン組成物
を得ることができる。
【0026】本発明に用いられる酸化性物質としては、
塩素、臭素、ヨウ素のようなハロゲン類、塩化スズ塩化
第二鉄のような遷移金属塩化物、五フッ化アンチモン、
五フッ化ヒ素のようなルイス酸などが有効であり、安全
で、取扱い易いことから、ヨウ素や塩化第二鉄を用いる
ことが好ましい。
【0027】ドーピングに用いる酸化性物質の量は、ポ
リシラン100重量部に対して、通常1〜1,000重
量部、好ましくは10〜100重量部である。1重量部
未満では組成物に高い導電性を与えることができず、
1,000重量部を越えると製膜性が悪く、得られたポ
リシラン膜に欠陥を生じやすくなる。
【0028】ドーピングの方法としては、ポリシラン薄
膜を、たとえば (a)ヨウ素や塩化第二鉄などの酸化性物質の蒸気雰囲
気下にさらす気相(乾式)ドーピング法; (b)ヨウ素や塩化第二鉄などを不活性溶媒中に溶解し
た溶液中にポリシランを浸漬する湿式ドーピング法;お
よび (c)ヨウ素とポリシランを共通に溶解させる溶媒を用
い、ヨウ素を溶解した溶液にポリシランを溶解させ、該
溶液から乾式製膜することによりフィルムあるいは薄膜
に賦形すると同時にドーピングする同時ドーピング法 があり、そのいずれかを用いることができる。
【0029】気相ドーピング法とは、ドーパント雰囲気
の温度およびドーパントの分圧を制御することにより、
ドーピング速度をコントロールすることができる。一般
にドーピングはドーパント雰囲気の温度が−30〜20
0℃の範囲で行うことができる。−30℃未満ではドー
ピング速度が遅く、200℃を越える温度ではドーピン
グの際にポリシランの劣化を招き、好ましくない。ドー
パント分圧は1Torrから5気圧の範囲が好ましい。1To
rr未満では一般にドーピング速度が遅く、5気圧を越え
て圧力を増しても特にその効果がない。
【0030】湿式ドーピング法に用いられる不活性溶媒
としては、ヨウ素と反応して電子受容体性化合物として
の能力を失活させない溶媒が用いられる。このような溶
媒として、ヘキサン、オクタン、石油エーテル、シクロ
ヘキサンのような脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエ
ン、キシレンのような芳香族炭化水素類;ジエチルエー
テル、テトラヒドロフランのようなエーテル類;酢酸エ
チルのようなエステル類;ジメチルホルムアミド、ジメ
チルスルホキシドのような非プロトン系極性溶媒;その
他、ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリルな
どが例示される。なかでもテトラヒドロフランのような
溶媒は、ポリシランの良溶媒であるため、特に同時ドー
ピング法に好適である。この場合、ヒドロキシル基含有
有機化合物を配合したポリシランをドーパントを含む溶
液に溶解させ、この溶液をキャスティングした後、乾燥
することにより、ドーピングと製膜を同時に行うことが
できる。キャスティング後の乾燥は、常圧または減圧下
に、0〜150℃の温度で行うことができる。
【0031】本発明の組成物に、さらにオニウム塩のよ
うな他の添加剤を併用してもよい。またラジカル発生剤
を添加することもできる。
【0032】
【発明の効果】本発明の導電性ポリシラン組成物は、ヒ
ドロキシル基含有有機化合物の添加により、それを添加
しない場合に比べて、ドーピング後の導電率が10〜
1,000倍以上に向上する。それゆえ、本発明によっ
て、簡便かつ迅速な操作により、102 Ωcmまでの高い
導電性を有するポリシラン組成物、特にその薄膜を得る
ことができる。本発明によって提供される導電性ポリシ
ラン組成物は、それに含まれる添加物の種類や量を変え
ることにより、ポリシラン組成物の導電性を向上させる
ことができる。また、ポリシランの骨格構造や置換基を
変えることによっても、導電性の制御が可能である。
【0033】本発明の導電性組成物は、上記の特徴に加
えて、取扱いが容易で賦形性が良好なことから、光導電
材料や導電材料などのエレクトロニクス分野に広く応用
可能な素材として、きわめて有用である。
【0034】
【実施例】以下の合成例、実施例および比較例によっ
て、本発明をさらに詳しく説明する。これらの例中、部
はすべて重量部を表し、物性値は25℃における値であ
る。本発明は、これらの実施例によって制限されるもの
ではない。
【0035】実施例1 ジヘキシルジクロロシランからナトリウムによるウルツ
反応で合成した、ポリスチレン換算重量平均分子量(以
下、単に平均分子量という)138,000、分子量分
布係数Mw/Mnが2.0および平均分子量15,00
0(Mw/Mn=3.1)のバイモーダル分布を有し、
前者と後者の重量比が約1:2であるポリ(ジヘキシル
シラン)50部と、1−ヘキサデカノール5部とを、ト
ルエン1,000部に溶解して、処理液を得た。この処
理液を、スピンコーターを用いて端子付きのガラス板
に、まず500rpm で5秒、ついで2,000rpm で3
0秒かけて塗布した。これを減圧下に室温で30分乾燥
して、厚さ0.6μm のポリシラン薄膜をガラス表面に
形成させた。
【0036】このように表面にポリシラン薄膜を形成さ
せたガラス板を、固体ヨウ素を入れて乾燥窒素で置換し
た遮光性容器中に25℃で1時間静置することにより、
薄膜をヨウ素ドーピングした。ドーピング後の薄膜の体
積抵抗率を測定したところ、3.7×103 Ωcmの値を
示した。
【0037】実施例2〜5 ポリシラン化合物として、ヘキシルトリクロロシランか
らナトリウムによるウルツ反応で合成した、平均分子量
32,000(Mw/Mn=5.8)のポリ(ヘキシル
シリン);または1,1,2,2−テトラメチル−1,
2−ジエトキシジシランから、9,10−ジブロモアン
トラセンの存在下にn−ブチルリチウムを用いる不均化
反応によって合成した、平均分子量10,470(Mw
/Mn=4.2)のアントラセニレン基含有ポリシラン
(メチル基:エトキシ基:アントラセニレン基=78:
18:4)を用いて、表1に示す配合比により、実施例
1と同様な方法で、1−ヘキサデカノールを含むポリシ
ラン薄膜を形成させ、ヨウ素ドーピングを行った。ドー
ピング後の薄膜の体積抵抗率を測定したところ、表1に
示すように、ポリシラン化合物の種類および1−ヘキサ
デカノールの配合比に応じて、1.3×102 〜2.4
×105 Ωcmの値を示した。
【0038】
【表1】
【0039】実施例6〜11 ポリシラン化合物として、実施例1に用いたのと同様の
ポリ(ヘキシルシラン)または実施例2に用いたのと同
様のポリ(ヘキシルシリン)を用い、ヒドロキシル基含
有有機化合物として1−ペンタノール、1,2,6−ヘ
キサントリオールまたはフェノールを用い、表1に示す
組合せと配合比により、実施例1と同様な方法で各種の
ヒドロキシル基含有有機化合物を含むポリシラン薄膜を
形成させ、ヨウ素ドーピングを行った。ドーピング後の
薄膜の体積抵抗率を測定したところ、表2に示すよう
に、ポリシラン化合物とヒドロキシル基含有有機化合物
の種類および後者の配合比に応じて、1.3×103
6.3×105 Ωcmの値を示した。
【0040】
【表2】
【0041】比較例1〜3 ポリシラン化合物として、実施例1に用いたのと同様の
ポリ(ヘキシルシラン)、実施例2に用いたのと同様の
ポリ(ヘキシルシリン)または実施例4に用いたのと同
様のアントラセニレン基含有ポリシランを用い、ヒドロ
キシル基含有有機化合物を配合しなかった以外は実施例
1と同様にしてポリシラン薄膜を形成させ、ヨウ素ドー
ピングを行った。ドーピング後の薄膜の体積抵抗率を測
定したところ、表3に示すように、ポリシラン化合物の
種類に応じて、3.8×104 〜5.1×106 Ωcmの
値を示した。
【0042】比較例4 1−ヘキサデカノールの代わりに15部のn−イコサン
を配合した以外は実施例1と同様にして、ポリシラン薄
膜の形成とヨウ素ドーピングを行った。ドーピング後の
薄膜の体積抵抗率を測定したところ、表3に示すよう
に、7.5×106 Ωcmであり、ヒドロキシル基含有有
機化合物を配合した場合のような導電性の向上は認めら
れなかった。
【0043】
【表3】
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 今井 高史 東京都港区六本木6丁目2番31号 東芝 シリコーン株式会社内 (56)参考文献 特開 平8−69709(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 83/16 C08K 3/00 C08K 5/05 C08G 77/60

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ポリシラン100重量部に対して、アル
    コール類、エーテルアルコール類およびフェノール類か
    ら選ばれる1種または2種以上の、炭素原子に結合した
    ヒドロキシル基を有する有機化合物1〜50重量部を配
    合した固体ポリシランに、酸化性物質1〜1,000重
    量部をドーピングしたことを特徴とする導電性ポリシラ
    ン組成物。
  2. 【請求項2】 炭素原子に結合したヒドロキシル基を有
    する有機化合物が、アルコール類またはフェノール類で
    ある、請求項1記載の組成物。
  3. 【請求項3】 ポリシラン100重量部に対して、アル
    コール類、エーテルアルコール類およびフェノール類か
    ら選ばれる1種または2種以上の、炭素原子に結合した
    ヒドロキシル基を有する有機化合物1〜50重量部を配
    合した固体ポリシランの塗膜を基材表面に形成させ、つ
    いで酸化性物質1〜1,000重量部をドーピングす
    る、導電性ポリシラン組成物の製造方法。
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