JP3228465B2 - アルミニウム製熱交換器用フィン材およびその表面処理剤 - Google Patents

アルミニウム製熱交換器用フィン材およびその表面処理剤

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、アルミニウム製熱
交換器用フィン材(以下「アルミニウム製フィン材」と
いう。)に関し、該アルミニウム製フィン材は主にエア
コンに用いられるものである。さらに詳細には、アルミ
ニウム表面に優れた親水性を付与して水滴の生成を防止
することを特徴とする、水溶性重合体を主成分とする表
面処理剤および、該表面処理剤で表面を被覆されたアル
ミニウム製フィン材に関するものである。
【0002】
【従来の技術】空調機の熱交換器用フィン材は、熱伝導
性に優れたアルミニウム薄板を使用しているが、冷房時
に水分の凝縮により発生する凝縮水がフィン材表面に付
着しフィン材間が凝縮水により封鎖される所謂ブリッジ
現象が発生する。このため通風抵抗が増大し、電力の損
失、騒音の発生、水滴の室内への飛散等の問題が発生し
ていた。また、最近の熱交換器の小型化に伴いフィン材
間隔が著しく狭くなってきたため上記問題がより顕著に
なってきた。
【0003】これら問題を解決するため、アルミニウム
製フィン材に親水性を有する被膜を形成し水滴の付着を
防止する方法が検討されてきた。フィン材表面を親水化
する方法としては、水ガラス等の親水性無機化合物や界
面活性剤や水溶性樹脂等の有機化合物を使用する方法が
種々提案されている。
【0004】アルミニウム製フィン材に親水性を有する
被膜を形成する方法としては、アルカリ珪酸塩とカルボ
ニル基を有する低分子有機化合物からなる親水性被膜形
成剤を使用する方法(特開昭60−101156号公
報)、水溶性樹脂と吸水性樹脂からなる有機系化合物に
界面活性剤を配合してなる親水性塗料(特開昭62−1
29366号公報)等が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
アルカリ珪酸塩を使用する方法は、プレス加工をする際
に金型の摩耗が発生する問題があり、また、有機系化合
物に界面活性剤を配合する方法では金型の摩耗は改善さ
れるものの、界面活性剤や親水性の有機系化合物が被膜
より流出することによる親水性の低下が起こる問題があ
った。本発明はこれらの問題を解決するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究を進めてきた結果、アルミニウム
薄板の両面に特定の組成の樹脂組成物の被膜を形成させ
ることにより、親水性に優れ、かつシリカ成分を含まな
いために被膜が軟質となりアルミニウム薄板のの成型時
に金型の摩耗が改善されることを見いだした。
【0007】すなわち、本発明は、ビニルアルコール単
位、エポキシ基含有ビニル単位、脂肪族ビニルエステル
単位を含有するポリビニルアルコールおよびポリエチレ
ングリコールからなるアルミニウム製熱交換器用フィン
材の表面処理剤であって、該ポリビニルアルコールの重
合度が300〜3300、ケン化度が90%以上、エポ
キシ基含有ビニル単位が0.2〜12モル%であり、該
ポリビニルアルコール100重量部に対して、分子量が
600〜20000のポリエチレングリコールを0.0
5〜5重量部含有する、アルミニウム製熱交換器用フィ
ン材の表面処理剤であり、また、該表面処理剤の水溶液
をアルミニウム製熱交換器用フィン材の表面に塗布し、
乾燥してアルミニウム製熱交換器用フィン材の表面に被
膜を形成する方法であり、更に熱交換器用フィン材の表
面に該表面処理剤の皮膜を有するアルミニウム製熱交換
器用フィン材に関するものである。
【0008】
【発明の実施の形態】本発明に用いるポリビニルアルコ
ールは、エポキシ基含有ビニル単位が0.2〜12モル
%含有するものが好ましく、更に好ましくは0.5〜1
0モル%である。エポキシ基含有ビニル単位が低いと親
水性及び耐水性が十分でなく、高いと水溶液での安定性
が低下するので前述の範囲が好ましい。
【0009】また、該ポリビニルアルコールの重合度は
300〜3300、好ましくは500〜2400であ
る。重合度が小さいと被膜の耐水密着性が低下すること
となり、逆に大きくなると水溶液の粘度が高くなり作業
性が低下し膜厚の調整が難しくなるので前述の範囲が好
ましい。
【0010】ポリビニルアルコールのケン化度は90%
以上であり、95%以上であることが好ましい。ケン化
度が低いと、水に対する溶解性が高まり、アルミニウム
薄板に形成された被膜が溶解する欠点がある。
【0011】本発明に用いるポリビニルアルコールは、
公知の方法で製造される。すなわち(1)脂肪族ビニル
エステルとエポキシ基含有不飽和ビニル化合物を共重合
し、ケン化することにより得る方法、(2)通常のポリ
ビニルアルコールにエポキシ基含有飽和ビニル化合物を
混合する方法等があげられる。(1)の方法で使用され
る脂肪族ビニルエステルとしては、例えば蟻酸ビニル、
酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、トリフロロ酢酸ビニ
ル等の脂肪族ビニルエステルを溶液重合、乳化重合、懸
濁重合、塊状重合等の公知の重合方法によりエポキシ基
含有不飽和ビニル化合物と共重合し、得られた重合体を
メタノール等のアルコールに溶解しアルカリ触媒を添加
してケン化し、乾燥して得ることが出来る。エポキシ基
含有不飽和ビニル化合物としては、アリルグリシジルエ
ーテル、メタアリルグリシジルエーテル、1−アリルオ
キシ−3,4−エポキシ−4−メチルブタン、1−アリ
ルオキシ−4,5−エポキシ−5−メチルペンタン、メ
タアリル−メチルグリシジルエ−テル等があげられる。
(2)の方法で使用されるエポキシ基含有飽和ビニル化
合物としては、ネオペンチルグリコールジグリシジルエ
ーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、グ
リセリンジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコ
ールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパント
リグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリ
シジルエーテル、ポリエチレングリコールモノブチルグ
リシジルエーテル、グリセリンポリグリシジルエーテル
等があげられる。
【0012】ポリエチレングリコールは、分子量が60
0〜20000の範囲が好ましく、更に好ましくは40
00〜11000である。分子量が大きいと分散性が低
下し、小さいと耐水性が低下するので前述の範囲が好ま
しい。ポリエチレングリコールの添加量はポリビニルア
ルコール100重量部に対して0.05〜5重量部が好
ましく、更に好ましくは0.1〜3重量部である。ポリ
エチレングリコールの添加量が多いと塗膜表面にブリー
ドし外観不良を生じ、少ないと親水性の向上効果が発現
しない。
【0013】ポリビニルアルコールからなる水溶性重合
体は、硬化剤としてチタン、ジルコニウム、バナジウム
等の金属のキレート化合物を使用することが出来る。ま
た、アルミニウム薄板は公知の方法で表面処理を行なっ
ていたものを使用することができる。表面処理方法とし
ては、例えばクロメート処理、チタネート処理、ジルコ
ネート処理、ベーマイト処理があげられる。
【0014】アルミニウム薄板への表面処理剤の塗装
は、表面処理剤の水溶液に浸漬したり、或いは該水溶液
をロール塗装、スプレー等塗装する事により行うことが
できる。塗膜の乾燥条件は特に限定されるものではない
が、一般に90〜250℃で15秒〜30分で行なわれ
る。
【0015】従来のアルミニウム製フィン材は親水性の
持続時間が短かったり長時間水分にさらされると親水性
塗膜が溶出し親水性を維持できなくなるものがあった
が、エポキシ基含有ビニル単位を組み込むことにより親
水性の向上とアルミニウム薄板との耐水密着性を著しく
改善することが出来る。
【0016】
【実施例】以下、本発明を実施例によりさらに具体的に
説明する。なお、「部」および「%」は特記しない限り
重量基準によるものとする。
【0017】実施例1 酢酸ビニルとアリルグリシジルエーテルを共重合しケン
化して得られた、エポキシ基単位5モル%,ケン化度9
6%、重合度1800のポリビニルアルコール(表1
a)20部を60℃に加熱した純水380部中に添加、
溶解し、固形分5%のポリビニルアルコール水溶液を4
00部を得た。得られたポリビニルアルコール水溶液に
分子量4000のポリエチレングリコールを0.2部お
よび炭酸ジルコニウムアンモニウム0.5部混合し表面
処理剤水溶液を得た。0.1mmのアルミニウム薄板を
脱脂後、クロメート処理し、その表面に表面処理剤水溶
液を膜厚約1ミクロンになるように塗布した。乾燥温度
200℃で1分間乾燥し試験板を得た。得られた試験板
について初期親水性、100時間流水に浸漬後の親水性
および塗膜の耐水密着性を測定した。結果を表2に示
す。
【0018】実施例2〜6 表1のb〜fに示すポリビニルアルコールおよびポリエ
チレングリコールを用いて、実施例1と同様にして表面
処理剤水溶液を作成し、初期親水性、100時間流水に
浸漬後の親水性および塗膜の耐水密着性を実施例1と同
様に測定した。結果を表2に示す。
【0019】比較例1〜4 表1のg〜jに示すポリビニルアルコールおよびポリエ
チレングリコールを用いて、実施例1と同様にして表面
処理剤水溶液を作成し、初期親水性、100時間流水に
浸漬後の親水性および塗膜の耐水密着性を実施例1と同
様に測定した。結果を表2に示す。
【0020】(測定方法) 初期親水性:ダイナミックコンタクトアングル・アブソ
ープションテスター(FIBRO system ab
社製)を用いて、試験板に10μの純水を滴下し20秒
後の塗膜上の水滴の接触角及び水滴直径を測定した。 流水浸漬後の親水性:試験板を流水中に100時間浸漬
後乾燥して初期親水性の測定と同様に塗膜上の水滴の接
触角及び水滴直径を測定した。 耐水密着性:流水浸漬後の試験板の塗膜をテープ剥離試
験を実施し外観変化(剥離程度)を観察した。
【0021】 (判定方法) 親水性の水濡性 ○:水滴直径が7mm以上 △:水滴直径が6mm以上7mm未満 ×:水滴直径が6mm未満 耐水密着性 ○:外観変化なし △:わずかに剥離あり ×:剥離あり
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】
【発明の効果】本発明は、ビニルアルコール単位にエポ
キシ基含有不飽和ビニル単量体を共重合又はエポキシ基
含有飽和ビニル単量体を混合してなるポリビニルアルコ
ールとポリエチレングリコールとからなる水溶性重合体
をアルミニウム製フィン材の表面に塗布し、乾燥してな
る被膜を形成させることを特徴とするもので、ポリビニ
ルアルコールの親水性を向上させるとともに、アルミニ
ウム薄板との耐水密着性がきわめて良好となる。したが
って親水性被膜を流水に長時間さらしても親水性被膜が
剥がれたり溶出することがない。また、親水性被膜が柔
らかいためアルミニウムフィン材をプレス加工する際に
金型の摩耗が少ないアルミニウム製フィン材である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ビニルアルコール単位、エポキシ基含有
    ビニル単位、脂肪族ビニルエステル単位を含有するポリ
    ビニルアルコールおよびポリエチレングリコールからな
    るアルミニウム製熱交換器用フィン材の表面処理剤であ
    って、該ポリビニルアルコールの重合度が300〜33
    00、ケン化度が90%以上、エポキシ基含有ビニル単
    位が0.2〜12モル%であり、該ポリビニルアルコー
    ル100重量部に対して、分子量が600〜20000
    のポリエチレングリコールを0.05〜5重量部含有す
    る、アルミニウム製熱交換器用フィン材の表面処理剤。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の表面処理剤の水溶液をア
    ルミニウム製熱交換器用フィン材の表面に塗布し、乾燥
    することを特徴とするアルミニウム製熱交換器用フィン
    材の表面に被膜を形成する方法。
  3. 【請求項3】 アルミニウム製熱交換器用フィン材であ
    って、その表面に請求項1記載の表面処理剤の皮膜を有
    するアルミニウム製熱交換器用フィン材。
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