JP3223914B2 - 丸ビレットの冷却方法 - Google Patents

丸ビレットの冷却方法

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、丸ビレットを連続
鋳造する際の、モールド直下における冷却方法に関する
ものである。
【0002】
【従来の技術】近年の連続鋳造においては、生産能力の
向上、高能率化によるコスト削減のために益々の高速鋳
造化が要求されているが、この高速鋳造化を実現するた
めには、鋳片の均一な急速冷却を行って、高速鋳込みに
耐え得る、厚い凝固シェルを均等に形成すると共に、凝
固シェルがモールド直下において破れて内部の溶鋼が流
出する、ブレークアウトなる事故の発生を防止する必要
がある。
【0003】このブレークアウト防止対策として、従
来、モールド直下にモールドと同調して上下振動する冷
却体を設置する方法が一般的に採られている。例えば、
特開昭49−102525号では、鋳片の表面を冷却す
る冷却液を、広い扇形のスプレー状に噴射することで、
鋳片表面の均一冷却を実施する方法が開示されている。
また、特開昭52−57025号では、冷却スプレー量
を、隅角部から面中央部に向かうに従って漸次変化させ
ることで、モールド直下のブレークアウトを防止する方
法が開示されている。また、特開昭61−123455
号では、スプレーノズルの先端部に2条の平行なスリッ
トを、各スリットの軸線が外に向かって開くようにして
設けることで、鋳片の表面をほぼ均一に冷却して鋳片の
品質向上を図る方法が開示されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで、丸ビレット
を連続鋳造するに際し、モールド直下における丸ビレッ
ト鋳片の冷却方法に不備があると、丸ビレット鋳片の表
皮直下において内部割れが発生する。この内部割れは、
丸ビレット鋳片の凝固中に凝固界面近傍(固液共存域)
が割れ、その割れ部に成分元素の濃化した残溶鋼が吸
引、充填されたものである。特に炭素濃度が0.3〜
1.0重量%の溶鋼では、液相線温度と固相線温度区間
が広く、固液共存領域が大きいので、内部割れが発生し
やすい。
【0005】連続鋳造によって丸ビレットを製造した際
の内部割れは、丸ビレット鋳片の表皮下5〜20mmの
間に発生し、天側、地側に関係なく、周全域に発生する
ことが特徴である。特にモールド下部における凝固シェ
ルの厚みが4〜25mmに相当することから、内部割れ
は、モールド直下において発生することが判る。
【0006】内部割れが発生した丸ビレット鋳片を、例
えばシームレスパイプの製造にそのまま使用すると、表
面疵が発生して製品とはならない。また、丸ビレット鋳
片の表皮直下に内部割れが発生すると、この内部割れが
丸ビレット鋳片の表面に伝播して、モールド直下でのブ
レークアウトの危険性を伴うことになる。
【0007】このように丸ビレットを連続鋳造するに際
し、モールド直下における内部割れを防止することは、
極めて重要であるが、先に開示された方法は、いずれも
角ビレットを対象としたもので、丸ビレットには適用で
きないものであった。
【0008】本発明は、上記した問題点に鑑みて成され
たものであり、丸ビレットを連続鋳造するに際し、内部
割れや内部割れに起因するブレークアウトを防止できる
冷却方法を提供することを目的としている。
【0009】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明に係る丸ビレットの冷却方法は、モール
ド直下における凝固シェル厚さをD(mm)、モールド
直下から最初に丸ビレットがスプレー冷却されるまでの
間の復熱量をΔT(℃)とした場合、予め設定したモー
ルドスプレーの設置位置に基づき、ΔT/D(℃/m
m)が8.5以下となるように、モールドスプレーの冷
却水量及び鋳造速度の少なくとも一つを制御することと
している。そして、このようにすることで、凝固シェル
の厚さが薄いモールド直下における、丸ビレット鋳片に
おける表面の復熱量を少なくできる。
【0010】
【発明の実施の形態】内部割れの発生に及ぼす歪みの影
響について考える。従来、連続鋳造鋳片に加わる歪み
は、スラブ連続鋳造機におけるローラエプロンやピンチ
ロール部でのミスアライメントによるバルジング歪み、
湾曲型連続鋳造機における矯正歪み、鋳片の冷却不適正
による熱歪みに分類される。
【0011】このうち、バルジング歪みについては、丸
断面の丸ビレットでは、角断面のスラブとは異なり、バ
ルジングはほとんど生じないので、内部割れの発生に影
響を及ぼさない。また、矯正歪みについても、丸ビレッ
トの連続鋳造機では、矯正点位置における凝固シェルに
内部割れが発生しておらず、また、割れがビレットの天
側に集中していないことから、丸ビレットの連続鋳造に
際しては、矯正歪みは無関係である。
【0012】以上の点を考慮すると、丸ビレットの連続
鋳造時における内部割れは、スプレー間(鋳片の冷却が
不連続に成される部分、設備的な制約によりやむを得ず
生じる)において、丸ビレット鋳片における表面の復熱
による熱歪みが原因であることが判る。
【0013】ところで、モールドを出た丸ビレット鋳片
は、凝固シェルが薄く内部に未凝固溶鋼を有しているの
で、ガイドロール装置で慎重に支持しながら引抜く必要
がある。このガイドロール装置内には、スプレーノズル
が取り付けられ、丸ビレット鋳片に直接冷却水を噴出す
ることによって凝固促進を図っている。従って、凝固進
行中の丸ビレット鋳片内に発生する熱歪みを最小にし、
効率良く抜熱をするためには、予め設定したモールドス
プレーの設置位置に基づいて、例えば最適な冷却パター
ンやノズル配列及び鋳造速度を選定する必要がある。
【0014】図1に連続鋳造機におけるスプレー配置の
概略図を示すが、モールド1の出側に先ず始めに設置さ
れた冷却スプレーノズルはモールドスプレー2と呼ば
れ、モールド1からでた薄い凝固シェル3aを有する脆
弱な丸ビレット鋳片3を冷却する上で、非常に重要な役
割を有するものである。
【0015】丸ビレット鋳片3の内部割れ発生は、丸ビ
レット鋳片3の横断面の内部割れ発生位置と、凝固シェ
ル3aの厚さとの関係から、モールド1の直下からモー
ルドスプレー2の間の、まだ凝固シェル3aの厚さが薄
い丸ビレット鋳片3の復熱によるものが大きい。
【0016】丸ビレット鋳片における表面温度の履歴の
概略を図2に示すが、この図2に示すように、モールド
内で強冷却された丸ビレット鋳片は、モールド直下に配
置されたモールドスプレーによって冷却されるまで、急
激に復熱する。従って、丸ビレット鋳片3における内部
割れは、復熱量が大きく、かつ、凝固シェル3aの厚さ
が薄いモールド1の直下において発生する可能性が高
く、二次冷却帯4を通過した丸ビレット鋳片3は、凝固
シェル3aの厚さが十分に大きく、スプレー間の復熱量
も小さいので、内部割れは発生しない。なお、図2は内
径が225mmのモールドを使用し、2m/分の鋳造速
度で丸ビレットを連続鋳造した場合の結果である。
【0017】本発明者らは、上記したことを考慮し、モ
ールドスプレーの設置位置すなわちモールド下端からの
距離L(mm)と、モールド直下の復熱量ΔT(℃)
と、その時の凝固シェル厚さD(mm)の関係を測定
し、これらと内部割れの発生の有無との関係を調査した
ところ、これらの間には、例えばΔT/D=f(Vc,
Q,L)=27.1×(Vc1.64×L0.24)/Q0.80
関係があり、図3に示したような結果が得られた。な
お、Vcは鋳造速度(m/分)、Qはモールドスプレー
の冷却水量(Nm3 /分)、図3は炭素濃度が0.30
〜1.0重量%の溶鋼を使用して丸ビレットを連続鋳造
した場合の結果であり、●印は内部割れが発生したも
の、▲印は内部割れが発生しなかったもの、*印はブレ
ークアウトが発生したものを示す。
【0018】本発明に係る丸ビレットの冷却方法は、上
記した調査結果を種々検討して成されたものであり、炭
素濃度が0.3〜1.0重量%の溶鋼から丸ビレットを
連続鋳造する際の、モールド直下における冷却方法であ
って、モールド直下における凝固シェル厚さをD(m
m)、モールド直下から最初に丸ビレットがスプレー冷
却されるまでの間の復熱量をΔT(℃)とした場合、予
め設定したモールドスプレーの設置位置に基づき、ΔT
/D(℃/mm)が8.5以下となるように、モールド
スプレーの冷却水量及び鋳造速度の少なくとも一つを制
御するものである。
【0019】本発明に係る丸ビレットの冷却方法は、上
記したように構成したので、凝固シェルの厚さが薄いモ
ールドの直下における、丸ビレット鋳片における表面の
復熱量を少なくでき、復熱による熱歪みを抑制すること
ができる。
【0020】
【実施例】以下、本発明に係る丸ビレットの冷却方法の
効果を確認するために行った実験結果について説明す
る。炭素濃度が0.35重量%の溶鋼を、内径が225
mmのモールドに供給し、下記表1及び表2に示す鋳造
速度で丸ビレットを連続鋳造した。そして、この連続鋳
造時、モールドスプレーの冷却水量やモールドスプレー
の設置位置(モールド下端からの距離L(mm))を各
種変更し、夫々についてモールド直下における凝固シェ
ル厚さD(mm)、モールド直下から最初に丸ビレット
がスプレー冷却されるまでの間の復熱量ΔT(℃)を測
定してΔT/Dを求めると共に、サルファープリントを
用いた内部割れの有無と、ブレークアウト発生の有無を
調べ、ブレークアウトが発生しなかったものについて
は、丸ビレットの品質を評価した。
【0021】ΔT/Dと内部割れ発生率の関係を図4に
示し、その中の一例を下記表1及び表2に示す。なお、
表1及び表2中の品質評価は、サルファープリントにて
内部割れの発生の有無を調べた結果で、○印は内部割れ
が無かったものを、×印は内部割れが発生していたもの
を示す。
【0022】
【表1】
【0023】
【表2】
【0024】図4及び上記表1、表2より明らかなよう
に、予め設定したモールドスプレーの設置位置に基づ
き、モールドスプレーの冷却水量や鋳造速度を制御して
ΔT/Dを8.5以下となるようにした本発明の冷却方
法では、内部割れの発生が全く無くなり、内部割れに起
因するブレークアウトも皆無となって、健全な丸ビレッ
トが製造できた。一方、ΔT/Dが8.5を超えた場合
には、いずれも内部割れが発生し、この内部割れに起因
してブレークアウトが発生するものもあった。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る丸ビ
レットの冷却方法によれば、炭素濃度が0.3〜1.0
重量%の溶鋼から丸ビレットを連続鋳造する際、内部割
れの発生を無くして、内部品質の健全な丸ビレットを製
造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】連続鋳造機におけるスプレー配置の概略を示す
図である。
【図2】丸ビレットにおける表面温度の履歴の概略を示
す図である。
【図3】炭素濃度が0.30〜1.0重量%の溶鋼を使
用して丸ビレットを連続鋳造した場合における、モール
ド直下の復熱量ΔT(℃)と、その時の凝固シェル厚さ
D(mm)の関係を測定し、これらと内部割れの発生の
有無との関係を調査した結果を示す図である。
【図4】炭素濃度が0.35重量%の溶鋼を、内径が2
25mmのモールドに供給し、2.0m/分の鋳造速度
で丸ビレットを連続鋳造した際の、ΔT/Dと内部割れ
発生率の関係を示した図である。
【符号の説明】
1 モールド 2 モールドスプレー 3 丸ビレット鋳片 3a 凝固シェル
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭49−102525(JP,A) 特開 昭52−57025(JP,A) 特開 昭61−123455(JP,A) 特開2000−237855(JP,A) 特開 平9−103857(JP,A) 特開 平4−59158(JP,A) 特開 昭63−268549(JP,A) 特開 平4−333351(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/22 B22D 11/00 B22D 11/124 B22D 11/20

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素濃度が0.3〜1.0重量%の溶鋼
    から丸ビレットを連続鋳造する際の、モールド直下にお
    ける冷却方法であって、モールド直下における凝固シェ
    ル厚さをD(mm)、モールド直下から最初に丸ビレッ
    トがスプレー冷却されるまでの間の復熱量をΔT(℃)
    とした場合、予め設定したモールドスプレーの設置位置
    に基づき、ΔT/D(℃/mm)が8.5以下となるよ
    うに、モールドスプレーの冷却水量及び鋳造速度の少な
    くとも一つを制御することを特徴とする丸ビレットの冷
    却方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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